JP2008285795A - 炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

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博志 櫻井
Hiroshi Hara
寛 原
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Abstract

【課題】断面組織の一部に少なくともコンセントリック構造を有し、すぐれた機械特性と放熱特性、および均一な粉砕性を有する炭素繊維を提供すること。
【解決手段】メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体をメルトブロー法で製造するにあたり、キャピラリー内でのメソフェーズピッチの溶融粘度を3Pa・sを超えて8Pa・s未満、流速を0.10〜1.20m/sとし、得られた炭素繊維前駆体に対し、不融化処理、および焼成処理を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は放熱材料、樹脂補強材として好適に使用できる炭素繊維に関する。更に詳しくは、メルトブロー法によって作成した炭素繊維であって、その断面組織の一部に少なくともコンセントリック構造を有する炭素繊維であり、従来の炭素繊維に比べて、優れた機械特性と放熱特性、および均一な粉砕性を有する炭素繊維に関する。
近年、携帯電話やPCの急速な発展に伴って高速化されたCPUや電子回路のジュール熱による発熱問題が取り上げられている。これらを解決するために、熱を効率的に処理する、いわゆるサーマルマネジメントの必要性が問われている。
熱伝導性の優れた物質として、例えば酸化アルミニウムや窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、石英、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物などが知られている。しかし、金属材料系の充填材は比重が高く複合材としたときに重量が大きくなる或いは、強度劣化が起こる等の問題点を内在していた。これを解決する方法として、炭素系材料であるカーボンブラックを用いる方法が提案されている。しかしながら、添加量の増加に伴い、粉落ちが生じるなどの問題点があった。
これら問題を解決する手段として、炭素繊維を用いる方法が考案されている。炭素繊維は金属材料系の充填材に比べて、同体積における複合材の重量を軽くできるだけでなく、強度が向上するといった特徴を有する。また、カーボンブラックに比べて、繊維特有のアンカー効果により粉落ちしにくいといった長所も有している。炭素繊維の放熱特性は、その黒鉛化性に大きく影響している。一般にPAN系炭素繊維よりも、高い黒鉛化性を達成できるピッチ系炭素繊維、特にメソフェーズピッチを原料にした炭素繊維が用いられている。メソフェーズピッチを原料にした炭素繊維の製造法としては、例えばメルトブロー紡糸による極細炭素繊維(紡糸時の平均平均平均繊維径5μm以下)の製造方法が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
メルトブロー法で作成した炭素繊維は、通常不織布の形態として得ることができる。しかしながら、先に述べたごとく、炭素繊維の熱伝導特性は黒鉛化性に大きく影響することが知られており、この黒鉛化性は炭素繊維の断面構造に強く影響することが報告されている(非特許1、2、3、4など)。
機械特性、放熱特性はそのグラファイト結晶厚みに大きく依存することが知られており、グラファイトの結晶はラジアル構造で大きくなることが知られている。通常メソフェーズピッチを紡糸すると、その強い配向性のためにラジアル構造が主体となるが、このラジアル構造は炭化処理により繊維半径方向に割れが入り、機械特性の低下を引き起こすなどの問題を生じていた。一方、炭素繊維の断面がランダム構造の場合、均一な粉砕物を得ることができるが、ラジアル構造のような大きなグラファイト結晶に成長せず、結果として放熱特性の低下を引き起こすといった問題を有していた。
特許第2680183号公報 炭素 1991 [No147] 57−65 炭素 1991 [No147] 66−73 Carbon 30 (1992) 619−629 High−performance fiber WOODHEAD PUBLISHING LIMITED Edited by J W S Hearle 176−183
上記に述べたごとく、炭素繊維の熱伝導特性は黒鉛化性に大きく影響することが知られており、この黒鉛化性は炭素繊維の断面構造にも強く影響する。ラジアル構造から形成された炭素繊維は優れた熱伝導性を有することが期待できるが、従来炭化処理により繊維半径方向に割れが入り、熱処理温度を高くなるにつれて大きく口を開いてしまい、熱伝導性だけではなく機械特性の低下を引き起こすといった問題があった。また、ランダム構造から形成された炭素繊維は均一な粉砕物を与えることができるが、ラジアル構造のような大きなグラファイト結晶に成長せず、結果として放熱特性の低下を引き起こすといった問題を有していた。
本発明者らは、放熱および機械特性に優れた炭素繊維およびその製造方法について検討したところ、その断面組織の少なくとも一部がコンセントリック構造である炭素繊維を、特定の粘度特性を有するメソフェーズピッチを用い、かつ特定の条件で紡糸することで製造できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明の目的は、
(1)メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体をメルトブロー法で製造する工程、(2)炭素繊維前駆体を酸化性ガス雰囲気下で不融化して、不融化炭素繊維前駆体を製造する工程、(3)不融化炭素繊維前駆体を焼成する工程を含む炭素繊維の製造方法であって、炭素繊維前駆体を製造する工程(1)のメルトブロー法におけるキャピラリー内でのメソフェーズピッチの溶融粘度が3Pa・sを超えて8Pa・s未満(30ポイズを超えて80ポイズ未満)、メソフェーズピッチのキャピラリー内の流速が0.10〜1.20m/sの範囲にあることを特徴とする炭素繊維の製造方法によって達成される。
本発明には、さらに、メソフェーズピッチが、340℃に加熱したときのせん断速度10000s−1における溶融粘度が、0.5〜5Pa・s(5〜50ポイズ)であることも包含される。
本発明の他の目的は、上記記載の製造方法によって得られた、平均繊維径が1〜20μmであって、断面組織の少なくとも一部がコンセントリック構造である炭素繊維によって達成される。
本発明の炭素繊維は、その断面組織を制御して製造することで、優れた放熱特性を有するだけでなく、均一な粉砕物を製造することができる。
次に、本発明の実施の形態について順次説明する。
本発明の炭素繊維はメソフェーズピッチから作成した炭素繊維であって、その断面組織の一部に少なくともコンセントリック構造を有する。炭素繊維の断面組織は、通常1300℃以上に焼成した炭素繊維の断面顕微鏡観察から確認することが出来る。炭素繊維の断面構造としては、ラジアル構造、オニオン構造、ランダム構造、これら構造が複合した外層オニオン内層ラジアル構造、外層オニオン内層ランダム構造、ラジアルウェッジ構造などが報告されている。炭素繊維の断面構造にラジアル構造を含むと、グラファイトの大きな結晶成長により優れた放熱特性を有する反面、炭化処理により繊維半径方向に割れが入り、機械特性の低下を引き起こすなどの問題を有していた。一方、炭素繊維の断面にランダム構造を持つ場合、均一な粉砕物を得ることができるが、ラジアル構造のような大きなグラファイト結晶に成長せず、結果として放熱特性の低下を引き起こすといった問題を有していた。放熱特性と機械特性の両特性をバランスよく満足するといった観点から、鋭意検討を進めたところ、炭素繊維の断面にコンセントリック構造を有していることが好ましいことが分かった。
本発明の炭素繊維の平均繊維径は1〜20μmの範囲にあることが好ましい。平均繊維径が1μm未満であると、メルトブロー法で炭素繊維前駆体を製造する際、不織布の形状を保持できなくなり、ハンドリングの低下を招くことがあり好ましくない。また、粉砕時のハンドリング性も低下し好ましくない。一方、20μmを越えると、不融化工程での不融化ムラが大きくなり部分的に融着が起こることがある。その結果、炭素繊維の品質を低下させることがあるため好ましくない。平均繊維径のより好ましい範囲は3〜18μm、さらに好ましくは5〜15μmである。
平均繊維径に対する繊維径の分散値の百分率として求められるCV値は、20%以下であることが望ましい。より望ましくは17%以下である。CV値が20%を超えると不融化工程でトラブルを起こしやすい平均繊維径20μmを超える炭素繊維前駆体が増え、生産性の観点より望ましくない。炭素繊維の平均長さは0.01〜1000mmである。0.01mmを下回ると繊維としてのハンドリングが困難になり、メルトブロー法で炭素繊維前駆体を製造する際、マットの形状を保持できなくなり、ハンドリング低下を引き起こすため好ましくない。一方、1000mmを超えると、繊維の交絡が著しく増大し、マットの嵩高さが増し、やはりハンドリングが困難になるため好ましくない。平均繊維長のより好ましい範囲は1〜800mm、さらに好ましくは10〜500mmである。
通常メルトブロー法で紡糸した炭素繊維は、不織布として得ることができる。本発明の炭素繊維は不織布を粉砕して、粉砕物としても良い。不織布の粉砕方法としては、特に限定されるものではないが、乾式法では例えばボールミルを用いた方法、粉砕室に送られた原料が衝撃爪(ピン)と蓋に取り付けられた爪状のステータ(固定盤)との回転の結果、衝撃、せん断作用により微粉化する方法(インパクトミル)、圧縮空気で粉体の相互衝突、相互摩擦により粉砕を行う方法(ジェットミル)などを例示することができる。一方、湿式法としては、例えば水またはN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶剤中でジルコニアボールなどと一緒に仕込み、衝突・せん断などにより粉砕する方法などを例示することができる。本発明の炭素繊維は、上述の粉砕により平均繊維径1〜20μm、繊維長0.01〜5mmの粉砕物としても良い。
本発明の炭素繊維は放熱材料として好適に使用される。熱伝導は主としてフォノンによって担われており、欠陥のない強い結合で結ばれていることが必要となる。炭素繊維の場合、黒鉛を形成する結晶において、結晶の厚み方向よりはむしろ六角網面の成長方向に熱が伝導することが知られている。このため、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが大きな役割を果たすことになる。本発明の炭素繊維の断面組織の少なくとも一部はコンセントリック構造であるが、このコンセントリック構造が優れた熱伝導性、機械特性を有するのは、ひとえに他の断面構造に比べて六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが大きいことに起因する。六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズは公知の方法によって求めることができ、X線回折法にて得られる炭素結晶の(110)面からの回折線によって求めることができる。本発明の炭素繊維は六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが20〜150nmである。結晶子サイズが20nm未満であると、十分な熱伝導特性を有することが出来ず好ましくない。一方、150nmを越えると炭素繊維の引っ張り強度が低下し好ましくない。熱伝導と機械特性のバランスを取るためには20〜130nmが好ましく、さらには30〜120nmが好ましい。
本発明の炭素繊維は、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズを20〜150nmにするために、メソフェーズピッチを原料に用いるのが好ましい。メソフェーズピッチとしては、ナフタレン、アントラセンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が挙げることができる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が特に好ましい。
本発明で使用するメソフェーズピッチとしては、特に340℃、せん断速度10000s−1における溶融粘度として、0.5〜5Pa・s(5〜50ポイズ)であるものを使用することが好ましい。メソフェーズピッチの340℃におけるせん断速度10000s−1での溶融粘度が0.5Pa・s(5ポイズ)未満である場合、低沸点成分が原料中に過剰に含まれているためガス発生による紡糸低下を引き起こし好ましくない。一方、5Pa・s(50ポイズ)を超える場合、メソフェーズピッチの軟化温度が高くなり、紡糸性が著しく低下するためいずれも好ましくない。メソフェーズピッチの340℃におけるせん断速度10000s−1での溶融粘度は1〜4Pa・s(10〜40ポイズ)が好ましく、1〜3Pa・s(10〜30ポイズ)が特に好ましい。なお、ここで言うメソフェーズピッチとは光学的異方性を有するピッチを指している。
本発明のもう一つの目的は、メソフェーズピッチから作成した平均繊維径1〜20μmの炭素繊維であって、かつその断面組織の少なくとも一部がコンセントリック構造である炭素繊維を製造する方法を提供することにある。
本発明の炭素繊維は、(1)メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体を製造する工程、(2)炭素繊維前駆体を酸化性ガス雰囲気下で不融化して、不融化炭素繊維前駆体を製造する工程、(3)不融化炭素繊維前駆体を焼成して炭素繊維を得る工程を経て製造される。以下に各工程について順に説明する。
(1)メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体を製造する工程
本発明の第一の工程は、メルトブロー法によりメソフェーズピッチから炭素繊維前駆体を製造する。断面組織の少なくとも一部がコンセントリック構造である炭素繊維を製造するためには、メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体を製造する本工程が最も重要な工程となる。具体的には、紡糸時のキャピラリー内の溶融粘度が3Pa・sを超えて8Pa・s未満(30ポイズを超えて80ポイズ未満)、キャピラリー内の流速が0.10〜1.20m/sの範囲であることが好ましい。キャピラリー内の溶融粘度が3Pa・s(30ポイズ)以下であると、炭素繊維の断面構造にコンセントリック構造が発現しないため好ましくない。一方、キャピラリー内の溶融粘度が8Pa・s(80ポイズ)以上の場合、メソフェーズピッチ特有の分子配向により、非常に強いラジアル構造が発現し、結果として炭化処理により繊維半径方向に割れが入り、機械特性の低下を引き起こすため好ましくない。キャピラリー内の溶融粘度のより好ましい範囲は4〜7Pa・s(40〜70ポイズ)である。ピッチの溶融粘度は、その樹脂温度やキャピラリーを通過する際の剪断速度により大きく変化し、ニュートン流体または非ニュートン流体的な振る舞いをする。従って、キャピラリー内の溶融粘度を目的の範囲に入れるためには、あらかじめキャピラリーレオメーター等の測定装置により、溶融粘度の温度依存性とせん断速度依存性を求めておき、キャピラリーを通過するピッチの溶融粘度をせん断速度と温度で制御することが必要となる。
本発明では、キャピラリー内の流速も、断面組織の少なくとも一部がコンセントリック構造である炭素繊維を製造するための重要な要因となる。すなわち、キャピラリー内の流速が0.10m/s未満であると、メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体を良好に製造することができるが、その断面構造がコンセントリック構造にならないため好ましくない。一方、1.20m/sを越えると、非常に強いラジアル構造が発現し、結果として炭化処理により繊維半径方向に割れが入り、機械特性の低下を引き起こすため好ましくない。キャピラリー内の流速のより好ましい範囲は、0.12〜0.30m/sの範囲であることが好ましい。キャピラリーを通過するピッチはギヤポンプで定量的に送液される。従って、キャピラリーを通過するピッチの流速はギヤポンプの回転数により制御することができる。キャピラリーを通過するピッチの流速は、口金のホール数、キャピラリーの形状、時間当たりのピッチの送液量が決まれば一義的に決定される。
キャピラリー形状については特に制約はされるものではないが、キャピラリー孔の長さとキャピラリー径の比が20よりも小さいものが好ましく用いられ、更に好ましくは10以下のものが用いられる。紡糸時のノズルの温度についても特に制約はないが、安定した紡糸状態が維持できる温度として、メソフェーズピッチの種類にもよるが、おおよそ250〜400℃の範囲にあることが好ましく、300〜360℃の範囲にあることが特に好ましい。キャピラリー孔から出糸されたメソフェーズピッチは、250〜400℃に加温された毎分100〜10000mのガスを細化点近傍で吹き付けられ、短繊維化され、炭素繊維前駆体となる。吹き付けるガスは空気、窒素、アルゴン等を用いることができるが、コストパフォーマンスの点から空気が特に望ましい。炭素繊維前駆体は金網ベルト上に捕集され、連続的な不織布として巻き取ることが出来る。
(2)炭素繊維前駆体を酸化性雰囲気で不融化して、不融化炭素繊維前駆体を製造する工程
本発明の第二の工程では、上記で得た炭素繊維前駆体を酸化性ガス雰囲気下で不融化して、不融化炭素繊維前駆体を製造する。炭素繊維前駆体の不融化処理は、炭素化もしくは黒鉛化された炭素繊維前駆体を得るために必要な工程であり、これを実施せず次工程である焼成工程に移ると、炭素繊維前駆体が熱分解したり、溶融して融着したりするなどの問題を生じる。
使用するガス成分としては、酸化性ガスであれば特に制限はないが、例えば空気、酸素、ハロゲンガス、二酸化窒素、オゾンなどを採択することができる。これらの中でも、コストパフォーマンスと低温で速やかに不融化させうるという点から空気および/またはハロゲンガスを含む混合ガスである事が好ましい。なお、ハロゲンガスとしてはフッ素、ヨウ素、臭素などを取り上げることが出来るが、これらの中でもヨウ素が特に好ましい。
ガス気流下での不融化の具体的な方法としては、温度150〜350℃、好ましくは180〜320℃で、1時間以下、好ましくは0.5時間以下で所望のガス雰囲気中で処理する事が好ましい。上記不融化により炭素繊維前駆体の軟化点は著しく上昇し、不融化炭素繊維となるが、所望の炭素繊維を得るという目的から、不融化炭素繊維前駆体の軟化点が400℃以上となる事が好ましく、500℃以上である事がさらに好ましい。
(3)不融化炭素繊維前駆体を焼成して炭素繊維を得る工程
本発明の第三の工程では、上記で得た不融化炭素繊維前駆体を不活性ガス雰囲気中で炭素化もしくは黒鉛化し炭素繊維を製造する。不融化炭素繊維前駆体の焼成は真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガス中で焼成されるが、常圧で、且つコストの安い窒素中で実施するのが特に好ましい。炭素化の温度としては500〜2000℃、より好ましくは800〜1800℃である。通常2000℃を超える炭素繊維の焼成は黒鉛化と呼ばれ、窒素ガス等は電離を起こしてしまうため、アルゴン、クリプトンといった不活性ガスを使用する。炭素繊維の熱伝導率を高くするためには、2300〜3500℃で処理することが好ましく、さらには2500〜3200℃で処理するのが特に好ましい。
上述の(1)メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体を製造する工程、(2)炭素繊維前駆体を酸化性ガス雰囲気下で不融化して、不融化炭素繊維前駆体を製造する工程、(3)不融化炭素繊維前駆体を焼成して炭素繊維を得る工程を経ることで、平均繊維径が1〜20μmであって、断面組織の少なくとも一部がコンセントリック構造である炭素繊維を得ることができる。上述の処理に従って製造した炭素繊維は通常不織布として得られるが、場合によっては上述で述べた粉砕処理を施し、粉砕物としても良い。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものでは無い。尚、実施例中の各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)炭素繊維の平均繊維径、および繊維一本の断面組織
2000℃に焼成した炭素繊維の破断面を走査型電子顕微鏡S−2400(株式会社日立製作所製)で観察することで確認した。炭素繊維の破断(粉砕)には、遊星ボールミル装置PM400(株式会社Retsch製)を用い、走査型電子顕微鏡S−2400(株式会社日立製作所製)により粉砕程度を評価した。なお、任意の60本の繊維径を測定しこれらの平均値を平均繊維径とした。
(2)炭素繊維の結晶子サイズ
X線回折に現れる(110)面からの反射を測定し、学振法にて求めた。
(3)メソフェーズピッチの粘度特性
キャピラリーレオメーターCAPILOGRAPH 1D(株式会社東洋精機製作所)を用いて評価した。
(4)紡糸におけるメソフェーズピッチのキャピラリー内流速
ギヤポンプから送液される時間当たりの送液量からキャピラリーを通過する樹脂速度を算出することで求めた。
(5)キャピラリー内におけるメソフェーズピッチの溶融粘度
紡糸時の樹脂温度とキャピラリー内流速から、キャピラリーレオメーターを用いて評価した。
[実施例1]
340℃、せん断速度10000s−1における溶融粘度が3.2Pa・s(32ポイズ)である、メソフェーズピッチを原料に用いた。この原料を329℃において、直径0.2mmφ、長さ2mmのキャピラリーからなる口金を用い、キャピラリー内流速0.156m/s(せん断速度:6232s−1)で送液し、かつキャピラリー横のスリットから毎分5500mで333℃の空気を吹き付けて、メルトブロー法により溶融メソフェーズピッチを牽引して平均繊維径11μmの炭素繊維前駆体からなる不織布を作成した。なお、キャピラリーレオメーターで評価した329℃、0.156m/sにおけるキャピラリー内の溶融粘度は5.5Pa・s(55ポイズ)であった。
上記炭素繊維前駆体からなる不織布を、空気雰囲気下200℃から300℃まで30分で昇温して不融化炭素繊維前駆体からなる不織布を得た。次いで、左記不織布をアルゴンガス雰囲気下で室温から1時間掛けて2000℃に焼成した。2000℃焼成した炭素繊維の断面顕微鏡観察(図1参照)から、半径方向に組織が配列した断面構造であることが確認できた。
次いで、この炭素繊維をさらにアルゴンガス雰囲気下2800℃で焼成した。得られた黒鉛化炭素繊維の平均平均繊維径は7μmであり繊維の半径方向に割れは認められなかった。また、X線測定から六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズは40nmであった。
上記の黒鉛化炭素繊維からなる不織布1重量部を乳鉢で軽くすり潰し、エタノールに浸した後、100重量部の水と1mmのジルコニアボール350重量部を500ccのステンレス容器に仕込み、遊星ボールミル装置を用い100rpmで1時間粉砕処理した。粉砕物の顕微鏡観察を行ったところ、竹が裂けたような状態は認められず、均一な粉砕物を得ることができた。
[比較例1]
芳香族炭化水素からなるメソフェーズ率100%、軟化温度272℃のメソフェーズピッチを、339℃において、直径0.2mmφ、長さ2mmのキャピラリーからなる口金を用い、キャピラリー内流速0.078m/s(せん断速度:3116s−1)で送液し、かつキャピラリー横のスリットから毎分5500mで342℃の空気を吹き付けてメルトブロー法により溶融メソフェーズピッチを牽引したが、キャピラリー出口で表面張力に負けて粉状物となり、炭素繊維前駆体を得ることができなかった。なお、パック圧ΔPは0.31MPa(3.16kgf/cm)であり、溶融粘度は2.5Pa・s、せん断応力は7.7KPaであった。
[比較例2]
340℃、せん断速度10000s−1における溶融粘度が3.2Pa・s(32ポイズ)である、メソフェーズピッチを原料に用いた。この原料を320℃において、直径0.2mmφ、長さ2mmのキャピラリーからなる口金を用い、キャピラリー内流速0.078m/s(せん断速度:3116s−1)で送液し、かつキャピラリー横のスリットから毎分5500mで322℃の空気を吹き付けて、メルトブロー法により溶融メソフェーズピッチを牽引して平均繊維径12μmの炭素繊維前駆体からなる不織布を作成した。なお、キャピラリーレオメーターで評価した320℃、0.078m/sにおけるキャピラリー内の溶融粘度は23.7Pa・s(237ポイズ)であった。
上記炭素繊維前駆体からなる不織布を、空気雰囲気下200℃から300℃まで30分で昇温して不融化炭素繊維前駆体からなる不織布を得た。次いで、この不織布をアルゴンガス雰囲気下で室温から1時間掛けて2000℃に焼成した。2000℃焼成した炭素繊維の断面顕微鏡観察から、半径方向に組織が配列したラジアル構造であることが確認できた。次いで、左記炭素繊維をさらにアルゴンガス雰囲気下2800℃で焼成した。得られた黒鉛化炭素繊維の平均繊維径は10μmであり繊維の半径方向に割れは認められなかった。また、X線測定から六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズは45nmであった。
上記の黒鉛化炭素繊維からなる不織布1重量部を乳鉢で軽くすり潰し、エタノールに浸した後、100重量部の水と1mmのジルコニアボール350重量部を500ccのステンレス容器に仕込み、遊星ボールミル装置を用い100rpmで1時間粉砕処理した。粉砕物の顕微鏡観察を行ったところ、竹が裂けたような状態となり、均一な粉砕物を得ることができなかった。
実施例1の操作によって得られた炭素繊維の断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真図(撮影倍率6000倍)である。

Claims (3)

  1. (1)メソフェーズピッチから炭素繊維前駆体をメルトブロー法で製造する工程、(2)炭素繊維前駆体を酸化性ガス雰囲気下で不融化して、不融化炭素繊維前駆体を製造する工程、(3)不融化炭素繊維前駆体を焼成する工程を含む炭素繊維の製造方法であって、
    炭素繊維前駆体を製造する工程(1)のメルトブロー法におけるキャピラリー内でのメソフェーズピッチの溶融粘度が3Pa・sを超えて8Pa・s未満(30ポイズを超えて80ポイズ未満)、メソフェーズピッチのキャピラリー内の流速が0.10〜1.20m/sの範囲にあることを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  2. メソフェーズピッチが、340℃に加熱したときのせん断速度10000s−1における溶融粘度が、0.5〜5Pa・s(5〜50ポイズ)である、請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の製造方法によって得られた、平均繊維径が1〜20μmであって、断面組織の少なくとも一部がコンセントリック構造である炭素繊維。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010071226A1 (ja) * 2008-12-19 2010-06-24 帝人株式会社 炭素繊維およびその製造方法

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