以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明について詳述する。先ず、本発明の現像剤担持体について説明する。
本発明の現像剤担持体は、静電潜像担持体に担持された静電潜像を可視化するための現像剤を担持する現像剤担持体であって、前記現像剤担持体は基体と、該基体表面に形成された樹脂被覆層とを少なくとも有し、前記樹脂被覆層は、少なくとも有機モリブデン化合物を含有し、該有機モリブデン化合物は硫黄原子を含有する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、現像剤担持体表面の被覆層を少なくとも硫黄原子を含有する有機モリブデン化合物を被覆樹脂中に含有させた構成にすることにより、被覆層表面の潤滑耐久性とトナーへの迅速且つ均一な帯電付与性が向上すると共に、トナーのチャージアップやトナー汚染を防止する効果があることを見出した。
又、現像剤担持体を上記構成とすることにより、被覆樹脂中で有機モリブデン化合物が微小且つ均一に分散され易く、被覆層表面が均一な形状と潤滑性を有する樹脂被覆層が形成できることにより、多数枚の画出しにおいても現像剤担持体の表面被覆層の磨耗による粗さ、表面形状の均一性及び表面の材料組成の変化を抑制できる効果を見出した。
本発明に用いられる有機モリブデン化合物は、従来のグラファイトや二硫化モリブデンのような無機系の固体潤滑剤と比較して、被覆樹脂層を形成するための樹脂溶液中に分散させる際に、微小且つ均一に樹脂溶液中に分散あるいは溶解できる。
従って、少なくとも前記の有機モリブデン化合物を含有する樹脂溶液から成る塗料を用いて現像剤担持体上に形成した樹脂被覆層では、表面部分から内層にかけて有機モリブデン化合物が微小且つ均一に存在するようになる。
本発明の現像剤担持体表面の被覆層中に有機モリブデン化合物を含有させることで得られるトナーのチャージアップ現象の防止及びトナー汚染の抑制の効果に関するメカニズムは定かではないが、被覆層表面に微小且つ均一に存在する有機モリブデン化合物が、現像剤や現像剤規制部材との摩擦の際に生じる熱により活性化し、分子間反応により二硫化モリブデンを生成し、この生成した二硫化モリブデンが潤滑性を付与することから得られるのではないかと考えられる。
又、前記の生成した二硫化モリブデンがトナーとの摩擦により被覆層表面から消え失せたとしても、新しい微小な有機モリブデン化合物が被覆層表面近傍から次々と被覆層表面に露出し、再度摩擦による熱で二硫化モリブデンに変化するといったこの一連の挙動が繰り返されることで長期に亘って潤滑性が維持されるものと考えられる。
更に、本発明に用いられる有機モリブデン化合物は、樹脂被覆層中に含有させるとトナーを迅速且つ均一に帯電する帯電付与能力にも優れている。但し、二硫化モリブデン自体にはこのような優れた帯電付与能力は認められないため、前記した潤滑性の維持効果と同じように、二硫化モリブデンに変化した部分が被覆層表面からトナーとの摩擦で消え失せると共に新たに被覆層表面近傍から新しい有機モリブデン化合物が露出することで優れた帯電付与性が維持されるものと考えられる。
即ち、現像剤担持体の樹脂被覆層表面が現像剤や現像剤規制部材との摩擦により、帯電付与能力に優れた有機モリブデン化合物と潤滑性に優れた二硫化モリブデンが均一且つ微小に樹脂被覆表面に絶えず共存するようになることで、前記のような効果が得られるものと推測する。
有機モリブデン化合物としては、例えば、硫化オキシモリブデンキサンテートと酸性燐酸エステルとの反応物、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオホスフェート等が挙げられるが、これらの中でも、好ましくは硫黄原子を含有する硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオホスフェートであり、より好ましくは硫黄原子と窒素原子を含有する硫化オキシモリブデンジチオカーバメートである。
硫化オキシモリブデンジチオカーバメートは、次の一般式(1)で表わされる炭化水素基置換硫化オキシモリブデンジチオカーバメートである。
上記式中、R1〜R4は炭化水素基であり、同一であっても異なっていても良く、飽和若しくは不飽和結合を含むものであっても良く、直鎖状、
分子鎖状、若しくは環状、又はこれらの組合せであっても良い。R1〜R4は炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、更に好ましくは2〜13であり、更に好ましくは2〜8である。
R1〜R4の合計炭素数としては、好ましくは4〜36であり、より好ましくは4〜32であり、更に好ましくは8〜32である。R1〜R4の合計炭素数が上記範囲内であると、常温で化学的に安定していて粉末状で存在できるが、上記範囲より大きい場合には融点が低くなり常温で粘稠物となり、現像剤担持体の被覆層に多く添加すると、被覆層表面にブリードし易くなってトナーへの帯電付与性に悪影響を与えてしまう場合がある。
斯かる炭化水素基としては脂肪族系、芳香族系及び芳香−脂肪族系のものがある。具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ラウリル、トリデシル、イソトリデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル等のアルキル基、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、2−エチルヘキセニル、オクテニル、オレイル、パルミトオレイル等のアルケニル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロペンチル等のシクロアルキル基、フェニル、ナフチル、アルキル置換フェニル等のアリール基、ベンジル、フェネチル等のアラルキル基等が挙げられる。好ましくはエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル等が良い。
上記一般式(1)中のX1 〜X4 は硫黄原子又は酸素原子を表わし、同一であっても異なっても良い。又、硫黄原子が少なすぎると潤滑性が低下し易く、逆に多過ぎると現像剤担持体の基体への腐食性やトナーへの帯電付与性が悪化し易いので、酸素原子:硫黄原子=1:3〜3:1であることが好ましい。
硫化オキシモリブデンジチオホスフェートは下記の一般式(2)で表わされる炭化水素基置換硫化オキシモリブデンジチオホスフェートである。
上記式中、R5〜R8は炭化水素基であり、同一であっても異なっていても良く良く、飽和もしくは不飽和結合を含むものであっても良く、直鎖状、
分子鎖状、若しくは環状、またこれらの組合せであっても良い。R5〜R8は炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、更に好ましくは2〜13であり、更に好ましくは2〜8である。
斯かる炭化水素基としては脂肪族系、芳香族系及び芳香−脂肪族系のものがある。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2−オクチルドデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−テトラデシルオクタデシル、モノメチル分枝−イソステアリル等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、2−エチルヘキセニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル基等が挙げられる。
アルキルアリール基としては例えば、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、エチルシクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
上記一般式(2)中のX5〜X8は硫黄原子又は酸素原子を表わし、同一であっても異なっても良い。又、硫黄原子が少な過ぎると耐潤滑性が低下し易く、逆に多過ぎるとトナーへの帯電付与性が悪化し易いので、酸素原子:硫黄原子=1:3〜3:1であることが好ましい。
これらの有機モリブデン化合物はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
又、これらの有機モリブデン化合物が常温で粉末状であるものを用いる場合は、その重量平均粒径が25μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。粉末状の有機モリブデン化合物は樹脂溶液中に分散させると容易に粉砕又は1次粒子まで解され易く、1μm前後の粒径までに均一且つ容易に分散するが、重量平均粒径が25μmを超えると、一部溶液中で十分に分散されない場合があり、樹脂被覆層の局部的な磨耗を発生する可能性がある。
本発明の現像剤担持体を構成する樹脂被覆層の結着樹脂材料としては、従来より現像剤担持体の樹脂被覆層に一般に用いられている公知の樹脂を使用することが可能である。例えば、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱あるいは光硬化性樹脂等を使用することができる。中でもシリコン樹脂、フッ素樹脂のような離型性のあるもの、或はポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアミド、フェノール、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような機械的性質に優れたものがより好ましい。
本発明において、現像剤担持体の樹脂被覆層は、チャージアップによるトナーの樹脂被覆層表面への汚染や、トナーのチャージアップに伴って生じる現像剤担持体上からのトナーへの帯電付与不良を防止するためには、導電性であることが好ましい。
樹脂被覆層の体積抵抗としては、好ましくは103 〜1066 Ω・cmであり、より好ましくは10−2〜105 Ω・cmである。樹脂被覆層の体積抵抗が106 Ω・cmを超える場合には、トナーのチャージアップが発生し易くなり、樹脂被服層へのトナー汚染を引き起こすと共にトナーへの帯電付与不良を発生し易い。
本発明においては、樹脂被覆層の体積抵抗を上記の値に調整するため、樹脂被覆層中に導電性微粒子を分散含有させても良い。
この導電性微粒子としては、個数平均粒径が好ましくは1μm以下、より好ましくは0.01〜0.8μmのものが良い。この樹脂被覆層中に黒鉛化粒子と併用して分散含有させる導電性微粒子の個数平均粒径が1μmを超える場合には、樹脂被覆層の体積抵抗を低く制御しづらくなり、トナーのチャージアップによるトナー汚染が発生し易くなる。
本発明で使用することのできる導電性微粒子としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリ、酸化アンチモン及び酸化インジウム等の金属酸化物等;アルミニウム、銅、銀、ニッケル等の金属、グラファイト、金属繊維、炭素繊維等の無機系充填剤等が挙げられる。
本発明の現像剤担持体を構成する樹脂被覆層には、固体潤滑剤として潤滑性粒子を併用して分散させると、より本発明の効果が促進されるため好ましい。この潤滑性粒子としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化硼素、雲母、フッ化グラファイト、銀−セレン化ニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩等が挙げられ、中でもグラファイト粒子が樹脂被覆層の導電性が損なわれないので特に好ましく用いられる。これらの潤滑性粒子は、個数平均粒径が好ましくは0.2〜20μm、より好ましくは1〜15μm、更に好ましくは2〜10μmのものを使用するのが良い。潤滑性粒子の個数平均粒径が0.2μm未満の場合には、潤滑性粒子が均一に分散し難く、個数平均粒径が20μmを超える場合には、樹脂被覆層表面の粗さが不均一となり、樹脂被覆層の耐摩耗性が低下し易い。
本発明の現像剤担持体を構成する樹脂被覆層には、該樹脂被覆層表面に凹凸を付与するため、球状粒子を併用して分散させると、より本発明の効果が促進されるため好ましい。
球状粒子は、現像剤担持体の樹脂被覆層表面に均一な表面粗度を保持させると同時に耐磨耗性を向上させ、更に樹脂被覆層表面が摩耗した場合でも被覆層の表面粗度の変化が少なく、且つ、樹脂被覆層表面のトナー汚染やトナー融着を発生しにくくする効果がある。
本発明に使用される球状粒子としては、個数平均径が1〜30μm、好ましくは2〜20μmである。
球状粒子の個数平均粒径が1μm未満では表面に均一な粗さを付与する効果と耐磨耗性を高める効果が少なく、現像剤への均一な帯電付与が不十分となると共に、樹脂被覆層の磨耗によるトナーのチャージアップ、トナー汚染及びトナー融着が発生し易く、ゴーストの悪化、画像濃度低下を生じ易い。又、個数平均粒径が30μmを超える場合には、被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎ、トナーの帯電が十分に行われにくくなってしまうと共に、被覆層の機械的強度が低下してしまう場合がある。
本発明で使用する球状粒子の真密度は、3g/cm3 以下であることが好ましく、2.7g/cm3 以下であることがより好ましく、0.9〜2.3g/cm3 であることが更に好ましい。即ち、球状粒子の真密度が3g/cm3 を超える場合には、樹脂被覆層中での球状粒子の分散性が不十分となるため、樹脂被覆層表面に均一な粗さを付与しにくくなり、トナーの均一な帯電付与及び被覆層の強度が不十分となってしまう場合がある。
又、球状粒子の真密度が0.9g/cm3 より小さい場合にも、被覆層中での球状粒子の分散性が不十分となり易い。
本発明で用いられる球状粒子における球状とは、粒子投影像における粒子の長径/短径の比が1.0〜1.5程度のものを意味しており、本発明において好ましくは長径/短径の比が1.0〜1.2の粒子を使用することが良い。
球状粒子の長径/短径の比が1.5を超える場合には、樹脂被覆層中への球状粒子の分散性が低下すると共に、該樹脂被覆層表面粗さの不均一化が発生し、トナーの均一な帯電付与及び樹脂被覆層の強度の点が不十分となる場合がある。
このような本発明に用いられる球状粒子としては、公知のものが使用可能であり、特に限定されないが、例えば、球状の樹脂粒子、球状の金属酸化物粒子、球状の炭素化物粒子などを挙げることができる。
球状の樹脂粒子としては、例えば懸濁重合、分散重合法等により得られるものを用いることができる。球状の樹脂粒子は、より少ない添加量で好適な表面粗さを樹脂被覆層に付与することができ、更に該樹脂被覆層の表面形状を均一にし易いため、上記各球状粒子の中でも好適に用いることができる。このような球状の樹脂粒子の材料としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子、ナイロン等のポリアミド系樹脂粒子、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン粒子等が挙げられる。粉砕法により得られた樹脂粒子を熱的に或は物理的に球形化処理を行ってから用いても良い。
又、上記球状粒子の表面に無機物を付着させたり、固着させて用いても良い。この様な無機物としては、SiO2 、SrTiO3 、CeO2 、CrO、Ai2 O3 、ZnO、MgO等の酸化物、Si3 N4 等の窒化物;SiC等の炭化物;CaSO4 、BaSO4 、CaCO3 等の炭化物又は炭酸塩等が挙げられる。このような無機物は、カップリング剤により処理して用いても良い。
カップリング剤により処理された無機物は、特に球状粒子と結着樹脂との密着性を向上させる目的、或は球状粒子に疎水性を与える等の目的では好ましく用いることが可能である。このようなカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等がある。
より具体的には、例えばシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛の硅素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
このように球状樹脂粒子表面に無機物を付着または固着させて処理することにより、樹脂被覆層中への分散性、被覆層表面の均一性、被覆層の耐汚染性、トナーへの帯電付与性、被覆層の耐磨耗性等を向上させることができる。
又、本発明に使用する球状粒子は、導電性であることが好ましい。即ち、球状粒子に導電性を持たせることによって、粒子表面にチャージが蓄積しにくく、トナー付着の軽減やトナーの帯電付与性を向上させることができるからである。
本発明において、球状粒子の導電性としては、体積抵抗値が106 Ω・cm以下、より好ましくは10−3〜106 Ω・cmの粒子であることが好ましい。球状粒子の体積抵抗が106 Ω・cmを超えると、摩耗によって樹脂被覆層表面に露出した球状粒子を核としてトナーの汚染や融着を発生し易くなるとともに、迅速且つ均一な帯電が行われにくくなる場合がある。
本発明の樹脂被覆層には、トナーの帯電量を制御するための荷電制御剤が含有されていても良い。
例えば、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、更にモノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物が好ましく用いられる。更に、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びそれらの金属塩、それらの無水物、それらのエステル類、ビスフェノール等のそれらのフェノール誘導体類;尿素誘導体;含金属サリチル酸系化合物;含金属ナフトエ酸化合物;ホウ素化合物;4級アンモニウム塩;カリックスアレーン;ケイ素化合物;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−メタクリル酸共重合体;スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体;及びノンメタルカルボン酸系化合物が挙げられる。
次に、本発明の現像剤担持体の構成について説明する。
本発明の現像剤担持体は、基体と、該基体表面に形成された樹脂被覆層とを有する。
基体の形状としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材等がある。感光ドラムに非接触の現像方法においては金属の円筒状部材が好ましく用いられ、具体的には金属製の円筒管が好ましく用いられる。金属製円筒管は主としてステンレススチール、アルミニウム及びその合金等の非磁性のものが好適に用いられる。
又、感光ドラムに直接接触させる現像方法の場合の基体としては、金属製の芯金にウレタン、EPDM、シリコン等のゴムやエラストマーを含む層構成を有する円中状部材が好ましく用いられる。又、磁性現像剤を用いる現像方法においては、現像剤を現像剤担持体上に磁気的に吸引且つ保持するために、磁石が内設されているマグネットローラ等を現像剤担持体内に配置する。その場合、基体を円筒状としその内部にマグネットローラを配置すれば良い。
以下、本発明の現像剤担持体における樹脂被覆層の構成について説明する。
図1は本発明の現像剤担持体の一部分を示す断面模式図である。
図1において、有機モリブデン化合物a、導電性微粒子c、潤滑性粒子d及び球状粒子eが被覆樹脂b中に分散されてなる樹脂被覆層17が、金属円筒管からなる基体16上に積層されている。この構成により、樹脂被覆層17の表面は分散された球状粒子により均一な凹凸が付与されている。又、有機モリブデン化合物a及び導電性微粒子cは共に微小且つ均一な状態で、更に潤滑性粒子dは被覆層表面の形状に寄与しない程度の粒径と添加量となるように被覆層中に分散されている。
このような構成は、現像剤規制部材が現像剤担持体に対して(トナーを介して)弾性的に圧接されるタイプの現像装置に用いる場合に有利である。即ち、この樹脂被覆層7の表面の球状粒子dにより弾性規制部材の圧接力を規制し、トナーと樹脂被覆層の樹脂及び有機モリブデン化合物a、導電性微粒子c、潤滑性粒子dとの接触帯電機会を多くしたり、トナーの樹脂被覆層表面に対する離型性を軽減したりする調整の役割も果たす。
次に、樹脂被覆層を構成する各成分の構成比について説明する。
この構成比は本発明において特に好ましい範囲であるが、本発明はこれに限定されるものではない。樹脂被覆層中に分散される有機モリブデン化合物の含有量としては、被覆樹脂100質量部に対して好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜40質量部の範囲で、現像剤担持体の耐磨耗性及びトナーへの帯電付与の効果がより発揮される。有機モリブデン化合物の含有量が1質量部未満の場合には有機モリブデン化合物の添加効果が小さく、60質量部を超える場合には樹脂被覆層の密着性が低くなり過ぎて耐磨耗性が悪化してしまう場合がある。
上記有機モリブデン化合物とともに樹脂被覆層中に含有されうる導電性微粒子の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して好ましくは1〜100質量部、より好ましくは2〜80質量部の範囲にすることが好ましい。
導電性微粒子の含有量が1質量部未満では被覆層の体積抵抗を所望のレベルに下げることは、通常困難であり、トナーのチャージアップが発生する可能性が高い。
100質量部を越える場合には、樹脂被覆層の強度の低下により耐磨耗性の悪化が認められる。
樹脂被覆層中に固体潤滑剤としての潤滑性粒子を併用して含有させる場合には、潤滑性粒子の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲とすることが好ましい。
潤滑性粒子の含有量が100質量部を超える場合には、被膜強度の低下による磨耗が認められと共にトナーへの帯電付与性が悪化し、1質量部未満では7μm以下の小粒径トナーを用いて長期間使用した場合など、樹脂被覆層表面にトナーの汚染が発生し易くなる傾向がある。
樹脂被覆層中に球状粒子を上記有機モリブデン化合物と併用して含有させる場合には、球状粒子の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して好ましくは1〜100質量部、より好ましくは2〜80質量部の範囲とすることにより、樹脂被覆層の表面粗度の維持及びトナー汚染やトナー飛散の防止の点において、特に好ましい結果を与える。球状粒子の含有量が1質量部未満の場合には球状粒子の添加効果が小さく、100質量部を越える場合にはトナーの帯電性が低くなり過ぎてしまう場合がある。
本発明においては、現像剤担持体の帯電性を調整するために、上記樹脂被覆層中に荷電制御剤を含有させても良い。その場合、荷電制御剤の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して1〜60質量部とすることが好ましい。1質量部未満では添加による帯電制御性の効果が見られず、60質量部を超えると樹脂被覆層中で分散不良が起こり被膜強度の低下を招き易い。
本発明では、樹脂被覆層表面の粗度として、JIS B0601−2001で定義された算術平均粗さ(以下、「Ra」と称す)が0.3〜3.5μmであることが好ましく、0.5〜3.0μmであることがより好ましい。樹脂被覆層表面のRaが0.3μm未満の場合には、樹脂被覆層表面に現像剤の搬送を十分に行うための凹凸が形成しにくくなり、現像剤担持体上の現像剤量が不安定になると共に樹脂被覆層の耐摩耗性及び耐トナー汚染性も不十分となる場合がある。
Raが3.5μmを超える場合には、現像剤担持体上の現像剤の搬送量が多くなり過ぎて現像剤に均一に帯電付与しにくくなると共に樹脂被覆層の機械的強度も低下してしまうことがある。
上記したような構成の樹脂被覆層の層厚は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは4〜20μmであることが均一な膜厚を得るために好ましいが、特にこの層厚に限定されるものではない。これらの層厚は、樹脂被覆層に使用する材料にもよるが、付着質量として4000〜20000mg/m2 程度にすれば得られる。
次に、上記した様な本発明の現像剤担持体を有する本発明の現像装置、該現像装置を有する画像形成装置及び本発明のプロセスカートリッジについて説明する。
図2は現像剤として磁性一成分現像剤を用いた場合の、本発明の現像剤担持体を有する現像装置の一実施形態を示す模式図である。
図2において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を保持する静電潜像担持体としての電子写真感光ドラム(電子写真用感光体)1は、矢印B方向に回転される。
現像剤担持体としての現像スリーブ8は、電子写真感光ドラム1との間に所定の間隙をもって対向するように配置されている。この現像スリーブ8は、現像剤容器としてのホッパー3によって供給された磁性トナーを有する一成分系現像剤4を担持して矢印A方向に回転することによって、感光ドラム1表面において現像スリーブ8と対向する最近接部である現像領域Dに現像剤4を搬送する。図2に示すように、現像スリーブ8内には、現像剤4を現像スリーブ8上に磁気的に吸引し且つ保持するために、磁石を内蔵するマグネットローラー5が配置されている。
本発明の現像装置で用いられる現像スリーブ8は、基体としての金属円筒管6上に被覆された樹脂被覆層としての導電性被覆層7を有する。ホッパー3中には、現像剤4を撹拌するための撹拌翼10が設けられている。12は現像スリーブ8とマグネットローラ5とが非接触状態にあることを示す間隙である。
現像剤4は、磁性トナー相互間及び現像スリーブ8上の導電性被覆層7との摩擦によって、感光ドラム1上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図2では、現像領域Dに搬送される現像剤4の層を形成しこの層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード2が、現像スリーブ8の表面から約50〜500μmのギャップ幅をもって現像スリーブ8に臨むように、ホッパー3から垂下されている。マグネットローラー5の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード2に集中することにより、現像スリーブ8上に現像剤4の薄層が形成される。
尚、本発明においては、この磁性規制ブレード2に代えて非磁性ブレードを使用することもできる。このようにして現像スリーブ8上に形成される現像剤4の薄層の厚さは、現像領域Dにおける現像スリーブ8と感光ドラム1との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
本発明の現像剤担持体は、以上のような現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置に組み込むのが特に有効であるが、現像領域Dにおいて、現像剤層の厚みが現像スリーブ8と感光ドラム1との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、即ち、接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。以下の説明では、説明の煩雑を避けるため、上記したような非接触型現像装置を例に取って行う。
現像スリーブ8に担持された磁性トナーを有する一成分系現像剤4を飛翔させるため、上記現像スリーブ8にはバイアス手段としての現像バイアス電源9により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときには、静電潜像の画像部(現像剤4が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位の中間の値の電圧を現像スリーブ8に印加するのが好ましい。現像された画像の濃度を高め、或は階調性を向上させるためには、現像スリーブ8に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに、向きが交互に反転する振動電界を形成しても良い。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ8に印加するのが好ましい。
高電位部と低電位部とを有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用する。高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。高電位、低電位というのは、絶対値による表現である。これら何れの場合にも、現像剤4は少なくとも現像スリーブ8との摩擦により帯電する。
図3及び図4はそれぞれ本発明の現像装置の他の実施形態を示す構成模式図である。
図3及び図4に示した現像装置では、現像スリーブ8上の現像剤4の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴム弾性を有する材料、或はリン青銅、ステンレス鋼等の金属弾性を有する材料の弾性板から成る弾性規制ブレード(弾性規制部材)11を使用している。
図3の現像装置では、この弾性規制ブレード11を現像スリーブ8の回転方向と順方向の向きで圧接させており、図4の現像装置では、この弾性規制ブレード11を現像スリーブ8の回転方向と逆方向の向きで圧接させているのが特徴である。これらの現像装置では、現像剤層を介して現像剤層厚規制部材を現像スリーブ8に弾性的に圧接させている。これにより現像スリーブ上に現像剤の薄層が形成されるため、図2で説明した磁性規制ブレードを用いた場合よりも更に薄い現像剤層を現像スリーブ8上に形成することができる。
尚、図3及び図4の現像装置において、他の基本的構成は図2に示した現像装置と同じであり、同符号のものは基本的には同一の部材であることを示す。
図2〜図4はあくまでも本発明の現像装置を模式的に例示したものであり、現像剤容器(ホッパー3)の形状、撹拌翼10の有無、磁極の配置等に様々な形態があることは言うまでもない。勿論、これらの装置では、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を用いる現像に使用することもできる。
図5は非磁性一成分現像剤を用いた場合の本発明の現像装置の構成の一例を示す模式図である。
図5において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する像担持体としての電子写真感光ドラム1は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ8は、金属製円筒管(基体)6とその表面に形成される樹脂被膜層7とから構成されている。非磁性一成分現像剤を用いるため、金属製円筒管6の内部に磁石は内設されていない。金属製円筒管の代わりに円柱状部材を用いることもできる。
現像剤容器であるホッパー3中には非磁性一成分現像剤4’を撹拌するための撹拌翼10が設けられている。
現像スリーブ8に現像剤4’を供給し、且つ、現像後の現像スリーブ8の表面に存在する現像剤4’を剥ぎ取るための現像剤供給・剥ぎ取り部材13が現像スリーブ8に当接している。現像剤供給・剥ぎ取り部材である供給・剥ぎ取りローラ13が現像スリーブ8と同じ方向に回転することにより、供給・剥ぎ取りローラ13の表面は現像スリーブ8の表面とカウンター方向に移動することになる。
これにより、ホッパー3から供給された非磁性トナーを有する一成分非磁性現像剤が現像剤スリーブ8に供給される。現像スリーブ8が一成分現像剤4を担持して矢印A方向に回転することにより、感光ドラム1表面において現像スリーブ8と対向する領域である現像領域Dに非磁性一成分現像剤4が搬送される。現像スリーブ8に担持された一成分現像剤は、現像スリーブ8の表面に現像剤層を介して圧接する現像剤層厚規制部材11により現像剤層厚が規定される。非磁性一成分現像剤4は現像スリーブ8との摩擦により、感光ドラム1上の静電潜像を現像可能な摩擦帯電電荷を得る。
現像スリーブ8上に形成される非磁性一成分現像剤4の薄層の厚みは、現像部における現像スリーブ8と感光ドラム1との間の現像領域Dにおける最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。このような現像剤層により静電潜像を現像する非接触型現像装置に、本発明は特に有効である。しかし、現像部において現像剤層の厚みが現像スリーブ8と感光ドラム1との間の最小間隙以上の厚さとなる接触型現像装置にも、本発明は適用することができる。尚、説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、非接触型現像装置を例に採って行う。
上記現像スリーブ8には、これに担持された非磁性トナーを有する一成分非磁性現像剤4を飛翔させるために、現像バイアス電源9により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(非磁性現像剤4が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位の間の値の電圧が、現像スリーブ8に印加されることが好ましい。
現像画像の濃度を高めるため或いは階調性を向上するために、現像スリーブ8に交番バイアス電圧を印加して、現像部に向きが交互に反転する振動電界を形成しても良い。この場合、上記画像部の電位と背景部の電位の間の値を有する直流電圧成分が重畳された交番バイアス電圧を現像スリーブ8に印加することが好ましい。
高電位部と低電位部とを有する静電潜像の高電位部に現像剤を付着させて可視化する所謂正規現像では、静電潜像の極性と逆極性に帯電する現像剤を使用する。又、静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する所謂反転現像では、現像剤は静電潜像の極性と同極性に帯電する現像剤を使用する。尚、高電位と低電位というのは、絶対値による表現である。何れにしても、非磁性一成分現像剤4は現像スリーブ8との摩擦により静電潜像を現像するための極性を帯電する。
現像剤供給・剥ぎ取り部材13としては、樹脂、ゴム、スポンジ等の弾性ローラ部材が好ましい。剥ぎ取り部材としては、弾性ローラに代えてベルト部材又はブラシ部材を用いることもできる。感光体1に現像移行されなかった現像剤を現像剤供給・剥ぎ取り部材2により、一旦スリーブ表面から剥ぎ取ることにより、スリーブ上の不動の現像剤の発生を防いだり、現像剤の帯電を均一化する。
現像剤供給・剥ぎ取り部材として弾性ローラから成る供給・剥ぎ取りローラ13を用いる場合には、供給・剥ぎ取りローラ13の周速は、該ローラ13表面が現像スリーブ8に対してカウンター方向に回転する場合、現像スリーブ8の周速100%に対して、好ましくは20〜120%、より好ましくは30〜100%である。
供給・剥ぎ取りローラ13の周速が20%未満の場合には、現像剤の供給が不足し、ベタ画像の追従性が低下してゴースト画像の原因となり、周速が120%を超える場合には、現像剤の供給量が多くなり、現像剤層厚の規制不良や帯電量不足によるカブリの原因となり、更にトナーにダメージを与え易いため、トナー劣化によるカブリやトナー融着の原因となり易い。
供給・剥ぎ取りローラ13の表面における回転方向が現像スリーブの表面の回転方向と同(順)方向の場合には、供給ローラの周速は、スリーブ周速に対して好ましくは100〜300%、より好ましくは101〜200%であることが上記のトナー供給量の点で良い。
供給・剥ぎ取りローラ13の表面における回転方向は、現像スリーブの表面における回転方向とカウンター方向に回転することが、剥ぎ取り性及び供給性の点でより好ましい。
現像スリーブ8に対する現像剤供給・剥ぎ取り部材13の侵入量は、0.5〜2.5mmであることが、現像剤の供給及び剥ぎ取り性の点で好ましい。
現像剤供給・剥ぎ取り部材13の侵入量が0.5mm未満の場合には、剥ぎ取り不足によりゴーストが発生し易くなり、侵入量が2.5mmを超える場合には、トナーのダメージが大きくなり、トナー劣化により融着やカブリの原因となり易い。
図5の現像装置では、現像スリーブ8上の非磁性一成分現像剤4の層厚を規制する部材として、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴム弾性を有する材料、或はリン青銅、ステンレス銅等の金属弾性を有する材料の弾性規制ブレード11を使用している。この弾性規制ブレード11を現像スリーブ8の回転方向と逆の姿勢で該現像スリーブ8に圧接させることにより、現像スリーブ8上に更に薄い現像剤層を形成することができる。
この弾性規制ブレード11としては、特に安定した規制力とトナーへの安定した(負)帯電付与性のために、安定した加圧力の得られるリン青銅板表面にポリアミドエラストマー(PAE)を貼り付けた構造のものを用いることが好ましい。ポリアミドエラストマー(PAE)としては、例えばポリアミドとポリエーテルの共重合体が挙げられる。
現像スリーブ8に対する現像剤層厚規制部材11の当接圧力は、線圧5〜50g/cmであることが、現像剤の規制を安定化させ、現像剤層厚を好適に調整することができる点で好ましい。
現像剤層厚規制部材11の当接圧力が線圧5g/cm未満の場合には、現像剤の規制が弱くなり、カブリやトナー漏れの原因となり、線圧50g/cmを超える場合にはトナーへのダメージが大きくなり、トナー劣化やスリーブ及びブレードへの融着の原因となり易い。
本発明の現像剤担持体は、このような現像スリーブ8に対して、現像剤供給・剥ぎ取り部材13及び現像剤層厚規制部材11が圧接する装置に適用した場合に、特に有効である。
即ち、現像スリーブ8に対して、現像剤供給・剥ぎ取り部材13及び現像剤層厚規制部材11が圧接する場合には、現像スリーブ8の表面がこれらの圧接される部材によって摩耗や現像剤の融着がより生じ易い使用環境にあることから、本発明の多数枚耐久性に優れた樹脂被覆層を有する現像剤担持体による効果が有効に発現されることになる。
次に、本発明の現像装置で用いられる現像剤について説明する。
本発明で用いられる現像剤はトナーを主成分とする(キャリアを含まない)一成分系現像剤であってもトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であっても良い。又、本発明で用いられる現像剤が一成分系現像剤である場合において、トナーが磁性トナーである磁性一成分系現像剤であっても、非磁性トナーである非磁性一成分系現像剤であっても良い。
トナーは主として結着樹脂、離型剤、荷電制御剤、着色剤等を溶融混練し、固化した後粉砕し、然る後分級等を行い粒度分布を揃えた微粉体である。トナーに用いられる結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。
トナーを磁性トナーとして用いるために、トナーの中に磁性粉を含有させても良い。
トナーの定着時の離型性向上、定着性向上の目的で、トナーにワックス類を含有させることもできる。必要に応じて、トナーに荷電制御剤を含有させても良い。
トナーは必要に応じて、流動性改善等の目的で無機微粉末等の微粉体を外添して用いられる。
上記したような本発明で用いられるトナーは、種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。そのような方法としては、攪拌羽根又はブレード等及びライナー又はケーシング等を有する装置を用い、例えば、トナーをブレードとライナーの間の微小間隙を通過させる際に、機械的な力により表面を平滑化したりトナーを球形化したりする方法が挙げられる。又、温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法や、熱気流中にトナーを曝し、球形化する方法等もある。
又、球状のトナーを作る方法としては、水中にトナー結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー化する方法がある。
以下に本発明に関わる物性の測定方法について述べる。
(1)現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)の測定
JIS B0601 2001の算術平均粗さに基づき、小坂研究所製サーフコーダーSE−3500を用いて、測定条件としてはカットオフ値λc0.8、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sにて、軸方向3点×周方向2点=6点について各々測定し、その平均値を取った。
(2)樹脂被覆層の体積抵抗の測定
100μmの厚さのPETシート上に7〜20μmの厚さの被覆層を形成し、ASTM規格(D−991−82)及び日本ゴム協会標準規格SRIS(2301−1969)に準拠した、導電性ゴム及びプラスチックの体積抵抗測定用の4端子法を用いて、ローレスターAP(三菱油化社製)により測定した。尚、測定環境は20〜25℃、50〜60RH%とする。
(3)トナーと粉末状の有機モリブデン化合物の粒径測定
電解質溶液100〜150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml添加し、これに測定試料を2〜20mg添加する。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、前述したコールターカウンターマルチサイザーにより17μm又は100μm等の適宜トナーサイズに合わせたアパーチャーを用いて体積を基準として0.3〜40μmの粒度分布等を測定するものとする。この条件で測定した個数平均粒径、重量平均粒径をコンピュータ処理により求め、更に個数基準の粒度分布より個数平均粒径の1/2倍径累積分布以下の累積割合を計算し、1/2倍径累積分布以下の累積値を求める。同様に体積基準の粒度分布より重量平均粒径の2倍径累積分布以上の累積割合を計算し、2倍径累積分布以上の累積値を求める。
(4)グラファイト及び炭素粒子の粒径測定
グラファイト及び炭素粒子の粒径はレーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型粒度分布計(コールター社製)を用いて測定する。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としては純水を使用する。純水にて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行する。
次に、純水10ml中に界面活性剤3〜4滴を加え、更に測定試料を5〜25mg加える。試料を懸濁した水溶液は超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行って試料液を得る。この試料液を前記測定装置の測定系内に徐々に加え、装置の画面上のPIDSが45〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、個数分布から算術した個数平均粒径を求める。
(5)カーボンブラックの粒径測定
電子顕微鏡を用いて、導電性微粒子の粒径を測定する。撮影倍率は6万倍とするが、難しい場合は低倍率で撮影した後に6万倍となるように写真を拡大プリントする。写真上で1次粒子の粒径を測る。この際、長軸と短軸を測り、平均した値を粒径とする。これを、100サンプルについて測定し、50%値をもって平均粒径とする。
(6)樹脂被覆層の膜厚(削れ量)の測定
被覆層の削れ量(膜削れ)の測定としてはKEYENCE社製レーザー寸法測定器を用いた。コントローラLS−5500及びセンサーヘッドLS−5040Tを用い、スリーブ固定治具及びスリーブ送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、スリーブの外径寸法の平均値から測定を行った。測定はスリーブ長手方向に対し30分割して30箇所測定し、更にスリーブを周方向に90°回転させた後更に30箇所、計60箇所の測定を行い、その平均値を取った。表面被覆層塗布前のスリーブの外径を予め測定しておき、表面被覆層形成後の外径、更に耐久使用後の外径を測定し、その差分をコート膜厚及び削れ量とした。
(7)現像剤担持体表面の摩擦係数μs
現像剤担持体を水平な場所に固定し、 その長手方向にHEIDON製のトライボギア ミューズ(TYPE:94i)の黄銅(ハードクロム処理)スライダーを接触させて行う。又、摩擦係数μsの値は現像剤担持体表面の測定場所を適宜に変えて15点測定し、その平均値から求める。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本実施例は本発明を何ら限定するものではない。尚、実施例及び比較例中の「%」及び「部」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
[実施例]
有機モリブデン化合物として、一般式(1)において、R1〜R4がn−ブチル基で示され、X1〜X4の組成がS:O=1:1である硫化オキシモリブデンジチオカーバメートから成る平均粒径9.3μmの粉末状の有機モリブデン化合物(A−1)を用いた。
又、樹脂被覆層への凹凸付与粒子として、個数平均粒径10.6μmの球状フェノール樹脂粒子100部にライカイ機(自動乳鉢、石川工場製)を用いて個数平均粒径5.3μm以下の石炭系バルクメソフェーズピッチ粉末14部を均一に被覆し、空気中下280℃で熱安定化処理した後に窒素雰囲気下2000℃で焼成することにより黒鉛化し、更に分級して得られた個数平均径10.1μmの球状導電性炭素粒子(B−1)を用いた。
レゾール型フェノール樹脂溶液(メタノール50%含有) 200部
導電性カーボンブラック(平均粒径24nm) 17部
グラファイト(平均粒径4.8μm) 20部
イソプロピルアルコール 80部
これらの材料をメディア粒子としてガラスビーズを用いた横型連続式サンドミルにより分散し、塗料原液(C−1)を得た。
塗料原液(C−1) 317部
有機モリブデン化合物(A−1) 4部
球状導電性炭素粒子(B−1) 8部
メタノール 80部
上記原液(C−1)に有機モリブデン化合物(A−1)、前記の球状導電性炭素粒子(B−1)及びメタノールを上記組成にて更に加えて、サンドミルにて有機モリブデン化合物と導電性球状炭素粒子を分散した。この分散液を更にメタノールで希釈して、300メッシュの篩を通過させて塗料1を得た。
この塗料1を用いてスプレー法により外径20mmφ、算術平均粗さRa=0.2μmに研削加工したアルミニウム製円筒管上に樹脂被覆層を形成させ、続いて熱風乾燥炉により150℃、30分間加熱して樹脂被覆層を硬化させ現像剤担持体D−1を作製した。得られた現像剤担持体D−1の樹脂被覆層の処方と物性を表1に示す。
現像剤担持体の評価機として、LaserJet9000n(HP社製)を用い、現像剤担持体D−1を図4の現像装置を有するC8543Xカートリッジ(HP社製)に装着して一成分系現像剤を供給しながら、6万枚の現像剤担持体の耐久評価テストを行った。一成分系現像剤としては次のものを用いた。
スチレン−アクリル樹脂 100部
マグネタイト 95部
ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のAl錯体 2部
低分子量ポリプロピレン 4部
上記材料をヘンシェルミキサーにより混合し、 二軸式のエクストルーダにより溶融混練分散を行った。混練物を冷却後、 ハンマーミルにて粗粉砕し、更に機械式粉砕機で微粉砕した後に、気流式分級機を用いて分級を行い、個数平均粒径が6.0μmの微粉体(トナー粒子)を得た。この微粉体100部にシランカップリング剤で処理した疎水性コロイダルシリカ1.2部を外添して、磁性トナーとし、この磁性トナーを一成分系現像剤とした。
(評価)
下記に挙げる評価項目について耐久試験をし、実施例及び比較例の各現像剤担持体の評価を行った。
画像濃度、カブリ、ハーフトーン均一性等の画像評価、現像剤担持体上のトナー帯電量(Q/M)及びトナー搬送量(M/S)、樹脂被覆層の潤滑耐久性、耐磨耗性及び耐汚染性について、20℃/60%の常温常湿(N/N)環境、24℃/10%の常温低湿(N/L)環境、30℃/80%の高温高湿(H/H)環境にて、それぞれ耐久評価を行った。
結果を表2及び表3に示す。画像および耐久性共に良好な結果が得られた。
(1)画像濃度
反射濃度計RD918(マクベス製)を使用し、ベタ印字した際のベタ黒部の濃度を5点測定し、その平均値を画像濃度とした。
(2)カブリ濃度
画像形成した記録紙のベタ白部の反射率(D1)を測定し、更に画像形成に用いた記録紙と同一カットの未使用の記録紙の反射率(D2)を測定し、D1−D2の値を5点求め、その平均値をカブリ濃度とした。反射率はTC−6DS(東京電色製)で測定した。
(3)ハーフトーン均一性(白スジ、白帯)
特に、ハーフトーンに発生する、画像形成進行方向に走る線状、帯状のスジについて、形成された画像について目視による観察を行い、下記基準にて評価した。
A:画像にもスリーブ上にも全く確認できない。
B:良く見ると軽微に確認できるが、一見では殆ど確認できない。
C:ハーフトーンでは軽微に確認できるが、ベタ黒では問題ないレベル。
D:ハーフトーンでは、スジが確認できるが、ベタ黒では軽微に確認できるレベル。
E:ベタ黒画像でも濃淡差が確認できるが、実用可。
F:ベタ黒画像全体で実用上問題となる濃淡差が目立つ。
G:濃度が低く、スジの非常に多い画像。
(4)トナー帯電量(Q/M)及びトナー搬送量(M/S)
現像スリーブ上に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、捕集されたトナー質量Mと、トナーを吸引した面積Sから、単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)と単位面積当たりのトナー質量M/S(dg/m2 )を計算し、それぞれトナー帯電量(Q/M)、トナー搬送量(M/S)とした。
(5)樹脂被覆層の耐磨耗性
耐久試験前後の現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)と樹脂被服層の膜厚の削れ量を測定した。
(6)樹脂被覆層の潤滑耐久性
耐久試験前後の現像剤担持体表面の摩擦係数μsを測定して求めた。
(7)樹脂被覆層の耐汚染性
耐久試験後の現像剤担持体表面をKEYENCE社製の超深度形状測定顕微鏡を用いて約200倍で観察し、トナー汚染の程度を下記の基準に基づいて評価した。
A:軽微な汚染しか観察されない。
B:やや汚染が観察される。
C:部分的に汚染が観察される。
D:著しい汚染が観察される。
[実施例2〜3]
実施例1で作製した原液(C−1)へ、有機モリブデン化合物(A−1)の添加量が表1に示した組成になるように添加量を変更したことを除いては、実施例1と同様にして塗料2〜3を得た。これらの塗料を用いて、実施例1と同様に現像剤担持体D−2〜D−3を作製し、評価を行った。これらの現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表2及び表3に示す。
[実施例4]
有機モリブデン化合物として、一般式(2)において、R5〜R8が2−エチルヘキシル基で示され、X5〜X8の組成がS:O=2.2:1である硫化オキシモリブデンジチオホスフェートから成る液状の有機モリブデン化合物(A−2)を用いた。
実施例1で作製した原液(C−1)へ、有機モリブデン化合物(A−1)の代わりに有機モリブデン化合物(A−2)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして塗料4を得た。この塗料を用いて、実施例1と同様に現像剤担持体D−4を作製し、評価を行った。この現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表2及び表3にそれぞれ示す。
<比較例1>
実施例1で作製した原液(C−1)へ、有機モリブデン化合物(A−1)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして塗料5を得た。この塗料を用いて、実施例1と同様に現像剤担持体E−1を作製し、評価を行った。この現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表2及び表3に示す。
<比較例2>
実施例1で作製した原液(C−1)へ、有機モリブデン化合物(A−1)の代わりにグラファイト(平均粒径4.8μm)粒子を表1に示した組成になるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして塗料6を得た。この塗料を用いて、実施例1と同様に現像剤担持体E−2を作製し、評価を行った。この現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表2及び表3に示す。
<比較例3>
実施例1で作製した原液(C−1)へ、有機モリブデン化合物(A−1)の代わりにMoS2
(平均粒径5.5μm)粒子を表1に示した組成になるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして塗料7を得た。この塗料を用いて、実施例1と同様に現像剤担持体E−3を作製し、評価を行った。この現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表2及び表3に示す。
<実施例5>
有機モリブデン化合物として、一般式(1)において、R1〜R4がn−ブチル基で示され、X1〜X4の組成がS:O=2. 2:1である硫化オキシモリブデンジチオカーバメートから成る平均粒径6. 7μmの粉末状の有機モリブデン化合物(A−3)を用いた。
又、樹脂被覆層への凹凸付与粒子として、個数平均粒径5. 5μmの球状フェノール樹脂粒子100部にライカイ機(自動乳鉢、石川工場製)を用いて個数平均粒径3. 1μm以下の石炭系バルクメソフェーズピッチ粉末14部を均一に被覆し、空気中下280℃で熱安定化処理した後に窒素雰囲気下2000℃で焼成することにより黒鉛化し、更に分級して得られた個数平均径5. 7μmの球状導電性炭素粒子(B−2)を用いた。
MMA−DM(メチルメタクリレート−ジメチルアミノエチルメタクリレート)共重合体(共重合比=90/10、Mn=4640、Mw=10200、Mw/Mn=2.2、トルエン50%含有)
200部
黒鉛化粒子(A−2) 12部
導電性カーボンブラック(平均粒径24nm) 15部
酢酸エチル 80部
これらの材料をメディア粒子としてガラスビーズを用いた横型連続式サンドミルにより分散し、塗料原液(C−2)を得た。
塗料原液(C−2) 305部
有機モリブデン化合物(A−3) 5部
球状導電性炭素粒子(B−2) 12部
酢酸エチル 80部
上記原液(C−2)に有機モリブデン化合物(A−3)、球状導電性炭素粒子(B−2)及び酢酸エチルを上記組成にて更に加えて、サンドミルにて有機モリブデン化合物と導電性球状炭素粒子を分散した。この分散液を更に酢酸エチルで希釈して、300メッシュの篩を通過させて塗料8を得た。
この塗料1を用いてスプレー法により外径20mmφ、算術平均粗さRa=0.2μmに研削加工したアルミニウム製円筒管上に樹脂被覆層を形成させ、続いて熱風乾燥炉により150℃、30分間加熱して樹脂被覆層を硬化させ現像剤担持体D−5を作製した。得られた現像剤担持体D−5の樹脂被覆層の処方と物性を表1に示す。
現像剤担持体の評価機として、Color
LaserShot LBP-2160(キヤノン社製)を用い、現像剤担持体D−6を図5の現像装置を有するEP82カートリッジ(キヤノン社製)に装着して一成分系現像剤を供給しながら、3万枚の現像剤担持体の耐久評価テストを行った。一成分系現像剤としては次のシアントナーを用いた。
イオン交換水800gに、0.1M−Na3 PO4 水溶液430gを投入し、63℃に加温した後、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて、16000rpmにて撹拌した。これに、1.0M−CaCl2 水溶液73gを徐々に添加し、燐酸カルシウム塩を含む水系媒体を得た。
一方、
(モノマー) スチレン 162g
n−ブチルアクリレート 38g
(着色剤) C.I.ピグメントブルー15:3 10g
(荷電制御剤)ジ・ターシャリーブチルサリチル酸のAl錯体 2g
(極性レジン)飽和ポリエステル(酸価10,ピーク分子量8500) 17g
(離型剤) エステル系ワックス(融点65℃) 25g
上記処方を63℃に加温し、クレアミックスを用いて、15000rpmにて均一に溶解、分散した。これに、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7gを溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、63℃,N2 雰囲気下において、クレアミックスにて10000rpmで10分間撹拌しつつ、重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、75℃に昇温し、10時間反応させた。重合反応終了後、80℃/減圧下で残存モノマーを留去し、冷却後、塩酸を加え燐酸カルシウム塩を溶解させた後、ろ過、水洗、乾燥、分級して6.3μmの着色粒子(カラートナー粒子)を得た。
得られた着色粒子100質量部に対して、ヘキサメチルジシラザン10質量部で処理した疎水性シリカ(BET290m2 /g)1.2質量部を外添して、非磁性トナーとし、このシアントナーを一成分系現像剤とした。
(評価)
下記に挙げる評価項目について耐久試験をし、実施例及び比較例の各現像剤担持体の評価を行った。
画像濃度、カブリ、ハーフトーン均一性等の画像評価、現像剤担持体上のトナー帯電量(Q/M)及びトナー搬送量(M/S)、樹脂被覆層の耐潤滑性、耐磨耗性及び耐汚染性について、実施例1における評価方法と同様の方法を用いて評価した。
結果を表4及び表5に示す。画像および耐久性共に良好な結果が得られた。
[実施例6〜7]
実施例5で作製した原液(C−2)へ、有機モリブデン化合物(A−3)の添加量が表1に示した組成になるように添加したことを除いては、実施例5と同様にして塗料9〜10を得た。これらの塗料を用いて、実施例5と同様に現像剤担持体D−6〜D−7を作製し、評価を行った。これらの現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表4及び表5に示す。
[実施例8]
有機モリブデン化合物として、一般式(1)において、R1〜R4が2−エチルヘキシル基で示され、X1〜X4の組成がS:O=1:1である硫化オキシモリブデンジチオカーバメートから成る液状の有機モリブデン化合物(A−4)を用いた。
実施例5で作製した原液(C−2)へ、有機モリブデン化合物(A−3)の代わりに有機モリブデン液体(A−4)を添加したこと以外は、実施例5と同様にして塗料11を得た。この塗料を用いて、実施例5と同様に現像剤担持体D−8を作製し、評価を行った。この現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表4及び表5にそれぞれ示す。
<比較例4>
実施例5で作製した原液(C−2)へ、有機モリブデン化合物(A−3)を添加しなかったこと以外は、実施例5と同様にして塗料12を得た。この塗料を用いて、実施例5と同様に現像剤担持体E−4を作製し、評価を行った。この現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表4及び表5に示す。
<比較例5>
実施例5で作製した原液(C−2)へ、有機モリブデン化合物(A−3)の代わりにグラファイト(平均粒径4.8μm)粒子を添加したこと以外は、実施例5と同様にして塗料13を得た。この塗料を用いて、実施例5と同様に現像剤担持体E−2を作製し、評価を行った。この現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表4及び表5に示す。
<比較例6>
実施例5で作製した原液(C−2)へ、有機モリブデン化合物(A−3)の代わりにMoS2 (平均粒径5.5μm)粒子を添加したこと以外は、実施例5と同様にして塗料14を得た。この塗料を用いて、実施例5と同様に現像剤担持体E−6を作製し、評価を行った。この現像剤担持体の樹脂被覆層の処方と物性を表1に、評価結果を表4及び表5に示す。