JP2009030189A - 炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

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博志 櫻井
Hiroshi Hara
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Abstract

【課題】軟化点が極端に高い、または低いメソフェーズピッチは炭素繊維の原料として使うことができない等といった問題があった。そこで、放熱材料、樹脂補強材として好適に使用できる炭素繊維およびその製造方法を提供する。
【解決手段】軟化点の異なる少なくとも2種のメソフェーズピッチ原料からなるピッチ混合物を適正に準備し、この溶融物からメルトブロー法により炭素繊維前駆体を得、次いで不融化、焼成して炭素繊維を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は放熱材料、樹脂補強材として好適に使用できる炭素繊維およびその製造方法に関する。更に詳しくは、メルトブロー法によって製造した炭素繊維であって、従来炭素繊維の原料として使うことができなかった、極端に高い軟化点または低い軟化点を有する原料を有効に利用することができ、かつ放熱材料、樹脂補強材として好適に使用できる炭素繊維を提供することにある。
近年、携帯電話やPCの急速な発展に伴って高速化されたCPUや電子回路のジュール熱による発熱問題が取り上げられている。これらを解決するために、熱を効率的に処理する、いわゆるサーマルマネジメントの必要性が問われている。
熱伝導性の優れた物質として、例えば酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、石英、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物などが知られている。しかし、金属材料系の充填材は比重が高く複合材としたときに重量が大きくなる或いは、強度劣化が起こる等の問題点を内在していた。これを解決する方法として、炭素系材料であるカーボンブラックを用いる方法が提案されている。しかしながら、添加量の増加に伴い、粉落ちが生じるなどの問題点があった。
これら問題を解決する手段として、炭素繊維を用いる方法が提案されている。炭素繊維は金属材料系の充填材に比べて、同体積における複合材の重量を軽くできるだけでなく、強度が向上するといった特徴を有する。また、カーボンブラックに比べて、繊維特有のアンカー効果により粉落ちしにくいといった長所も有している。炭素繊維の放熱特性は、その黒鉛化性に大きく影響している。そのため一般にPAN系炭素繊維よりも、高い黒鉛化性を達成できるピッチ系炭素繊維、特にメソフェーズピッチを原料にした炭素繊維が用いられている(例えば、特許文献1等参照。)。
しかし、メソフェーズピッチは一般に軟化点が350℃を超えると、高粘度のために紡糸性が著しく低下するといった問題があった。一方、軟化点が230℃未満では紡糸性は良好であるが、次工程である不融化処理に長時間を必要とする。このため、生産性の低下を引き起こすといった問題があった。上記理由のために、紡糸性および不融化性のバランスを取るためには、適度な軟化点を有するメソフェーズピッチを原料として使用する必要があるといった問題があった。一方、連続工程において、軟化点の異なる原料を投入し、同条件で紡糸を行うと、口金圧力の大きな変動が生じて、炭素繊維前駆体の品質、最終的には炭素繊維の品質に大きく影響する。一般に、紡糸条件を変えることで口金圧力を復帰させることは可能であるが、品質が安定するまでの復帰時間内の炭素繊維前駆体は製品にすることができず、歩留の低下を引き起こすといった問題があった。
特許第2680183号公報
上記に述べたごとく、メソフェーズピッチを原料とする炭素繊維はその優れた黒鉛化性のために、放熱材料、樹脂補強材として好適に使用できる。しかし、軟化点が非常に高い場合は、その高粘度のために紡糸性の著しい低下をもたらす。一方、軟化点が低い場合は、紡糸性は良好であるが、次工程である不融化処理に長時間を必要とする。このため、生産性の低下を引き起こすといった問題があった。以上の理由から、軟化点が極端に高い、または低いメソフェーズピッチに関しては炭素繊維の原料として使うことができないといった問題があった。また、連続工程において、軟化点の異なる原料を投入し、同条件で紡糸を行うと、口金圧力の大きな変動を生じて、炭素繊維前駆体の品質、最終的には炭素繊維の品質に大きく影響する。一般に、紡糸条件を変えることで口金圧力を復帰させることは可能であるが、品質が安定するまでの復帰時間内の炭素繊維前駆体は製品として次工程にまわすことができず、歩留の低下を引き起こすといった問題があった。
本発明者らは、上記課題を解決するために、放熱材料または樹脂補強材として好適に用いることができないメソフェーズピッチ原料の利用方法について鋭意検討したところ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、下記(a)〜(d)の工程よりなる炭素繊維の製造方法が提供される。
(a)軟化点の異なる少なくとも2種のメソフェーズピッチ原料のピッチ混合物であって、その内2種のメソフェーズピッチ原料は、軟化点(SP)が1.5℃〜10℃の範囲で異なり、その2種の原料の混合比は重量で2:8〜8:2の範囲でありかつその2種の原料の合計は全混合物中80〜100重量%であるピッチ混合物を準備する工程(混合物調整工程)、
(b)前工程のピッチ混合物の溶融物をメルトブロー法により炭素繊維前駆体を得る工程(紡糸工程)、
(c)前工程の炭素繊維前駆体を酸化性雰囲気下にて不融化して不融化炭素繊維前駆体を得る工程(不融化工程)、および
(d)前工程の不融化炭素繊維前駆体を焼成して炭素繊維を得る工程(焼成工程)
前記本発明においては、ピッチ混合物が2〜5種のメソフェーズピッチ原料の混合物であること、ピッチ混合物は、その軟化点が230℃以上350℃以下の範囲にあること、ピッチ混合物は200〜400℃の軟化点を有するメソフェーズピッチ原料の混合物であること、ピッチ混合物は330℃、およびせん断速度7300s−1における溶融粘度が2〜30Pa・sであること、またはピッチ混合物はメソフェーズピッチのメソフェーズ率が90〜100%である態様も包含される。
本発明の炭素繊維は、軟化点の異なるメソフェーズピッチを少なくとも2種以上ブレンドしたピッチ混合物を原料に製造される。本方法を採用することで、従来使用することが出来なかったメソフェーズピッチを有効に利用できるだけでなく、バランスの取れた炭素繊維を安定して製造することができる。
次に、本発明の実施の形態について順次説明する。
本発明の炭素繊維の製造に用いる、溶融混合前のメソフェーズピッチ原料としてはナフタレン、アントラセンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が挙げることができる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が特に好ましい。また、溶融混合前の個々のメソフェーズピッチ原料の軟化点は200〜400℃の範囲にあることが好ましい。上記範囲を逸脱すると、ピッチ混合物から製造した炭素繊維の性能が著しく低下することがあるため好ましくない。溶融混合前の個々のメソフェーズピッチ原料の軟化点の好ましい範囲としては220〜380℃である。
本発明では、上述のメソフェーズピッチ原料を少なくとも2種以上溶融混合し、その内2種のメソフェーズピッチ原料は、軟化点(SP)が1.5℃〜10℃の範囲で異なり、その2種の原料の混合比は重量で2:8〜8:2の範囲でありかつその2種の原料の合計は全混合物中80〜100重量%であるピッチ混合物にすることで、その軟化点が230〜350℃の範囲にあることが好ましい。
ピッチ混合物の軟化点が230℃未満であると、炭素繊維前駆体を酸化性ガス雰囲気下で不融化する際に多大の時間を要し、生産性の低下を引き起こすため好ましくない。一方、350℃を越えると、ピッチ混合物から炭素繊維前駆体をメルトブロー法で製造する工程において、ピッチ混合物の溶融粘度が非常に高くなるため、紡糸性の著しい低下を引き起こすため好ましくない。ピッチ混合物の軟化点のより好ましい範囲は260〜330℃である。
本発明では、ピッチ混合物の330℃、およびせん断速度7300s−1において測定された溶融粘度が2〜30Pa・sの範囲にあることが好ましい。溶融粘度が2Pa・s未満であると、粘度が低いために紡糸直下で表面張力により丸くなり、糸品質の低下を引き起こすことがあり好ましくない。一方、30Pa・sを越えると最終的に得られる炭素繊維の断面像が強いラジアル構造となり、不融化前駆体を焼成する工程において炭素繊維にクラックが入るなどの問題が生じるため好ましくない。ピッチ混合物の330℃、およびせん断速度7300s−1において測定された溶融粘度のさらに好ましい範囲は6〜20Pa・sである。
上述のピッチ混合物を用いることで、平均繊維径が1〜20μm、平均繊維径に対する繊維径の分散値の百分率として求められるCV値が、3〜20%の範囲であり、平均繊維長が0.3〜100cmの範囲にある炭素繊維を下記(a)〜(d)の工程で製造することができる。
(a)軟化点の異なる少なくとも2種のメソフェーズピッチ原料のピッチ混合物であって、その内2種のメソフェーズピッチ原料は、軟化点(SP)が1.5℃〜10℃の範囲で異なり、その2種の原料混合比は重量で2:8〜8:2の範囲でありかつその2種の原料の合計は全混合物中80〜100重量%であるピッチ混合物を準備する工程(混合物調整工程)、
(b)前工程のピッチ混合物の溶融物をメルトブロー法により炭素繊維前駆体を得る工程(紡糸工程)、
(c)前工程の炭素繊維前駆体を酸化性雰囲気下にて不融化して不融化炭素繊維前駆体を得る工程(不融化工程)、
(d)前工程の不融化炭素繊維前駆体を焼成して炭素繊維を得る工程(焼成工程)
以下に、(a)〜(d)の工程について順に詳述する。
(a)混合物調整工程
本発明の第一の工程は、軟化点の異なるメソフェーズピッチ原料を少なくとも2種以上溶融混合し、その内2種のメソフェーズピッチは、軟化点(SP)が1.5℃〜10℃の範囲で異なり、その2種の原料の混合比は重量で2:8〜8:2の範囲でありかつその2種の原料の合計は全混合物中80〜100重量%であるピッチ混合物を調整する工程である。
ピッチ混合物はメルトブロー法で紡糸する際には、均一な溶融混合物になっていることが好ましい。このため、軟化点の異なるメソフェーズピッチ原料をドライブレンドした後に、溶融混練するのが好ましい。溶融混練の方法としては、例えば一軸押し出し機、二軸押し出し機、ニーダーなどの一般的に用いられる混練機を用いる方法などがある。溶融混練の温度としては使用する個々のメソフェーズピッチ原料の軟化点以上の温度で実施するのが好ましい。具体的には使用するメソフェーズピッチ原料の軟化点にもよるが200℃以上400℃以下である。200℃よりも混練温度が低いと十分に混練することができず好ましくない。一方、400℃を超えると溶融粘度が極端に低くなり十分な混練性を得られないばかりか、メソフェーズピッチ原料の分解も進行するため好ましくない。溶融混練のより好ましい範囲は230℃〜380℃である。
(b)紡糸工程
本発明では上述のピッチ混合物を用いて、メルトブロー法により炭素繊維前駆体を製造する。この際、キャピラリー内の溶融粘度が0.1〜30.0Pa・s、キャピラリー内の流速が0.05〜5.0m/sの範囲であることが好ましい。キャピラリー内の溶融粘度が0.1Pa・s未満であると、キャピラリーから出糸されたメソフェーズピッチが表面張力により球形となり、粉状物となるため好ましくない。一方、キャピラリー内の溶融粘度が30.0Pa・sを超えると、炭素繊維の断面構造が強いラジアル構造となり、焼成工程にて炭素繊維にクラックを生じさせることがある。その結果、最終的に得られる炭素繊維の品質を低下させるだけでなく、機械強度の低下を引き起こすため好ましくない。キャピラリー内の溶融粘度のより好ましい範囲は0.2〜20.0Pa・sである。本発明では、キャピラリー内の流速も、炭素繊維を製造するための重要な要因となる。すなわち、キャピラリー内の流速が0.05m/s未満であると、キャピラリーから出糸されたピッチが表面張力により球形となり、粉状物となるため好ましくない。一方、5.0m/sを越えると、メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体を良好に製造することができるが、その断面構造が強いラジアル構造となるため、上記で記載したような問題を発生するため好ましくない。キャピラリー内の流速のより好ましい範囲は、0.07〜3.0m/sの範囲である。
キャピラリー形状については特に制約はされるものではないが、キャピラリー孔の長さとキャピラリー径の比(長さ/径)が20よりも小さいものが好ましく用いられ、更に好ましくは10以下のものが用いられる。
紡糸時のノズルの温度についても特に制約はないが、安定した紡糸状態が継続できる温度として、ピッチ混合物の軟化点にもよるが、おおよそ250〜400℃の範囲にあることが好ましく、300〜360℃の範囲にあることが特に好ましい。キャピラリー孔から出糸されたメソフェーズピッチは、250〜400℃に加温された毎分100〜10000mのガスを細化点近傍で吹き付けられ、繊維化され、炭素繊維前駆体となる。吹き付けるガスは空気、窒素、アルゴン等を用いることができるが、コストパフォーマンスの点から空気が特に望ましい。炭素繊維前駆体は金網ベルト上に捕集され、連続的な不織布の形態として巻き取ることが出来る。
(c)不融化工程
本工程では、上記で得た炭素繊維前駆体を酸化性ガス雰囲気下で不融化して、不融化炭素繊維前駆体を製造する。炭素繊維前駆体の不融化処理は、炭素化もしくは黒鉛化された炭素繊維を得るために必要な工程であり、この工程を実施せず次工程である焼成工程に移ると、炭素繊維前駆体が熱分解したり、溶融して融着したりするなどの問題を生じる。使用するガス成分としては、酸化性のガスであれば特に制限はないが、例えば空気、酸素、ハロゲンガス、二酸化窒素、オゾンなどを採択することができる。これらの中でも、コストパフォーマンスと低温で速やかに不融化させうるという点から空気および/またはハロゲンガスを含む混合ガスである事が好ましい。なお、ハロゲンガスとしてはフッ素、ヨウ素、臭素などを取り上げることが出来るが、これらの中でもヨウ素が特に好ましい。ガス気流下での不融化の具体的な方法としては、温度150〜400℃、好ましくは180〜350℃で、1時間以下、好ましくは0.5時間以下で所望のガス雰囲気中で処理する事が好ましい。上記不融化により炭素繊維前駆体の軟化点は著しく上昇し、不融化炭素繊維前駆体となるが、所望の炭素繊維を得るという目的から、不融化炭素繊維前駆体の軟化点が400℃以上となる事が好ましく、500℃以上である事がさらに好ましい。
(d)焼成工程
本工程では、上記で得た不融化炭素繊維前駆体を不活性ガス雰囲気中で炭素化もしくは黒鉛化し炭素繊維を製造する。不融化炭素繊維前駆体の炭素化は真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガス中で焼成されるが、常圧で、且つコストの安い窒素中で実施するのが特に好ましい。炭素化の温度としては500〜2000℃、より好ましくは800〜1800℃である。通常2000℃を超える炭素繊維の焼成は黒鉛化と呼ばれ、窒素ガス等は電離を起こしてしまうため、アルゴン、クリプトンといった不活性ガスを使用する。炭素繊維の熱伝導率を高くするためには、2300〜3500℃で黒鉛化処理することが好ましく、さらには2500〜3200℃で処理するのが特に好ましい。
本発明の方法によれば、前記(a)〜(d)の工程により炭素繊維を不織布の形態として得ることが出来るが、必要により(c)不融化工程または(d)焼成工程の後に、不織布形態の繊維前駆体または炭素繊維を粉砕して短繊維形態とすることもできる。この粉砕手段については後述する。粉砕は(d)焼成工程の後に行うのが好ましい。
かくして本発明の方法によれば、従来使用することが出来なかったメソフェーズピッチ原料を有効に利用できるだけでなく、バランスの取れた炭素繊維を安定した条件で製造することができる。
本発明のもう一つの目的は、ピッチ混合物を原料として、機械特性、放熱特性等に優れたバランスの良い炭素繊維を提供することにある。すなわち、本発明の炭素繊維は、平均繊維径が1〜20μm、平均繊維径に対する繊維径の分散値の百分率として求められるCV値が、3〜20%の範囲であり、平均繊維長が3〜1000mmの範囲にある炭素繊維であって、その断面組織の少なくとも一部にラジアル構造、オニオン構造、ランダム構造、これら構造が複合した外層オニオン内層ラジアル構造、外層オニオン内層ランダム構造、ラジアルウェッジ構造、コンセントリック構造のいずれかを有していることが好ましい。これら中でも機械特性や放熱特性の観点から、断面組織の少なくとも一部にラジカル構造を有していることが好ましい。ただし、前述したごとく完全なラジアル構造は繊維断面方向にクラックを生じさせることがあり、最終的に得られる炭素繊維の品質を低下させるだけでなく、機械強度の低下を招くため、あくまで断面組織の一部にラジアル構造を有することが好ましい。なお、炭素繊維の断面組織は、通常1300℃以上に焼成した炭素繊維の断面顕微鏡観察から確認することが出来る。
本発明の炭素繊維の平均繊維径は1〜20μmの範囲にあることが好ましい。平均繊維径が1μm未満であると、メルトブロー法で炭素繊維前駆体を製造する際、不織布の形状を保持できなくなり、ハンドリングの低下を招くことがあり好ましくない。一方、20μmを越えると、不融化工程での不融化ムラが大きくなり部分的に融着が起こることがある。その結果、炭素繊維の品質、さらには最終的に得られる炭素繊維の品質を低下させることがあるため好ましくない。平均繊維径のより好ましい範囲は3〜18μm、さらに好ましくは5〜15μmである。糸径の平均値に対する糸径の分散値の百分率として求められるCV値は、3〜20%であることが望ましい。CV値が20%を超えると不融化工程でトラブルを起こしやすい平均繊維径20μmを超える炭素繊維前駆体が増え、生産性の観点から望ましくない。また、CV値が3%未満であると樹脂への高充填が困難となり好ましくない。より望ましくは3〜17%である。炭素繊維の平均長さは3〜1000mmである。3mmを下回ると繊維としてのハンドリングが困難になり、メルトブロー法で炭素繊維前駆体を製造する際、マットの形状を保持できなくなり、ハンドリング低下を引き起こすため好ましくない。一方1000mmを超えると、繊維の交絡が著しく増大し、マットの嵩高さが増し、やはりハンドリングが困難になるため好ましくない。平均繊維長のより好ましい範囲は5〜800mm、さらに好ましくは10〜500mmである。
本発明の炭素繊維は、その引っ張り弾性率が100〜1000GPa、引っ張り強度が1〜10GPa、伸度が0.1〜2%であることが好ましい。引っ張り弾性率、引っ張り強度および伸度が上記範囲から逸脱すると、樹脂に混ぜたときの補強効果が著しく低減するだけでなく、放熱特性の低下も引き起こすため好ましくない。引っ張り弾性率、引っ張り強度および伸度のより好ましい範囲としては、引っ張り弾性率で500〜1000GPa、引っ張り強度が3〜10GPa、伸度が0.1〜1.5%である。
本発明の炭素繊維は放熱材料として好適に使用される。熱伝導は主としてフォノンによって担われており、欠陥のない強い結合で結ばれていることが必要となる。炭素繊維の場合、黒鉛を形成する結晶において、結晶の厚み方向よりはむしろ六角網面の成長方向に熱が伝導することが知られている。このため、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが大きな役割を果たすことになる。六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズは公知の方法によって求めることができ、X線回折法にて得られる炭素結晶の(110)面からの回折線によって求めることができる。本発明の炭素繊維は六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが5nm以上であることが望ましく、より望ましくは10nm、さらに望ましくは20nm以上である。
本発明の炭素繊維は、メルトブロー法で製造したものであることから、不織布の形態として得ることができる。本発明の炭素繊維は前述したように不織布を粉砕して、粉砕物としても良い。不織布の粉砕方法としては、特に限定されるものではないが、乾式法では例えばボールミルを用いたボールミル粉砕方法、粉砕室に送られた原料が衝撃爪(ピン)と蓋に取り付けられた爪状のステータ(固定盤)との回転の結果、衝撃、せん断作用により微粉化する方法(インパクトミル)せん断粉砕方法、ハンマー式粉砕方法、ロッドミル方法、圧縮空気で粉体の相互衝突、相互摩擦により粉砕を行う方法(ジェットミル)、衝突粉砕方法、摩擦粉砕方法、遠心粉砕方法などを例示することができる。一方、湿式法としては、例えば水またはN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶剤中でジルコニアボールなどと一緒に仕込み、衝突・せん断などにより粉砕する方法などを例示することができる。本発明の炭素繊維は、上述の粉砕により平均繊維径1〜20μm、平均繊維長0.01〜2mmの粉砕物である炭素繊維フィラーとしても良い。
以下に本発明の実施例を述べる。尚、以下に記載される内容により本発明が限定されるものではない。
溶融混練前後のメソフェーズピッチの軟化点はMDTTLDR TOLDDO製のFP083HTを用い、2℃/分の昇温速度で測定を実施した。メソフェーズピッチの粘度特性はキャピラリーレオメーターCAPILOGRAPH 1D(株式会社東洋精機製作所)を用いて評価した。炭素繊維の平均繊維径、およびその断面組織は焼成した炭素繊維の破断面を走査型電子顕微鏡S−2400(株式会社日立製作所製)で観察することで確認した。炭素繊維の結晶子サイズは、X線回折に現れる(110)面からの反射を測定し、学振法にて求めた。また、粉砕後の炭素短繊維の平均繊維長の測定は、電子顕微鏡で1000本の繊維長を測り、その平均を取ることで評価した。
[実施例1]
軟化点が285℃、287℃、347℃である3種のメソフェーズピッチを、それぞれ50重量部、40重量部、10重量部をドライブレンド(重量分率、0.5:0.4:0.1)した。上記ドライブレンドしたメソフェーズピッチを栗本鉄鋼製KRCニーダーS1を用い、350℃で溶融混練した。なお、ピッチ混合物の軟化点は289.4℃であった。また、ピッチ混合物の330℃、およびせん断速度7300s−1における溶融粘度は13.8Pa・sであった。またこのピッチ混合物のメソフェーズ率は100%であった。
上述のピッチ混合物を331℃において、直径0.2mmφ、長さ2mmのキャピラリーからなる口金を用い、キャピラリー内流速0.21m/s(せん断速度:8413s−1)で送液し、かつキャピラリー横のスリットから毎分5500mで341℃の空気を吹き付けて、ピッチ混合物を牽引して平均直径13μmの炭素繊維前駆体からなる不織布を作成した。
上記炭素繊維前駆体からなる不織布を、空気雰囲気下200℃から300℃まで30分で昇温して不融化炭素繊維前駆体からなる不織布を得た。次いで、左記不織布をアルゴンガス雰囲気下で室温から2時間掛けて2000℃に焼成した。2000℃焼成した炭素繊維の断面顕微鏡観察から、断面組織の一部にラジアル構造を有しており、その平均繊維径は9μm、平均繊維径に対する繊維径の分散値の百分率として求められるCV値が15%、平均繊維長は14cmであった。
[実施例2]
前記実施例1で得られた不融化炭素繊維前駆体からなる不織布を、アルゴンガス雰囲気下で室温から1時間掛けて800℃に焼成した。次いで、800℃焼成した炭素繊維をセイシン企業(株)製のA−Oジェットミルを用いて粉砕した。左記粉砕物をアルゴンガス雰囲気下で室温から2時間掛けて2000℃に焼成した。2000℃焼成した炭素繊維の断面顕微鏡観察から、断面組織の一部にラジアル構造を有しており、その平均繊維径は9μm、平均繊維径に対する繊維径の分散値の百分率として求められるCV値が15%、平均繊維長は259μmであった。
[比較例1]
軟化点が347℃と376℃のメソフェーズピッチを、それぞれ50重量部ドライブレンド(重量分率、0.5:0.5)した。上記ドライブレンドしたメソフェーズピッチを栗本鉄鋼製KRCニーダーS1を用い380℃で溶融混練した。得られたピッチ混合物の軟化点は360℃であった。左記ピッチ混合物を370℃において、直径0.2mmφ、長さ2mmのキャピラリーからなる口金を用い、キャピラリー内流速0.156m/s(せん断速度:3116s−1)で送液し、かつキャピラリー横のスリットから毎分5500mで370℃の空気を吹き付けて、ピッチ混合物を牽引したが、メソフェーズピッチの分解によるガス発生で炭素前駆体繊維中に無数の泡をかみ込み、炭素前駆体繊維を得ることが出来なかった。

Claims (8)

  1. 下記(a)〜(d)工程よりなる炭素繊維の製造方法。
    (a)軟化点の異なる少なくとも2種のメソフェーズピッチ原料のピッチ混合物であって、その内2種のメソフェーズピッチ原料は、軟化点(SP)が1.5℃〜10℃の範囲で異なり、その2種の原料混合比は重量で2:8〜8:2の範囲でありかつその2種の原料の合計は全混合物中80〜100重量%であるピッチ混合物を準備する工程(混合物調整工程)、
    (b)前工程のピッチ混合物の溶融物をメルトブロー法により炭素繊維前駆体を得る工程(紡糸工程)、
    (c)前工程の炭素繊維前駆体を酸化性雰囲気下にて不融化して不融化炭素繊維前駆体を得る工程(不融化工程)、および
    (d)前工程の不融化炭素繊維前駆体を焼成して炭素繊維を得る工程(焼成工程)
  2. ピッチ混合物は2〜5種のメソフェーズピッチ原料の混合物である、請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  3. ピッチ混合物は、その軟化点が230℃以上350℃以下の範囲にある請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  4. ピッチ混合物は、200〜400℃の軟化点を有するメソフェーズピッチ原料の混合物である請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  5. ピッチ混合物は、330℃、およびせん断速度7300s−1における溶融粘度が2〜30Pa・sである、請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  6. ピッチ混合物は、メソフェーズピッチのメソフェーズ率が90〜100%である請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  7. 前記不融化工程または焼成工程の後に、不融化炭素繊維前駆体または焼成した炭素繊維を粉砕する請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  8. 平均繊維径が1〜20μm、平均繊維径に対する繊維径の分散値の百分率として求められるCV値が、3〜20%の範囲であり、平均繊維長が3〜1000mmの範囲にある請求項1記載の方法で製造された炭素繊維。
JP2007193367A 2007-07-25 2007-07-25 炭素繊維およびその製造方法 Pending JP2009030189A (ja)

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