従来の電子写真法としては、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により静電潜像担持体(感光体)上に静電潜像を形成し、次いで該静電潜像を現像剤(トナー)を用いて現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力或いは溶剤蒸気等により定着し、複写物を得るものである。
近年、電子写真法を用いた機器は、従来の複写機以外にプリンターやファクシミリ等多数になってきている。現像方式にはキヤリア粒子を用いる二成分現像方式とキヤリア粒子を用いない一成分現像方式に大別される。一成分現像方式には、磁性粒子をトナーに内包させて磁力の作用により現像剤の担持搬送を行う一成分磁性現像方式と、磁性粒子を用いずに現像剤の摩擦電荷の作用などで現像剤を現像剤担持体へ担持させる非磁性一成分現像方法がある。一成分磁性現像方式においては、カーボンブラックなどの着色剤は用いず、磁性粒子を着色剤として兼用させることもできる。
二成分現像方式は、ガラスビーズや鉄粉等のキヤリア粒子が必要な為、或いは現像剤中のトナー濃度を一定に保つ必要がある為、トナー濃度を検知して必要量のトナーを補給する装置が必要となり、現像装置が大きくて重く、且つ複雑な構成となる。また二成分現像方式ではトナー成分のキヤリアへの付着(スペント)が起こりやすいため、キヤリアの交換頻度が高くなる。この点一成分現像方式では、このようなキヤリアや上述の複雑な構成は不必要となり、現像装置自体の小型化・軽量化が可能であり、さらにはキヤリアの交換が必要ないため長期にわたりメンテナンスの必要がなくなる。その一方で、磁性一成分現像方法は、暗黒色の磁性粒子をトナーに使用するためカラー化が困難であり、二成分現像方式は濃度検知装置などにより細かい現像状態の調整が可能であるため、カラー現像用に好ましく用いられる。近年では、電子写真装置の軽量・小型化等を目的として複写装置部分を小さくする必要性が求められており、そのため一成分現像方式を用いた現像装置が使用されることが多くなってきている。
しかし、いずれの現像方式を用いる場合でもトナー帯電量の調整に関しては未だ完全に達成されたとは言い難く、トナーによる工夫等が種々行われているものの、トナー帯電の不均一性や帯電の耐久安定性に関わる問題は、完全には解決されていない。
特に、長時間コピー或いはプリント等の画像出力を行った後、出力停止状態で長時間放置すると次の画像出力において画像濃度が薄くなるという、所謂休止後濃度低下現象が特に高湿度環境下にて発生することがある。これは、トナーの劣化に伴う流動性の低下やトナーの現像剤担持体(現像スリーブ)表面の汚染或いは融着に伴うトナー帯電量の低下等も要因と考えられるが、高湿度環境下にて顕著に発生することから、トナー及び現像剤担持体(現像スリーブ)表面へ空気中の水分が吸着することによって、トナーに対する摩擦帯電付与能が低下することも原因の中で大きなウエートを占めていると考えられる。
また、現像剤担持体(現像スリーブ)が繰り返し回転を行なっていくうちに、現像スリーブ上にコーティングされたトナーの帯電量が現像スリーブとの接触により高くなりすぎ、トナーが現像スリーブ表面との鏡映力により引き合って現像スリーブ表面上で不動状態となり、現像スリーブから潜像担持体(感光ドラム)上の潜像に移動しなくなるという、所謂チャージアップ現象が特に低湿環境下にて発生しやすくなる。この様なチャージアップ現象が発生すると、上層のトナーは帯電しにくくなり、トナーの現像量が低下するため、ライン画像の細りやベタ画像の画像濃度薄の如き問題点を生じる。更に、チャージアップにより適正に帯電されないトナーが規制不良となって現像スリーブ上に流出し、斑点状、波上のムラとなる、所謂ブロッチ現象が発生する場合もある。
最近では、プリンター装置はLED(発光ダイオード)プリンターやLBP(レーザービームプリンター)が市場の主流になっており、技術の方向としてより高解像度即ち、従来300dpi、400dpiであったものが600dpi、800dpi、1200dpiとなってきている。従って現像方式もこれに伴って、更なる高精細化が要求されてきている。また、複写機もデジタル化が主流となってきており、ファクシミリやプリンターとしても同時に使える所謂マルチファンクション化を目指した設計が主となりつつある。このため、複写機とプリンターの違いは徐々になくなってきており、ここでも高解像・高精細の現像方式が要求されている。この問題に対応するため、トナーとしては粒度の小径化が提案されており、高解像度が要求されるにつれトナーの粒径は、5μm〜9μm程度の中心粒径を有するものが主流となっている。
また、エコロジーの観点から、及び装置の更なる軽量・小型化等を目的として、廃トナーを軽減させるために、トナーの転写効率の向上が図られている。例えば、トナーの体積抵抗を低減させ、感光ドラム上に転写効率向上剤の薄膜層を形成することにより転写効率を向上させたり、或いはトナー自身を機械的衝撃力により球形化処理し、転写効率を向上させる方法等が知られている。また、ファーストコピー時間の短縮化や省電力化の目的で、定着器の設定温度を下げる傾向にある。このような状況下でも十分な定着性を得るため、トナー中にワックス等の離型性成分を多量に添加すること等で対応してきている。
上記のようなトナー構成にした場合、特に高温高湿下におけるトナーは、外部からの物理的な力や流動化しやすい材料を用いているため変質しやすくなるため、帯電能が低下しやすくなったり、トナーによるスリーブ汚染やスリーブ融着が起こりやすくなり、低温低湿下におけるトナーは、単位質量当たりの電荷量が増えるため更に現像スリーブ上へ静電的に付着しやすくなる。
更には、トナー粒子に対して、該トナーと同極性の帯電系列を有する外添剤を外添した現像剤では、現像スリーブ上に複写パターンの履歴である、所謂「スリーブゴースト」が生じ、これがプリント画像上にも現れることがある。このスリーブゴーストは、前記外添剤の帯電能が高いもの程発生し易い傾向が見られる。例えば、負帯電性トナーに負帯電性の微粒子を外添して得られた現像剤の場合に生じるスリーブゴーストは、図1に示すように、ポジゴーストになる。即ち、非印字部(白地)が続いていたために、コピー又はプリントが行なわれても薄い現像しか行なわれない(X)部分と、コピーが継続されていたために濃い現像が行なわれる(Y)部分とで濃度ムラが生じる。
このスリーブゴースト形成のメカニズムについて考えてみる。現像工程において、現像剤担持体(現像スリーブ)上で現像剤(トナー)が消費された箇所に、新たに帯電付与を受けたトナーが供給されて次の現像が行なわれる。この時、消費されずに現像スリーブ上に残っているトナーと、新たに供給されたトナーとでは帯電量が異なる。帯電量が高いトナーほど潜像担持体上の静電潜像への飛翔能力は高くなるが、同時にトナーと現像スリーブとの間に働く鏡映力により、静電的に強く拘束される傾向も見られる。このように、現像能力は上記の飛翔能力と鏡映力のバランスによって決定する。
また、このスリーブゴーストは、現像スリーブ上に存在するトナー中の微粉及び該トナーに外添されている外添剤によって形成される層に深く関わっている。つまり、現像スリーブ上のトナー層の最下層を形成するトナーの粒度分布に、トナー消費部とトナー未消費部とで明らかな差が生じ、未消費部のトナー最下層に、トナー中の微粉及び該トナーに外添されている外添剤によって形成される微粉層が形成されているためである。該微粉層を形成する粒子は単位体積当たりの表面積が大きいために、粒径の大きなトナーに比べると単位質量当たりに有する摩擦帯電電荷量が大きくなり、自らの鏡映力により現像スリーブに静電的に強く拘束される。このため微粉層が形成された部分の上にあるトナーは、現像スリーブ表面と十分に摩擦帯電しないために現像能力が低下し、画像上にスリーブゴーストとして現れてしまう。
一般的に、トナーが消費された箇所に、新たに帯電付与を受けて供給されたトナーが、消費されずに現像スリーブ上に残っているトナーよりも現像能力が高い場合、先述したポジゴーストが発生し、これと逆に上述した新たに供給されたトナーが、他の部分のトナーと比較して現像能力が低い場合は、図1と反対に、非印字部(白地)が続いておりトナーの入れ替わりがなかった部分と比べ、コピー又はプリントが継続されていたためにトナーの入れ替わりが行なわれた部分の方が低濃度になるという、ネガゴーストが発生する。
以上のスリーブゴーストは、トナー中の微粉及び該トナーに外添されている外添剤からなる微粉層の形成と共に、トナーの帯電が現像スリーブとの摩擦帯電に大きく依存しているために生じる現象である。従ってスリーブゴーストを解決するには、現像スリーブ表面近傍のチャージアップした微粉トナーの現像スリーブとの間に働く鏡映力を、何らかの方法で除去或いは軽減することが必要である。
上記スリーブゴースト現象以外には、現像により得られる画像上に縦縞状に濃度の低い部分が発生するという問題が発生することもある。即ち、これは文字画像においては文字が細くなり、ハーフトーン画像やベタ黒画像では、図2に示したように濃度が低くなる現象である。
この現象は「フェーディング現象」と言われている。我々は、このフェーディング現象が生じたときの現像スリーブを観察してみたが、スリーブ上には一様な厚みのトナー層は形成されていた。しかし、スリーブ上のトナーの摩擦帯電電荷量を測定してみると、画像中の低濃度の縦縞に対応する領域のトナーの電荷量が正常な値と比べて低い値であることが判明した。
上記の如く部分的にトナーの帯電量が低下する理由については次のように考えられる。コピー画像又は画像出力パターンは、画像面内では必ずしも一様ではなく、トナーの消費が多い部分と少ない部分が発生する。このうち、トナー消費が少ない部分はトナーの入れ替わりが比較的少なくなるため、対応する部分の現像スリーブ近傍のトナーの循環が疎外され、スリーブ近傍にトナーがパッキングされることになる。そして、この状態でトナーがスリーブ表面と摺擦されることで、トナー粒子が劣化し、正規に帯電付与を受けることができなくなる。その結果、この状態でコピー又はプリントを続けていくと、トナー劣化が促進され、この部分で濃度低下が起きることになる。
いずれにせよ、低帯電トナーもスリーブとの摩擦力によって、現像剤層厚規制部を、正常帯電トナー層と同等の厚みを持つ層として通り抜ける。従ってトナー層の厚みはスリーブ上で均一である。
上記フェ−ディング現象は、トナー粒径が小さいほど起こり易い。これは、微粒子トナーの凝集性が高いことに起因する。即ち、微粒子トナーは、粒径が小さく通常粒径トナーに比べ表面積が大きく過剰にトリボ付与を受けるため、静電凝集によってトナーの流動性が低下するからである。更に、トナー表面近傍に付着している外添剤による影響も大きく、トナーの流動性を阻害するような粒子或いはトナーの帯電量を著しく変化させるような粒子を添加する場合は注意を要する。
また、上記フェ−ディング現象は、トナーの静電凝集による流動性低下が促進される低湿度環境のみならず、常温常湿度環境下、或いはトナーの帯電能が低下する高温高湿度環境下においても顕著に発生する。
従来上記方式の現像に用いられる現像剤担持体(現像スリーブ)としては、例えば金属、その合金またはその化合物を円筒状に成型し、その表面を電解、ブラスト、ヤスリ等で所定の表面粗度になるように処理したものが従来から用いられてきた。しかしこの場合、規制部材によって現像剤担持体表面に形成される現像剤層中の現像剤担持体表面近傍に存在する現像剤は非常に高い電荷を有することとなり、現像剤担持体表面で鏡映力によって強く引きつけられてしまい、これによりトナーと現像剤担持体との摩擦機会が持てなくなるため、現像剤は好適な電荷が保持できなくなる。このような状況下では、十分な現像および転写は行われず、得られた画像は濃度ムラや文字飛び散りの多いものになってしまう。
このような過剰な電荷を有する現像剤の発生や、現像剤の強固な付着を防止するため、樹脂中にカーボン或いは結晶性グラファイトの如き導電性物質やグラファイトの如き固体潤滑剤を分散させた樹脂被覆層を上記現像剤担持体上に形成する方法が、特許文献1等に提案されている。
この方法を用いることにより、上述した弊害は大幅に軽減されることが認められる。しかしながら、この方法では、上記粉末を多量に添加した場合には、チャージアップやスリーブゴーストに対しては良好となるが、樹脂被覆層が脆くなるために樹脂被覆層の削れが発生しやすくなり、多数枚コピー或いはプリントを行なった場合、表面粗さが不均一となり、その結果トナーへの帯電付与が不均一となりやすくなる。また添加量が少量の場合には、固体潤滑剤及び結晶性グラファイトの如き導電性微粉末の効果が薄く、チャージアップ、スリーブゴースト及びフェーディングの抑制に対して不十分であるという問題が残る。
また、特許文献2においては、樹脂中に固体潤滑剤及び導電性微粉末、更に球状粒子を分散させた導電性樹脂被覆層を金属基体上に設けた現像剤担持体が提案されている。該現像剤担持体では、樹脂被覆層の耐摩耗性が向上するとともに、樹脂被覆層表面の形状が均一化し、更に表面粗さの変化も少ないことから、現像剤担持体上のトナーコーティングが安定化し、画像濃度、ベタ画像等のスジ・ムラ等の画質がより良化する。しかしながら、この現像剤担持体においても、低湿度若しくは高湿度環境下で、或いは更なる長期における耐久においては、トナーの帯電が不安定となり、スリーブゴーストやフェーディング等画像不良をもたらすことがある。また、この現像剤担持体においても、樹脂被覆層表面への固体潤滑剤及び導電性微粉末の露出の割合は不十分であり、また上記球状粒子の摩耗及び脱落を起因として、トナーによるスリーブ汚染及びスリーブ融着が発生する可能性があり、画像不良の原因となりやすい。
特許文献3においては、導電性樹脂被覆層中に分散された球状粒子が導電性の球状粒子であり、更に樹脂被覆層の耐摩耗性が向上されることで、樹脂被覆層表面の形状を更に安定させるとともに、トナー帯電能を更に向上させ、且つ樹脂被覆層が多少摩耗した際にもトナーによるスリーブ汚染及びスリーブ融着が抑制されうる表面層を有する現像剤担持体が提案されている。しかしながら、この現像剤担持体においても、樹脂被覆層表面への固体潤滑剤及び導電性微粉末の露出の割合は不十分であり、更なる長期における耐久においては、導電性樹脂被覆層の摩耗量と導電性球状粒子の摩耗量との違いにより、耐久初期と耐久後期の樹脂被覆層の表面粗さの変化が大きくなる可能性があり、耐久初期と耐久後期においてのトナーコート量が変化し、画像劣化の原因となる可能性がある。また、前述のような小粒径のトナーを用いる場合は、樹脂被覆層の表面粗さの変化がトナーコート量に与える影響は、より顕著となり易く、その結果画像劣化の原因となり易い。
また、新たな添加剤を樹脂被覆層中に含有させることも報告されている。例えば特許文献4では、樹脂中にカーボンや結晶性グラファイトの如き導電性微粉末に加えて、イオン導電剤を分散させた導電性樹脂被覆層を金属基体上に設けた現像ローラが提案されている。この方法では、イオン導電剤の添加によりトナーのチャージアップ等には効果が見られるが、イオン導電剤は環境(湿度)による依存性が高く、そのため樹脂被覆層の抵抗値が大きく振れることになり、特に耐久中の濃度安定性やスリーブゴーストに関してはまだ不十分だと言える。さらに、イオン導電剤を樹脂被覆層中に均一に分散させる技術も必要とされる。
一方、樹脂被覆層を構成する樹脂からのアプローチもされている。例えば、特許文献5では、導電性弾性層の表面に、該導電性弾性層とは異なる樹脂成分を被覆することにより、現像スリーブ表面を低摩擦化する方法が提示されている。しかし、この方法によると、トナーに対する摩擦帯電付与能が低下しやすくなり、その結果トナーの帯電量が低くなり、画像面で濃度低下やカブリ悪化等の弊害が発生しやすくなる。
また、特許文献6においては、現像スリーブ表面にメラミン変性フェノール樹脂と結晶性グラファイトを含有した被膜を形成したものが提示されている。特許文献7では、現像スリーブ表面にメラミン樹脂及び/又は尿素樹脂にグラファイト及び/又はカーボンブラックを含有した被膜を形成したものが、更に特許文献8では、分子量500以下の成分が3.5%以下であるアクリル樹脂にメラミン樹脂又はグアナミン樹脂を添加した樹脂層中に、二硫化モリブデンを分散させた現像スリーブが開示されている。従来よりメラミン樹脂やグアナミン樹脂は、熱硬化性樹脂の架橋剤として使用されてきており、樹脂被覆層の強度アップに有効であり、更にアミノ基を含有していることから、特にネガ帯電性トナーへの帯電付与にも効果的に働くことが期待される。しかし、帯電性を安定化させることは困難であり、特に環境依存性が顕著に見られ、低湿度環境下でのトナーのチャージアップや高湿度環境下での帯電量低下等の弊害を招きやすい。更に強度の面でも、例えば現像スリーブ上のトナー層厚を規制する部材として、弾性ブレードのような現像スリーブに対して大きな負荷を与えるような系を採用した現像装置においては、高耐久/長寿命といった点では未だ不十分である。
更に、特許文献9ではフェノール樹脂とポリビニルブチラール樹脂をブレンドさせた樹脂からなる被膜層を有する現像剤担持体が開示され、特許文献10では、一成分現像方式に用いられる現像ロールにおいて、被膜形成性樹脂材料として、平均重合度が1000以下のポリビニルブチラールとレゾール樹脂とメラミン樹脂との3成分からなる樹脂組成物を用いることが開示されているが、ポリビニルブチラール樹脂はフェノール樹脂との相溶性、硬化後の成膜性には良好であるものの、やはりトナーへの帯電付与能に対して環境依存性を有し、高湿度環境下での休止後濃度低下現象等の弊害をもたらすため、現像性を安定化させる点から十分だとは言い難い。また特許文献11には、スリーブ担体上の被膜樹脂中に電荷輸送剤を分散させた電子写真用現像スリーブが提示されているが、電荷輸送剤も湿度による環境依存性が大きく、まだ不十分であると考えられる。
特開平01−277265号公報
特開平03−200986号公報
特開平08−240981号公報
特開平07−013415号公報
特開平10−115979号公報
特開平06−194940号公報
特開平09−146362号公報
特開平09−230690号公報
特開平10−020658号公報
特開平10−003209号公報
特開2000−075633号公報
本発明者らは、前記の課題について鋭意検討を行った結果、現像剤担持体表面の樹脂被覆層を上記のように、特定の樹脂を含有し、更に導電剤を樹脂中に分散させた構成にすることにより、環境特性が良好で、且つトナーに対する帯電付与能及び機械的強度に優れるため、現像剤担持体の表面被覆層の粗さや均一な表面形状及び表面の材料組成が多数枚の画出しにおいても変化しずらくなる効果を見出し、その結果優れた現像性及び高耐久性が得られることがわかった。更に該樹脂成分を含有させた樹脂被覆層は、トナー汚染やトナーのチャージアップを発生させること無くトナーへ均一で高い帯電を付与する効果があることも見出した。
次に本発明の現像剤担持体、該現像剤担持体を用いた現像装置について、さらに詳細に説明する。
まず、本発明の現像剤担持体における樹脂被覆層の構成について説明する。図3〜図5は本発明に用いることのできる、樹脂被覆層1が金属製の円筒管からなる基体2上に形成されている様子を示す断面の模式図である。図3においては、エポキシ変性フェノール樹脂を有する結着樹脂a中に導電剤bが分散され、樹脂被覆層1の表面への導電性付与、トナーに対する離型性及びトナーへの帯電付与性等に寄与している。図4においては、エポキシ変性フェノール樹脂を有する結着樹脂a中に導電剤bに加えて固体潤滑剤cを添加することで樹脂被覆層1表面の潤滑性を高め、トナーに対する離型性を高めた構成であり、固体潤滑剤cに樹脂被覆層表面の凹凸性付与形成或いは導電性付与等の機能を持たせても良い。しかしながら、固体潤滑剤cに限らず、添加される別の固体粒子により微小な凹凸が形成される形態も含まれる。図5においては、樹脂被覆層1の表面に凹凸を形成し表面粗さを制御するため、エポキシ変性フェノール樹脂を有する結着樹脂a中に、更に球状粒子dが添加されたモデル図を示し、球状粒子の粒径及び添加量等で樹脂被覆層1の表面の凹凸を更に制御しやすいようにした構成である。このような構成は、現像剤層厚規制部材として弾性ブレードを使用した場合、即ち現像剤担持体に対して(トナーを介して)弾性的に圧接されるタイプの現像装置に用いる場合に効果的である。すなわち、球状粒子dの粒径が固体潤滑剤c等の他の添加剤の粒径よりも大きい場合、この樹脂被覆層1の表面の球状粒子dにより弾性規制部材の圧接力を規制し、且つ他の添加剤は小さな凹凸を形成して、トナーと樹脂被覆層の結着樹脂及び導電剤bとの接触帯電機会やトナーとの離型性を調整する役割も果たす。また、導電剤bと固体潤滑剤c等の他の添加剤の双方が樹脂被覆層1の表面の凹凸形成に寄与している場合は、球状粒子dに表面への凹凸付与以外に導電性や帯電付与性及び耐摩耗性等の別の機能をもたせることで、更にトナーへの摩擦帯電特性を向上させることが可能となる。
ここで、現像剤担持体の基体としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材等があるが、潜像担持体に非接触の現像方法においては、金属のような剛体の円筒管もしくは中実棒が好ましく用いられる。このような基体はアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属または合金を円筒状あるいは円柱状に成型し、研磨、研削等を施したものが好適に用いられる。これらの基体は画像の均一性を良くするために、高精度に成型あるいは加工されて用いられる。例えば長手方向の真直度は30μm以下もしくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下が好ましく、現像剤担持体と潜像担持体との間隙の振れ、例えば、垂直面に対し均一なスペーサーを介して突き当て、現像剤担持体を回転させた場合の垂直面との間隙の振れも30μm以下もしくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であることが好ましい。材料コストや加工のしやすさからアルミニウムが好ましく用いられる。
また、弾性層を有する基体としては、芯材と、ウレタン、EPDM、シリコーン等のゴムやエラストマーを含む層構成を有する円筒部材が、特に潜像担持体に現像剤担持体を直接接触させる現像方法の場合好ましく用いられる。
次に、本発明の基体表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体において、樹脂被覆層に含有されているエポキシ変性フェノール樹脂について説明する。
本発明では、フェノール樹脂の環境特性及び耐摩耗性を向上させるべく鋭意検討を行なった結果、エポキシ化合物で変性したフェノール樹脂を使用することによって達成することができたので、以下に詳細に説明する。
本発明にて言うエポキシ変性フェノール樹脂とは、フェノール樹脂が有する水酸基をエポキシ化合物が有するエポキシ基と反応させて得られた樹脂のことであり、フェノール性水酸基をエポキシ基と反応させることにより、樹脂中の水酸基数を減らすことで、耐湿性の向上を図るばかりでなく、硬化剤としても働くエポキシ化合物を添加することによって、樹脂被覆層自体の強度を向上させることもできるため、耐摩耗性に優れた現像剤担持体を得ることができる。
本発明にて使用することのできるエポキシ化合物としては、エピクロルヒドリン、或いはグリシジル型エポキシ化合物としてはグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレート等の脂肪族グリシジルエステル類、ジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテル類、ビスフェノールA型エポキシ化合物やビスフェノールF型エポキシ化合物等の芳香族ジグルシジルエーテル類、リノレイン二量体酸のジグリシジルエステル等の脂肪族ジグリシジルエステル類、グリセリンのトリグリシジルエーテル等の脂肪族トリグリシジルエーテル類、トリヒドロキシフェニルプロパンのトリグリシジルエーテル等の芳香族トリグリシジルエーテル類、p−アミノフェノールのグリシジルエーテル等の芳香族トリグリシジルエーテル類、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタノイック酸のジグリシジルエーテル等の芳香族トリグリシジルエーテル類、ポリアリルグリシジルエーテル等の脂肪族ポリグリシジルエーテル類、テトラフェニレンエタンのテトラグリシジルエーテル等の芳香族ポリグリシジルエーテル類、環状シランエポキシ等の環状脂肪族ポリグリシジルエーテル類、或いは非グリシジル型エポキシ化合物としてはエポキシ化ポリオレフィン等の非環状脂肪族エポキシ類、ジシクロペンタジエン−ダイオキサイド等の環状脂肪族エポキシ類等々が挙げられるが、中でも脂肪族系エポキシ化合物が好ましい。これは、有機溶剤に対して比較的溶解性が高く、且つ化合物中のエポキシ基とフェノールの水酸基との反応性にも優れており、反応後の樹脂は薄層化も容易にでき、基体との密着性や耐摩耗性にも優れているばかりでなく、樹脂中での導電剤やその他の添加剤の分散性も良好となるため、現像剤(トナー)に対して適度な帯電を付与することができたり、或いは他の樹脂やプレポリマー、或いは重合体等を適宜添加することによって、耐摩耗性の更なる向上を図ることができたり、耐溶剤性や柔軟性を改良することが可能になるためである。
またエポキシ化合物の変性量(添加量)は、エポキシ変性フェノール樹脂組成物に対して0.1mol%〜50mol%、好ましくは0.5mol%〜30mol%である。エポキシ化合物の添加量が、樹脂被覆層を構成している樹脂全体の0.1mol%未満の場合、エポキシ変性による効果が小さく、高温高湿度環境下における放置後の画像濃度低下が発生する場合がある。また、エポキシ化合物の添加量が樹脂被覆層を構成している樹脂全体の50mol%を超える場合は、樹脂溶液の粘度上昇が顕著になり、その結果基体表面に均一な樹脂被覆層を形成することが困難になったり、或いはフェノールと未反応のエポキシ化合物が多く残存し、このエポキシサイトに空気中の水分が吸着することによって、高温高湿度環境下における放置後の画像濃度低下が発生することがある。
次にフェノール樹脂について説明する。本発明にて使用することのできるフェノール類としては、フェノール或いはオルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、キシレノール、パラターシャリーブチルフェノール等のアルキルフェノール類;カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の多価フェノール類が挙げられる。フェノール或いはこれらフェノール化合物から選択して単独或いは2種類以上の併用が可能である。
フェノール樹脂としては、周知のノボラック型フェノール樹脂及びレゾール型フェノール樹脂のいずれのタイプのものも使用することができる。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類をシュウ酸や硫酸のような酸性触媒を用いてノボラック化したものであり、レゾール型フェノール樹脂は同様に、フェノール類とアルデヒド類をアルカリ触媒存在下で反応させてレゾール化したものである。本発明においては、樹脂被覆層の基体への密着性や樹脂被覆層の耐摩耗性等を考慮した場合、レゾール型フェノール樹脂が好ましい。
本発明において、エポキシ変性フェノール樹脂を製造する方法としては、例えばフェノール類とアルデヒド類をアルカリ触媒存在下で縮重合反応させ、その系中にエポキシ化合物を添加して付加反応させることによって得る方法が挙げられる。この時、必要に応じて中和剤を添加することで中和を行なっても良い。また、エポキシ樹脂の添加のタイミングは、反応の初期、後期或いは終了直前のいずれであってもかまわない。また、フェノール樹脂溶液とエポキシ樹脂溶液を別途作成しておき、両者を混合し、更にアルカリ触媒を添加し高温で反応させるようにしてもかまわない。
ここでフェノール樹脂製造時に用いることのできるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン等があり、単独或いは2種類以上の併用が可能である。またアルカリ触媒としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物やマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物及びこれらと同様の作用効果を発現させることのできる炭酸塩等の塩類及び酸化物が使用でき、アミン、アンモニア、更に他のアルカリ触媒を用いることも可能である。中和剤としては、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸や塩酸、硫酸等の無機酸等を使用することができる。
上記のエポキシ変性フェノール樹脂は、重量平均分子量Mwとしては500〜3,000が好ましい。重量平均分子量Mwが500より少ないと、硬化後の樹脂被覆層の機械的強度が得られず、満足した耐摩耗性が得られない場合がある。また、重量平均分子量Mwが3,000を超えると、導電剤或いはその他の成分を分散させたとき、塗料粘度が増大し、現像スリーブ上に好適な樹脂被覆層を形成することができなくなることがある。
上記に挙げたようなエポキシ変性フェノール樹脂は、樹脂被覆層を構成するために必要に応じて他の樹脂と混合させて用いても良い。この樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、例えば、未変性又は各種変性フェノール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。機械的強度を考慮すると硬化性の樹脂がより好ましいが、十分な機械的強度を有するものであれば、熱可塑性樹脂も適用可能である。
本発明において、上記した形成材料によって現像剤担持体上に形成される樹脂被覆層は、チャージアップによる現像剤の現像剤担持体上への固着や、現像剤のチャージアップに伴って生じる現像剤担持体の表面から現像剤への帯電付与不良を防ぐために、樹脂被覆層は104Ω・cm以下、好ましくは103Ω・cm以下の体積抵抗値を有していることが良い。現像剤担持体表面の樹脂被覆層の体積抵抗値が104Ω・cmを超えると、現像剤への帯電付与不良が発生し易く、その結果、現像剤担持体上で、所謂ブロッチの発生に伴う斑点画像や波模様画像が発生し易くなる。
次に、本発明の円筒状もしくは円柱状の基体表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体において、樹脂被覆層に含有されている導電剤について説明する。
本発明においては、樹脂被覆層の体積抵抗値を先述した値に調整する目的等で、樹脂被覆層中に導電剤を微粒子の形で分散含有させてある。
この導電性微粒子としては、体積平均粒径が5μm以下、好ましくは0.01〜0.8μmのものがよい。導電性微粒子の体積平均粒径が5μmを超える場合には、樹脂被覆層の体積抵抗を低く制御しづらくなり、トナーのチャージアップによるトナー汚染が発生しやすくなる。
本発明において使用することのできる導電剤としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粉体の微粉末、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウム等の金属酸化物、各種カーボンファイバー、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック、グラファイト等の炭化物、更には金属繊維等が挙げられる。
本発明においては、これらのうち、カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与したり、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電性を得ることができるため好適に用いられる。塗料にした場合の分散安定性も良好となりうる。本発明にて導電剤としてカーボンブラックを使用する場合、一次粒子径が10nm〜100nm、更には10nm〜70nmのものを用いることが好ましい。一次粒子径が10nm未満であるとカーボンブラック同士の凝集性が高まり、結着樹脂等と共に分散させて得られる塗料の粘度が高くなるので、カーボンブラックの塗料中での分散が均一になり難くなることがある。一次粒子径が100nmを超える場合は、樹脂被覆層中でカーボンブラックがまばらに存在し、カーボンブラックが存在しない箇所での導電性が劣るために樹脂被覆層表面で導電性に偏りが生じることがあり、そのため現像バイアスが印加された際に電荷のリークが発生することがある。
また、本発明において好適なこれらの導電性物質の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では樹脂被覆層の抵抗値を所望のレベルに下げることは、通常困難であり、また、現像剤担持体表面の樹脂被覆層に用いられる結着樹脂に対するトナー付着が発生する可能性がある。100質量部を超える場合は、特にサブミクロンオーダーの粒度を有する微粉体を用いた場合、樹脂被覆層の強度(耐摩耗性)が低下することがある。
次に、本発明の円筒状もしくは円柱状の基体表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体において、樹脂被覆層に含有させることのできる球状粒子について説明する。
本発明に使用することのできる樹脂被覆層中には、被覆層表面に凹凸を形成するために球状粒子を含有させても良い。このような球状粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のビニル系重合体や共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂粒子、アルミナ、酸化亜鉛、シリコン、酸化チタン、酸化錫等の酸化物粒子、炭素化粒子、導電処理を施した樹脂粒子等の導電性粒子、その他、例えばイミダゾール化合物のような有機化合物を粒子状にして用いることも可能である。この場合にイミダゾール化合物は、トナーに摩擦帯電電荷を付与する役割も果たす。
このような樹脂被覆層表面に凹凸を形成するための球状粒子は、不定形粒子に比べてより少ない添加量で所望の表面粗さが得られるとともに、表面形状の均一な凹凸面が得られる。
球状の樹脂粒子としては、例えば、懸濁重合法、分散重合法等によって製造された球状の樹脂粒子などが用いられる。球状の樹脂粒子はより少ない添加量で好適な表面粗さが得られ、さらに均一な表面形状が得られやすい。このような球状の樹脂粒子としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子、ナイロン等のポリアミド系樹脂粒子、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン粒子等が挙げられる。粉砕法により得られた樹脂粒子を熱的にあるいは物理的な球形化処理を行ってから用いても良い。
その他、例えば球状の樹脂粒子の表面に無機微粉末を付着させる、あるいは固着させて用いてもよい。このような無機微粉末としては、SiO2、SrTiO3、CeO2、CrO、Al2O3、ZnO、MgO、TiO2の如き酸化物、Si3N4の如き窒化物、SiCの如き炭化物、CaSO4、BaSO4、CaCO3の如き硫酸塩・炭酸塩等が挙げられる。このような無機微粉末は、カップリング剤により処理して用いても良い。特に結着樹脂との密着性を向上させる目的、あるいは粒子に疎水性を与える等の目的では好ましく用いることが可能である。このようなカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等がある。より具体的には、例えばシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のケイ素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
このように球状樹脂粒子表面に対して無機微粉末で処理することにより、塗料中への分散性、塗工表面の均一性、トナーへの帯電付与性、樹脂被覆層の耐汚染性や耐摩耗性等を向上させることができる。
球状粒子に耐汚染性、耐摩耗性などを持たせるために導電性の球状粒子を用いることもできる。導電性の球状粒子としては、例えば、導電処理された球状粒子として、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化マンガン、酸化鉛等の金属酸化物や硫酸バリウム等の顔料の表面に、酸化スズ等の良導電性物質をコートしたもの;或いは酸化亜鉛、酸化銅、酸化イリジウム等の絶縁性金属酸化物中に、酸化数の異なる金属をドーピングして導電性をもたせたものがある。
添加される球状粒子の真密度は、3g/cm3以下のものが好ましい。真密度が3g/cm3を超えると、樹脂被覆層中で球状粒子の分散性が不十分になることがあるため、樹脂被覆層表面に均一な粗さを付与しにくくなり、トナーへの均一な帯電付与や樹脂被覆層の強度が不十分となり、さらにこれらの粒子の利点である耐汚染性や耐摩耗性が発揮できなくなる可能性がある。このような条件を満たす導電性球状粒子の種類としては、球状炭素粒子、導電性物質で表面処理された球状樹脂粒子、導電性微粒子が分散された球状樹脂粒子などが挙げられる。
これらの粒子の中では特に導電性の粒子を用いることが好ましい。このような粒子としては、例えば導電性球状粒子があり、この技術は本発明者らが提案した特開平08−240981号公報にて記載されている。即ち、粒子に導電性を持たせることによって、その導電性のゆえに粒子表面にチャージが蓄積しにくく、トナー付着の軽減やトナーの帯電付与性を向上させることができるからである。本発明において、粒子の導電性としては、体積抵抗値が106Ω・cm以下、より好ましくは10-3Ω・cm〜106Ω・cmの粒子であることが好ましい。このような粒子の体積抵抗が106Ω・cmを超えると、摩耗によって樹脂被覆層表面に露出した球状粒子を核としてトナーの汚染や融着を発生しやすくなるとともに、迅速且つ均一な帯電が行われにくくなることがある。さらには粒子の真密度としては3g/cm3程度以下であることがより好ましい。導電性であっても、粒子の真密度が高すぎる場合、同じ粗さを形成するために添加量を増やさなければならず、また、樹脂または樹脂組成物と真密度差が大きくなるため、製造時の粒子の分散状態が不均一となりやすく、したがって形成された樹脂被覆層においても分散状態が不均一となりやすい。また粒子が球状であると、圧接される現像剤規制部材等との接触面積が低減されるので、摩擦力によるスリーブ回転トルクの増加や、トナーの付着などを軽減することができるのでより好ましい。特に下記に示すような導電性の球状粒子を用いた場合には、より良い効果が得られる。
すなわち特に好ましい導電性球状粒子を得る方法としては、例えば、樹脂系球状粒子やメソカーボンマイクロビーズを焼成して炭素化及び/又は黒鉛化して得た低密度且つ良導電性の球状炭素粒子を得る方法が挙げられる。そして、樹脂系球状粒子に用いられる樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン―ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリルが挙げられる。
より好ましい導電性球状粒子を得る方法としては、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン―ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリルの如き球状樹脂粒子表面に、メカノケミカル法によってバルクメソフェーズピッチを被覆し、被覆された粒子を酸化性雰囲気化で熱処理した後に不活性雰囲気下又は真空下で焼成して炭素化及び/又は黒鉛化し、導電性球状炭素粒子を得る方法が挙げられる。この方法で得る球状炭素粒子は、黒鉛化すると得られる球状炭素粒子の被覆部の結晶化が進んだものとなるので導電性が向上し、より好ましい。
上記した方法で得られる導電性の球状炭素粒子は、いずれの方法でも、焼成条件を変化させることによって得られる球状炭素粒子の導電性を制御することが可能であり、本発明において好ましく使用される。また、上記の方法で得られる球状炭素粒子は、場合によっては、更に導電性を高めるために導電性球状粒子の真密度が大きくなりすぎない範囲で、導電性の金属及び/または金属酸化物のメッキを施していても良い。
球状樹脂粒子を導電性物質で表面処理する方法としては、例えば、球状樹脂粒子からなる芯粒子表面に芯粒子の粒径より小さい導電性微粒子を適当な配合比で機械的に混合し、ファンデルワールス力及び静電気力の作用により、樹脂粒子の周囲に均一に導電性微粒子を付着した後、例えば機械的衝撃力などにより生ずる局部的温度上昇により樹脂粒子表面を軟化させ、導電性微粒子を成膜した導電性処理球状樹脂粒子等が挙げられる。前記の母粒子の構成材料としては、芯密度の小さい球形の有機化合物である樹脂を使用することが好ましく、例えばPMMA、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、又はこれらの共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂粒子を用いることができる。また、小粒子である導電性微粒子としては、導電性微粒子の被膜を均一に行なう為、小粒子の粒径が母粒子の粒径より1/8以下であることが好ましい。
球状樹脂粒子中に導電性微粒子が均一に分散されたものの製造方法としては、例えば、結着樹脂中に導電性微粒子を分散、混練した後、所定の粒径に粉砕し、機械的処理及び熱的処理により球形化した導電性球状粒子や、重合性単量体中に重合開始剤・導電性微粒子及びその他の添加剤を加え、分散機等によって均一に分散せしめた単量体組成物を分散安定剤を含有する水相中に撹拌機等により所定の粒子径になるように懸濁し、重合を行なうことによって得られた導電性微粒子分散の球状粒子等が挙げられる。これらの方法で得られた導電性微粒子分散球状粒子は、前記した芯粒子より小さい粒径の導電性微粒子と適当な配合比で機械的に混合し、ファンデルワールス力及び静電気力の作用により、導電性微粒子分散球状粒子の周囲に均一に導電性微粒子を付着した後、例えば機械的衝撃力などにより生ずる局部的温度上昇により導電性微粒子分散樹脂粒子表面を軟化させ、導電性微粒子を成膜し、更に導電性を高めて使用してもよい。
このような球状粒子の粒径は、体積平均粒径で0.5μm〜40μmであることが好ましい。0.5μm未満では均一な表面凹凸の形成は難しく、表面粗さを大きくしようとした場合添加量が過大になり、樹脂被膜層が脆くなり耐摩耗性が低下することがある。逆に40μmより大きくなると、粒子が現像剤担持体表面から突出しすぎるため、現像剤層の厚みが大きくなり過ぎて現像剤(トナー)の帯電が低下したり、不均一になりやすく、またスリーブゴーストレベルが悪化することがある。そのうえ、バイアスをかけた際に静電潜像担持体(感光ドラム)へリークするポイントになる場合もある。
本発明においては、樹脂被覆層中に、上述したような導電剤或いは球状粒子に加え、更に他の固体粒子を添加することも可能である。例えば、樹脂被膜層の抵抗値を調整する目的で、導電剤に加え、下記に挙げる物質を樹脂被覆層中に含有させても良い。例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粉体の微粉末、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウム等の金属酸化物、各種カーボンファイバー、グラファイトや黒鉛化粒子等の炭化物、更には金属繊維等が挙げられる。
中でも、グラファイト、又はメソカーボンマイクロビーズ粒子又はバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛化粒子が好ましい。
本発明に使用することのできるグラファイトは、大別すると天然黒鉛と人造黒鉛とに分けられる。人造黒鉛は、ピッチコークスをタールピッチ等により固めて1200℃位で一度焼成してから黒鉛化炉に入れ、2300℃位の高温で処理することにより、炭素の結晶が成長して黒鉛に変化する。天然黒鉛は、長い間の天然の地熱と地下の高圧によって完全に黒鉛化したものが地中により産出するものである。これらの黒鉛は、種々の優れた性質を有していることから工業的に広い用途を持っている。黒鉛は、暗灰色ないし黒色の光沢のある非常に柔らかい滑性のある結晶鉱物で、鉛筆等に利用されその他耐熱性、化学的安定性、潤滑性、耐火性に優れるため、電気材料等に粉末や固体や塗料の形で利用されている。結晶構造は六方晶とその他菱面晶系に属するものがあり、完全な層状構造を有している。電気的特性に関しては、炭素と炭素の結合の間に自由電子が存在し、電気の良導体となっている。更にグラファイトは、構造的な性質の一つである「劈開性」に見られるように結晶構造に異方性があり、これによって樹脂被覆層表面に出現させた場合、表面に潤滑性を付与させることも可能であることからも、好ましい材料である。尚、本発明で使用することができる黒鉛は天然、人造のどちらでもよい。
本発明に使用することのできるメソカーボンマイクロビーズ粒子又はバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛化粒子は、前記グラファイトとは、原材料及び製造工程が異なる。そのため、該黒鉛化粒子は結晶性グラファイトより黒鉛化度は若干低いものの、結晶性グラファイトと同様に高い導電性や潤滑性を有しており、更に粒子の形状が結晶性グラファイトの燐片状あるいは針状とは異なりほぼ球状であり、しかも粒子自身の硬度が比較的高いのが特徴である。従って、上記のような特性を有する該黒鉛化粒子は樹脂被覆層中で均一に分散しやすくなるため、均一な表面粗度と耐摩耗性を樹脂被覆層表面に与え、且つ粒子自身の形状が変化しがたいために樹脂被覆層の削れ、或いはその影響による粒子自身の脱落が生じたとしても、樹脂被覆層中から粒子が再度突出あるいは露出してくることもあり、表面形状の変化を小さくおさえることができるうえに、現像剤担持体表面の樹脂被覆層中に該黒鉛化粒子を用いると、トナーのチャージアップを発生させることなく、結晶性グラファイトを用いた場合よりもトナーへの摩擦帯電付与能を向上することが可能となる。
通常、沸点が500℃以上の有機化合物は、常圧下、不活性気相中で加熱すれば固相又は液相を経由して炭素化されるが、200℃付近までの温度で分解を始め、残留物中では環化がおこり、ついで400℃までの間に芳香族化する。この温度を越すと、芳香族同士の重縮合がすすむ。中でも縮合多環芳香族やそれらの混合物であるピッチ類等のように、この温度で液状を示すものは、400℃以上で縮合多環芳香族の平面分子からなる液晶状態をつくる。この液晶のことをメソフェーズと呼ぶ。メソフェーズは500℃までの間で更に高分子化が進んで層状構造を作ったまま固化する。該層状構造は、選択的な配向性の高いものであり、高温処理で黒鉛化になりやすい性質を有している。
よって、原材料としてメソカーボンマイクロビーズ粒子やバルクメソフェーズピッチ粒子のような光学的に異方性で、しかも単一の相からなる粒子を用いて黒鉛化することによって、該黒鉛化粒子の黒鉛化度を高め且つ球状の形状を保持させることができる。上記の原材料の光学的異方性は、芳香族分子の積層から生じるものであり、その秩序性が黒鉛化処理でさらに発達し、高度の黒鉛化度を有する黒鉛化粒子が得られる。
本発明に用いられる黒鉛化粒子を得る原材料としてメソカーボンマイクロビーズ粒子を用いる場合、該メソカーボンマイクロビーズ粒子得る方法として代表的なものは、例えば、石炭系重質油または石油系重質油を300℃〜500℃の温度で熱処理し、重縮合させて粗メソカーボンマイクロビーズ粒子を生成し、反応生成物を濾過、静置沈降、遠心分離などの処理に供することによりメソカーボンマイクロビーズ粒子を分離した後、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶剤で洗浄し、更に乾燥することによって得る方法が挙げられる。
前記のメソカーボンマイクロビーズ粒子を用いて黒鉛化する方法としては、まず乾燥を終えたメソカーボンマイクロビーズ粒子を、破壊させない程度の温和な力で機械的に一次分散させておくことが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。この一次分散を終えたメソカーボンマイクロビーズ粒子は、不活性雰囲気下において200℃〜1500℃の温度で一次加熱処理され、炭化される。一次加熱処理を終えた炭化物は、やはり炭化物を破壊させない程度の温和な力で炭化物を機械的に分散させることが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。
二次分散処理を終えた炭化物は、不活性雰囲気下において約2000℃〜3500℃で二次加熱処理することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。
次に、本発明に用いられる黒鉛化粒子を得る原材料として、バルクメソフェーズピッチ粒子を用いる場合について説明する。
バルクメソフェーズピッチ粒子を得る方法として代表的なものは、例えば、コールタールピッチ等から溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行うことによって得られるメソフェーズピッチ粒子がある。更に、前記重質化処理後、微粉砕し、次いでベンゼンまたはトルエン等により溶剤可溶分を除去することで得られるメソフェーズピッチ粒子である。このバルクメソフェーズピッチ粒子はキノリン可溶分が95質量%以上であることが好ましい。95質量%未満のものを用いると、粒子内部が液相炭化しにくく、固相炭化するため粒子が破砕状のままとなり、球状のものが得られないことがある。
前記のメソフェーズピッチ粒子を用いて黒鉛化する方法としては、先ず、前記のバルクメソフェーズピッチ粒子を2μm〜25μmに微粉砕して、これを空気中で約200℃〜350℃で熱処理することにより、軽度に酸化処理する。この酸化処理によって、バルクメソフェーズピッチ粒子は表面のみ不融化され、次工程の黒鉛化熱処理時の溶融、融着が防止される。この酸化処理されたバルクメソフェーズピッチ粒子は酸素含有量が5質量%〜15質量%であることが好ましい。5質量%未満であると熱処理時の粒子同士の融着が促進されることがあり、また15質量%を超えると粒子内部まで酸化されてしまい、形状が破砕状のまま黒鉛化してしまい、球状のものが得られにくい場合がある。
次に上記の酸化処理したバルクメソフェーズピッチ粒子を窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下にて、約2000℃〜3500℃で熱処理することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。
上記いずれの原材料を用いた黒鉛化粒子の生成方法においても、黒鉛化粒子の焼成温度は2000℃〜3500℃が好ましく、2300℃〜3200℃がより好ましい。
焼成温度が2000℃以下の場合は、黒鉛化粒子の黒鉛化度が不十分であり、導電性や潤滑性が低下してトナーのチャージアップを発生する場合があり、スリーブゴースト、カブリ、画像濃度等の画質が悪化しやすくなり、更に弾性ブレードを使用した場合にブレード傷が発生する場合があり、画像にスジ・濃度ムラ等が発生しやすくなる。焼成温度が3500℃以上の場合は黒鉛化粒子の黒鉛化度が高すぎてしまう場合があり、そのため黒鉛化粒子の硬度が下がり、黒鉛化粒子の耐摩耗性の悪化により樹脂被覆層表面の耐摩耗性、樹脂被覆層の機械的強度及びトナーへの帯電付与性が低下することがある。
更に、該黒鉛化粒子は、黒鉛化度p(002)が、0.20≦p(002)≦0.95であることが好ましい。
上記の黒鉛化度p(002)とは、Franklinのp値といわれるもので、黒鉛のX線回折図から得られる格子間隔d(002)を測定することで、d(002)=3.440−0.086(1−p2)で求められる。このp値は、炭素の六方網目平面積み重なりのうち、無秩序な部分の割合を示すもので、p値が小さいほど黒鉛化度は大きい。
p(002)が0.95を超える場合は、耐摩耗性には優れているが、導電性や潤滑性が低下してトナーのチャージアップを発生する場合があり、スリーブゴースト、カブリ、画像濃度等の画質が悪化しやすくなり、更に弾性ブレードを使用した場合にはブレード傷が発生したり、画像にスジ・濃度ムラ等が発生しやすくなる。p(002)が0.20未満の場合は、黒鉛化粒子の耐摩耗性が劣るため、樹脂被覆層表面の耐摩耗性、樹脂被覆層の機械的強度が低下してしまう場合がある。
また、前記のいずれの原材料から得られた黒鉛化粒子は、いずれの製法にかかわらず、分級により粒度分布をある程度均一にしておくことが、樹脂被覆層の表面形状を均一にするために好ましい。
本発明に使用されるグラファイトや黒鉛化粒子としては、体積平均粒径が0.5μm〜30μmであることが好ましく、1μm〜25μmであることがより好ましい。
体積平均粒径が0.5μm未満では表面に均一な粗さを付与する効果と帯電性能を高める効果が少なく、現像剤への迅速且つ均一な帯電が不十分となると共に、樹脂被覆層の摩耗によるトナーのチャージアップ、トナー汚染及びトナー融着が発生し、ゴーストの悪化、画像濃度低下を生じやすくなる。体積平均粒径が30μmを越える場合には、樹脂被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎ、トナーの帯電が十分に行なわれにくくなってしまうと共に、樹脂被覆層の機械的強度が低下してしまうことがある。
さらに本発明の樹脂被覆層中には、必要に応じて固体粒子として荷電制御剤を含有させることができる。荷電制御剤としては、後述のトナー粒子形成に用いるものと同様なものが使用可能である。
その他の固体粒子として、現像剤担持体表面への現像剤の付着をより軽減化するため、樹脂被覆層中に固体潤滑剤を混合させることもできる。この際に使用し得る固体潤滑剤としては、例えば、二硫化モリブデン、窒化硼素、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石等が挙げられる。また、本発明で使用することのできるこれらの固体潤滑剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では樹脂被覆層の結着樹脂表面に対する現像剤の付着性の改善効果は少なく、100質量部を超えると、特にサブミクロンオーダーの粒度を有する微粉体が多く含まれる材料を用いた場合、樹脂被覆層の強度(耐摩耗性)が低下しうる。これらの潤滑性粒子は、体積平均粒径が好ましくは0.5μm〜25μm程度、より好ましくは1μm〜20μmのものを使用するのが良い。潤滑性粒子の体積平均粒径が0.5μm未満の場合には、潤滑性が十分に得られ難くなり、体積平均粒径が25μmを越える場合には、樹脂被覆層表面の形状への影響が大きく表面性が不均一となりやすく、トナーの均一な帯電化、及び樹脂被覆層の強度の点で不十分になることがある。
本発明の樹脂被覆層を得る方法としては、例えば、各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、前記基体上に塗工することにより得ることが可能である。各成分の分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等公知の方法が適用可能である。
本発明で好適に使用される上記のような構成を有する現像剤担持体表面の樹脂被覆層の表面粗さは、一般的には、JIS算術平均粗さ(Ra)で0.3μm〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。ただし、その現像方式によって好ましい表面粗さは異なる。例えば、図6に示されるような、磁性トナーを用い、現像剤層厚規制部材として現像剤担持体と間隙をもって配置された磁性ブレードを有するような現像装置では、Raが0.3μm〜2.5μm程度にあることが好ましい。0.3μm未満の場合には、現像剤の十分な搬送性が得られず、トナー不足による画像濃度薄や、トナーの過剰な帯電による飛び散りやブロッチなどが発生しやすい。また、2.5μmより大きい場合には、トナーの摩擦帯電が不均一となり、スジむらや、反転カブリ、帯電不足による画像濃度薄などが発生しやすい。また例えば、図7に示されるような、弾性部材が現像剤担持体に圧接して用いられる現像装置の場合には、Raが、0.5μm〜3.5μm程度にあることが好ましい。0.5μmより小さい場合には、現像剤の十分な搬送性が得られず、トナー不足による画像濃度薄や、トナーの過剰な帯電による飛び散りやブロッチなどが発生することがあり、また、現像剤担持体へのトナー融着も発生しやすい。また、3.5μmより大きい場合には、トナーの摩擦帯電が不均一となり、スジむらや、反転カブリ、帯電不足による画像濃度薄などを発生しやすい。
次に本発明について、現像装置を詳細に説明する。
図6は、本発明の現像剤担持体を有する一実施形態の現像装置の模式図を示す。
図6において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体、例えば、感光ドラム601は、矢印B方向に回転する。現像剤担持体としての現像スリーブ608は、現像容器603に供給された磁性トナーを有する一成分系現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像剤担持体たる現像スリーブ608と感光ドラム601とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。図6に示すように、現像ローラー610においては、現像スリーブ608内に、現像剤を現像スリーブ608上に磁気的に吸引且つ保持する為に,磁石(マグネットローラー)609が配置されている。
本発明の現像装置で用いられる現像スリーブ608は、基体としての金属円筒管606上に被覆された樹脂被覆層607を有する。現像容器603中には、ここには図示されていない現像剤補給容器から現像剤供給部材(スクリューなど)612を経由して現像剤が送り込まれてくる。現像容器は、第一室614、第二室615に分割されており、第一室614に送り込まれた現像剤は撹拌搬送部材605により現像容器603および仕切り部材604により形成される隙間を通過して第二室615に送られる。現像剤はマグネットローラー609による磁力の作用により現像スリーブ608上に担持される。第二室615中には現像剤が滞留するのを防止するための撹拌部材611が設けられている。
現像剤は、磁性トナー相互間及び現像スリーブ608上の樹脂被覆層607との摩擦により、感光ドラム601上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図6の例では、現像領域Dに搬送される現像剤の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード(ドクターブレード)602が、現像スリーブ608の表面から約50μm〜500μmの間隙を有して現像スリーブ608に対向するように現像容器603に装着されている。マグネットローラー609の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード602に集中することにより,現像スリーブ608上に現像剤の薄層が形成される。本発明においては、この磁性規制ブレード602にかえて非磁性の規制ブレードを使用することもできる。
この様にして、現像スリーブ608上に形成される現像剤の薄層の厚みは,現像領域Dにおける現像スリーブ608と感光ドラム601との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
本発明の現像剤担持体は、以上の様な現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち非接触型現像装置に組み込むのが特に有効であるが、現像領域 Dにおいて、現像剤層の厚みが現像スリーブ608と感光ドラム601との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、所謂接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができるが、説明の煩雑を避けるため、以下の説明では先に説明した非接触型現像装置を例にとって行なう。
上記現像スリーブ608に担持された磁性トナーを有する一成分系現像剤を飛翔させる為、上記現像スリーブ608にはバイアス手段としての現像バイアス電源613により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ608に印加するのが好ましい。
現像された画像の濃度を高め、且つ階調性を向上させるためには、現像スリーブ608に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ608に印加するのが好ましい。
この時、高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用し、高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。この場合、高電位、低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、現像剤(トナー)は少なくとも現像スリーブ608表面(樹脂被覆層607)との摩擦により帯電する。
図6においては、現像スリーブ608上の現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、現像スリーブから離間されて配置された磁性ブレードの例を示したが、図7に示される如く、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、或いはリン青銅、ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料の弾性板からなる弾性規制ブレードを使用し、この弾性規制ブレード605(2)を現像スリーブに対して、トナーを介して接触あるいは圧接させて用いても良く、本発明においては特にこの形態を有する系において、従来技術と比較して、耐摩耗性及び帯電付与能の面で格段の効果を得ることができる。これは、規制ブレードを接触又は圧接させるタイプの現像装置では、トナー層はさらに強い規制を受けながら現像スリーブ608上に現像剤の薄層を形成することから、現像スリーブ608上に、上記した図6の引用例の場合よりも更に薄い現像剤層を形成することができるため、現像スリーブ608表面の樹脂被覆層への負荷が大きくなり、樹脂被覆層が摩耗し易くなる。本発明では、このような系においても樹脂被覆層の摩耗を軽減することができるため、高耐久化を達成することができる。なお、現像スリーブ608に対する弾性規制ブレード605(2)の当接圧力は、線圧5g/cm(4.9N/m)〜50g/cm(49N/m)であることが、トナーの規制を安定化させ、トナー層厚を好適にさせることができる点で好ましい。弾性規制ブレード605(2)の当接圧力が線圧5g/cm未満の場合には、トナーの規制が弱くなり、カブリやトナーもれの原因となり、線圧50g/cmを超える場合には、トナーへのダメージが大きくなり、トナー劣化やスリーブ及びブレードへの融着の原因となり易い。
図8は、非磁性一成分現像剤を用いた場合に用いられる現像装置の構成の一例を模式的に示したものである。
図8において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する潜像担持体、例えば感光ドラム801は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ808は、金属製円筒管(基体)806とその表面に形成される樹脂被覆層807から構成されている。非磁性一成分現像剤を用いるために金属製円筒管806の内部には磁石は内設されていない。金属製円筒管の替わりに円柱状部材を用いることもできる。
現像器であるホッパー803中には非磁性一成分現像剤804を撹拌するための撹拌翼810が設けられている。
現像スリーブ808に現像剤804を供給し、かつ現像後の現像スリーブ808の表面に存在する現像剤804を剥ぎ取るための現像剤供給・剥ぎ取り部材813が現像スリーブ808に当接している。現像剤供給・剥ぎ取り部材である供給・剥ぎ取りローラ813が現像スリーブ808と同じ方向に回転することにより、供給・剥ぎ取りローラ813の表面は、現像スリーブ808の表面とカウンター方向に移動することになり、ホッパー803から供給された非磁性トナーを有する一成分非磁性現像剤は、現像剤スリーブ808に供給され、現像スリーブ808が一成分現像剤804を担持して、矢印A方向に回転することにより、現像スリーブ808と感光ドラム801とが対向した現像部Dに非磁性一成分現像剤804を搬送する。現像スリーブ808に担持されている一成分現像剤は、現像スリーブ808の表面に対して現像剤層を介して圧接する現像剤層厚規制部材811により現像剤層厚が規定される。非磁性一成分現像剤804は現像スリーブ808との摩擦により、感光ドラム801上の静電潜像を現像可能な摩擦帯電電荷を得る。
現像スリーブ808上に形成される非磁性一成分現像剤804の薄層の厚みは、現像部における現像スリーブ808と感光ドラム801との間の最小間隙Dよりも更に薄いものであることが好ましい。このような現像剤層により静電潜像を現像する非接触型現像装置に、本発明は特に有効である。しかし、現像部において現像剤層の厚みが現像スリーブ808と感光ドラム801との間の最小間隙D以上の厚みである接触型現像装置にも、本発明は適用することができる。
説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、非接触型現像装置を例にとって行なう。
上記現像スリーブ808には、これに担持された非磁性トナーを有する一成分非磁性現像剤804を飛翔させるために、電源809により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(非磁性現像剤804が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧が、現像スリーブ808に印加されることが好ましい。現像画像の濃度を高め或は階調性を向上するために、現像スリーブ808に交番バイアス電圧を印加して、現像部に向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合、上記画像部の電位と背景部の電位の間の値を有する直流電圧成分が重畳された交番バイアス電圧を現像スリーブ808に印加することが好ましい。
現像剤供給・剥ぎ取り部材としては、樹脂、ゴム、スポンジの如き弾性ローラ部材が好ましい。剥ぎ取り部材としては、弾性ローラに代えてベルト部材又はブラシ部材を用いることもできる。現像剤供給・剥ぎ取り部材として弾性ローラからなる供給・剥ぎ取りローラ813を用いる場合には、供給・剥ぎ取りローラ813の周速は、表面がカウンター方向に回転する場合、現像スリーブ808の周速100%に対して、好ましくは20%〜120%、より好ましくは30%〜100%であることが良い。
供給・剥ぎ取りローラ813の周速が20%未満の場合には、現像剤の供給が不足し、ベタ画像の追従性が低下し、ゴースト画像の原因となることがあり、120%を超える場合には、現像剤の供給量が多くなり現像剤層厚の規性不良や帯電量不足によるカブリの原因となり、さらにトナーにダメージを与えやすいため、トナー劣化によるカブリやトナー融着の原因となることがある。
供給・剥ぎ取りローラの回転方向が現像スリーブの表面と同(順)方向の場合には、供給ローラの周速は、スリーブ周速に対して、好ましくは100%〜300%、より好ましくは101%〜200%であることが上記のトナー供給量の点で良い。供給・剥ぎ取りローラの回転方向は、現像スリーブの表面とカウンター方向に回転することが、剥ぎ取り性及び供給性の点でより好ましい。
現像スリーブ808に対する現像剤供給・剥ぎ取り部材813の侵入量は、0.5mm〜2.5mmであることが、現像剤の供給及び剥ぎ取り性の点で好ましい。
現像剤供給・剥ぎ取り部材813の侵入量が0.5mm未満の場合には、剥ぎ取り不足により、ゴーストが発生し易くなり、侵入量が2.5mmを超える場合には、トナーのダメージが大きくなり、トナー劣化により融着やカブリの原因となり易い。
図8の現像装置では、現像スリーブ808上の非磁性一成分現像剤804の層厚を規制する部材として、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、或はリン青銅、ステンレス銅の如き金属弾性を有する材料の弾性規制ブレード811を使用し、この弾性規制ブレード811を図8の現像装置では現像スリーブ808に回転方向と逆の姿勢で圧接させ、現像スリーブ808上に更に薄い現像剤層を形成することができる。
この弾性規制ブレード811としては、特に安定した規制力とトナーへの安定した(負)帯電付与性のためには、安定した加圧力の得られるリン青銅板表面にポリアミドエラストマー(PAE)を貼り付けた構造のものを用いることが好ましい。ポリアミドエラストマー(PAE)としては、例えばポリアミドとポリエーテルの共重合体が挙げられる。現像スリーブ8に対する現像剤層厚規制部材11の当接圧は、線圧5g/cm(4.9N/m)〜50g/cm(49N/m)であることが、現像剤の規制を安定化させ、現像剤層厚を好適にさせることができる点で好ましい。現像剤層厚規制部材811の当接圧力が線圧5g/cm未満の場合には、現像剤の規制が弱くなり、カブリやトナーもれの原因となり、線圧50g/cmを超える場合には、トナーへのダメージが大きくなり、トナー劣化やスリーブ及びブレードへの融着の原因となり易い。
図6、図7及び図8はあくまでも本発明の現像装置を模式的に例示したものであり、前記した層厚規制部材以外にも、現像容器603(ホッパー)の形状、撹拌翼605、611の有無、磁極の配置、供給部材612の形状、補給容器の有無、などに様々な形態があることは言うまでもない。
次に本発明の現像剤担持体が組み込まれる二成分現像装置について説明例示する.図9は、二成分現像剤を用いるのに好適な現像装置の模式図を表す。図9において、現像容器903の現像室914内に、矢印E方向に回転される静電潜像担持体901に対向して現像剤担持体としての非磁性現像スリーブ909を備えており、本発明においては基体としての円筒状の非磁性金属907の表面に樹脂被覆層908が設けられている。この現像スリーブ909内に磁界発生手段としての磁性ローラー906が不動に放置されており、現像ローラー910を形成している。磁性ローラー906はS1〜S3、N1、N2の5極構成に着磁されている。現像室914内には、トナーと磁性キヤリアとを混合した二成分現像剤が収容されている。この現像剤は、現像室914上端開放の隔壁904の開口を通って現像容器903の撹拌室915内に送られると、トナー室905から撹拌室915内に供給されたトナーがトナー送り規制部材913を介して補給され、撹拌室915内の第1現像剤撹拌・搬送手段912によって混合される。撹拌室915で撹拌された現像剤は、隔壁904の図示しない他の開口を通って現像室914内に戻され、そこで現像室915内の第2現像剤撹拌・搬送手段911により、撹拌・搬送されながら現像スリーブ909に搬送される。現像スリーブ909に供給された現像剤は、上記の磁石ローラ906の磁力の作用により磁気的に拘束され、現像スリーブ909上に担持され、現像スリーブ909の下部設けられた現像剤規制部材ブレード902での規制によって現像スリーブ909上で現像剤の薄層に形成されながら、現像スリーブ909の矢印F方向への回転に伴い潜像担持体901と対向した現像部Gへと搬送され、そこで潜像担持体901上の静電潜像の現像に供される。現像に消費されなかった残余の現像剤は、現像スリーブ909の回転により現像容器914内に回収される。現像容器914内では同極のS2、S3間での反発磁界により現像スリーブ909上に磁気的に拘束されている現像残りの残余の現像剤を剥ぎ取るようになっている。現像スリーブ上方にはトナー飛散を防止するために飛散防止部材916が固定、設置されている。図9は、あくまでも模式的な例であり、容器の形状、撹拌部材の有無、磁極の配置、回転方向等に様々な形態があることは言うまでもない。
次に、本発明の現像装置で用いられる現像剤(トナー)について説明する。
本発明にて使用できる現像剤(トナー)は、重量平均粒径が4μm〜11μmであることが好ましい。このようなものを使用すれば、トナーの帯電量或いは画質及び画像濃度等がバランスのとれたものとなる。
次いで結着樹脂について説明する。本発明に用いることのできる現像剤(トナー)の結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、例えばビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられるが、この中でも特にビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明の現像装置に用いられる現像剤(トナー)には帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤をトナー粒子に配合(内添)、またはトナー粒子と混合(外添)して用いることができる。これは、荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが可能となるためである。
例えば、正の荷電制御剤としては、ニグロシン、トリアミノトリフェニルメタン系染料、イミダゾール化合物等の含窒素複素環化合物及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレード、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレートを単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
また負の荷電制御剤としては、例えば有機金属化合物、キレート化合物が有効である。その例としてはアルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジタ−シャリ−ブチルサリチル酸クロム等があり、特にアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体または塩が好ましい。
また、本発明に用いることのできる現像剤(トナー)が、磁性現像剤(トナー)である場合、用いることのできる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、およびこれらの混合物等が挙げられる。
なお上記磁性材料に、着色剤としての役目を兼用させて使用してもかまわない。
本発明に用いることのできる現像剤(トナー)に使用し得る着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が挙げられる。
本発明に用いることのできる現像剤(トナー)には離型剤を使用することが好ましく、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、カルナバワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類等が挙げられる。
本発明に使用できる現像剤(トナー)には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ微粉体、酸化チタン、アルミナ等の無機微粉体を外添すること、即ち現像剤表面近傍に存在していることが好ましい。特にこの中でも、シリカ微粉体が好ましい。更に、上記無機微粉体以外の外添剤を更に加えて用いても良い。例えば、ポリフッ化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリフッ化ビニリデン、或いは酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム等の研磨剤がある。
トナーはキヤリアと混合して二成分現像剤として用いることもできる。キヤリア材料としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトといった金属、及びそれらの合金、或いは希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト及びリチウム系フェライト等のソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライトといった鉄系酸化物、およびそれらの混合物、さらには、ガラス、炭化ケイ素などのセラミックス粒子、樹脂粉体、磁性材料を含有する樹脂粉体などをあげることができ、通常は平均粒径が20μm〜300μm程度の粒状物として用いる。
このようなキヤリアは上記に挙げた粒状物を直接キヤリア粒子として用いても良いが、トナーの摩擦帯電電荷を調整したりキヤリアへのトナースペントを防止したりするために、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等のコート剤により適宜粒子表面に樹脂コートを施して用いることもできる。
現像剤(トナー)を作製するには、結着樹脂、着色剤としての顔料又は染料、磁性体、離型剤、必要に応じて荷電制御剤、その他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミキサー等の混合機により充分に混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのごとき熱混練機を用いて溶融して樹脂類を互いに相溶せしめた中に離型剤、顔料、染料、磁性体を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行なってトナー粒子を得ることができる。さらに、必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により充分に混合し、現像剤(トナー)を得ることができる。
このようなトナーは、種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。そのような方法としては、撹拌羽根またはブレードなど、およびライナーまたはケーシングなどを有する装置で、例えば、トナーをブレードとライナーの間の微小間隙を通過させる際に、機械的な力により表面を平滑化したりトナーを球形化したりする方法、温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法、熱気流中にトナーを曝し、球形化する方法等がある。また、球状のトナーを直接作る方法としては、水中にトナー結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー化する方法がある。一般的な方法としては、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、離型剤、その他の添加剤を均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層、例えば水相中に適当な撹拌機を用いて適度な粒径に分散し、さらに重合反応を行ない、所望の粒径を有する現像剤を得る方法である。
以下に本発明に関わる物性の測定方法について述べる。
(1)樹脂被覆層の形成に使用される結着樹脂の重量平均分子量
測定は、THFを展開溶媒としたGPCにて以下の条件で測定した。
測定装置 HLC8120GPC
測定条件 測定温度40℃、流量0.6ml/分、サンプル注入量20μl、
サンプル濃度0.5%
検出器 屈折率計
カラム条件 TSKgel Super2000
TSKgel Super3000
TSKgel Super4000
TSKgel Super5000
TSKgel Super6000
TSK Guard Colum H−Hを連結した。
(2)黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)
黒鉛化度p(002)は、マックサイエンス社製の強力型全自動X線回折装置“MXP18”システムにより、黒鉛のX線回折スペクトルから得られる格子間隔d(002)を測定することで、d(002)=3.440−0.086(1−p2)で求めた。
尚、格子間隔d(002)は、CuKαをX線源とし、CuKβ線はニッケルフィルターにより除去している。標準物質に高純度シリコンを使用し、C(002)及びSi(111)回折パターンのピーク位置から算出した。主な測定条件は以下のとおりである。
X線発生装置:18kW
ゴニオメータ:横型ゴニオメータ
モノクロメータ:使用
管電圧:30.0kV
管電流:10.0mA
測定法:連続法
スキャン軸:2θ/θ
サンプリング間隔:0.020deg
スキャン速度:6.000deg/min
発散スリット:0.50deg
散乱スリット:0.50deg
受光スリット:0.30mm
(3)1μm以上の粒子の粒径測定(トナー粒子は除く)
レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型或いはLS−230型粒度分布計(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としては純水を使用する。純水にて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行した。
次に純水10ml中に界面活性剤3滴〜4滴を加え、更に測定試料を5mg〜25mg加えた。試料を懸濁した水溶液は超音波分散器で1分間〜3分間分散処理を行なって試料液とし、前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、体積分布から算出した体積平均粒径を求めた。
(4)1μm未満の微粒子の粒径測定
電子顕微鏡を用いて粒径を測定した。撮影倍率は6万倍にしたが、難しい場合は低倍率で撮影した後に6万倍となるように写真を拡大プリントした。写真上で1次粒子の粒径を測る。この際、長軸と短軸を測り、平均した値を粒径とする。これを、100サンプルについて測定し、50%値をもって平均粒径とした。
(5)現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)の測定
JIS B0601(2001)の表面粗さに基づき、小坂研究所製表面粗度計SE−3500にて、軸方向3点×周方向3点=9点について各々測定し、その平均値をとった。測定条件としては、カットオフ0.8mm、測定距離8.0mm、送り速度0.5mm/secにて行なった。
(6)樹脂被覆層の体積抵抗の測定
100μmの厚さのPETシート上に7μm〜20μmの厚さの樹脂被覆層を形成し、ASTM規格(D−991−82)及び日本ゴム協会標準規格SRIS(2301−1969)に準拠した、導電性ゴム及びプラスチックの体積抵抗測定用の4端子構造の電極を設けた電圧降下式デジタルオーム計(川口電機製作所製)を使用して測定した。尚、測定環境は20℃〜25℃、50%RH〜60%RHとした。
(7)粒子の体積抵抗の測定
粒状試料を40mmφのアルミリングに入れ、2500Nで加圧成型し、抵抗率計ロレスタAP、又はハイレスタIP(共に、三菱油化製)にて4端子プローブを用いて体積抵抗値を測定した。尚、測定環境は、20℃〜25℃、50%RH〜60%RHとした。
(8)球状粒子の真密度の測定
本発明で使用する球状粒子の真密度は、乾式密度計アキュピック1330(島津製作所製)を用いて測定した。
(9)樹脂被覆層の膜厚(削れ量)の測定
樹脂被覆層の削れ量(膜削れ)の測定としてはKEYENCE社製レーザー寸法測定器を用いた。コントローラLS−5500及びセンサーヘッドLS−5040Tを用い、スリーブ固定治具及びスリーブ送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、スリーブの外径寸法の平均値から測定を行った。測定はスリーブ長手方向に対し30分割して30箇所測定し、更にスリーブを周方向に90°回転させた後更に30箇所、計60箇所の測定を行い、その平均値をとった。表面被覆層形成前のスリーブの外径を予め測定しておき、表面被覆層形成後の外径、更に耐久使用後の外径を測定し、その差分をコート膜厚及び削れ量とした。
(10)トナー粒子の粒径測定
測定装置としては、コールターカウンターTA−II型、或いはコールターマルチサイザーII又はコールターマルチサイザーIII(いずれもべックマン・コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON−II(べックマン・コールター社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100ml〜150ml中に分散剤として、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.1ml〜5ml加え、さらに測定試料を2mg〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャー或いは30μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。この結果より、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。
次に、具体的実施例をもって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、以下の配合における部数は、特にことわらない限りすべて質量部である。
(樹脂の製造例1)
フェノール1molを37%ホルムアルデヒド水溶液0.5molに溶解させた後、50%水酸化ナトリウム水溶液0.4molを加え、90℃まで昇温後1時間保持させて反応を行なった後、グリシジルメタクリレート0.1molと37%ホルムアルデヒド水溶液0.5molを加え、更に95℃で1時間還流状態を保持させた。その後減圧状態で脱水を行ない、室温まで冷却してからメタノールで希釈し、固形分が50%になるように調整し、エポキシ変性フェノール樹脂A−1を含有する樹脂溶液を得た。該樹脂A−1の重量平均分子量(Mw)は900であった。
(樹脂の製造例2)
フェノール1mol、37%ホルムアルデヒド水溶液1mol、ジグリシジルエーテル0.1mol及び50%水酸化ナトリウム水溶液0.5molを加え、95℃で2時間還流状態を保持させた。その後減圧状態で脱水を行ない、室温まで冷却してからメタノールで希釈し、固形分が50%になるように調整し、エポキシ変性フェノール樹脂A−2を含有する樹脂溶液を得た。該樹脂A−2の重量平均分子量(Mw)は1100であった。
(樹脂の製造例3)
樹脂の製造例1において、グリシジルメタクリレートの添加量を0.001molにする以外は樹脂の製造例1と同様にして、エポキシ変性フェノール樹脂A−3を含有する樹脂溶液を得た。該樹脂A−3の重量平均分子量(Mw)は770であった。
(樹脂の製造例4)
樹脂の製造例1において、グリシジルメタクリレートの添加量を2molにする以外は樹脂の製造例1と同様にして、エポキシ変性フェノール樹脂A−4を含有する樹脂溶液を得た。該樹脂A−4の重量平均分子量(Mw)は1500であった。
(樹脂の製造例5)
樹脂の製造例1において、グリシジルメタクリレートに替えてビスフェノールAのグリシジルエーテルを用いた以外は樹脂の製造例1と同様にして、エポキシ変性フェノール樹脂A−5を含有する樹脂溶液を得た。該樹脂A−5の重量平均分子量(Mw)は1000であった。
(樹脂の比較製造例1)
樹脂の製造例1において、グリシジルメタクリレートに替えてポリビニルブチラール樹脂を用いた以外は樹脂の製造例1と同様にして、A−6を含有する樹脂溶液を得た。該樹脂A−6の重量平均分子量(Mw)は1300であった。
(樹脂の比較製造例2)
樹脂の製造例1において、グリシジルメタクリレートに替えてベンゾグアナミンを用いた以外は樹脂の製造例1と同様にして、A−7を含有する樹脂溶液を得た。該樹脂A−7の重量平均分子量(Mw)は1200であった。
(樹脂の比較製造例3)
樹脂の製造例1において、グリシジルメタクリレートに替えてm−キシレン樹脂を用いた以外は樹脂の製造例1と同様にして、A−8を含有する樹脂溶液を得た。該樹脂A−8の重量平均分子量(Mw)は1350であった。
(現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例1)
樹脂A−1(メタノール50%含有溶液) 160部
黒鉛化粒子B−1 36部
導電性カーボンブラック(一次粒径25nm) 4部
凹凸形成粒子C−1 12部
メタノール 120部
ここで、上記黒鉛化粒子B−1は、メソカーボンマイクロビーズ粒子を酸化性雰囲気下で熱安定化処理した後に2800℃で焼成することにより黒鉛化して得たもので体積平均粒径が4.5μmである。黒鉛化粒子B−1の物性は表1に示した。更に、表2には樹脂被覆層に凹凸を付与するための粒子の物性を記載した。
上記材料に直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として加え、サンドミルにて2時間分散し、フルイを用いてビーズを分離し、メタノールで固形分を34%に調整し塗工液を得た。この塗工液を用い、外径20mmφ、算術平均粗さRa=0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管上を垂直に立て、一定速度で回転させるとともに、上下端部にマスキングを施し、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗布することによって樹脂被覆層を形成させた。続いて熱風乾燥炉により150℃、30分間加熱して樹脂被覆層を硬化させ現像剤担持体(現像スリーブ)S−1を作製した。表3に該現像剤担持体(現像スリーブ)S−1の樹脂被覆層の処方と物性を挙げた。
(現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例2〜10及び比較製造例1〜4)
表3に記載した処方により、現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例1と同様にしてメタノールにて固形分を34%に調整した塗工液を作製した後、表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体(現像スリーブ)S−2〜S−14を製造した。ここで樹脂A−0は、フェノール1molを37%ホルムアルデヒド水溶液1molに溶解させた後、25%アンモニア水溶液0.7molを加え、90℃まで昇温後2時間保持させて反応を行なった後、その後減圧状態で脱水を行ない、室温まで冷却してからメタノールで希釈し、固形分が50%になるように調整することによって得られた未変性フェノール樹脂である。
(現像剤の製造例1)
スチレン 70部
アクリル酸n−ブチル 20部
マレイン酸モノブチル 8部
ジビニルベンゼン 1部
ベンゾイルパーオキサイド 1部
ジ−t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート 0.5部
上記混合物にポリビニルアルコール部分ケン化物1部を溶解した水200部を加え、激しく撹拌させて懸濁分散液とした。更に、水50部を加え、窒素置換した反応器に上記懸濁分散液を添加し、反応温度85℃にて9時間懸濁重合反応させた。反応終了後、水洗し、脱水、乾燥工程を経て、ビニル系樹脂(1)を得た。
上記ビニル系樹脂(1) 100部
マグネタイト 90部
アゾ系鉄錯体化合物(負帯電性荷電制御剤) 2部
フィッシャートロプシュワックス 4部
上記混合物を130℃に加熱した2軸混練押し出し機にて混練した。得られた混練物を冷却した後、ハンマーミルで粗粉砕し、該粗粉砕物をジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕粉をコアンダ効果を利用した多分割分級装置で、超微粉及び粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒径(D4)が7.5μmのトナー粒子を得た。
このトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザン及びジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)を1.3部加え、ヘンシェルミキサーにて混合し、本発明に使用する一成分系負帯電性磁性現像剤(トナー1)を得た。
<実施例1>
先ず、前述の現像スリーブS−1にマグネットローラを挿入し、両端にフランジを取り付けた。
このようにして得られた現像剤担持体を、静電潜像担持体としてOPCドラムを使用したキヤノン製デジタル複写機IR2000(230V機仕様)の現像器に組み込み、上記トナー1を用いて1枚/10秒の間欠モードで15万枚画出しを行なった後、その状態で一週間放置した後(朝一)に再度画出しを行なった。画像評価は、常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)、低温低湿度環境(15℃、10%RH;L/L)及び高温高湿度環境(33℃、90%RH;H/H)において実施した。なお現像装置の概略は、図7に挙げたようなものであり、現像剤層厚規制部材としては、ウレタンゴムからなる弾性ブレードを使用した。画像評価の結果は表4に挙げたように、いずれの環境下においても終始良好な現像性を得ることができた。
評価方法及び評価基準は以下の通りである。
(1)画像濃度
画像比率5.5%であるテストチャート上の5mmφ丸部のコピー画像濃度を、反射濃度計RD918(マクベス製)により反射濃度測定を行い、10点の平均値をとって画像濃度とした。
(2)カブリ
適正画像におけるベタ白画像の反射率を測定し、更に未使用の転写紙の反射率を測定し、(ベタ白画像の反射率の最悪値―未使用転写紙の反射率の平均値)をカブリ濃度とし、評価結果を下記の指標にて示した。(但し、反射率の測定はランダムに10点の測定を行なった。)反射率はTC−6DS(東京電色製)によって測定を行なった。
A:1.0%以下(目視ではカブリは認められない)
B:1.0%〜2.0%(注視しなければカブリは認められない)
C:2.0%〜3.0%(カブリはあるものの実用上問題なし)
D:3.0%以上(カブリが目立ちNGレベル)
(3)画質
A:倍率が10倍のルーペで見ても飛び散りのない鮮明な画像である
B:目視で見る限り鮮明な画像である
C:若干飛び散りが見られるものの実用上問題ない
D:飛び散り以外に文字のカスレが目立つ
(4)スリーブゴースト
図10(A)に示した幅aで長さlのベタ黒の帯状画像Xをコピーした後、図10(B)に示した幅b(>a)で長さlのハーフトーン画像Yをコピーした際、該ハーフトーン画像上に現れる濃淡差(図10(C)のA,B,Cの部分)を評価した。
A:濃度差が全く見られない。(濃度差が0.02未満)
B:BとCで軽微な濃度差が見られる。(濃度差が0.02以上0.04未満)
C:A,B,Cの各々で若干の濃度差が見られる。(濃度差が0.04以上0.07未満)
D:顕著な濃度差が見られる。(濃度差が0.07以上)
(5)フェーディング
ベタ黒画像をコピーして、図2に示したような画像上で帯状に発生した濃度薄の部分の濃度と正常画像部の濃度との差で評価した。
A:濃度薄発生部分が全く見られない。(濃度差が0.02未満)
B:軽微な濃度薄発生部分が見られる。(濃度差が0.02以上0.08未満)
C:濃度薄発生部分が見られるものの、実用画像では問題にならないレベル。
(濃度差が0.08以上0.20未満)
D:顕著な濃度差が見られ、実用画像でも問題とされるレベル。
(濃度差が0.20以上)
(6)現像剤担持体の表面粗さ(Ra)変化
評価前と評価終了後の現像剤担持体の表面粗さ(Ra)の差(ΔRa)を比較することで、現像剤担持体表面の耐摩耗性を判断した。
A:耐摩耗性が極めて良好。(ΔRaが0.10μm未満)
B:耐摩耗性は比較的良好。(ΔRaが0.10μm以上0.20μm未満)
C:耐摩耗性はやや弱いものの実用上問題ない。
(ΔRaが0.20μm以上0.35μm未満)
D:耐摩耗性は弱く、実用上でも問題になる。(ΔRaが0.35μm以上)
(7)樹脂被覆層の耐摩耗性
耐久前後の現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)と樹脂被覆層の膜厚の削れ量を測定した。
<実施例2〜4、参考例1、実施例5〜9及び比較例1〜4>
夫々現像スリーブS−1〜S−14を用い、実施例1と同様の評価方法にて、画像評価を行なった。結果は表4及び5に挙げた。
(現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例11〜15及び比較製造例5〜7)
表6に記載した処方により、現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例1と同様にしてメタノールにて固形分を34%に調整した塗工液を作製した後、表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体(現像スリーブ)S−15〜S−22を製造した。但し、スリーブ素管としては、外径24.5mmφ、中心線平均粗さRa=0.3μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を用いた。
(現像剤の製造例2)
テレフタル酸 15mol%
n−ドデセニル無水コハク酸 12mol%
無水トリメリット酸 25mol%
エチレンオキサイド付加ビスフェノールA 28mol%
プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA 20mol%
上記原料を5リットル4口フラスコに仕込み、還流冷却器、水分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、フラスコ内にN2ガスを導入しながら180℃で縮合重合反応を行い、反応終了後、水洗し、脱水、乾燥工程を経て、ポリエステル樹脂(2)を得た。
上記ポリエステル系樹脂(2) 100部
マグネタイト 85部
アゾ系鉄錯体化合物(負帯電性荷電制御剤) 2部
低分子量エチレン−プロピレン共重合体 3部
上記材料を用い、現像剤の製造例1と同様の方法にて重量平均粒径(D4)が6.7μmのトナー粒子を得た。
このトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)を1.2部、チタン酸ストロンチウム4.0部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合し、本発明に使用する一成分系負帯電性磁性現像剤(トナー2)を得た。
<実施例10〜12、参考例2、実施例13及び比較例5〜7>
先ず、前述の現像スリーブS−15〜S−22にマグネットローラを挿入し、両端にフランジを取り付けた。
このようにして得られた現像剤担持体を、静電潜像担持体としてアモルファスシリコンドラムを使用したキヤノン製デジタル複写機IR6000の現像器に組み込み、上記トナー2を用いて連続モードで50万枚画出しを行なった後、その状態で一週間放置した後(朝一)に再度画出しを行なった。画像評価は、常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)、低温低湿度環境(15℃、10%RH;L/L)及び高温高湿度環境(33℃、90%RH;H/H)において実施した。なお現像装置の概略は、図5に挙げたようなものであり、現像剤層厚規制部材としては、磁性ブレードを使用した。画像評価の結果は表7に挙げた。
(現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例16〜20及び比較製造例8〜10)
表6に記載した処方により、現像剤担持体(現像スリーブ)の製造例1と同様にしてメタノールにて固形分を34%に調整した塗工液を作製した後、表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体(現像スリーブ)S−23〜S−30を製造した。但し、スリーブ素管としては、外径20mmφ、算術平均粗さRa=0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を用いた。
(現像剤の製造例3)
高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた2リットル用四つ口フラスコ中に、イオン交換水880部と0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液450部を添加し、回転数を12000rpmに調整し、58℃に加温せしめた。ここに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む分散媒系を調製した。
一方、分散質系は、
スチレンモノマー 170部
n−ブチルアクリレートモノマー 30部
ローダミン顔料 14部
ポリエステル樹脂 8部
(テレフタル酸とプロピレンオキサイド付加ビスフェノールAをモル比で50:50
で混合し、縮重合して得られたもの)
サリチル酸クロム化合物(負帯電性荷電制御剤) 2部
エステル系ワックス 20部
上記混合物をアトライターを用い3時間分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を添加し分散物を得た。これを上記分散媒中に投入し回転数を維持しつつ12分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、内温を80℃に昇温させ50rpmで重合を10時間継続させた。重合終了後スラリーを冷却し、希塩酸を添加し分散剤を除去せしめた。更に洗浄及び乾燥してマゼンタトナー粒子を得た。該マゼンタトナーの重量平均粒径(D4)は8.3μmであった。
このトナー粒子100部に対し、ジメチルジクロルシラン処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)を0.4部、アルミナ微粉末(BET100m2/g)を0.4部、チタン酸ストロンチウム0.5部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合した。
このマゼンタトナー6部と、スチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合体(共重合比=45:35:20)で表面を被覆したCu(15)−Zn(15)−Fe(70)系フェライト粒子(括弧内は質量比)の94部とを混合して二成分系負帯電性非磁性現像剤(現像剤3)を得た。
<実施例14〜18及び比較例8〜10>
現像スリーブS−23〜S−30を、静電潜像担持体としてOPCドラムを使用したキヤノン製フルカラーデジタル複写機CP2100改造機のマゼンタトナー用現像器に組み込み、上記現像剤3を用いて連続モードで5万枚画出しを行なった後、その状態で一週間放置した後(朝一)に再度画出しを行なった。画像評価は、常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)、低温低湿度環境(15℃、10%RH;L/L)及び高温高湿度環境(33℃、90%RH;H/H)において実施した。なお現像装置の概略は、図8に挙げたようなものを非磁性現像剤用に改造したものであり、現像剤層厚規制部材としては、リン青銅薄板上にショアーD硬度40度のポリアミドポリエーテルエラストマーを射出成形にて設けて改造した弾性規制部材を用いた。画像評価の結果は表7に挙げた。