次に、本発明の現像剤担持体、及びそれを用いた現像装置について更に詳細に述べる。
まず、本発明の現像剤担持体の樹脂被覆層に用いられる黒鉛化粒子について説明する。本発明に用いられる黒鉛粒子としては、黒鉛化度p(002)が0.20≦p(002)≦0.95であることが好ましく、更に好ましくは、下記式(1)で計算された値の平均値である平均円形度SF−1が0.64以上であることを満足していることが好ましい。
円形度=(4×A)/{(ML)2×π} (1)
[式中、MLは粒子投影像のピタゴラス法最大長を表し、Aは粒子像の投影面積を表す。]
この黒鉛化粒子は、現像剤担持体の被覆層表面に均一な表面粗さを形成すると同時に、被覆層表面が摩耗した場合でも被覆層の表面粗さ変化が少なく、トナーコート量を安定化させると共に、且つトナーの帯電性を安定化させるために添加するものである。更に、この黒鉛化粒子は被覆層表面へのトナー融着等を低減する効果もある。
上記の黒鉛化度p(002)とは、Franklinのp値といわれるもので、黒鉛のX線回折図から得られる格子間隔d(002)を測定することで、d(002)=3.440−0.086(1−P2)で求められる。このp値は、炭素の六方網目平面積み重なりのうち、無秩序な部分の割合を示すもので、p値が小さいほど黒鉛化度は大きい。
本発明に用いられる黒鉛化粒子としては、特開平02−105181号公報、特開平03−036570号公報等において現像剤担持体表面の樹脂被覆層中に用いられている、コークスなどの骨剤をタールピッチ等により固めて成形後1000〜1300℃程度で焼成してから2500〜3000℃程度で黒鉛化して得た人造黒鉛、あるいは天然黒鉛からなる結晶性グラファイトとは、原材料及び製造工程が異なる。そのため、黒鉛化粒子は従来用いていた結晶性グラファイトより黒鉛化度は若干低いものの、従来に用いられていた結晶性グラファイトと同様に高い導電性や潤滑性を有しており、更に粒子の形状が従来に用いられていた結晶性グラファイトの燐片状あるいは針状とは異なり、概略球状でしかも粒子自身の硬度が比較的高いのが特徴である。従って、上記のような特性を有する黒鉛化粒子は樹脂被覆層中で均一に分散しやすくなるため、均一な表面形状と耐磨耗性を被覆層表面に与え、且つ粒子自身の形状が変化しがたいために被覆層の樹脂部分等の選択的な削れ、またはその影響による粒子自身の脱落が生じたとしても、樹脂層中から粒子が再度突出あるいは露出してくることもあり、表面形状の変化を小さくおさえることができる。
更に、現像剤担持体表面の被覆層中に黒鉛化粒子を用いると、トナーのチャージアップを発生させることなく、従来の結晶性グラファイトを用いた場合よりもトナーへの摩擦帯電付与性を向上することが可能となる。
本発明の黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)は、0.20≦p(002)≦0.95であることが好ましく、0.25≦p(002)≦0.75であることがより好ましい。
p(002)が0.95を超える場合は、耐磨耗性には優れているが、導電性や潤滑性が低下してトナーのチャージアップを発生する場合があり、画像濃度薄、カブリ、文字の飛び散り等で画質が悪化しやすくなり、更に規制部材に弾性部材を使用した場合に規制部材表面に摺擦キズが発生する場合があり、ベタ画像にスジ・ムラ等が発生しやすくなる。p(002)が0.20未満の場合は、黒鉛化粒子の耐磨耗性の悪化により被覆層表面の耐磨耗性、樹脂被覆層の機械的強度及びトナーへの帯電付与性が低下してしまう。
更に、本発明に用いられる黒鉛化粒子は、下記式(1)より求められる平均円形度SF−1が0.64以上であることが好ましい。平均円形度SF−1が0.64未満である場合には、被覆層中への黒鉛化粒子の分散性が低下することで被覆層表面に均一な表面粗さを形成できなくなり、又被覆層表面が摩耗した場合の被覆層の表面粗さ変化が大きくなることでトナーコート量の変化も大きく、耐久前後でトナーの帯電性が変化してしまうという点で好ましくない。
本発明において、黒鉛化粒子の平均円形度SF−1は下記式(1)
円形度=(4×A)/{(ML)2×π} (1)
[式中、MLは粒子投影像のピタゴラス法最大長を表し、Aは粒子像の投影面積を表す。]
で計算された値の平均値を意味する。
本発明において、上述した平均円形度SF−1を求めるための具体的な手法としては、光学系により拡大された黒鉛化粒子投影像を画像解析装置に取り込み、個々の粒子についての円形度の値を算出し、これらを平均することにより求められる。なお、本発明においては、平均値として信頼性が得られ、また、樹脂被覆層への特性に与える影響が大きい円相当径2μm以上の粒子範囲に限定して円形度を測定している。また、これらの値の信頼性を得るために測定粒子数は3000個程度以上、好ましくは5000個以上を測定する。このように多数の黒鉛化粒子の円形度の解析を効率的に行うことが可能な具体的な測定装置としては、マルチイメージアナライザー(ベックマン・コールター社製)がある。マルチイメージアナライザーは、電気抵抗法による粒度分布測定装置に、CCDカメラにより粒子像を撮影する機能と撮影された粒子像を画像解析する機能を組み合わせたものである。詳細には、電解質溶液中に超音波等により均一に分散した測定粒子を、電気抵抗法による粒度分布測定装置であるマルチサイザーのアパーチャーを粒子が通過する際の電気抵抗変化で検知し、これに同期してストロボを発光してCCDカメラで粒子像を撮影する。この粒子像をパソコンに取り込み、2値化後、画像解析するものである。
本発明に使用される黒鉛化粒子としては、個数平均粒径が0.5〜25μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。黒鉛化粒子の個数平均粒径が0.5μm未満では被覆層表面に均一な粗さを付与する効果と帯電性能を高める効果が少なく、現像剤への迅速且つ均一な帯電が不十分となると共に、被覆層の磨耗によるトナーのチャージアップ、トナー融着等が発生し、画像濃度薄、カブリ、文字の飛び散り等を生じやすくなるため好ましくない。個数平均粒径が25μmを越える場合には、被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎ、トナーの帯電が十分に行なわれにくくなってしまうと共に、被覆層の機械的強度が低下してしまうため好ましくない。
本発明の黒鉛化粒子を得る方法としては、以下に示すような方法が好ましいが、必ずしもこれらの方法に限定されるものではない。
本発明に使用される特に好ましい黒鉛化粒子を得る方法としては、原材料としてメソカーボンマイクロビーズやバルクメソフェーズピッチなどの光学的に異方性で、しかも単一の相からなる粒子を用いて黒鉛化することが、黒鉛化粒子の黒鉛化度を高め且つ球状の形状を保持させるために好ましい。上記の原材料の光学的異方性は、芳香族分子の積層から生じるものであり、その秩序性が黒鉛化処理でさらに発達し、高度の黒鉛化度を有する黒鉛化粒子が得られる。
本発明に用いられる黒鉛化粒子を得る原材料として、前記のバルクメソフェーズピッチを用いる場合は、加熱化で軟化溶融するものを用いることが球状で黒鉛化度の高い黒鉛化粒子を得るために好ましい。前記のバルクメソフェーズピッチを得る方法として代表的なものは、例えば、コールタールピッチ等から溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行うことによって得られるメソフェーズピッチである。また前記重質化処理後、微粉砕し、次いでベンゼンまたはトルエン等により溶剤可溶分を除去することで得られるメソフェーズピッチである。このバルクメソフェーズピッチはキノリン可溶分が95質量%以上であることが好ましい。95質量%未満のものを用いると、粒子内部が液相炭化しにくく、固相炭化するため粒子が破砕状のままとなり、球状のものが得られない。
次に前記のメソフェーズピッチを用いて黒鉛化する方法としては、まず、前記のバルクメソフェーズピッチを2μm〜25μmに微粉砕して、これを空気中で約200℃〜350℃で熱処理することにより、軽度に酸化処理する。この酸化処理によって、バルクメソフェーズピッチは表面のみ不融化され、次工程の黒鉛化熱処理時の溶融、融着が防止される。この酸化処理されたバルクメソフェーズピッチは酸素含有量が5〜15質量%であることが好ましい。5質量%未満であると熱処理時の粒子同士の融着が激しいので好ましくなく、15質量%を超えると粒子内部まで酸化されてしまい、形状が破砕状のまま黒鉛化し球状のものが得られにくい。次に上記の酸化処理したバルクメソフェーズピッチを窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下にて、約2000℃〜3500℃で熱処理することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。
また、本発明に用いられる黒鉛化粒子を得るためのもう一つの好ましい原材料であるメソカーボンマイクロビーズを得る方法として代表的なものは、例えば、石炭系重質油または石油系重質油を300℃〜500℃の温度で熱処理し、重縮合させて粗メソカーボンマイクロビーズを生成し、反応生成物を濾過、静置沈降、遠心分離などの処理に供することによりメソカーボンマイクロビーズを分離した後、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶剤で洗浄し、更に乾燥することによって得られる。前記のメソカーボンマイクロビーズを用いて黒鉛化する方法としては、まず乾燥を終えたメソカーボンマイクロビーズ破壊させない程度の温和な力で機械的に一次分散させておくことが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。この一次分散を終えたメソカーボンマイクロビーズは、不活性雰囲気下において200℃〜1500℃の温度で一次加熱処理され、炭化される。一次加熱処理を終えた炭化物は、やはり炭化物を破壊させない程度の温和な力で炭化物を機械的に分散させることが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。二次分散処理を終えた炭化物は、不活性雰囲気下において約2000℃〜3500℃で二次加熱処理することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。
また、前記のいずれの原材料から得られた黒鉛化粒子は、いずれの製法にかかわらず、分級により粒度分布をある程度均一にしておくことが、樹脂被覆層の表面形状を均一にするために好ましい。
また、いずれの原材料を用いた黒鉛化粒子の生成方法においても、黒鉛化粒子の焼成温度は2000〜3500℃が好ましく、2300℃〜3200℃がより好ましい。焼成温度が2000℃未満の場合は、黒鉛化粒子の黒鉛化度が不十分であり、導電性や潤滑性が低下してトナーのチャージアップを発生する場合があり、画像濃度薄、カブリ、文字の飛び散り等で画質が悪化しやすくなり、更に規制部材に弾性部材を使用した場合に規制部材表面に摺擦キズが発生する場合があり、ベタ画像にスジ・ムラ等が発生しやすくなる。焼成温度が3500℃超の場合は黒鉛化粒子の黒鉛化度が高すぎてしまう場合があり、そのため黒鉛化粒子の硬度が下がり、黒鉛化粒子の耐磨耗性の悪化により被覆層表面の耐磨耗性、樹脂被覆層の機械的強度及びトナーへの帯電付与性が低下しやすい。
また、樹脂被覆層中に分散されている黒鉛化粒子の含有量としては、被覆樹脂100質量部に対して好ましくは2〜150質量部、より好ましくは4〜100質量部の範囲で特に好ましい結果を与える。黒鉛化粒子の含有量が2質量部未満の場合には黒鉛化粒子の添加効果が小さく、150質量部を超える場合には樹脂被覆層の密着性が低くなり過ぎて耐磨耗性が悪化してしまう場合がある。
次に、本発明の樹脂被覆層に用いられる黒鉛化粒子と併用されるモース硬度6以上の高硬度粒子について説明する。
高硬度粒子のモース硬度とは、旧モース硬度を示し、滑石を1、石膏を2、方解石を3、蛍石を4、りん灰石を5、正長石を6、水晶を7、黄玉を8、鋼玉を9、ダイヤモンドを10とし、それら標準となる鉱物と試料を相互に引き合わせ、傷の付く方が軟らかく、硬度が小であるとする定性的な方法により決められた値である。本発明のモース硬度6以上の高硬度粒子は、粒子自身の硬度が大きく、耐磨耗性が非常に優れていることから、樹脂被覆層の耐磨耗性を向上すると共に、被覆層全体の補強強化を高めることから、黒鉛化粒子と併用することで、被覆層の樹脂部分の選択的な削れも抑制することができ、被覆層の表面粗さは長期に渡る繰り返し使用によってもほとんど変化することはなく、トナーの帯電量及びトナーコート量を更に安定化させるという相乗効果を発揮することができる。モース硬度が6未満では、被覆層の樹脂部分が選択的に削れた場合の表面粗さ変化が顕著となりやすい。
このような高硬度粒子としては、例えば、酸化セリウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタンなどの窒化物;炭化珪素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化ジルコニウムなどの炭化物;ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタン、ホウ化珪素、ホウ化タングステン等のホウ化物等が挙げられ、これらのうち1種、または必要に応じて2種以上を用いることができる。
本発明に使用される高硬度粒子としては、個数平均粒径が0.3〜30μm、好ましくは2μm〜20μmである。高硬度粒子の個数平均粒径が0.3μm未満では、被覆層表面に均一な表面粗さを形成する効果及び被覆層の補強効果を高める効果が小さくなり、トナーコート量が不均一化すると共に、耐摩耗性が不十分となるため好ましくない。個数平均粒径が30μmを超える場合には、樹脂被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎて、トナーにかかる摺擦力が強くなり、耐久時の現像剤の劣化及び樹脂被覆層表面へのトナー融着が発生しやすくなると共に、樹脂被覆層の機械的強度も低下してしまうため好ましくない。また、規制部材に弾性部材を用いた場合の、摺擦キズ等も発生しやすくなり、ベタ画像にスジ・ムラといった不良画像を発生しやすくなるため好ましくない。
また、本発明で使用される高硬度粒子の真比重は、3.5g/cm3以下、好ましくは3.0g/cm3以下、より好ましくは1.0〜2.7g/cm3であることが良い。即ち、高硬度粒子の真比重が3.5g/cm3を超える場合には、樹脂被覆層中での高硬度粒子の分散性が不十分となるため、被覆層表面に均一な粗さを付与しにくくなり、被覆層の強度が不十分となってしまい好ましくない。
また、本発明で使用される高硬度粒子は、表面にカップリング処理を施されていることが、樹脂被覆層の耐磨耗性を向上するために好ましい。特に、真比重が3.0g/cm3以上の樹脂被覆層中への分散性があまり良くない高硬度粒子にカップリング処理を施して用いると、樹脂被覆層中への分散性が向上するので好ましい。
このようなカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などがあるが、以下に具体例を示す。
シラン系カップリング剤としては、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2から12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位にそれぞれ1個宛の硅素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
更には、窒素原子を有するアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミン等である。
これらのシランカップリング剤も単独あるいは併用して使用される。
チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2.2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなどがある。これらの中でも直鎖系炭化水素からなる疎水基を有するものが好ましい。
アルミニウム系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートを挙げることができる。
また、本発明に使用される高硬度粒子の形状は、上記した平均円形度SF−1が0.60以上であることが好ましい。平均円形度SF−1が0.60未満である場合には、被覆層中への高硬度粒子の分散性が低下することで被覆層表面に均一な表面粗さを形成できなくなり、また被覆層表面が摩耗した場合の被覆層の表面粗さ変化が大きくなることでトナーコート量の変化も大きく、耐久前後でトナーの帯電性が変化してしまうという点で好ましくない。
また、本発明に使用される高硬度粒子の体積抵抗値は、106Ω・cm以下、より好ましくは10-3〜106Ω・cmであることが好ましい。高硬度粒子の体積抵抗値が106Ω・cmを超えると、磨耗によって被覆層表面に露出した高硬度粒子を核として、トナー融着を発生しやすくなるため好ましくない。
次に、本発明の樹脂被覆層に用いられる結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。機械的強度を考慮すると熱あるいは光硬化性の樹脂がより好ましいが、十分な機械的強度を有するものであれば、熱可塑性樹脂も適用可能である。
本発明において、上記した形成材料によって現像スリーブ表面に形成される樹脂被覆層は、チャージアップによるトナーの現像スリーブ表面への固着や、トナーのチャージアップに伴って生じる現像スリーブの表面からトナーへの帯電付与不良を防ぐためには、導電性であることが望ましい。また、被覆層の体積抵抗値としては、好ましくは105Ω・cm以下、より好ましくは103Ω・cm以下である。現像スリーブ表面の被覆層の体積抵抗値が、105Ω・cmを超えるとトナーへの帯電付与不良が発生し易く、その結果、ブロッチ(斑点画像や波模様画像)が発生し易い。
本発明においては、樹脂被覆層の抵抗値を、上記の値に調整するためには、下記に挙げる導電性物質を被覆層中に含有させてもよい。この際に使用される導電性微粉末としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粉体の微粉末、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウム等の金属酸化物、各種カーボンファイバー、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック、グラファイト等の炭素物、更には金属繊維等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与したり、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電度を得ることができるため好適に用いられる。塗料にした場合の分散安定性も良好となりうる。また、本発明において、これら導電性微粉末を使用する場合、その添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では被覆層の抵抗値を所望のレベルに下げることは、通常困難であり、また、現像スリーブの被覆層に用いられる結着樹脂に対するトナー融着が発生する可能性が高い。100質量部超であると、特にサブミクロンオーダーの粒度を有する微粉体を用いた場合、被覆層の強度(摩耗性)が低下しうる。
本発明においては、樹脂被覆層に固体潤滑剤を分散させてもよく、一般に公知の固体潤滑剤が使用可能である。例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化硼素、雲母、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩等が挙げられ、特にグラファイトが被覆層の導電性を損なわないので好ましく用いられる。また、本発明で使用することのできるこれら固体潤滑剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では被覆層の結着樹脂表面に対するトナー融着の改善効果は少なく、100質量部超となると、特にサブミクロンオーダーの粒度を有する微粉体が多く含まれる材料を用いた場合、被覆層の強度(摩耗性)が低下しうる。これらの固体潤滑剤は、個数平均粒径が好ましくは0.2〜20μm程度、より好ましくは1〜15μmのものを使用するのが良い。固体潤滑剤の個数平均粒径が0.2μm未満の場合には、潤滑性が十分に得られ難く好ましくなく、個数平均粒径が20μmを超える場合には、樹脂被覆層表面の形状への影響が大きく表面性が不均一となり、トナーの均一な帯電化、及び被覆層の強度の点で好ましくない。
また、本発明においては、樹脂被覆層に黒鉛化粒子及び高硬度粒子と併用して、更にトナーの帯電性を安定化させるために、必要に応じて一般的に公知の帯電制御剤を添加して使用することも可能である。
負帯電性の制御剤としては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としてはモノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩が挙げられる。他には、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類やビスフェノールなどのフェノール誘導体が挙げられる。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
正帯電性の制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩などによる変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩などのオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレートが挙げられる。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、それらいずれも使用可能であるが、負帯電性トナーの帯電性向上及び正帯電性トナーの帯電性抑制を目的として使用される帯電制御剤としては、特開平10−293454号公報に記載されるような含窒素複素環化合物が好ましく用いられる。また、負帯電性トナーの帯電性抑制及び正帯電性トナーの帯電性向上を目的としてトナーの帯電性を制御する方法としては、特開平10−326040号公報、特開平11−052711号公報、特開平11−249414号公報に記載されるような窒素含有基を有する樹脂と第4級アンモニウム塩化合物との組み合わせが好ましく用いられる。
本発明で好適に使用される上記のような構成を有する現像スリーブ表面の被覆層の表面粗さは、一般的には、JIS B 0601(2001)に基づく算術平均粗さRaで0.3〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。ただし、その現像方式によって好ましい表面粗さは異なる。例えば、図2に示されるような、磁性トナーを用い、規制部材として現像スリーブと間隙をもって配置された磁性ブレードを有するような現像装置では、Raが0.3〜1.5μm程度にあることが好ましい。0.3μmより小さい場合には、トナーコート量が不十分であり、トナーコート量不足による画像濃度薄や、トナーのチャージアップ現象やブロッチ等が発生する。また、1.5μmより大きい場合には、トナーコート量が過多のため摩擦帯電が不均一となり、文字の飛び散りやカブリ、トナー帯電不足による画像濃度薄等を発生しやすい。また、例えば、図3に示されるような、弾性部材が現像スリーブに圧接して用いられる現像装置の場合には、Raが0.8〜3.5μm程度にあることが好ましい。0.8μmより小さい場合には、トナーコート量が不十分であり、トナーコート量不足による画像濃度薄や、トナーのチャージアップ現象やブロッチ等が発生する。更には、現像スリーブへのトナー融着も発生しやすい。また、3.5μmより大きい場合には、トナーコート量が過多のため摩擦帯電が不均一となり、文字の飛び散りやカブリ、トナー帯電不足による画像濃度薄等を発生しやすい。
本発明における表面粗さの測定は、小坂研究所製表面粗度計SE−3500を用い、測定条件としては、カットオフ0.8mm、測定距離8.0mm、送り速度0.1mm/secにて12箇所の測定値の平均をとった。
本発明の樹脂被覆層を得る方法としては、例えば、各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、後述する基体上に塗工することにより得ることが可能である。各成分の分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等公知の方法が適用可能である。
また、上記した様な構成の樹脂被覆層の層厚は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは4〜20μmであると均一な層厚を得る為に好ましいが、特にこの層厚に限定されるものではない。
また、本発明において、上記の構成で形成される樹脂被覆層を有する現像スリーブの基体としては、例えば、金属、その合金またはその化合物が好適に用いられ、特にステンレススチール及びアルミニウムやその合金を円筒状に成形したものが好適に用いられる。中でもアルミニウムは加工性に優れ、例えば円筒状基体の場合、軸方向の振れ、及び周方向の真円度等、機械的精度が向上するので特に好ましい。これら基体の表面は、更にブラスト、ヤスリ、切削等で所定の表面粗さになるように処理されていてもよく、電解・無電解メッキ等で処理されていてもよい。
本発明において、上記の構成で形成される樹脂被覆層を有する現像スリーブの基体としては、例えば、ステンレス等の芯金の外周面に弾性層を有するものでもよい。芯金の外周面に形成される弾性層としては、一般的にはシリコーンゴム、ウレタンゴム等を成型加工したものが好適に用いられ、更に電気抵抗を調整するための導電剤等を含有したものが特に好ましい。これら弾性層は表面層となる上記樹脂被覆層の密着性向上のために、所定の硬度、表面粗さを有しているものが好ましいが、もしくは弾性層表面に更に中間層を有していてもよい。また、芯金状の基体表面もブラスト、ヤスリ、切削等で所定の表面粗さに処理されていてもよく、電解・無電解メッキ等で処理されていてもよい。
次に上記の構成で形成される樹脂被覆層を有する現像スリーブを用いた現像装置について詳しく説明する。
現像装置としては、例えば図2及び図3に示すような現像装置が知られている。図2及び図3において,公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体、例えば、感光ドラム301は、矢印A方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ308は、現像剤容器303に収容された一成分系磁性トナーとしての現像剤304を担持して、矢印B方向に回転することによって、現像スリーブ308と感光ドラム301とが対向している現像領域Dに現像剤304を搬送する。図2及び図3に示すように、現像スリーブ308は、基体としての金属円筒管306上に形成された樹脂被覆層307を有し、現像スリーブ308内には現像剤304を現像スリーブ308上に磁気的に吸引且つ保持するために、マグネットローラー305が配置、固着されている現像スリーブ308とマグネットローラー305とは非接触状態にある。
また、現像剤容器303中には、矢印C方向に回転することによって、現像剤304を撹拌する撹拌翼309、310、314、現像剤容器303中に現像剤304を供給するスクリュー311、現像剤容器303中の現像剤量を調整する撹拌壁312が設けられている。
現像剤304は、磁性トナー相互間及び現像スリーブ308上の樹脂被覆層307との摩擦により、感光ドラム301上の潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図2の例では、現像領域Dに搬送される現像剤304の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、或いはリン青銅、ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料の弾性板からなる弾性規制ブレード302を使用しており、現像剤を介して現像スリーブ308の回転方向と逆の姿勢で圧接させ、現像スリーブ308上に現像剤304の薄層を形成している。この弾性規制ブレード302としては、特に安定した規制力とトナーへの安定した(負)帯電付与性のためには、安定した加圧力の得られるリン青銅板表面にポリアミドエラストマー(PAE)を貼り付けた構造のものを用いることが好ましい。ポリアミドエラストマー(PAE)としては、例えばポリアミドとポリエーテルの共重合体が挙げられる。
現像スリーブ308に対する現像剤層厚規制部材302の当接圧力は、線圧5〜50N/mであることが、現像剤の規制を安定化させ、現像剤層厚を好適にさせることができる点で好ましい。
現像剤層厚規制部材302の当接圧力が線圧5N/m未満の場合には、現像剤の規制が弱くなり、カブリやトナーもれの原因となり、線圧50N/mを超える場合には、トナーへのダメージが大きくなり、トナー劣化やスリーブ及びブレードへの融着の原因となり易い。
本発明においては、この弾性規制ブレードにかえて図3に示すような強磁性金属製の磁性規制ブレード302を、現像スリーブ308の表面から約50〜500μmのギャップ幅を持って現像スリーブ308に臨む様に現像剤容器303から垂下されており、マグネットローラー305のN極からの磁力線が磁性規制ブレード302に集中することにより、現像スリーブ308上に現像剤304の薄層が形成するようにもできる。
この様にして現像スリーブ308上に形成される現像剤304の薄層の厚みは,現像領域Dにおける現像スリーブ308と感光ドラム301との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
本発明の現像スリーブは、以上の様な現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置に組み込むのが特に有効であるが、現像領域Dにおいて、現像剤層の厚みが現像スリーブ308と感光ドラム301との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、即ち接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。
説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、上記したような非接触型現像装置を例に採って行う。
上記現像スリーブ308に担持された磁性トナーを有する一成分系現像剤304を飛翔させるため、上記現像スリーブ308にはバイアス手段としての現像バイアス電源313により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、潜像の画像部(現像剤304が付着して可視像化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ308に印加するのが好ましい。
現像された画像の濃度を高め、あるいは階調性を向上するためには、現像スリーブ308に交番バイアス電圧を印加し,現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ308に印加するのが好ましい。高電位部と低電位部を有する潜像の高電位部にトナーを付着させて可視像化する、所謂正規現像の場合には、潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用する。高電位部と低電位部を有する潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂反転現像の場合には、潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。高電位,低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、現像剤304は少なくとも現像スリーブ308との摩擦により帯電する。
図2及び図3はあくまでも本発明の現像装置を模式的に例示したものであり、現像剤容器303の形状、撹拌翼309、310の有無、磁極の配置に様々な形態があることは言うまでもない。勿論、これらの装置では、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤を用いる現像に使用することもできる。
本発明の現像スリーブは二成分現像装置にも適用可能である。図4は、二成分現像剤を用いるのに好適な現像装置の模式図を表す。図4において、現像容器553の現像室564内に、矢印E方向に回転される潜像担持体551に対向して現像スリーブとしての非磁性現像スリーブ559を備えており、本発明においては基体としての円筒状の非磁性金属557の表面に樹脂被覆層558が設けられている。この現像スリーブ559内に磁界発生手段としての磁性ローラー556が不動に設置されており、現像ローラー560を形成している。磁性ローラー556はS1〜3、N1、N2の5極構成に着磁されている。現像室564内には、トナーと磁性キャリアとを混合した二成分現像剤が収容されている。この現像剤は、現像室564上端開放の隔壁554の開口を通って現像容器553の撹拌室565内に送られると、トナー室555から撹拌室565内に供給されたトナーがトナー送り規制部材563を介して補給され、撹拌室565内の第1現像剤撹拌・搬送手段562によって混合される。撹拌室565で撹拌された現像剤は、隔壁554の図示しない他の開口を通って現像室564内に戻され、そこで現像室565内の第2現像剤撹拌・搬送手段561により、撹拌・搬送されながら現像スリーブ559に搬送される。現像スリーブ559に供給された現像剤は、上記の磁石ローラ556の磁力の作用により磁気的に拘束され、現像スリーブ559上に担持され、現像スリーブ559の下部設けられた現像剤層厚規制部材552での規制によって現像スリーブ559上で現像剤の薄層に形成されながら、現像スリーブ559の矢印F方向への回転に伴い潜像保持体551と対向した現像部Gへと搬送され、そこで潜像担持体551上の潜像の現像に供される。現像に消費されなかった残余の現像剤は、現像スリーブ559の回転により現像容器564内に回収される。現像容器5644内では同極のS2、S3間での反発磁界により現像スリーブ559上に磁気的に拘束されている現像残りの残余の現像剤を剥ぎ取るようになっている。現像スリーブ上方にはトナー飛散を防止するために飛散防止部材566が固定、設置されている。図4は、あくまでも模式的な例であり、容器の形状、撹拌部材の有無、磁極の配置、回転方向等に様々な形態があることは言うまでもない。
次に図5を参照しながら、図2〜4で例示した本発明の現像装置を使用した画像形成装置の一例について説明する。先ず、一次帯電手段としての接触(ローラー)帯電手段119により静電潜像保持体としての感光ドラム101の表面を負極性に帯電し、レーザー光の露光115によるイメージスキャニングによりデジタル潜像が感光ドラム101上に形成される。次に、現像剤層厚規制部材としての弾性規制ブレード111を有し、多極永久磁石105が内包されている現像剤担持体としての現像スリーブ108が具備されている現像装置によって、上記のデジタル潜像が、ホッパー103内の磁性トナーを有する一成分系現像剤104によって反転現像される。図5に示す様に、現像領域Dにおいて感光ドラム101の導電性基体は接地されており、現像スリーブ108にはバイアス印加手段109により交互バイアス、パルスバイアス及び/又は直流バイアスが印加されている。次に、被記録材Pが搬送されて転写部に来ると、転写手段としての接触(ローラー)転写手段113により被記録材Pの背面(感光ドラム側と反対面)から電圧印加手段114で帯電されることにより、感光ドラム101の表面上に形成されている現像画像(トナー画像)が接触転写手段113で被記録材P上へ転写される。次に、感光ドラム101から分離された被記録材Pは、定着手段としての加熱加圧ローラー定着器117に搬送され、該定着器117によって被記録材P上のトナー画像の定着処理がなされる。
転写工程後の感光ドラム101に残留する一成分系現像剤104は、クリーニングブレード118aを有するクリーニング手段118で除去される。残留する一成分系現像剤104が少ない場合にはクリーニング工程を省くことも可能である。クリーニング後の感光ドラム101は、必要によりイレース露光116により除電され、再度、一次帯電手段としての接触(ローラー)帯電手段119による帯電工程から始まる上記工程が繰り返される。
上記の一連の工程において、感光ドラム(即ち、静電潜像保持体)101は感光層及び導電性基体を有するものであり、矢印方向に動く。現像剤担持体である非磁性の円筒の現像スリーブ108は、現像領域Dにおいて感光ドラム101の表面と同方向に進む様に回転する。現像スリーブ108の内部には、磁界発生手段である多極永久磁石(マグネットロール)105が回転しない様に配されている。現像剤容器103内の一成分系現像剤104は、現像スリーブ108上に塗布されて担持され、且つ現像スリーブ108の表面との摩擦及び/又は磁性トナー同士の摩擦によって、例えば、マイナスのトリボ電荷が与えられる。更に、弾性規制ブレード111を現像スリーブ108を弾性的に押圧する様に設け、現像剤層の厚さを薄く(30μm〜300μm)且つ均一に規制して、現像領域Dにおける感光ドラム101と現像スリーブ108との間隙よりも薄い現像剤層を形成させる。現像スリーブ108の回転速度を調整することによって、現像スリーブ108の表面速度が感光ドラム101の表面の速度と実質的に等速、もしくはそれに近い速度となる様にする。現像領域Dにおいて、現像スリーブ108に現像バイアス電圧として、交流バイアス又はパルスバイアスをバイアス印加手段109により印加してもよい。この交流バイアスはfが200〜4,000Hz、Vppが500〜3,000Vであればよい。
現像領域Dにおける現像剤(磁性トナー)の移転に際し、感光ドラム101の表面の静電気力、及び交流バイアス又はパルスバイアスの如き現像バイアス電圧の作用によって、磁性トナーは静電潜像側に移転する。
弾性規制ブレード111の代わりに、鉄の如き磁性ドクターブレードを用いることも可能である。一次帯電手段としては、以上の如く接触帯電手段として帯電ローラー119を用いて説明したが、帯電ブレード、帯電ブラシの如き接触帯電手段でもよく、更に非接触のコロナ帯電手段でもよい。しかしながら、帯電によるオゾンの発生が少ない点で接触帯電手段の方が好ましい。また、転写手段としては、以上の如く転写ローラー113の如き接触転写手段を用いて説明したが、非接触のコロナ転写手段でもよい。しかしながら、こちらも転写によるオゾンの発生が少ない点で接触転写手段の方が好ましい。
次に図6に、本発明の適用可能なプロセスカートリッジの一具体例を示す。以下のプロセスカートリッジの説明において、図5を用いて説明した画像形成装置の構成部材と同様の機能を有するものについては、図5と同じ符号を用いて説明する。本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも現像手段と静電潜像保持体とが一体的にカートリッジ化されたものであり、画像形成装置本体(例えば、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ装置)に着脱可能に構成されている。
図6に示した実施形態では、現像手段120、ドラム状の静電潜像保持体(感光ドラム)101、クリーニングブレード118aを有するクリーニング手段118、一次帯電手段としての接触(ローラー)帯電手段119を一体としたプロセスカートリッジ150が例示される。本実施形態では、現像手段120は、現像スリーブ108と、弾性規制ブレード111と現像剤容器103内に磁性トナーを有する一成分系現像剤104とを有し、該現像剤104を用い、現像時にはバイアス印加手段からの現像バイアス電圧により感光ドラム101と現像スリーブ108との間に所定の電界が形成されて現像工程が実施される。この現像工程を好適に実施する為には、感光ドラム101と現像スリーブ108との間の距離が非常に大切である。
上記では、現像手段120、静電潜像保持体101、クリーニング手段118及び一次帯電手段119の4つの構成要素を一体的にカートリッジ化した実施形態について説明したが、本発明においては、現像手段と静電潜像保持体との少なくも2つの構成要素が一体的にカートリッジ化されたものであればよく、現像手段、静電潜像保持体及びクリーニング手段の3つの構成要素、現像手段、静電潜像保持体及び一次帯電手段の3つの構成要素、或いは、その他の構成要素を加えて一体的にカートリッジ化することも可能である。
次に、本発明の現像装置で用いられるトナーについて説明する。トナーは主として樹脂、離型剤、荷電制御剤、着色剤等を溶融混練し、固化した後粉砕し、しかる後分級などをして粒度分布をそろえた微粉体である。トナーに用いられる結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テンペル樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、パラフィンワックス、カルナバワックスなどが単独あるいは混合して使用できる。
また、トナー中には顔料を含有することができる。例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、ランプ黒、スーダンブラックSM、ファースト・イエローG、ベンジジン・イエロー、ピグメント・イエロー、インドファースト・オレンジ、イルガジン・レッド、パラニトロアニリン・レッド、トルイジン・レッド、カーミンFB、パーマネント・ボルドーFRR、ピグメント・オレンジR、リソール・レッド2G、レーキ・レッドC、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチル・バイオレッドBレーキ、フタロシアニン・ブルー、ピグメント・ブルー、ブリリアント・グリーンB、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、ザボン・ファーストイエローCGG、カヤセットY963、カヤセットYG、ザボン・ファーストオレンジRR、オイル・スカーレット、オラゾール・ブラウンB、ザボン・ファーストスカーレットCG、オイルピンクOP等が適用できる。
トナーを磁性トナーとして用いるために、トナーの中に磁性粉を含有せしめてもよい。このような磁性粉としては、磁場の中におかれて磁化される物質が用いられ、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末、又はマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の合金や化合物がある。この磁性粉の含有量はトナー質量に対して15〜70質量%が良い。
トナーに、定着時の離型性向上、定着性向上の目的で、ワックス類を含有させることができる。そのようなワックス類としては、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプッシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。その他、アルコール、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタム等も利用できる。
また、必要に応じてトナーに荷電制御剤を含有させてもよい。荷電制御剤には、負荷電制御剤、正荷電制御剤がある。例えばトナーを負荷電性に制御するものとして下記物質がある。例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。また、トナーを正帯電させるための物質としては下記のようなものがある。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。
トナーは必要に応じて、流動性改善等の目的で無機微粉末の如き粉末を外添して用いられる。このような微粉末としては、シリカ微粉末、アルミナ、チタニア、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物;炭化ケイ素、炭化チタン等の炭化物;及び窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム等の窒化物等の無機微粉体が用いられる。これらの微粉体は、有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤等で有機処理して用いることが可能である。例えば有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、および1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。また、未処理の微粉体を窒素含有のシランカップリング剤で処理したものを用いてもよい。特にポジトナーの場合好ましい。そのような処理剤の例としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルピペリジン、トリメトキシシリル−γ−プロピルモルホリン、トリメトキシシリル−γ−プロピルイミダゾール、等がある。
上記シランカップリング剤により無機微粉体を処理する方法としては、例えば、1)スプレー法,2)有機溶媒法、3)水溶液法などがある。一般に、スプレー法による処理とは、ピグメントを撹拌しここにカップリング剤の水溶液あるいは溶媒液をスプレーし、この後水あるいは溶媒を120〜130℃程度で除去乾燥する方法である。また、有機溶媒法による処理とは、少量の水とともに加水分解用触媒を含む有機溶媒(アルコール、ベンゼン、ハロゲン化炭化水素等)にカップリング剤を溶解し、これにピグメントを浸積した後、濾過或は圧搾により固液分離を行い120〜130℃程度で乾燥させるものである。水溶液法とは0.5%程度のカップリング剤を、一定pHの水あるいは水−溶媒中で加水分解させ、ここにピグメントを浸積し後、同様に固液分離を行い乾燥するものである。
他の有機処理としてシリコーンオイルで処理された微粉体を用いることも可能である。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ0.5〜10000mm2/s、好ましくは1〜1000mm2/sのものが用いられ、例えばメチルハイドロジエンシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、クロルフェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどが挙げられる。また、側鎖に窒素原子を有するシリコーンオイルを用いても良い。特にポジトナーの場合は好ましい。シリコーンオイルによる処理は、例えば次のようにして行ない得る。必要に応じて加熱しながら顔料を激しく撹乱しており、これに上記シリコーンオイル或いはその溶液をスプレーもしくは気化して吹き付けるか、叉は顔料をスラリー状にしておき、これを撹拌しつつシリコーンオイル或いはその溶液を滴下することによって容易に処理できる。これらのシリコーンオイルは1種あるいは2種以上の混合物あるいは併用や多重処理して用いられる。また、シランカップリング剤による処理と併用しても構わない。このようなトナーは、種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。そのような方法としては、撹拌羽根またはブレードなど、およびライナーまたはケーシングなどを有する装置で、例えば、トナーをブレードとライナーの間の微小間隙を通過させる際に、機械的な力により表面を平滑化したりトナーを球形化したりする方法、温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法、熱気流中にトナーを曝し、球形化する方法等がある。また、球状のトナーを直接作る方法としては、水中にトナー結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー化する方法がある。一般的な方法としては、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、離形剤、その他の添加剤を均一に溶解または分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層、例えば水相中に適当な撹拌機を用いて適度な粒径に分散し、さらに重合反応を行わせ、所望の粒径を有する現像剤を得る方法である。
トナーはキャリアと混合して二成分現像剤として用いることもできる。
キャリア材料としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトといった磁性体金属、及びそれらの合金、或いは希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト及びリチウム系フェライト等のソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライトといった鉄系酸化物、およびそれらの混合物、さらには、ガラス、炭化ケイ素などのセラミックス粒子、樹脂粉体、磁性体を含有する樹脂粉体などをあげることができ、通常は平均粒径が20〜300μm程度の粒状物として用いる。
このようなキャリアは上記に挙げた粒状物を直接キャリア粒子として用いるても良いが、トナーの摩擦帯電電荷を調整したりキャリアへのトナースペントを防止したりするために、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等のコート剤により適宜粒子表面に樹脂コートを施して用いることもできる。
以下に本発明に関わるその他物性の測定方法について述べる。
[測定方法]
(1)黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)
黒鉛化度p(002)は、マックサイエンス社製の強力型全自動X線回折装置“MXP18”システムにより、黒鉛のX線回折スペクトルから得られる格子間隔d(002)を測定することで、d(002)=3.440−0.086(1−P2)で求めた。
尚、格子間隔d(002)は、CuKαをX線源とし、CuKβ線はニッケルフィルターにより除去している。標準物質に高純度シリコンを使用し、C(002)及びSi(111)回折パターンのピーク位置から算出した。主な測定条件は以下のとおりである。
X線発生装置:18kw
ゴニオメータ:横型ゴニオメータ
モノクロメータ:使用
管電圧:30.0kV
管電流:10.0mA
測定法:連続法
スキャン軸:2θ/θ
サンプリング間隔:0.020deg
スキャン速度:6.000deg/min
発散スリット:0.50deg
散乱スリット:0.50deg
受光スリット:0.30mm
(2)黒鉛化粒子及び高硬度粒子の平均円形度SF−1
多数の粒子の円形度の解析を効率的に行うことが可能な具体的な測定装置として、マルチイメージアナライザー(ベックマン・コールター社製)を用いて測定を行った。マルチイメージアナライザーは、電気抵抗法による粒度分布測定装置に、CCDカメラにより粒子像を撮影する機能と撮影された粒子像を画像解析する機能を組み合わせたものである。詳細には、電解質溶液中に超音波等により均一に分散した測定粒子を、電気抵抗法による粒度分布測定装置であるマルチサイザーのアパーチャーを粒子が通過する際の電気抵抗変化で検知し、これに同期してストロボを発光してCCDカメラで粒子像を撮影する。この粒子像をパソコンに取り込み、2値化後、画像解析するものである。
上記の装置により、粒子投影像のピタゴラス法最大長ML、投影面積Aを求め、2μm以上の3000個の粒子についての円形度の値を下記式(1)から算出し、これらを平均することにより平均円形度SF−1を求めた。
円形度=(4×A)/{(ML)2×π} (1)
(3)樹脂被覆層の体積抵抗値測定
100μmの厚さのPETシート上に、7〜20μmで導電性樹脂被覆層を形成し、抵抗率計ロレスタAP、又はハイレスタIP(ともに三菱油化製)にて4端子プローブを用いて体積抵抗値を測定した。なお、測定環境は、20〜25℃、50〜60%RHとした。
(4)1μm以上の導電性物質及び高硬度粒子の粒径測定
黒鉛化粒子等の導電性物質及び高硬度粒子の粒径はレーザー回折型粒度分布計のコールターLS−230型粒度分布計(コールター社製)を用いて測定する。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としては純水を使用する。純水にて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行する。
次に純水10ml中に界面活性剤3〜4滴を加え、更に測定試料を5〜25mg加える。試料を懸濁した水溶液は超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行い試料液を得て、前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、個数分布から算術した個数平均粒径を求めた。
(5)1μm未満の導電性物質及び高硬度微粒子の粒径測定
電子顕微鏡を用いて、導電性物質及び高硬度粒子の粒径を測定する。撮影倍率は6万倍とするが、難しい場合は低倍率で撮影した後に6万倍となるように写真を拡大プリントする。写真上で1次粒子の粒径を測る。この際、長軸と短軸を測り、平均した値を粒径とする。これを、100サンプルについて測定し、50%値をもって平均粒径とした。
(6)高硬度粒子の真比重測定
高硬度粒子の真比重は、乾式密度計アキュピック1330(島津製作所製)を用いて測定した。
(7)高硬度粒子の体積抵抗値測定
試料を40mmφのアルミリングに入れ、2500Nで加圧成形し、抵抗率計ロレスタAP、又はハイレスタIP(ともに三菱油化製)にて4端子プローブを用いて体積抵抗値を測定した。なお、測定環境は、20〜25℃,50〜60%RHとした。
(8)トナーの粒径測定
電解質溶液100〜150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml添加し、これに測定試料を2〜20mg添加する。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、前述したコールターカウンターマルチサイザーにより17μmまたは100μm等の適宜トナーサイズに合わせたアパチャーを用いて体積を基準として0.3〜40μmの粒度分布等を測定するものとする。この条件で測定した個数平均粒径、重量平均粒径をコンピュータ処理により求め、さらに個数基準の粒度分布より個数平均粒径の1/2倍径累積分布以下の累積割合を計算し、1/2倍径累積分布以下の累積値を求める。同様に体積基準の粒度分布より重量平均粒径の2倍径累積分布以上の累積割合を計算し、2倍径累積分布以上の累積値を求めた。
(9)樹脂被覆層の削れ量測定
レーザー測長器(KEYENCE社製:コントローラLS−5500、センサーヘッドLS5040T)で被覆層形成前後の外径を測定した。その前後の測定値より、30点の平均値をとって削れ量(μm)とした。
以下、具体的実施例をもって本発明を更に詳しく説明する。部は質量部を意味する。
<黒鉛化粒子製造例1>
現像スリーブ表面に形成される樹脂被覆層に用いる黒鉛化粒子を作製した。黒鉛化粒子として、コールタールピッチから溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行った後、次いでトルエンにより溶剤可溶分を除去することでメソフェーズピッチを得た。そのバルクメソフェーズピッチを微粉砕し、その粒子を空気中において約300℃で酸化処理した後、窒素雰囲気下中にて3000℃で焼成し黒鉛化させ、更に分級して得られた個数平均粒径5.4μmの黒鉛化粒子をa−1とした。黒鉛化粒子a−1の物性を表1に示す。
<黒鉛化粒子製造例2〜6>
焼成温度を代えた以外は、黒鉛化粒子製造例1と同様にして表1に示す個数平均粒径の黒鉛化粒子a−1〜6を作製した。得られた黒鉛化粒子a−1〜6の物性を表1に示す。
<黒鉛化粒子製造例7>
黒鉛化粒子として、石炭系重質油を熱処理することで得られたメソカーボンマイクロビーズを、洗浄・乾燥した後、アトマイザーミルで機械的に分散を行い、窒素雰囲気下において1200℃で一次加熱処理を行い炭化させた。次いで、アトマイザーミルで二次分散を行った後、窒素雰囲気下において2900℃で熱処理し、更に分級して得られた個数平均粒径5.6μmの黒鉛化粒子をa−7とした。黒鉛化粒子a−7の物性を表1に示す。
<黒鉛化粒子製造例8〜9>
焼成温度を代えた以外は、黒鉛化粒子製造例7と同様にして表1に示す個数平均粒径の黒鉛化粒子a−8〜9を作製した。得られた黒鉛化粒子a−8〜9の物性を表1に示す。
<黒鉛化粒子製造例10〜11>
黒鉛化粒子として、コークス及びタールピッチを2800℃で焼成することで黒鉛化し、更に分級することで、個数平均粒径6.8μm及び11.8μmの黒鉛化粒子a−10及びa−11を作製した。得られた黒鉛化粒子a−10〜11の物性を表1に示す。
<現像スリーブ製造例1>
現像スリーブ表面に樹脂被覆層を塗布するための塗料を作製した。
・レゾール型フェノール樹脂溶液(50%メタノール溶液) :200部
・黒鉛化粒子a−1 : 35部
・高硬度粒子b−1 : 10部
・導電性カーボンブラック : 5部
・イソプロピルアルコール :180部
上記材料を、サンドミルを用いて分散した。フェノール樹脂溶液の一部をイソプロピルアルコールの一部で希釈する。そこへ黒鉛化粒子a−1、導電性カーボンブラックを添加し、直径1mmのガラスビーズをメディヤとしたサンドミル分散を行った。ここに、残りのフェノール樹脂溶液、高硬度粒子b−1、及び残りのイソプロピルアルコールを加え、固形分約35%の塗料とした。この塗料をスプレー法にて、外径24.5mmφのアルミ製円筒基体表面に15μm程度の樹脂被覆層を形成させ、これを熱風乾燥機にて150℃で30分間乾燥硬化させた後、マグネットローラー及びフランジを装着し、現像スリーブS−1とした。得られた樹脂被覆層の構成及び物性を表3に示す。
<現像スリーブ製造例2〜21>
表3に示した材料構成、及び配合比にて塗料を作製した以外は、現像スリーブ製造例1と同様にして現像スリーブS−2〜S−21を作製した。又、現像スリーブS−4、S−8、S−15、S−18に用いた固体潤滑剤は結晶性グラファイトであり、個数平均粒径は7.5μmである。又、現像スリーブS−8及びs−18に用いた帯電制御剤である第4級アンモニウム塩化合物(イ)及びイミダゾール化合物(ロ)の構造式を下記に示す。尚、現像スリーブS−12〜S−21に関しては、アルミ製円筒基体として外径20.0mmφの基体を用いた。得られた樹脂被覆層の構成及び物性を表3に示す。
<トナー製造例1>
次に、一成分現像剤としての磁性ネガトナーを作製した。
・スチレン−アクリル系樹脂 :100部
・マグネタイト : 95部
・負帯電制御剤(サリチル酸のクロム錯体) : 2部
・炭化水素系ワックス : 4部
上記材料をヘンシェルミキサーにより混合し、二軸式のエクストルーダーにより溶融混練分散を行った。混練物を冷却後、ジェット気流を用いた粉砕機により微粉砕を行い、更に気流式分級機を用いて分級を行い、重量平均粒径6.8μm、4μm以下の粒子の個数割合が16.2%、10.1μm以上の粒子の質量割合が3.1%の分布を有する分級品を得た。次にその分級品100部に対し、疎水性コロイダルシリカ1.0部、及びチタン酸ストロンチウム微粒子3.0部をヘンシェルミキサーを用いて外添混合し、一成分現像剤としての磁性トナーαを得た。
<トナー製造例2>
次に、一成分現像剤としての磁性ネガトナーを作製した。
・スチレン−アクリル系樹脂 :100部
・マグネタイト : 90部
・負帯電制御剤(アゾ系の鉄錯体) : 2部
・炭化水素系ワックス : 5部
上記材料をヘンシェルミキサーにより混合し、二軸式のエクストルーダーにより溶融混練分散を行った。混練物を冷却後、ジェット気流を用いた粉砕機により微粉砕を行い、更に気流式分級機を用いて分級を行い、重量平均粒径6.2μm、4μm以下の粒子の個数割合が18.7%、10.1μm以上の粒子の質量割合が2.4%の分布を有する分級品を得た。次に疎水性コロイダルシリカを、上記分級品100部に対し、1.0部ヘンシェルミキサーを用いて外添混合し、一成分現像剤としての磁性トナーβを得た。
<実施例1>
次に、上記現像スリーブB−1、及びトナーαを用いて、図3に示すような現像装置に組み込み、画出し評価を行った。画出しには、キヤノン製複写機imageRunner6000の改造機を用いて、所定の現像バイアスを印加して、画出し評価を行った。画出しは、23℃,60%RHの常温常湿(N/N)、23℃,5%RHの常温低湿(N/L)、及び30℃,80%RHの高温高湿(H/H)環境下にて、50万枚まで行った。以下の評価方法による評価結果を表4に示す。
[評価方法]
(1)スリーブ上トナー帯電量(Q/M)及びトナー搬送量(M/S)
現像スリーブ上に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、その際金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、捕集されたトナー質量Mと、トナーを吸引した面積Sから、単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)と単位面積当たりのトナー質量M/S(mg/cm2)を計算し、それぞれトナー帯電量(Q/M)、トナー搬送量(M/S)とした。
(2)画像濃度
ベタ黒画像の濃度を、反射濃度計RD918(マクベス社製)により反射濃度測定を行い、5点の平均値をとって画像濃度とした。
(3)カブリ及び反転カブリ
ベタ白画像の反射率を測定し、更に未使用の転写紙の反射率を測定し、(ベタ白画像の反射率の最悪値−未使用転写紙の反射率の最高値)をカブリ濃度とした。反射率はTC−6DS(東京電色製)で測定した。ただし、測定値を目視で判断した場合、1.5以下は目視ではほとんど確認できないレベル、2.0〜3.0程度はよく見ると確認できるレベル、4.0を超えると一見してカブリが確認できるレベルである。
(4)文字飛び散り
画像比率6.0%程度の文字チャートを用い、得られた画像上の文字を光学顕微鏡にて100倍程度に拡大、飛び散り具合を観察し、評価結果をA〜Eランクの指標で示した。
(5)ベタ画像スジ・ムラ
ベタ黒画像及びハーフトーン(HT)画像を現像し、それぞれの画像においてスジ・ムラを目視により観察し、評価結果をA〜Eランクの指標で示した。
<実施例2〜8、比較例1〜3>
実施例1に用いた現像スリーブS−1の代わりに、現像スリーブS−2〜S−11を用いた以外は、それぞれ実施例1と同様にして画出し評価した。評価結果を表4〜5に示した。
<実施例9>
次に、上記現像スリーブS−12、及びトナーβを用いて、図2に示すような現像装置に組み込み、画出し評価を行った。画出しには、キヤノン製レーザービームプリンタLBP930EXの改造機を用いて、所定の現像バイアスを印加して、画出し評価を行った。画出しは、23℃,60%RHの常温常湿(N/N)、15℃,10%RHの低温低湿(L/L)、及び32.5℃,85%RHの高温高湿(H/H)環境下にて、5万枚まで行った。評価方法は実施例1と同様にして、得られた評価結果を表6に示した。
<実施例10〜15、比較例4〜6>
実施例9に用いた現像スリーブS−12の代わりに、現像スリーブS−13〜S−21を用いた以外は、それぞれ実施例9と同様にして画出し評価した。評価結果を表6〜7に示した。