電子写真法は、種々の手段により静電潜像担持体(以下、「感光ドラム」ともいう)上に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像剤(以下、「トナー」ともいう)により顕像化し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力あるいは溶剤蒸気等により定着し、印画物を得るものである。
近年、電子写真法を用いた機器は、従来の複写機以外にプリンター、ファクシミリ等多数になってきている。現像方式にはキヤリア粒子を用いる二成分現像方式とキヤリア粒子を用いない一成分現像方式に大別される。
一成分現像方式には、磁性粒子をトナーに内包させて磁力の作用により現像剤を現像剤担持体(以下、「現像スリーブ」ともいう)へ担持させる磁性一成分現像方式と、磁性粒子を用いずに現像剤の摩擦電荷の作用などで現像剤を現像剤担持体へ担持させる非磁性一成分現像方法がある。磁性一成分現像方式においては、カーボンブラックなどの着色剤は用いず、磁性粒子を着色剤として兼用させることも行われている。
二成分現像方式は、ガラスビーズ、鉄粉等のキヤリア粒子が必要であり、現像剤中のトナー濃度を一定に保つ必要があるため、トナー濃度を検知して必要量のトナーを補給する装置が必要となり、現像装置が大きくて重く、かつ複雑な構成となる。また二成分現像方式ではトナー成分のキヤリアへの付着(スペント)が起こりやすいため、キヤリアの交換頻度が高くなる。
この点一成分現像方式では、このようなキヤリアや上述の複雑な構成は不必要となり、現像装置自体の小型化・軽量化が可能であり、さらにはキヤリアの交換が必要ないため長期にわたりメンテナンスの必要がなくなる。その一方で、磁性一成分現像方法は、暗黒色の磁性粒子をトナーに使用するためカラー化が困難であり、二成分現像方式は濃度検知装置などにより細かい現像状態の調整が可能であるため、カラー現像用に好ましく用いられる。近年では、電子写真装置の軽量・小型化等を目的として複写装置部分を小さくする必要性が求められており、そのため一成分現像方式を用いた現像装置が使用されることが多くなってきている。
しかし、この様な一成分現像方式を用いる場合にはトナー帯電量の調整が難しく、トナーによる工夫が種々行われているものの、トナー帯電の不均一性や帯電の耐久安定性に関わる問題は、完全には解決されていない。
特に、現像スリーブが繰り返し回転を行っているうちに、現像スリーブ上にコーティングされたトナーの帯電量が現像スリーブとの接触により高くなりすぎ、トナーが現像スリーブ表面との鏡映力により引き合って現像スリーブ表面上で不動状態となり、現像スリーブから静電潜像担持体上の静電潜像に移動しなくなるという、いわゆるチャージアップ現象が特に低湿環境下にて発生しやすくなる。この様なチャージアップ現象が発生すると、上層のトナーは帯電しにくくなり、トナーの現像量が低下するため、ライン画像の細りやベタ画像の画像濃度薄のような問題点を生じる。更に、チャージアップにより適正に帯電されないトナーが規制不良となって現像スリーブ上に流出し、斑点状、波上のムラとなる、いわゆるブロッチ現象も発生する。更に、画像部(トナー消費部)と非画像部(トナー非消費部)とのトナー層の形成状態が変わり、帯電状態が異なってしまうため、例えば、一度画像濃度の高いベタ画像を現像した位置が、現像スリーブの次の回転時に現像位置に来てハーフトーン画像を現像すると、画像上にベタ画像の跡が現れてしまうという、いわゆるスリーブゴースト現象も生じやすくなる。
最近では、プリンター装置はLED(発光ダイオード)プリンターやLBP(レーザービームプリンター)が市場の主流になっており、技術の方向としてより高解像度、すなわち、従来300dpi、400dpiであったものが、600dpi、800dpiあるいは1200dpiとなってきている。従って現像方式もこれに伴って、更なる高精細化が要求されてきている。
また、複写機もデジタル化が主流となってきており、ファクシミリやプリンターとしても同時に使えるいわゆるマルチファンクション化を目指した設計が主となりつつある。このため、複写機とプリンターの違いは徐々になくなってきており、ここでも高解像・高精細の現像方式が要求されている。
これらの問題に対応するため、トナーとしては小粒径化が提案されており、高解像度が要求されるに連れ、トナーは5μm〜9μm程度の平均粒径を有するものが主流となっている。
エコロジーの観点から、および装置の更なる軽量・小型化等を目的として、転写残トナーを軽減させるために、トナーの転写効率の向上が図られている。例えば、平均粒径が0.1μm〜3μmの転写効率向上剤とBET比表面積50m2/g〜300m2/gの疎水性シリカ微粉末を含有させることで、トナーの体積抵抗を低減させ、感光ドラム上に転写効率向上剤の薄膜層を形成することにより転写効率を向上させるとともに、更にはトナー自身を機械的衝撃力により球形化処理し、転写効率を向上させる方法等が試みられている。
また、ファーストコピー時間の短縮化や省電力化の目的で、定着器の設定温度を下げる傾向にある。この様な状況下、特に低温低湿下におけるトナーは、単位質量当たりの電荷量が増えるため更に現像スリーブ上へ静電的に付着しやすくなり、高温高湿下におけるトナーは、外部からの物理的な力や流動化しやすい材料を用いているため変質しやすくなり、トナーによるスリーブ汚染やスリーブ融着が起きやすくなっている。
上述した問題を解決し、現像性向上を図る手段として、現像剤担持体(現像スリーブ)からのアプローチは従来よりなされてきている。
現像剤担持体(現像スリーブ)としては、従来は、基体として例えば金属、その合金またはその化合物を円柱又は円筒状に形成し、その表面を電解、メッキ、ブラスト、ヤスリがけ等で所定の表面粗さになるように処理したものが用いられてきた。しかし、上記のような表面を有する現像剤担持体を用いた場合、現像剤層厚規制部材によって現像剤担持体表面に形成される現像剤(トナー)層中の現像剤担持体表面近傍に存在するトナー粒子は摩擦帯電によって非常に高い電荷を有することとなり、現像剤担持体表面に非常に強く引きつけられてしまい、これにより後からくるトナーと現像剤担持体表面との摩擦機会が持てなくなってしまうため、現像剤に好適な帯電が与えられなくなるという、いわゆるチャージアップ現象を引き起こしていた。この様な状況では、十分な現像および転写は行われず、画像濃度が出ない、画像ムラのあるあるいは文字飛び散りの多い画像になってしまっていた。
このような過剰な電荷を有する現像剤の発生や、現像剤の強固な付着を防止するため、樹脂中にカーボンあるいは結晶性グラファイトのような導電性物質やグラファイトのような固体潤滑剤を分散させた樹脂被覆層を上記現像剤担持体上に形成する方法が提案されている(特許文献1〜5)。
これらの方法を用いることにより、上述した弊害は大幅に軽減されることが認められる。しかしながら、この方法では、上記粉末を多量に添加した場合には、チャージアップやスリーブゴーストに対しては良好となるが、樹脂被覆層が脆くて樹脂被覆層の削れが発生しやすくなり、多数枚コピーあるいはプリントを行なった場合、現像剤担持体の表面粗さが不均一となり、その結果トナーへの帯電付与が不均一となりやすくなる。また添加量が少量の場合には、固体潤滑剤および結晶性グラファイトのような導電性微粉末の添加の効果が薄く、チャージアップ、スリーブゴーストおよびフェーディングの抑制に対して不十分であるという問題が残る。
また、樹脂中に固体潤滑剤および導電性微粉末、更に球状粒子を分散させた導電性樹脂被覆層を金属基体上に設けた現像剤担持体が提案されている(特許文献6)。この現像剤担持体は、樹脂被覆層の耐摩耗性が向上するとともに、樹脂被覆層表面の形状が均一化し、更に表面粗さの変化も少ないことから、現像剤担持体上のトナーコーティングが安定し、ベタ画像等ではスジ・ムラ等の発生が抑えられ、画像濃度、画質がより良化する。しかしながら、この現像剤担持体においても、低湿度若しくは高湿度環境下で、あるいは更なる長期における使用においては、トナーの帯電が不安定となり、スリーブゴースト、ブロッチ等の画像不良をもたらすことがある。また、この現像剤担持体においても、樹脂被覆層表面への固体潤滑剤および導電性微粉末の露出が不十分であり、上記球状粒子の摩耗および脱落を起因として、トナーによるスリーブ汚染およびトナーのスリーブ融着が発生する可能性があり、画像不良の原因となりやすい。
樹脂被覆層中に分散された球状粒子が導電性の球状粒子であり、更に樹脂被覆層の耐摩耗性が向上されることで、樹脂被覆層表面の形状を更に安定させるとともに、トナー帯電を更に向上させ、かつ樹脂被覆層が多少摩耗した際にもトナーによるスリーブ汚染およびトナーのスリーブ融着が抑制されうる表面層を有する現像剤担持体が提案されている(特許文献7)。しかしながら、この現像剤担持体においても、樹脂被覆層表面への固体潤滑剤および導電性微粉末の露出は不十分であり、更なる長期における使用においては、導電性樹脂被覆層の摩耗量と導電性球状粒子の摩耗量との違いにより、使用初期と使用後期では樹脂被覆層の表面粗さの変化が大きくなる可能性があり、それによりトナーコート量が変化し、画像劣化の原因となる可能性がある。また、前述のような小粒径のトナーを用いる場合は、樹脂被覆層の表面粗さの変化がトナーコート量に与える影響は、より顕著となり易く、その結果画像劣化の原因となり易い。
さらに、現像剤担持体上に形成された樹脂被覆層を表面処理することも提案されている。樹脂中に固体潤滑剤および結晶性グラファイトのような導電性微粉末を分散させた樹脂被覆層表面を、一定の粒度分布をもつ砥粒でブラストあるいは研磨された現像剤担持体を現像装置に用いる方法が提案されている(特許文献8)。この方法を用いることにより、樹脂被覆層表面への固体潤滑剤および結晶性グラファイトのような導電性微粉末の露出の程度が大きくなり、チャージアップやスリーブゴーストに対して効果は見られるものの、更なる長期にわたる使用においては、終始安定した現像性を得ることは困難である。
一方、ケッチェンブラック(商品名)やアセチレンブラックのような高導電性を有するカーボンブラックを使用する方法も提示されている(特許文献9、10参照)。特許文献9ではケッチェンブラック(商品名)とグラファイトを含有する樹脂被覆層を有する現像スリーブが提案されており、特許文献10ではアセチレンブラックを含有する弾性層を有する現像ローラが提案されている。
一般に導電性カーボンブラックは、粒子径が小さく、比表面積が大きく、ストラクチャーが発達し、そのため、高いDBP吸油性を有している。例えば、ケッチェンブラックEC(商品名)は360ml/100g、同EC600JD(商品名)は495ml/100gという高DBP吸油量を有している(非特許文献1)。これは、ケッチェンブラック(商品名)が中空シェル構造を持っているからであり、そのため、樹脂被覆層を形成する樹脂成分がカーボンブラックのストラクチャー間(中空シェル構造間)に多量に取り込まれてしまう。そのため、樹脂成分や溶剤と共に前記高DBP吸油量を有するカーボンブラックを混合・分散して分散液(塗料)を製造する際に、分散液(塗料)が高粘度になってしまい、せっかく添加したカーボンブラックが分散液(塗料)中に均一に分散し難くなる。よって、該分散液(塗料)を用いて樹脂被覆層を形成した現像剤担持体は、トナーのチャージアップ抑制効果が不十分となり、更に得られる樹脂被覆層の強度も劣るものとなってしまうだけでなく、樹脂被覆層への潤滑性付与も十分ではなくなり、長期間良好な現像性を保持することが困難になってしまう。また、湿度により樹脂被覆層の抵抗値が変動しやすく、特に高温高湿度下でのトナーへの帯電付与性が低下してしまう。
アセチレンブラックは、アセチレンの不完全燃焼によって得られるカーボンブラックであり、通常、熱分解や燃焼法によって製造される。アセチレンブラックも、DBP吸油量が250ml/100gと高く(非特許文献2)、ストラクチャーが発達している。このストラクチャーが互いに接触して導電回路を形成することで導電性を発現させているが、高DBP吸油性であるがために、上記ケッチェンブラック(商品名)と同様、樹脂被覆層中に均一に分散し難く、トナーのチャージアップ抑制効果が不十分となり、トナーの帯電が不均一化しやすい。また、樹脂被覆層への潤滑性付与も不十分であるために、長期使用により樹脂被覆層表面にトナーが融着しやすくなり、その結果トナーの帯電不均一化を招きやすい。
一方、トナーへの帯電付与能を高めることによって、高現像性および高耐久性を得る目的で、樹脂被覆層を構成する樹脂の検討も行なわれてきた。例えば、弾性層の表面に、該弾性層とは異なる樹脂成分を被覆することにより、現像スリーブ表面を低摩擦化する方法が提示されている(特許文献11)。しかし、この方法によると、トナーに対する摩擦帯電付与能が低下しやすくなり、その結果トナーの帯電量が低くなり、画像面で濃度低下やカブリ悪化等の弊害が発生しやすくなる。
また、樹脂被覆層自体を硬くすることによって、耐摩耗性を向上させようという試みもなされている。例えば、現像スリーブ表面にメラミン変性フェノール樹脂と結晶性グラファイトを含有した被膜を形成したものが提示されている(特許文献12)。現像スリーブ表面にメラミン樹脂および/または尿素樹脂にグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含有した被膜を形成したもの(特許文献13)が、更に、分子量500以下の成分が3.5%以下であるアクリル樹脂にメラミン樹脂またはグアナミン樹脂を添加した樹脂層中に、二硫化モリブデンを分散させた現像スリーブが開示されている(特許文献14)。
メラミン樹脂やグアナミン樹脂は、熱硬化性樹脂の架橋剤として使用されてきており、樹脂被覆層の強度アップに有効であり、更にアミノ基を含有していることから、特にネガ帯電性トナーへの帯電付与にも効果的に働くことが期待される。しかし、これだけでは帯電性を安定化させることは困難であり、特に環境依存性が顕著に見られ、低湿度環境下でのトナーのチャージアップや高湿度環境下での帯電量低下等の弊害を招きやすい。更に強度の面でも、例えば現像スリーブ上のトナー層厚を規制する部材として、弾性ブレードのような現像スリーブに対して大きな負荷を与えるような系を採用した現像装置においては、高耐久/長寿命といった点では未だ不十分である。
特開平01−277265号公報
特開平03−036570号公報
特開平02−105181号公報
特開平05−006089号公報
特開平05−066680号公報
特開平03−200986号公報
特開平08−240981号公報
特開平03−252679号公報
特開平08−160736号公報
特登録02795168号公報
特開平10−115979号公報
特登録03118107号公報
特開平09−146362号公報
特開平09−230690号公報
ライオン株式会社ホームページ、"カーボンブラック「ケッチェンブラック」のご紹介"〔2002年9月21日検索〕、インターネット<URL:http://www.lion.co.jp/chem/jn/sectop/carbon/k_intro.htm>
(株)技術情報協会発行、「カーボンブラックの特性と最適配合および利用技術」、1997年5月26日発行、p.284
先ず、本発明の現像剤担持体の構成について説明する。
図1は本発明の現像剤担持体の模式断面図を示す。
本発明の現像剤担持体は金属円筒管からなる基体1の上に樹脂被覆層2が形成されている。その樹脂被覆層2には、結着樹脂bに、導電性、表面潤滑性、表面凹凸性(粗さ)等を制御するためのカーボンブラックaが少なくとも分散されたものであり、さらに、必要により、導電剤または固体潤滑剤cあるいは凹凸形成粒子dが配されている。なお、結着樹脂は正帯電性樹脂を含むものである。
図1(a)は、カーボンブラックaが結着樹脂b中に分散されている形態を表わしたものであり、図1(b)は、結着樹脂b中にカーボンブラックaに加えて、導電剤または固体潤滑剤cを添加することで更に導電性や潤滑性を付与させた構成であり、導電剤または固体潤滑剤cは、導電性や潤滑性付与以外にも樹脂被覆層表面への比較的小さな凹凸形成や、トナー粒子への帯電付与性等にも寄与している。
図1(c)は、凹凸形成粒子dが、樹脂被覆層2の表面に比較的大きな凹凸を与えるために、結着樹脂b中に更に添加されたモデルを示し、導電剤または固体潤滑剤cは樹脂被覆層2の表面に小さな凹凸を形成している。このような構成は、現像剤規制部材が現像剤担持体に対して、トナー粒子を介して、弾性的に圧接されるタイプの現像装置に用いる場合に有利である。すなわち、この樹脂被覆層2の表面の凹凸形成粒子dにより弾性規制部材の圧接力を規制し、かつ、導電剤または固体潤滑剤cは微小な凹凸を形成して、トナー粒子と樹脂被覆層との接触帯電機会やトナー粒子との離型性を調整する役割も果たす。
図1(d)は、導電剤または固体潤滑剤cと凹凸形成粒子dの双方が樹脂被覆層2の表面の凹凸形成に寄与している。このような形態は、例えば、凹凸形成粒子dに凹凸付与以外に導電性や帯電付与性および耐摩耗性等の別の機能を持たせようとした場合に実施される場合がある。
現像剤担持体の基体1としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材等があるが、静電潜像担持体に非接触の現像方法においては、金属のような剛体の円筒管もしくは中実棒が好ましく用いられる。なお、現像剤が磁性一成分タイプの時には、基体1はアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属または合金を円筒状に成型し、研磨、研削等を施したものが好適に用いられる。勿論、現像剤が非磁性一成分タイプのときには、非磁性の金属、合金に加えて、鉄、ニッケル、ステンレス等の磁性を有するものを円筒状あるいは円柱状にしたものも使用可能である。
これらの基体は画像の均一性を良くするために、高精度に成型あるいは加工されて用いられる。例えば、長手方向の真直度は30μm以下もしくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下が好ましく、現像剤担持体と静電潜像担持体との間隙の振れ、例えば、垂直面に対し均一なスペーサーを介して突き当て、現像剤担持体を回転させた場合の垂直面との間隙の振れも30μm以下もしくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であることが好ましい。材料コストや加工のしやすさからアルミニウムが好ましく用いられる。
また、弾性層を有する基体としては、芯材と、ウレタンゴム、EPDM、シリコンゴム等のゴムやエラストマーを含む層構成を有する円筒部材が、特に静電潜像担持体に現像剤担持体を直接接触させる現像方法の場合好ましく用いられる。
本発明で結着樹脂として、あるいは結着樹脂と共に使用する正帯電性樹脂としては、例えば、分子構造中に窒素元素を有する高分子化合物よりなる樹脂があり、具体的には、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、4−ビニルピリジンや2−ビニルピリジンからなるポリビニルピリジン等の含窒素ポリマー、メチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−メチル−N−フェニルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートアミド等の単量体を単独であるいは共重合したメタクリレート樹脂、ポリスチレン/n−ブチルメタクリレート/シランターポリマー等のターポリマー、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリカプローラクトン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタンおよびこれらの樹脂の混合物、これらの樹脂と他の樹脂との共重合物等が挙げられる。中でもアミノ樹脂が好ましい。これらの樹脂は、有機溶剤に対して比較的溶解性が高く、カーボンブラック等の他の成分の分散性にも優れており、さらに薄層化も容易にでき、基体との密着性や耐摩耗性にも優れているばかりでなく、特に現像剤が負帯電性の場合、現像剤に対して適度な帯電を付与することができたり、あるいは他の樹脂、プレポリマー、重合体等と架橋反応させて変性することによって、耐摩耗性を向上することができ、耐溶剤性や柔軟性を改良することが可能である。
アミノ樹脂は、アミノ基を含有する化合物とアルデヒドの縮合反応によって得られる樹脂であって、例えば、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂等のトリアジン系樹脂、アニリン系樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
メラミン系樹脂は、一般に下記式(1)にて示されるメラミンまたはその誘導体にホルムアルデヒドを塩基性条件下で反応させてメチロール化し、さらに脱水縮合して分子間にできるメチレン結合またはメチレンエーテル結合の生成による架橋によって得られるものであり、例えば、メチル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、(n−またはiso−)ブチルエーテル化メラミン樹脂、(n−またはiso−)ブチルエーテル化トリメチロールメラミン樹脂、(n−またはiso−)ブチルエーテル化ヘキサメチロールメラミン樹脂等がある。
〔式(1)において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基等のアルキル基、フェニル基等の芳香族炭化水素基、メチロール基、ブチロール基等の低級アルカノール基またはメトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシアルキル基である。〕
グアナミン系樹脂は、一般に下記式(2)にて示されるグアナミンまたはその誘導体にホルムアルデヒドとの付加重合反応(脱水、脱アルコール反応)により縮合した樹脂であり、必要に応じてメタノールやブタノール等で変性されている。例として、ベンゾグアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、フタログアナミン樹脂等が挙げられる。
〔式(2)式において、X1は、水素原子、メチル基等のアルキル基、フェニル基等の芳香族炭化水素基であり、X2〜X5は、それぞれ独立に、水素原子、メチロール基、ブチロール基等の低級アルカノール基またはメトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシアルキル基である。〕
アニリン系樹脂は、アニリンとアルデヒドとの縮合反応により得られる樹脂であり、特に本発明においては、アニリンとホルムアルデヒドとを塩酸触媒下において反応させ、酸を中和することによって得られるアニリンホルムアルデヒド樹脂を好ましく使用することができる。
尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドを加熱し、付加反応によりメチロール尿素、ジメチロール尿素を生成し、脱水縮合反応させることによって得られる樹脂である。本発明においては、ジメチロール尿素、(n−またはiso−)ブチル化尿素、ジアルコキシメチル尿素環状トリマー、アルコキシルメチル尿素環状トリマー等を特に好ましく使用することができる。
その他としては、ビニル系モノマー単位と下記式(3)にて示される含窒素ビニルモノマー単位とを含有する共重合体も、本発明にて好ましく使用することができる。
〔式(3)において、Y1〜Y4は、それぞれ独立に、水素原子あるいは炭素数1〜4の飽和炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を示す。〕
上記したような正帯電性樹脂は、樹脂被覆層を構成するために必要に応じて他の樹脂と混合させて用いても良い。正帯電性樹脂と混合させて用いる樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であるが、特に主鎖もしくは側鎖末端にヒドロキシル基(水酸基)を含有する樹脂を用いた場合、上記正帯電性樹脂と架橋反応し、耐摩耗性の向上(強度アップ)や静電潜像担持体(感光ドラム)表面の汚染防止、基体との密着性、樹脂被覆層のひび割れ防止に有効であり、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。機械的強度を考慮すると硬化性の樹脂がより好ましいが、十分な機械的強度を有するものであれば、熱可塑性樹脂も使用可能である。
本発明において、上述した形成材料によって現像剤担持体上に形成される樹脂被覆層は、チャージアップによる現像剤の現像剤担持体上への固着や、現像剤のチャージアップに伴って生じる現像剤担持体の表面から現像剤への帯電付与不良を防ぐためには、導電性であることが望ましい。
また、樹脂被覆層の体積抵抗値としては、好ましくは104Ω・cm以下であり、より好ましくは103〜10-2Ω・cmである。現像剤担持体表面の樹脂被覆層の体積抵抗値が104Ω・cmを超えると、現像剤への帯電付与不良が発生し易く、その結果、現像剤担持体上で、いわゆるブロッチの発生に伴う斑点画像や波模様画像が発生し易くなる。
従来は、樹脂被膜層の抵抗値を調整する目的で、導電性を有する物質を樹脂被覆層中に含有させてきた。その中でもカーボンブラックは、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電性を得ることができるため好適に用いられてきた。しかし、このような従来のカーボンブラックを使用した場合、添加量が少ないと樹脂被覆層の抵抗値を所望のレベルに下げることが困難であったり、現像剤担持体表面の樹脂被覆層に用いられる結着樹脂に対するトナー付着が発生し、トナーに対する帯電付与を阻害したりすることがあった。逆に樹脂被覆層の抵抗値を下げるために、カーボンブラックの添加量を多くすると、樹脂被覆層表面に存在するカーボンブラックの比率が高くなり、その結果、樹脂被覆層の強度(耐摩耗性)の低下、あるいは環境特性の悪化(特に高湿下での現像性の低下)が発生するという問題があった。更に、カーボンブラックの添加量を多くすると、塗料分散時に塗料の粘度が高くなり、カーボンブラックやその他の成分の塗料中への分散性が悪化したり、塗料の放置安定性が悪くなったりする。
本発明では、樹脂被覆層のX線回折から得られる黒鉛(002)の面間隔d(002)が0.3370nm〜0.3450nmであることを特徴とする。ここで、面間隔d(002)が小さいほど黒鉛化(結晶化)が進む関係にあるが、カーボンブラックは一般的に結晶化を促進させ難い材料であるため、この面間隔d(002)を0.3370nm未満に制御することは困難である。一方、面間隔d(002)が0.3450nmを超える場合には黒鉛化(結晶化)の程度が低くなり、摺動した際に潤滑性成分が少なくなる結果、長期にわたる使用では樹脂被覆層の摩耗量が増加するため、安定した現像性を得ることができなくなる。
従って、樹脂被覆層のX線回折から得られる黒鉛(002)の面間隔d(002)を0.3370nm〜0.3450nmとするためには、カーボンブラックとして、X線回折法により求めた黒鉛(002)の面間隔d(002)が0.3370nm〜0.3450nmであるカーボンブラックを使用することが好ましい。
樹脂被覆層のX線回折から得られる黒鉛(002)の面間隔d(002)を上記の範囲にするためには、従来から使用してきたアモルファス状のカーボンブラックから適宜選択して使用することも可能であるが、従来のカーボンブラックの表面近傍を黒鉛化処理して得られる黒鉛化カーボンブラックを使用することが好ましい。
黒鉛化カーボンブラックは、従来のカーボンブラックを黒鉛化処理することによって得られたものであり、その静電特性は相対的に黒鉛に近づいたものとなっているため、樹脂被覆層中に含有させた場合、より均一な電気的特性を有する樹脂被覆層を実現し得ることができる。
更に、黒鉛化カーボンブラックは、カーボンブラックを熱処理(焼成)して得られているため、原料であるカーボンブラックが含有する不純物(例えばS、Cl等)が極めて少なくなっており、また水分の吸着性も低減しているので、正帯電性樹脂の使用と相俟って樹脂被覆層に含有させることによって、環境特性を従来よりも数段レベルアップすることが可能になる。さらに、水分吸着性が少ないにもかかわらず、塗料中での分散安定性にも優れている。そのうえ表面が黒鉛化され、炭素層面が平行に並んだ殻のような構造をとっているため、摩擦が低くて良好な潤滑性を付与することができるうえ、摩擦帯電による現像剤(トナー)の付着も軽減される。
黒鉛化カーボンブラックの原料であるカーボンブラックとしては、従来知られているファーネス法、チャンネル法、サーマル法で製造されたカーボンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、種々の副生カーボンブラック等をいずれも使用することができる。本発明においては、これらから適宜選択して使用することもできるが、先に述べた理由によって、黒鉛化処理したものを使用することが好ましい。なお、カーボンブラック粒子表面が黒鉛化したものであることがより好ましい。
樹脂被覆層を有する現像剤担持体の現像剤(トナー)への摩擦帯電付与特性は、樹脂被覆層内部の電気的特性によっても影響を受けるが、実際には、樹脂被覆層表面の電気的特性が支配的に現れる。このため、カーボンブラック等のように微粒子の形態で使用される材料の場合は、その表面の電気的特性を変化させることで、これを含有する現像剤担持体の樹脂被覆層の静電特性を効果的にコントロールすることが可能となる。従って、樹脂被覆層の電気的特性を良好なものとする目的でカーボンブラックを黒鉛化する際には、その表面を黒鉛化すれば最も効率的である。
本発明に使用することのできるカーボンブラックは、DBP吸油量が50ml/100g〜200ml/100g、更には50ml/100g〜150ml/100gであることが好ましい。DBP吸油量は、カーボンブラック粒子の凝集状態の目安であるストラクチャーのパラメーターとして示されるもので、このDBP吸油量が少なく、ストラクチャーが発達しておらず、更に表面官能基の少ない黒鉛化カーボンブラックを用いることがより好ましい。
これに対して、DBP吸油量が200ml/100gを超えるようなストラクチャーの発達したカーボンブラックを用いて、現像剤担持体基体表面に樹脂被覆層を形成した場合には、その入り組んだ形状から、現像剤担持体の使用が進行するにつれて、該樹脂被覆層の表面に現像剤(トナー)に添加されている外添剤等が付着するようになり、いわゆるスリーブ融着が発生しやすくなる。更に、樹脂被覆層を形成する樹脂成分がカーボンブラックのストラクチャー間に多量に取り込まれてしまい、得られる樹脂被覆層の強度や補強性が劣る場合もあり、長期間良好な現像性を保持することが困難になることがある。
また、DBP吸油量が50ml/100g未満だと、塗料中でのカーボンブラックの分散性が悪くなり、その結果樹脂被覆層中ではカーボンブラックがまばらに存在しがちになり、導電性が低下し、現像剤(トナー)の過剰帯電を引き起こしやすくなり、画像濃度の低下あるいはスリーブゴースト等の悪化現象を生じる場合がある。
本発明においてカーボンブラックとして、一次粒径が10nm〜100nmのものを用いることが好ましい。一次粒径が10nm未満であるとカーボンブラック同士の凝集性が高まり、結着樹脂等と共に分散させて得られる塗料の粘度が高くなるので、カーボンブラックが塗料中へ分散し難くなり、そのため塗工後の樹脂被覆層の均一性が不十分になり、使用に伴い現像性の低下が発生する場合がある。また、一次粒径が100nmを超える場合は、樹脂被覆層中でカーボンブラックがまばらに存在することになり、カーボンブラックの偏りによる樹脂被覆層表面で導電性に偏りが生じ、そのため画質の悪化あるいは現像バイアスが印加された際に電荷のリークが発生することがある。
さらに本発明で使用するカーボンブラックとしては、BET比表面積が500m2/g以下であることが好ましく、300m2/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が500m2/gを超えると、樹脂被覆層を形成する際の塗料の粘度が増加して分散が均一化されず、樹脂被覆層中でのカーボンブラックの凝集による現像バイアスのリークの発生や樹脂被覆層の強度低下等が発生しやすくなり、現像性を悪化させる場合がある。
本発明の基体表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体において、上述したような黒鉛化カーボンブラックを樹脂被覆層の構成成分として添加するには、通常使用するカーボンブラックと同様にして塗料中に添加し、該塗料を基体表面に塗布することで達成されるが、その際の黒鉛化カーボンブラックの使用量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部が好ましい。すなわち、1質量部未満であると樹脂被覆層の抵抗値が高くなり、その結果現像剤(トナー)の現像性が低下することで、得られた画像濃度が低く傾向がある。一方、樹脂被覆層中の黒鉛化カーボンブラックの使用量が100質量部を超えると、例えば塗料製造における顔料分散時に分散液の粘度が上がり過ぎてしまい、塗料中の黒鉛化カーボンブラックの均一分散が困難になり易い。この結果、該樹脂被覆層を有する現像剤担持体を用いた場合には、画像濃度の低下やカブリの悪化等の弊害が発生する場合がある。
さらに、本発明では、黒鉛化カーボンブラックの表面に有機基を共有結合させて、その表面を改質処理したものを使用してもよい。すなわち、このようにすれば、黒鉛化カーボンブラックの表面に有機基が共有結合された状態で存在するので、黒鉛化カーボンブラックの被覆樹脂に対する親和力が向上し、黒鉛化されたカーボンブラックの分散性を良好なものとすることできる。この結果、得られる樹脂被覆層の帯電付与性や耐リーク性を一段と向上させることが可能となり、電子写真の画像品質を格段に向上させることができる。
黒鉛化カーボンブラックの表面を改質処理する方法として、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素の中から選ばれる少なくとも一つ以上の元素を有する有機金属化合物によって行なう方法、ラジカル重合開始剤の存在下、加熱する方法等が挙げられる。この際に使用する有機金属化合物としては、具体的には、チタンキレート化合物、チタンカップリング剤、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられ、ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩化合物等が挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。具体的には、黒鉛化カーボンブラックを水と、アルコール等の有機溶剤との混合媒体中に入れて分散させ、更に、この中に上記した有機金属化合物、あるいはラジカル重合開始剤を適量加えて加熱する方法がある。
本発明の基体表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体は、該樹脂被覆層のX線回折から得られる黒鉛(002)の面間隔d(002)が特定の値を示すことを特徴とし、それを達成するためには樹脂被覆層中に添加するカーボンブラックが黒鉛化処理されたものであることが好ましく、更には、表面部分が黒鉛化処理されている黒鉛化カーボンブラックを、上記で説明したような範囲で使用することが特に好ましいが、上記した以外の特性についても、電子写真特性に悪影響を与えない範囲のものを使用することが好ましい。また、本発明においては、黒鉛化の程度の異なるカーボンブラックを2種以上用いてもよい。このようにすれば、樹脂被覆層を形成する場合に、これら抵抗値等の電気的特性が異なる2種類の黒鉛化カーボンブラックを適宜な割合で使用することによって、樹脂被覆層の抵抗値等の電気的特性値を所望の値にコントロールすることが可能となる。この結果、所望の電気特性を保持した樹脂被覆層を有する現像剤担持体を容易に得ることができる。
本発明に使用できる黒鉛化カーボンブラックは、例えば、前記に挙げたような通常のカーボンブラックを用い、該カーボンブラックを黒鉛坩堝等に充填し、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で、1000℃〜3000℃、好ましくは2200℃〜2800℃の温度範囲で、黒鉛化処理する方法等によって容易に得られる。
本発明の現像剤担持体上の樹脂被覆層中には、被覆層表面に凹凸を形成するための凹凸形成粒子を含有させることが可能である。このような凹凸形成粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のビニル系重合体や共重合体、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂粒子、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫等の酸化物粒子、炭素化粒子、導電処理を施した樹脂粒子等の導電性粒子、その他、例えばイミダゾール化合物のような有機化合物を粒子状にして用いることも可能である。この場合にイミダゾール化合物は、トナーに摩擦帯電電荷を付与する役割も果たす。また耐摩耗性や導電性、疎水性等の機能を付与する目的で、該粒子表面に炭素化粒子、あるいは金属酸化物等の無機微粉末を付着させてもよい。
添加される凹凸形成粒子の真密度は、3g/cm3以下のものが好ましい。真密度が3g/cm3を超えると、樹脂被覆層中で凹凸形成粒子の分散性が不十分になることがあるため、樹脂被覆層表面に均一な粗さを付与しにくくなり、トナーへの均一な帯電付与や樹脂被覆層の強度が不十分になることがある。
また本発明において、凹凸形成粒子の導電性としては、体積抵抗値が108Ω・cm以下、更には10-3Ω・cm〜107Ω・cmの粒子であることが好ましい。凹凸形成粒子の体積抵抗が108Ω・cmを超えると、摩耗によって樹脂被覆層表面に露出した凹凸形成粒子を核としてトナーの汚染や融着を発生しやすくなるとともに、迅速かつ均一な帯電が行われにくくなることがある。
上記凹凸形成粒子の粒径は、体積中位径で0.3μm〜30μmが好ましい。0.3μm未満では均一な表面凹凸の形成は難しく、表面粗さを大きくしようとした場合添加量が過大になり、導電性樹脂被覆層が脆くなり耐摩耗性が低下することがある。逆に30μmより大きくなると、粒子が現像剤担持体表面から突出しすぎるため、現像剤層が厚くなり過ぎ、現像剤への帯電性の低下や帯電の不均一が生じやすくなり、また、バイアスをかけた際に静電潜像担持体(感光ドラム)へリークするポイントになる場合がある。
さらに本発明の現像剤担持体上の樹脂被覆層中には、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。荷電制御剤としては、従来公知であるトナー粒子形成に用いられるものと同様のものが使用可能である。
本発明においては、現像剤担持体上の樹脂被覆層中に、正帯電性樹脂およびカーボンブラックに加え、これらの特性を損なわない範囲内で、更に他の固体粒子を添加することも可能である。例えば、樹脂被覆層の抵抗値を調整する目的で、カーボンブラックに加え、下記に挙げる導電性物質を樹脂被覆層中に含有させても良い。この際に使用される導電性物質としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粉体の微粉末、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウム等の金属酸化物、更には金属繊維等が挙げられる。
また、現像剤担持体表面への現像剤の付着をより軽減化するため、樹脂被覆層中に固体潤滑剤を混合させることもできる。この際に使用し得る固体潤滑剤としては、例えば、二硫化モリブデン、窒化硼素、銀−セレンニオブ、滑石等が挙げられる。
なお、本発明で使用することのできるこれらの固体粒子の添加量は、結着樹脂100質量部に対して100質量部以下とすることが好ましい。これらの固体粒子は、体積中位径が好ましくは0.2μm〜20μm、より好ましくは1μm〜15μm程度のものを使用するのが良い。体積中位径が0.2μm未満の場合には、これらの固体粒子の添加による効果が得られ難くなり、体積中位径が20μmを越える場合には、樹脂被覆層表面の形状への影響が大きくなるため表面性が不均一となりやすく、トナーの均一な帯電、および樹脂被覆層の強度の点で不十分になることがある。
本発明で好適に使用される上記のような構成を有する現像剤担持体表面の樹脂被覆層の表面粗さは、一般的には、JIS算術平均粗さ(Ra)で0.3μm〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.3μm未満の場合には、現像剤の十分な搬送性が得られず、現像剤不足による画像濃度薄や、現像剤の過剰な帯電による飛び散りやブロッチなどが発生しやすい。また、Raが3.5μmより大きい場合には、現像剤への摩擦帯電付与が不均一となり、スジむらや、反転カブリ、帯電不足による画像濃度薄などが発生しやすい。
本発明の樹脂被覆層は、例えば、各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、前記基体上に塗工することにより形成することが可能である。各成分の分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等公知の方法が適用可能である。
また、樹脂被覆層の厚みは3μm〜50μmであると、樹脂被覆層の体積抵抗値を前記の好ましい範囲に設定でき、且つ樹脂被覆層表面の均一化が図ることができるため、好ましい。
次に、本発明の現像剤担持体を用いた現像装置の一例を図に沿って具体的に説明する。
図2は、本発明の現像剤担持体を有する一実施形態の現像装置の模式図を示す。
図2において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体、例えば、感光ドラム501は、矢印B方向に回転する。現像スリーブ508は、現像容器503に供給された磁性トナー粒子を有する磁性一成分現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像スリーブ508と感光ドラム501とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。現像剤担持体510においては、磁性一成分現像剤を現像スリーブ508上に磁気的に吸引かつ保持するため、現像スリーブ508内に磁石(マグネットローラー)509が配置されている。なお、現像スリーブ508は、基体である金属円筒管506上に樹脂被覆層507が被覆形成されている。
現像容器503内へ、現像剤補給容器(不図示)から現像剤供給部材(スクリューなど)512を経由して磁性一成分現像剤が送り込まれてくる。現像容器503は、第一室514と第二室515に分割されており、第一室514に送り込まれた磁性一成分現像剤は攪拌搬送部材505により現像容器503および仕切り部材504により形成される隙間を通過して第二室515に送られる。磁性一成分現像剤はマグネットローラー509による磁力の作用により現像スリーブ508上に担持される。第二室515中には現像剤が滞留するのを防止するための攪拌部材511が設けられている。
磁性一成分現像剤は、磁性トナー粒子相互間および現像スリーブ508上の樹脂被覆層507との摩擦により,感光ドラム501上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。現像領域Dに搬送される現像剤の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード(ドクターブレード)502が、現像スリーブ508の表面から約50μm〜500μmの間隙を有して現像スリーブ508に対向するように現像容器503に装着されている。マグネットローラー509の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード502に集中することにより、現像スリーブ508上に磁性一成分現像剤の薄層が形成される。なお、本発明においては、この磁性規制ブレード502に替えて非磁性の規制ブレードを使用することもできる。
現像スリーブ508上に形成される磁性一成分現像剤の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
本発明の現像剤担持体は、以上の様な磁性一成分現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、すなわち非接触型現像装置に組み込むのが特に有効であるが、現像領域Dにおいて、磁性現像剤層の厚みが現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、いわゆる接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を使用することができるが、説明の煩雑を避けるため、以下の説明では先に説明した非接触型現像装置を例にとって行なう。
現像スリーブ508に担持された磁性トナーを有する磁性一成分現像剤を飛翔させるため、現像スリーブ508にはバイアス手段としての現像バイアス電源513により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。
現像された画像の濃度を高め、かつ階調性を向上させるためには、現像スリーブ508に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位との中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。
図2においては、現像スリーブ508上の磁性一成分現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、現像スリーブから離間されて配置された磁性ブレードの例を示したが、図3に示すように、ウレタンゴム、シリコーンゴムのようなゴム弾性を有する材料、あるいはリン青銅、ステンレス鋼のような金属弾性を有する材料の弾性板からなる弾性規制ブレードを使用し、この弾性規制ブレード516を現像スリーブ508に対して、磁性一成分現像剤を介して接触あるいは圧接させても良く、本発明においては特にこの形態を有する系においても、耐摩耗性および帯電付与能の面で格段の効果を得ることができる。これは、規制ブレードを接触または圧接させるタイプの現像装置では、現像剤層はさらに強い規制を受けながら現像スリーブ508上に薄い層を形成することから、現像スリーブ508上に、磁性ブレードを使用した場合よりも更に薄い現像剤層となるため、現像スリーブ508の樹脂被覆層507への負荷が大きくなり、樹脂被覆層507が摩耗し易くなる。本発明では、このような系においても樹脂被覆層507の摩耗を軽減することができ、高耐久化を達成することができる。なお、現像スリーブ508に対する弾性規制ブレード516の当接圧力は、線圧5N/m〜50N/mであることが、磁性一成分現像剤の規制を安定化させ、磁性現像剤層の厚みを好適にさせることができる点で好ましい。弾性規制ブレード516の当接圧力が線圧5N/m未満の場合には、磁性一成分現像剤の規制が弱くなり、カブリや磁性一成分現像剤もれの原因となり、線圧50N/mを超える場合には、磁性一成分現像剤の摺擦力が大きくなり、磁性一成分現像剤の劣化やスリーブおよびブレードへの融着の原因となり易い。
図4は、非磁性一成分現像剤を用いた場合に用いられる現像装置の構成の一例を模式的に示したものである。
図4において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する潜像担持体、例えば感光ドラム801は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ808は、金属製円筒管(基体)806とその表面に形成される樹脂被覆層807から構成されている。非磁性一成分現像剤を用いているので金属製円筒管806の内部には磁石は内設されていない。金属製円筒管の替わりに円柱状部材を用いることもできる。
現像容器803内には非磁性一成分現像剤804を撹拌搬送するための撹拌搬送部材810が設けられている。
現像スリーブ808に現像剤804を供給し、かつ現像後の現像スリーブ808の表面に残存する現像剤804を剥ぎ取るための現像剤供給・剥ぎ取り部材813が現像スリーブ808に当接している。現像剤供給・剥ぎ取り部材(現像剤供給・剥ぎ取りローラ)813が現像スリーブ808と同じ方向に回転することにより、供給・剥ぎ取りローラ813の表面は、現像スリーブ808の表面とカウンター方向に移動することになり、現像容器803内で非磁性一成分現像剤804は、現像剤スリーブ808に供給され、現像スリーブ808が非磁性一成分現像剤を担持して、矢印A方向に回転することにより、現像スリーブ808と感光ドラム801とが対向した現像部Dに非磁性一成分現像剤を搬送する。現像スリーブ808に担持されている非磁性一成分現像剤は、現像スリーブ808の表面に対して現像剤層を介して圧接する現像剤層厚規制部材811によりその厚みが規定される。非磁性一成分現像剤804は現像スリーブ808との摩擦により、感光ドラム801上の静電潜像を現像するのに十分な帯電をする。なお、以下の説明では、説明の煩雑を避けるため、非接触型現像装置を例にとって行なう。
現像スリーブ808には、これに担持された非磁性一成分現像剤を飛翔させるために、電源809より現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(非磁性現像剤804が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧が現像スリーブ808に印加されることが好ましい。現像画像の濃度を高めたり、階調性を向上させたりするために、現像スリーブ808に交番バイアス電圧を印加して、現像部に向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合、上記画像部の電位と背景部の電位の間の値を有する直流電圧成分が重畳された交番バイアス電圧を現像スリーブ808に印加することが好ましい。
現像剤供給・剥ぎ取り部材としては、樹脂、ゴム、スポンジのような弾性ローラ部材が好ましい。現像剤供給・剥ぎ取り部材としては、弾性ローラに代えてベルト部材またはブラシ部材を用いることもできる。現像剤供給・剥ぎ取り部材として弾性ローラからなる現像剤供給・剥ぎ取りローラ813を用いる場合には、現像剤供給・剥ぎ取りローラ813の回転方向は現像スリーブに対して適宜同方向若しくはカウンター方向を選択することができるが、カウンター方向に回転することが、剥ぎ取り性および供給性の点でより好ましい。
現像スリーブ808に対する現像剤供給・剥ぎ取り部材813の当接圧(線圧)は18N/m〜36N/mとするのが好ましい。18N/m以上とすると十分な剥ぎ取り効果が得られ、また36N/m以下とするとトナー劣化が起こりにくく、更に起動時のトルクも小さくなる。
図4の現像装置では、現像スリーブ808上の非磁性一成分現像剤804の層厚を規制する部材として、ウレタンゴム、シリコーンゴムのようなゴム弾性を有する材料、あるいはリン青銅、ステンレス銅のような金属弾性を有する材料の弾性規制ブレード811を使用し、この弾性規制ブレード811を図4の現像装置では現像スリーブ808の回転方向と逆の姿勢で現像スリーブ808に圧接させ、現像スリーブ808上に更に薄い現像剤層を形成することができる。
この弾性規制ブレード811としては、特に安定した規制力とトナーへの安定した(負)帯電付与性のためには、安定した加圧力の得られるリン青銅板表面にポリアミドエラストマー(PAE)を貼り付けた構造のものを用いることが好ましい。ポリアミドエラストマー(PAE)として、例えばポリアミドとポリエーテルの共重合体が挙げられる。
現像スリーブ808に対する現像剤層厚規制部材811の当接圧は、本例においても磁性一成分現像剤を使用する図3と同様に、線圧5N/m〜50N/mであることが、現像剤の規制を安定化させ、現像剤層厚を好適にさせることができる点で好ましい。現像剤層厚規制部材811の当接圧力が線圧5N/m未満の場合には、現像剤の規制が弱くなり、カブリや非磁性一成分現像剤もれの原因となり、線圧50N/mを超える場合には、非磁性一成分現像剤へのダメージが大きくなり、非磁性一成分現像剤の劣化やスリーブおよびブレードへの融着の原因となり易い。
図2〜図4はあくまでも本発明の現像剤担持体が使用可能な現像装置を模式的に例示したものであり、前記した層厚規制部材以外にも、現像容器503の形状、攪拌翼505、511の有無、磁極の配置、供給部材512の形状、補給容器の有無、などに様々な形態があることは言うまでもない。
次に、本発明の現像装置にて用いられる現像剤(トナー)について説明する。
本発明に使用する現像剤(トナー)は、現像剤用結着樹脂に着色剤、荷電制御剤、離型剤、無機微粒子等を配合したもので、形式として、磁性材料を必須成分とする磁性一成分現像剤と磁性材料を含まない非磁性一成分現像剤がある。形式は現像装置に適応して適宜選択される。
また、本発明で使用する現像剤(トナー)は、いずれの形式であっても、重量平均粒径が4μm〜11μmであることが好ましい。このようなものを使用すれば、トナーの帯電量あるいは画質および画像濃度等がバランスのとれたものとなる。
現像剤(トナー)用結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、例えばビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられるが、この中でもビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
現像剤(トナー)には帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤をトナー粒子に包含させる(内添)、またはトナー粒子と混合して用いる(外添)ことができる。これは、荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが可能となるためである。
正の荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン、トリアミノトリフェニルメタン系染料および脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレード、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレートを単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
また、負の荷電制御剤としては、例えば、有機金属化合物、キレート化合物が有効である。その例としては、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム等があり、特にアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体または塩が好ましい。
現像剤(トナー)が、磁性現像剤(トナー)である場合、磁性材料として、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄系金属酸化物;Fe、Co、Niのような磁性金属、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、及びこれらの混合物等を配合する。この際は、これら磁性材料を、着色剤としての役目を兼用させても構わない。
現像剤(トナー)に配合する着色剤として、従来からこの分野で使用している顔料、染料を使用することが可能であり、適宜選択して使用すればよい。
現像剤(トナー)には離型剤を配合することが好ましく、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス、モンタンワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類等が適当である。
さらに、現像剤(トナー)には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機微粉体を外添すること、すなわち現像剤表面近傍に存在させていることが好ましい。中でも、シリカ微粉体が好ましい。
無機微粉体以外の外添剤をさらに加えて用いても良い。例えば、テフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのような滑剤(中では、ポリフッ化ビニリデン)、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム等の研磨剤がある。
現像剤(トナー)を作成するには、結着樹脂、着色剤としての顔料又は染料、離型剤、必要に応じて磁性材料や荷電制御剤、その他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミキサー等の混合機により充分に混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融して樹脂類を互いに相溶せしめた中に離型剤、顔料、染料、磁性体を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行なってトナー粒子を得ることができる。さらに、必要に応じて所望の添加剤を加え、ヘンシェルミキサー等の混合機により充分に混合して、現像剤(トナー)を得ることもできる。
このような現像剤は、種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。そのような方法としては、攪拌羽根又はブレードなど、及びライナー又はケーシングなどを有する装置で、例えば、現像剤をブレードとライナーの間の微小間隙を通過させる際に、機械的な力により表面を平滑化したり現像剤を球形化したりする方法、温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法、熱気流中にトナーを曝し、球形化する方法等がある。
また、球状の現像剤を直接作る方法としては、水中に現像剤結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー化する方法がある。一般的な方法としては、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、磁性材料、荷電制御剤、離形剤、その他の添加剤を均一に溶解又は分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層、例えば水相中に適当な攪拌機を用いて適度な粒径に分散し、さらに重合反応を行わせ、所望の粒径を有する現像剤を得る方法である。
以下に本発明に関わる物性の測定方法について述べる。
(1)樹脂被覆層の形成に使用される結着樹脂の帯電極性
測定には、表面帯電量測定装置TS−100AS(商品名、東芝ケミカル株式会社製)を使用した。また、その測定の概要を図5に示した。
<サンプル板の作製>
樹脂被覆層の形成に使用する結着樹脂(カーボンブラック等の導電性物質を含まないもの)を有機溶剤に溶解あるいは分散させた溶液をSUS板上にバーコーター(#60)にて塗布し、これを乾燥・加熱等によって成膜し(乾燥・加熱温度および時間は、熱可塑性樹脂の場合は溶液が完全に蒸発するまで、熱硬化性樹脂の場合は樹脂の架橋が完全に行われるまで)、サンプル板を作製する。このサンプル板を接地した状態で、23℃、50%RH環境下にて一晩以上放置する。
<粒子の調整>
帯電性評価用鉄粉(粒径約100μm)を接地した状態で、23℃、50%RH環境下にて一晩以上放置する。
<測定>
上記で作製したサンプル板83を図5に示すように表面帯電量測定装置に設置し、電位計85を接地して値を0にする。上記で調整した鉄粉81を滴下器82に入れ、STARTスイッチを押して20秒間鉄粉81をサンプル板83の樹脂面上に滴下し、予め接地を施した受容器84で受ける。この時の電位計85の示す極性を読み取って、鉄粉に対する結着樹脂の帯電極性とした。なお、測定環境は23℃、50%RHとした。また、86はコンデンサーである。
(2)樹脂被覆層及びカーボンブラック粒子のX線回折による黒鉛の面間隔d(002)
樹脂被覆層は、現像スリーブ上に形成された樹脂被覆層を削り取り、得た粉末状として、また、カーボンブラック単独は、そのまま測定試料とした。
面間隔d(002)は、株式会社リガク製の試料水平型強力X線回折装置 RINT/TTR−II(商品名)を用い、X線回折スペクトルから求めた。
先ず測定試料を無反射試料板に充填し、モノクロメーターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折チャートを得た。これより黒鉛(002)回折線のピーク位置を求め、ブラッグの公式(下記式(1))よりd(002)を計算したものである。ここでCuKα線の波長λは、0.15418nmとした。
d(002)=λ/2sinθ 式(1)
主な測定条件:
光学系 :平行ビーム光学系
ゴニオメータ :ローター水平型ゴニオメータ(TTR−2)
管電圧/電流 :50kV/300mA
測定法 :連続法
スキャン軸 :2θ/θ
測定角度 :10°〜50°
サンプリング間隔:0.02°
スキャン速度 :4°/min
発散スリット :開放
発散縦スリット :10mm
散乱スリット :開放
受光スリット :1.00mm
(3)カーボンボンブラックのDBP吸油量(OA)
カーボンボンブラックのDBP吸油量(OA)の測定は、JIS K6217−1997に準じて次のように行なった。
DBP吸油量測定器(株式会社あさひ総研製、フロンテックス S−410(商品名))を用い、ローター回転数を125rpm、トルク用リミットスイッチの目盛を5、トルク目盛が10から0になるまでの所要時間が3秒になるようにダンパーバルブを調節し、ジブチルフタレート(DBP)の滴下速度を4ml/minに設定し、アブソープトメーター混合室に乾燥したカーボンブラック20gを入れ、ビュレットカウンターを0点に合わせ滴下を開始した。トルクが5になり滴下が停止した時のビュレットカウンターの目盛り(V)を読み、次式(2)で吸油量を算出した。
OA=(V/Wd)×100 式(2)
ここで、OA:吸油量(ml/100g)、V:終点までに用いたDBPの使用量(ml)及びWd:カーボンブラックの質量(g)である。
(4)カーボンブラックおよび1μm未満の微粒子の粒径
電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S4800(商品名))を用い、6万倍にした写真を得、粒子の長径および短径を測定し、その平均を当該粒子の粒径とした。粒子が小さすぎて粒径測定が難しい場合は6倍率で撮影したものをさらに拡大して30万倍の写真とした。なお、粒径は、100個の粒子について得た値の平均値である。
(5)カーボンブラックのBET比表面積
カーボンブラックのBET比表面積は、JIS K6217−2:2001「ゴム用カーボンブラック―基本特性―第2部:比表面積の求め方―窒素吸着法―単点法」の方法Cの規定に従って測定した。
(6)樹脂被覆層表面の算術平均粗さRa
JIS B0601−2001の表面粗さに基づき、小坂研究所製の表面粗度計SE−3500(商品名)にて、軸方向3点×周方向3点=9点について各々測定し、その平均値をRaとした。なお、測定条件は、カットオフ0.8mm、測定距離8.0mm、送り速度0.5mm/secとした。
(7)凹凸形成粒子の粒径
レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型あるいはLS−230型粒度分布計(いずれも商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としてはイソプロピルアルコールを使用した。イソプロピルアルコールにて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行した。
次にイソプロピルアルコール50ml中に界面活性剤3滴〜4滴を加え、更に測定試料を5mg〜25mg加えた。試料を懸濁した水溶液は超音波分散器で1分間〜3分間分散処理を行なって試料液とし、前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行ない、体積分布から算術した体積中位径を求めた。
(8)樹脂被覆層の体積抵抗
100μmの厚さのPETシート上に、7μm〜20μmの厚さの樹脂被覆層を形成し、抵抗率計ロレスタAP(商品名、三菱油化(現、三菱化学)製)にて4端子プローブを用いて樹脂被覆層の体積抵抗値を測定した。なお、測定環境は、20℃〜25℃、50%RH〜60%RHとした。
(9)粒子の体積抵抗
粒状試料を40mmφのアルミリングに入れ、2500Nで加圧成型し、抵抗率計ロレスタAP(商品名)またはハイレスタIP(商品名、三菱油化(現、三菱化学)製)にて4端子プローブを用いて体積抵抗値を測定した。なお、測定環境は、20℃〜25℃、50%RH〜60%RHとした。
(10)凹凸形成粒子の真密度
乾式密度計アキュピック1330(商品名、島津製作所製)を用いて測定した。
(11)樹脂被覆層の膜厚(削れ量)
樹脂被覆層の削れ量(膜削れ)の測定には、KEYENCE社製のレーザー寸法測定器を用いた。コントローラLS−5500及びセンサーヘッドLS−5040Tを用い、スリーブ固定治具及びスリーブ送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、スリーブの外径寸法を、スリーブ長手方向に対し30分割して30箇所、さらにスリーブを周方向に90°回転させた後さらに30箇所、計60箇所について測定した。外径寸法としてその平均値をとった。
樹脂被覆層形成前のスリーブの外径を予め測定しておき、樹脂被覆層形成後及び耐久使用後にそれぞれ外径を測定し、それぞれ差分を計算した。そして、被覆層形成前後の差分をコート膜厚、耐久前後の差分を削れ量とした。なお、耐久使用後の外径の測定は、現像剤担持体表面上に融着しているトナー融着物をメチルエチルケトン中で超音波洗浄により除去してから行った。
(12)トナー粒子の粒度分布
測定装置として、コールターカウンターTA−II型、コールターマルチサイザーIIまたはコールターマルチサイザーIII(いずれもベックマン・コールター社製、商品名)を用い、電解液として、塩化ナトリウム(試薬1級)を溶かして調製した約1質量%NaCl水溶液、あるいはISOTON R−II(ベックマン・コールター社製、商品名)を使用した。
測定方法としては、電解液100ml〜150ml中に、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩液)0.1ml〜5mlを加え、次いで、試料2mg〜20mgを加え、超音波分散器で約1分間〜3分間分散処理を行ない、上記測定装置の100μmアパーチャーを用いて、2.0μm以上のトナー粒子の測定試料の体積、個数を測定した。
この測定結果から体積分布と個数分布とを算出し、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。
チャンネルとして、2.00μm〜2.52μm未満、2.52μm〜3.17μm未満、3.17μm〜4.00μm未満、4.00μm〜5.04μm未満、5.04μm〜6.35μm未満、6.35μm〜8.00μm未満、8.00μm〜10.08μm未満、10.08μm〜12.70μm未満、12.70μm〜16.00μm未満、16.00μm〜20.20μm未満、20.20μm〜25.40μm未満、25.40μm〜32.00μm未満および2.00μm〜40.30μm未満の13チャンネルを用いた。
次に、具体的実施例をもって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、以下の配合における部は、特にことわらない限りすべて質量部である。
(樹脂被覆層形成用結着樹脂)
本実施例および比較例にて使用した、現像剤担持体の基体表面の樹脂被覆層を形成するための樹脂としては、表1に挙げた樹脂(A−1〜A−13)を用いた。このうち、固体(粉末状)のものはトルエンに溶解し、50質量%トルエン溶液の状態で使用した。樹脂の帯電極性は、各樹脂溶液にトルエンを加えて樹脂固形分を35%に希釈し、該希釈溶液をSUS板上にバーコーター(#60)にて塗布し、これを150℃/30分で加熱・硬化させ、サンプル板を作製した。このサンプル板を接地した状態で、23℃、50%RH環境下にて一晩放置した。これを図5に示した装置によって鉄粉との摩擦帯電極性を測定することによって求めた。
参考例1(カーボンブラックB−1〜B−8の製造)
カーボンブラック「トーカブラック#4500」(商品名、東海カーボン株式会社製、一次粒径:40nm)を黒鉛坩堝に入れ、窒素ガス雰囲気中2500℃で熱処理して黒鉛化を行い、カーボンブラックB−1を得た。
また、カーボンブラックB−2〜B−7に関しても、市販のアモルファス状カーボンブラックを黒鉛化処理して、本発明にて使用することのできるカーボンブラックを製造した。その際に、原料カーボンブラックとしては、一次粒径が14nm〜95nmのものを用いた。また、黒鉛化処理は、原料カーボンブラックを黒鉛坩堝に充填し、窒素ガス雰囲気中で、2000℃〜3000℃で、熱処理することで黒鉛化を行なった。なお、比較例に使用したカーボンブラックB−8はカーボンブラックB−1の製造工程において黒鉛化処理温度を1100℃として得たものである。また、カーボンブラックB−9およびB−10は黒鉛化処理していない市販製品そのものである。カーボンブラックB−1〜B−10の物性値を表2に記載した。
注)原料は下記を示す。
1:東海カーボン株式会社製、商品名:トーカブラック#4500(一次粒径40nm)
2:東海カーボン株式会社製、商品名:シーストFY SRF−HS(一次粒径72nm)
3:東海カーボン株式会社製、商品名:シーストS SRF(一次粒径66nm)
4:東海カーボン株式会社製、商品名:シーストSP SRF−LS(一次粒径95nm)
5:Degussa社製、商品名:Printex XE2−B(一次粒径30nm)
6:東海カーボン株式会社製、商品名:トーカブラック#8500(一次粒径14nm)
7:ケッチェンブラック インターナショナル社製、商品名:ケッチェンブラックEC−
300J(一次粒径40nm)
参考例2(凹凸形成粒子C−1、C−2の作製)
フェノールモノマーにホルムアルデヒドを加え、水酸化ナトリウム触媒下で反応させた。反応終了後、濾過、水洗し、脱水、乾燥させることによりフェノール樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をハンマーミルで粗粉砕し、さらに、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕した。次に該微粉砕物を風力分級機により分級した後、ハイブリタイザー(商品名、奈良機械株式会社製)を用いて球形化処理を行なうことにより、体積中位径が4.5μmまたは12.2μmの球状フェノール樹脂粒子を作製した。このフェノール樹脂粒子を夫々凹凸形成粒子C−1、C−2とした。
参考例3(凹凸形成粒子C−3、C−4の作製)
メタクリル酸メチルに少量のジビニルベンゼンと重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加え、水中で攪拌させながら懸濁重合を行なった。反応終了後、濾過、水洗し、脱水、乾燥させることによりポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をハンマーミルで粗粉砕し、さらに、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕した。次に該微粉砕物を風力分級機により分級した後、ハイブリタイザー(商品名)を用いて球形化処理を行なうことにより、体積中位径が5.2μmまたは12.7μmの球状PMMA樹脂粒子を作製した。このPMMA樹脂粒子を夫々凹凸形成粒子C−3、C−4とした。
上記で作製した凸凹形成粒子の物性を表3に示す。
参考例4(負帯電性磁性一成分現像剤(T−1)の製造)
還流冷却器、水分離装置、N2ガス導入管、温度計および撹拌装置を付した5リットル4口フラスコに、テレフタル酸12mol%、フマル酸18mol%、アジピン酸10mol%、無水トリメリット酸12mol%、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA15mol%およびプロピレンオキサイド付加ビスフェノールA33mol%を仕込み、フラスコ内にN2ガスを導入しながら180℃で縮合重合反応を行ない、反応終了後、水洗し、脱水、乾燥工程を経て、ポリエステル樹脂を得た。
このポリエステル系樹脂100部、平均粒径が0.2μmの球状磁性体90部、アゾ系鉄錯体化合物(負帯電性荷電制御剤、保土谷化学工業株式会社製、商品名:T−77)2部および低分子量エチレンープロピレン共重合体(三洋化成株式会社製、商品名:ビスコール550−P)5部からなる混合物を130℃に加熱した2軸混練押し出し機にて混練した。得られた混練物を冷却した後、ハンマーミルで粗粉砕し、さらに、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕した後、熱球形化処理を行なった。熱球形化処理を行なった微粉砕粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置で、超微粉および粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒径(D4)が7.5μmであるトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンおよびジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.5部とチタン酸ストロンチウム0.5部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤(T−1)を得た。
参考例5(負帯電性磁性一成分現像剤(T−2)の製造)
高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた2リットル用四つ口フラスコ中に、イオン交換水880部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液450部を添加し、回転数を12000rpmに調整し、58℃に加温した。ここに1mol/リットルのCaCl2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む分散媒系を調製した。
スチレン78部、アクリル酸n−ブチル22部、ジビニルベンゼン0.5部、飽和ポリエステル樹脂(テレフタル酸とエチレンオキサイド付加ビスフェノールAを等モル比混合して、縮重合して得られたもの)6部、アゾ系鉄錯体化合物(負帯電性荷電制御剤)2部、シランカップリング剤にて表面処理を施したマグネタイト85部およびエステル系ワックス15部の混合物を、アトライターを用いて3時間分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を添加して、重合性単量体組成物分散物を得た。
上記分散媒系中へこの重合性単量体組成物分散物を投入し、60℃、窒素雰囲気下においてTK−ホモミキサーにて10000rpmで15分間攪拌し、重合性単量体組成物の懸濁液を作成した後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ、60℃で6時間重合させた。その後、液温を80℃として更に6時間攪拌を続けた。その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて分散剤を溶解し、ろ過、水洗、乾燥して、重量平均粒径(D4)7.3μmの負帯電性トナー粒子を得た。
このトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンおよびジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.0部、酸化チタン微粒子0.8部およびチタン酸ストロンチウム0.6部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤(T−2)を得た。
参考例6(負帯電性磁性一成分現像剤(T−3)の製造)
スチレン73.5部、アクリル酸n−ブチル19部、マレイン酸モノブチル7部、ジビニルベンゼン0.5部、ベンゾイルパーオキサイド1部およびジ−t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部の混合物にポリビニルアルコール部分ケン化物0.8部を溶解した水180部を加え、激しく攪拌させて懸濁分散液とした。この懸濁分散液を、水40部を入れ窒素置換した反応器に入れ、反応温度85℃にて10時間懸濁重合した。反応終了後、ろ過、水洗し、脱水、乾燥工程を経て、ビニル系樹脂を得た。
このビニル系樹脂100部、前記球状磁性体90部、前記アゾ系鉄錯体化合物(負帯電性荷電制御剤)2部および前記低分子量エチレンープロピレン共重合体5部からなる混合物を130℃に加熱した2軸混練押し出し機にて混練した。得られた混練物を冷却した後、ハンマーミルで粗粉砕し、さらに、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕した後、熱球形化処理を行なった。熱球形化処理を行なった微粉砕粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置で、超微粉および粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒径(D4)が6.5μmであるトナー粒子を得た。
このトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザン処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.0部とチタン酸ストロンチウム3.6部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤(T−3)を得た。
参考例7(負帯電性非磁性一成分現像剤(T−4)の製造)
高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた2リットル用四つ口フラスコ中に、イオン交換水880部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液450部を添加し、回転数を12000rpmに調整し、58℃に加温した。ここに1mol/リットル−CaCl2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む分散媒系を調製した。
スチレン150部、アクリル酸n−ブチル50部、青色顔料(C.I.ピグメンブルー15:3)18部、飽和ポリエステル樹脂(テレフタル酸とエチレンオキサイド付加ビスフェノールAを等モル比で混合して、縮重合して得られたもの)15部、ジターシャリーブチルサリチル酸クロム化合物(負帯電性荷電制御剤)2部、エステル系ワックス30部およびジビニルベンゼン0.6部の混合物に、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
上記分散媒系にこの重合性単量体組成物を入れ、60℃、窒素雰囲気下において、 TK式ホモミキサーを用いて8,000rpmで攪拌し、重合性単量体組成物微小懸濁液を得た。その後、プロペラ式攪拌装置に移して攪拌しつつ、2時間かけて70℃に昇温し、更に4時間後、昇温速度40℃/Hrで80℃まで昇温し、80℃で5時間反応を行ない、重合体粒子を製造した。重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを冷却し、ろ過後、スラリーの10倍の水量で洗浄し、乾燥し、その後分級によって粒径を調整して、シアントナーの母体粒子(重量平均粒径6.8μm)を得た。
このトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザン処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.0部、ルチル型酸化チタン微粉末0.15部(一次粒径45nm)およびルチル型酸化チタン微粉末0.5部(一次粒径200nm)を加え、ヘンシェルミキサーで5分間乾式混合して、負帯電性非磁性一成分現像剤(T−4)を得た。
実施例1(現像剤担持体S−1の製造)
樹脂A−1(トルエン50%含有溶液、表1)200部(樹脂分100部)、カーボンブラックB−1(表2)50部、凹凸形成粒子C−1(表3)25部及びトルエン60部に直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として加え、サンドミルにて1時間分散し、フルイを用いてビーズを分離し、酢酸エチルで固形分を27%に調整し、塗工液を得た。
この塗工液を、垂直に立てられ、上下端部がマスキングされた、外径16mmφ×厚み2mmで、表面がRa0.3μmの研削加工が施された、一定速度で回転させられているアルミニウム製円筒管に、スプレーガンを一定速度で下降させて塗布することによって樹脂被覆層を形成した。続いて熱風乾燥炉中で150℃、30分間加熱して樹脂被覆層を硬化させて、現像剤担持体(現像スリーブ)S−1を作成した。表4に現像剤担持体(現像スリーブ)S−1の樹脂被覆層の処方と物性を示した。
作製した現像剤担持体(現像スリーブ)S−1にマグネットローラーを装着してフランジを嵌合し、図3に示したような構成の現像装置を有するHewlett−Packard社製Laser Jet2300(商品名)に現像剤担持体として装着して、1枚/10秒の間欠モードで15千枚の耐久テストを行なった。初期評価は10枚目の時に耐久評価テストを中断し、耐久評価は耐久テスト終了後に、それぞれ必要な評価を行った。なお、現像剤として参考例4で作製した負帯電性磁性一成分現像剤(T−1)を用いた。
画像評価は、常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)、低温低湿度環境(15℃、10%RH;L/L)および高温高湿度環境(32℃、85%RH;H/H)において実施した。画像評価の結果は表5に挙げたように、いずれの環境においても終始良好な結果が得られた。
評価項目と測定方法およびその評価基準は以下の通りである。
(1)画像濃度
画像比率5.5%であるテストチャート上の5mmφ丸部のプリント画像濃度を、反射濃度計RD918(マクベス社製)により反射濃度測定を行ない、10点の平均値をとって画像濃度とした。
(2)カブリ
適正画像におけるベタ白部の反射率および未使用の転写紙の反射率を反射率計TC−6DS(東京電色株式会社製)でランダムに10点測定し、(ベタ白部の反射率の最悪値−未使用転写紙の反射率の平均値)を求め、これをカブリ濃度とする。この値から下記基準にて評価した。
A:1.0%以下(目視ではカブリは認められない)。
B:1.0%超2.0%以下(注視しなければカブリは認められない)。
C:2.0%超3.0%以下(カブリはあるものの実用上問題なし)。
D:3.0%超(カブリが目立つ)。NGレベル。
(3)スリーブゴースト
幅x×長さlの帯状ベタ黒部(図6(a))を画出しした後、幅y(但し、>x)×長さlのハーフトーン(図6(b))を画出しする。このハーフトーン画出し画像の画像濃度を図6(c)の領域ア(画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さz以降の部分)、領域イ(画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででベタ黒画像の画出しをした部分と重なる部分)および領域ウ(画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででハーフトーンのみを画出しした部分)でそれぞれ画像濃度を測定し、現れた濃度差(濃淡の程度)を、下記基準にてスリーブゴーストを評価した。
A:濃度差が全く見られない(濃度差が0.02未満)。
B:領域イと領域ウで軽微な濃度差が見られる(濃度差が0.02以上0.04未満)。
C:領域ア、領域イ、領域ウ各々で若干の濃度差が見られる(濃度差が0.04以上0.07未満)。
D:顕著な濃度差が見られる(濃度差が0.07以上)。NGレベル。
(4)画質
耐久評価の初期及び耐久最後の出力画像をルーペまたは目視により、下記評価をした。
A:倍率が10倍のルーペで見ても飛び散りのない鮮明な画像である。
B:目視で見る限り鮮明な画像である。
C:若干飛び散りが見られるものの実用上問題ない。
D:飛び散り以外に文字のカスレが目立つ。NGレベル。
(5)現像剤担持体上トナー帯電量(Q/M)およびトナー担持量(M/S)
現像剤担持体上に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、その際金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、捕集されたトナー質量Mおよびトナーを吸引した面積Sを測定した。これらの値から、単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)および単位面積当たりのトナー質量M/S(dg/m2)を算出した。
(6)現像剤担持体の表面粗さRa
現像剤担持体を装置に組み込む前(新品)および耐久評価後に現像剤担持体の表面粗さ(算術平均粗さ)Raを、JIS B0601−2001に従い、測定した。なお、耐久評価後の現像剤担持体に関しては、現像装置から取り外した後、表面にエアーブローを施し、表面に付着していた現像剤を完全に除去してから測定を行なった。
(7)樹脂被覆層の削れ量
現像剤担持体を装置に組み込む前(新品)および耐久評価後に現像剤担持体の外径測定を行ない、その差分を樹脂被覆層の削れ量とした。耐久評価後の現像剤担持体に関しては、前記(6)での処理を行なった後に測定を行なった。
(8)樹脂被覆層の耐汚染性
耐久評価後の現像剤担持体の表面をKEYENCE社製の超深度形状測定顕微鏡を用いて、約200倍で観察し、トナー汚染の程度を下記の基準にて評価した。
A:軽微な汚染しか観察されない。
B:やや汚染が観察される。
C:部分的に汚染が観察される。
D:著しい汚染が観察される。NGレベル。
実施例2〜12および比較例1〜5
表4に示した処方により、実施例1と同様にして固形分を27%に調整した塗工液を作製し、表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体S−2〜S−17を作製した。表4に現像剤担持体(現像スリーブ)S−2〜S−17の樹脂被覆層の処方と物性を示した。
なお、実施例10、11で使用した製造した二硫化モリブデン(MoS2)および窒化硼素(BN)は、体積中位径がそれぞれ2.5μm、3.5μmであった。また、比較例5で作製した現像剤担持体S−17の樹脂被覆層のX線回折では黒鉛(002)の面間隔を示すピークが明確に測定できなかったので、測定不可とした。
作製した現像剤担持体S−2〜S−17を現像剤担持体として組み込み、負帯電性一成分現像剤として参考例4で作成した負帯電性磁性一成分現像剤(T−1)または参考例5で作成した負帯電性磁性一成分現像剤(T−2)を表5または表6に示すように用い、以下、実施例1と同様に評価した。実施例1の結果と共に、結果を表5または表6に示した。
実施例13〜17および比較例6〜8
表7に記載した処方により、実施例1と同様にして固形分を27%に調整した塗工液を作成した後、外径20mmφ×厚み2mm、算術平均粗さRa0.3μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を用い、以下実施例と同様にして、表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体(現像スリーブ)S−18〜S−25を製造した。表7に現像剤担持体(現像スリーブ)S−18〜S−25の樹脂被覆層の処方と物性を示した。
なお、比較例8で作製した現像剤担持体S−25の樹脂被覆層のX線回折では黒鉛(002)の面間隔を示すピークが明確に測定できなかったので、測定不可とした。
作成した現像スリーブS−18〜S−25にマグネットローラーを装着して両端にフランジを取り付け、得られた現像剤担持体を、図2に示したような構成の現像装置を有する、感光ドラムがOPCドラムであるキヤノン製デジタル複写機IR3300(商品名)の現像器に現像剤担持体として装着して、1枚/10秒の間欠モードで20万枚の耐久評価テストを行った。初期評価は100枚目の時に耐久評価テストを中止し、耐久評価は耐久テスト終了後に、それぞれ必要な評価を行った。なお、現像剤として参考例3で作製した負帯電性磁性一成分現像剤(T−3)を用いた。ここで、現像剤層厚規制部材として、厚さ0.6mmの磁性ブレード(材質:鉄)を使用した。結果を表8に示した。
実施例18〜22および比較例9〜10
表9に記載した処方により、実施例1と同様にして固形分を27%に調整した塗工液を作成した後、外径20mmφ×厚み2mm、算術平均粗さRa0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を用い、以下実施例と同様にして、表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体(現像スリーブ)S−26〜S−32を作成した。表9に現像剤担持体(現像スリーブ)S−26〜S−32の樹脂被覆層の処方と物性を示した。
なお、実施例19にて使用した酸化チタンは、体積平均粒径が3.0μmであった。
作成した現像剤担持体S−26〜S−32を、図4に示したような構成の現像装置を有する、感光ドラムがOPCドラムであるキヤノン製フルカラーレーザービームプリンターLBP2040(商品名)の改造機のシアントナー用現像器に現像剤担持体として組み込み、1枚/10秒の間欠モードで6千枚の耐久評価テストを行なった。初期評価は10枚目の時に耐久評価テストを中断し、耐久評価は耐久テスト終了後に、それぞれ必要な評価を行った。なお、現像剤として参考例7で作製した負帯電性非磁性一成分現像剤(T−4)を用いた。ここで、現像剤層厚規制部材としては、リン青銅薄板上にショアーD硬度40度のポリアミドポリエーテルエラストマーを射出成形にて設けた弾性の現像剤層厚規制部材を用い、現像剤担持体への当接圧は線圧で15N/mとした。
また、評価項目は、画像濃度、カブリ、画質、ハーフトーン均一性、トナー帯電量、トナー担持量および耐汚染性とした。結果を表10に示した。
なお、ハーフトーン均一性は、ハーフトーン画像に発生する、モヤ状の濃淡差および画像形成進行方向に走る帯状の濃淡差について、形成された画像を目視によって観察し、下記基準にて評価した。
A:非常に良好(画像に全く確認できない)。
B:良好(良く見ると軽微に確認できる)。
C:実用上問題無し(濃淡差がやや出ているが気にならない)。
D:実用上問題あり(濃淡差がはっきり確認できる)。