JP5169440B2 - 電極付きガラス基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマディスプレイ装置(PDP)の前面基板などの製造に好適な電極被覆用無鉛ガラス、電極被覆用ガラスセラミックス組成物、電極付きガラス基板、電極付きガラス基板の製造方法に関する。
PDPは代表的な大画面フルカラー表示装置である。
PDPは、表示面として使用される前面基板と多数のストライプ状またはワッフル状の隔壁が形成された背面基板とを対向させて封着し、それら基板間に放電ガスを封入して製造される。
前面基板は、前面ガラス基板上に面放電を発生する複数の表示電極対が形成されており、それら電極対が透明ガラス誘電体によって被覆されているものである。電極対は通常、ITO等の透明電極およびその表面の一部に形成されるバス電極とからなる。バス電極としては銀電極、Cr―Cu―Cr電極等が用いられる。
背面基板は通常、背面ガラス基板上に、ガラスで被覆されたアドレス電極のほかに隔壁、蛍光体層が形成されているものである。
前面基板の電極を被覆するガラス(誘電体)は、ガラス粉末を含有するグリーンシートを電極上に転写後焼成する、ガラス粉末を含有するペーストを電極上に塗布後焼成する、等の方法によって形成される。
前面基板の誘電体層を形成するガラスには、低温で焼成できること、焼成後の透明性が高いこと、銀電極から拡散する銀による発色等が生じないこと等、が求められている。さらに、最近ではプラズマテレビの大型化に伴って、ガラス基板の重量が問題視されるようになり、より薄いガラス基板を使用することが検討されているが、その場合には基板強度の低下が懸念される。そこで、PDP前面基板の強度を高くするために電極被覆層の膨張係数を小さくすることが提案されている(非特許文献1参照)。
また、このような前面基板強度低下の問題とは別に、ガラス粉末焼成時に前面基板が反ったり割れたりする問題も存在し、このような問題を解決する方法として次のようなものが提案されている。すなわち、ガラス基板および電極被覆ガラス(電極被覆層)の各線膨張係数α、αについて(α−20×10−7/℃)≦α≦αが成立するようにしてガラス基板の残留ストレスを−800〜+1500psiとすれば前面基板の反りや割れを抑えることができるとされ、そのような電極被覆ガラスとしては質量百分率表示組成が、B 10〜45%、SiO 0.5〜20%、ZnO 20〜55%、KO 3〜20%、NaO 0〜10%、CuO+Bi+Sb+CeO+MnO 0〜5%、Nb+La+WO 0〜30%、であるものが特に好ましいとされている(特許文献1参照)。
また、背面基板についても強度が高いことが望まれている。
特開2006−221942号公報([0013]、[0017]、[0022]など) 2007 SID INTERNATIONAL SYMPOSIUM DIGEST pp389−392
本発明者は特許文献1で提案されている方法を従来使用されているPDPガラス基板(αが83×10−7/℃である旭硝子社製PD200。以下、「従来ガラス基板」ということがある。)に適用してみた。その結果、前記方法は強度や反り抑制に関する現在の要求を必ずしも充分に満たせるものではなくなっていることが判明した。すなわち、質量百分率表示組成が、B 35.5%、SiO 11.5%、ZnO 40%、KO 9%、NaO 1%、CaO 2%、Al 1%である前記特に好ましいとされている電極被覆用ガラスを用いて570℃で焼成してガラス基板全面を被覆し、後述する落球強度H/Hおよび反りWを測定したところそれぞれ1.3、−60μmであった。現在のH/HおよびWに対する要求値はそれぞれ1.2以上、−50〜50μmであり、前記電極被覆用ガラスは反り抑制に関する現在の要求を満たすものではなかった。なお、前記電極被覆用ガラスの50〜350℃における平均線膨張係数αは73×10−7/℃、軟化点Tsは596℃であった。
本発明は、従来ガラス基板を使用する場合にも適用でき、また、PDP前面基板等の電極付きガラス基板の強度を低下させることなく反りを抑制できる、もしくは強度を高くできる電極被覆用ガラス、電極被覆用ガラスセラミックス組成物、電極付きガラス基板の製造方法およびそのような電極被覆用ガラスによってガラス基板上の電極が被覆されている電極付きガラス基板の提供を目的とする。
本発明は、下記酸化物基準の質量百分率表示で、Bを30〜50%、SiOを25%超35%以下、ZnOを10〜25%、LiOおよびNaOのいずれか一方または両方とKOとを合計で7〜19%、Alを0〜5%含有し、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる1種以上の成分を含有する場合それら含有量の合計は5%以下であり、LiO、NaO、KOの各モル分率をl、n、kとしてlが0.025以下、l+n+kが0.07〜0.17である電極被覆用無鉛ガラス(本発明のガラス)を提供する。
また、本発明のガラスであって、SiO含有量が30%超、ZnO含有量が20%以下、LiO、NaOおよびKOの各含有量の合計が9%以上、l+n+kが0.09以上である電極被覆用無鉛ガラス(本発明のガラス1)を提供する。
また、本発明のガラスであって、B含有量が35%以上、SiO含有量が30%以下、BおよびSiOの含有量の合計が60%以上、LiO、NaOおよびKOの各含有量の合計が17%以下、l+n+kが0.15以下である電極被覆用無鉛ガラス(本発明のガラス2)を提供する。
また、本発明のガラスであって、B含有量が43%以上、SiO含有量が33%以下、BおよびSiOの含有量の合計が70%以上、ZnO含有量が23%以下、LiO含有量が0〜0.5%、NaO含有量が2〜5%、KO含有量が4〜9%、LiO、NaOおよびKOの各含有量の合計が12%以下である電極被覆用無鉛ガラス(本発明のガラス3)を提供する。また、本発明のガラス3であって、CuOを2.5%以下の範囲で含有するものを提供する。
また、下記酸化物基準の質量百分率表示で、Bを30〜50%、SiOを25%超33%以下、ZnOを10〜25%、LiOおよびNaOのいずれか一方または両方とKOとを合計で9〜19%、Alを0〜5%含有し、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる1種以上の成分を含有する場合それら含有量の合計は5%以下であり、LiO、NaO、KOの各モル分率をl、n、kとしてlが0.025以下、l+n+kが0.08〜0.17である無鉛ガラスの粉末および酸化チタンの粉末を含有する電極被覆用ガラスセラミックス組成物(本発明のガラスセラミックス組成物)を提供する。
また、ガラス基板上に電極が形成されその電極がガラスによって被覆されている電極付きガラス基板の製造方法であって、本発明のガラスによって電極を被覆する電極付きガラス基板の製造方法(本発明のガラス基板の製造方法)を提供する。
また、ガラス基板上に電極が形成されその電極がガラスによって被覆されている電極付きガラス基板の製造方法であって、本発明のガラスセラミックス組成物を焼成して当該電極のガラスによる被覆を行う電極付きガラス基板の製造方法を提供する。なお、この電極付きガラス基板の製造方法は本発明のガラス基板の製造方法に属するものである。
また、表示面として使用される前面ガラス基板、背面ガラス基板および隔壁によりセルが区画形成されているPDPであって、前面ガラス基板上の透明電極または背面ガラス基板上の電極が本発明のガラスにより被覆されているPDP(本発明のPDP)を提供する。
本発明者は前記l、n、kなどが反りWに影響する因子であることを見出したが、Wに影響する因子を特定の範囲に限定してWを小さくできても落球強度H/Hが小さくなり上記問題を解決できない場合が存在するという新たな問題に直面した。
この新たな問題を解決するためにはH/Hを測定してH/Hに影響する因子を見出すことが必要であると考えられた。しかし、後述するHはガラス基板にガラスペーストを塗布して焼成して作製したガラス試験片(ガラス層付きガラス基板)について落球強度を測定して得られるものであって、ガラス基板や電極被覆用ガラスだけではなくガラスペーストのビヒクル構成や焼成条件の影響を受けやすいものである。
ところで、このようなHの測定の精度を高めるためには測定回数nを少なくとも5としなければならないことが判明し、結局、H/Hを測定してH/Hに影響する因子を見出すという方法はHの測定精度向上のために多大な作業が必要となって採用することが困難であった。
そこで本発明者はH/Hを測定しないでもそれを推定できる方法を研究した。その結果、電極被覆ガラスの弾性率E(単位:GPa)、破壊靱性値Kc(単位:MPa・m1/2)、α(単位:10−7/℃)およびガラス基板のαすなわちα(単位:10−7/℃)を用いて下記式で計算されるSと実測された落球強度H/Hとが図1に示すようによく合致することを見出し、この方法すなわちSを用いてH/Hを推定する方法を採用して研究を行うことにより本発明に至った。なお、Sの計算においてたとえばαが83×10−7/℃である場合には下記式におけるαは83とされ、E、Kc、αについても同様である。また、H/Hは概ねS±0.2である。
S={13.314×Kc+0.181×(α−α)}/E 。
図1はガラス基板として従来ガラス基板を用いた場合についてのものであり、その横軸は上記S、縦軸は上記H/Hを示す。なお、図1の作成に用いた電極被覆ガラスの質量百分率表示組成範囲は、B 1.2〜40.6%、SiO 0.4〜33.3%、ZnO 0〜39.6%、LiO 0〜4.4%、NaO 0〜4.9%、KO 0〜11.2%、Alを0〜14.9%、MgO 0〜0.4%、BaO 0〜14.6%、TiO 0〜2.1%、Bi 0〜54.3%、PbO 0〜86.1%、である。
E、Kcおよびαはいずれも電極被覆ガラスそのものの物性値であってガラスペーストのビヒクル構成や焼成条件の影響は受けない。したがって、このようなH/Hを推定する方法においては先に述べたようなHの測定における問題はない。
Kcはたとえば次のようにして測定する。
溶融ガラスをステンレス鋼製の型枠に流し込み、徐冷する。
徐冷されたガラスを板状ガラスに加工し、その一方の表面を鏡面研磨した後残留応力を除去するための徐冷(精密徐冷)を行い、典型的な大きさが50mm×50mm、厚みが10mmであるガラス試験片を得る。なお、精密徐冷はガラスのガラス転移点をTgとしてたとえばTg〜(Tg+20℃)に1時間保持した後、室温まで1℃/分程度の降温速度で冷却することによって行う。
このガラス試験片を用いてJIS R 1607−1995「ファインセラミックスの破壊靱性試験方法5.IF法」(圧子圧入法)に準じてKcを測定する。すなわち、ビッカース硬度試験機を使用し、相対湿度が35%以下のグローブボックス内でガラス試験片表面にビッカース圧子を15秒間押し込み、圧痕の対角線長さと亀裂長さを当該試験機付属の顕微鏡を用いて測定する。押し込み荷重と圧痕の対角線長さからビッカース硬度(Hv)を求め、亀裂長さとHvとEと押し込み荷重とからKcを算出する。押し込み荷重は、たとえば100g〜2kgとする。
αはたとえば次のようにして測定する。
徐冷されたガラスを長さ20mm、直径5mmの円柱状に加工し、石英ガラスを標準試料としてブルカーエイエックスエス社製水平示差検出方式熱膨張計TD5010SA−Nを用いて50〜350℃における平均線膨張係数αを測定する。
Eはたとえば次のようにして測定する。
徐冷されたガラスを厚み10mmの板状に加工し、JIS R 1602−1995「ファインセラミックスの弾性率試験方法 5.3超音波パルス法」により弾性率Eを測定する。
H/Hは次のようにして測定する。
典型的には大きさが100mm×100mm、厚みが2.8mmであるガラス基板を製造粒度が#1500である耐水研磨紙の上に置き、そのガラス基板の上面の10cmの高さから22gのステンレス鋼製球を落下させる。このステンレス鋼製球の落下によってガラス基板が割れないときは落下高さを10mm高くしてステンレス鋼製球を落下させる。ガラス基板が割れるまで落下高さを10mm刻みで高くしてステンレス鋼製球を落下させる。
このようなガラス基板破壊試験を5回繰り返し、得られた破壊高さの平均値をHとする。
Hはガラス基板の一方の表面が電極被覆ガラスによって被覆されているガラス層付きガラス基板について、Hと同様にして測定された破壊高さの平均値である。
すなわち、電極被覆ガラスによって被覆されている表面を下にして前記耐水研磨紙の上に置く以外はH測定と同様にしてガラス層付きガラス基板破壊試験を5回繰り返し、得られた破壊高さの平均値をHとする。
前記ガラス層付きガラス基板は次のようにして作製される。
電極被覆ガラスの粉末100gを、α−テルピネオール等にエチルセルロースを10質量%溶解した有機ビヒクル25gと混練してガラスペーストを作製し、大きさが100mm×100mmであるガラス基板上に、焼成後の膜厚が20μmとなるよう均一にスクリーン印刷し、120℃で10分間乾燥する。その後、このガラス基板を昇温速度毎分10℃で電極被覆ガラスのTsまたは(Ts−50℃)〜Tsの範囲の温度まで加熱してその温度に30分間保持して焼成を行い、ガラス基板上に電極被覆ガラス層を形成してガラス層付きガラス基板とする。
本発明によれば、PDP前面基板等の強度を低下させることなくPDP前面基板製造に際して行われる焼成後のガラス基板の反りを小さくすることが可能になる、またはPDP前面基板等の強度を高くすることが可能になる。
また、本発明の好ましい態様によれば低誘電率の電極被覆用ガラスが得られ、たとえばPDPの消費電力を低減することが可能になる。また、これをたとえばPDP背面基板のアドレス電極の被覆に用いれば、誘電率の高い酸化チタン粉末をアドレス電極被覆ガラス層に含有させてその反射率を高くしながらその誘電率の増大を少なくすることが可能になる。
本発明はガラス基板のαすなわちαが78×10−7〜88×10−7/℃、特に80×10−7〜86×10−7/℃である場合に好適である。
本発明のガラスは通常、粉砕後分級して粉末化されて電極被覆に用いられる。
ガラスペーストを用いて電極被覆を行う場合、粉末化された本発明のガラス(以下、本発明のガラス粉末という。)はビヒクルと混練されガラスペーストとされる。このガラスペーストは、たとえば透明電極等の電極が形成されているガラス基板に塗布、焼成され、当該透明電極を被覆するガラス層が形成される。
グリーンシートを用いて電極被覆を行う場合、本発明のガラス粉末は樹脂と混練され、得られた混練物はポリエチレンフィルム等の支持フィルムの上に塗布されてグリーンシートとされる。このグリーンシートはたとえばガラス基板上に形成された電極上に転写後、焼成され、当該電極を被覆するガラス層が形成される。
なお、PDP前面基板の製造においてはこれら焼成は典型的には600℃以下の温度で行われる。また、このようにしてガラス層が形成されたガラス基板は本発明のガラス基板である。
本発明のガラス粉末の平均粒径(D50)は0.5μm以上であることが好ましい。0.5μm未満では粉末化に要する時間が長くなりすぎるおそれがある。より好ましくは0.7μm以上である。また、前記平均粒径は4μm以下であることが好ましい。より好ましくは3μm以下である。
本発明のガラス粉末の最大粒径は20μm以下であることが好ましい。20μm超では、厚みを通常30μm以下とすることが求められるPDP前面基板の電極被覆ガラス層(透明誘電体層)の形成に用いようとするとそのガラス層の表面に凹凸が発生し、PDPの画像がゆがむおそれがある。より好ましくは10μm以下である。
本発明のガラスのTsは630℃以下であることが好ましい。630℃超では600℃以下の温度での焼成によっては透過率の高いガラス層を得にくくなる。より好ましくは620℃以下、典型的には615℃以下または610℃以下である。
また、Tsは500℃以上であることが好ましい。Tsが500℃未満であると、焼成工程においてガラスペーストまたはグリーンシートに含まれる樹脂成分が十分に分解されないおそれがある。
PDPの消費電力を小さくしたいなどの場合、本発明のガラスの1MHzにおける比誘電率(ε)は8.5以下であることが好ましい。より好ましくは7以下、特に好ましくは6.4以下である。
本発明のガラスのKcは0.74MPa・m1/2以上であることが好ましい。より好ましくは0.76MPa・m1/2以上、特に好ましくは0.78MPa・m1/2以上である。Kcはガラスの材料強度に関わる物性値であって電極被覆ガラス層の強度を支配する重要な要素であり、さらにはこの電極被覆ガラス層が表面に形成されたガラス基板、たとえば本発明のガラス基板または本発明のPDPにおける前面基板の強度を支配する重要な要素となる。
PDP前面基板の破壊は、PDP前面基板に衝撃が加わって基板が撓んだときに背面基板上に形成された隔壁と部分的に接している電極被覆ガラス層がその隔壁に衝突して傷つくことによって起こると考えられるが、本発明のガラスのKcはたとえば0.74MPa・m1/2以上であるので電極被覆ガラス層が上記のように傷ついても破壊にまで至ることは少ないと考えられる。
本発明のガラスのEは典型的には55〜80GPaであり、75GPa以下であることがより好ましい。
PDP前面基板の破壊は先に述べたように背面基板上の隔壁と電極被覆ガラス層が衝突して傷つくことによって起こると考えられるが、このとき電極被覆ガラス層のEが小さいほど衝突による衝撃が吸収され、傷つきにくくなると考えられる。本発明のガラスのEはたとえば80GPa以下であるので、衝突時に傷が生じにくく破壊に至ることが少ないと考えられる。
電極被覆層を構成するガラスの材料強度はKc等が支配するが、電極被覆ガラス層付きガラス基板では、電極被覆ガラス層を形成するための焼成工程の後に室温まで冷却する過程で、ガラス基板のαすなわちαと電極被覆ガラス層のαとの違いによって応力が発生し、それによって電極被覆ガラス層の強度が高くなり、または低くなる。すなわち、電極被覆ガラス層のαがαよりも小さいときは電極被覆ガラス層の表面には圧縮応力が加わって電極被覆ガラス層の強度が高くなり、αがαよりも大きいときは引っ張り応力が加わって電極被覆ガラス層の強度が低くなる。
αが80×10−7〜86×10−7/℃である場合、本発明のガラスのαは65×10−7〜90×10−7/℃であることが好ましい。90×10−7/℃超であるとガラス基板上の電極被覆に用いたときに電極被覆ガラス層付き基板の強度が低下する。より好ましくは85×10−7/℃以下である。また、αが65×10−7/℃未満であると、ガラス基板のαすなわちαとの差によって生じる応力が大きくなりすぎて、基板の変形や破壊が生じるおそれがある。より好ましくは67×10−7/℃以上である。ガラス基板との界面に生じる応力をより小さくしたい場合にはαは70×10−7/℃〜85×10−7/℃とすることが好ましい。強度をより高くしたい場合には65×10−7/℃〜80×10−7/℃とすることがより好ましい。
本発明のガラス1は典型的には、下記酸化物基準の質量百分率表示で、B 30〜50%、SiO 30%超35%以下、ZnO 10〜20%、LiO+NaO+KO 9〜19%、Al 0〜5%、から本質的になり、LiOおよびNaOの少なくともいずれか一方とKOとを含有し、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる1種以上の成分を含有する場合それら含有量の合計は5%以下であり、LiO、NaO、KOの各モル分率をl、n、kとしてlが0.025以下、l+n+kが0.09〜0.17である。
この典型的な態様を例にして本発明のガラス1の成分等について以下で説明する。なお、モル分率はモル百分率表示含有量を100で除したものである。
はガラスを安定化させる、またはTsを下げる成分であり、必須である。また、εを下げる効果を有する。30%未満ではガラス化が困難となる。好ましくは32%以上、より好ましくは35%以上である。50%超では分相が起こりやすくなる。または化学的耐久性が低下する。好ましくは45%以下、典型的には42%以下である。
SiOはガラスの骨格をなす成分であり、必須である。また、εを下げる効果を有する。30%以下では反りが大きくなりやすい。これはガラスの骨格成分が少なくなって電極被覆ガラスとガラス基板との間でアルカリ金属イオン交換が生じやすくなるためと考えられる。典型的には30.1%以上である。35%超ではTsが高くなる。好ましくは33%以下である。
ZnOはTsを下げ、αを小さくする成分であり、必須である。10%未満ではαが大きくなるおそれがある。好ましくは12%以上である。20%超ではガラスが不安定になりやすい。また、εが大きくなりすぎるおそれがある。好ましくは17%以下である。
なお、ZnOのモル分率は典型的には0.20未満である。
LiO、NaOおよびKOはいずれもガラス化しやすくする、またはTsを下げる成分であるが、αを大きくし、Kcを下げ、またεを大きくする成分でもある。
このうちLiOおよびNaOの少なくともいずれか一方を含有する。LiOおよびNaOのいずれも含有しないものであるとTsが高くなる、または反りが大きくなる。
LiOを含有する場合そのモル分率lは0.025以下である。0.025超ではガラス層が形成されていない側に凸となる反りが大きくなる。これは、電極被覆ガラス層とガラス基板との間で起こるアルカリ金属イオン交換においてイオン半径の小さいLiイオンがガラス基板表面に侵入することによりその電極被覆ガラス層と接しているガラス基板表面が収縮するためと考えられる。好ましくはl/(l+n+k)が0.2以下である。
NaOは7%以下の範囲で含有することが好ましい。7%超であると反りが大きくなるおそれ、またはKcが低下するおそれがある。より好ましくは6%以下である。
Oは反りを小さくする成分であり、必須である。
Kイオンはイオン半径が大きく他のアルカリ金属イオンより移動しにくいので、KOを含有することによりアルカリ金属イオン交換が進みにくくなると考えられる。KOは2%以上含有することが好ましく、5%以上含有することがより好ましい。
しかし、アルカリ金属成分としてKOのみを含有するものであるとガラス基板の一方の面にガラス層を形成したときにガラス層が形成されている側に凸となる反りが生じる。これは、イオン半径の大きいKイオンがガラス基板表面に侵入することによりその電極被覆ガラス層と接しているガラス基板表面が膨張するためと考えられる。
LiO、NaOおよびKOの含有量の合計ROが9%未満、l+n+kが0.09未満ではTsが高くなる。典型的にはROは12%以上、l+n+kが0.1以上である。ROが19%超、l+n+kが0.17超ではαが大きくなる。またKcが小さくなる。好ましくはROが17%以下、l+n+kが0.15以下である。
Alは必須ではないが、ガラスの安定性を高める、Kcを大きくする、等のために5%以下の範囲で含有してもよい。5%超では銀電極を被覆したときに銀が電極被覆ガラス中に拡散して発色する現象(銀発色)が生じやすくなる。3%以下であることが好ましい。銀発色の防止をはかりたい場合、Alは好ましくは1%未満であり、含有しないことがより好ましい。
なお、Alのモル分率は典型的には0.04未満である。
、SiOおよびAlの含有量の合計は62%以上であることが好ましい。62%未満であるとKcが小さくなるおそれがある。前記合計は典型的には69%以上である。
本発明のガラス1の典型的な態様は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。その場合における上記成分以外の成分の含有量の合計は好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、典型的には5%以下である。このような成分の代表的なものについて以下に説明する。
MgO、CaO、SrOおよびBaOはいずれも必須ではないが、ガラスを安定化する、αを小さくする等の効果を有する場合があり、そのような目的のためにこれら4成分のいずれか1種以上をそれらの含有量の合計が5%以下の範囲で含有してもよい。5%超ではKcが小さくなるおそれがある。より好ましくは3%以下である。なお、前記4成分の各モル分率の合計は典型的には0.05未満である。
BaOを含有する場合その含有量は1%以下であることが好ましい。1%超ではKcが低下するおそれがある。Kcをより大きくしたい場合にはBaOは含有しないことが好ましい。
焼成時における脱バインダが不足して焼成後のガラス中にカーボンが残留してそのガラスが着色する現象を抑制したい場合などにはCuO、CeOまたはCoOをこれら3成分の含有量合計が3%まで含有してもよい場合がある。前記合計が3%超ではガラスの着色がかえって顕著になる。典型的には1.5%以下である。
これら3成分のいずれかを含有する場合、CuOを1.5%以下の範囲で含有することが典型的である。
焼結性向上等のためにBiを5%まで含有してもよい場合があるが、Biには資源問題等が存在するのでこの観点からはBiは含有しないものとすることが好ましい。
α、Ts、化学的耐久性、ガラスの安定性、ガラス被覆層の透過率などの調整、銀発色現象の抑制などの目的で添加してもよい成分として、TiO、ZrO、SnO、MnO等の成分が例示される。
なお、本発明のガラス1はPbOを含有しない。
本発明のガラス1は、反りを小さくしたい、銀発色を抑制したい場合などに好ましいものである。
本発明のガラス2は典型的には、下記酸化物基準の質量百分率表示で、B 35〜50%、SiO 25%超30%以下、ZnO 10〜25%、LiO+NaO+KO 7〜17%、Al 0〜5%、から本質的になり、LiOおよびNaOの少なくともいずれか一方とKOとを含有し、B+SiOが60%以上であり、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる1種以上の成分を含有する場合それら含有量の合計は5%以下であり、LiO、NaO、KOの各モル分率をl、n、kとしてlが0.025以下、l+n+kが0.07〜0.15である。
この典型的な態様を例にして本発明のガラス2の成分等について以下に説明する。なお、モル分率はモル百分率表示含有量を100で除したものである。
はガラスを安定化させる、またはTsを下げる成分であり、必須である。また、εを下げる効果を有する。35%未満ではガラス化が困難となる。好ましくは37%以上であり、ZnOが15%未満の場合にはBは40%以上であることが好ましい。50%超では分相が起こりやすくなる、または化学的耐久性が低下する。ZnOが15%以上の場合などにはBは45%以下であることが好ましい。Bは典型的には42%以下である。
εを小さくしたい場合などにはBは44%以上であることが好ましい。
SiOはガラスの骨格をなす成分であり、必須である。また、εを下げる効果を有する。25%以下ではKcが小さくなるおそれがある、または反りが大きくなりやすい。反りが大きくなるのはガラスの骨格成分が少なくなって電極被覆ガラスとガラス基板との間でアルカリ金属イオン交換が生じやすくなるためと考えられる。典型的には25.1%以上である。30%超ではTsが高くなる。好ましくは29%以下である。
およびSiOの含有量の合計が60%未満ではKcが低下するおそれがある。典型的には64%以上である。
ZnOはTsを下げ、αを小さくする成分であり、必須である。10%未満ではαが大きくなるおそれがある。好ましくは11%以上である。
αを小さくしたい場合にはZnOは15%以上とすることが好ましく、より好ましくは17%以上である。25%超ではガラスが不安定になりやすい、焼成時に結晶が析出しやすくなる、またはεが大きくなるおそれがある。好ましくは24%以下である。
ガラスの安定性をより高めたい場合にはZnOは15%未満とすることが好ましい。
LiO、NaOおよびKOはいずれもガラス化しやすくし、またTsを下げる成分であるが、αを大きくし、Kcを下げ、またはεを大きくする成分でもある。
このうちLiOおよびNaOの少なくともいずれか一方を含有する。LiOおよびNaOのいずれも含有しないものであるとTsが高くなる、または反りが大きくなる。
LiOを含有する場合そのモル分率lは0.025以下である。0.025超ではガラス層が形成されていない側に凸となる反りが大きくなる。これは、電極被覆ガラス層とガラス基板との間で起こるアルカリ金属イオン交換においてイオン半径の小さいLiイオンがガラス基板表面に侵入することによりその電極被覆ガラス層と接しているガラス基板表面が収縮するためと考えられる。好ましくはl/(l+n+k)が0.2以下である。
NaOは7%以下の範囲で含有することが好ましい。7%超であると反りが大きくなるおそれ、またはKcが低下するおそれがある。より好ましくは6%以下である。
Oは反りを小さくする成分であり、必須である。
Kイオンはイオン半径が大きく他のアルカリ金属イオンより移動しにくいので、KOを含有することによりアルカリ金属イオン交換が進みにくくなると考えられる。KOは2%以上含有することが好ましく、5%以上含有することがより好ましい。
しかし、アルカリ金属成分としてKOのみを含有するものであるとガラス基板の一方の面にガラス層を形成したときにガラス層が形成されている側に凸となる反りが生じる。これは、イオン半径の大きいKイオンがガラス基板表面に侵入することによりその電極被覆ガラス層と接しているガラス基板表面が膨張するためと考えられる。
LiO、NaOおよびKOの含有量の合計ROが7%未満、またはl+n+kが0.07未満ではTsが高くなる。典型的にはROは8%以上、l+n+kが0.09以上である。ROが17%超、l+n+kが0.15超ではαが大きくなる。またKcが小さくなる。好ましくはROが16%以下、l+n+kが0.14以下である。l+n+kは典型的には0.13以下である。
ZnO含有量が15%未満である場合にはROは10%以上であることが好ましい。10%未満であるとTsが高くなるおそれがある。
ZnO含有量が15%以上である場合にはROは14%以下であることが好ましい。14%超であるとKcが低下するおそれがある。この好ましい態様はαを小さくしたい場合などに好適である。
Alは必須ではないが、ガラスの安定性を高める、Kcを大きくする、等のために5%以下の範囲で含有してもよい。5%超では銀電極を被覆したときに銀が電極被覆ガラス中に拡散して発色する現象(銀発色)が生じやすくなる。3%以下であることが好ましい。銀発色の防止をはかりたい場合、Alは好ましくは1%未満であり、含有しないことがより好ましい。
なお、Alのモル分率は典型的には0.04未満である。
、SiOおよびAlの含有量の合計は62%以上であることが好ましい。62%未満であるとKcが小さくなるおそれがある。前記合計は典型的には69%以上である。
本発明のガラス2の典型的な態様は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。その場合における上記成分以外の成分の含有量の合計は好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、典型的には5%以下である。このような成分の代表的なものについて以下に説明する。
MgO、CaO、SrOおよびBaOはいずれも必須ではないが、ガラスを安定化する、αを小さくする等の効果を有する場合があり、そのような目的のためにこれら4成分のいずれか1種以上をそれらの含有量の合計が5%以下の範囲で含有してもよい。5%超ではKcが小さくなるおそれがある。より好ましくは3%以下である。なお、前記4成分の各モル分率の合計は典型的には0.05未満である。
BaOを含有する場合その含有量は1%以下であることが好ましい。1%超ではKcが低下するおそれがある。Kcをより大きくしたい場合にはBaOは含有しないことが好ましい。
焼成時における脱バインダが不足して焼成後のガラス中にカーボンが残留してそのガラスが着色する現象を抑制したい場合などにはCuO、CeOまたはCoOをこれら3成分の含有量合計が3%まで含有してもよい場合がある。前記合計が3%超ではガラスの着色がかえって顕著になる。典型的には1.5%以下である。
これら3成分のいずれかを含有する場合、CuOを1.5%以下の範囲で含有することが典型的である。
焼結性向上等のためにBiを5%まで含有してもよい場合があるが、Biには資源問題等が存在するのでこの観点からはBiは含有しないものとすることが好ましい。
α、Ts、化学的耐久性、ガラスの安定性、ガラス被覆層の透過率などの調整、銀発色現象の抑制などの目的で添加してもよい成分として、TiO、ZrO、SnO、MnO等の成分が例示される。
なお、本発明のガラス2はPbOを含有しない。
本発明のガラス2は、電極被覆ガラス層の透過率を低下させずに強度を高めたいという場合などに好ましいものである。
次に、本発明のガラス3の成分等について以下に説明する。なお、モル分率はモル百分率表示含有量を100で除したものである。
ガラスを安定化させる、Kcを大きくする、Eを小さくする、またはεを下げる成分であり、必須である。43%未満ではEが大きくなり、強度が低下しやすい。好ましくは44%以上である。50%超では分相が起こりやすくなる、または化学的耐久性が低下する。
SiOはガラスの骨格をなす成分であり、必須である。Kcを大きくする、またはεを下げる効果も有する。25%以下ではKcが小さくなるおそれがある、または反りが大きくなりやすい。反りが大きくなりやすくなるのはガラスの骨格成分が少なくなって電極被覆ガラスとガラス基板との間でアルカリ金属イオン交換が生じやすくなるためと考えられる。33%超ではTsが高くなる。好ましくは32%以下、典型的には29%以下である。
およびSiOの含有量の合計が70%未満ではKcが低下するおそれがある。
ZnOはTsを下げ、αを小さくする成分であり、必須である。ZnOはEを大きくする成分であるが、εを大きくする成分でもある。10%未満ではαが大きくなるおそれがある。好ましくは11%以上である。23%超ではEが大きくなる。好ましくは19%以下である。εを小さくしたい場合には、より好ましくは15%以下である。
LiO、NaOおよびKOはいずれもガラス化しやすくし、またはTsを下げる成分であるが、αを大きくし、Kcを下げ、またはEを大きくする成分であるが、強度を下げ、またはεを大きくする成分でもある。
このうち、KOは反りを小さくする効果を有する成分であり、必須である。KOが4%未満では反りが大きくなるおそれがある。
前記効果は、Kイオンはイオン半径が大きく他のアルカリ金属イオンより移動しにくいので、KOを含有することによりアルカリ金属イオン交換が進みにくくなることによるものと考えられる。
しかし、アルカリ金属成分としてKOのみを含有するものであるとガラス基板の一方の面にガラス層を形成したときにガラス層が形成されている側に凸となる反りが生じる。これは、イオン半径の大きいKイオンがガラス基板表面に侵入することによりその電極被覆ガラス層と接しているガラス基板表面が膨張するためと考えられる。また、KOはεを大きくする成分であり、αを大きくする成分であるので、その含有量は9%以下とされる。
NaOはTsを下げる効果が高く、必須である。2%未満ではそのような効果が不十分となる。5%超であるとαが大きくなる。
LiOはαを小さくしたい場合などに0.5%まで含有することができる。しかし、LiOはEを著しく大きくする成分でもあり、通常は含有しないことが好ましい。
LiOを含有する場合、そのモル分率lは0.025以下である。0.025超ではガラス層が形成されていない側に凸となる反りが大きくなる。これは、電極被覆ガラス層とガラス基板との間で起こるアルカリ金属イオン交換においてイオン半径の小さいLiイオンがガラス基板表面に侵入することによりその電極被覆ガラス層と接しているガラス基板表面が収縮するためと考えられる。好ましくはl/(l+n+k)が0.2以下である。
LiO、NaOおよびKOの含有量の合計ROが7%未満、またはl+n+kが0.07未満ではTsが高くなる。典型的にはROは8%以上、l+n+kが0.08以上である。ROが12%超またはl+n+kが0.17超ではαが大きくなる、Kcが小さくなる、またはEが大きくなる。ROが11%以下またはl+n+kが0.105以下であることが好ましい。より好ましくはROが10%以下、l+n+kが0.1以下である。
Alは必須ではないが、ガラスの安定性を高める、Kcを大きくする、等のために5%まで含有してもよい場合がある。5%超では銀電極を被覆したときに銀が電極被覆ガラス中に拡散して発色する現象(銀発色)が生じやすくなる。3%以下であることが好ましい。銀発色の防止をはかりたい場合、Alは好ましくは1%未満であり、含有しないことがより好ましい。
なお、Alのモル分率は典型的には0.04未満である。
本発明のガラス3は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。その場合における上記成分以外の成分の含有量の合計は好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、典型的には3%以下である。このような成分の代表的なものについて以下に説明する。
CuOは、焼成時の脱バインダが不足して焼成後のガラス中にカーボンが残留してそのガラスが着色する現象を抑制したい場合などに2.5%まで含有してもよい。2.5%超ではガラスの着色がかえって顕著になるおそれがある。典型的には1.5%以下である。
CeOまたはCoOを前記CuO含有と同様の目的で、CuOとこれら2成分の含有量合計が3%以下の範囲で含有してもよい場合がある。前記合計が3%超ではガラスの着色がかえって顕著になる。好ましくは2.5%以下、典型的には1.5%以下である。
α、Ts、化学的耐久性、ガラスの安定性、ガラス被覆層の透過率などの調整、銀発色現象の抑制などの目的で添加してもよい成分として、TiO、ZrO、SnO、MnO等の成分が例示される。これらのいずれかを含有する場合、ZrOを3%以下の範囲で含有することが典型的である。
なお、本発明のガラス3はPbOを含有しない。
本発明のガラス3はεを小さくしたい場合、強度を高くしたい場合などに好ましいものである。
本発明のガラスセラミックス組成物は典型的にはPDP背面基板のアドレス電極の被覆に用いられる。
本発明のガラスセラミックス組成物の成分、含有量について以下に説明する。
無鉛ガラスの粉末は電極被覆層の主成分であり、必須である。典型的な含有量は質量百分率表示で90〜99.9%である。
この無鉛ガラスは本発明のガラスであるが、その成分、質量百分率表示含有量について以下に説明する。
はガラスを安定化させる、Tsを下げる、またはεを下げる成分であり、必須である。30%未満ではガラス化が困難となる。好ましくは32%以上、より好ましくは35%以上である。50%超では分相が起こりやすくなる、または化学的耐久性が低下する。好ましくは45%以下、典型的には42%以下である。
SiOはガラスの骨格をなす成分であり、εを下げる成分でもあり、必須である。25%以下ではεが大きくなりやすい。典型的には26%超である。33%超ではTsが高くなる。好ましくは32%以下である。
ZnOはTsを下げ、αを小さくする成分であり、必須である。10%未満ではαが大きくなるおそれがある。好ましくは12%以上である。25%超ではガラスが不安定になりやすい、またはεが大きくなりすぎるおそれがある。好ましくは20%以下、典型的には18%以下である。
なお、ZnOのモル分率は典型的には0.20未満である。
LiO、NaOおよびKOはいずれもガラス化しやすくする、またはTsを下げる成分であるが、αを大きくし、またKcを下げる成分であり、εを大きくする成分でもある。
このうちLiOおよびNaOの少なくともいずれか一方を含有する。LiOおよびNaOのいずれも含有しないものであるとTsが高くなる、または反りが大きくなる。
LiOを含有する場合そのモル分率lは0.025以下である。0.025超ではガラス層が形成されていない側に凸となる反りが大きくなる。これは、電極被覆ガラス層とガラス基板との間で起こるアルカリ金属イオン交換においてイオン半径の小さいLiイオンがガラス基板表面に侵入することによりその電極被覆ガラス層と接しているガラス基板表面が収縮するためと考えられる。好ましくはl/(l+n+k)が0.2以下である。
NaOは7%以下の範囲で含有することが好ましい。7%超であると反りが大きくなるおそれ、またはKcが低下するおそれがある。より好ましくは6%以下である。
Oは銀発色を抑制する成分であり、銀発色を抑制したい場合には必須である。
Kイオンはイオン半径が大きく他のアルカリ金属イオンより移動しにくいので、KOを含有することにより銀イオンとアルカリ金属イオンのイオン交換が進みにくくなると考えられる。KOは2%以上含有することが好ましく、5%以上含有することがより好ましい。
LiO、NaOおよびKOの含有量の合計ROが10%未満またはl+n+kが0.08未満ではTsが高くなる。好ましくはROは12%以上、l+n+kが0.1以上である。ROは15%以上、l+n+kが0.12以上であることがより好ましい。ROが19%超またはl+n+kが0.17超ではαが大きくなる、またはKcが小さくなる。好ましくはROが17%以下、l+n+kが0.15以下である。
Alは必須ではないが、ガラスの安定性を高める、Kcを大きくする、等のために5%以下の範囲で含有してもよい。5%超では銀発色が生じやすくなる。3%以下であることが好ましい。銀発色の防止をはかりたい場合、Alは好ましくは1%未満であり、含有しないことがより好ましい。
なお、Alのモル分率は典型的には0.04未満である。
MgO、CaO、SrOおよびBaOはいずれも必須ではないが、ガラスを安定化する、αを小さくする等の効果を有する場合があり、そのような目的のためにこれら4成分のいずれか1種以上をそれらの含有量の合計が5%以下の範囲で含有してもよい。5%超ではKcが小さくなるおそれがある。より好ましくは3%以下である。なお、前記4成分の各モル分率の合計は典型的には0.05未満である。
BaOを含有する場合その含有量は1%以下であることが好ましい。1%超ではKcが低下するおそれがある。Kcをより大きくしたい場合にはBaOは含有しないことが好ましい。
本発明のガラスセラミックス組成物に用いられる無鉛ガラスの典型的な態様は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。その場合における上記成分以外の成分の含有量の合計は好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、典型的には5%以下である。このような成分の代表的なものについて以下に説明する。
焼成時における脱バインダが不足して焼成後のガラス中にカーボンが残留してそのガラスが着色する現象を抑制したい場合などにはCuO、CeOまたはCoOをこれら3成分の含有量合計が3%まで含有してもよい場合がある。前記合計が3%超ではガラスの着色がかえって顕著になる。典型的には1.5%以下である。
これら3成分のいずれかを含有する場合、CuOを1.5%以下の範囲で含有することが典型的である。
焼結性向上等のためにBiを5%まで含有してもよい場合があるが、Biには資源問題等が存在するのでこの観点からはBiは含有しないものとすることが好ましい。
α、Ts、化学的耐久性、ガラスの安定性、ガラス被覆層の透過率などの調整、銀発色現象の抑制などの目的で添加してもよい成分として、TiO、ZrO、SnO、MnO等の成分が例示される。
なお、この無鉛ガラスのTsは600℃以下、εは7.0以下であることが好ましい。
酸化チタンの粉末は電極被覆層の反射率を高くする成分であり、典型的な含有量は質量百分率表示で0.1〜10%である。
ガラス基板の一方の面上に本発明のガラスからなるガラス層を形成したガラス層付きガラス基板のH/Hは1.2以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上である。
また、このようなガラス層付きガラス基板のSは1.4以上であることが好ましく、より好ましくは1.7以上である。
大きさが100mm×100mm、厚みが2.8mmであるガラス基板の一方の面上に本発明のガラスからなるガラス層を形成したガラス層付きガラス基板の反りWは−50〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは−30〜30μmである。なお、本明細書でたとえば反りが大きいという場合反りが凹状であるか凸状であるかを問題とせずWの絶対値が大きい、の意である。
Wの測定は次のようにして行う。すなわち、前記Hの測定に用いられたものと同じガラス層付きガラス基板を作製し、この対角線上の長さ100mmの部分について表面粗さ計を用いて反りを測定した。なお、ガラス層が形成されている側に凸となっている場合にWを負とする。
本発明のガラス基板としてはPDP前面基板が典型的であり、この場合、本発明のガラスによって被覆される電極はITO等の透明電極およびその表面の一部に形成される銀電極、Cr―Cu―Cr電極等のバス電極などである。
本発明のガラス基板の製造方法はPDP前面基板の製造方法として好適であり、この場合、前面基板電極の被覆ガラスとして本発明のガラスを用いる以外は周知の製造方法と同様にしてよい。
本発明のガラス基板の製造方法はPDP背面基板の製造方法にも適用でき、この場合、アドレス電極など背面ガラス基板電極の被覆ガラスとして本発明のガラスを用いる以外は周知の製造方法と同様にしてよい。
本発明のPDPは前面基板電極またはアドレス電極など背面基板電極の被覆ガラスとして本発明のガラスを用いる以外は周知のPDPと同様のものでよく、その製造も前面基板電極または背面基板電極の被覆ガラスとして本発明のガラスを用いる以外は周知の製造方法によって行える。
表1のBからCuOまでの欄に質量百分率表示で示した組成となるように原料を調合、混合した。これを、白金坩堝を用いて1250℃にそれぞれ加熱し60分間溶融した。例1〜8は本発明のガラス1の実施例、例9〜10は比較例である。なお、表2には各ガラスのモル百分率表示組成を示す。
得られた溶融ガラスの一部をステンレス鋼製ローラーに流し込んでフレーク化した。得られたガラスフレークをアルミナ製のボールミルで16時間乾式粉砕後、気流分級を行い、D50が2〜4μmであるガラス粉末を作製した。
このガラス粉末を試料として示差熱分析装置(DTA)を用いてTs(単位:℃)を測定した。
また、残った溶融ガラスをステンレス鋼製の型枠に流し込み、徐冷した。
徐冷されたガラスの一部を長さ20mm、直径5mmの円柱状に加工し、石英ガラスを標準試料としてブルカーエイエックスエス社製水平示差検出方式熱膨張計TD5010SA−Nを用いてこのガラスのαを測定した。結果を表に示す(単位:10−7/℃)。
また、徐冷されたガラスの一部を用いて作製した厚さ約3mmの板状試料の両面に直径38mmの円形の電極を設け、横河ヒューレットパッカード社製LCRメーター4192Aを使用して1MHzにおける比誘電率εを測定した。結果を表に示す。なお、表中の「−」は測定をしなかったことを示す。
徐冷されたガラスの他の部分を厚み10mmの板状に加工し、JIS R 1602−1995「ファインセラミックスの弾性率試験方法 5.3超音波パルス法」により弾性率E(単位:GPa)を測定した。
また、板状に加工した前記ガラスの片面を鏡面研磨し、残留応力を除去するため500〜520℃に1時間保持して徐冷した試験片を用いて、先に述べた方法によってKc(単位:MPa・m1/2)を測定した。ただしビッカース圧子の押し込み加重は亀裂の生成しやすさと亀裂の大きさに応じて選択し、例1、3〜6、8では2kg、例2では300g、例9、10では200gとして測定した。
また、前記ガラス粉末100gを、α−テルピネオール等にエチルセルロースを10質量%溶解した有機ビヒクル25gと混練してガラスペーストを作製し、大きさが100mm×100mm、厚みが2.8mmである前記従来ガラス基板上に、焼成後の膜厚が20μmとなるよう均一にスクリーン印刷し、120℃で10分間乾燥した。その後、このガラス基板を昇温速度毎分10℃で570℃まで加熱してその温度に30分間保持して焼成を行い、ガラス基板上にガラス層を形成した。
このガラス層付きガラス基板の対角線上の長さ100mmの部分について、その反りW(単位:μm)を表面粗さ計を用いて測定した。
このようにして得られたE、Kc、αの値とガラス基板のαの値を用いて前記Sを計算した。
また、このガラス層付きガラス基板についてHを測定し、別に測定したHの値を用いてH/Hを計算した。
測定または計算結果を表に示す。表中の「−」は測定または計算をしなかったことを示す。
Figure 0005169440
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表3、4のBからAlまたはCuOまでの欄に質量百分率表示で示した組成となるように原料を調合、混合した。これを、白金坩堝を用いて1250℃にそれぞれ加熱し60分間溶融した。例11〜27は本発明のガラス2または3の実施例、例28〜33は比較例である。なお、例29は例10と同じであり、例18、20、26のガラスは溶融せず、それらのTs、Kc、S、Wは組成から計算によって推定した。また、表5、6には各ガラスのモル百分率表示組成を示す。
得られた溶融ガラスの一部をステンレス鋼製ローラーに流し込んでフレーク化した。得られたガラスフレークをアルミナ製のボールミルで16時間乾式粉砕後、気流分級を行い、D50が2〜4μmであるガラス粉末を作製した。
このガラス粉末を試料として示差熱分析装置(DTA)を用いてTs(単位:℃)を測定した。
また、残った溶融ガラスをステンレス鋼製の型枠に流し込み、徐冷した。
徐冷されたガラスの一部を長さ20mm、直径5mmの円柱状に加工し、石英ガラスを標準試料としてブルカーエイエックスエス社製水平示差検出方式熱膨張計TD5010SA−Nを用いてこのガラスのαを測定した。結果を表に示す(単位:10−7/℃)。
徐冷されたガラスの他の部分を厚み10mmの板状に加工し、JIS R 1602−1995「ファインセラミックスの弾性率試験方法 5.3超音波パルス法」により弾性率E(単位:GPa)を測定した。
また、板状に加工した前記ガラスの片面を鏡面研磨し、残留応力を除去するため500〜520℃に1時間保持して徐冷した試験片を用いて、先に述べた方法によってKc(単位:MPa・m1/2)を測定した。ただしビッカース圧子の押し込み加重は亀裂の生成しやすさと亀裂の大きさに応じて選択し、例11、12、14〜16、30では1kg、例17、19、21〜23、28では2kg、例29、31、32、33では200gとして測定した。
また、前記ガラス粉末100gを、α−テルピネオール等にエチルセルロースを10質量%溶解した有機ビヒクル25gと混練してガラスペーストを作製し、大きさが100mm×100mm、厚みが2.8mmである従来ガラス基板上に、焼成後の膜厚が20μmとなるよう均一にスクリーン印刷し、120℃で10分間乾燥した。その後、このガラス基板を昇温速度毎分10℃で570℃まで加熱してその温度に30分間保持して焼成を行い、ガラス基板上にガラス層を形成した。
このガラス層付きガラス基板の対角線上の長さ100mmの部分について、その反りW(単位:μm)を表面粗さ計を用いて測定した。
このようにして得られたE、Kc、αの値とガラス基板のαの値を用いて前記Sを計算した。
また、このガラス層付きガラス基板についてHを測定し、別に測定したHの値を用いてH/Hを計算した。
測定または計算結果を表に示す。表中の「−」は測定または計算をしなかったことを示す。
例28、29、31、32は反り(Wの絶対値)が大きく、また、例30はTsが高く従来ガラス基板を用いてのPDP前面基板の製造が困難である。
Figure 0005169440
Figure 0005169440
Figure 0005169440
Figure 0005169440
また、表7のBからCoOまでの欄に質量百分率で表示した組成となるように原料を調合、混合し、白金坩堝を用いて1250℃にそれぞれ加熱して60分間溶融し、例34〜40のガラスを得た(表8にはモル百分率表示組成を示す)。
例34、35は実施例、例36〜40は比較例である。
これらガラスのTsを測定し、例34、35、36、40についてはε、Wも測定した。また、α、E、Kcについては組成から推定し、Sをこれら推定値をもとに計算した。
Figure 0005169440
Figure 0005169440
前記例1、例23または例31のガラスの粉末とSiO粉末(アドマテックス社製非晶質シリカ SO−C2)とTiO粉末(石原産業社製 タイペークA−220)とを表9の該当欄に質量百分率で示す組成となるように混合してガラスセラミックス組成物を作製した。例A、Bは本発明のガラスセラミックス組成物、例Cはその較例である。なお、括弧内には各粉末の体積百分率表示含有量を示す。
各ガラスセラミックス組成物100gを、α−テルピネオール等にエチルセルロースを10質量%溶解した有機ビヒクル25gと混練してガラスセラミックスペーストを作製し、大きさが100mm×100mm、厚みが2.8mmである従来ガラス基板上に、焼成後の膜厚が20μmとなるよう均一にスクリーン印刷し、120℃で10分間乾燥した。その後、このガラス基板を昇温速度毎分10℃で570℃まで加熱してその温度に30分間保持して焼成を行った。
このようにして得られたガラスセラミックス層付きガラス基板について分光光度計を用いて560nmにおける全光線反射率(単位:%)をJIS K 7375に準じて測定した。結果を表7に示す。なお、PDP背面基板に用いられる場合全光線反射率は45%以上であることが好ましい。
また、Hを測定し、別に測定したHの値を用いて計算したH/Hを表9に示す。
また、誘電率の測定を以下の方法で行った。すなわちガラス基板上に金ペーストを塗布し、乾燥して下部電極を形成した後、焼成後の膜厚が20μmとなるように前記ガラスセラミックスペーストを均一に塗布して120℃で10分間乾燥した。このガラス基板を昇温速度毎分10℃で570℃まで加熱してその温度に30分間保持して焼成を行った。得られた焼成膜上に、金ペーストをスクリーン印刷し、乾燥して上部電極を形成し、前記焼成膜の誘電率をLCRメーターを用いて測定した。結果を表9に示す。なお、本発明のガラスセラミックス組成物をPDP背面の電極被覆層に用いる場合その誘電率は8.5以下であることが好ましい。
Figure 0005169440
PDP、PDP前面基板、PDP前面基板電極被覆ガラス、PDP背面基板、PDP背面基板電極被覆ガラスなどに利用できる。
ガラス層付きガラス基板の落球強度の計算値と実測値の関係を示す図である。

Claims (6)

  1. ガラス基板上に電極が形成されその電極がガラスによって被覆されている電極付きガラス基板の製造方法であって、下記酸化物基準の質量百分率表示で、B43〜50%、SiOを25%超33%以下、ZnOを10〜23%、Li Oを0〜0.5%、Na Oを2〜5%、K Oを4〜9%、Alを0〜5%含有し、 およびSiO の含有量の合計が70%以上、Li O、Na OおよびK Oの含有量の合計が7〜12%、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる1種以上の成分を含有する場合それら含有量の合計5%以下であり、LiO、NaO、KOの各モル分率をl、n、kとしてlが0.025以下、l+n+kが0.07〜0.17である無鉛ガラスによって電極を被覆する電極付きガラス基板の製造方法。
  2. 前記無鉛ガラスは、CuOを0〜2.5%含有する請求項1の電極付きガラス基板の製造方法。
  3. 前記無鉛ガラスにおけるl/(l+n+k)が0.2以下である請求項1または2の電極付きガラス基板の製造方法。
  4. 前記無鉛ガラスの軟化点が630℃以下である請求項1〜のいずれかの電極付きガラス基板の製造方法。
  5. 前記無鉛ガラスの1MHzにおける比誘電率が8.5以下である請求項1〜のいずれかの電極付きガラス基板の製造方法。
  6. 前記無鉛ガラスは、下記式で求められるSが2.3〜4.2となるガラスである請求項1〜5のいずれかの電極付きガラス基板の製造方法。
    S={13.314×Kc+0.181×(α −α)} /E
    (式中、Eは前記無鉛ガラスの弾性率(GPa)、Kcは前記無鉛ガラスの破壊靱性値(MPa・m 1/2 )、αは前記電極被覆用ガラスの50〜350℃における平均線膨張係数(10 −7 /℃)、α は前記ガラス基板の50〜350℃における平均線膨張係数(10 −7 /℃)である)
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