JP2009040676A - 電極付きガラス基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラス基板上に形成されている電極を、質量百分率表示で、B2O3が30〜50%、SiO2が21〜25%、ZnOが10〜35%、Li2OおよびNa2Oのいずれか一方または両方とK2Oとが合計で7〜14%、Al2O3が0〜10%、ZrO2が0〜10%、MgO+CaO+SrO+BaOが0〜5%、Li2O、Na2O、K2Oのモル分率l、n、kについてlが0.025以下、l+n+kが0.07〜0.13である無鉛ガラスによって電極を被覆する。
【選択図】なし
Description
PDPは、表示面として使用される前面基板と多数のストライプ状またはワッフル状の隔壁が形成された背面基板とを対向させて封着し、それら基板間に放電ガスを封入して製造される。
背面基板上には、電極のほかに隔壁、蛍光体層が形成されている。
前面基板の誘電体層を形成するガラスには、低温で焼成できること、焼成後の透明性が高いこと、銀電極から拡散する銀による発色等が生じないこと等、が求められている。さらに、最近ではプラズマテレビの大型化に伴って、ガラス基板の重量が問題視されるようになり、より薄いガラス基板を使用することが検討されているが、その場合には基板強度の低下が懸念される。そこで、PDP前面基板の強度を高くするために電極被覆層の膨張係数を小さくすることが提案されている(非特許文献1参照)。
非特許文献1で提案されている方法を適用すればこの問題を解決できる可能性があるが、一方、電極被覆ガラスの50〜350℃における平均線膨張係数αと前記αAとの差が大きくなりすぎ前面基板が変形することが懸念される。
本発明はαを小さくしないでもPDP前面基板の強度を高くすることができる電極被覆用ガラス、電極付きガラス基板の製造方法、そのような電極被覆用ガラスによってガラス基板上の電極が被覆されている電極付きガラス基板、および電極被覆用ガラスセラミックス組成物の提供を目的とする。
また、ガラス基板上に電極が形成されその電極がガラスによって被覆されている電極付きガラス基板の製造方法であって、本発明のガラスセラミックス組成物を焼成して当該電極のガラスによる被覆を行う電極付きガラス基板の製造方法を提供する。なお、この電極付きガラス基板の製造方法は本発明のガラス基板の製造方法に属するものである。
また、表示面として使用される前面ガラス基板、背面ガラス基板および隔壁によりセルが区画形成されているPDPであって、前面ガラス基板上の透明電極または背面ガラス基板上の電極が本発明のガラスにより被覆されているPDP(本発明のPDP)を提供する。
S={13.314×Kc+0.181×(α0−α)}2/E 。
溶融ガラスをステンレス鋼製の型枠に流し込み、徐冷する。
徐冷されたガラスを板状ガラスに加工し、その一方の表面を鏡面研磨した後残留応力を除去するための徐冷(精密徐冷)を行い、典型的な大きさが50mm×50mm、厚みが10mmであるガラス試験片を得る。なお、精密徐冷はガラスのガラス転移点をTgとしてたとえばTg〜(Tg+20℃)に1時間保持した後、室温まで1℃/分程度の降温速度で冷却することによって行う。
このガラス試験片を用いてJIS R 1607−1995「ファインセラミックスの破壊靱性試験方法5.IF法」(圧子圧入法)に準じてKcを測定する。すなわち、ビッカース硬度試験機を使用し、相対湿度が35%以下のグローブボックス内でガラス試験片表面にビッカース圧子を15秒間押し込み、圧痕の対角線長さと亀裂長さを当該試験機付属の顕微鏡を用いて測定する。押し込み荷重と圧痕の対角線長さからビッカース硬度(Hv)を求め、亀裂長さとHvとEと押し込み荷重とからKcを算出する。押し込み荷重は、たとえば100g〜2kgとする。
徐冷されたガラスを長さ20mm、直径5mmの円柱状に加工し、石英ガラスを標準試料としてブルカーエイエックスエス社製水平示差検出方式熱膨張計TD5010SA−Nを用いて50〜350℃における平均線膨張係数αを測定する。
徐冷されたガラスを厚み10mmの板状に加工し、JIS R 1602−1995「ファインセラミックスの弾性率試験方法 5.3超音波パルス法」により弾性率Eを測定する。
典型的には大きさが100mm×100mm、厚みが2.8mmであるガラス基板を製造粒度が#1500である耐水研磨紙の上に置き、そのガラス基板の上面の10cmの高さから22gのステンレス鋼製球を落下させる。このステンレス鋼製球の落下によってガラス基板が割れないときは落下高さを10mm高くしてステンレス鋼製球を落下させる。ガラス基板が割れるまで落下高さを10mm刻みで高くしてステンレス鋼製球を落下させる。このようなガラス基板破壊試験を5回繰り返し、得られた破壊高さの平均値をH0とする。
すなわち、電極被覆ガラスによって被覆されている表面を下にして前記耐水研磨紙の上に置く以外はH0測定と同様にしてガラス層付きガラス基板破壊試験を5回繰り返し、得られた破壊高さの平均値をHとする。
電極被覆ガラスの粉末100gを、α−テルピネオール等にエチルセルロースを10質量%溶解した有機ビヒクル25gと混練してガラスペーストを作製し、大きさが100mm×100mmであるガラス基板上に、焼成後の膜厚が20μmとなるよう均一にスクリーン印刷し、120℃で10分間乾燥する。その後、このガラス基板を昇温速度毎分10℃で、電極被覆ガラスの軟化点をTsとして、(Ts−50℃)〜Tsの範囲の温度まで加熱してその温度に30分間保持して焼成を行い、ガラス基板上に電極被覆ガラス層を形成してガラス層付きガラス基板とする。
また、本発明の好ましい態様によれば低誘電率の電極被覆用ガラスが得られ、たとえばPDPの消費電力を低減することが可能になる。また、これをたとえばPDP背面基板のアドレス電極の被覆に用いれば、誘電率の高い酸化チタン粉末をアドレス電極被覆ガラス層に含有させてその反射率を高くしながらその誘電率の増大を少なくすることが可能になる。
ガラスペーストを用いて電極被覆を行う場合、粉末化された本発明のガラス(以下、本発明のガラス粉末という。)はビヒクルと混練されガラスペーストとされる。このガラスペーストは、たとえば透明電極等の電極が形成されているガラス基板に塗布、焼成され、当該透明電極等を被覆するガラス層が形成される。
グリーンシートを用いて電極被覆を行う場合、本発明のガラス粉末は樹脂と混練され、得られた混練物はポリエチレンフィルム等の支持フィルムの上に塗布されてグリーンシートとされる。このグリーンシートはたとえばガラス基板上に形成された電極上に転写後、焼成され、その電極を被覆するガラス層が形成される。
なお、PDP前面基板の製造においてはこれら焼成は典型的には600℃以下の温度で行われる。また、このようにしてガラス層が形成されたガラス基板は本発明のガラス基板である。
本発明のガラス粉末の最大粒径は20μm以下であることが好ましい。20μm超では、厚みを通常30μm以下とすることが求められるPDP前面基板の電極被覆ガラス層(透明誘電体層)の形成に用いようとするとそのガラス層の表面に凹凸が発生し、PDPの画像がゆがむおそれがある。より好ましくは10μm以下である。
また、Tsは500℃以上であることが好ましい。Tsが500℃未満であると、焼成工程においてガラスペーストまたはグリーンシートに含まれる樹脂成分が十分に分解されないおそれがある。
PDP前面基板の破壊は、PDP前面基板に衝撃が加わって基板が撓んだときに背面基板上に形成された隔壁と部分的に接している電極被覆ガラス層がその隔壁に衝突して傷つくことによって起こると考えられるが、本発明のガラスのKcはたとえば0.74MPa・m1/2以上であるので電極被覆ガラス層が上記のように傷ついても破壊にまで至ることは少ないと考えられる。
PDP前面基板の破壊は先に述べたように背面基板上の隔壁と電極被覆ガラス層が衝突して傷つくことによって起こると考えられるが、このとき電極被覆ガラス層のEが小さいほど衝突による衝撃が吸収され、傷つきにくくなると考えられる。本発明のガラスのEはたとえば80GPa以下であるので、衝突時に傷が生じにくく破壊に至ることが少ないと考えられる。
B2O3はガラスを安定化させる、またはTsを下げる成分であり、必須である。30%未満ではガラス化が困難となる。好ましくは31%以上である。たとえばZnO含有量が20%未満の場合には、好ましくは35%以上である。50%超では分相が起こりやすくなる、または化学的耐久性が低下する。
分相を起こりにくくしたい、または化学的耐久性を低下させたくないなどの場合、B2O3は好ましくは45%以下、より好ましくは42%以下である。
このうちLi2OおよびNa2Oの少なくともいずれか一方を含有する。Li2OおよびNa2Oのいずれも含有しないものであるとTsが高くなる、または反りが大きくなる。
典型的にはLi2Oは含有しない。
Kイオンはイオン半径が大きく他のアルカリ金属イオンより移動しにくいので、K2Oを含有することによりアルカリ金属イオン交換が進みにくくなると考えられる。K2Oは2%以上含有することが好ましく、5%以上含有することがより好ましい。
しかし、アルカリ金属成分としてK2Oのみを含有するものであるとガラス基板の一方の面にガラス層を形成したときにガラス層が形成されている側に凸となる反りが生じる。これは、イオン半径の大きいKイオンがガラス基板表面に侵入することによりそのガラス層と接しているガラス基板表面が膨張するためと考えられる。
なお、Al2O3のモル分率は典型的には0.04未満である。
BaOを含有する場合その含有量は1%以下であることが好ましい。1%超ではKcが低下するおそれがある。Kcをより大きくしたい場合にはBaOは含有しないことが好ましい。
α、Ts、化学的耐久性、ガラスの安定性、ガラス被覆層の透過率などの調整、銀発色現象の抑制などの目的で添加してもよい成分として、TiO2、SnO2、MnO2等の成分が例示される。
なお、本発明のガラスはPbOを含有しない。
B2O3はガラスを安定化させる、Kcを大きくする、Eを小さくする成分であり、必須である。43%未満ではEが大きくなり、強度が低下しやすい。好ましくは44%以上である。50%超では分相が起こりやすくなる、または化学的耐久性が低下する。典型的には49%以下である。
B2O3およびSiO2の含有量の合計は、好ましくは68%以上、より好ましくは70%以上である。
Kイオンはイオン半径が大きく他のアルカリ金属イオンより移動しにくいので、K2Oを含有することによりアルカリ金属イオン交換が進みにくくなると考えられる。K2Oは5%以上含有することが好ましい。
しかし、アルカリ金属成分としてK2Oのみを含有するものであるとガラス基板の一方の面にガラス層を形成したときにガラス層が形成されている側に凸となる反りが生じる。これは、イオン半径の大きいKイオンがガラス基板表面に侵入することによりその電極被覆ガラス層と接しているガラス基板表面が膨張するためと考えられる。また、K2Oはεを大きくする成分であり、αを大きくする成分であるので、その含有量は9%以下とすることが好ましい。
なお、Al2O3のモル分率は典型的には0.04未満である。
α、Ts、化学的耐久性、ガラスの安定性、ガラス被覆層の透過率などの調整、銀発色現象の抑制などの目的で添加してもよい成分として、TiO2、SnO2、MnO2等の成分が例示される。ただ、上記目的の場合、前記ZrO2を3%以下の範囲で含有することが典型的である。
なお、本発明のガラス1はPbOを含有しない。
本発明のガラスセラミックス組成物の成分、含有量について以下に説明する。
この無鉛ガラスは本発明のガラスであるが、その成分、質量百分率表示含有量について以下に説明する。
なお、ZnOのモル分率は典型的には0.20未満である。
このうちLi2OおよびNa2Oの少なくともいずれか一方を含有する。Li2OおよびNa2Oのいずれも含有しないものであるとTsが高くなる、または反りが大きくなる。
Kイオンはイオン半径が大きく他のアルカリ金属イオンより移動しにくいので、K2Oを含有することにより銀イオンとアルカリ金属イオンのイオン交換が進みにくくなると考えられる。K2Oは2%以上含有することが好ましく、5%以上含有することがより好ましい。
BaOを含有する場合その含有量は1%以下であることが好ましい。1%超ではKcが低下するおそれがある。Kcをより大きくしたい場合にはBaOは含有しないことが好ましい。
これら3成分のいずれかを含有する場合、CuOを1.5%以下の範囲で含有することが典型的である。
α、Ts、化学的耐久性、ガラスの安定性、ガラス被覆層の透過率などの調整、銀発色現象の抑制などの目的で添加してもよい成分として、TiO2、SnO2、MnO2等の成分が例示される。なお、上記目的の場合前記ZrO2を含有してもよい。
なお、この無鉛ガラスのTsは600℃以下、εは7.0以下であることが好ましい。
また、このようなガラス層付きガラス基板の強度指標Sは1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.7以上である。
本発明のPDPは前面基板電極または背面基板電極の被覆ガラスとして本発明のガラスを用いる以外は周知のPDPと同様のものでよく、その製造も前面基板電極または背面基板電極の被覆ガラスとして本発明のガラスを用いる以外は周知の製造方法で行える。
徐冷されたガラスの一部を長さ20mm、直径5mmの円柱状に加工し、石英ガラスを標準試料として、10gの荷重を加え、ブルカーエイエックスエス社製水平示差検出方式熱膨張計TD5010SA−Nを用いてこのガラスのαを測定した。結果を表に示す(単位:10−7/℃)。
また、ガラス粉末を試料として示差熱分析装置(DTA)を用いてTs(単位:℃)を測定した。
また、このガラス層付きガラス基板についてHを測定し、別に測定したH0の値を用いてH/H0を計算した。
以上の測定または計算結果を表に示す。表中の「−」は測定または計算をしなかったことを示す。
Claims (7)
- ガラス基板上に電極が形成されその電極がガラスによって被覆されている電極付きガラス基板の製造方法であって、下記酸化物基準の質量百分率表示で、B2O3を30〜50%、SiO2を21〜25%、ZnOを10〜35%、Li2OおよびNa2Oのいずれか一方または両方とK2Oとを合計で7〜14%、Al2O3を0〜10%、ZrO2を0〜10%含有し、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる1種以上の成分を含有する場合それら含有量の合計は5%以下であり、Li2O、Na2O、K2Oの各モル分率をl、n、kとしてlが0.025以下、l+n+kが0.07〜0.13である無鉛ガラスによって電極を被覆する電極付きガラス基板の製造方法。
- 前記無鉛ガラスのB2O3含有量が43%以上、ZnO含有量が23%以下、Li2O含有量が0〜0.5%、Na2O含有量が2〜5%、K2O含有量が4〜10%、Li2O、Na2OおよびK2Oの各含有量の合計が12%以下、Al2O3含有量が0〜5%、l+n+kが0.11以下である請求項1の電極付きガラス基板の製造方法。
- 前記無鉛ガラスのB2O3およびSiO2の含有量の合計が68%以上である請求項1または2の電極付きガラス基板の製造方法。
- 前記無鉛ガラスがLi2Oを含有しない請求項1、2または3の電極付きガラス基板の製造方法。
- 下記酸化物基準の質量百分率表示で、B2O3を30〜50%、SiO2を21〜25%、ZnOを10〜23%、Li2OおよびNa2Oのいずれか一方または両方とK2Oとを合計で9〜19%、Al2O3を0〜10%、ZrO2を0〜5%含有し、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる1種以上の成分を含有する場合それら含有量の合計は5%以下であり、Li2O、Na2O、K2Oの各モル分率をl、n、kとしてlが0.025以下、l+n+kが0.08〜0.17である無鉛ガラスの粉末および酸化チタンの粉末を含有する電極被覆用ガラスセラミックス組成物。
- 質量百分率表示で、前記無鉛ガラスの粉末を90〜99.9%、酸化チタンの粉末を0.1〜10%含有する請求項5の電極被覆用ガラスセラミックス組成物。
- ガラス基板上に電極が形成されその電極がガラスによって被覆されている電極付きガラス基板の製造方法であって、請求項5または6の電極被覆用ガラスセラミックス組成物を焼成して当該電極のガラスによる被覆を行う電極付きガラス基板の製造方法。
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