以下、本発明に係る現像装置及び現像剤担持体を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置構成]
先ず、本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置の一実施例の全体構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面を示す。本実施例の画像形成装置100は、レーザービームプリンターである。
画像形成装置100は、像担持体(被現像体)としてドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム101を有する。感光ドラム101は、図示矢印β方向(時計回り)に所定の周速度(表面移動速度)で回転駆動される。本実施例では、感光ドラム101は、OPC(有機光導電体)感光層を有する有機感光体ドラムである。感光ドラム101の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ102、露光手段としてのレーザービームスキャナ103、現像手段を備える現像装置104、転写手段としての転写ローラ105、クリーニング手段としてのクリーナ106などが配置されている。
帯電ローラ102は、感光ドラム101に所定の押圧力で圧接されている。これにより、帯電ローラ102と感光ドラム101との間に、帯電部(帯電ニップ)が形成されている。又、帯電ローラ102には、帯電電圧印加手段としての帯電電源(図示せず)が接続されている。そして、本実施例では、帯電電源から、帯電ローラ102に直流電圧と交流電圧とが重畳された帯電バイアス電圧が印加される。これにより、感光ドラム101の表面は所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位(暗部電位)に一様に帯電させられる。
レーザービームスキャナ3は、レーザダイオード、ポリゴンミラー等を有する像露光装置である。レーザービームスキャナ3は、目的の画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して強度変調されたレーザー光Lを出力し、このレーザー光Lで、回転する感光ドラム101の表面を走査露光する。これにより、感光ドラム101の表面に目的の画像情報に対応した静電潜像(静電像)が形成される。
現像装置104は、詳しくは後述するようにして、感光ドラム101に形成された静電潜像を現像する。本実施例では、現像装置104は、磁性一成分現像方式を採用している。又、本実施例では、現像装置104は、反転現像方式によって、感光ドラム101上の静電潜像をトナー像として現像する。即ち、本実施例では、現像装置104は、一様に帯電処理された後に露光によって電荷が減衰した感光ドラム101上の露光部に、その感光ドラム101の帯電極性と同極性に摩擦帯電したトナーを付着させることによって、感光ドラム101上にトナー像を形成する。
転写ローラ105は、感光ドラム101に所定の当接圧にて圧接し、転写部(転写ニップ)を形成する。この転写部に転写材供給部(図示せず)から所定のタイミングで被転写媒体としての記録用紙などの転写材108が供給される。そして、感光ドラム101上のトナー像は、転写ローラ105の作用により、転写部に供給された転写材108の表面に転写される。この時、転写ローラ105には、転写電圧印加手段としての転写電源(図示せず)から、トナーの正規の摩擦帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性の転写電圧が印加される。
感光ドラム101上のトナー像の転写を受けた転写材108は、感光ドラム101の表面から分離されて、定着手段としての定着装置107に導入される。本実施例では、定着装置107は、転写材108を加熱及び加圧することによって、その上の未定着トナー像を転写材108に定着させる。トナー像の定着を受けた転写材108は、その後画像形成物として装置外へ排出される。
クリーナ106は、転写工程後に感光ドラム101上に残留したトナー(転写残トナー)をクリーニングする。本実施例では、クリーナ106は、感光ドラム101上の転写残トナーを、感光ドラム101の表面に当接して配置されたクリーニング部材としての弾性体ブレード(クリーニングブレード)によって掻き取り、回収トナー容器に回収する。
尚、例えば、感光ドラム101、帯電ローラ102、現像装置104及びクリーナ105を一体的にカートリッジ化して、画像形成装置の本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジ150を構成してもよい。プロセスカートリッジは、電子写真感光体と、電子写真感光体に作用するプロセス手段としての現像手段、帯電手段、クリーニング手段のうち少なくとも1つとを一体的にカートリッジ化し、画像形成装置の本体に対して着脱可能としたものである。又、画像形成装置の本体に対して着脱可能なカートリッジは、プロセスカートリッジに限定されるものではなく、少なくとも現像装置が画像形成装置本体に対して着脱可能とされていればよい。例えば、現像装置が単独で画像形成装置に対して着脱可能なカートリッジ(現像カートリッジ)とされていてもよい。
[現像装置]
次に、本実施例の現像装置104について更に説明する。
図2は、本実施例の現像装置104の概略断面を示す。本実施例の現像装置104は、磁性一成分系現像装置である。
現像装置104は、現像容器(現像装置本体)148を有する。現像容器148には、現像剤として磁性一成分現像剤(一成分系磁性現像剤)、即ち、磁性トナー粒子(磁性トナー)が収容される。又、現像容器148内には、以下説明するように、現像剤担持体としての現像スリーブ141、現像剤層厚規制手段147、現像剤搬送部材(攪拌翼)149a、撹拌部材(攪拌翼)149bの如き部材が配設されている。
静電潜像を担持する移動可能な像担持体としての感光ドラム101は、図示矢印β方向(時計回り)に回転する。又、現像剤を担持する移動可能な現像剤担持体としての円筒状部材である現像スリーブ141は、現像容器148に供給されたトナーを担持して図示矢印α方向に回転する。即ち、感光ドラム101と現像スリーブ141とは、対向部において互いの表面移動方向が順方向となるように回転駆動される。これによって、現像スリーブ141は、現像スリーブ141と感光ドラム101とが対向している現像領域γにトナーを搬送する。現像スリーブ141内には、トナーを現像スリーブ141上に磁気的に吸引し且つ保持するために、磁界発生手段としての磁石(マグネットローラ)142が配置されている。マグネットローラ142は、その周方向に沿って複数の磁極を有する。マグネットローラ142は、円筒状の現像スリーブ141の中空部内に、回転可能な現像スリーブ141に対して相対的に移動不可能に固定して配置されている。
現像スリーブ141とマグネットローラ142とで現像ローラ143が構成される。そして、この現像ローラ143と、詳しくは後述する現像剤層厚規制手段147と、を有して、静電潜像を現像するための現像手段が構成される。
本実施例の現像装置104で用いられる現像スリーブ141は、基体としての金属円筒管2上に被覆された樹脂被覆層1を有する。現像容器148の内部は、第1室148a、第2室148bに分割されている。第1室148a内のトナーは、攪拌搬送部材(攪拌翼)149aにより現像容器148の内壁及び仕切り部材148cにより形成される隙間(開口部)を通過して第2室148bに送られる。トナーはマグネットローラ142の発生する磁力の作用により、現像スリーブ141上に担持される。第2室148b内にはトナーが滞留するのを防止するための攪拌部材(攪拌翼)149bが設けられている。
トナーは、トナー粒子相互間及び現像スリーブ141上の樹脂被覆層1との摩擦により、感光ドラム101上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。この時、現像領域γに搬送されるトナーの層厚を規制するために、現像装置104には、現像剤層厚規制手段147が設けられている。現像剤層厚規制手段147は、現像剤層厚規制部材としてのシート状の可撓性部材から成る可撓性シート部材145と、支持部材としての可撓性シート保持部材146とを有する。そして、この現像剤層厚規制手段147は、可撓性シート部材145を現像スリーブ141に対して、トナーを介して、接触或いは圧接させている。
このようにして現像スリーブ141上に形成されるトナーの薄層の厚みは、現像領域γにおける現像スリーブ141と感光ドラム101との間の最小間隙よりも薄いことが好ましい。
尚、本発明は、上述のようなトナーの薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置において特に有効であるが、本発明は斯かる現像装置への適用に限定されるものではない。本発明は、現像領域γにおいて、磁性現像剤層の厚みが現像スリーブ141と感光ドラム101との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、所謂、接触型現像装置にも適用することができる。但し、説明の煩雑を避けるため、以下の説明は非接触型現像装置を例にとって行なう。
上記現像スリーブ141に担持されたトナーを飛翔させるため、現像スリーブ141には現像バイアス印加手段としての現像バイアス電源109により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用する場合には、静電潜像の画像部(トナーが付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ141に印加するのが好ましい。
現像された画像の濃度を高め、且つ、階調性を向上させるためには、現像スリーブ141に交番バイアス電圧を印加し、現像領域γに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、静電潜像の画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ141に印加するのが好ましい。
尚、図2は本発明を適用することができる現像装置の一例を模式的に示したものであり、当業者には容易に理解されるように、例えば、現像容器148の形状、攪拌翼149a、149bの有無、マグネットローラ142の磁極の配置などには様々な形態がある。
本発明者らは、現像剤に対する帯電の均一化及び安定化を図ることのできる現像装置について鋭意検討した結果、現像装置が次の構成を有することが有効であることを見出した。先ず、現像剤層厚規制手段は、少なくともシート状の可撓性部材から成る現像剤層厚規制部材と、該現像剤層厚規制部材を支持する支持部材と、を有し、現像剤担持体とのニップ部が、現像剤担持体回転方向の当接圧分布において極大値を複数有する構成とする。そして、現像剤担持体としては、その表面に樹脂被覆層を有し、該樹脂被覆層の表面粗さが特定の範囲にあるものを使用する。以下、更に詳しく説明する。
[現像剤層厚規制部材]
次に、本発明に従う現像剤層厚規制手段について説明する。
前述のように、現像剤層厚規制手段147は、現像剤層厚規制部材としての可撓性シート部材145と、支持部材としての可撓性シート保持部材146と、を有する。
図3(a)は、U字形状に保持された現像剤層厚規制部材としての可撓性シート部材145を現像スリーブ141に当接する前の状態を示している。又、図3(b)は、可撓性シート部材145を現像スリーブ141に所定の押し込み量で当接させた時の状態を示している。本実施例では、使用状態での可撓性シート部材145は、図3(b)に示す状態にある。
更に説明すると、可撓性シート部材145は、長手方向(現像スリーブ141の表面移動方向と略直交する方向)にわたって、短手方向(上記長手方向と略直交する方向)が湾曲するように折り曲げられることにより、U字形状を形成する。可撓性シート部材145は、その短手方向両端部を、可撓性シート保持部材146に形成された凹形状部146a内に挿入した状態で可撓性シート保持部材146によって保持される。この時、可撓性シート部材145には、長手方向に沿って曲げられた姿勢から復元しようとする復元力F−1が働く。そのため、可撓性シート部材145の短手方向両端部近傍の各面、即ち、支持受け部G1、G2が、可撓性シート保持部材146の凹形状部146aの内面の各支持部h1、h2に加圧当接する。これにより、可撓性シート部材145は、接着や他の部品による支持がなくても、可撓性シート保持部材146の凹形状部146aに安定して支持される。
尚、現像剤層厚規制手段147としての効果を発揮することができれば、可撓性シート部材145の可撓性シート保持部材146との当接部(支持受け部)のうち、両方、或いは片方のみを接着してもかまわない。
可撓性シート部材145としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、NBR(ニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン)の如きゴム弾性体やエラストマーを使用することができる。又、可撓性シート部材145と現像スリーブ141との当接条件(当接圧)は、可撓性シート部材145の先端位置での現像スリーブ141への押し込み量によって決めることができる。
次に、可撓性シート部材145と現像スリーブ141とのニップ部n内の圧力分布において、当接圧のピーク(極大値)が複数形成される理由を説明する。
尚、現像剤層厚規制部材と現像剤担持体とのニップ部(当接ニップ)nは、現像剤担持体の表面移動方向において、上流側の現像剤層厚規制部材と現像剤担持体との接触開始位置から、下流側の接触終了位置までの領域を言うものとする。当接圧の極大値が複数ある場合には、上記接触開始位置から接触終了位置までのニップ部n内において、現像剤層厚規制部材と現像剤担持体とが接触しない領域があってもよい。
現像スリーブ141をU字形状に支持された可撓性シート部材145に対して押し込むと、当該U字形状の可撓性シート部材145は、次のようにして現像スリーブ141に当接する。即ち、当該可撓性シート部材145と可撓性シート保持部材146の凹形状部146aとで中央部に画成された中空部分Zを有する状態で、当該可撓性シート部材145のU字形状に沿う方向の中間に位置する弾性部で現像スリーブ141と当接する。この時、可撓性シート部材145が変形することで弾性力が生じ、現像スリーブ141上のトナーの量を規制するための当接圧を確保することができる。即ち、この時、図3(a)に示すように、可撓性シート部材145は、そのU字形状に沿う方向の中間に位置する点P2において、現像スリーブ141からの加圧力F−2を受ける。
次いで、上述のように点P2において現像スリーブ141から押し込まれることにより、可撓性シート部材145の短手方向両端部は、可撓性シート部材145がU字形状から曲げられた姿勢から戻ろうとする復元力と同じ方向に広がろうとする。しかし、この時可撓性シート部材145は、可撓性シート保持部材146の凹形状部146aの内面の支持部h1、h2に規制される。
ここで、図4(a)に示すように、可撓性シート部材145がU字形状に保持された状態における円弧形状部分を切り出して考えてみる。この円弧形状部分は、破線で示す枠から外側へはみ出ることは概ねない。この理由は、可撓性シート保持部材146が可撓性シート部材145の短手方向両端部の広がりを規制しているためである。この破線で示す枠の幅Wは、凡そ可撓性シート保持部材146の凹形状部146aの幅(現像スリーブ141の表面移動方向の寸法)であり、一定値である。又、破線で示す枠の高さHは、現像スリーブ141の押し込み量が増加するに従って減少する。これに対して、切り出された可撓性シート部材145の円弧形状部分の長さは、通常、破線で示す枠サイズの変化に拘わらず一定に保たれる。
図4(b)に示すように、現像スリーブ141の押し込み量が小さい場合、現像スリーブ141により押し込まれた可撓性シート部材145は、斜線部の空間Sに変形して逃げることで円弧形状部分の長さを一定に保つことができる。
次に、図4(c)に示すように、現像スリーブ141の押し込み量が一定値を超えた場合は、斜線部の空間Sが狭くなるため、現像スリーブ141により押し込まれた可撓性シート部材145は、空間Sに変形して逃げることができない。この場合、可撓性シート部材145は、円弧形状部分の中間部分において、前述の中空部分Zに向かって変形することで、その円弧形状部分の長さを一定に保つ。この時、可撓性シート部材145の円弧形状部分には、可撓性シート保持部材146の支持部h1、h2から受ける反発力により、圧縮荷重が作用している。そして、この圧縮荷重が、可撓性シート部材145の円弧形状部分の中間部分において、座屈が起こる限界荷重を超えて、座屈が生じた状態で可撓性シート部材145は現像スリーブ141と当接している。
これにより、図3(b)に示すように、現像スリーブ141と可撓性シート部材145とのニップ部nにおいて、次のような3つの領域が存在することになる。先ず、現像スリーブ141の表面移動方向においてニップ部nの上流部に位置する第1の接点領域A1である。次に、現像スリーブ141の表面移動方向においてニップ部nの中央部に位置する、当接圧が低く、撓みVの生じた撓み領域A2である。更に、現像スリーブ141の表面移動方向においてニップ部nの下流部に位置する第2の接点領域A3である。
このような構成のニップ部nの圧力分布は、図5に示すようになる。即ち、現像スリーブ141の表面移動方向においてニップ部nの上流と下流に当接圧の極大値を有し、現像スリーブ141の表面移動方向においてニップ部nの中央部では当接圧の低い領域を有する。このように、2つの極大値を有する圧力分布が形成される。この上流と下流の極大値を示す領域は、それぞれ上記第1、第2の接点領域A1、A3に相当する。又、当接圧の低い領域は、上記撓み領域A2に相当する。撓み領域A2においては、可撓性シート部材145は、現像スリーブ141に相対的に低い当接圧で接触していても、現像スリーブ141から離間していてもよい。
尚、現像剤層厚規制手段147は、現像剤層厚規制部材として、図6に示したような無端形状、即ち、管状の可撓性部材から成る可撓性チューブ部材145aを用いるものであってもよい。更には、現像剤層厚規制手段147は、現像剤層厚規制部材として、図7(a)に示すように、予め撓み部Vを形成させておいた可撓性シート部材145bを図7(b)に示すように現像スリーブ141に当接させて用いてもかまわない。尚、図6、図7において、図3、図4を参照して説明した可撓性部材145におけるものと同様の部位には同じ符号を付している。
上述のように、本実施例では、可撓性部材から成る現像剤層厚規制部材と現像剤担持体とのニップ部nにおける、現像剤担持体の表面移動方向の当接圧分布には、極大値が複数存在する。そのため、現像容器内から現像剤担持体へフレッシュなトナーが供給された時に、現像剤層厚規制部材と現像剤担持体とのニップ部(規制部)nにおいてトナーが摩擦帯電付与を受ける機会が複数回となる。その結果、フレッシュなトナーであっても、現像領域γに到達するまでの間に、適正な帯電量を保持し易い。更に、現像剤層厚規制部材が現像剤担持体との間に形成するニップ部nの幅が広がるため、トナーへの摩擦帯電付与性がより優れている。
更に、現像剤層厚規制部材として可撓性部材を使用することで、撓み部でトナーの滞留に伴うトナーへの局所的なストレス増加を緩和することができるため、トナーの劣化の抑制にも有効に働く。
先述したように、スリーブゴーストのうちネガゴーストは、例えばベタ黒画像(最大濃度レベルの画像)を印字した場合、プリント方向に対して現像剤担持体の1周長分と比較して、2周長分以降の濃度が低下するという現象である。この現象は、予め現像剤担持体上に担持されていた現像剤が使用された後に、新たに現像剤担持体に供給されたフレッシュなトナーの帯電量が低いことに起因する。これは、トナーの帯電が未だ不安定な初期の段階などで起こり易い。しかし、上述の本発明に従う現像剤層厚規制部材を使用することにより、フレッシュなトナーへの摩擦帯電付与が十分に行なえるため、予め現像剤担持体上に担持されていたトナーと新たに供給されたトナーとの帯電量の差を小さく抑えることが可能になる。その結果、ネガゴーストの抑制を図ることができる。
一方、スリーブゴーストのうちポジゴーストは、ネガゴーストとは逆に、例えばベタ黒画像を印字した場合、プリント方向に対して現像剤担持体の1周長分の濃度が2周長分以降と比較して低くなるという現象である。この現象は、多数枚のプリントなど、印字枚数の増加に伴い悪化する傾向がある。これは、次のような事象に起因すると考えられる。即ち、摩擦帯電を過剰に受けたトナー(主として粒度分布の小さい側のトナー)が現像剤担持体の表面に鏡映力により強固に引き付けられ、不動状態を形成する。そのため、現像剤担持体の近傍の現像剤には適切な摩擦帯電がなされ難くなり、現像に供されるために必要な帯電量を保持するトナーの量が減少する。このポジゴーストを抑制するためには、現像剤担持体の表面に鏡映力により強固に引き付けられたトナーの滞留をなくすことが望まれる。上述の本発明に従う現像剤層厚規制部材を使用することにより、現像剤担持体の表面移動方向におけるニップ部nの上流側の第1の接点領域A1において、現像剤担持体に残っているトナーと新たに供給されたトナーとの「入れ替わり」の向上を図ることができる。更に、現像剤担持体の表面移動方向におけるニップ部nの下流側の第2の接点領域A3においては、現像剤担持体の表面に鏡映力により強固に引き付けられたトナーの「剥ぎ取り」性を向上することができる。特に、上述の構成を有する本発明に従う現像剤層厚規制部材を使用すると、ニップ部nの幅を広く保持することができるため、上記の効果がより顕著に発現される。
このように、上述のような構成を有する本発明に従う現像剤層厚規制部材を用いることで、スリーブゴーストの如き、トナーの帯電の不均一性に係わる問題の抑制へ大きく貢献できる。
しかしながら、現像剤層厚規制部材と現像剤担持体とのニップ領域nが広くなる分、現像剤担持体への負荷は増大することになる。そのため、長期の使用或いは高温高湿度環境下での使用時の如く、現像剤担持体上の現像剤担持量が低下し易いような場合は、現像スジなどの弊害が発生し易くなることがある。そこで、本願発明者らは鋭意検討した結果、上述のような構成の現像剤層厚規制部材を用いるだけの対策では十分ではなく、これに加えて、現像剤担持体からの対策が必要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本実施例の主要な目的は、安定的に現像剤担持体上のトナーの摩擦帯電量、担持量を適正とすることである。
又、本実施例のより詳細な目的の1つは、低湿度環境下においても安定した摩擦帯電能を有し、スリーブゴースト、或いは濃度ダウン、カブリ及び画質の悪化の如きトナーのチャージアップに伴う現像性の低下を抑制することである。又、これにより、均一で濃度ムラが無く、高画像濃度で且つ高精細な画像を安定して得ることも本実施例の目的の1つである。
又、本実施例のより詳細な目的の他の1つは、高湿度環境下において長期にわたり使用した場合でも、スリーブゴーストや現像スジの発生が抑制され、終始安定した画質を得ることである。
又、本実施例のより詳細な目的の他の1つは、微粒化トナーや球形化されたトナーを使用した場合でも、十分な画像濃度及び画質が得られ、且つスリーブゴーストを抑制することである。
[現像剤担持体]
次に、本発明に従う現像剤担持体の構成について説明する。
現像剤担持体の基体としては、例えば円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材があるが、像担持体に非接触の現像方法においては、金属のような剛体の円筒管若しくは中実棒が好ましく用いられる。本実施例では、現像剤担持体として、円筒状部材である現像スリーブが用いられる。尚、現像剤が磁性一成分タイプの時には、基体はアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮の如き非磁性の金属又は合金を円筒状に成型し、研磨、研削の如き処理を施したものが好適に用いられる。勿論、現像剤が非磁性一成分タイプの時には、非磁性の金属、合金に加えて、鉄、ニッケル、ステンレスの如き磁性を有するものを円筒状或いは円柱状にしたものも使用可能である。
これらの基体は画像の均一性を良くするために、高精度に成型或いは加工されて用いられる。例えば、基体の長手方向の真直度は、好ましくは30μm以下若しくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。現像剤担持体と像担持体との間隙の振れ、例えば、垂直面に対し均一なスペーサーを介して突き当て、現像剤担持体を回転させた場合の垂直面との間隙の振れも、好ましくは30μm以下若しくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。材料コストや加工のし易さから、基体2の材料としてはアルミニウムが好ましく用いられる。
又、弾性層を有する基体としては、芯材と、ウレタンゴム、EPDM、シリコーンゴムの如きゴムやエラストマーを含む層構成とを有する円筒部材を用いることができる。このような基体は、特に像担持体に現像剤担持体を直接接触させる現像方法の場合に好ましく用いられる。
図8〜図10は本発明に従う現像剤担持体の断面を模式的に示す。
図8は、樹脂被覆層1が金属製の円筒管から成る基体2上に形成されている様子を示す模式断面図であり、導電剤12が結着樹脂11中に分散されている形態を表している。この導電剤12は、樹脂被覆層1の表面への導電性付与、トナーに対する離型性及びトナーへの帯電付与性の如き特性向上に寄与する。
図9は、結着樹脂11中に導電剤12に加えて固体粒子13を更に添加することで、樹脂被覆層1の表面の導電性や潤滑性を高めた形態を表している。固体粒子13としては、例えば黒鉛化粒子、固体潤滑剤がある。又、固体粒子13に樹脂被覆層1の表面の凹凸付与形成の如き機能を持たせても良い。
図10は、樹脂被覆層1の表面に凹凸を形成して表面粗さを制御するために、結着樹脂11中に、更に球状の凹凸形成粒子14が添加された形態を表している。この形態によれば、例えば凹凸形成粒子14の粒径及び添加量によって樹脂被覆層1の表面の凹凸を更に制御し易い。このような現像剤担持体の構成は、現像剤層厚規制部材が現像剤担持体の表面に(トナー粒子を介して)圧接されるタイプの現像装置に用いる場合に有効である。即ち、樹脂被覆層1の表面の凹凸形成粒子14により現像剤層厚規制部材の圧接力を規制し且つ導電剤12は小さな凹凸を形成して、トナー粒子と樹脂被覆層1との摩擦帯電の機会やトナー粒子との離型性を調整する役割も果たす。図10は、固体粒子13と凹凸形成粒子14の双方が樹脂被覆層1の表面の凹凸形成に寄与している形態を表している。このような形態は、例えば、凹凸形成粒子14に凹凸形成以外に導電性や摩擦帯電付与性及び耐摩耗性の如き別の機能を持たせようとした場合に実施される場合がある。
本発明に従う現像剤担持体は、基体2の表面に少なくとも樹脂被覆層1を有し、この樹脂被覆層1の表面の初期摩耗高さRpkが0.2μm以上6.0μm以下、且つ、最大山高さRpが1.0μm以上10.0μm以下であることを特徴とする。本発明者らは、斯かる構成の現像剤担持体を用い、更に上述のような特異な構成を有する本発明に従う現像剤層厚規制部材を併用することによって、様々な環境下においてもスリーブゴーストや現像スジの発生もなく終始良好な現像性が得られることを見出した。
これまで表面粗さパラメータとしては、十点平均粗さRzjisや中心線平均粗さ(算術平均粗さ)Raが広く用いられてきた。しかし、上記RzjisやRaだけではスリーブゴーストや現像スジの発生との相関が明確に説明できないことが分かった。そこで、本発明者らは、粗さ測定により求められた粗さ曲線及び負荷曲線における「突出部」に着目し、そのパラメータ値がスリーブゴーストや現像スジと関連することを見出し、本発明を完成するに至った。
ここでいう初期摩耗高さRpkはJIS B0671に基づき測定される表面形状のパラメータである。図11に示す通り、測定より求められた負荷曲線(BAC)上で負荷長さ率(tp)の差が40%となるように2点(A,B)を取り、この2点A、Bを通る直線のうち、傾きの最も小さい直線を求め、この直線とtp0%との交点を点Cとする。点Cを通る切断レベルと負荷曲線との交点を点Dとし負荷曲線とtp0%の交点を点Eとする。このとき線分CD、線分CE、曲線DEで囲まれる面積と三角形CDFの面積が等しくなるようにtp0%上に点Fをとった際に、点Cと点Fの距離を初期摩耗高さRpkとするものである。
又、最大山高さRpはJIS B0601に基づき測定される表面形状のパラメータである。図12に示すように、粗さの測定曲線を基準長さ毎に区切り、各基準長さにおいて、平均線から最も高い山頂までの高さをZpiとし、このZpiの最大値をRpとするものである。
本発明に従う現像剤担持体は、樹脂被覆層1の表面の初期摩耗高さRpkが0.2μm以上6.0μm以下であり、且つ、最大山高さRpが1.0μm以上10.0μm以下であることを特徴とする。又、本発明に従う現像剤担持体では、樹脂被覆層1の表面の初期摩耗高さRpkは、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下であり、且つ、最大山高さRpは、より好ましくは2.0μm以上5.0μm以下である。初期摩耗高さRpkが0.2μm未満或いは最大山高さRpが1.0μm未満の場合は、現像剤担持体上に担持することのできるトナー量が少なくなり、良好な現像を行なうために必要なトナー量が得られなくなる。そのため、高画像濃度及び高画質を得ることができなくなるばかりでなく、現像剤担持体への負荷も大きくなり、その結果現像スジの如き弊害が発生する場合がある。又、初期摩耗高さRpkが6.0μmを超える場合或いは最大山高さRpが10.0μmを超える場合は、現像剤担持体上の樹脂被覆層1の表面に突起が多く発現している。そのため、プリントを続行するのに伴い、この突起部に大きな負荷がかかり、この突起部を起点として現像剤担持体の周方向にスジが発生し、その結果画像不良をもたらすことがある。
又、本発明に従う現像剤担持体は、樹脂被覆層1の表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが0.10以上0.35以下であることが好ましい。二乗平均平方根傾斜RΔqはJIS B0601に基づき測定される表面形状のパラメータであり、図13に示すように、粗さ曲線上で、基準長さにおける局部傾斜dZ(x)/dxの二乗平均平方根として表記される値で、下記式(2)により算出される。
RΔqが0.10未満の場合は、現像剤担持体の樹脂被覆層1の表面が平滑になり過ぎ、現像剤担持体に担持搬送されるトナー量が少なくなるため、現像性が低下することがある。又、RΔqが0.35を超える場合は現像剤担持体の樹脂被覆層表面に鋭利な凸部が多く存在しているため、この凸部を起点とした現像スジの発生の如き問題が発生する場合がある。
以上説明したように、本発明に従う現像剤担持体は、基体2の表面に少なくとも樹脂被覆層1を有し、この樹脂被覆層1の表面の粗さパラメータが特定の範囲にあることを特徴としている。これを達成するためには、下記に説明するような樹脂被覆層1を構成する材料を適宜選択することが好ましい。
但し、樹脂被覆層1の形成後、砥粒の付着した帯状研磨材による樹脂被覆層1の表面研磨の如き表面処理を行ない、粗さを調整してもかまわない。或いは、樹脂被覆層1の形成前の基体2の表面に、ブラスト処理やホーニング処理の如き従来公知の方法で、予めある程度の粗さを付与し、その表面に樹脂被覆層1を形成するという手法を用いてもかまわない。
一例として、砥粒の付着した帯状研磨材による現像剤担持体の磨き加工について説明する。
図14は樹脂被覆層1の表面の磨き加工装置の一例の断面を模式的に示したものである。現像スリーブ141を図中時計方向或いは反時計方向に回転させ、帯状研磨材3を送り出しローラ4から繰り出しながら現像スリーブ141に圧接させ、巻取ローラ5へ向けて矢印δの向きに移動させる。この際に帯状研磨材3は、現像スリーブ141との当接位置で現像スリーブ141の表面の樹脂被覆層1を摺擦する。
帯状研磨材としては、酸化アルミニウム、シリコンカーバイト、酸化クロム、ダイヤモンドの如き比較的高硬度の微粒子をポリエステルの如きフィルムに塗布・固定したものを用いることができる。又、これら研磨粒子の粒度としてはJIS R 6001において#800以上のものが好ましい。粒度が#800未満(粗過ぎるもの)では、現像剤担持体の樹脂被覆層1の表面粗さが不均一になり易い。
又、本発明に従う現像剤担持体は、樹脂被覆層1の表面のISO/FDIS14577に規定されるユニバーサル硬さHUを測定したときに、その平均値HUAが300N/mm2以上800N/mm2以下であることが好ましい。即ち、300N/mm2≦HUA≦800N/mm2の関係を満たすことが好ましい。
樹脂被覆層1の表面のユニバーサル硬さHUの平均値HUAが300N/mm2未満である場合は、樹脂被覆層1の耐摩耗性が十分でないため、使用量の増加に伴い樹脂被覆層1が削れ易くなる。その結果、耐久使用の後期での現像性の低下や現像スジの発生をもたらす場合がある。又、この平均値HUAが800N/mm2を超える場合は、現像剤層厚規制部材の表面に摺擦キズがつき易くなり、これに伴い画質などとして現れる現像性の低下、或いは現像スジの発生を招く場合がある。
又、現像剤担持体上に形成される樹脂被覆層1の体積抵抗値は、104Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは103Ω・cm以下である。これにより、チャージアップによるトナーの現像剤担持体上への固着や、トナーのチャージアップに伴って生じる現像剤担持体の表面からトナーへの摩擦帯電付与不良をより良好に防ぐことができる。現像剤担持体の表面の樹脂被覆層1の体積抵抗値が104Ω・cmを超えるとトナーへの摩擦帯電付与不良が発生し易く、その結果、ブロッチ(斑点画像や波模様画像)や画像濃度低下が発生し易い。
樹脂被覆層1の抵抗値を上記の値に調整するためには、下記に挙げる導電性付与粒子(導電剤)12を樹脂被覆層中に含有させることが好ましい。即ち、この導電性付与粒子12としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀の如き金属の微粉末、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウムの如き導電性金属酸化物、各種カーボンファイバー、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックの如き導電性カーボンブラック、更には金属繊維が好ましい。
これらのうち、導電性カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与し、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電度を得ることができるため好適に用いられる。又、塗料にした場合のチキソ性効果により分散安定性・塗工安定性も良好となる。
又、導電性カーボンブラックの添加量は、その粒径によっても異なるが、結着樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では樹脂被覆層1の抵抗値を所望のレベルに下げることは通常困難であり、又、樹脂被覆層1に用いた結着樹脂に対してトナー付着が発生する可能性が高い。100質量部超であると、樹脂被覆層の強度(摩耗性)が低下することがある。
更に、上記導電性付与粒子12に加えて、樹脂被覆層1の被膜強度アップや樹脂被覆層1の表面の潤滑性の向上を図る目的で、樹脂被覆層1中に固体粒子13としての黒鉛化粒子が含有されていることが好ましい。更に、この黒鉛化粒子は、黒鉛化度p(002)が0.20以上0.95以下であることが好ましい。即ち、0.20≦p(002)≦0.95の関係を満たすことが好ましい。
黒鉛化度p(002)とは、Franklinのp値といわれるもので、黒鉛化粒子のX線回折図から得られる黒鉛の格子間隔d(002)から、下記計算式(3)で求められる。このp(002)値は、炭素の六方網目平面の積み重なりのうち、無秩序な部分の割合を示すもので、この値が小さいほど黒鉛化の程度が大きい。
d(002)=3.440−0.086(1−p2) (3)
黒鉛化粒子のp(002)が0.95を超える場合は、耐摩耗性には優れているが、導電性や潤滑性が低下してトナーのチャージアップを誘発する場合がある。そのため、スリーブゴースト、カブリ、画像濃度の如き画質が悪化し易くなり、更に現像スジ・濃度ムラが発生し易くなる場合がある。又、このp(002)が0.20未満である場合は、黒鉛化粒子が耐摩耗性に劣るため、樹脂被覆層1の表面の耐摩耗性、樹脂被覆層の機械的強度が低下する場合がある。このように黒鉛化粒子のp(002)を特定の範囲とすることで、良導電性、高潤滑性を有すると共に、樹脂被覆層の機械的強度の低下を防止し、樹脂被覆層の選択的な削れを抑制することができ、更なる高耐久性化を図ることができる。
使用できる黒鉛化粒子としては、グラファイト、及びメソカーボンマイクロビーズ又はバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛化粒子が挙げられる。
このうち、グラファイトは、天然黒鉛、人造黒鉛が知られている。人造黒鉛は、例えばピッチコークスをタールピッチにより固めて1200℃位で一度焼成してから黒鉛化炉に入れ、2300℃位の高温で処理することにより、炭素の結晶が成長して黒鉛に変化して成るものである。天然黒鉛は、長い間の天然の地熱と地下の高圧によって完全に黒鉛化したものが地中より産出するものである。これらの黒鉛は、種々の優れた性質を有していることから工業的に広い用途を持っている。黒鉛は、暗灰色ないし黒色の光沢のある非常に柔らかい滑性のある結晶鉱物で、例えば鉛筆に利用され、その他耐熱性、化学的安定性、潤滑性、耐火性に優れるため、電気材料の如き材料に粉末や固体や塗料の形で利用されている。結晶構造は六方晶とその他菱面晶系に属するものがあり、完全な層状構造を有している。電気的特性に関しては、炭素と炭素の結合の間に自由電子が存在し、電気の良導体となっている。更にグラファイトは、構造的な性質の一つである「劈開性」に見られるように結晶構造に異方性がある。これによって、グラファイトは、樹脂被覆層1の表面に出現させた場合に、その表面に潤滑性を付与させることが可能であることからも、好ましい材料である。
又、黒鉛化粒子としては、メソカーボンマイクロビーズ又はバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛化粒子を使用することが好ましい。この黒鉛化粒子は、上記グラファイトとは、原材料及び製造工程が異なる。そのため、この黒鉛化粒子は結晶性グラファイトより黒鉛化度は若干低いものの、結晶性グラファイトと同様に高い導電性や潤滑性を有している。更に、この黒鉛化粒子は、粒子の形状が結晶性グラファイトの燐片状或いは針状とは異なり塊状若しくは概略球状であり、しかも粒子自身の硬度が比較的高いのが特徴である。従って、斯かる特性を有するこの黒鉛化粒子は、樹脂被覆層1中で均一に分散し易くなるため、均一な表面粗度と耐摩耗性を樹脂被覆層1の表面に与えることができる。更には、粒子自身の形状が変化し難いため、樹脂被覆層の削れ、或いはその影響による粒子自身の脱落が生じたとしても、樹脂被覆層1中から粒子が再度突出或いは露出してくることもあり、表面形状の変化を小さく抑えることができる。そのうえ、現像剤担持体の表面の樹脂被覆層1中にこの黒鉛化粒子を配すると、トナーのチャージアップを抑制して、結晶性グラファイトを用いた場合よりもトナーへの摩擦帯電付与性能を向上することが可能となる。従って、この黒鉛化粒子は、樹脂被覆層1の表面粗さ及び硬さを上述のような本発明に従う範囲に収めるためには、より好ましい材料だと言える。
通常、沸点が500℃以上の有機化合物は、常圧下、不活性気相中で加熱すれば固相又は液相を経由して炭素化されるが、200℃付近までの温度で分解を始め、残留物中では環化が起き、次いで400℃までの間に芳香族化する。この温度を越すと、芳香族同士の重縮合が進む。中でも縮合多環芳香族やそれらの混合物であるピッチ類の如く、この温度で液状を示すものは、400℃以上で縮合多環芳香族の平面分子から成る液晶状態をつくる。この液晶のことをメソフェーズと呼ぶ。メソフェーズは500℃までの間で更に高分子化が進んで層状構造を作ったまま固化する。この層状構造は、選択的な配向性の高いものであり、高温処理で黒鉛化になり易い性質を有している。
従って、原材料としてメソカーボンマイクロビーズやバルクメソフェーズピッチ粒子のような光学的に異方性で、しかも単一の相から成る粒子を用いて黒鉛化する。これによって、黒鉛化粒子の結晶性を高め、且つ、塊状若しくは概略球状の形状を保持させることができる。上記の原材料の光学的異方性は、芳香族分子の積層から生じるものであり、その秩序性が黒鉛化処理で更に発達し、高い結晶性を有する黒鉛化粒子が得られる。
メソカーボンマイクロビーズを得る方法として代表的なものを挙げれば、例えば、次の通りである。石炭系重質油又は石油系重質油を300℃〜500℃の温度で熱処理し、重縮合させて、粗メソカーボンマイクロビーズを生成する。反応生成物を濾過、静置沈降、遠心分離の如き処理に供することによりメソカーボンマイクロビーズを分離した後、ベンゼン、トルエン、キシレンの如き溶剤で洗浄し、更に乾燥することによってメソカーボンマイクロビーズを得る。
メソカーボンマイクロビーズを用いて黒鉛化する方法としては、先ず、乾燥を終えたメソカーボンマイクロビーズを、破壊させない程度の温和な力で機械的に一次分散させておくことが、黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。
この一次分散を終えたメソカーボンマイクロビーズは、不活性雰囲気下において200℃〜1500℃の温度で一次加熱処理され、炭化される。
一次加熱処理を終えた炭化物は、やはり炭化物を破壊させない程度の温和な力で炭化物を機械的に二次分散させることが、黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。
この二次分散処理を終えた炭化物は、不活性雰囲気下において2000℃〜3500℃で二次加熱処理することにより、所望の黒鉛化粒子が得られる。
バルクメソフェーズピッチ粒子を得る方法としては、例えば、コールタールピッチから溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行うことによって得る方法がある。更に、この重質化処理後、微粉砕し、次いでベンゼン又はトルエンの如き溶剤により溶剤可溶分を除去することで得ることもできる。得られたバルクメソフェーズピッチ粒子は、キノリン可溶分が95質量%以上であることが好ましい。即ち、キノリン可溶分が95質量%未満であるものは粒子内部が液相炭化しにくく、固相炭化するため粒子が破砕状のままとなり、球状のものが得られないことがある。
バルクメソフェーズピッチ粒子を用いて黒鉛化する方法としては、先ず、バルクメソフェーズピッチ粒子を2μm〜25μmに微粉砕して、これを空気中にて200℃〜350℃で熱処理して、軽度に酸化処理する。この酸化処理によって、バルクメソフェーズピッチ粒子は表面のみ不融化され、次工程の黒鉛化熱処理時の溶融、融着が防止される。この酸化処理されたバルクメソフェーズピッチ粒子は酸素含有量が5質量%〜15質量%であることが好ましい。5質量%未満であると熱処理時の粒子同士の融着が促進されることがあり、又15質量%を超えると粒子内部まで酸化され、形状が破砕状のまま黒鉛化し、球状のものが得られ難い場合がある。
最後に酸化処理したバルクメソフェーズピッチ粒子を窒素、アルゴンの如き不活性雰囲気下にて、2000℃〜3500℃で熱処理することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。
このように、本発明に従う現像剤担持体の樹脂被覆層1中には、好ましくは、バルクメソフェーズピッチ粒子を黒鉛化して得られた黒鉛化粒子が少なくとも含有されている。或いは、本発明に従う現像剤担持体の樹脂被覆層1中には、好ましくは、メソカーボンマイクロビーズ粒子を黒鉛化して得られた黒鉛化粒子が少なくとも含有されている。
上記いずれの原材料を用いた黒鉛化粒子の生成方法においても、黒鉛化粒子の最終焼成温度は2000℃〜3500℃が好ましく、2300℃〜3200℃がより好ましい。
焼成温度が2000℃以下の場合は、黒鉛化粒子の黒鉛化が不十分であり、導電性や潤滑性が低下してトナーのチャージアップを発生する場合がある。そのため、スリーブゴースト、カブリ、画像濃度の如き画質が悪化し易くなり、更に現像スジ・濃度ムラの如き弊害が発生し易くなる場合がある。一方、焼成温度が3500℃以上の場合は、黒鉛化粒子の黒鉛化の程度が高くなり過ぎる場合がある。そのため、黒鉛化粒子の硬度が下がり、黒鉛化粒子の耐摩耗性の悪化により樹脂被覆層1の表面の耐摩耗性、樹脂被覆層1の機械的強度及びトナーへの摩擦帯電付与性が低下することがある。
又、上記のいずれの原材料から得られた黒鉛化粒子であっても、いずれの製法で得られたかに拘わらず、分級により粒度分布をある程度均一にしておくことが、樹脂被覆層1の表面形状を均一にするために好ましい。
又、この黒鉛化粒子は、体積平均粒径が0.5μm〜30μmであることが好ましく、1μm〜25μmであることがより好ましい。体積平均粒径が0.5μm未満の場合には、樹脂被覆層1の表面に均一な粗さを付与する効果と摩擦帯電性能を高める効果が少なく、トナーへの迅速且つ均一な摩擦帯電が不十分となり易くなる。それと共に、樹脂被覆層1の摩耗によるトナーのチャージアップの発生、ゴーストの悪化、画像濃度低下の如き弊害を生じ易くなる。体積平均粒径が30μmを越える場合には、樹脂被覆層1の表面の均一化を図ることが困難になり、上述のような本発明に従う範囲内に表面粗さを制御し難くなる。又、表面粗さが大きくなり過ぎ、トナーへの摩擦帯電付与が十分に行なわれ難くなると共に、樹脂被覆層1の機械的強度が低下することもある。
本発明に従う現像剤担持体では、樹脂被覆層1の表面に凹凸を形成するために、樹脂被覆層1中に凹凸形成粒子14を含有させることが可能である。この凹凸形成粒子14としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンの如きビニル系重合体や共重合体、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂の如き樹脂粒子、アルミナ、酸化亜鉛、シリコーン、酸化チタン、酸化錫の如き酸化物粒子、炭素化粒子、導電処理を施した樹脂粒子などの導電性粒子がある。又、耐摩耗性や導電性、疎水性の如き機能を付与する目的で、この粒子の表面に金属酸化物の如き無機微粉末を付着させてもよい。
凹凸形成粒子14は、球状であることが好ましい。これは、不定形粒子に比べてより少ない添加量で所望の表面粗さが得られると共に、表面形状の均一な凹凸面が得られるため、樹脂被覆層1の表面粗さを上述のような本発明に従う範囲に収め易くなるためである。そのため、凹凸形成粒子14としては、粒子の長径/短径の比が1.0〜1.5、好ましくは1.0〜1.2、特に好ましくは真球状の粒子を使用することがよい。球状粒子の長径/短径の比が1.5を超えると、樹脂被覆層1中への球状粒子の分散性が低下したり、樹脂被覆層1の表面形状が不均一になり、表面粗さが上述のような本発明に従う範囲内から外れたりする場合がある。
凹凸形成粒子14としては、これらの中でも、特に現像剤担持体上の樹脂被覆層1の強度の向上の機能をも付与させたい場合には、特開平08−240981号公報に記載されるような導電性球状粒子を用いることがより好ましい。
又、凹凸形成粒子14は、体積抵抗値が107Ω・cm以下、より好ましくは10-3Ω・cm〜106Ω・cmの粒子であることが好ましい。凹凸形成粒子14の体積抵抗値が107Ω・cmを超えると、摩耗によって樹脂被覆層1の表面に露出したその粒子を核としてトナーの汚染や融着を発生し易くなると共に、迅速且つ均一な帯電が行われ難くなることがある。又、凹凸形成粒子14の真密度は、3g/cm3以下であることがより好ましい。導電性であっても、粒子の真密度が高過ぎる場合、同じ粗さを形成するために添加量を増やさなければならない。又、粒子の真密度が高過ぎる場合、樹脂又は樹脂組成物と真密度差が大きくなるため、製造時の粒子の分散状態が不均一となり易く、従って形成された樹脂被覆層1においても分散状態が不均一になることがある。又、粒子が球状であると、現像剤担持体に圧接される現像剤層厚規制部材などとの接触面積が低減されるので、例えば摩擦力による現像剤担持体の回転トルクの増加や、トナーの付着を軽減することができるのでより好ましい。
更に、凹凸形成粒子14の粒径は、体積平均粒径で0.3μm〜30μmであることが好ましい。凹凸形成粒子14の体積平均粒径が0.3μm未満の場合には、現像剤担持体の表面粗さを大きくしようとした場合に、凹凸形成粒子14の添加量が過大になり、樹脂被覆層1が脆くなり、耐摩耗性が低下することがある。逆に、凹凸形成粒子14の体積平均粒径が30μmより大きくなると、現像剤担持体の表面の均一な凹凸の形成が難しくなり、現像剤担持体の表面粗さを上述のような本発明に従う数値範囲内に収めることが困難になることがある。又、凹凸形成粒子14が現像剤担持体の表面から突出し過ぎるため、トナー層の厚みが大きくなり過ぎて現像剤の帯電が低下したり、不均一になったりし易く、バイアスをかけた際に像担持体へリークするポイントになる場合がある。
樹脂被覆層1の摩擦帯電付与能をコントロールするために、樹脂被覆層1中に荷電制御剤を添加することが好ましい。負荷電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類がある。
これらの荷電制御剤の中でも、特に球形化度の高いトナーを用いる場合は、例えば特開平10−326040号公報に記載されているような、鉄粉に対して正帯電性である第4級アンモニウム塩化合物を樹脂被覆層1中に含有させることが好ましい。このとき、樹脂被覆層1は、樹脂構造中にアミノ基、=NH基、又は−NH−結合の少なくともいずれかを有することが、球形化度の高いトナー粒子への良好な帯電付与性の点で更に好ましい。
現像剤担持体上に、上記の第4級アンモニウム塩化合物を含有する樹脂被覆層1を設けることで、球形化度の高いトナー粒子の過剰帯電を防ぐ方向に働き、トナーへの摩擦帯電付与をコントロールすることができる。これにより、現像剤担持体上での現像剤のチャージアップを防ぎ、樹脂被覆層1の表面にトナー粒子の融着が発生し難くトナーの高帯電安定性を保持でき、その結果、環境安定性及び長期安定性を有する高精細画像を提供することが可能となるので好ましい。
この明確な理由は定かではないが、それ自身が鉄粉に対して正帯電性である第4級アンモニウム塩化合物は、添加されると次のようになるものと考えられる。即ち、構造中に−NH2基、=NH基又は−NH−結合の少なくとも1つを含む樹脂中に均一に分散され、更に、被覆を形成する際に樹脂の構造中に取り込まれるようになる。そして、アンモニウムイオンのカウンターイオンの摩擦帯電極性が発現するようになり、その結果、このような化合物を有する樹脂被覆層1が負帯電性を持つようになるものと考えられる。
樹脂被覆層1は、上記アンモニウムイオンのカウンターイオン中に硫黄元素がスルホン酸基の形で含有されることによって、負帯電性を高めることができる。
好適に使用される、上記機能を有する第4級アンモニウム塩化合物としては、鉄粉に対して正帯電性を有するものであればよいが、例えば、下記一般式1で表される化合物が挙げられる。
一般式1におけるX-の酸イオンの具体例としては、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機リン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、モリブデン原子或いはタングステン原子を含むヘテロポリ酸イオンが挙げられる。但し、このX-の酸イオンは、前述したようにスルホン酸基を含有していることがより好ましい。
好適に用いられる、それ自身が鉄粉に対して正帯電性である第4級アンモニウム塩化合物としては、具体的には、以下の表1〜3に示すようなものが挙げられるが、勿論、これらに限定されるものではない。
尚、本発明に従う現像剤担持体を構成する樹脂被覆層1の結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂の如き熱或いは光硬化性樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂の如き熱可塑性樹脂を使用することができる。中でもフェノール樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような機械的性質に優れたものを使用することで、樹脂被覆層1の高耐久性を付与することができる。
特に、上記第4級アンモニウム塩との組み合わせで、構造中に−NH2基、=NH基若しくは−NH−結合の少なくとも1つを含む好ましい樹脂として、次のものが挙げられる。例えば、その製造工程において触媒としてアンモニアの如き含窒素化合物を用いて製造されたフェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドを硬化剤として用いたエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、或いはこれらの樹脂を一部に含んだ共重合体である。これら被覆樹脂との混合物の成膜時に第4級アンモニウム塩化合物が被覆樹脂の構造中に容易に取り込まれる。
又、正帯電させるための物質としては次のようなものがある。ニグロシン及び脂肪酸金属塩などによる変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩などのオニウム塩及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、例えば燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物がある);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドの如きジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物である。
この中でイミダゾール化合物は樹脂被覆層1中での分散性に優れ、樹脂被覆層1に適度な正帯電性を付与することができるため、好ましい。
特に、イミダゾール化合物の中でも、下記一般式2又は一般式3で示されるイミダゾール化合物がトナーの迅速且つ均一な帯電性及び樹脂被覆層1の強度の点でより好ましい。
又、極性基を有するモノマーをベースモノマーに共重合させ適当な分子量に重合させたポリマーを樹脂被覆層1に添加し、樹脂制御剤として用いることも可能である。
例えば、負帯電性の樹脂制御剤としては、少なくともビニル重合性単量体とスルホン酸含有アクリルアミド系単量体との共重合体が挙げられる。より詳しくは、例えばビニル重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)クリレート、エチル(メタ)クリレート、プロピル(メタ)クリレート、n−ブチル(メタ)クリレート、iso−ブチルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)クリレート、ジメチル(アミノ)エチルメタクリレート、ジエチル(アミノ)メタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルであり、これらは単独で、若しくは2種以上の混合で使用することができる。好ましくはスチレンとアクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルとの組み合わせが挙げられる。
又、スルホン酸含有アクリルアミド系単量体としては、例えば2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ヘキサンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−オクタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ドデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2,2,4−トリメチルペンタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルフェニルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(4−クロロフェニル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−カルボキシメチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(2−ピリジル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−デカンスルホン酸、2一メタクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸を挙げることができる。好ましくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。
更に、正帯電性の樹脂制御剤としては、少なくともビニル重合性単量体と含窒素ビニル単量体との共重合体が挙げられる。より詳しくは、含窒素ビニルモノマーの代表例としては、例えば、p−ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートがあり、更に、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルベンズイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピペリジン、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルインドールなどの含窒素複素環式N−ビニル化合物がある。特に、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートの如き下記一般式4に示される含窒素ビニルモノマー、又は4級アンモニウム基含有ビニルモノマーを用いることが好ましい。
4級アンモニウム基含有ビニルモノマーとしては、ビニル重合性モノマーと共重合可能なものであれば特にその構造は限定されるものではない。より好ましい4級アンモニウム基含有ビニルモノマーとしては、下記一般式5に示される4級アンモニウム基含有ビニルモノマーがある。
本発明に従う現像剤担持体の表面の樹脂被覆層1の表面粗さは、一般的には、JIS B0601−2001に規定の中心線平均粗さ(算術平均粗さ)Raでは、0.3μm〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.3μm未満の場合には、トナーの十分な搬送性が得られず、トナー不足による画像濃度薄や、トナーの過剰な帯電による飛び散りやブロッチの如き問題が発生し易い。又、Raが3.5μmより大きい場合には、トナーへの摩擦帯電付与が不均一となり、スジむらや、反転カブリ、摩擦帯電不足による画像濃度薄の如き問題が発生し易い。
更に、本発明に従う現像剤担持体の表面へのトナーの付着をより軽減化するため、樹脂被覆層1中に固体粒子13としての固体潤滑剤を混合させることもできる。この際に使用し得る固体潤滑剤として、例えば、二硫化モリブデン、窒化硼素、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石が挙げられる。又、これらの固体潤滑剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では樹脂被覆層1の結着樹脂表面に対するトナーの付着性の改善効果は少なく、100質量部を超えると、特にサブミクロンオーダーの粒度を有する微粉体が多く含まれる材料を用いた場合、樹脂被覆層1の強度(耐摩耗性)が低下することがある。又、これらの潤滑性粒子(固体潤滑剤)としては、体積平均粒径が好ましくは0.2μm〜20μm、より好ましくは1μm〜15μmのものを使用するのが良い。潤滑性粒子の体積平均粒径が0.2μm未満の場合には、潤滑性が十分に得られ難くなる。又、潤滑性粒子の体積平均粒径が20μmを越える場合には、樹脂被覆層1の表面の形状への影響が大きく表面性が不均一となり易く、トナーの均一な摩擦帯電付与、及び樹脂被覆層の強度の点で不十分になることがある。
樹脂被覆層1を形成する方法としては、例えば、各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、基体2上に塗工し、乾燥させることにより樹脂被覆層1を得る方法を用いることが可能である。各成分の分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。又、塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法が適用可能である。
以上説明したように、本発明に従う現像剤担持体は、基体2の表面に少なくとも樹脂被覆層1を有する。そして、本発明に従う現像剤担持体は、この樹脂被覆層1の表面の粗さ測定により求められた粗さ曲線及び負荷曲線における「突出部」を表現するパラメータ値が、特定の範囲内にあることが特徴である。言い換えれば、突出部の高さ、或いは突出部の平均線からの傾斜が比較的小さいような表面形状を有していることを特徴としている。これを達成するためには、上述して説明したような各種材料を用いることが好ましい。即ち、例えば、メソカーボンマイクロビーズ粒子又はバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛化粒子(体積平均粒径が0.5μm〜30μmで球状のものがより好ましい)を使用することが好ましい。又、例えば、長径/短径の比が1.0〜1.5で、体積平均粒径で0.3μm〜30μmの凹凸形成粒子を使用することが好ましい。しかし、その他の添加材料による影響なども考慮すると、これらに限定されるものではない。
[現像剤]
次に、現像剤について説明する。
トナーの結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、例えばビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。この中でも、特に、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
トナーの摩擦帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤を、トナー粒子に配合(内添)、又はトナー粒子と混合(外添)して用いることができる。これは、荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが可能となるためである。
例えば、正の荷電制御剤としては、ニグロシン、トリアミノトリフェニルメタン系染料、イミダゾール化合物の如き含窒素複素環化合物及び脂肪酸金属塩などによる変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドの如きジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレード、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレートを単独或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。
又、負の荷電制御剤としては、例えば有機金属化合物、キレート化合物が有効である。その例としては、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジタ−シャリ−ブチルサリチル酸クロムがあり、特にアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸或いはサリチル酸系の金属錯体又は塩が好ましい。
又、トナーが磁性トナーである場合、用いることのできる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niの如き金属、或いは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vの如き金属との合金、及びこれらの混合物などが挙げられる。
尚、上記磁性体に、着色剤としての役目を兼用させて使用してもかまわない。
トナーに使用し得る着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。
トナーには離型剤を使用することが好ましく、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、カルナバワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類が挙げられる。
トナーには、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ微粉体、酸化チタン、アルミナの如き無機微粉体を、外添すること、即ち、トナーの表面の近傍に存在させることが好ましい。特に、この中でも、シリカ微粉体が好ましい。上記無機微粉体以外の外添剤を更に加えて用いても良い。例えば、テフロン(登録商標)、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリフッ化ビニリデン、或いは酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウムの如き研磨剤がある。
尚、本実施例では、現像剤として実質的にトナー粒子(トナー)から成る一成分現像剤を用いる。より詳しくは、本実施例では、現像剤として、少なくとも結着樹脂及び磁性体粉末(磁性粉)を含有する磁性トナー粒子を含む磁性一成分現像剤を用いる。しかし、現像剤としては、トナー粒子(トナー)はキヤリア粒子(キャリア)と混合して二成分現像剤として用いることもできる。キヤリアの材料としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトの如き磁性体金属、及びそれらの合金、或いは希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト及びリチウム系フェライトの如きソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライトの如き鉄系酸化物、及びそれらの混合物、更には、ガラス、炭化ケイ素の如きセラミックス粒子、樹脂粉体、磁性体を含有する樹脂粉体を挙げることができ、通常は平均粒径が20μm〜300μm程度の粒状物として用いられる。
このようなキヤリアは、上記に挙げた粒状物を直接キヤリア粒子として用いても良い。或いは、キヤリアは、トナーの摩擦帯電電荷を調整したりキヤリアへのトナースペント(トナー付着)を防止したりするために、適宜、その粒子表面に樹脂コートを施して用いることもできる。このためには、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂の如きコート剤を用いることができる。
トナーを作成するには、次のような方法を用いることができる。即ち、結着樹脂、着色剤としての顔料又は染料、磁性体、離型剤、必要に応じて荷電制御剤、その他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミキサーの如き混合機により充分に混合する。次いで、この混合物を、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのごとき熱混練機を用いて溶融して樹脂類を互いに相溶せしめた中に離型剤、顔料、染料、磁性体を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行なうことで、トナー粒子を得ることができる。更に、必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサーなどの混合機により充分に混合し、トナーを得ることができる。
尚、トナー粒子のフロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下のトナー粒子における平均円形度は、0.950以上であることが好ましい。
このように種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。そのような方法としては、次のようなものがある。即ち、攪拌羽根又はブレード、及びライナー又はケーシングを有する装置で、例えば、トナーをブレードとライナーの間の微小間隙を通過させる際に、機械的な力により表面を平滑化したりトナーを球形化したりする方法がある。又、温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法や、熱気流中にトナーを曝し、球形化する方法などがある。又、球状のトナーを直接作る方法としては、水中にトナー結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー化する方法がある。一般的な方法としては、次のようなものがある。即ち、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、更に必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、離型剤、その他の添加剤を均一に溶解又は分散せしめて単量体組成物とする。その後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層、例えば水相中に適当な攪拌機を用いて適度な粒径に分散し、更に重合反応を行ない、所望の粒径を有する現像剤を得る方法である。
又、更なる高画質化のために、より微小な潜像ドットを忠実に現像するためには、トナー粒子の重量平均粒径は3μm〜10μmであることが好ましい。トナーの重量平均粒径が3μm未満の場合には、転写効率の低下から像担持体たる感光体上の転写残トナーが多くなり、接触帯電工程での感光体の削れやトナー融着の抑制が難しくなることがある。更に、トナー全体の表面積が増えることに加え、粉体としての流動性及び攪拌性が低下し、個々のトナー粒子を均一に摩擦帯電させることが困難となることから、カブリや転写性が悪化し易く、削れや融着以外にも画像の均一ムラの原因となり易い。又、トナーの重量平均粒径が10μmを超える場合には、文字やライン画像に飛び散りが生じ易く、高解像度が得られ難い場合がある。
[測定方法]
次に、本明細書における各種物性の測定方法について説明する。
(1)現像剤層厚規制部材と現像剤担持体とのニップ部nにおける圧力分布測定
圧力分布測定は、歪みゲージを利用することで当接圧の変化を電気信号をして検出することで行った。具体的には、次のようにして圧力分布を測定した。即ち、共和電業(株)製の歪みゲージKFG−02−120を現像剤担持体としての現像スリーブと同一直径の中空アクリルローラに設けた穴に貼り付ける。この時、歪みゲージの樹脂ベース部分の先端をアクリルローラの表面から0.1mm〜0.3mmの範囲ではみ出るように貼り付ける。又、歪みゲージのリード線をアクリルローラの中空部分から端部へ出すことによりローラを回転可能にする。上記歪みゲージを貼り付けたアクリルローラを現像剤層厚規制部材に当接させて回転させると、歪みゲージの樹脂ベース部分の先端が、現像剤層厚規制部材から受ける当接圧により変形する。これにより、当接圧の変化を歪みゲージ自身の歪み量の変化として電気信号で検出することができる。この時、電気信号のノイズを減らすため、現像剤層厚規制部材以外の、現像剤担持体と当接する部材は取り除いた。尚、電気信号の検出には共和電業(株)製のPCD−300Aを使用した。
又、現像剤層厚規制部材と現像剤担持体との接触領域であるニップ部nの全体としての当接圧(絶対値)は、次のようにして測定することができる。当接圧の測定は、薄膜のシート形状の圧力センサー(例えば、プレスケール;富士写真フイルム社製)を用いる方法が一般的であるが、当接圧が低く、一般的な圧力センサーでは測定が難しい場合には、次のようにして行うことができる。即ち、厚さ20μmのSUS304鋼帯のH材を三枚重ねにして、現像剤層厚規制部材と現像剤担持体との当接部に挿入し、当接面の接線方向に中央の薄板をバネ秤で引き抜き、そのときの引き抜き力を測定する。こうすることで、この圧力測定治具に既知の負荷をかけた場合の引き抜き圧測定による校正値と当接幅とから当接圧を求めることができる。
(2)樹脂被覆層の表面粗さの測定
樹脂被覆層1の表面粗さの測定は、JIS−B0601(2001)及びJIS−B0671(2001)に基づき行った。より具体的には、この表面粗さは、東京精密社製SURFCOM 1500DXを用い、測定条件はカットオフ0.8mm、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sとして、現像剤担持体の軸方向3点×周方向3点=9点について各々測定し、その平均値をとった。
(3)樹脂被覆層の表面のユニバーサル硬さHU
樹脂被覆層1の表面のユニバーサル硬さHUは、ISO/FDIS14577に準拠するフィッシャー・インストルメンツ社製のフィッシャースコープH100V(商品名)を用いる表面被膜物性試験から得られる硬さ値である。より具体的には、このユニバーサル硬さHUは、次のようにして求められる。即ち、対面角度が136°に規定されている四角錘のダイヤモンド圧子を使用し、測定荷重(試験荷重)F(単位:N)を段階的にかけて被硬さ測定試料に押し込んで行く。そして、荷重をかけた状態での圧子の押し込み深さ(最大押し込み深さ)h(単位:mm)を電気的に検出して読み取り、下記式(1)で計算することによって、ユニバーサル硬さHUの測定値が求められる。
HU=K×F/h2[N/mm2] (1)
ここで、上記式中のKは定数であり、1/26.43である。
測定用試料は、基体2の表面に樹脂被覆層1を形成した試料を用いるが、測定精度を向上させるためには、樹脂被覆層1の表面が平滑である方がよいので、研磨処理などの平滑化処理を施した後に測定することが更に好ましい。従って、ここでは、測定試料として、樹脂被覆層1の表面に♯2000の酸化アルミニウム微粒子を表面に担持したポリエステルフィルムを用いて研磨処理を施し、その研磨処理後の表面粗さRaが0.2μm以下になるように調整したものを測定した。
試験荷重F及び圧子の最大押し込み深さhは、樹脂被覆層1の表面の表面粗さの影響を受けず、且つ、下地の基体の影響を受けない程度の範囲が好ましいので、ここでは、圧子の最大押し込み深さhを1μm〜2μm程度になるよう試験荷重Fをかけて測定した。尚、測定環境は23℃、50%とし、測定回数は異なる測定点にて100回とし、その測定値による硬度分布から求めた平均値をHUAとした。
(4)黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)
黒鉛化度p(002)は、マックサイエンス社製の強力型全自動X線回折装置“MXP18”システムにより、黒鉛のX線回折スペクトルから得られる格子間隔d(002)を測定することで、下記計算式(3)で求めた。
d(002)=3.440−0.086(1−p2) (3)
尚、格子間隔d(002)は、CuKαをX線源とし、CuKβ線はニッケルフィルターにより除去している。標準物質に高純度シリコンを使用し、C(002)及びSi(111)回折パターンのピーク位置から算出した。主な測定条件は以下のとおりである。
X線発生装置: 18kW
ゴニオメータ: 横型ゴニオメータ
モノクロメータ: 使用
管電圧: 30.0kV
管電流: 10.0mA
測定法:連続法
スキャン軸: 2θ/θ
サンプリング間隔: 0.020deg
スキャン速度: 6.000deg/min
発散スリット: 0.50deg
散乱スリット: 0.50deg
受光スリット: 0.30mm
(5)黒鉛化粒子及び凹凸形成粒子の粒径測定
黒鉛化粒子及び凹凸形成粒子の粒径は、レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型或いはLS−230型粒度分布計(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としてはイソプロピルアルコールを使用する。イソプロピルアルコールにて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行した。
次にイソプロピルアルコール50ml中に界面活性剤3滴〜4滴を加え、更に測定試料を5mg〜25mg加えた。試料を懸濁した水溶液は超音波分散器で1分間〜3分間分散処理を行なって試料液とし、上記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行った。そして、得られた体積分布から算術した体積平均粒径を求めた。
(6)樹脂被覆層の体積抵抗値の測定
樹脂被覆層の体積抵抗値は、次のようにして測定した。100μmの厚さのPET(ポリエチレンテレフタレート)シート上に、現像剤担持体上の樹脂被覆層1を構成するものと同じ塗工液を用い、7μm〜20μmの厚さの被覆層を形成し、ロレスタAP(三菱油化(株)製)に4端子プローブを取り付けて測定した。尚、測定環境は20℃〜25℃、50%RH〜60%RHとした。
(7)粒子の体積抵抗値の測定
粒状試料を直径40mmφのアルミリングに入れ、2500Nで加圧成型し、抵抗率計ロレスタAP、又はハイレスタIP(共に、三菱油化(株)製)にて4端子プローブを用いて体積抵抗値を測定した。尚、測定環境は、20℃〜25℃、50%RH〜60%RHとした。
(8)凹凸形成粒子の真密度の測定
凹凸形成粒子の真密度は、乾式密度計アキュピック1330(島津製作所製)を用いて測定した。
(9)凹凸形成粒子の長径/短径の比
走査型電子顕微鏡FE−SEM(日立製作所(株)製 S−800)を用いて、6000倍で撮影し、写真上で粒子の長径及び短径を測定した。これを100サンプルについて測定し、その平均値を長径/短径の比とした。
(10)トナー粒子の平均円形度
トナー粒子の平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。ここでは、東亞医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定を行ない、3μm以上の円相当径の粒子群について測定された各粒子の円形度(Ci)を下記式によりそれぞれ求めた。
円形度(Ci)=(粒子数と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子の投影像の周囲長)
更に、下記式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義した。
尚、測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及びモード円形度の算出に当たって、次のような算出法を用いている。即ち、粒子を得られた円形度によって、円形度0.40〜1.00を0.010間隔で61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行なう算出法である。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の各値との誤差は非常に少なく、実質的には無視できる程度のものである。ここでは、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用して、一部変更した、上記測定装置におけるこのような算出法を用いている。
上記平均円形度とは、粒子の凹凸の度合いの指標であり、粒子が完全な球形の場合1.000を示し、粒子の表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
より具体的な測定方法としては、次のようなものを用いることができる。即ち、界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mlにトナー約5mgを分散させて分散液を調整する。そして、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000個/μl〜2万個/μlとして、上記装置により測定を行ない、3μm以上の円相当径を有する粒子の平均円形度を求めた。
測定の概略は、東亜医用電子社(株)発行のFPIA−1000のカタログ(1995年度6月版)、測定装置のマニュアルなどに記載されているが、以下のとおりである。
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
尚、この測定において3μm以上の円相当径の粒子群についてのみ円形度を測定する理由は、次の通りである。即ち、3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群も多数含まれるため、その影響によりトナー粒子群についての円形度が正確に見積もれないからである。
(11)トナー粒子の重量平均粒径
トナー粒子の重量平均粒径はコールターカウンター法を用いて行なったが、例えばコールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザーII、コールターマルチサイザーIII(いずれもベックマン・コールター社製)を用いることが可能である。電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(ベックマン・コールター社製)が使用できる。測定法としては、上記電解水溶液100ml〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml〜5ml加え、更に測定試料を2mg〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分〜3分間分散処理を行ない、上記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を算出した。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いた。
[具体例]
次に、より詳しい具体例を参照して、本実施例の効果について更に詳しく説明する。尚、以下に記載する配合における部数は、特に断りのない限り全て質量部である。
<<現像装置>>
以下に示す具体例では、現像装置として、Hewlett−Packard社製Laser Jet4350(商品名)のカートリッジを改造又は構成要素の一部を変更した磁性一成分系現像装置を用いた。より具体的には、以下に示すような現像装置D−1、D−2、D−3、D−4を用いた。
<現像装置D−1>
現像装置D−1では、現像剤層厚規制手段147は、次のような構成を有する。即ち、硬度がJIS−Aで70°のウレタンゴムで形成された、肉厚0.4mm、短手方向の長さ12.5mmの可撓性シート部材145を、幅5.0mmの可撓性シート保持部材146の凹部146aで受ける。この時の現像剤層厚規制手段147と現像スリーブ141との当接条件は、可撓性シート部材145の先端位置と現像スリーブ141の表面との仮想のオーバーラップ量である押し込み量が0.8mmになるように設定した。このように設定した場合、可撓性シート部材145の現像スリーブ141に対する当接圧が50kPaとなり、ニップ部n内の圧力分布としては、図5に示したような2つの当接圧の極大値を有する圧分布が形成された。
<現像装置D−2>
現像装置D−2では、上記現像装置D−1に対して、現像剤層厚規制手段147の構成を、次のように変更した。即ち、外径5mm、肉厚0.5mm、硬度がJIS−Aで60°のシリコーンゴムから成る可撓性チューブ部材145aと幅5.2mmの支持部材としての可撓性チューブ保持部材146の凹部146aで受ける。この時の可撓性チューブ部材145aと現像スリーブ141との当接条件は、可撓性チューブ部材145aの先端位置と現像スリーブ141の表面との仮想のオーバーラップ量である押し込み量が0.8mmになるように設定した。このように設定した場合、可撓性チューブ部材145aの現像スリーブ141に対する当接圧が50kPaとなり、ニップ部n内の圧力分布としては、図5に示したような2つの当接圧の極大値を有する圧分布が形成された。
<現像装置D−3>
現像装置D−3では、現像剤層厚規制手段147の構成は、基本的には現像装置D−1にて用いたものに準ずるが、次の点を変更した。即ち、可撓性シート部材145を、硬度がJIS−Aで75°のシリコーンゴムから成る、肉厚1.0mm、短手方向の長さ12.5mmとしたものに変更した。更に、可撓性シート部材145の先端位置と現像スリーブ141の表面との仮想のオーバーラップ量である押し込み量を0.3mmに設定し、当接圧を50kPaとした。現像装置D−3にて用いた可撓性シート部材141は、現像装置D−1にて使用したものと比較して肉厚が厚く且つ硬度が高いため、弾力性が高い。従って、U字形状に保持された可撓性シート部材145は、その湾曲面の曲率が現像スリーブ141に当接していない状態と殆ど変わらない状態で現像スリーブ141の表面に当接される。尚、この場合は可撓性シート部材141の座屈は生じないため、現像スリーブ141との当接部における圧力分布には、ニップ部nの中央部の当接圧を最大とする極大値が1つ形成されるのみであった。
<現像装置D−4>
現像装置D−4は、図17に示すように、Hewlett−Packard社製Laser Jet4350(商品名)のカートリッジの構成を、次のような形態に替えたものである。即ち、現像装置D−4では、現像剤層厚規制手段147は、板状の弾性部材からなる規制ブレード245を有する。つまり、現像容器148に固定された厚さ1.2mmの鉄板から成る支持板金246に、厚さ1.1mmで硬度がJIS−Aで65°のウレタンゴムの板(規制ブレード)245の片側を接着し、その対向部の腹面を現像スリーブ141に当接させる。又、現像スリーブ141のウレタンゴムに対する押し込み量は2mmとした。現像装置D−4では、規制ブレード245と現像スリーブ141との当接部における圧力分布には、ニップ部nの中央部の当接圧を最大とする極大値が1つ形成されていた。
<<現像剤担持体の表面の樹脂被覆層>>
<結着樹脂>
結着樹脂11としては、レゾ−ル型フェノール樹脂(アンモニア触媒使用、メタノール40%含有、大日本インキ化学工業社製、商品名:J325)を使用した。
<カーボンブラック>
導電剤12としての導電性カーボンブラックとしては、Cabot Corporation製のVulcan XC−72(商品名)を用いた。
<黒鉛化粒子の製造例1>
固体粒子13としての黒鉛化粒子A−1を、次のようにして製造した。即ち、コールタールピッチから溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行った後、次いでトルエンにより溶剤可溶分を除去することでメソフェーズピッチを得た。そのバルクメソフェーズピッチを微粉砕し、その粒子を空気中において約800℃で酸化処理した後、窒素雰囲気下中にて3100℃で焼成し黒鉛化させ、更に分級して体積平均粒径2.7μmの黒鉛化粒子A−1を得た。この黒鉛化粒子A−1の黒鉛化度p(002)は0.35であった。
<黒鉛化粒子の製造例2>
固体粒子13としての黒鉛化粒子A−2を、次のようにして製造した。即ち、石炭系重質油を熱処理することで得られたメソカーボンマイクロビーズを、洗浄・乾燥した後、アトマイザーミルで機械的に分散を行ない、窒素雰囲気下において1200℃で一次加熱処理を行ない炭化させた。次いで、アトマイザーミルで二次分散を行った後、窒素雰囲気下において焼成温度2900℃で熱処理し、更に分級して体積平均粒径3.7μmの黒鉛化粒子A−2を得た。この黒鉛化粒子A−2の黒鉛化度p(002)は0.41であった。
<黒鉛化粒子の製造例3>
上記黒鉛化粒子の製造例2において、焼成温度を1500℃とし、その後の分級条件を変えることで、体積平均粒径6.3μm、黒鉛化度p(002)が1.03の黒鉛化粒子A−3を得た。
<黒鉛化粒子の製造例4>
上記黒鉛化粒子の製造例1において、焼成温度を3900℃とし、その後の分級条件を変えることで、体積平均粒径7.4μm、黒鉛化度p(002)が0.17の黒鉛化粒子A−4を得た。
<黒鉛化粒子の製造例5>
固体粒子13としての黒鉛化粒子A−5を、次のようにして製造した。即ち、黒鉛化粒子の原材料として、コークスとタールピッチの混合物を用い、この混合物をタールピッチの軟化点以上の温度で練り込み、押出し成型し、窒素雰囲気下において1000℃で一次焼成を行なって炭化させた。続いてコールタールピッチを含浸させた後、窒素雰囲気下において2700℃で二次焼成を行ない黒鉛化し、更に粉砕及び分級して体積平均粒径7.3μmの黒鉛化粒子A−5を得た。この黒鉛化粒子A−5の黒鉛化度p(002)は0.12であった。
<黒鉛化粒子の製造例6>
上記黒鉛化粒子の製造例5において、二次焼成温度を3000℃とし、更に粉砕及び分級条件を変更することで体積平均粒径4.7μmの黒鉛化粒子A−6を得た。この黒鉛化粒子A−6の黒鉛化度p(002)は0.10であった。
尚、上記黒鉛化粒子A−1〜A−6の物性データを、表4にまとめた。
<凹凸形成粒子>
凹凸形成粒子14としては、次のものを用いた。先ず、導電性球状粒子である、ニカビーズ PC0520及びニカビーズ PC1020(いずれも商品名、日本カーボン社製)を使用した。以下、ニカビーズ PC0520、ニカビーズ PC1020を、それぞれB−1、B−2と表記する。又、カーボンブラック分散PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂粒子として、MBX−15ブラック(商品名、積水化成品工業社製)を用いた。更に、ホウ酸アルミニウム粒子としてアルボライトPF08(商品名、四国化成社製)を用いた。以下、MBX−15ブラック、アルボライトPF08を、それぞれB−3、B−4と表記する。上記B−1〜B−4の物性値を、表5に記載した。
<現像スリーブの製造例1>
基体2の表面に樹脂被覆層1を有する現像スリーブS−1を次のようにして作製した。
結着樹脂(フェノール樹脂) 固形分として80部
導電性カーボンブラック 4部
黒鉛化粒子A−1 36部
凹凸形成粒子B−1 16部
第4級アンモニウム塩化合物(例示No.1) 4部
メタノール 100部
上記材料に直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として加え、サンドミルにて2時間分散し、フルイを用いてビーズを分離し、メタノールで固形分を38%に調整し塗工液を得た。この塗工液を用い、外径20mmφ、中心線平均粗さRa=0.3μmの研削加工した基体2としてのアルミニウム製円筒管上を垂直に立て、一定速度で回転させた。それと共に、上下端部にマスキングを施し、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗工することによって樹脂被覆層1を形成させた。尚、塗工は23℃/50%RHの環境下にて実施した。続いて熱風乾燥炉により150℃で30分間加熱して樹脂被覆層を硬化させ、現像スリーブS−1を作製した。表6に、この現像スリーブS−1の樹脂被覆層1の処方と物性を示した。
<現像スリーブの製造例2〜16>
それぞれ表6に示した材料構成及び配合比にて塗工液を作製し、上記現像スリーブの製造例1と同様にして現像スリーブS−2〜S−16を作製した。但し、現像スリーブS−4、S−9及びS−10は、塗料製造時に添加する溶剤をメタノールからイソプロパノールに変更した。
表6に、これらの現像スリーブS−2〜S−16の樹脂被覆層1の処方と物性を示した。
ここで、現像スリーブS−8は現像スリーブS−7を、又現像スリーブS−10は現像スリーブS−9を、更にS−15はS−2をそれぞれ図14にて模式的に示した装置を用いて研磨加工を施したものである。この研磨加工は、#3000のアルミナ粒子をポリエステルフィルム上に固着させた帯状研磨材にて、フィルム巻取り速度を20mm/sec、現像スリーブの軸方向への移動速度を30mm/sec、現像スリーブへの押し付け荷重を20Nとして行った。又、現像スリーブS−11は樹脂被覆層1の形成後、上記現像スリーブS−8などと同条件にて表面研磨処理を行なったものである。更に、現像スリーブS−14は、基体2の表面をFGB#100の砥粒にてブラスト処理を施したものに塗工を行なった。
またS−16は、S−5において塗工後の固形分を36%から34%に下げた以外は、S−5と同じ条件にて製造して得られた現像スリーブである。
<<現像剤>>
<トナーの製造例1>
プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA 70mol%
エチレンオキサイド付加ビスフェノールA 33mol%
テレフタル酸 28mol%
トリメリット酸 30mol%
アジピン酸 38mol%
上記原料を5リットル4口フラスコに仕込み、還流冷却器、水分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、フラスコ内にN2ガスを導入しながら180℃で縮重合反応を行い、反応終了後、水洗し、脱水、乾燥工程を経て、ポリエステル樹脂を得た。
そして、次のものから成る混合物をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。
上記ポリエステル樹脂 100部
平均粒径が0.2μmの球状磁性体 85部
アゾ系鉄錯体化合物(負帯電性荷電制御剤、保土谷化学工業社製、商品名:T−77)
2部
低分子量エチレンープロピレン共重合体(三洋化成社製、商品名:ビスコール550―P)
4部
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー製造用粉体原料である粉体原料(粗粉砕物)を得た。
そして、この粉体原料をターボミルT−250型(ターボ工業社製)を用いて微粉砕を行なった後、熱球形化処理を行なった。熱球形化処理を行なった微粉砕粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(エルボジェット分級機、日鉄鉱業社製)で、超微粉及び粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒子径(D4)が7.0μmであるトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザン及びジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.5部とチタン酸ストロンチウム0.5部を加えた。これをヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤であるトナーT−1を得た。このトナーT−1の、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下の粒子における平均円形度は0.962であった。
<トナーの製造例2>
スチレン 66部
ブチルアクリレート 14部
モノブチルマレート 10部
ジ−tert−ブチルパーオキサイド 0.8部
上記混合物を還流(温度:146 ℃〜156℃)しているクメン200部中に4時間かけて滴下し、クメン還流下で溶液重合を完了させ、減圧下で200℃まで昇温させながらクメンを除去した。
ここで得られたスチレン−アクリル系共重合体30部を、下記の混合物中に溶解し混合溶液とした。
スチレン 49部
ブチルアクリレート 18部
モノブチルマレート 3部
ジビニルベンゼン 0.3部
ベンゾイルパーオキサイド 0.8部
tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.6部
上記混合溶液に、ポリビニルアルコール部分ケン化物0.15部を溶解した水170部を加え、激しく撹拌しながら懸濁分散液とした。更に、水100部を加え、窒素雰囲気に置換した反応器に上記懸濁分散液を添加し、約80℃で8時間重合した。重合終了後、濾別し、充分に水洗して後、脱水乾燥し、スチレン−アクリル系共重合体組成物を得た。
そして、次のものから成る混合物を、トナーの製造例1と同様に混練/粉砕/分級を行ない、重量平均粒子径(D4)が7.5μmであるトナー粒子を得た。
上記スチレン−アクリル系共重合体組成物 100部
平均粒径が0.2μmの球状磁性体 90部
アゾ系鉄錯体化合物(負帯電性荷電制御剤、保土谷化学工業社製、商品名:T−77)
1部
低分子量エチレンープロピレン共重合体(三洋化成社製、商品名:ビスコール550―P)
4部
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザン及びジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.0部とチタン酸ストロンチウム0.3部を加えた。これをヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤であるトナーT−2を得た。このトナーT−2の、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下の粒子における平均円形度は0.960であった。
<トナーの製造例3>
高速撹拌装置TK−ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を備えた2リットル用四つ口フラスコ中に、イオン交換水880部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液450部を添加し、回転数を12000rpmに調整し、58℃に加温した。ここに1mol/リットルのCaCl2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む分散媒系を調製した。
そして、次のものから成る混合物を、アトライターを用いて3時間分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を添加して重合性単量体組成物分散物を得た。
スチレン 78部
ブチルアクリレート 22部
ジビニルベンゼン 0.5部
飽和ポリエステル樹脂(テレフタル酸とプロピレンオキサイド付加ビスフェノールAを等モル比混合して、縮重合して得られたもの) 6部
アゾ系鉄錯体化合物(上記T−77) 2部
上記記平均粒径0.2μmの球状磁性体をシランカップリング剤にて表面処理を施したもの 85部
エステル系ワックス 15部
この重合性単量体組成物分散物を上記分散媒系中へ投入し、60℃、窒素雰囲気下においてTK―ホモミキサーにて10000rpmで15分間攪拌し、重合性単量体組成物の懸濁液を作成した後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ、60℃で6時間重合させた。その後、液温を80℃として更に6時間攪拌を続けた。その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて分散剤を溶解し、ろ過、水洗、乾燥して、重量平均粒子径(D4)6.3μmの負帯電性トナー粒子を得た。
このトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザン及びジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.0部、酸化チタン微粒子0.8部及びチタン酸ストロンチウム0.6部を加えた。これをヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤であるトナーT−3を得た。このトナーT−3の、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下の粒子における平均円形度は0.981であった。
<トナーの製造例4>
トナーの製造例1と同じ材料を用いて、同様の条件で熱混練を行ない、その後この混練物を粗粉砕した。得られた粗粉砕物を、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製)にて微粉砕後を行なった。その後は、トナーの製造例1と同様にして、重量平均粒子径(D4)6.8μmの負帯電性のトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザン及びジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.5部とチタン酸ストロンチウム0.5部を加えた。これをヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤であるトナーT−4を得た。このトナーT−4の、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下の粒子における平均円形度は0.945であった。
(具体例1)
作製した現像スリーブS−1にマグネットローラ142を装着してフランジを嵌合後、現像装置D−1に組み込んだ。この現像装置D−1を備えたカートリッジをHewlett−Packard社製Laser Jet4350(商品名)に装着し、トナーT−1を用いて1枚/4秒の間欠モードで3万枚の耐久テストを行なった。
画像評価は、常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)、低温低湿度環境(15℃、10%RH;L/L)及び高温高湿度環境(32℃、85%RH;H/H)において実施した。尚、ランニング時のプリントは、印字比率が1%の横線とし、初期評価は10枚目の時に耐久評価テストを中断し、耐久評価は耐久テスト終了後に、それぞれ必要な評価を実施した。その結果、表7に示したように、いずれの環境下においても終始良好な現像性を得ることができた。
尚、評価方法及び評価基準は次の通りである。
(1)画像濃度
画像比率5.5%であるテストチャート上の直径5mmφの丸部のコピー画像濃度について、反射濃度計RD918(マクベス製)により反射濃度測定を行ない、10点の平均値をとって画像濃度とした。
(2)ドット再現性
図15に示す様な小径(45μm)の孤立ドットパターンの画像を出力し、欠損の数を顕微鏡で観察し、ドット再現性を以下のように評価した。
A:欠損2個以下/100個。
B:欠損3〜5個/100個。
C:欠損6〜10個/100個。
D:欠損11個以上/100個。不良レベル。
(3)スリーブゴースト
幅x×長さlの帯状ベタ黒部(図16(a))の画像形成を行った後、幅y(但し、>x)×長さlのハーフトーン(図16(b))の画像形成を行う。このハーフトーン画像の画像濃度を、図16(c)に示す領域ア、イ、ウでそれぞれ測定し、現れた濃度差(濃淡の程度)から、下記基準にてスリーブゴーストを評価した。領域アは、画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さz以降の部分である。領域イは、画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででベタ黒画像を形成した部分と重なる部分である。領域ウは、画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででハーフトーンのみを形成した部分である。尚、画像濃度の測定方法は上記と同様である。
A:濃度差が全く見られない(濃度差が0.02未満)。
B:領域イと領域ウで軽微な濃度差が見られる(濃度差が0.02以上0.04未満)。
C:領域ア、領域イ、領域ウ各々で若干の濃度差が見られる(濃度差が0.04以上0.07未満)。
D:顕著な濃度差が見られる(濃度差が0.07以上)。不良レベル。
(4)現像スジ
3万枚耐久使用後のベタ黒画像上及び現像スリーブの表面を目視して判断した。
A:画像上でも現像スリーブの表面上でもスジの発生なし。
B:現像スリーブの表面上では軽微なスジが見られるものの、画像上ではスジなし。
C:現像スリーブの表面上ではスジの発生が確認でき、画像上でも幅0.5mm以下のスジが1〜5本発生しているが、許容できるレベルと判断。
D:現像スリーブの表面上だけでなく、画像上でも顕著にスジの発生が確認できる。不良レベル。
(具体例2〜15及び比較例1〜6)
それぞれ現像スリーブS−1〜S−16、トナーT−1〜T−4及び現像装置D−1〜D−4を用い、上記具体例1と同様の評価方法にて、画像評価を行なった。結果は表7に示した。
以上説明したように、本実施例によれば、次のような作用効果を奏し得る。
1)現像剤担持体と現像剤層厚規制部材とが当接するニップ部内での圧分布の極大値が複数存在することにより、現像剤担持体上の現像剤への摩擦帯電付与の回数を増やすことができ、現像剤の摩擦帯電量を高めることができる。特に、現像装置の使用初期や休止後など、現像剤の摩擦帯電量が低下した状態においても現像剤の迅速な摩擦帯電付与が可能となり、画像濃度の低下やスリーブゴーストの発生の如き問題を抑制することができる。
2)現像剤層厚規制部材としてシート状又はチューブ状の可撓性部材を使用することにより、ニップ部内での局所的な圧力増加を防止することができ、当接圧を均一に保持することができる。
3)現像剤担持体が、基体の表面に少なくとも樹脂被覆層を有し、この樹脂被覆層の表面の初期摩耗高さRpkが0.2μm〜6.0μm、且つ、最大山高さRpが1.0μm〜10.0μmである構成とする。これにより、樹脂被覆層の表面に極端に大きな凹凸が少なく、ほぼ均一であるため、現像剤担持体上の現像剤の担持量を長手方向で均一に保持できるため、「現像スジ」の如き問題の発生がなく良好な画像が得られる。
4)上記3)については、現像剤担持体の樹脂被覆層表面の初期摩耗高さRpkが0.2μm〜2.0μm、且つ、最大山高さRpが2.0μm〜5.0μm、更には二乗平均平方根傾斜RΔqが0.10〜0.35であることで、より良好な結果が得られる。
5)現像剤担持体の樹脂被覆層表面の、表面被膜物性試験におけるユニバーサル硬さ測定値HUの硬度分布から求められる平均値HUAが300≦HUA≦800[N/mm2]の関係を満たすことで、耐久性をより一層高めることができる。
6)現像剤担持体の樹脂被覆層中に、黒鉛化粒子及び樹脂被覆層表面に凹凸を形成するための粒子が含有されていることで、樹脂被覆層の導電性(体積抵抗値)及び表面粗さを、より適正化することができる。これにより、現像剤担持体上に担持される現像剤量の適正化のより一層の向上が図れる。
7)現像剤担持体の樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)が0.20≦p(002)≦0.95の関係を満たすことが好ましい。又、バルクメソフェーズピッチ粒子又はメソカーボンマイクロビーズを黒鉛化して得られた黒鉛化粒子を用いることが好ましい。これにより、樹脂被覆層の耐摩耗性のより一層の改善を図ることができ、より一層の耐久性の向上を達成することができる。
8)トナー粒子が、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下のトナー粒子における平均円形度が0.950以上の如く平均円形度を高くすることが好ましい。これによって、トナーの摩擦帯電量を向上させることができ、又微小ドットや細線の再現性を高めることができ、より一層の高画質化を達成することができる。
従って、本実施例によれば、低湿度環境下においても安定した摩擦帯電能を有し、スリーブゴーストや濃度ダウン、カブリ及び画質の悪化の如きトナーのチャージアップに伴う現像性の低下を抑制することができる。これにより、均一で濃度ムラが無く、高画像濃度で且つ高精細な画像を安定して得ることができる。又、本実施例によれば、高湿度環境下において長期にわたり使用した場合でも、スリーブゴーストや現像スジの発生の如き問題が排除でき、高耐久性を有し、終始安定した画質を得ることができる。又、本実施例によれば、微粒化トナーや球形化されたトナーを使用した場合でも、十分な画像濃度及び画質が得られ、且つスリーブゴーストを抑制することができる。このように、本実施例によれば、安定的に現像剤担持体上のトナーの摩擦帯電量、担持量を適正とすることができる。