JP2009046063A - ランプシステム及びランプ偏向制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 自動車のAFSにおいて運転者にランプ照射方向の偏向制御の違和感を与えずに車両の安全走行を確保するようにしたランプシステム及びランプ偏向制御方法を提供する。
【解決手段】 車両の操舵角に追従してランプRHL,LHLの照射方向Lxを偏向制御する偏向制御手段16,17と、操舵角が変化するときの操舵角加速度を演算する手段11,12と、操舵角の変化に対する照射方向の変化の追従応答性を変化させるフィルター手段15と、得られた操舵角加速度が基準値以上のときにフィルター手段15の追従応答性を低く制御するフィルター制御手段13,14とを備える。操舵角加速度が所定値以上のときにはフィルター手段15の追従応答性を低く制御し、操舵角の変化に対するランプの照射方向の追従応答性を低く抑えることでランプの照射方向が急激に偏向制御されることがなく運転者に違和感を生じさせることがない。
【選択図】 図1

Description

本発明は自動車等の車両の前照灯(ヘッドランプ)に関し、特に車両の操舵角変化に追従してヘッドランプの照射方向を偏向制御するAFS(適応型照明システム:Adaptive Front-lighting System) を適用したランプシステム及びその偏向制御方法に関するものである。
自動車の運転走行の安全性を高めるためにステアリングホイールの操舵角に追従してヘッドランプの照射方向を左右方向に偏向制御するAFSランプシステムが提案されている。このシステムによれば、ヘッドランプの照射方向を直進方向のみではなく、運転者が操舵する方向、すなわち自動車が走行しようとする方向にヘッドランプの照射方向を向けることができ運転の安全性を高める上で有効である。しかし、このランプシステムでは、運転者が進路方向を微調整するためにステアリングホイールを微小角範囲で操舵するソーイング操作をした場合や、路面の凹凸に伴って操舵車輪の向きが微小変化したときに、この変化がステアリングホイールにまで伝達されたような場合にもシステムがヘッドランプの照射方向を偏向制御してしまうことがある。このように運転者が進路変更を意図しない場合においてもヘッドランプの照射方向が変化されると、運転者に違和感を生じさせるとともに、自動車の本来の進行方向の前方を十分に照明できなくなる場合も生じ、安全性の上で問題が生じることがある。
このような問題に対し、特許文献1の技術は、ステアリングホイールの操舵角に不感帯を設け、この不感帯の範囲内ではヘッドランプの偏向制御を行わないようにすることで、操舵角が微小範囲で変動された場合におけるヘッドランプの意図しない偏向制御を防止している。また、これとともに操舵角の変位速度、すなわち角速度を検出し、この角速度に応じて操舵角に対する偏向制御角の応答性を変更制御している。すなわち、操舵角の角速度に対するヘッドランプの照射方向の追従応答性を高くするフィルター手段(フィルター効果が弱い)と追従応答性を低くするフィルター手段(フィルター効果が強い)を設けておき、操舵角の角速度が小さいときには応答性を低くするフィルター手段を選択することで、ゆっくりした操舵のときには操舵角に対して照射方向がゆっくりと追従変化されるようにし、操舵角の角速度が大きいときには応答性を高くするフィルター手段を選択することで、素早い操舵のときには操舵角に対して照射方向が追従変化され易くなるようにしている。この特許文献1によれば、理由は明記されていないが、運転者のステアリングホイールの操舵に応じ違和感なくスイブル制御することが可能であるとされている。
特開2002−178829号公報
特許文献1の技術は、操舵角の角速度に追従してフィルター手段を選択し、特にゆっくりとした操舵のときにはランプの照射方向が操舵角の変化に対して敏感に追従されることがなくなり、運転者に対する違和感を防止している。しかし、特許文献1の技術は素早く操舵を行ったときにはランプの照射方向が敏感に追従するため、運転者によるソーイングや路面の凹凸によるステアリングホイールの微小な回動によって照射方向が敏感に変動してしまうことになり、運転者が操舵の意図がないのにもかかわらず照射方向が偏向してしまい運転者に違和感を生じさせる。そのため、特許文献1では直進方向を中心にした微小な操舵角の範囲に不感帯を設けており、この不感帯の範囲ではヘッドランプの照射方向が偏向されないようにしている。これは、直進走行時において微細な操舵角変化によって照射方向が頻繁に偏向されると運転者に煩わしさを感じさせて安全運転の上で好ましくないからである。しかし、不感帯の幅が小さすぎるとこのような目的を達成するができず、反対に不感帯の幅が大きすぎると、例えば、高速走行時に車線変更を行うような場合に、操舵角が不感帯の範囲内であるとシステムが動作せず、ヘッドランプが変更先の車線側を照明することができない場合が生じてしまう。
また、引用文献1の技術では、市街地の曲路走行時のようにゆっくりと操舵を行うときにはランプの照射方向が操舵角に追従しなくなり曲路走行先の照明が不十分なものになってしまう。特に市街地の交差点を低速で右左折するようなときにはゆっくりと操舵を行うことが多いため、ランプの照明方向がなかなか進行方向に向けられなくなり、この点でも運転者に違和感を生じさせるとともに進行先の照明が不十分なものになってしまい安全走行の点で問題が生じることになる。
本発明の目的は、ランプの照射方向を偏向制御する際に運転者に違和感を与えることなく、かつその一方で車両の安全走行を確保する照明を実現するランプシステム及びランプ偏向制御方法を提供するものである。
本発明は、車両の操舵角を検出し、検出した操舵角に追従してランプの照射方向を偏向制御する偏向制御手段を備えるランプシステムにおいて、偏向制御手段は、操舵角が変化するときの操舵角加速度を演算する手段と、操舵角の変化に対する照射方向の変化の追従応答性を変化させるフィルター手段と、得られた操舵角加速度が基準値以上のときにフィルター手段の追従応答性を低く制御するフィルター制御手段とを備える。
また、本発明は、車両の操舵角を検出し、検出した操舵角に追従してランプの照射方向を偏向制御するランプ偏向制御方法であって、操舵角が変化するときの操舵角加速度を演算し、当該操舵角加速度が基準値以上のときに操舵角に対するランプ照射方向の偏向制御の追従応答性を低くし、基準値よりも小さいときに追従応答性を高くすることを特徴とする。
本発明によれば、ステアリング操作を開始するときのように操舵角加速度が所定値以上のときにはフィルター手段の追従応答性を低く制御することで、操舵角の変化に対するランプの照射方向の偏向の追従応答性が低く抑えられるため、ランプの照射方向が急激に偏向制御されることがなく運転者に違和感を生じさせることがなくなる。また、同時にソーイングや路面凹凸によるステアリングが頻繁に回動する際のランプの照射方向の変動を抑制することで不感帯を設ける必要がなくなり、不感帯を設定する際の問題が解消される。その一方でステアリングを開始した後の操舵時にはランプの照射方向をステアリング操舵に追従させて偏向制御することができ、運転者に違和感を生じさせることがない。
本発明において、フィルター制御手段は、操舵角加速度が基準値よりも小さいときに操舵角の変化に対する照射方向の変化の追従応答性を高い状態に制御するように構成してもよい。ステアリングを素早く、あるいはゆっくりとほぼ一定の速度で操舵したときにはランプの照射方向を操舵角に追従させて敏感に制御することができ、運転者に違和感を生じさせることがない。
また、偏向制御手段は、フィルター手段での追従応答性を低く制御した時間を計時し、所定時間を経過するまで当該追従応答性を低く保持するようにしてもよい。ステアリングの操舵角が頻繁に変化する場合でも、最初の変化した時点から所定時間を経過するまでの間は操舵角の変化が無視されることになり、ランプの照射方向が頻繁に変動することが防止され、運転者に煩わしさを生じることがなく、また安全走行の面で好ましい。
本発明の実施例1を図面を参照して説明する。図1は自動車の左右のヘッドランプに適用した実施例1の断面図であり、右のヘッドランプRHLと左のヘッドランプLHLは基本的には同じ構成であり、前面が開口されて素通しカバーを有する容器状をしたランプハウジングLHにプロジェクタ型のランプユニットで構成されてロービーム配光の照明を行うためのロービームランプRLBL,LLBLが内装されている。また、前記ランプハウジングLH内にはハイビーム配光の照明を行うためのランプユニットからなるハイビームランプRHBL,LHBLも内装されている。前記ロービームランプRLBL,LLBLはそれぞれスイブル機構SVによって照射方向Lxが水平左右方向に偏向制御可能に構成されている。なお、このスイブル機構SVは既に広く知られているので詳細な説明は省略する。
前記左右のヘッドランプRHL,LHLの各スイブル機構SVはECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit )10に接続されておりECU10により左右方向の偏向動作が制御される。ECU10には、ステアリングホイールSTWの操舵角を検出する操舵角センサー20と、自車の車速を検出する車速センサー30とが接続されており、ECU10は操舵角センサー20からの操舵角信号と、車速センサー30からの車速信号とに基づいて前記スイブル機構SVを制御し、ロービームランプRLBL,LLBLの放射方向を制御する。
前記ECU10は、前記操舵角センサー20からの操舵角を情報とする操舵角信号の時間に対する操舵角の変化、すなわち操舵角速度を演算する操舵角速度演算部11と、操舵角速度演算部11で得られた操舵角速度の時間に対する操舵角速度の変化、すなわち操舵角加速度を演算する操舵角加速度演算部12と、この操舵角加速度演算部12で得られた操舵角加速度をメモリ14に記憶された基準値としての基準角加速度と比較し、比較した結果に基づいて後述するフィルター手段15を制御するフィルター制御部13とを備えている。また、前記操舵角センサー20からの操舵角信号と、前記車速センサー30からの車速信号に基づいて自車の操舵角に対してロービームランプRLBL,LLBLの照射方向Lxの偏向角、すなわち自車の直進方向に対してなす角度を演算する偏向角演算部16と、この偏向角演算部16で演算された偏向角信号に基づいてスイブル機構SVを制御するためのスイブル制御信号を出力するスイブル制御部17と、スイブル制御部17からのスイブル制御信号の入出力応答性を制御するフィルター手段15とを備えている。前記スイブル制御信号はこのフィルター手段15において入出力応答性が制御された後、各ヘッドランプRHL,LHLに設けられているスイブル機構SVに入力され、ヘッドランプRHL,LHL内のロービームランプRLBL,LLBLの照射方向Lxが演算された偏向角の方向に向けられるような制御が実行される。
ここで、前記フィルター手段15は、図2(a)に示すように2つのコンデンサC1,C2と1つの抵抗R1とを備えたCR回路で構成されており、入力端と出力端との間に抵抗R1を直列に接続し、H側とL側に切り替えられるスイッチSWを介してコンデンサC1,C2を並列に選択接続可能に構成している。コンデンサC1,C2は容量値が相違しており、ここではコンデンサC1の容量値がコンデンサC2よりも大きくされている。スイッチSWは前記ECU10のフィルター制御部13の出力に基づいて切り替えられるようになっており、操舵角加速度が基準値以上のときにはスイッチSWはH側の容量値の大きなコンデンサC1を選択して抵抗R1に接続するため、CR回路の時定数は大きくなり、フィルター効果が強く効くようになって図2(b)のように入力に対する出力の応答性が低くなり、スイブル機構SVに入力される偏向角信号が出力される際の応答性が低くなる。また、角加速度が基準値よりも小さいときにはスイッチSWはL側の容量値の小さなコンデンサC2を選択して抵抗R1に接続するため、時定数は小さくなり、フィルター効果の効きが弱くなって図2(c)のように入力に対する出力の応答性は高く、スイブル機構SVに入力される偏向角信号が出力される際の応答性が高くなる。なお、フィルター手段15はこの回路に限られるものではなく他の回路構成であってもよく、さらにはソフトウェアで構成してもよい。
以上の構成のヘッドランプシステムにおけるAFS制御でのヘッドランプの照射方向の応答制御の動作を説明する。図3のフローチャートにおいて、操舵角速度演算部11は操舵角センサー20からの操舵角信号から一定周期で操舵角を検出し(S101)、今回検出した操舵角と前回検出した操舵角との差に基づいて操舵角速度を演算する(S102)。次いで、操舵角加速度演算部12は操舵角速度演算部11で演算した操舵角速度を一定周期で検出し、今回検出した操舵角速度と前回検出した操舵角速度との差に基づいて操舵角加速度を演算する(S103)。フィルター制御部13は演算された操舵角加速度を予め設定されている基準角加速度と比較し(S104)、操舵角加速度が基準角加速度以上のときには「強フィルター信号」を出力し(S105)、反対に操舵角加速度が基準角加速度よりも小さいときには「弱フィルター信号」を出力し(S106)、この出力に基づいてフィルター手段15を制御する。
すなわち、ステアリングホイールSTWの操舵開始時のように操舵角加速度が基準角加速度以上のときに「強フィルター信号」で図2に示したフィルター手段15のスイッチSWをH側に設定する。これにより、フィルター手段を構成しているCR回路にコンデンサC1が接続されて時定数が大きくなり、フィルター手段15は入力される偏向角信号に対するフィルター効果が強く効くように作用する。一方、ステアリングホイールSTWがほぼ一定速度で操舵されて操舵角加速度が基準角加速度よりも小さいときに「弱フィルター信号」でフィルター手段15のスイッチSWをL側に設定する。これによりフィルター手段15を構成しているCR回路にコンデンサC2が接続されて時定数が小さくなり、フィルター手段15は入力される偏向角信号に対するフィルター効果の効きが弱くなる。
また、以上の動作とほぼ同時に、ECU10は操舵角センサー20からの操舵角信号と車速センサー30からの車速信号を取り込み、偏向角演算部16は舵角信号と車速信号に基づいて自車の操舵角に対する適切なヘッドランプの照射方向Lxの偏向角(スイブル角)を演算し、演算した偏向角信号をスイブル制御部17に出力する(S107)。スイブル制御部17は入力された偏向角信号に基づいてロービームランプRLBL,LLBLを当該偏向角の方向に偏向させるべくスイブル機構SVを駆動制御するためのスイブル制御信号を生成し、フィルター手段15に出力する。そして、フィルター手段15ではステップS105又はS106において設定された時定数、すなわちフィルター効果の強、又は弱に従ったフィルター処理が行われる(S108)。フィルター処理が行われたスイブル制御信号はスイブル機構SVに出力され、スイブル機構SVの動作によりロービームランプRLBL,LLBLの照射方向Lxが左右に偏向制御され、操舵角に追従した方向に制御する(S109)。なお、偏向角演算部16は操舵角信号と共に車速信号に基づいて偏向角を演算しているので、例えば高速走行時と中・低速走行時とでは同じ操舵角でもロービームランプRLBL,LLBLの照射方向Lxの偏向角を相違させ、特に高速走行時には偏向角を小さくなるように演算を行うことで照射方向Lxが直進方向に対して大きく偏向することを防止して運転者に違和感を生じさせることを防止する。
図4において(a)は操舵角、(b)は操舵角速度、(c)は操舵角加速度、(d)はスイブル制御信号の偏向角の各タイミング図である。図4(a)では直進状態から操舵を開始し、操舵角が徐々に増加して所定の操舵角になった時点で所定時間だけその状態を保持し、その後再び操舵を行って操舵角を更に増加し、所定の操舵角に保持したときのタイミングを示している。このタイミングにおいて、操舵角を増加している時点では、図4(b)に示すように操舵は一定の速度で行なわれる。このとき、図4(c)に示すように操舵の開始時には操舵角加速度が増加することが分かり、操舵角加速度が基準値、すなわち基準角加速度以上のときにはフィルター手段15のフィルター効果は強く設定されることになる。また、操舵が開始された後は、操舵角加速度が基準値よりも小さいときには、フィルター手段15のフィルター効果は弱く設定される。
したがって、フィルター手段15に入力されたスイブル制御信号により制御されるスイブル機構SVは、図4(d)に示すように、操舵の開始時の操舵角加速度が基準値以上のときには、フィルター手段15のフィルター効果は強くなるため、フィルター手段15から出力されるスイブル制御信号は抑圧された状態となり、スイブル機構SVにより制御される照射方向Lxのスイブル角の時間軸上の変化は傾きが小さい特性となる。これにより、操舵角変化に対する照射方向Lxの変化速度が通常時よりも遅くなり、追従応答性の低い特性となる。一方、操舵が開始された後の操舵角加速度が基準値よりも小さいときには、フィルター手段15のフィルター効果は弱くなるため、フィルター手段15から出力されるスイブル制御信号は殆ど抑圧されることなくスイブル機構SVに入力され、制御される照射方向Lxのスイブル角の時間軸上の変化は傾きが大きい特性となり、操舵角の変化に追従したものとなる。これにより、操舵角変化に対するヘッドランプの照射方向の変化は追従応答性の高い特性となる。ここでは、この追従応答性の高い特性は通常の追従応答性として設定している。
このように、実施例1では操舵角加速度を演算した上でこれを基準角加速度と比較してフィルター手段15のフィルター効果の強弱を制御することにより、ステアリングホイールSTWが緩やかに操舵されて操舵角が緩やかに変化されている際にはフィルター手段15での追従応答性を高くしてランプの照射方向を操舵角度に応答性良く追従させたスイブル制御を行うことができる。その一方で、ステアリングホイールSTWの操舵の開始時のように操舵角が急激に変化される際にはフィルター手段15での追従応答性を低くしてランプの照射方向が操舵角の変化には直ちには追従しないようなスイブル制御を行なうことになる。すなわち、運転者がステアリングホイールSTWを操舵するとき、初期段階では操舵角変化に対するランプの照射方向の応答速度が低下し、ヘッドランプの照射方向が急激に変化されることはなくなり、その後、操舵が進むとランプの照射方向が操舵角に追従するようになり、自車の走行先を照明するようになる。
したがって、ソーイングや路面の凹凸等によってステアリングホイールSTW、すなわち操舵角が微小に変動した場合には操舵角加速度が基準角加速度以上になるためフィルター手段15のフィルター効果が強い状態に設定されることになりランプの照射方向が変動されることはない。このため、この実施例1では、特に直進方向を中心にした微小な操舵角の範囲に特許文献1のような不感帯を設けなくても直進走行時における微小な操舵角変化によって照射方向が頻繁に偏向されることがなく、運転者に違和感を生じさせることがない。これにより、不感帯の幅を適切に設定することが難しいという特許文献1のような問題が生じることはない。
また、実施例1では、歩行者等が多い市街地の交差点等においてゆっくりとした操舵を行いながらも自車の直前領域の安全を確認しようとしたときにも、操舵の初期の操舵角加速度が大きいときにはフィルター手段15のフィルター効果が強くされるのでランプの照射方向が操舵変化に直ちには追従することなく直進方向に向いた状態が保持されるため自車の前方の安全確認が可能になる。その後、操舵が進むと操舵角加速度が小さくなるためフィルター手段15のフィルター効果が弱くなり、ランプの照射方向が操舵角に追従するようになる。これにより、操舵に対応した照射方向の偏向制御が行われ、安全走行を確保する一方で、運転者に違和感を生じることはない。
図5は実施例2のスイブル制御のフローチャートである。実施例1と同じステップには同一符号を付してある。実施例2ではステップS104においてフィルター制御部13が操舵角加速度を基準角加速度と比較し、操舵角加速度が基準角加速度以上であった場合に、フィルター手段15のフィルター効果を強くなるように設定してスイブル制御を実行するが、新たに設けたステップS110においてこのスイブル制御の時間を計時し、フィルター効果を強くなるように設定したときから一定時間T1を経過する時点までフィルター手段15のフィルター効果を強い状態に保持し、その後にフィルター効果を弱くするように設定変更する。
実施例1では操舵角加速度が基準角加速度以上になっている間だけフィルター手段15のフィルター効果を強めていたが、操舵に際して操舵角加速度が基準角加速度以上になるのは操舵を開始する場合が殆どである。そのため、フィルター手段15のフィルター効果を強めている時間は極く短時間である場合が多く、直ぐにフィルター効果が弱められてしまいランプの照射方向が操舵角に追従されてしまうことになる。実施例2では図4(e)に示すように、操舵角加速度が基準角加速度以上になってフィルター手段15のフィルター効果を強めてから所定時間T1の間はこの状態を保持するので、この所定時間T1の間はランプの照射方向の偏向制御は追従性が低い状態となる。これにより、所定時間T1の間はヘッドランプの照射方向が操舵角に追従することによって生じる運転者への違和感を防止することができる。
また、この実施例2は見方を換えれば、操舵角加速度が基準角加速度以上になってフィルター手段15のフィルター効果を強めてから所定時間T1が経過したときにはフィルター手段15のフィルター効果を弱めることである。この見方からすれば、この所定時間T1を経過した後はランプの照射方向の偏向制御の抑制が解除されたことになり、これにより、ランプの照射方向の偏向動作がいたずらに長く抑制されることによる自動車の走行先領域への照明が十分ではない状態を回避することが可能になる。
実施例1ではスイブル制御部17の出力側にフィルター手段15を接続し、スイブル制御信号の追従応答性を制御するように構成していたが、本発明は操舵角センサー20から出力される操舵角信号により得られるスイブル制御信号の実質的な応答性を制御すればよいのであるから、操舵角センサー20の出力端とスイブル機構SVに至るまでの信号経路のいずれにフィルター手段15を接続すればよいことになる。例えば、図6に示す実施例3のように、操舵角センサー20と偏向角制御部16との間にフィルター手段15を接続し、操舵角加速度の比較結果に基づいて操舵角信号の応答性を制御し、この応答性が制御された操舵角信号に基づいて偏向角制御部16で偏向角を演算し、演算された偏向角に基づいてスイブル制御部17でスイブル制御信号を生成し、このスイブル制御信号に基づいてスイブル制御を行うように構成してもよい。生成されたスイブル制御信号は既に操舵角加速度の値に基づいて操舵角に対する追従応答性が制御されているので、実施例1と同様なスイブル制御が実現可能である。なお、図6において図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
ここで、前記各実施例では、フィルター手段15をCR回路で構成し、コンデンサを切り替えて時定数を変化させて追従応答性を切り替えるように構成しているが、このような受動回路で構成されるのみならずアクティブ型のフィルター回路で構成することも可能である。また、一つのフィルター手段の定数を切り替え、あるいは変化させるのではなく、追従応答性の高いフィルター手段と低いフィルター手段のように複数のフィルター手段を設け、これらのフィルターを操舵角加速度の大きさに基づいて選択して接続するように構成してもよい。また、本発明においては追従応答性の高いフィルター手段は省略し、操舵角加速度が基準値以上のときにのみ追従応答性が低くなるフィルター手段のみを設けるように構成してもよい。
本発明の実施例1の全体構成を示すブロック図である。 フィルター手段の回路と作用を説明する図である。 実施例1の動作を説明するフローチャートである。 操舵角とスイブル制御信号の応答性を示すタイミング図である。 実施例2の動作を説明するフローチャートである。 実施例3の全体構成を示すブロック図である。
符号の説明
RHL,LHL ヘッドランプ
RLBL,LLBL ロービームヘッドランプ
SV スイブル機構
Lx ランプの照射方向
10 ECU
11 操舵角速度演算部
12 操舵角加速度演算部
13 フィルター制御部
15 フィルター手段
16 偏向角演算部
17 スイブル制御部
20 操舵角センサー
30 車速センサー

Claims (4)

  1. 車両の操舵角を検出し、検出した操舵角に追従してランプの照射方向を偏向制御する偏向制御手段を備えるランプシステムにおいて、前記偏向制御手段は、前記操舵角が変化するときの操舵角加速度を演算する手段と、前記操舵角の変化に対する前記照射方向の変化の追従応答性を変化させるフィルター手段と、得られた操舵角加速度が基準値以上のときに前記フィルター手段の追従応答性を低く制御するフィルター制御手段とを備えることを特徴とするランプシステム。
  2. 前記フィルター制御手段は、前記操舵角加速度が基準値よりも小さいときに前記操舵角の変化に対する前記照射方向の変化の追従応答性を高い状態に制御することを特徴とする請求項1に記載のランプシステム。
  3. 前記偏向制御手段は、前記フィルター手段での追従応答性を低く制御した時間を計時し、所定時間を経過するまで当該追従応答性を低く保持することを特徴とする請求項1又は2に記載のランプシステム。
  4. 車両の操舵角を検出し、検出した操舵角に追従してランプの照射方向を偏向制御するランプ偏向制御方法であって、操舵角が変化するときの操舵角加速度を演算し、当該操舵角加速度が基準値以上のときに操舵角に対するランプ照射方向の偏向制御の追従応答性を低くし、基準値よりも小さいときに追従応答性を高くすることを特徴とするランプ偏向制御方法。

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