[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。まず、第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20の構成を図1(A)(B)に基づいて説明する。
図1(A)は、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20の全体構成例を示す構成図である。電気式動力舵取装置20は、主に、ステアリングホイール21、ステアリング軸22、ピニオン軸23、EPSアクチュエータ24、ロッド25、トルクセンサ26、ECU30、輪荷重センサ41b〜44b等から構成されている。
図1に示すように、ステアリングホイール21には、ステアリング軸22の一端側が接続されており、このステアリング軸22の他端側にはトルクセンサ26の入力側が接続されている。またこのトルクセンサ26の出力側には、ピニオン軸23の一端側が接続されている。
トルクセンサ26は、図略のトーションバーとこのトーションバーを挟むようにトーションバーの両端に取り付けられた2つのレゾルバとからなり、トーションバーの一端側を入力、他端側を出力とする入出力間で生じるトーションバーの捻れ量等を当該2つのレゾルバにより検出することで、ステアリングホイール21による操舵トルクTsや操舵角θを検出する。そして、トルクセンサ26は、これら操舵トルクTsや操舵角θに対応した検出信号を生成してECU30へ出力する。
ピニオン軸23の他端側にはEPSアクチュエータ24の入力側が接続されており、このEPSアクチュエータ24は、ピニオン軸23から入力された回転運動を当該ラック・ピニオンギヤなどによってロッド25の軸方向運動に変換して出力すると共に、ECU30によってアシストモータ24aが発生するアシストトルクTmを制御することにより操舵状態に応じたアシスト力を発生させる。
ロッド25の右端部には右前輪41が取り付けられ、ロッド25の左端部には左前輪42が取り付けられている。ロッド25の軸方向運動により操舵輪である右前輪41および左前輪42の実舵角δが可変して、車両の進行方向が変更されるようになっている。なお、本第1実施形態における車両は前輪駆動であり、右前輪41および左前輪42は、車輪駆動装置50、例えば、エンジン等から出力されるトルクにより駆動輪として駆動されて回転する。以下、右前輪41および左前輪42の少なくとも1つを操舵輪ともいう。また、右前輪41および左前輪42に加えて後述する右後輪43および左後輪44を各車輪41〜44ともいう。また、本第1実施形態における車両は四輪駆動であって、各車輪41〜44が駆動輪として駆動されて回転してもよい。
輪荷重センサ41bは、車体と右前輪41との間に介在するアーム41a上であって右前輪41近傍に取り付けられる歪みセンサであり、その取付部分におけるアーム41aの歪みに基づいて右前輪41の輪荷重P1を検出する。また、輪荷重センサ42b〜44bは、輪荷重センサ41bと同様に、車体と、左前輪42、右後輪43、左後輪44との間にそれぞれ介在するアーム42a、43a、44a上に取り付けられ、各取付部分におけるアーム42a、43a、44aの歪みに基づいて左前輪42、右後輪43、左後輪44の輪荷重P2、P3、P4をそれぞれ検出する。各輪荷重センサ41b〜44bは、それぞれ、輪荷重P1〜P4に対応した検出信号を生成してECU30へ出力する。
図1(B)は、ECU30等の構成例を示す回路ブロック図である。ECU30は、主に、A/D変換器等の周辺LSIやメモリ等を備えたMPU(Micro Processor Unit)31、トルクセンサ26等による各種センサ情報等を入出力可能な入出力インタフェイスI/F32、およびMPU31から出力されるモータ電流指令値に基づいてPWM制御によるモータ電流をアシストモータ24aに供給可能なモータ駆動回路33から構成されている。なお、図1(B)に示す符号34は、アシストモータ24aに実際に流れるモータ電流値iを検出し得る電流センサ34であり、この電流センサ34により検出されたモータ電流値iに関するセンサ情報は、モータ電流信号として入出力インタフェイスI/F32を介してMPU31に入力され得るように構成されている。
このように構成することにより、電気式動力舵取装置20では、ステアリングホイール21による操舵トルクTsをトルクセンサ26により検出し、その操舵トルクTsに対応するアシスト力を発生するようにアシストモータ24aをECU30によって制御する。
また、図1(A)に示すように、ECU30には、車輪駆動装置50が電気的に接続されており、当該車輪駆動装置50は、後述するようにECU30から出力される車輪駆動停止信号に応じて右前輪41および左前輪42の回転駆動を停止し、車輪駆動停止解除信号に応じてこの回転駆動の停止を解除する。
また、ECU30には、車速センサ60および警告装置70が電気的に接続されている。車速センサ60は、車両の走行速度(車速V)を検出し、その車速Vに対応した検出信号をECU30へ出力する。警告装置70は、例えば、車室内のインストルメントパネルに設けられており、後述するようにECU30から出力される脱輪復帰可能信号、脱輪復帰不可信号、または、処置情報提示信号に応じた情報をモニタ71に表示する表示告知手段としての役割を果たす。
図2は、脱輪状態である左前輪42を復帰させるために当該左前輪42等に作用させる脱輪復帰力を例示した説明図である。
図2に例示するように、左前輪42が、路面の段差部、例えば、側溝Dに落ち込んで脱輪したとき、その脱輪状態によっては、操舵輪42の側面を側溝Dの側面に向けてアシストモータ24aのアシスト力により十分な力で押圧するとともに、両操舵輪41、42を車輪駆動装置50により駆動させることで、脱輪状態から復帰する可能性がある。しかし、上述の脱輪状態でもモータ保護機能によりアシストトルクが制限されると、脱輪復帰の可能性が低下してしまう。
そこで、本第1実施形態においては、以下に説明する脱輪復帰可能性向上処理により、側溝D等に落ち込んで脱輪した場合にその脱輪状態に応じて脱輪復帰の可否を判定するとともにこの判定結果に応じた処理を行うことにより脱輪復帰の可能性を向上させる。
以下、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理について、図3および図4を用いて説明する。図3および図4は、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理の流れを示すフローチャートである。
まず、図3のステップS101において、各センサにより検出される車速V、輪荷重P1〜P4、モータ電流値iおよび操舵角θ等が読み込まれる。次に、ステップS103において、車速Vが停車していると判断される速度閾値V0以下であるか否かについて判定される。なお、本第1実施形態においては、V0は、例えば、0(ゼロ)km/hに設定されている。
車速Vが速度閾値V0以下でなければ、ステップS103にてNoと判定されてステップS101からの処理が繰り返される。このような状況において、車速Vが速度閾値V0以下になると(S103でYes)、ステップS105において、右前輪41の輪荷重P1が、右前輪41以外の各車輪の輪荷重平均値より大きく設定される輪荷重閾値PA1以上であるか否かについて判定される。ここで、輪荷重閾値PA1は、以下の式(1)により算出される。
PA1=K1×(P2+P3+P4)/3 ・・・(1)
ここで、右前輪41が側溝Dに落ち込んで脱輪して右前輪41の一部が側溝Dの側面等に接触している場合、輪荷重P1は右前輪41以外の各車輪の輪荷重平均値より一定値以上大きくなるため、K1は、例えば、1.1(110%)に設定されている。
上記ステップS105にて輪荷重P1が輪荷重閾値PA1以上である場合には、右前輪41が側溝Dに落ち込んで脱輪していると判定されて(S105でYes)、ステップS109の判定処理がなされる。なお、ステップS105および後述するステップS107における判定処理は、特許請求の範囲に記載の「脱輪判定手段」に相当するものである。
一方、輪荷重P1が輪荷重閾値PA1以上でない場合には(S105でNo)、ステップS107において、左前輪42の輪荷重P2が、左前輪42以外の各車輪の輪荷重平均値より大きく設定される輪荷重閾値PA2以上であるか否かについて判定される。ここで、輪荷重閾値PA2は、以下の式(2)により算出される。
PA2=K2×(P1+P3+P4)/3 ・・・(2)
ここで、K2は、上述したK1と同様に、例えば、1.1(110%)に設定されている。
上記ステップS107にて輪荷重P2が輪荷重閾値PA2以上である場合には、左前輪42が側溝Dに落ち込んで脱輪していると判定されて(S107でYes)、ステップS109の処理がなされる。
一方、輪荷重P2が輪荷重閾値PA2以上でない場合には(S107でNo)、右前輪41および左前輪42が脱輪していないと判定されて、ステップS101からの処理が繰り返される。
上記ステップS105またはステップS107にてYesと判定されると、ステップS109において、モータ電流値iが、アシストモータ24aが過負荷状態であると判断される過負荷電流値io以上であるか否かについて判定される。以下、左前輪42が脱輪している場合について説明する。
ここで、例えば、脱輪直後であり左前輪42の側面が側溝Dの側面に押圧されていない場合には、アシストモータ24aには過剰な負荷は生じていないため、ステップS109にてNoと判定されて、ステップS101からの処理が繰り返される。
このような状況において、脱輪復帰のための操舵により左前輪42の側面が側溝Dの側面に押圧されてアシストモータ24aが過負荷になり、モータ電流値iが過負荷電流値io以上になると、ステップS109にてYesと判定される。
そして、ステップS111において、モータ過負荷保護の停止処理がなされる。この停止処理により、モータ過負荷を回避してアシストモータ24aを保護するための制限が一時的に停止される。なお、上記停止処理においては、上述の制限を停止することなく緩和するようにしてもよい。また、アシストモータ24aを過熱保護するための制限は、停止または緩和されなくてもよい。
次に、ステップS113において、車両の進行方向に対して右前輪41および左前輪42が操舵された角度である実舵角δ(図2参照)が、トルクセンサ26により検出される操舵角θに基づき演算される。なお、ステップS113における処理は、特許請求の範囲に記載の「相対角度検出手段」に相当するものである。
そして、ステップS115において、脱輪状態である左前輪42に対し当該脱輪状態から復帰させるためにアシストモータ24aおよび車輪駆動装置50により発生させ得る最大脱輪復帰力φが以下の式(3)により演算される。
φ=μ×(FSm+FDm×sinδ) ・・・(3)
ここで、μは、左前輪42の側面と側溝Dの側面との接触面Sにおける摩擦係数に相当する所定の係数であって(図2参照)、例えば、0.1に設定されている。また、FSmは、アシストモータ24aにより発生し得る最大アシスト力である。また、FDmは、車輪駆動装置50により右前輪41および左前輪42が回転駆動して発生し得る最大回転駆動力よりも小さく設定される脱輪時最大回転駆動力であって、車輪駆動装置50に過剰な負荷を抑制するため、例えば、上記最大回転駆動力の1/3に設定されている。なお、ステップS115における処理は、特許請求の範囲に記載の「最大脱輪復帰力推定手段」に相当するものである。
上記式(3)の根拠について図2を用いて説明すると、左前輪42が脱輪して側溝Dに落ち込んだ後、脱輪復帰のための操舵により、左前輪42の側面が側溝Dの側面のうちの接触面Sに押圧されて実舵角δが一定になる。このとき、接触面Sには、アシストモータ24aにより発生するアシスト力FSと、車輪駆動装置50による右前輪41の回転駆動力FRおよび左前輪42の回転駆動力FLの加算値である脱輪時回転駆動力FDのうち側溝Dの側面に垂直方向に作用する押圧力(FD×sinδ)とが脱輪復帰のための力として作用する。
さらに左前輪42の側面を側溝Dの側面に押圧するように操舵を行うと、上記接触面Sには、アシストモータ24aによる最大アシスト力FSmと、車輪駆動装置50による脱輪時最大回転駆動力FDmのうち側溝Dの側面に垂直方向に作用する押圧力(FDm×sinδ)とが脱輪復帰のための最大の力として作用する。この接触面Sの摩擦係数に相当する所定の係数をμとすると、最大脱輪復帰力φは、上記式(3)にて演算されることとなる。
上述のようにしてステップS115にて最大脱輪復帰力φが演算されると、図4のステップS117において、最大脱輪復帰力φが、脱輪状態である左前輪42における輪荷重P2より小さく設定される輪荷重閾値PB以下であるか否かについて判定される。ここで、左前輪42が脱輪している場合には、輪荷重閾値PBは、以下の式(4)により算出される。
PB=K3×P2 ・・・(4)
上記式(4)の根拠について説明すると、最大脱輪復帰力φが脱輪状態である左前輪42の輪荷重P2以下である場合には、脱輪復帰できない可能性がある。そこで、本第1実施形態においては、K3を、1以下の値、例えば、0.9に設定することにより、輪荷重閾値PBを輪荷重P2よりも小さく設定して、最大脱輪復帰力φがこの輪荷重閾値PB以下であるか否かについて判定する。なお、ステップS117における処理は、特許請求の範囲に記載の「脱輪復帰可否判定手段」に相当するものである。
図5(A)は、警告装置70のモニタ71に脱輪復帰が不可能である旨が表示される一例を示す説明図であり、図5(B)は、警告装置70のモニタ71に脱輪復帰が可能である旨が表示される一例を示す説明図である。
上述したステップS117において、最大脱輪復帰力φが輪荷重閾値PB以下である場合には(S117でYes)、脱輪復帰は不可能であると判定されて、ステップS121において、脱輪復帰不可信号が警告装置70に出力される。これにより、警告装置70は、図5(A)に例示するように、モニタ71にて、脱輪復帰が不可能である旨を表示する。
次に、ステップS123において、アシストモータ駆動一時停止処理がなされて、アシストモータ24aによるアシスト力の発生が一時停止される。これにより、脱輪復帰が不可能であるにもかかわらずアシストモータ24aに不必要な負荷がかかることを抑制し得る。
そして、ステップS125において、車輪駆動停止信号が車輪駆動装置50に出力される。このため、車輪駆動装置50による右前輪41および左前輪42の回転駆動が停止されることにより、脱輪復帰が不可能であるにもかかわらず当該車輪駆動装置50に不必要な負荷がかかることを抑制し得る。
図6は、警告装置70のモニタ71に表示される処置情報の一例を示す説明図であって、図6(A)は、脱輪状態である左前輪42と側溝Dとの間の摩擦係数向上を促す第1の処置情報を例示する説明図であり、図6(B)は、復帰すべき側溝Dの溝高さの低下を促す第2の処置情報を例示する説明図である。
ステップS125の処理の後、ステップS127において、処置情報提示信号が警告装置70に出力される。これにより、警告装置70は、図6(A)、(B)に例示するように、モニタ71にて、上述した脱輪復帰不可能である旨に加えて脱輪から復帰するための処置情報、例えば、脱輪状態における左前輪42と側溝Dとの間に布やシートを敷いて左前輪42と側溝Dとの間の摩擦係数向上を促す第1の処置情報(図6(A)参照)、または、脱輪状態における左前輪42の下方と側溝Dとの間に石、ブロック、その他器具等を設置して復帰すべき側溝Dの溝高さの低下を促す第2の処置情報(図6(B)参照)等を表示する。
なお、例えば、脱輪状態における左前輪42の輪荷重P2に応じて上記処置情報を表示する優先順位を設定してもよい。具体的には、輪荷重P2がほとんど変化しない場合には、側溝Dの側面の摩擦が不十分であることから上記第1の処置情報をモニタ71に表示してもよい。一方、後述するステップS131からの処理等により輪荷重P2が途中まで順調に減少していた場合には、側溝Dの側面の摩擦は十分であることから上記第2の処置情報をモニタ71に表示する。このステップS127の処理の後、図3のステップS101からの処理が繰り返される。
一方、最大脱輪復帰力φが、輪荷重閾値PB以下でない場合には(S117でNo)、脱輪復帰は可能であると判定される。そして、ステップS131において、脱輪復帰可能信号が警告装置70に出力される。これにより、警告装置70は、図5(B)に例示するように、モニタ71にて、脱輪復帰が可能である旨を表示する。
次に、ステップS133において、アシストトルク漸増処理がなされる。この処理では、操舵を補助するアシストトルクTmを運転者の操舵とは無関係に現時点におけるアシストトルクTmから所定のトルクだけ徐々に増加させていくように、アシストモータ24aが駆動制御される。そして、ステップS135において、車輪駆動停止解除信号が車輪駆動装置50に出力される。これにより、上述したステップS125にて車輪駆動装置50による右前輪41および左前輪42の回転駆動が停止されている場合には、その回転駆動の停止が解除される。
そして、ステップS137において、モータ電流値iが、上記過負荷電流値ioを超える電流値であって、脱輪復帰のためにアシストモータ24aに供給し得る限界の電流値である電流制限値is未満であるか否かについて判定される。
ここで、モータ電流値iが電流制限値is以上であれば(S137でNo)、アシストモータ24aにより発生させ得るアシストトルクTmでは脱輪復帰は不可能であると判定されて、上述したステップS121からの処理を行う。
一方、モータ電流値iが電流制限値is未満であれば(S137でYes)、ステップS139において、モータ電流値iが、上記過負荷電流値io以上であるか否かについて判定される。
ここで、モータ電流値iが過負荷電流値io以上であれば(S139でYes)、脱輪復帰していないと判定されて、上述した図3のステップS101からの処理を行う。また、モータ電流値iが過負荷電流値io以上でない場合であって(S139でNo)、輪荷重P1が輪荷重閾値PA1以上である場合(S141でYes)または輪荷重P2が輪荷重閾値PA2以上である場合(S143でYes)には、アシストモータ24aに過剰な負荷は生じていないものの脱輪復帰していないと判定されて、上述した図3のステップS101からの処理を行う。
一方、モータ電流値iが過負荷電流値io以上でない場合であって(S139でNo)、輪荷重P1が輪荷重閾値PA1以上でなく(S141でNo)かつ輪荷重P2が輪荷重閾値PA2以上でない場合(S143でNo)には、アシストモータ24aに過剰な負荷が生じておらず車両の車体重量が、各車輪41〜44にほぼ均等に作用していることから、脱輪復帰完了したと判定されて脱輪復帰可能性向上処理が終了する。
以上説明したように、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、駆動輪でもある右前輪41および左前輪42のいずれか一方が脱輪状態であるか否かを各輪荷重P1〜P4に基づいて、右前輪41の輪荷重P1が右前輪41以外の各車輪の輪荷重平均値より大きく設定される輪荷重閾値PA1以上である場合に当該右前輪41が脱輪していると判定し、左前輪42の輪荷重P2が左前輪42以外の各車輪の輪荷重平均値より大きく設定される輪荷重閾値PA2以上である場合に当該左前輪42が脱輪していると判定する。
そして、右前輪41および左前輪42のいずれか一方が脱輪していると判定されると、脱輪状態から復帰させるために発生させ得る最大脱輪復帰力φを、アシストモータ24aにより発生し得る最大アシスト力FSmに加えて脱輪時に車輪駆動装置50により右前輪41および左前輪42が回転駆動して発生し得る脱輪時最大回転駆動力FDmのうち側溝Dの側面に垂直方向に作用する押圧力に基づいて推定する。
そして、例えば、左前輪42が脱輪していると判定される場合において、上記最大脱輪復帰力φが脱輪状態である左前輪42の輪荷重P2以下に設定される輪荷重閾値PB以下である場合には、脱輪復帰が不可能であると判定し、一方、最大脱輪復帰力φが輪荷重閾値PB以下でない場合には、脱輪復帰が可能であると判定する。そして、脱輪復帰が可能であると判定される場合には、アシストモータ24aによるアシストトルクTm(アシスト力)を現時点におけるアシストトルクTmから所定のトルクだけ徐々に増加させる。
これにより、脱輪復帰が可能であると判定された場合には、モータ保護機能としてアシストモータ24aに供給し得るモータ電流値iを電流制限値is未満とする制限を有していても、アシストモータ24aのモータ電流値iが電流制限値isに到達するまでの間、脱輪復帰のためのアシスト力を発生させつつこのアシスト力が徐々に増加していくこととなる。このため、脱輪復帰のためのアシスト力を発生させる期間を長くすることができるので、脱輪復帰の可能性が向上する。さらに、アシスト力を急激に増加させることなく徐々に増加させるので、このアシスト力により脱輪状態の操舵輪の側面が側溝Dの側面に確実に押し当てられることとなり、当該アシスト力を脱輪復帰のために最大限に活用することができる。
したがって、脱輪復帰の可否を判定するとともに脱輪復帰の可能性を向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、脱輪復帰が不可能であると判定された場合にはアシスト力の出力を一時停止するようにアシストモータ24aを制御する。これにより、脱輪復帰が不可能であると判定されたときにはアシストモータ24aによる不必要なアシスト力の発生を回避し得る。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、上述の脱輪復帰可否の判定結果を警告装置70のモニタ71に表示させることで運転者等に告知する。これにより、両操舵輪のいずれか一方が脱輪した場合にその操舵輪を実際に駆動して脱輪復帰を試すことなく、脱輪状態である操舵輪における脱輪復帰の可否を事前に認識することができる。また、上述のように脱輪復帰を試すことなく脱輪復帰の可否を事前に認識することができるので、脱輪復帰の可能性がない場合にまで不必要に操舵等することによりアシストモータ24a等が過負荷になることもない。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、脱輪復帰が不可能であると判定された場合には、警告装置70のモニタ71に上述した第1、第2の処置情報等の脱輪復帰のための処置情報を表示させる。このように表示された処置情報に基づいて運転者等が適切に脱輪復帰のための作業を行うことにより、脱輪状態から復帰する可能性が向上し得る。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、各輪荷重センサ41b〜44bは、車体と各車輪41〜44との間に介在するアーム41a〜44a上であって当該各車輪41〜44近傍にそれぞれ取り付けられる歪みセンサであり、各取付部分におけるアーム41a〜44aのそれぞれの歪みに基づいて各輪荷重P1〜P4を検出する。これにより、各車輪41〜44の輪荷重P1〜P4を確実に検出することができる。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、右前輪41における輪荷重P1が、右前輪41以外の各車輪の輪荷重平均値より大きく設定される輪荷重閾値PA1以上、例えば、当該輪荷重平均値の110%以上である場合に右前輪41が脱輪状態であると判定し、左前輪42における輪荷重P2が、左前輪42以外の各車輪の輪荷重平均値より大きく設定される輪荷重閾値PA2以上、例えば、当該輪荷重平均値の110%以上である場合に左前輪42が脱輪状態であると判定する。
右前輪41および左前輪42のいずれか一方が路面の側溝Dに落ち込み脱輪してその一部が側溝Dの側面等に接触した場合には、脱輪状態である操舵輪の輪荷重が、他の全ての車輪における輪荷重の平均値より大きくなるからである。そこで、輪荷重P1と輪荷重閾値PA1、または、輪荷重P2と輪荷重閾値PA2をそれぞれ比較することにより、脱輪状態であるか否かについて適切に判定することができる。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、車速Vが停車していると判断される速度閾値V0以下である場合に、脱輪状態であるか否かを輪荷重に基づいて判定する。
通常、脱輪している車両は移動できないため、脱輪時の車速Vは停車していると判断される速度以下になる。したがって、車速Vを考慮することにより脱輪状態であるか否かについてより確実に判定することができる。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、最大脱輪復帰力φを、最大アシスト力をFSm、車輪駆動装置50による上記最大回転駆動力よりも小さく設定される脱輪時最大回転駆動力をFDm、操舵輪の実舵角をδ、脱輪状態である操舵輪の側面と側溝Dの側面との接触面Sの摩擦係数μとしたとき、上述の式(3)により演算する。
脱輪状態である操舵輪の側面と側溝Dの側面との接触面Sには、最大アシスト力FSmと、脱輪時最大回転駆動力FDmのうち側溝Dの側面に垂直方向に作用する押圧力、即ち、FDm×sinδとが脱輪復帰のための最大の力として作用する。そこで、上記接触面Sにおける摩擦係数をμとすると、最大脱輪復帰力φは、上式でもって適切かつ具体的に演算され得る。
このとき、脱輪時最大回転駆動力FDmは、車輪駆動装置50により操舵輪に発生させ得る最大回転駆動力よりも小さく、例えば、当該最大回転駆動力の1/3程度に設定されるので、車輪駆動装置50に過剰な負荷が生じることもない。
また、脱輪時最大回転駆動力FDmのうち側溝Dの側面に垂直方向に作用する押圧力を演算する際には、脱輪状態の操舵輪の側面に沿う方向と側溝Dの側面に沿う方向との相対角度として、車両の進行方向に対して操舵輪が操舵された角度である操舵輪の実舵角δを用いて演算している。
脱輪状態の操舵輪の側面に沿う方向と側溝Dの側面に沿う方向との相対角度を検出するためには、側溝Dの形状を検出するための専用のセンサ等が必要になる。一方、通常、脱輪状態の車両の進行方向に相当する方向と側溝Dの側面に沿う方向との相対角度はほぼ一致する。そこで、実舵角δを、脱輪状態の操舵輪の側面に沿う方向と側溝Dに沿う方向との相対角度として用いることにより、専用センサ等を別途設けることなく上記相対角度を推定し得る。なお、脱輪状態の操舵輪の側面に沿う方向と側溝Dの側面に沿う方向との相対角度を精度良く検出するため専用のセンサ等を設けてもよい。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、モータ電流値iがアシストモータ24aが過負荷状態であると判断される過負荷電流値io以上となった場合に脱輪復帰の可否を判定する。
これにより、例えば、左前輪42が脱輪したときにアシストモータ24aに流れるモータ電流値iが増大して過負荷電流値io以上になったことから、当該アシストモータ24aが過負荷状態であり左前輪42の側面が側溝Dの側面に押圧される状態を推定し、この押圧状態において上記最大脱輪復帰力φおよび脱輪状態である左前輪42の輪荷重P2に基づいて脱輪復帰の可否を判定することで、より正確な判定を行うことができる。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、最大脱輪復帰力φが、脱輪状態である右前輪41における輪荷重P1または左前輪42における輪荷重P2以下に設定される輪荷重閾値PB以下である場合に脱輪復帰は不可能であると判定する。
例えば、最大脱輪復帰力φが脱輪状態である左前輪42における輪荷重P2以下である場合には、脱輪復帰できない可能性がある。そこで、最大脱輪復帰力φが、輪荷重P2以下に設定される輪荷重閾値PB以下である場合に脱輪復帰が不可能であると判定する。これにより、脱輪復帰が不可能である判定が適切になされ得る。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、右前輪41および左前輪42のいずれか一方が脱輪状態であると判定される場合には、アシストモータ24aの過負荷保護を停止またはその保護条件を緩和する。これにより、アシストモータ24aの過負荷を回避して当該アシストモータ24aを保護する制限がある場合でも、脱輪状態からの復帰を優先させるためにモータ過負荷保護に関する制限を一時的に停止または緩和することにより、脱輪復帰の可能性が向上し得る。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図8および図9を参照して説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る電気式動力舵取装置20の要部を示す説明図である。図9は、本第2実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理の流れを示すフローチャートの一部である。
本第2実施形態に係る電気式動力舵取装置20は、各車輪41〜44に対する車体Bの高さ(以下、車高H1〜H4ともいう)を調整可能な車高調整手段であるアクティブサスペンション80を新たに採用するとともに、脱輪復帰可能性向上処理を図3および図4に示すフローチャートに代えて図9および図4に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る電気式動力舵取装置と異なる。したがって、第1実施形態の電気式動力舵取装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
図8に示すように、アクティブサスペンション80は、油圧式で、油を貯溜するリザーバ81と、このリザーバ81の油を高圧にして排出(供給)するオイルポンプ82と、このオイルポンプ82からの圧油量に応じて各車輪41〜44における車高H1〜H4をそれぞれ調整するサスペンション装置83a〜83dとを備えている。なお、オイルポンプ82は、エンジンによって駆動されてもよいし、オイルポンプ82専用の電動モータによって駆動されてもよい。また、リザーバ81およびオイルポンプ82は、各サスペンション装置83a〜83d毎にそれぞれ設けられてもよいし、前輪用と後輪用と2箇所設けてもよい。
サスペンション装置83aは、車体Bと右前輪41との間に介在するアーム41aに支持されて車高H1を調整する機能を有するものである。また、サスペンション装置83b、83c、83dは、車体Bと左前輪42、右後輪43、左後輪44との間に介在するアーム42a、43a、44aにそれぞれ支持されて車高H2、H3、H4をそれぞれ調整する機能を有するものである。各サスペンション装置83a〜83dは、機械的構成が同じであり、以下、サスペンション装置83aを代表して説明する。
図8に示すように、サスペンション装置83aは、切換弁84と、この切換弁84を駆動する切換弁駆動回路85と、ショックアブソーバ86と、このショックアブソーバ86のピストンロッド86bの周りに設けられるコイルバネ87とを備えている。また、ショックアブソーバ86のパワーシリンダ86aの内部には、ピストン86cとの間に油圧室86dが形成される。
切換弁84は、オイルポンプ82によりリザーバ81の油を高圧にしてショックアブソーバ86の圧油孔86eを介して油圧室86dに供給する状態(以下、圧油供給状態ともいう)と、油圧室86dの圧油を圧油孔86eを介してリザーバ81に排出する状態(以下、圧油排出状態ともいう)と、油圧室86d内の油量を維持する状態(以下、油量維持状態ともいう)とを切り換える役割を果たす。
切換弁駆動回路85は、ECU30からの指示に基づいて、切換弁84を、圧油供給状態、圧油排出状態および油量維持状態のいずれかの状態に切り換えるように駆動制御する。
このように構成される本第2実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理について、図9および図4を用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、図9のステップS101〜S109の繰り返し処理中に操舵輪41、42のいずれかが脱輪していると判定されると(S103でYes、S105でYesまたはS107でYes、S109でYes)、ステップS200において車高調整処理がなされる。
この処理では、操舵輪である右前輪41および左前輪42のうち、脱輪状態の操舵輪に対する車高を最も高く調整するとともに、脱輪状態の操舵輪に最も離間する車輪に対する車高を最も低く調整する。具体的には、左前輪42が脱輪している場合、サスペンション装置83bの切換弁駆動回路85を駆動して切換弁84を圧油供給状態にすることにより、左前輪42に対する車高H2を最も高い状態に調整する。また、サスペンション装置83dの切換弁駆動回路85を駆動して切換弁84を圧油排出状態にすることにより、右後輪43に対する車高H3を最も低い状態に調整する。このとき、右前輪41に対する車高H1および左後輪44に対する車高H4は、現状の高さに維持されてもよいし、最高位置と最低位置の中間である中間位置の高さに調整されてもよい。なお、上述のように車高H2を最も高くかつ車高H3を最も低く調整してもよいし、車高H2を車高H3よりも高く調整するようにしてもよい。
このように、脱輪状態の左前輪42に対する車高H2を右後輪43に対する車高H3よりも高く調整することにより、左前輪42の輪荷重P2を減少させることができる。このため、最大脱輪復帰力φに対して脱輪状態である左前輪42の輪荷重P2が減少するので、脱輪復帰のために必要な力が軽減されることとなり、脱輪復帰の可能性を向上させることができる。
上述したステップS200における車高調整処理がなされた後、上記第1実施形態と同様にステップS111からの処理がなされる。特に、図4のステップS117において、脱輪状態である左前輪42の輪荷重P2が減少することから、輪荷重閾値PBも同様に減少するので、脱輪復帰は可能であるとの判定(S117でNo)がなされやすくなることが判る。
以上説明したように、本第2実施形態に係る電気式動力舵取装置20は、各車輪41〜44に対して車高H1〜H4を調整可能なアクティブサスペンション80を備えている。そして、操舵輪である右前輪41および左前輪42のいずれか一方が脱輪状態であると判定されると、アクティブサスペンション80により、「脱輪状態である操舵輪」に対する車高を最も高い状態に調整し、「脱輪状態の操舵輪と最も離間した車輪」に対する車高を最も低い状態に調整する。
これにより、脱輪状態である操舵輪の輪荷重が減少するので、脱輪復帰のために必要な力が軽減されることとなり、脱輪復帰の可能性を向上させることができる。
なお、車高調整手段として、油圧式のサスペンション装置を採用することに限らず、例えば、伸縮可能なピエゾ素子等、車高を調整可能な手段を採用してもよい。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図10および図11を参照して説明する。図10および図11は、本発明の第3実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理中の車高調整処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
本第3実施形態に係る電気式動力舵取装置20は、脱輪復帰可能性向上処理を図9および図4に示すフローチャートに加えて図10および図11に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第2実施形態に係る電気式動力舵取装置と異なる。したがって、第2実施形態の電気式動力舵取装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
以下、本第3実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理について、図9〜図11および図4を用いて説明する。
上記第2実施形態と同様に、図9のステップS101〜S109の繰り返し処理中に操舵輪41、42のいずれかが脱輪していると判定されると(S103でYes、S105でYesまたはS107でYes、S109でYes)、ステップS200において車高調整処理がなされる。
本第3実施形態においては、ステップS200における車高調整処理は、図10および図11に示すサブルーチンに基づき実施される。この車高調整処理について、以下詳細に説明する。
図10に示すように、ステップS201において、初期高さ設定処理がなされる。この処理では、操舵輪である右前輪41および左前輪42のうち、脱輪状態の操舵輪に対する車高を最も高く調整するとともに、脱輪状態の操舵輪に最も離間する車輪に対する車高を最も低く調整する。ここで、各車高H1〜H4はN個の段階にて高さが調整可能であり、最も低い状態をh1、最も高い状態をhN、中間位置の状態をhmと定義する。また、脱輪状態である操舵輪の輪荷重を脱輪荷重Pobjと定義する。
具体的には、左前輪42が脱輪している場合、サスペンション装置83bの切換弁駆動回路85を駆動して切換弁84を圧油供給状態にすることにより、左前輪42に対する車高H2をhNに調整する。また、サスペンション装置83dの切換弁駆動回路85を駆動して切換弁84を圧油排出状態にすることにより、右後輪43に対する車高H3をh1に調整する。また、右前輪41に対する車高H1をhmに調整するとともに左後輪44に対する車高H4をhmに調整する。
次に、ステップS203において、da1演算処理がなされる。この処理では、右前輪41の車高H1をΔhだけ低くした状態(H1=hlower)での脱輪荷重Plowerと、右前輪41の車高H1をΔhだけ高くした状態(H1=hupper)での脱輪荷重Pupperとを取得する。なお、da1演算処理および後述するda2演算処理、da3演算処理、da4演算処理においては、車高調整後、脱輪荷重Pobjが安定した後に、PlowerおよびPupperを取得するものであり、各演算処理後、各車高H1〜H4は、各演算処理前の高さに再調整されるものとする。また、Δhは、車高N段階における1段階の高さに相当する。
そして、右前輪41の車高調整に起因する脱輪荷重Pobjの変化度合であるda1を、以下の式(5)により演算する。
da1=(Pupper−Plower)/(hupper−hlower)
・・・(5)
ここで、da1は、式(5)から判るように、車高H1を現在よりも高く設定した場合の脱輪荷重Pobjの変化を示すものであり、da1が正の値である場合には車高H1を高くすると脱輪荷重Pobjが増加することを意味し、この場合車高H1を低く設定した方が脱輪復帰に有利に作用する。一方、da1が負の値である場合には車高H1を高くすると脱輪荷重Pobjが減少することを意味し、この場合車高H1を高く設定した方が脱輪復帰に有利に作用する。後述する式(6)〜式(8)に基づき演算されるda2、da3、da4においても同様である。
次に、ステップS205において、da2演算処理がなされる。この処理では、左前輪42の車高H2をΔhだけ低くした状態(H2=hlower)での脱輪荷重Plowerと、左前輪42の車高H2を最も高くした状態(H2=hN)での脱輪荷重Pupperとを取得する。なお、左前輪42の車高H2は既に最も高くなるように設定されているので、Δhだけ車高H2を高くした状態ではなく、車高H2=hNの状態での脱輪荷重Pupperを取得するものとする。
そして、左前輪42の車高調整に起因する脱輪荷重Pobjの変化度合であるda2を、以下の式(6)により演算する。
da2=(Pupper−Plower)/(hN−hlower) ・・・(6)
次に、ステップS207において、da3演算処理がなされる。この処理では、右後輪43の車高H3を最も低くした状態(H3=h1)での脱輪荷重Plowerと、右後輪43の車高H3をΔhだけ高くした状態(H3=hupper)での脱輪荷重Pupperとを取得する。なお、右後輪43の車高H3は既に最も低くなるように設定されているので、Δhだけ車高H3を低くした状態ではなく、車高H3=h1の状態での脱輪荷重Plowerを取得するものとする。
そして、右後輪43の車高調整に起因する脱輪荷重Pobjの変化度合であるda3を、以下の式(7)により演算する。
da3=(Pupper−Plower)/(hupper−h1) ・・・(7)
次に、ステップS209において、da4演算処理がなされる。この処理では、左後輪44の車高H4をΔhだけ低くした状態(H4=hlower)での脱輪荷重Plowerと、左後輪44の車高H4をΔhだけ高くした状態(H4=hupper)での脱輪荷重Pupperとを取得する。
そして、左後輪44の車高調整に起因する脱輪荷重Pobjの変化度合であるda4を、以下の式(8)により演算する。
da4=(Pupper−Plower)/(hupper−hlower)
・・・(8)
次に、ステップS211において、車高調整量設定処理がなされる。この処理では、脱輪荷重Pobjを小さくするための各車高H1〜H4にそれぞれ対応する車高調整量の組をAa=(aa1、aa2、aa3、aa4)としたとき、ステップS203〜S209にて演算されたDa=(da1、da2、da3、da4)に基づいて、aa1、aa2、aa3、aa4を設定する。
具体的には、車高が最高(hN)または最低(h1)に設定されていない車輪に関する変化度合であるda1に基づいて、対応するaa1を以下のように設定する。すなわち、da1が正の値の場合、車高を低くした方が脱輪復帰に有利に作用するため、対応するaa1をda1に対して負の値に設定する。一方、da1が負の値の場合、車高を高くした方が脱輪復帰に有利に作用するため、対応するaa1をda1に対して正の値に設定する。aa4についても同様にしてda4に基づいて設定する。ただし、既に車高が最高(hN)および最低(h1)に設定されているda2およびda3に関しては、対応するaa2およびaa3を0(ゼロ)に設定する。
そして、以下の式(9)によりAa=(aa1、aa2、aa3、aa4)の各成分をノルムにて正規化し、所定の係数G1を乗算して車高調整量Asを設定する。
As=G1・A/||Aa|| ・・・(9)
ただし、||Aa||=(aa1 2+aa2 2+aa3 2+aa4 2)1/2とする。また、所定の係数G1は、例えば、2に設定されている。
なお、車高調整量Asを式(9)に代えて、以下の式(10)に基づき設定してもよい。
As=G1・A/||Da|| ・・・(10)
ただし、||Da||=(da1 2+da2 2+da3 2+da4 2)1/2とする。この場合、車高の最高値および最低値の制限によりa=0(ゼロ)と設定される成分が含まれていても、各繰り返し処理において車高調整量の絶対値が大きく変化することを抑制することができる。
また、所定の係数G1は、可変であってもよく、例えば、一定の繰り返し数(典型的に5回)ごとに小さな値(典型的に1/2にする。ただし最低値を1とする。)に設定することにより、車高の微調整が可能になる。これにより、脱輪荷重Pobjを最小とする車高H1〜H4をより正確に演算することができる。
そして、ステップS213において、上記車高調整量Asの各値を現在の車高H1〜H4にそれぞれ加算した値に基づいて車高H1〜H4を仮調整する。このとき、車高調整量Asの各値が正の値の場合には対応する車高を高く調整し、負の値の場合には対応する車高を低く調整する。なお、上述したように各変化度合da1〜da4を全て演算した後にステップS211にて車高調整量を設定することに限らず、変化度合da1〜da4毎に車高調整量をそれぞれ設定してもよい。
ここで、ステップS201〜S213までの処理について、左前輪42が脱輪した場合について具体的な値を例に詳細に説明する。なお、以下の説明において、車高H1〜H4は、アクティブサスペンション80の各サスペンション装置83a〜83dにより、1cmごとに10段階(h1〜h10)調整できるものとする。
まず、ステップS201における初期高さ設定処理により、H1=h5、H2=h10、H3=h1、H4=h5に設定される。次に、ステップS203にて、H1=h4に調整したときに取得されるPlower=3540Nと、H1=h6に調整したときに取得されるPupper=3480Nとを式(5)に代入することにより、da1=(3480−3540)/(6−4)=―30が演算される。
そして、ステップS205、S207、S209にて、da2=80、da3=−60、da4=40としてそれぞれ演算される。次に、ステップS211にて、da1〜da4等に基づき設定されたaa1=30、aa2=0、aa3=0、aa4=−40を式(9)に代入して、Af=(1.2、0、0、−1.6)が設定される。上述したように各サスペンション装置83a〜83dは1cmごとの10段階調整であるから、ステップS213にて、H1=h6、H2=h10、H3=h1、H4=h3に設定される。なお、各サスペンション装置83a〜83dは、段階的に調整されることなく連続的に車高H1〜H4を調整可能なものを採用してもよい。
上述のようにステップS213にて設定された各車高H1〜H4に仮調整されると、図11のステップS215において、脱輪荷重Pobjが取得される。
そして、ステップS217において、脱輪荷重Pobjが最小脱輪荷重Pmin未満であるか否かについて判定される。ここで、初期条件では、最小脱輪荷重Pminは、ステップS215にて取得される脱輪荷重Pobjよりも十分大きな値に設定されており、この段階では、ステップS217にてYesと判定される。
次に、ステップS219にてR1=0(ゼロ)に設定される。そして、ステップS221にて、最小脱輪荷重PminはステップS215にて取得された脱輪荷重Pobjに等しくなるように設定される。
次に、ステップS223において、R1=R1+1に設定されるとともに、ステップS225にて、R2=R2+1に設定される。ここで、R1およびR2について説明する。R1は、最小脱輪荷重Pminが更新された時点からステップS203〜S215の処理が繰り返された回数を示す。一方、R2は、最小脱輪荷重Pminの更新に関係なくステップS203〜S215の処理が繰り返された回数を示す。
次に、ステップS227において、R1がRa未満であるか否かについて判定される。なお、Raは、例えば、5回に設定されている。ここで、最小脱輪荷重Pminが更新された直後であり、R1がRa未満であればステップS227にてYesと判定される。
そして、ステップS229において、R2がRb未満であるか否かについて判定される。なお、Rbは、Raよりも大きな値であって、例えば、20回に設定されている。ここで、ステップS201以降の処理がなされた直後であり、R2がRb未満であれば(S229でYes)、図10のステップS203からの処理が繰り返される。
一方、ステップS203からの繰り返し処理中、最小脱輪荷重Pminが更新されずR1がRa以上になった場合(S227でNo)、または、R2がRb以上になった場合(S229でNo)、ステップS213にて設定された各車高H1〜H4が脱輪荷重Pobjを最小とする最適値であるとして、車高調整処理を終了する。
このようにして図9のステップS200における車高調整処理が終了した後、ステップS213にて調整された脱輪荷重Pobjが最小となる車高状態にて上記第2実施形態と同様にステップS111からの処理がなされる。
以上説明したように、本第3実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、操舵輪である右前輪41および左前輪42のいずれか一方が脱輪状態であると判定されると、アクティブサスペンション80により、「脱輪状態である操舵輪」に対する車高を最も高い状態に調整し、「脱輪状態の操舵輪と最も離間した車輪」に対する車高を最も低い状態に調整するとともに、「脱輪状態である操舵輪」および「脱輪状態の操舵輪と最も離間した車輪」と異なる車輪に対する車高を、各車輪41〜44に対する車高H1〜H4をそれぞれ変化させたときの脱輪荷重Pobjの変化度合da1〜da4に基づいて当該脱輪荷重Pobjが小さくなるように調整する。
このように、アクティブサスペンション80により、各車輪41〜44に対する車高H1〜H4を、脱輪荷重Pobjが小さくなるようにそれぞれ調整することができるので、脱輪復帰のために必要な力が軽減されることとなり、脱輪復帰の可能性をより向上させることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を図12〜図14を参照して説明する。図12は、本発明の第4実施形態に係る電気式動力舵取装置20の要部を示す説明図である。図13は、本第4実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理の流れを示すフローチャートの一部である。図14は、図13の空気圧調整処理に用いられる空気圧−摩擦力評価値マップの一例を示す説明図である。
本第4実施形態に係る電気式動力舵取装置20は、各車輪41〜44の空気圧t1〜t4を調整可能な空気圧調整手段である空気圧調整装置90を新たに採用するとともに、脱輪復帰可能性向上処理を図3および図4に示すフローチャートに代えて図13および図4に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る電気式動力舵取装置と異なる。したがって、第1実施形態の電気式動力舵取装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
空気圧調整装置90は、各車輪41〜44の空気圧t1〜t4を調整可能な公知の装置である。図12に示すように、空気圧調整装置90は、例えば、高圧の空気を供給可能な空気圧供給装置91と、各車輪41〜44にそれぞれ設けられるエアバルブ41c〜44cとを備えている。
空気圧供給装置91は、図略のポンプ、モータおよびモータ駆動回路等を備えており、ECU30からの指示に基づいて高圧の空気をチューブおよびエアバルブ41c〜44c等を介して各車輪41〜44に供給する役割を果たす。
エアバルブ41c〜44cは、ECU30からの指示に基づいて、空気圧供給装置91から供給される高圧の空気を各車輪41〜44に供給して各空気圧t1〜t4をそれぞれ増圧する増圧状態と、各車輪41〜44の空気を排出して各空気圧t1〜t4をそれぞれ減圧する減圧状態とを切り換える役割を果たす。
また、各車輪41〜44には、各空気圧t1〜t4を検出可能な空気圧センサ41d〜44dが設けられている。
このように構成される本第4実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理について、図13および図4を用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、図13のステップS101〜S109の繰り返し処理中に操舵輪41、42のいずれかが脱輪していると判定されると(S103でYes、S105でYesまたはS107でYes、S109でYes)、ステップS300において空気圧調整処理がなされる。
この処理では、各車輪41〜44のそれぞれの空気圧t1〜t4を、当該各車輪41〜44と路面との摩擦力による脱輪復帰の可能性を示す摩擦力評価値v1〜v4を高めるように調整する。
具体的には、図14に示す、空気圧−摩擦力評価値マップに基づいて、各摩擦力評価値v1〜v4を最も高くするような各目標空気圧ta1〜ta4が設定される。そして、空気圧供給装置91から高圧の空気が供給される各エアバルブ41c〜44cを増圧状態または減圧状態にして、各空気圧センサ41d〜44dにより検出される各空気圧t1〜t4が、これら上記目標空気圧ta1〜ta4に等しくなるように調整される。これにより、各車輪41〜44と路面との間に生ずる摩擦力を適切に大きくして脱輪復帰の可能性を高めることができる。
ここで上述した図14の空気圧−摩擦力評価値マップについて説明する。弾性体である車輪と剛体である路面との間に生ずる摩擦力は、車輪の空気圧が同じであれば接地面積が大きくなるほど大きくなり、接地面積が同じであれば車輪の空気圧が高くなるほど大きくなる。一方、車輪の空気圧が低くなるほど接地面積が大きくなるので、車輪の空気圧が高すぎると接地面積の視点から不利となる。したがって、摩擦力の視点において脱輪復帰の可能性を高め得る各車輪41〜44の各目標空気圧ta1〜ta4は、車輪の最低空気圧tminと最大空気圧tmaxとの間に存在すると考えられる。
そこで、車輪の空気圧tと、車輪および路面間の摩擦力による脱輪復帰の可能性を示す摩擦力評価値vとを対応させたマップを予め実験的に設定して記憶しておく。この摩擦力評価値vは、例えば、1に近づくほど脱輪復帰の可能性が高まるように設定される。
上述したステップS300における空気圧調整処理がなされた後、上記第1実施形態と同様にステップS111からの処理がなされる。
以上説明したように、本第4実施形態に係る電気式動力舵取装置20は、各車輪41〜44の空気圧t1〜t4を検出する空気圧センサ41d〜44dおよび各空気圧t1〜t4を調整可能な空気圧調整装置90とを備えるとともに、空気圧tと、各車輪および路面間の摩擦力による脱輪復帰の可能性を示す摩擦力評価値vとを予め対応させた空気圧−摩擦力評価値マップを備えている。そして、操舵輪である右前輪41および左前輪42のいずれか一方が脱輪状態であると判定されると、空気圧調整装置90により、上記空気圧−摩擦力評価値マップに基づいて、上記摩擦力評価値vを高めて脱輪復帰の可能性を高めるように各車輪41〜44の空気圧t1〜t4を調整する。
このように、脱輪時に、空気圧tと摩擦力評価値vを対応させた空気圧−摩擦力評価値マップに基づいて、この摩擦力評価値vを高めるように空気圧調整装置90により各車輪41〜44の空気圧t1〜t4を調整することで、車輪と路面との間に生ずる摩擦力を適切に大きくして脱輪復帰の可能性を高めることができる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を図15〜図17を参照して説明する。図15は、本第5実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理の流れを示すフローチャートの一部である。図16および図17は、図15の空気圧調整処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
本第5実施形態に係る電気式動力舵取装置20は、上記第2実施形態にて述べたアクティブサスペンション80および上記第4実施形態にて述べた空気圧調整装置90を採用するとともに、脱輪復帰可能性向上処理を図3および図4に示すフローチャートに代えて図15および図4と図10、図11、図16、図17とに示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る電気式動力舵取装置と異なる。したがって、上記各実施形態にて説明した構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
以下、本第5実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30による脱輪復帰可能性向上処理について、図15および図4と図10、図11、図16、図17とを用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、図15のステップS101〜S109の繰り返し処理中に操舵輪41、42のいずれかが脱輪していると判定されると(S103でYes、S105でYesまたはS107でYes、S109でYes)、ステップS200において車高調整処理がなされる。この車高調整処理は、上記第3実施形態と同様に、図10および図11に示すサブルーチンに基づき実施される。なお、ステップS200における車高調整処理では、上記第2実施形態と同様に、脱輪状態の操舵輪に対する車高を最も高く調整するとともに、脱輪状態の操舵輪に最も離間する車輪に対する車高を最も低く調整し、他の車輪に対する車高を中間位置の高さに調整してもよい。
そして、ステップS300において、空気圧調整処理がなされる。この処理は、本第5実施形態においては、図16および図17に示すサブルーチンに基づき実施される。この空気圧調整処理について、以下詳細に説明する。
図16に示すように、ステップS301において、初期空気圧設定処理がなされる。この処理では、各車輪41〜44の空気圧t1〜t4が、初期空気圧として設定される初期空気圧t0に等しくなるように各エアバルブ41c〜44cを調整してそれぞれ設定される。ここで、各空気圧t1〜t4は、空気圧調整装置90により、最低空気圧tminと最大空気圧tmaxとの間にてN個の段階で調整可能であるものとする。
次に、ステップS303において、db1演算処理がなされる。この処理では、右前輪41の空気圧t1をΔtだけ低くした状態(t1=tlower)での脱輪荷重Plowerと、右前輪41の空気圧t1をΔtだけ高くした状態(t1=tupper)での脱輪荷重Pupperとを取得する。なお、db1演算処理および後述するdb2演算処理、db3演算処理、db4演算処理においては、空気圧調整後、脱輪荷重Pobjが安定した後に、PlowerおよびPupperを取得するものであり、各演算処理後、各空気圧t1〜t4は、各演算処理前の圧力に再調整されるものとする。また、Δtは、空気圧N段階における1段階の圧力差に相当し、本第5実施形態においては、例えば、0.1に設定されている。
そして、右前輪41の空気圧調整に起因する脱輪荷重Pobjの変化度合であるdb1を、以下の式(11)により演算する。
db1=(Pupper−Plower)/(tupper−tlower)
・・・(11)
ここで、db1は、式(11)から判るように、空気圧t1を現在よりも高く設定した場合の脱輪荷重Pobjの変化を示すものであり、db1が正の値である場合には空気圧t1を高くすると脱輪荷重Pobjが増加することを意味し、この場合空気圧t1を低く設定した方が脱輪復帰に有利に作用する。一方、db1が負の値である場合には空気圧t1を高くすると脱輪荷重Pobjが減少することを意味し、この場合空気圧t1を高く設定した方が脱輪復帰に有利に作用する。後述する式(12)〜式(14)に基づき演算されるdb2、db3、db4においても同様である。
次に、ステップS305において、db2演算処理がなされる。この処理では、上記ステップS303と同様に、左前輪42の空気圧t2をΔtだけ低くした状態(t2=tlower)での脱輪荷重Plowerと、左前輪42の空気圧t2をΔtだけ高くした状態(t2=tupper)での脱輪荷重Pupperとを取得する。
そして、左前輪42の空気圧調整に起因する脱輪荷重Pobjの変化度合であるdb2を、以下の式(12)により演算する。
db2=(Pupper−Plower)/(tupper−tlower)
・・・(12)
次に、ステップS307において、db3演算処理がなされる。この処理では、上記ステップS303と同様に、右後輪43の空気圧t3をΔtだけ低くした状態(t3=tlower)での脱輪荷重Plowerと、右後輪43の空気圧t3をΔtだけ高くした状態(t3=tupper)での脱輪荷重Pupperとを取得する。
そして、右後輪43の空気圧調整に起因する脱輪荷重Pobjの変化度合であるdb3を、以下の式(13)により演算する。
db3=(Pupper−Plower)/(tupper−tlower)
・・・(13)
次に、ステップS309において、db4演算処理がなされる。この処理では、上記ステップS303と同様に、左後輪44の空気圧t4をΔtだけ低くした状態(t4=tlower)での脱輪荷重Plowerと、左後輪44の空気圧t4をΔtだけ高くした状態(t4=tupper)での脱輪荷重Pupperとを取得する。
そして、左後輪44の空気圧調整に起因する脱輪荷重Pobjの変化度合であるdb4を、以下の式(14)により演算する。
db4=(Pupper−Plower)/(tupper−tlower)
・・・(14)
次に、ステップS311において、第1空気圧調整設定処理がなされる。この処理では、脱輪荷重Pobjを小さくするための各車輪41〜44の空気圧t1〜t4にそれぞれ対応する第1空気圧調整量の組をAb=(ab1、ab2、ab3、ab4)としたとき、ステップS303〜S309にて演算されたDb=(db1、db2、db3、db4)に基づいて、ab1、ab2、ab3、ab4を設定する。
具体的には、db1が正の値の場合、空気圧を低くした方が脱輪復帰に有利に作用するため、対応するab1をdb1に対して負の値に設定する。一方、db1が負の値の場合、空気圧を高くした方が脱輪復帰に有利に作用するため、対応するab1をdb1に対して正の値に設定する。ab2〜ab4についても同様にしてdb2〜db4に基づいて設定する。
そして、以下の式(15)によりAb=(ab1、ab2、ab3、ab4)の各成分をノルムにて正規化して第1空気圧調整量Ahを設定する。この第1空気圧調整量Ahは、各空気圧t1〜t4をそれぞれ変化させたときの脱輪荷重Pobjの変化度合に対応するものである。
Ah=A/||Ab|| ・・・(15)
ただし、||Ab||=(ab1 2+ab2 2+ab3 2+ab4 2)1/2とする。
次に、ステップS313において、dc1演算処理がなされる。この処理では、右前輪41の空気圧t1をΔtだけ低くした状態(t1=tlower)での摩擦力評価値vlowerと、右前輪41の空気圧t1をΔtだけ高くした状態(t1=tupper)での摩擦力評価値vupperとを図14の空気圧−摩擦力評価値マップから取得する。
そして、右前輪41の空気圧調整に起因する摩擦力評価値vの変化度合であるdc1を、以下の式(16)により演算する。
dc1=(vupper−vlower)/(tupper−tlower)
・・・(16)
ここで、dc1は、式(16)から判るように、空気圧t1を現在よりも高く設定した場合の摩擦力評価値vの変化を示すものであり、dc1が正の値である場合には空気圧t1を高くすると摩擦力評価値vが増加することを意味し、この場合空気圧t1を高く設定した方が脱輪復帰に有利に作用する。一方、dc1が負の値である場合には空気圧t1を高くすると摩擦力評価値vが減少することを意味し、この場合空気圧t1を低く設定した方が脱輪復帰に有利に作用する。後述する式(17)〜式(19)に基づき演算されるdc2、dc3、dc4においても同様である。
次に、ステップS315において、dc2演算処理がなされる。この処理では、上記ステップS313と同様に、左前輪42の空気圧t2をΔtだけ低くした状態(t2=tlower)での摩擦力評価値vlowerと、左前輪42の空気圧t2をΔtだけ高くした状態(t2=tupper)での摩擦力評価値vupperとを取得する。
そして、左前輪42の空気圧調整に起因する摩擦力評価値vの変化度合であるdc2を、以下の式(17)により演算する。
dc2=(vupper−vlower)/(tupper−tlower)
・・・(17)
次に、ステップS317において、dc3演算処理がなされる。この処理では、上記ステップS313と同様に、右後輪43の空気圧t3をΔtだけ低くした状態(t3=tlower)での摩擦力評価値vlowerと、右後輪43の空気圧t3をΔtだけ高くした状態(t3=tupper)での摩擦力評価値vupperとを取得する。
そして、右後輪43の空気圧調整に起因する摩擦力評価値vの変化度合であるdc3を、以下の式(18)により演算する。
dc3=(vupper−vlower)/(tupper−tlower)
・・・(18)
次に、ステップS319において、dc4演算処理がなされる。この処理では、上記ステップS313と同様に、左後輪44の空気圧t4をΔtだけ低くした状態(t4=tlower)での摩擦力評価値vlowerと、左後輪44の空気圧t4をΔtだけ高くした状態(t4=tupper)での摩擦力評価値vupperとを取得する。
そして、左後輪44の空気圧調整に起因する摩擦力評価値vの変化度合であるdc4を、以下の式(19)により演算する。
dc4=(vupper−vlower)/(tupper−tlower)
・・・(19)
次に、ステップS321において、第2空気圧調整設定処理がなされる。この処理では、摩擦力評価値vを高くするための各車輪41〜44の空気圧t1〜t4にそれぞれ対応する第2空気圧調整量の組をAc=(ac1、ac2、ac3、ac4)としたとき、ステップS313〜S319にて演算されたDc=(dc1、dc2、dc3、dc4)に基づいて、ac1、ac2、ac3、ac4を設定する。
具体的には、dc1が正の値の場合、空気圧を低くした方が脱輪復帰に有利に作用するため、対応するac1をdc1に対して負の値に設定する。一方、dc1が負の値の場合、空気圧を高くした方が脱輪復帰に有利に作用するため、対応するac1をdc1に対して正の値に設定する。ac2〜ac4についても同様にしてdc2〜dc4に基づいて設定する。
そして、以下の式(20)によりAc=(ac1、ac2、ac3、ac4)の各成分をノルムにて正規化して第2空気圧調整量Afを設定する。この第2空気圧調整量Afは、各空気圧t1〜t4をそれぞれ変化させたときの摩擦力評価値vの変化度合に対応するものである。
Af=A/||Ac|| ・・・(20)
ただし、||Ac||=(ac1 2+ac2 2+ac3 2+ac4 2)1/2とする。
次に、ステップS323において、総合空気圧調整設定処理がなされる。この処理では、ステップS311にて設定された第1空気圧調整量AhとステップS321にて設定された第2空気圧調整量Afとに基づいて、輪荷重の変化および摩擦力の変化の双方を考慮して脱輪復帰の可能性を高めるための空気圧調整量である総合空気圧調整量Atを、以下の式(21)により演算する。
At=G2×(Ch×Ah+Cf×Af) ・・・(21)
なお、ChおよびCfは、輪荷重の変化による効果と摩擦力の変化による効果との関係を重み付けするための係数であり、Ch+Cf=1を満たすように設定される。本第5実施形態においては、摩擦力の変化による効果を重視する目的で、例えば、Ch=0.25、Cf=0.75に設定されている。また、G2は、空気圧調整量を制御する係数であり、本第5実施形態においては、例えば、0.1に設定されている。
そして、ステップS325において、上記総合空気圧調整量Atの各値を現在の各空気圧t1〜t4にそれぞれ加算した値に基づいて、空気圧t1〜t4を仮調整する。このとき、総合空気圧調整量Atの各値が正の値の場合には対応する空気圧を高く調整し、負の値の場合には対応する空気圧を低く調整する。
このように各車輪41〜44の空気圧t1〜t4が仮調整されると、図17のステップS327にて脱輪状態である操舵輪の輪荷重である脱輪荷重Pobjが取得される。そして、ステップS329において、摩擦力評価値演算処理がなされる。この処理では、各空気圧センサ41d〜44dにより検出される空気圧t1〜t4から上述した図14の空気圧−摩擦力評価値マップにより設定される各摩擦力評価値v1〜v4に基づいて、全車輪41〜44と路面との摩擦力による脱輪復帰の可能性を示す摩擦力評価値Vfを、以下の式(22)により演算する。
Vf=C1×v1+C2×v2+C3×(v3+v4) ・・・(22)
ここで、C1,C2,C3は、脱輪状態の駆動輪と、非脱輪状態の駆動輪と、非駆動輪との関係を重み付けするための係数であり、本第5実施形態においては、例えば、C1=0.5、C2=0.3、C3=0.1に設定されている。なお、上記式(22)は、右前輪41の脱輪を前提とした式であり、左前輪42が脱輪したときには、以下の式(22’)により摩擦力評価値Vfを演算する。
Vf=C1×v2+C2×v1+C3×(v3+v4) ・・・(22’)
次に、ステップS331において、総合評価値演算処理がなされる。この処理では、ステップS327にて取得された脱輪荷重PobjとステップS329にて演算された摩擦力評価値Vfとに基づいて、総合的に脱輪復帰の可能性を評価する総合評価値Iを、以下の式(23)により演算する。
I=Cp×Pobj+Cv×Vf ・・・(23)
なお、CpおよびCvは、輪荷重の変化による効果と摩擦力の変化による効果との関係を重み付けするための係数である。
ここで、脱輪荷重Pobjは、小さくなるほど脱輪復帰の可能性が高まり、一方、摩擦力評価値Vfは、大きくなるほど脱輪復帰の可能性が高まる。そこで、Cpを負の数とすることで、総合評価値Iは、大きくなるほど総合的に脱輪復帰の可能性が高くなることを示す。なお、各車輪と路面との間の摩擦力が高まると、アシストモータ24aおよび車輪駆動装置50により発生させ得る脱輪復帰力を有効に利用できるので、上記摩擦力の効果を重視することから、本第5実施形態においては、例えば、Cp=−1、Cv=10000に設定されている。
ここで、ステップS301〜S331までの処理について、左前輪42が脱輪した場合について具体的な値を例に詳細に説明する。なお、以下の説明において、空気圧t1〜t4は、空気圧調整装置90により、0.01kgf/cm2ごとに調整できるものとする。
まず、ステップS301における初期高さ設定処理により、t1=t0、t2=t0、t3=t0、t4=t0に設定される。次に、ステップS303にて、空気圧t1=t0−Δtに調整したときに取得されるPlower=3402Nと、空気圧t1=t0+Δtに調整したときに取得されるPupper=3398Nとを式(11)に代入することにより、db1=(3398−3402)/0.2=―20が演算される。
そして、ステップS305、S307、S309にて、db2=−10、db3=10、db4=30としてそれぞれ演算される。次に、ステップS311にて、db1〜db4等に基づき設定されたaa1=20、aa2=10、aa3=−10、aa4=−30を式(15)に代入して、Ah=(0.51、0.26、−0.26、−0.77)が設定される。
そして、ステップS313にて、空気圧t1=t0−Δtに調整したときに取得されるvlower=0.81と、空気圧t1=t0+Δtに調整したときに取得されるvupper=0.77とを式(16)に代入することにより、dc1=(0.81−0.77)/0.2=0.2が演算される。
そして、ステップS315、S317、S319にて、dc2=0.2、dc3=0.2、dc4=0.2としてそれぞれ演算される。次に、ステップS321にて、dc1〜dc4等に基づき設定されたac1=−0.2、ac2=−0.2、ac3=−0.2、ac4=−0.2を式(20)に代入して、Af=(−0.5、−0.5、−0.5、−0.5)が設定される。
そして、ステップS323にてAhおよびAfを式(21)に代入することにより、At=(0.05、0.044、0.031、−0.004)が設定されると、ステップS325にてAtの各値を現在の各空気圧t1〜t4にそれぞれ加算した値に基づいて、空気圧t1〜t4が仮調整される。
そして、ステップS327にて脱輪荷重Pobj=3395Nが取得される。そして、ステップS329にて各空気圧センサ41d〜44dにより検出される空気圧t1〜t4(=t0)から上記空気圧−摩擦力評価値マップにより設定される各摩擦力評価値v1〜v4を式(22)に代入することにより、摩擦力評価値Vf=0.82が演算される。そして、ステップS331にて脱輪荷重Pobjおよび摩擦力評価値Vfを式(23)に代入することにより、総合評価値I=−1×3395+10000×0.82=4805が演算される。
上述のようにステップS331にて総合評価値Iが演算されると、ステップS333において、この総合評価値Iが最大評価値Imaxを超えるか否かについて判定される。ここで、初期条件では、最大評価値Imaxは、ステップS331にて取得される総合評価値Iよりも十分小さな値に設定されており、この段階では、ステップS333にてYesと判定される。
次に、ステップS335にてR3=0(ゼロ)に設定される。そして、ステップS337にて、最大評価値ImaxはステップS331にて演算された総合評価値Iに等しくなるように設定される。
次に、ステップS339において、R3=R3+1に設定されるとともに、ステップS341にて、R4=R4+1に設定される。ここで、R3およびR4について説明する。R3は、最大評価値Imaxが更新された時点からステップS303〜S331の処理が繰り返された回数を示す。一方、R4は、最大評価値Imaxの更新に関係なくステップS303〜S331の処理が繰り返された回数を示す。
次に、ステップS343において、R3がRc未満であるか否かについて判定される。なお、Rcは、例えば、5回に設定されている。ここで、最大評価値Imaxが更新された直後であり、R3がRc未満であればステップS343にてYesと判定される。
そして、ステップS345において、R4がRd未満であるか否かについて判定される。なお、Rdは、Rcよりも大きな値であって、例えば、20回に設定されている。ここで、ステップS301以降の処理がなされた直後であり、R4がRd未満であれば(S345でYes)、図16のステップS303からの処理が繰り返される。
一方、ステップS303からの繰り返し処理中、最大評価値Imaxが更新されずR3がRc以上になった場合(S343でNo)、または、R4がRd以上になった場合(S345でNo)、ステップS325にて仮調整された各空気圧t1〜t4が総合評価値Iを最大とする最適値であるとして、空気圧調整処理を終了する。
このようにして図15のステップS300における空気圧調整処理が終了した後、ステップS325にて調整された総合評価値Iが最大となる空気圧状態にて上記第1実施形態と同様にステップS111からの処理がなされる。
以上説明したように、本第5実施形態に係る電気式動力舵取装置20は、各車輪41〜44の空気圧t1〜t4を検出する空気圧センサ41d〜44dおよび各空気圧t1〜t4を調整可能な空気圧調整装置90とを備えるとともに、空気圧tと、各車輪および路面間の摩擦力による脱輪復帰の可能性を示す摩擦力評価値vとを予め対応させた空気圧−摩擦力評価値マップを備えている。そして、操舵輪である右前輪41および左前輪42のいずれか一方が脱輪状態であると判定されると、空気圧調整装置90により、各空気圧t1〜t4をそれぞれ変化させたときの脱輪荷重Pobjの変化度合に対応する第1空気圧調整量Ahと各空気圧t1〜t4をそれぞれ変化させたときに空気圧−摩擦力評価値マップから得られる摩擦力評価値vの変化度合に対応する第2空気圧調整量Afとの双方に基づいて、脱輪復帰の可能性を高めるように各空気圧t1〜t4をそれぞれ調整する。
このように、各空気圧t1〜t4をそれぞれ変化させたときの脱輪荷重Pobjの変化度合と、各空気圧t1〜t4をそれぞれ変化させたときに空気圧−摩擦力評価値マップから得られる摩擦力評価値vの変化度合との双方に基づいて、脱輪復帰の可能性を高めるように各空気圧t1〜t4をそれぞれ調整するので、上記第4実施形態のように摩擦力評価値vのみに応じて各空気圧t1〜t4をそれぞれ調整する場合と比較して、より最適な空気圧を設定することができ、脱輪復帰の可能性をさらに高めることができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上述した脱輪復帰可能性向上処理を、図3および図4に示すフローチャートに基づいて行うことに限らず、図3および図7に示すフローチャートに基づいて行うようにしてもよい。図7のフローチャートは、図4のフローチャートのステップS123におけるアシストモータ駆動一時停止処理をステップS124におけるアシストトルク漸減処理に代えたものであり、この漸減処理では、アシストモータ24aによるアシスト力の発生を、現時点におけるアシストトルクTmから所定のトルクだけ徐々に減少させる。これにより、脱輪復帰が不可能であるときにはアシスト力の急減による操舵フィーリングを損なうことなくアシストモータ24aによる不必要なアシスト力の発生を回避し得る。
(2)警告装置70は、脱輪復帰可否の判定結果を、モニタ71に表示して告知することに限らず、車載されているカーナビゲーションのモニタに表示して告知するようにしてもよい。また、警告灯を別途設け、脱輪復帰可否の判定結果に応じて警告灯を点灯等するようにしてもよい。
(3)警告装置70は、脱輪復帰可否の判定結果を、モニタ71に表示することにより運転者等に視覚的な表示でもって告知することに代えて、脱輪復帰可否の判定結果に応じて告知音を発生する告知音発生手段を備えこの告知音発生手段により、例えば、ブザー音や音声等の告知音を発生するようにしてもよい。これにより、脱輪復帰の可否を聴覚的な告知音でもって認識することができる。
また、警告装置70は、脱輪復帰可否の判定結果をモニタ71に表示するとともに上記告知音を発生するようにしてもよい。このように、脱輪復帰の可否を視覚的な表示と聴覚的な告知音とを組み合わせて告知することにより、脱輪復帰の可否をより確実に認識させることができる。
(4)ステップS117にて脱輪復帰は不可能であると判定された場合には、運転者のみで脱輪から復帰させることは困難であるため、応援を要請するように促す情報を警告装置70のモニタ71に表示するようにしてもよい。その表示の際、応援を要請するための連絡先等も同時に表示してもよい。
また、無線通信等によるインターネット接続により所定の情報を送受信し得るデータ通信機器を有する車両においては、ステップS117にて脱輪復帰は不可能であると判定された場合、上記データ通信機器を利用することにより自動的に応援を要請するようにしてもよい。
(5)輪荷重センサに代えて、以下に示すセンサを用いてもよい。
・特開平05−024422にて開示されている、前輪、後輪のそれぞれの輪荷重に応じた荷重検出値を出力するロードセルで構成される輪荷重センサ。
・特開平05−072065にて開示されている、車両のサスペンションアッパマウント部における荷重を検出する輪荷重センサ。
・特開平08−198131にて開示されている、ショックアブソーバの上端に配設されて各車輪に係る荷重を検出する荷重センサ。
・特開平10−024819にて開示されている、各車輪を支持する懸架装置に設けられて各車輪に作用する輪荷重を検出する輪荷重センサであって、懸架装置に設けられて懸架装置の歪を検出するような磁歪式センサやアクスルの歪みを検出するセンサ、もしくは、エアサスペンションのエアばね内圧を検出するセンサ。
・特開2005−106596にて開示されている、マクファーソンストラット形式の車輪懸架機構が設けられている車両の車輪荷重を検出するセンサであって、ショックアブソーバを内蔵し下端部がナックルの上部に支持され上端部が車体に支持されているサスペンション部材であるストラットに取り付けられた応力センサ。
・特開2006−058254にて開示されている、ブレーキロータの側面と対向する位置に設けられて当該ブレーキロータとの間の隙間を測定する変位センサと、この変位センサの検出した変位量から車輪にかかる荷重を検出する荷重演算手段とで構成される車輪荷重検出装置。
・特開2006−064650にて開示されている、車輪取付フランジを有するハブ輪の端部に設けられた加締部と等速ジョイントの外輪にて外方を向く端面との間に設けられる
磁歪材からなるリング状の荷重被検出部と、この荷重被検出部の磁歪層に働く歪量の変化を磁気抵抗変化として検出し、その磁気抵抗変化量によって車輪用軸受装置にかかる荷重を検出する荷重検出部とを備える車輪荷重検出装置。
・特開2003−336652にて開示されている、車体側軌道部材の円筒部とフランジ部とのなす角度の変形により、変位センサと着磁部との距離が変動し、当該着磁部によって生成されている磁場の変動量を検出する磁気センサと、この磁場変動量として出力された距離の変動量からタイヤの接地荷重の変動量を求める処理手段とを備えるセンサ装置。
・特開2007−024550にて開示されている、コイルスプリング下方に配置されるバンパーラバーと車体との間であってコイルスプリングに接触しないように設けられる歪ゲージ等で構成されて車輪の上下変位により生じるバンパーラバー反力を検出する荷重センサと、車輪の上下動に追従するサスペンションアームと車体との間隔を検出する変位センサとを備え、変位センサの検出値に基づいて決定されるスプリング反力と荷重センサにより検出されるバンパーラバー反力とにより輪荷重を演算して検出する輪荷重検出装置。
(6)輪荷重センサ41b〜44bにより輪荷重P1〜P4を検出することに代えて、例えば、車両に予め設けられているアクティブサスペンションの車高センサや以下に示すセンサ等の相対距離センサでもって検出される車体と各車輪との相対距離に基づいて路面に対する車体の傾斜度合を算出し、この傾斜度合から各車輪41〜44の輪荷重P1〜P4をそれぞれ推定して検出してもよい。
・特開平07−276956にて開示されている、各懸架装置の油圧シリンダに内蔵されて当該油圧シリンダの長さ、すなわち各車輪の車体フレームからの相対位置を検出するストロークセンサ。
・特開平08−282320にて開示されている、前後軸と車体との間に配設されて相対車高を検出する車高センサ。
また、加速度センサ、赤外線センサまたは画像カメラ等により車体の傾斜度合を算出し、この傾斜度合から各車輪41〜44の輪荷重P1〜P4をそれぞれ推定して検出してもよい。これにより、各輪荷重P1〜P4を検出するための輪荷重センサ41b〜44bを設けることなく、各輪荷重P1〜P4を推定して検出することができる。
(7)輪荷重センサ41b〜44bにより輪荷重P1〜P4を検出することに代えて、例えば、特開平08−156539にて開示されている空気圧センサにより各車輪41〜44の空気圧を検出し、この空気圧から各車輪41〜44の輪荷重P1〜P4をそれぞれ推定して検出してもよい。
また、各車輪41〜44の空気圧と各車輪41〜44のたわみ具合とを考慮して各車輪41〜44の輪荷重P1〜P4をそれぞれ推定して検出してもよい。
(8)脱輪状態である操舵輪の側面と側溝Dの側面との接触面Sにおける摩擦係数μは、予め所定の数値に設定されることに限らず、実際にある程度の脱輪復帰力を出力した場合に減少する脱輪状態である操舵輪の輪荷重に基づき摩擦係数μを推定してもよい。
(9)車輪駆動装置50により脱輪状態である操舵輪が回転駆動して発生し得る脱輪時最大回転駆動力FDmは、脱輪状態でない両操舵輪が回転駆動して発生し得る最大回転駆動力の1/3に設定されることに限らず、操舵輪の側面に作用させ得る押圧力の限界値が予め判っている場合にはこの押圧力の限界値と等しくなるように設定されてもよい。
(10)ステップS109において、モータ電流値iが過負荷電流値io以上であることから、脱輪復帰のための操舵により左前輪42の側面が側溝の側面に押圧されている状態であると判断してYesと判定することに限らず、実舵角δの変化量が実舵角δが一定値であると判断される角度差以下である場合に、脱輪復帰のための操舵により左前輪42の側面が側溝の側面に押圧されている状態であると判断して上記ステップS109にてYesと判定してもよい。
(11)上記各実施形態では、図1に示すように、アシストモータ24aから出力されるアシスト力をラック機構に伝達し得る、いわゆるラック式の電動式動力舵取装置を例示して説明したが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、アシストモータから出力されるアシスト力を減速機を介してピニオン軸23に伝達し得る、いわゆるコラム式の電動式動力舵取装置に適用してもよい。
また、ラック軸とモータとを平行に配置したいわゆるラックパラレル式の電気式動力舵取装置、ピニオン軸23を有するピニオン部にモータを配置したいわゆるピニオン式の電気式動力舵取装置、または、いわゆるデュアルピニオン式の電気式動力舵取装置等に適用してもよい。