JP6307395B2 - 放熱シート - Google Patents

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Description

本発明は、軽量で高放熱性、低膨張性に優れ、かつ安価な放熱シートに関するものである。
近年、電子機器の薄型化軽量化に対するニーズが高まっており、電子デバイスの小型・高集積化が進められている。電子デバイスのコンパクト化に伴い、高放熱性、低熱膨張性を備えた放熱部材が求められるようになっている。
この種の放熱部材として、従来、熱伝導率の高いアルミや銅等の金属が用いられているが、さらなる高熱伝導性、低膨張性の向上が求められており、これを実現する材料として、軽量で高放熱性、低膨張性の性能を合わせ持ったピッチ系炭素繊維が注目されている。例えば、ピッチ系炭素繊維を出発原料とした炭素繊維及び樹脂からなる炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPと称する)等の炭素繊維複合材が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ピッチ系黒鉛化炭素繊維と金属種を含むマトリクス材料を複合させたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2008−66375号公報 特開2010−34089号公報
しかしながら、CFRPは面内方向の熱伝導性に優れているが、面外方向の熱伝導率については熱伝達が不十分である。メソフェーズを原料とする異方性ピッチ系炭素繊維は繊維方向における熱伝導率が相対的に高く、繊維方向と直交する方向における熱伝導率が相対的に低い異方性の大きな繊維である。そのため、クロス状、又はプリプレグ状にしてマトリックス樹脂と複合させて作製するCFRPは、面内方向の熱伝導率が相対的に高く、面外方向の熱伝導率が相対的に低くなるため、放熱性が十分でない。
また、CFRPの高放熱性を実現するためには、高熱伝導率の炭素繊維を原料として用いなければならない。つまり、高熱伝導率と高弾性率とは互いに相関関係があり、高熱伝導率の炭素繊維、つまり高弾性の炭素繊維を原料として用いなければならない。しかしながら、炭素繊維が高弾性であるほど、そのハンドリング性が悪くなり製造が難しくなる上、高弾性の炭素繊維ほど高価であることから製造コストが割高となる問題が生じる。
一方、カーボン・カーボンコンポジット(以下C/Cとする)として知られる材料は炭素を炭素繊維で強化した材料であるが一般的にその熱伝導率は40−50W/mKである。熱伝導率が300W/mKを越える特殊な材料が知られているが、このC/C材はCVD、CVIなど特殊な製造技術で作られ、非常に高価である。また、その特性上熱膨張率は数ppm/Kと正の値である。
熱膨張率が負であることは、多くの材料の熱膨張率が正であることから、負の熱膨張率の材料と一般的な正の熱膨張率の材料と組み合わせることで熱膨張率を制御することが可能となる。また、この時、負の熱膨張率側の材料の弾性率が高いことが極めて重要となる。これは熱膨張率の複合則では黒鉛化後の弾性率の高い材料の熱膨張率が支配的になることによる。このような材料の組み合わせにより、狭ピッチ化が進む電子デバイスでは回路基板とシリコンとの熱膨張率差により過剰な熱応力負荷が加わることで接合部の信頼性が著しく低下していた。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、軽量で高熱伝導性、低膨張性に優れ、かつ安価な高放熱シートを提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
(1)繊維長が10〜100mmの短繊維である炭素繊維前駆体を黒鉛化処理した炭素繊維を含む放熱シートであって、前記炭素繊維前駆体は、以下の条件(A)〜(B)を満足しており、該放熱シートは、以下の条件(C)を満足していることを特徴とする放熱シート。
(A)前記炭素繊維前駆体は、異方性ピッチを出発原料としている
(B)前記炭素繊維前駆体の繊維断面における平均ドメインサイズは200nm以上1000nm以下である
(C)シートの面内方向における熱伝導率が140W/mK以上であり、前記面内方向に対して直交する面外方向における熱伝導率が30W/mK以上である。
(2)上記(1)の構成において、さらに、以下の条件(D)を満足する。
(D)室温での前記面内方向における熱膨張率が−2ppm/K以上0ppm/K以下である。
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記炭素繊維前駆体はバインダーピッチ粉末、コークス粉末及び粘結剤とともに前記黒鉛化処理されている。
(4)上記(1)〜(3)の構成において、前記黒鉛化処理の温度は、2800℃以上3200℃以下とすることができる。
(5)上記(1)〜(4)の構成において、無電解あるいは電解メッキ法、CVD法、溶射法のうちいずれかの方法によって、Al、Si、Ti、Mg、Ni、Cu、Fe、Sn、Zn、Au、Ag、Pt、Crからなる所定元素のうち一種又は二種以上、或いは前記所定元素の化合物で表面処理することができる。
本発明によれば、軽量で高熱伝導性、低膨張性に優れ、かつ安価な高放熱シートを提供することができる。
炭素繊維前駆体の工程図である。 紡糸ノズル部の拡大図である。 縮流部に設けた直線状に配置した穴と導入孔の関係を示した図である。 カーボン・カーボンコンポジット材の工程図である。 カーボン・カーボンコンポジット材の外観斜視図(概略図)である。 偏光顕微鏡による撮影画像(左側)と、この撮影画像を画像処理した処理画像である。 比較例3の暗視野像である。
本発明の一実施形態である高放熱性、低熱膨張性を備えたC/C材(放熱シートに相当する)の製造方法について説明する。ただし、ここで説明する製造方法は、本発明の例示であり、これによって限定されるものではない。
本実施形態のC/C材は、炭素繊維前駆体を非常に高い温度で加熱する黒鉛化処理を実施することにより製造される。特に、炭素繊維前駆体の製造に用いられる繊維と、黒鉛化処理するときの温度に特徴がある。
(炭素繊維前駆体について)
図1は、炭素繊維前駆体の製造工程を示す工程図である。出発原料として異方性ピッチが用いられる。
異方性ピッチは、所定のピッチに対してメソフェーズを発生させ、これを曳糸性に富むピッチに改質することで得られる。蒸留や溶剤抽出、必要に応じて水素化等を行い、さらにろ過等で不純物を取り除き、熱重合により改質を行う。メソフェーズの発生は、ピッチ自体の特性により高温熱処理によって達成させる。所定のピッチとして、コールタール、コールタールピッチ等の石炭系ピッチ、石炭液化ピッチ、エチレンタールピッチ、流動接触触媒分解残査油から得られるデカントオイルピッチ等の石油系ピッチ、あるいはナフタレン等から触媒などを用いて生成される合成ピッチ等を用いることができる。異方性ピッチの全体を100体積%としたとき、好ましくは、メソフェーズの含有量は60体積%以上である。メソフェーズの含有量を60体積%以上とすることで、高温で焼成した際に容易に黒鉛構造に転換することができる。メソフェーズの含有量を80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上とすることで、上述の効果がより得られやすくなる。
異方性ピッチの軟化点は、好ましくは200〜400℃であり、より好ましくは250〜350℃である。したがって、これらの軟化点を満足する異方性ピッチが好適に用いられる。軟化点が200℃未満になると、後述する不融化工程での反応温度が制限され、反応の進行が緩慢となるため、不融化されにくくなる。また軟化点が400℃超になると、紡糸時の操作温度がピッチの分解温度に達して、紡糸性が阻害される。異方性ピッチを出発原料として得られる炭素繊維前駆体は、熱膨張率が負の値となる。
工程S1において、異方性ピッチを所定の紡糸条件で溶融紡糸する。例えば、異方性ピッチを吐出孔から所定圧力で押し出しながら所定の引き取り速度で延伸し、所定の繊維径のピッチ繊維を得る。異方性ピッチの温度は、好ましくは、粘度100〜1500ポイズを示す温度であり、より好ましくは200〜800ポイズを示す温度である。吐出孔の口径は、好ましくは、0.05mm〜0.5mmである。圧力は、好ましくは、1〜200kg/cmである。引き取り速度は、好ましくは、100〜2000m/minである。延伸後の繊維径は、好ましくは、5〜20μmである。
平均ドメインサイズを200〜1000nmの範囲に入るように調整した炭素繊維前駆体に対して、後述する黒鉛処理を実施することにより熱伝導率が非常に高くなる。
図2及び図3を参照しながら、平均ドメインサイズの調整方法について詳細に説明する。図2は紡糸ノズル部の拡大図であり、図3は縮流部に設けた直線状に配置した穴と導入孔の関係を示した図である。図2を参照して、導入孔入口部で複数の縮流部孔1が略直線状に形成されており、これらの縮流部孔1を通過したのち導入孔2で拡大し、その導入孔2から吐出孔5に至る形状が、所定の角度を形成するアプローチ部(縮流部)3で縮流し、アプローチ部3の終端で一旦平坦部4とし、この平坦部4に設けられた断面形状が円形である吐出孔5を通過させて、紡糸される。
縮流部孔1の孔数は、2〜3個であり、好ましくは2個である。これらの縮流部孔1は、導入孔2の径方向に並設することができる。各縮流部孔1は楕円状に形成することができる。また、縮流部孔1の長径D1と短径D1´との短長比は2〜4である。短径D1´は例えば0.05mm〜1mmに設定することができる。縮流部孔1の数を上述のように限定することで、ドメインサイズが大きくなる。また、縮流部孔1の開口面積を変えることにより、ドメインサイズを調整することができる。
炭素繊維前駆体に於けるドメインの大きさが熱伝導率に与える影響について説明する。炭素繊維前駆体に対して後述する黒鉛化処理を実施することで黒鉛結晶が生成されるが、ドメインが、高温で焼成した際の熱伝導率に大きく関係することが、本発明者らの研究によって明らかとなった。言い換えると、ドメインと黒鉛化処理時の温度は熱伝導率に大きく関係しており、ドメインを所定範囲に制限するとともに、黒鉛化処理時の温度を高温化することにより、熱伝導率が非常に高められることを知見した。
すなわち、ドメインが、異方性ピッチ由来の分子構造から決定されており、カーボン・カーボンコンポジット材の原料として、ドメインのサイズに適切な範囲があることを見出し、ドメインが大きくなるほど熱伝導率が高くなることがわかった。ドメインの大きさは、紡糸を終えた後のピッチ繊維の繊維軸方向に対して直交する直交断面を偏光顕微鏡で観察、或いは黒鉛化焼成後の繊維軸方向に平行な断面を偏光顕微鏡で観察することにより、繊維半径方向におけるドメインの分割数を測定し、繊維直径をドメインの数で割ることで平均ドメインサイズとすることができる。もしくは炭素繊維前駆体を黒鉛化し、この黒鉛化した繊維を繊維方向に薄片を作成し透過型電子顕微鏡で002暗視野像を見ることでも測定できる。この時の平均ドメインサイズは輝線間の平均間隔の2倍となる。図6を参照して、左側の写真はピッチ繊維の直交断面を偏光顕微鏡で観察したものであり、右側の画像は偏光が変化する部分の境界を画像処理により抽出したものである。ピッチ繊維の直交断面における直径を、直径方向に現れる境界の数で除することにより、平均ドメインサイズを算出できる。本例では、直径が13μm、境界の数が26であるため、平均ドメインサイズは500nmと算出された。このドメインサイズは、炭素繊維前駆体をX線回折で測定した際の結晶子サイズ(Lc002)とも相関があり、学振法により解析される。本発明では、そのLc002値が2.5nm以下となるのが望ましい。
工程S2において、ピッチ繊維に対して不融化処理を行う。不融化処理とは、酸化性ガス雰囲気下で、加熱処理を行うことである。加熱温度は、好ましくは100〜350℃であり、より好ましくは130〜320℃である。加熱時間は、好ましくは10分〜10時間であり、より好ましくは1〜6時間である。酸化性ガスには、酸素、空気あるいはこれらに二酸化窒素、塩素等を混合したガスを用いることができる。
工程S3において、不融化したピッチ繊維を炭化処理する。炭化処理は、不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行うことにより実施される。不活性ガスには、窒素、アルゴン等を用いることができる。加熱温度は、好ましくは、900〜1500℃である。ここで、異方性ピッチ系炭素繊維には、不融化処理後に行う熱処理温度とその熱処理後の弾性率の値に相関性があることが分かっており、熱処理温度を調整することにより弾性率を10GPa〜1000GPaの範囲で調整することが可能となっている。ここで、加熱温度が1500℃超になると、繊維の折れ曲がり、ホットプレス(後述する工程S8参照)の際のバックリングが大きくなり適切なC/C材が得られなくなる。また、加熱温度が900℃未満になると、炭素繊維の機械的な物性が低くなり、加工が困難になる。
本実施形態では、後述する工程S9の炭化処理を実行することで、C/C材の弾性率が120GPa〜200GPaに高められる。弾性率は、JIS R7603の規格にしたがって測定することができる。
上述の工程S1〜S3を実施することで、炭素繊維前駆体が得られる。
炭素繊維前駆体は、10〜100mmの短繊維状にカットされる(以下、短繊維状炭素繊維前駆体という)。繊維長が10mmより短いと繊維での熱伝達距離が短くなりC/C材の熱伝導率が損なわれる。また繊維長が100mmを越えると繊維が絡み合い成型が困難となる。バインダーピッチ粉末、コークス粉末および粘結剤からなる混合物によって周りが覆われ、黒鉛化処理などされることによりC/C材、つまり、放熱シートが得られる。具体的には、以下の工程によってC/C材が製造される。繊維長が10mm未満になると、個々の繊維の熱伝達距離が短くなりC/C材の熱伝達能力が低下する。また、繊維長が100mm超になると、繊維が絡み合い成形が困難となる。
図4の工程図を参照して、工程S4において、バインダーピッチ粉末、コークス粉末及び粘結剤を所定割合で混合することにより混合溶液を生成する。なお、前記混合液に分散液が含まれていてもよい。混合装置として、例えば、ニーダー、プラネタリーミキサーを用いることができる。この混合溶液には粒子成分(バインダーピッチ粉末、コークス粉末)が含まれているので、予めホモミキサー、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、超音波などで粒子成分を液状成分に拡散させておいてもよい。
バインダーピッチ粉末は、60〜320℃の範囲の軟化温度を有し、キノリン不溶分が0〜80重量%、及び揮発分が10〜60重量%の石油及び/又は石炭から得られる等方性、潜在的異方性、又は異方性のバインダーピッチが用いられる。
このようなバインダーピッチは、石油の常圧残油、減圧残油、接触分触オイル等の石油系重質油あるいは石炭タール、オイルサンド油等の石炭系重質油を高温下で加熱処理した際に得られるピッチ類であってもよい。また、このピッチ類から得られるメソフェーズ小球体、あるいはそれが合体成長したバルクメソフェーズ等を用いることもできる。
バインダーピッチ粉末は、炭素繊維前駆体と、コークス粉末とを結合させるために用いられ。バインダーピッチ粉末の平均粒径は、好ましくは0.5〜6μmであり、より好ましくは3〜20μmである。
コークス粉末は、骨材的な役割を有しており、軟化点を有しておらず、揮発分が10重量%以下、好ましくは2重量%以下のものが使用される。コークス粉末の平均粒径は、好ましくは0.5〜30μmであり、より好ましくは1〜20μmである。
バインダーピッチ粉末及びコークス粉末の重量比は、好ましくはバインダーピッチ/コークス=90/10〜10/90であり、より好ましくは70/30〜30/70である。
粘結剤は、バインダーピッチ粉末とコークス粉末を粘着させると共に、バインダーピッチ粉末、コークス粉末、および粘結剤からなる混合物を炭素繊維前駆体に粘着接合するために使用される。粘結剤には、工業的に使用されている増粘安定剤などを用いることができる。
より具体的には、粘結剤として、例えば、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)などを用いることができる。なお、分散液には、アルコール等の有機溶剤または水を使用することができる。
なお、C/C材の全体を100体積%としたときに、炭素繊維前駆体の含有量は5〜70体積%、好ましくは20〜60体積%である。炭素繊維前駆体の体積含有率が5体積%未満であると、得られたC/C材の強度が低くなり過ぎ、また70体積%を超えるとバインダーピッチの配合量が少なくなるため、バインダー不足で繊維とマトリックス間での結合が充分でなく、高い強度のC/C材を得ることができないからである。
再び、図4を参照して、工程S5において、混合タンクの中に上記混合溶液と、所定量の短繊維状炭素繊維前駆体を入れ、撹拌することにより、短繊維状炭素繊維前駆体を混合溶液中に均一に分散させる。短繊維状炭素繊維前駆体を混合溶液中に均一に分散させるために、混合タンク壁に超音波トランスデューサを取り付け、混合溶液に超音波振動を加えるようにしても良い。
工程S6において、短繊維状炭素繊維前駆体が分散混合された混合溶液を、混合タンクから抄紙装置に圧送して抄紙処理する。抄紙装置には、長網抄紙機、円網抄紙機、ヤンキーマシン、ツインワイヤ抄紙機、その他の抄紙機を使用することができ、一般的には、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパートの各工程に分かれて処理されるようになっている。
ワイヤーパートでは、短繊維状炭素繊維前駆体が分散混合された混合溶液を、網(ワイヤー)の上に流して薄く平にすることで、短繊維状炭素繊維前駆体がランダムに配向され、互いに絡み合うと共に、短繊維状炭素繊維前駆体の周囲にはバインダーピッチ粉末、コークス粉末、粘結剤、および分散液の混合液が存在した状態の連続シートが形成される。なお、この工程では、分散液が重力によってある程度脱落する。プレスパートでは、分散液を多く含んだ連続シートを種々の方法で圧縮することにより分散液が絞り取られる。そして、ドライヤーパートでは、プレスパートで分散液を搾り取った連続シートを加温して分散液を蒸発させ、最後に残った分散液を除去する。
このようにして得られた、ランダムに配向され、互いに絡み合った短繊維状炭素繊維前駆体と、短繊維状炭素繊維前駆体の周囲に配置されたバインダーピッチ粉末、コークス粉末、粘結剤とから構成される連続シート状の不織布は、混合溶液に配合された粘結剤によって所定のタキネスを持つ。
工程S7において、所定のタキネスを有する連続シート状の不織布を、必要に応じて離型紙を間に挟んだ状態で、ロール状に巻き取る。ただし、適当なサイズに裁断する方法であってもよい。
工程S8において、連続シート状の不織布を所定の形状に裁断し、複数枚重ね合わせるとともに、重ね合わせた複数枚のC/C用の中間材料を、ホットプレス用の金型の中に入れ、加圧・加熱することによって、軟化性を有するバインダーピッチ粉末を溶融させて短繊維状炭素繊維前駆体、コークス粉末の周りに十分に浸透させた後、不融体化させ、所定の形状に賦形する。
工程S9において、このようにして賦形したC/C材の基材を、不活性ガス中にて高温で熱処理を行う黒鉛化処理を実施することによって高放熱性に優れたC/C材が完成する。黒鉛化には、通常バッチ式の電気炉が用いられる。この電気炉は、黒鉛性発熱ヒータを備え、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で昇温し、最高到達温度で一定時間保持した後降温、冷却し黒鉛化処理を行う。また、別の加熱炉として、比較的大容積で3000℃前後の黒鉛化が実施できるアチソン炉を用いることができる。これは被加熱部材の回りにコークスやカーボンビーズを充填し、炉の前後に配置された電極より大電流を投入することで、コークスやカーボンビーズがジュール熱により発熱し、かつ雰囲気中の酸素等の酸化性ガスがコークスやカーボンビーズにより消費され、被加熱物の周囲が不活性ガス雰囲気下となる焼成方法である。黒鉛化処理における加熱温度は、2800〜3200℃でなければならない。加熱温度が2800℃以下では、C/C材の放熱性を十分に高めることができない。加熱温度が3200℃を越えると黒鉛昇華温度となり、これ以上温度を高めても黒鉛化性の向上は工業的に困難となる。また、加熱温度に関しては好ましくは2900℃以上、さらに好ましくは2950℃以上である。
このように、本実施形態によれば、異方性ピッチを工程S9の黒鉛化処理によって2800℃以上の温度で加熱することで、弾性率を大幅に高めることができる。これにより、製造時のハンドリング性がよくなり、コストを削減することができる。また、弾性率が高くなることで、C/C材の熱膨張率が炭素繊維の熱膨張率に支配される。炭素繊維の熱膨張率は、非常に低いため、C/C材の熱膨張率を低くすることができる。さらに、平均ドメインサイズを上述の所定の範囲に調整した炭素繊維前駆体を工程S9の黒鉛化処理によって2800℃以上の温度で加熱することで、C/C材の熱伝導率を高めることができる。なお、C/C材は適度に空孔を含むため、低密度で軽いといった優れた特性も備える。
図5は、シート状に形成されたC/C材の外観斜視図(概略図)である。上述の方法によって製造されたC/C材は、シートの面内方向における熱伝導率が140W/mK以上であり、前記面内方向に対して直交する面外方向における熱伝導率が30W/mK以上である。面内方向とはシートの面内方向、つまり、X軸及びY軸を含む面内方向のことである。面外方向とは面内方向に対して直交する方向のことである。熱伝達率は、熱拡散率と密度、比熱を測定し、下記式より求めた。
λ=a×ρ×c
ここで、λは熱伝導率(W/mK)、aは熱拡散率(m/s)、ρは密度(g/cm)、比熱(kg/m)である。熱拡散率はレーザーフラッシュ法により、比熱はDSC法、また密度は幾何学的寸法と重量より得た。
また、室温での面内方向における熱膨張率が−2ppm/K以上0ppm/K以下である。室温とは25℃のことである。熱膨張率は、TMA法により測定できる。測定機器には、Hitachi TMA/SS7100を用いることができる。
上述のシート状に形成されたC/C材に対して、無電解あるいは電解メッキ法、CVD法、溶射法のうちいずれかの方法によって、Al、Si、Ti、Mg、Ni、Cu、Fe、Sn、Zn、Au、Ag、Pt、Crからなる所定元素のうち一種又は二種以上、或いは前記所定元素の化合物で表面処理を施すことができる。この表面処理によりC/C材からのカーボン紛の脱落が防止できる。また、本発明のC/C材に存在する開孔の封孔処理を行うことができる。
実施例を示し本発明についてより具体的に説明する。
(比較例1、2、実施例1〜3)
キノリン不溶分を除去した軟化点80℃のコールタールピッチを、Ni−Mo系触媒存在下、圧力13MPa、温度340℃で水添し水素化コールタールピッチを得た。この水素化コールタールピッチを常圧下480℃で熱処理した後、減圧し低沸点分を除きメソフェーズピッチを得た。このピッチをさらにフィルターを用いて温度340℃でろ過して、ピッチ中の異物を取り除き、精製されたメソフェーズピッチを得た。このピッチは、軟化点が304℃、トルエン不溶分が85重量%、ピリジン不溶分が42重量%、メソフェーズ含有量が97%であった。
このピッチを用いて図2、図3に示すノズルを用いて溶融紡糸を行った。縮流部孔1の孔数は2個とした。縮流部孔1の長径D1を0.7mm、短径D1’を0.15mmとした。導入孔径D2は1.6mmに設定した。このノズルを用いて、メソフェーズピッチの粘度400ポイズ、ピッチ繊維の引き取り速度400m/minで紡糸し単糸直径が13μmのピッチ繊維を得て、このピッチ繊維を6000本束ねてケンスに収納した。未延伸の状態のピッチ繊維横断面を偏光顕微鏡で観察したところ、直径方向で偏光の変わる境界が26箇所見られた。13μm中に26のドメインが現れることから、この炭素繊維前駆体のドメインサイズは500nmと判断された。
このピッチ繊維をケンスに収納したまま、空気に二酸化窒素ガスを5体積%、および水蒸気を5体積%添加した酸化ガスをケンス下部から吹き込みながら150℃から300℃まで1℃/minの昇温速度で昇温し、そのまま300℃で30分間保温して不融化繊維を得た。この不融化繊維を収納したケンスをそのまま窒素ガス雰囲気下で10℃/minの昇温速度で昇温し、390℃で30分間保温し、一次炭化を行なった。次にこの繊維を1200℃の温度、窒素雰囲気下で炭化し、炭素繊維前駆体を得た。
この炭素繊維前駆体は、弾性率が140GPaであった。この炭素繊維前駆体を長さ30mmにカットし、C/C用炭素繊維前駆体として供した。この炭素繊維前駆体を比較例1にあっては2500℃、比較例2にあっては2700℃、実施例1にあっては2900℃、実施例2にあっては3000℃、実施例3では3100℃で黒鉛化した。なお、得られた黒鉛化繊維の繊維縦断面を透過型電子顕微鏡により黒鉛の002暗視野像を観察したところ、繊維方向と直交する方向で長さ5mm中に暗視野像の輝線が20本観察されることから、ピッチ繊維で測定した平均ドメインサイズと同じ500nmと判断された。
(比較例3〜4)
実施例のメソフェーズピッチを実施例で用いたノズルで導入孔径D2が3.0mm、縮流部の代わりに400meshの金網を配置したノズルを用い、他は実施例と同じ条件で紡糸を行い、ピッチ繊維を得た。平均ドメインサイズは、炭素繊維前駆体を黒鉛化した後、繊維長方向に薄片を作成し、透過型電子顕微鏡(TEM)で002暗視野像を観察することで計測した。得られた暗視野像(比較例3)を図7に示した。輝線は黒鉛層の褶曲に由来するため、平均ドメインサイズは、平均輝線幅の2倍とすることができる。図7から測定された平均ドメインサイズは140nmであった。以降、実施例と同じ方法でC/C材を得た。ただし、それぞれの黒鉛化温度は比較例3については3000℃、比較例4については3200℃で実施した。
(実施例4)
メソフェーズピッチの粘度を200Poiseに設定した点を除いて、実施例1と同一の条件で紡糸を実施した。得られたピッチ繊維のドメインサイズは800nmであった。このピッチ繊維を実施例1と同様な方法で不融化、炭化し得られた炭化繊維をC/C材に成形し3000℃で黒鉛化を実施した。
(比較例5)
実施例1で使用したノズルの縮流部を除いた構成で紡糸時のピッチ粘度200Poiseの条件とした以外は同一の条件で紡糸を実施した。得られたピッチ繊維の平均ドメインサイズは1100nmであった。このピッチ繊維を実施例1と同一の条件で不融化、炭化を実施して炭化繊維を得た。この炭化繊維を実施例1と同様にC/Cに成形加工を行ったところ、繊維折れが多発しC/C材の成形が困難であった。
(比較例6)
実施例と同様の方法で紡糸を実施した。得られたピッチ繊維の平均ドメインサイズは500nmであった。実施例で炭化した温度を1000℃とした条件以外は同様の方法で炭素繊維前駆体を得た。また実施例と同様の方法でC/C材の成形を試みたが、ピッチ繊維が細かくなり、成形が困難であった。
(比較例7、8)
比較例7は東洋炭素株式会社製のCX761を使用した。比較例8は東洋炭素株式会社製のCX2002Uを使用した。表の値はカタログ値である。


上述の試験結果から、炭素繊維前駆体の繊維断面における平均ドメインサイズを200nm以上1000nm以下に制限するとともに、黒鉛化処理時の黒鉛化温度を2800℃以上に設定することで、シートの面内方向における熱伝導率が140W/mk以上、面外方向における熱伝導率が30W/mk以上となることがわかった。比較例1では、平均ドメインサイズが200nm以上1000nm以下に制限されているが、黒鉛化温度が非常に低かったため、面内方向における熱伝導率が140W/mk未満、面外方向における熱伝導率が30W/mk未満となった。比較例2では、平均ドメインサイズが200nm以上1000nm以下に制限されているが、黒鉛化温度が非常に低かったため、面内方向における熱伝導率が140W/mk未満となった。比較例3及び4では、平均ドメインサイズが小さすぎたため、黒鉛化温度を3000℃以上に高めても、面内方向における熱伝導率が140W/mk以上とならなかった。

Claims (5)

  1. 繊維長が10〜100mmの短繊維である炭素繊維前駆体を黒鉛化処理した炭素繊維を含む放熱シートであって、前記炭素繊維前駆体は、以下の条件(A)〜(B)を満足しており、該放熱シートは、以下の条件(C)を満足していることを特徴とする放熱シート
    (A)前記炭素繊維前駆体は、異方性ピッチを出発原料としている
    (B)前記炭素繊維前駆体の繊維断面における平均ドメインサイズは200nm以上1000nm以下である
    (C)シートの面内方向における熱伝導率が140W/mK以上であり、前記面内方向に対して直交する面外方向における熱伝導率が30W/mK以上である。
  2. さらに、以下の条件(D)を満足することを特徴とする請求項1に記載の放熱シート。
    (D)室温での前記面内方向における熱膨張率が−2ppm/K以上0ppm/K以下である
  3. 前記炭素繊維前駆体はバインダーピッチ粉末、コークス粉末及び粘結剤とともに前記黒鉛化処理されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱シート。
  4. 前記黒鉛化処理の温度は、2800℃以上3200℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の放熱シート。
  5. 無電解あるいは電解メッキ法、CVD法、溶射法のうちいずれかの方法によって、Al、Si、Ti、Mg、Ni、Cu、Fe、Sn、Zn、Au、Ag、Pt、Crからなる所定元素のうち一種又は二種以上、或いは前記所定元素の化合物で表面処理された請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の放熱シート。




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