JP2010034089A - 金属炭素複合材料、及び該複合材料からなる放熱部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高熱伝導性であり、高い熱的寸法安定性を有し、かつ軽量な複合成形材料を提供すること。
【解決手段】繊維径0.1〜30μm、真密度2.0〜2.5g/ccの黒鉛結晶を有するピッチ系黒鉛化炭素繊維と金属種を含むマトリクス材料とを複合一体化する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ピッチ系炭素繊維又は炭素粒子と金属とからなる放熱部材に適した複合材料に係り、半導体基板、集積回路基板等の用途に供し得る複合材料に関する。さらに詳しくは、高い熱伝導率、極めて低い熱膨張率及び導電性を備えたピッチ由来の黒鉛繊維(黒鉛粒子)を成分とする金属粉体との複合材料であって、放熱基板として好適のみでなく、周辺部材との熱膨張性とも整合し得る、機械的強度に優れた放熱部材を関わる。
高性能の炭素繊維は鎖状高分子であるセルローズ、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(PAN)等を原料とする繊維形状の鎖状高分子に由来する炭素繊維と、環状炭化水素からなる石油・石炭等のピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維に分類できる。
前者の鎖状高分子由来の炭素繊維は、炭化処理を施すのみで強靭な繊維として利用でき、殊にPAN系炭素繊維は強度・弾性率が通常の合成高分子に比較して著しく高い性能を有する故に、この特性を活かして、航空・宇宙機材用途、建築・土木資材用途、スポーツ・レジャー用具などに広く用いられている。
これに対し、後者のピッチ系炭素繊維は、高温度の熱処理である黒鉛化処理を経た際に、その特性が発揮され、黒鉛結晶の性能が発現する。黒鉛結晶としては、その結晶自体は小さく、単結晶ではないものの、微結晶として網面構造を有することから、顕著な異方性を呈する。そして、この黒鉛化繊維はPAN系炭化繊維よりも電気伝導率、熱伝導率が高く、機械的特性も優れているうえに、熱膨張率が比較的低い特徴を有する。
したがって、この黒鉛化繊維は金属の如き他の材料と複合化することにより、高い熱伝導率を維持できるうえに、熱膨張率が低い得性をも付与できる可能性が高い。
言い換えると、単に強化材料としての炭素繊維複合材料の役割から、黒鉛化繊維、即ちピッチ系炭素繊維としての低熱膨張率及び高熱伝導性を利用し、複合材料としての蓄熱性や放熱性を利用することによって、この炭素繊維複合材料の総合的利用の途が拓ける期待がある。
ところで、昨今高速化に伴う電子計算機におけるCPUの発熱や集積回路のジュール熱による発熱が問題になっている。加えて、レーザーや発光ダイオードの冷却の問題も浮上している。
熱を効率的な伝達経路により処理するには、一般に、銀や銅の如き熱伝導性に優れた放熱材料を使用すれば、一見解決可能に思われがちであるが、上記のレーザーや発光ダイオードで代表される発熱体には、銀・銅等の適用を妨げる問題がある。即ち、レーザーや発光ダイオードを収納し、或いは載置するパッケージ等の材料にはレーザー素子や発光素子の材料と熱膨張率がほぼ一致する要件が求められる。こ条件が満たされないと、材料間に著しいストレスが生じ、劣化や歪による破損のような事故発生が避けられない。
一例を挙げると、半導体装置の大出力化、高集積化に伴うヒートシンクに、放熱性を高める最高の材料として、究極的素材であるダイアモンドを適用した技術が特許文献2に開示されている。ダイアモンドは耐熱性、熱伝導率及び熱膨張率の観点から他に追従を許さない素材であり、技術面に限れば、この特許文献2に記載された発明が最終的な満点の解決手段を示す回答である。もっとも、半導体素子のような工業製品には、厳しいコストパフォーマンスが絶対的に要求される。つまり、費用を度外視した宇宙ロケットや電子加速器や芸術品を造るわけではない。そこで、機能や性能をいかなるコストで造り得るかという課題にも挑戦せねばならない。
周知のように、銅の熱伝導率が約400W/m・Kに対し、ダイアモンドは約2000W/m・Kにも達し、あらゆる物質の中で最高の熱伝導体である。通常、銅は充分な熱伝導性を備えていることから、銅自体をそのままヒートシンクに利用できればよいのであるが、銅の熱膨張率は1.7×10−5/Kを呈し、代表的な半導体基板材料であるSiの熱膨張率3×10−6/K(熱伝導率約168W/m・K)やInPの熱伝導率4.5×10−6/K(熱伝導率約100W/m・K前後)やGaAsの熱膨張率5.9×10−6/K(熱膨張率46W/m・K)と比較して著しく高い。(尚、Si、InP、GaAsの熱伝導率は相対的に低い値でありヒートシンクとしては必ずしも十分な性能ではない)
したがって、そのまま半導体用のヒートシンクに銅を部材とすることは適わない。而して、この対策として、熱膨張率の低いタングステンやモリブデンといった金属との合金化を図ってきた。しかしながら、WやMoをCuと合金化すると熱伝導率が低減するという別の問題点が浮上してしまう。
この銅の例に見るように、熱伝導率がおよそ150W/m・Kを超えるような高熱伝導性の金属材料では、半導体基板材料とのマッチングの観点で好ましい約6×10−5/K以下の低い熱膨張率を実現する事は困難であった。
そこで、新たな解決手段として、ダイアモンドではなく、黒鉛系炭素繊維又は炭素粒子を用いれば金属ヒートシンクとしての熱伝導性能を維持しながら、熱膨張性の課題を解消できる可能性があるのではないかという期待が持てる。
これら問題を解決するためには、熱を効率的な伝達経路により処理することや有効な放熱手段を開発する必要がある。つまり、これらの課題に対し、所謂ヒートマネジメントを達成する要請がある。
かような観点から、炭素繊維を見直すと、一般に炭素繊維は、通常の有機合成高分子に比較しての熱伝導率が高いが、さらなる熱伝導の向上が検討されている。ところが、市販されているPAN系炭素繊維の熱伝導率は通常200W/m・Kよりも小さくヒートマネジメントの観点からは必ずしも好適な材料であるとは言えない。これに対して、ピッチ系炭素繊維はPAN系炭素繊維に較べて300W/m・Kを超えるような高熱伝導率を達成しやすい長所を潜在的に備える。
ところで、炭素繊維の高い熱伝導率を効果的に利用するためには、炭素繊維集合体の間隙を充填できる何らかのマトリックスとなる熱伝導率の高い金属材料を介在させ、しかる状態において、炭素繊維が高充填率でかつ熱伝導を維持するためのネットワーク構造を形成していることが好ましい。ネットワーク構造が三次元的に形成されている場合には、成形体の面内方向のみならず厚さ方向に対しても炭素繊維固有の高い熱伝導が達成されるため、例えば放熱板の用途には非常に効果的であると考えられる。ところが、従来から用いられている炭素繊維を織物状にしてマトリックスと複合化した複合材は、面内の熱伝導率は向上しているものの、厚さ方向の熱伝導は、炭素繊維のネットワーク形成が充分にできないことから、熱伝達が不充分であり、放熱性が良好であるとは言い難い。
このような理由から、抜本的に炭素繊維の熱伝導率を改善しようとする試みが多数なされている。例えば、特許文献1には、一方向に引揃えた炭素繊維に黒鉛粉末と熱硬化性樹脂を含浸した機械的強度の高い熱伝導性成形品が開示されている。そこで、この熱硬化性樹脂を高い熱伝導性の金属材料に置換すれば、更なる性能が付与できる期待が持てる。
ところで、既述したように、炭素繊維ではなく、ダイアモンド(結晶性炭素)と金属との複合材料が特許文献2に開示された。熱伝導率の改良の観点から、ダイアモンドこそが究極の素材である。この素材は熱膨張率が低く、発光ダイオードや電気計算機のCPU等のヒートシンク用途としても最適のものである。
しかしながら、ダイアモンドは高価なものである。そこで、新たな解決手段として、ダイアモンドではなく、炭素繊維又は炭素粒子を用い、これと銀、銅アルミニウム等との併用により、従来技術の金属ヒートシンクと同等以上のものを開発することが課題となる。要は、金属ヒートシンクとしての熱伝導性能を維持しながら、熱膨張性の課題を解消できればよい。
黒鉛結晶はダイアモンドほどの熱伝導性はないが、銀や銅の如き金属と較べて遜色ないものである。六方晶形であるため異方性を持ち、六角網面の面内では600W/m・Kを超えるほどであるが、垂直面では150W/m・K程度である。したがって、この異方性を利用すると極めて効率よく金属の熱伝導性を凌駕できる。
結晶の六角網面の面内に抗張力を負荷した場合、例えば繊維軸方向に分子配向しているような黒鉛繊維の場合、半導体素子が500〜1000℃程度の高温度に曝されると、六角網面の面間隔が増加し、繊維軸を含む面内は炭素繊維分子が収縮作用を受ける。つまり、黒鉛繊維は高温になると繊維径が増加し(熱膨張率約5×10−6/K)、繊維長は僅かに短縮する。黒鉛繊維は、繊維自体の分子配向の程度によって、繊維径の増加量や繊維長の収縮率が決まるため、半導体装置の熱膨張率を黒鉛繊維の繊維分子配向によって整合するように配列・配置できることが示唆される。
以上を要すると、黒鉛繊維を利用すると、熱伝導率を約150〜約600W/m・Kの範囲に設定でき、しかも発熱体のヒートシンクとして広範囲の熱膨張率に対処できることが予測できよう。
これら問題を解決するためには、熱を効率的な伝達経路により処理することや有効な放熱手段を開発するうえに、ヒートシンクとしても熱膨張問題に対処しなければならない。つまり、これらの課題に対し、所謂ヒートマネジメントを達成する要請がある。
かような観点から、炭素繊維を見直すと、鎖状高分子由来の炭素繊維は、通常の有機合成高分子に比較しての熱伝導率が高いが、さらなる熱伝導の向上を必要とする。ところが、市販されているPAN系炭素繊維の熱伝導率は高々200W/m・Kである。機械的強度に変えて熱伝導率を向上させるべく、充分な結晶化(黒鉛化)処理技術を開発する必要がある。
また、ピッチ系炭素繊維はPAN系炭素繊維に較べて300W/m・Kを超えるような高熱伝導率を達成しやすい長所を潜在的に備える。しかもピッチ系炭素繊維は繊維長が1mm以下のものであって、異方性効果がないにも関わらず、ランダムな方向において200〜300W/m・Kの熱伝導率を呈するので、この粉末のような短繊維を有効に利用することも要請される。
ところで、炭素繊維の高い熱伝導率を効果的に利用するためには、炭素繊維集合体の間隙を充填できる何らかのマトリックスとなる金属材料を介在させ、しかる状態において、炭素繊維が高充填率でかつ熱伝導を維持するためのネットワーク構造を形成していることが好ましい。ネットワーク構造が三次元的に形成されている場合には、成形体の面内方向のみならず厚さ方向に対しても炭素繊維固有の高い熱伝導が達成されるため、例えば放熱板の用途には非常に効果的であると考えられる。ところが、従来から用いられている炭素繊維を織物状にしてマトリックスと複合化した複合材は、面内の熱伝導率は向上しているものの、厚さ方向の熱伝導は、炭素繊維のネットワーク形成が充分にできないことから、熱伝達が不充分であり、放熱性が良好であるとは言い難い。これらの問題も解消すべき対象となる。
特開平5−17593号公報 特開2004−197153号公報
上記のように、炭素繊維の高熱伝導率化という観点では開発が不可欠である。しかして、ヒートマネジメントの観点からは成形体(放熱部材)としての熱伝導性が高いことが要件とされ、また周辺の部材との熱膨張時の膨張量の整合性が要求される。
そして、金属と混合した場合に適切な熱伝導率を有し、さらに放熱部材としての熱伝導性が向上し、機械特性に優れ、熱膨張時に周辺部材との膨張量がほぼ一致する炭素繊維強化複合材料が強く望まれている。
本発明では、環状高分子由来のピッチ系黒鉛化繊維と金属材料とを併用し、複合材料としての限界的な、高性能を発現することを課題とするものである。
つまり、比較的高温度で焼成処理及び黒鉛化処理を施して結晶化状態を改善することにより、数十nmを超える大きさの結晶成長を促し、結果的にピッチ系黒鉛化炭素繊維の高熱伝導率化をもたらすという、黒鉛結晶成分の多い炭素繊維の開発のみが課題解決の可能性がある。勿論、ヒートマネジメントの観点からは成形体としての熱伝導性が高く、しかもその熱伝導性が維持されることが要請される。
そして、適切な熱伝導率を有し、さらに、金属材料よりも黒鉛の方が熱伝導性が優れている点に鑑み、成形体中の炭素繊維含有率を高めることができるように為し、また周辺の機器・装置との熱膨張性に関しても整合性を欠くことなく、三次元的な環境条件下で熱伝導性を高め、しかも機械的特性に優れる炭素繊維強化複合材料を開発することが課題となる。
本発明は以下の通りである。
1.平均繊維径0.1〜30μm、真密度2.0〜2.5g/ccの黒鉛結晶を有するピッチ系黒鉛化炭素繊維および又は該炭素繊維からなるピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体を、得られる金属炭素複合材料を基準として20〜90体積%と、金属種を含むマトリクス材料を、得られる金属炭素複合材料を基準として10〜80体積%を、少なくとも含んでなる、金属炭素複合材料。
2.ピッチ系黒鉛化炭素繊維のc軸方向の結晶子サイズ(Lc)が20〜100nmである、前記1に記載の金属炭素複合材料。
3.ピッチ系黒鉛化炭素繊維のab軸方向の結晶子サイズ(La)が30〜100nmである、前記1または2に記載の金属炭素複合材料。
4.ピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体は、不織布、ランダムマットの中から選ばれる少なくとも1種の形状を有している、前記1〜3のいずれかに記載の金属炭素複合材料。
5.ピッチ系黒鉛化炭素繊維のアスペクト比が平均2〜8000である、前記1〜4のいずれかに記載の金属炭素複合材料。
6.金属種を含むマトリクス材料として、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、タングステンの金属群、もしくは該金属群による合金、もしくは該金属群を含む合金、もしくは該金属群の炭化物、窒化物、炭窒化物の中から選ばれる1種以上の材料を用いる、前記1〜5のいずれかに記載の金属炭素複合材料。
7.金属種を含むマトリクス材料の一次もしくは二次粒径が平均0.01〜600μmの微粒子と、ピッチ系黒鉛化炭素繊維および又はピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体を用いて、粉体圧縮成形を行い、ついで加圧下もしくは真空下で加熱を施し、該微粒子を熔融して、成型体の空隙に含浸せしめ、焼結を行う事により、一体複合化してなる前記1〜6のいずれかに記載の金属炭素複合材料。
8.前記1〜7のいずれかに記載の金属炭素複合材料に、切断、切削、研磨を施して、薄片、小片又は部品に加工処理されてなる金属炭素複合材料。
9.前記1〜7のいずれかに記載の金属炭素複合材料に接合、積層、組込、組立処理を施してなる金属複合複合材料。
10.前記1〜9のいずれかに記載の金属複合材料からなる放熱部材。
本発明の複合材料としての効果は、極めて高い熱伝導率を呈する点と半導体素子と同程度の熱膨張係数を満たす点、軽量化の実現、そして合理的な素材の選択の点とにある。
ピッチ系黒鉛化炭素繊維およびその集合体は整列化・積層化・配列化の如き加工処理を施し、黒鉛部分の整列角度、籍層状態の方向性などを配慮する事により、熱伝導率、熱膨張率等に関して空間的異方性を有する設計が可能になり、あるいは放熱板と半導体素子・装置等の配置における貼り合せ方向の整合化等にも利用できる。つまり熱伝達量や熱膨張量が放熱板と周辺機器との相互において過不足が起きないように目的地に整合して調整し得る。
次に、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明に用いるピッチ系黒鉛性炭素繊維は、フィラーもしくは芯材として金属炭素複合材料の要部を占める。
ピッチ系黒鉛化炭素繊維は、その繊維軸方向の熱伝導率として、少なくとも200W/(m・K)以上である事が好ましい。尚、熱伝導率は好ましくは300W/(m・K)以上、より好ましくは400W/(m・K)以上、更に好ましくは500W/(m・K)以上である。
このような高い熱伝導率を炭素繊維に発現させる上では、炭素繊維中の黒鉛結晶の含有率(以下、黒鉛化率と記す)が高い事が好ましく、また結晶子のサイズが大きい事が高熱伝導実現に好ましい。これは炭素繊維における熱伝導が主にフォノンの伝導によって担われている事に起因する。
黒鉛化率に関しては、その反映値としてピッチ系黒鉛化炭素繊維の真密度が2.0〜2.5g/ccの範囲にあることが好ましい。
また結晶子サイズに関しては、炭素材料中の黒鉛結晶(六角網面)のc軸方向の結晶子サイズ(Lc)が20〜100nmの範囲にある事が好ましい。
また更に好ましくは、炭素材料中の黒鉛結晶(六角網面)のab軸方向の結晶子サイズ(La)はが30〜100nmの範囲にある事が好ましい。
これらの結晶子サイズは、X線回折法で求めることができ、解析手法としては学振法を用い、黒鉛結晶の(002)面、(110)面からの回折線を用いて求める事ができる。。
このように黒鉛化率が非常に高い炭素材料を得る上では、前述のように、PAN、レイヨン等の原料はあまり好ましくなく、縮合され複素環を有する環状炭化水素、すなわちピッチ系の原料を用いた方が好ましく、更にそれらの中でも特に液晶性メソフェーズピッチを用いる事が好ましい。
また炭素材料の形態に関しては、球状もしくは不定形のものも利用可能であるが、特にメソフェーズピッチを用いた場合に黒鉛結晶の成長面がほぼ一方向に配向して極めて高い熱伝導性を得る事が可能となる繊維状の形状である事がより好ましい。
これらの事から、本発明で用いる炭素材料としては前記ピッチを原料としたピッチ系黒鉛化炭素繊維が最適である。
このようなピッチ系炭素繊維の原料としては、例えば、ナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が挙げられる。なかんずくナフタレンやフェナントレンの如き縮合多環炭化水素化合物が好ましい。
殊に光学的異方性ピッチ、即ちメソフェーズピッチが好ましい。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよいが、メソフェーズピッチを単独で用いることが黒鉛化処理において黒鉛化率を高めることができるため、結果的に炭素繊維の熱伝導性を向上でき、好ましい態様となる。
原料ピッチの軟化点はメトラー法により求めることができ、230℃以上340℃以下の範囲のものが好ましい。軟化点が230℃より低いと、不融化の際に繊維同士の融着や大きな熱収縮が発生する。また、340℃より高いものでは、紡糸工程において、ピッチの熱分解が生じ紡糸成形が困難になる傾向がある。さらに、高温度の紡糸条件では、ガス成分が発生し、紡出繊維内部に気泡が発生し強度劣化を招くほか断糸も起き易い。
原料ピッチは公知の溶融紡糸法もしくはメルトブロー法により紡糸され、その後、不融化、焼成、ミリング、篩い分け、黒鉛化の諸工程によって繊維長の比較的短いピッチ系炭素繊維となる。
以下においては、一例としてメルトブロー法を用いたピッチ系炭素繊維製造に関する諸工程について説明する。
まず紡糸ノズルの形状については特に制約はないが、ノズル孔の長さと孔径の比が3よりも小さいものが好ましく用いられ、更に好ましくは1.5程度のものが用いられる。
紡糸時のノズルの温度についても特に制約はなく、安定した紡糸状態が維持できる温度であれば問題がない。原料ピッチの粘度が適切な範囲であれば、紡糸状態が安定する、即ち、紡糸時のピッチ粘度が0.1〜20Pa・S、好ましくは8〜16Pa・Sに、さらに好ましくは10〜14Pa・Sなる温度であればよい。
ノズル孔から出糸されたピッチ繊維は、100〜370℃に加温された毎分100〜10000mの線速度のガスを細化点近傍に吹き付けることによって短繊維化される。吹き付けるガスとしては空気、窒素、アルゴン等々を用いることができるが、コストパフォーマンスの点から空気が望ましい。
ピッチ繊維は、金網ベルト上に捕集され、連続的なマット状になり、さらにクロスラップされることで所定の目付(単位面積あたりの重量)のウェブとなる。
このようにして得られたピッチ繊維よりなるウェブは、繊維同士が交絡することで3次元的なランダム性を有している(本発明においては、この形状をランダムマットまたはランダムマット状と記載することがあり、このピッチ繊維からなるランダムマットを不融化、焼成、黒鉛化したものが本発明でいうランダムマットのピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体である)。このウェブは公知の方法で不融化できる。この不融化温度は200〜300℃である。
不融化は、空気又はオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素若しくは臭素を空気に添加した混合ガスを用いて200〜300℃の温度において一定時間の熱処理を付与することで達成される。安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。
不融化したピッチ繊維は、次いで真空中又は窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガス中において、700〜900℃の温度範囲で焼成される。通常、焼成は常圧において、コストの安い窒素を用いて実施される。
不融化・焼成されたピッチ繊維よりなるウェブは、さらに短繊維化を進め、所定の繊維長にするために、ミリング、篩分けを実施する。ミリングには、ビクトリーミル、ジェットミル、高速回転ミル等の粉砕機又は切断機等が使用される。ミリングを効率よく行うためには、ブレードを取付けたロータを高速に回転させることにより、繊維軸に対して直角方向に繊維を寸断する方法が適切である。
ミリングによって生じる繊維の平均繊維長は、ロータの回転数、ブレードの角度等を調整することにより制御され、さらに篩を通し、篩の目の粗さの組み合わせにより分級できる。
上記のミリング処理、篩分けを終えた繊維を2300〜3500℃に加熱して黒鉛化し、最終的なピッチ系炭素短繊維とする。黒鉛化は、アチソン炉等にて非酸化性雰囲気下で実施される。
尚、本発明に用いるピッチ系黒鉛化炭素繊維フィラーは、透過型電子顕微鏡でフィラー端面の形状を観察して、グラフェンシートが閉じた構造になっている事が好ましい。フィラーの端面がグラフェンシートとして閉じている場合には、余分な官能基の発生や、形状に起因する電子の局在化が起こらないので、水のような不純物の濃度を低減することができる。
なお、グラフェンシートが閉じているとは、炭素繊維を構成するグラフェンシートそのものの端部が炭素繊維端部に露出することなく、グラファイト層が略U字上に湾曲し、湾曲部分が炭素繊維端部に露出している状態である。
また、本発明に供するピッチ系黒鉛化炭素繊維フィラーは走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平坦である。ここで、実質的に平坦であるとは、フィブリル構造のような激しい凹凸を表面に有しないことを云い、フィラーの表面に激しい凹凸が存在する場合には、マトリクス樹脂との混練に際して表面積の増大に伴う粘度の増大を惹起し、成形性を低下させることから、表面凹凸はできるだけ小さい状態が望ましい。
上述のピッチ系炭素繊維フィラーは、ミリングを行った後に黒鉛化処理を実施することによって、容易に得ることができる。
こうして得られるピッチ系黒鉛化炭素繊維の繊維径は、光学顕微鏡で観測した平均繊維径(D1)として1〜30μmであり、より望ましくは3〜20μm、更に好ましくは5〜15μmである。繊維径が30μmより大きい場合は、不融化工程で近接する繊維同士の融着が起きやすく、1μm未満の場合は、ピッチ系炭素繊維フィラーの重量当たりの表面積が増大し、繊維表面が実質的に平坦であっても、表面に凹凸を有する繊維と同様に成形性を低下させてしまい、実際面で不適切となる場合がある。また、光学顕微鏡で観測した平均繊維径(D1)に対する繊維径の分散である繊維径分散(S1)の百分率は5〜18%の範囲が好ましい。より好ましくは5〜15%の範囲である。
尚、これまでに述べたメルトブロー紡糸法を用いたピッチ系黒鉛化炭素繊維の他にも、本発明に利用できるピッチ系黒鉛化炭素繊維としては溶融紡糸法によるピッチ系黒鉛化炭素繊維が挙げられる。ただしピッチ系黒鉛化炭素繊維の生産性や品質(表面性、外観等)においてはメルトブロー紡糸法がより優れている事から、本法によるピッチ系黒鉛化炭素繊維を用いる事がより好ましい。
さて一方、これまでに述べたピッチ系黒鉛化炭素繊維よりも、繊維径が更に小さく微細なピッチ系黒鉛化炭素繊維として、例えば国際公開第04/031461号パンフレット等に、芯材として炭素材料、マトリクス材としてオレフィン系材料等を用いたブレンド紡糸法(もしくはコンジュゲート紡糸法)により複合繊維を作成し、後処理としてマトリクス材を溶解除去する事により、最終的に0.1〜1μm前後の繊維径を有する微細な黒鉛化ピッチ系炭素繊維を高い生産性で得る手法が開示されており、これらも好適に用いる事ができる。
これらの事を総合して、本発明で好ましく用いられるピッチ系黒鉛化炭素繊維の繊維径としては、およそ0.1〜30μmの範囲である。
尚、これらピッチ系黒鉛化炭素繊維は、金属炭素複合材料の中に、短繊維状のフィラーとして、もしくは不織布、ランダムマット等の炭素繊維集合体の形で、もしくは短繊維状のフィラーと不織布、ランダムマット等の炭素繊維集合体と併せた形で、複合化する事ができる。
不織布状の炭素繊維集合体は、例えば短繊維のピッチ系黒鉛化炭素繊維を適切なバインダーとともに抄紙、焼成する事により製造される。またランダムマット状の炭素繊維集合体は、前述のメルトブロー法により紡糸された原糸マットのウェブを基に、不融化、焼成、黒鉛化の工程を経て、製造する事ができる。
尚、長繊維のピッチ系黒鉛化炭素繊維を用いて製造される織布状の炭素繊維集合体も、金属炭素複合材料の芯材として利用する事が可能である。ただ、これら織布状の炭素繊維集合体は主として長繊維のピッチ系黒鉛化炭素繊維を用いて製造され、長繊維の製造に大きな装置が必要な事、長繊維を用いた織物の製造工程が多少煩雑である事等から、前記の不織布やランダムマット状の炭素繊維集合体に比べると、炭素繊維集合体の生産性の観点で若干劣る部分がある。
織布状の炭素繊維集合体を作成する場合、その取り扱い性の観点から、用いる長繊維のピッチ系黒鉛化炭素繊維の平均繊維径はおよそ5〜30μmの範囲にある事が好ましい。
またピッチ系黒鉛化炭素繊維をフィラー、もしくは不織布、ランダムマットとして用いる場合には、金属炭素複合材料への分散性や、複合材料の熱伝導性、熱膨張率等に好ましい性能を得る観点から、その繊維長はおよそ1〜50000μm、アスペクト比がおよそ2〜8000の範囲にある事が好ましい。
不織布、ランダムマットもしくは織布等の炭素繊維集合体を用いた場合には、該集合体内の繊維配列の空間的規則性もしくは異方性を用いて、作成する金属炭素複合材料に、熱伝導率や熱膨張率の異方性を発現させる事ができる。
ただし短繊維状のフィラーを用いた場合においても、金属炭素複合材料の成型時等における力学圧縮過程等を通じ、ある程度の配向性を有させる事はできる。
尚、不織布、ランダムマットもしくは織布等の炭素繊維集合体を用いた場合には、主にその空隙となる部分の熱伝導性を高める観点から、前記の短繊維状フィラーを併用する事も好ましく行われ、金属炭素複合材料の熱伝導率の向上、もしくは熱膨張率の調整等に好適である。
さてピッチ系炭素短繊維の原料としては、例えば、ナフタレンやフェナントレンの如き縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチの如き縮合複素環化合物等が挙げられる。とりわけナフタレンやフェナントレンのような縮合多環炭化水素化合物が好ましく、特に光学的異方性ピッチ、即ちメソフェーズピッチが好ましい。これらは、その1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよいが、メソフェーズピッチを単独で用いることが熱伝導性の高い炭素短繊維を得るうえで望ましい。
原料ピッチの軟化点はメトラー法により求めることができ、230℃乃至340℃の原料ピッチが好ましい。軟化点が230℃より低いものでは、製糸後の不融化処理の際に繊維同士の融着や大きな熱収縮が発生する。また、340℃より高いものではピッチの熱分解が生じるため紡糸が難くなる。さらに、紡糸中にガスが発生し、繊維に気泡が発生して品質や機械的強度の劣化を招く。
原料ピッチは溶融紡糸法もしくはメルトブロー法により紡糸され、その後不融化、焼成、ミリング、篩分け、黒鉛化の各工程によって処理され、本発明に好適な黒鉛化度の高いピッチ系炭素短繊維となる。
以下、メルトブロー法による各々の工程について説明する。
本発明においては、ピッチ系炭素短繊維の原料となるピッチ繊維の紡糸ノズルの形状については特に制約はないが、ノズル孔の長さと孔径の比が3よりも小さいものが好ましく用いられ、更に好ましくは1.5程度のものが用いられる。紡糸時のノズルの温度についても特に制約はなく、安定した紡糸状態が維持できる温度、即ち、紡糸ピッチの粘度が1〜100Pa・S、好ましくは50〜60Pa・Sになる温度範囲であればよい。
ノズル孔から紡出されたピッチ繊維は、100〜370℃に加温された毎分100〜10000mの線速度を有する加熱ガスを、紡出繊維の細化点近傍に吹き付けることによって、短繊維化される。吹き付けるガスは空気、窒素、アルゴンを用いることができるが、コストパフォーマンスの点から空気が望ましい。
ピッチ繊維は、金網ベルト上に捕集されて連続的なマット状になり、さらにクロスラップされることで一定の目付のウェブとなる。
このようにして得られたピッチ繊維よりなるウェブは公知の方法で不融化される。この不融化は、空気又はオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素若しくは臭素を空気に添加したガスを用いて200〜300℃の温度で一定時間の熱処理を付与することで達成される。安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。そして、不融化したピッチ繊維は、真空中又は窒素、アルゴン若しくはクリプトンのような不活性ガス中で700〜900℃において焼成される。この際焼成を常圧で行い、しかもコストの安い窒素を用いて実施する。
不融化・焼成されたピッチ繊維よりなるウェブは、さらに短繊維化を施す。一定の繊維長にするために、ミリング、篩分けを実施する。ミリングには、ビクトリーミル、ジェットミル、高速回転ミル等の粉砕機、切断機等が使用される。ミリングを効率よく行うためには、ブレードを取付けたロータを高速に回転させることにより、繊維軸に対して直角方向に繊維を寸断する方法が適切である。
ミリングによって生じる繊維の平均繊維長は、ロータの回転数、ブレードの角度等を調整することにより制御され、さらには篩により分級する事ができる。また繊維径に関しても篩により分級が可能である。このような平均繊維長や平均繊維径の調整は篩の目の粗さを組み合わせることによって達成することができる。
上記のミリング処理、篩分けを終えた繊維を2300〜3500℃に加熱し黒鉛化して最終的なピッチ系黒鉛化炭素繊維とする。黒鉛化は、アチソン炉等にて非酸化性雰囲気下で実施する。
次に、本発明のピッチ系黒鉛化炭素繊維の形状について述べる。本発明のピッチ系黒鉛化炭素繊維は、透過型電子顕微鏡で繊維端面の形状を観察すると、グラフェンシートが閉じた構造になっている。フィラーの端面がグラフェンシートとして閉じている場合には、余分な官能基の発生や、形状に起因する電子の局在化が起こらないので、水のような不純物の濃度を低減することができ、例えば、膨張黒鉛との親和性をより高めることが可能になり好ましい。
なお、グラフェンシートが閉じているとは、ピッチ系黒鉛化炭素繊維を構成するグラフェンシートそのものの端部がピッチ系黒鉛化炭素繊維端部に露出することなく、グラファイト層が略U字状に湾曲し、湾曲部分がピッチ系黒鉛化炭素繊維端部に露出している状態をいう。
本発明に供するピッチ系黒鉛化炭素繊維には、必要に応じて、表面処理が施される。こうした表面処理は、炭素繊維表面への樹脂、無機物、金属酸化物、金属、およびそれらの微粒子等のコーティング、親水性官能基や金属元素等の導入による表面活性化、疎水性基の導入による表面不活性化、エッチングによる表面粗度のコントロール等を主な目的としている。
表面処理の具体的手法としては、各種コーティング処理(浸せきコーティング、噴霧コーティング、電着コーティング、各種メッキ、プラズマCVD等)、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、イオン打ち込み処理、電解酸化処理、酸・アルカリその他の薬液処理等が挙げられる。
また本発明に供するピッチ系黒鉛化炭素繊維は、前記のように必要に応じて表面処理を施した後、サイジング剤をピッチ系黒鉛化炭素繊維を基準として0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜2.5重量%添着させてもよい。サイジング剤としては通常用いられる任意のものが使用でき、具体的にはエポキシ化合物、水溶性ポリアミド化合物、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、酢酸ビニル、水、アルコール、グリコールを単独又はこれらの混合物で用いることができる。このような表面処理は、真密度を高くすることを試みるとき有効な手段となる。ただ、過剰のサイジング剤の添着は、熱抵抗となるため、必要とされる物性に応じてこれを実施することができる。
さて本発明の金属炭素複合材料のマトリックスとする金属系材料については、特に大きな制限は無いが、その熱伝導率を高さを重視すると、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、タングステンの金属群、もしくは該金属群による合金、もしくは該金属群を含む合金、もしくは該金属群の炭化物、窒化物、炭窒化物の中から選ばれる1種以上の材料を用いる事が好ましい。
また前記材料に加え、機械的強度や加工性等における必要に応じて、ガリウム、ハフニウム、チタン、珪素等の金属元素、およびそれらの炭化物、窒化物、炭窒化物等が混合されていても良い。
ピッチ系黒鉛化炭素繊維の混合率は、マトリックス材料に対する体積分率でおよそ20〜90%が好ましい。20体積%より少ない混合量では、熱伝導性を充分に確保することが難しく、一方、90体積%より多い場合には黒鉛化繊維フィラーのマトリックスへの添加は困難となることが多い。
さて本発明の金属炭素複合材料の製造方法としては、特に大きな限定はなく、様々な方法が利用可能であるが、例えば黒鉛化繊維と少量の樹脂バインダー等を用いて公知の手法により粉体成型を行った後、真空下もしくは加圧下で、粉体成型体中の空隙部に溶融状態の金属系材料を外側から浸透させる方法等が挙げられる。
また異なる方法として、例えば前記の金属系材料の微粒子と黒鉛化繊維を固体状態のままで粉体成形して成形体とする。その後、加圧下もしくは真空下で、金属の溶融温度以上の温度に加熱し、内部の金属粒子を溶解させて、前記粉体成型物の空隙に十分浸透させ、焼結、一体化して、金属炭素複合材料を得ることができる。
尚、このようにピッチ系黒鉛化炭素繊維と金属系材料を高温化で接触させる工程(焼結工程)等においては、金属の融点の僅かに低温度側で金属原子又は金属化合物分子の拡散が起こり、表面及び表面近傍の原子の移動、拡散が生じることがよく知られており、これによって、双方の材料の密着性、濡れ性が改善される場合があり、製造条件として好ましく利用できる。
こうした金属系材料の微粒子は各種市販のものがあり、使用量に応じて生産業者に注文し、成分組成、純度、粒径等々を指示することができる。尚、粉体成型時の金属微粒子の造粒に際しては、有機物増粘剤(例:パラフィンワックス、ポリビニルアルコール接着剤、繊維収束剤)の利用が可能である。これら有機物は最終処理において炭化乃至黒鉛化できる炭化水素系のものが好ましく用いられる。
尚、金属系材料の溶融浸透性を高める目的および炭素繊維の酸化を防ぐ目的等から、粉体成型もしくは溶融金属の浸透工程等は真空下もしくは窒素等の不活性雰囲気下にて行う事が好ましい。
本発明の対象となる集積回路の基板や半導体装置の放熱板などは比較的小型のものであり、大掛かりな装置を要しない場合が多い。混合の際には、実験室で使用するものよりもやや大型の撹拌機などの混合装置又は混練装置が好適に用いられる。そして、金属複合成形体は、各種プレス成形法(静水圧プレス、高圧プレス等を含む)、注型成形法等の成形手段によって、所定の形状に成形することが可能である。
このような例として、例えば100mm×100mm角程度の比較的浅い容器を準備し、この容器に所定量の炭素繊維集合体と金属粉体とを精秤して少量づつ混ぜあう。通常炭素繊維と金属粒とは密度が著しく異なるので、まず繊維集合体を容器の底部に敷き詰め、ついで少量の金属粒子を繊維集合体の上に載せ、さらに要すれば少量の黒鉛化繊維を置き、ついで金属粒子を少量づつ容器に投ずる。この走査を、必要なだけ繰り返す。軽合金の粉粒体では一括して混ぜることも可能であるが、注意深く走査するほうが好ましい結果が得られ易い。
調製された混合物を所定の型に収め、プレス機等の機械装置により所定の圧力・温度条件で操作する。必要に応じて、真空下での混合物の空気除去操作や、プレスに代えて静水圧を負荷して均一に加圧する操作を選択する場合がある。また坩堝を用いて高温度において焼結処理や融解させる操作もある。
本発明では、実験室規模の混合と成形とを一例を挙げて説明する。
まず、ピッチ系黒鉛化炭素繊維は平均繊維径12μm、繊維長600μmのものを注意深く均一厚みに配列し、ポリビニルアルコール1%水溶液を噴霧し、目付50g/mの不織布を作成した。かような不織布を100mm×100mm角に揃え、多数枚準備した。ここでポリビニルアルコールは不織布の糊剤であって黒鉛化繊維同士を接着し、さらに、黒鉛化繊維を収束する収束剤となり、しかも複合材料に成形したとき炭化される。この不織布をローラー加圧機、油圧プレス機等を用いて種々の加圧条件で圧延すると0.05〜0.2mmの見かけ厚さの試料片が得られた。
次に、市販の銅粉(二次粒径3〜4μm)をアルコール液にて洗浄し、濾紙の上に取り出した後、真空乾燥機により2昼夜乾燥し、プレス成形前に2重量%のパラフィンワックスを銅粉に添加した。そして、100mm×100mm角の正方形の金型に移し、プレス機を用いて2〜10トン/cmに加圧して、種々の圧力条件により粉末冶金処理を施して、平板状の銅箔を得た。
ついで、平板上に、黒鉛化繊維フィラーの不織布、粉末冶金の銅箔を、順次、交互に積層して、プレス機で加圧して成形体を得た。黒鉛化繊維フィラー及び粉末冶金銅箔は目付(番手)と加圧条件によって広範囲に繊維収束性や見かけ密度が変化する。
ここで用いる黒鉛化繊維の真密度は2.1〜2.2g/cmであるが、銅の真密度は8.9g/cmであるので、両者を混合すれば、混合率に応じて空隙が全くない理論密度と、実測密度とが求められる。ここで、充填率=見かけ密度/理論密度(%)としてパーセント表示できる。
本発明では、経験的に、80〜97%程度の充填率の場合プレスされた面内の熱伝導率が高く、250〜500W/m・Kの範囲のものが得られる。プレス方向(厚さ方向)の熱伝導率は100〜150W/m・K程度に過ぎない。また、黒鉛化繊維の配合率が高めの場合(50〜70重量%)の方が銅リッチの場合より熱伝導の点では有利であるが、複合材料における比重が小さい側が有利となっていることも配慮しなければならないであろう。
本発明ではプレス加工処理で充分の場合があるが、さらに粉体に近い状態の銅箔を加熱熔融する手段を付加できる。殊に収束や作業性の向上の目的でポリビニルアルコールやパラフィンワックスを添加しているので、充分に高い温度、例えば銅の融点(約1080℃)以上に加熱して添加した有機物を炭化してしまう方が熱伝導性の維持・向上の点で望ましい。そこで、1000℃程度で焼結するか、又は1200℃程度で完全熔融処理し黒鉛化繊維と銅とを一体化することができる。
本発明では銅の粉体を用いた金属炭素複合材料の調製方法を説明したが、他のアルミニウムや銀のような金属又は金属炭化物若しくは金属窒化物の粉粒体の場合も、この技術の応用範囲であるから、上述の銅の例と同様に実施できよう。
また本発明の金属炭素複合材料の構成成分としては、前記の黒鉛化炭素材料と金属系材料に加え、他の成分を混合・複合させる事もできる。これらの例としては、前述の樹脂バインダーのほか、黒鉛微粒子、膨張黒鉛、りん片黒鉛、PAN系炭素繊維および該炭素繊維による織物、不織布等の炭素材料等が好ましく例示される。
また、金属粒子を粉体成形した金属箔と黒鉛化繊維の不織布薄層とを交互に積層して、相当量の厚みを備えた場合、この集積物をプレスの方向に適宜細かく断裁すると、積層面を厚み方向とする平面状シートが切り出される。このような平面を持つ断裁シートは特に厚み方向に高い熱伝導率を備える放熱材として好ましく利用できる。
このように黒鉛化繊維では繊維軸方向における熱伝導率が高く、この軸と垂直な方向では熱伝導率は1/4乃至1/3程度と低いため、少量の黒鉛化繊維を異方性がよく機能するように配置するためには積層された上記の成形体積層物を積層面とほぼ垂直方向に断裁して、積層方向が厚み方向となるような放熱板を製作するとよい。このような切り出しの操作を施すことも有効なものである。
また本発明の金属炭素複合材料では、切断、切削、研磨を施して、薄片、小片又は部品の形態に加工処理する事も好ましく行われる。たとえば、ヒートシンクの形状に合わせて加工するものである。切削方向を変化させ、熱膨張率の方向性があれば、周辺機器の熱膨張に合わせることが可能となる。もっとも、この発明における複合材料は原則的に等方性であり、黒鉛化繊維は複合材料内においてランダムに配置されている。この結果、繊維は加熱されたとき、繊維径方向に膨張し(膨張率:約5×10−6/K)、繊維軸(長手)方向に収縮する(収縮率:約1.5×10−6/K)、傾向があるので、実際には複合材料は殆ど寸法変化しない特徴がある。
また金属炭素複合材料に、接合、積層、組込、組立処理等の加工を施して、所定の形状寸法を備えた放熱部材にする事も好ましく行われ、例えば放熱板等を好適に得る事ができる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれら技術に制限されるものではない。
(1)ピッチ系黒鉛化炭素繊維の平均繊維径:
黒鉛化を経たピッチ系炭素繊維を光学顕微鏡下400倍において10視野写真撮影し拡大写真像から寸法を求めた。
(2)ピッチ系黒鉛化炭素繊維の平均繊維長:
黒鉛化を経たピッチ系炭素繊維を光学顕微鏡下で10視野撮影し求めた。倍率は繊維長に応じて適宜調整した。
(3)ピッチ系黒鉛化炭素繊維の真密度:
比重法を用いて求めた。
(4)結晶サイズ:
X線回折にて求め、六角網面の厚み方向の結晶サイズは(002)面からの回折線を用いて求め、六角網面の成長方向の結晶サイズは(110)面からの回折線を用いて求めた。また求め方は学振法に準拠して実施した。
(5)ピッチ系黒鉛化炭素繊維の熱伝導率:
粉砕工程以外を同じ条件で作製した黒鉛化処理後の繊維の抵抗率を測定し、特開平11−117143号公報に開示されている熱伝導率と電気比抵抗との関係を表す下記式(1)より求めた。
[数1]
C=1272.4/ER−49.4 (1)
ここで、Cは黒鉛化後の繊維の熱伝導率(W/m・K)、ERは同じ繊維の電気比抵抗μΩmを表す。
(6)平板状成形体の熱伝導率:
京都電子製QTM−500で測定した。
[実験例1]
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmの孔径の紡糸口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分5000mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均繊維径が15μmのピッチ系炭素繊維を製糸した。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングにより目付320g/mのピッチ系炭素繊維からなるウェブとした。
このウェブを空気中で175℃から280℃まで平均昇温速度7℃/分で昇温して不融化を行った。不融化したウェブを窒素雰囲気中800℃で焼成した後、ミリングし、平均繊維長が500μmの繊維に篩い分けを行った。その後、非酸化性雰囲気とした電気炉にて3000℃で熱処理して黒鉛化した。平均繊維径は9.7μmであった。繊維径分散の平均繊維径に対する百分率は14%であった。真密度は2.18g/ccであった。
透過型電子顕微鏡を用い、100万倍の倍率でこのピッチ系黒鉛化炭素繊維を観察し、400万倍に写真上で拡大した。ピッチ系黒鉛化炭素繊維の端面はグラフェンシートが閉じていることを確認した。また、走査型電子顕微鏡で4000倍の倍率で観察したピッチ系黒鉛化炭素繊維の表面には、大きな凹凸はなく、平滑であった。
本ピッチ系黒鉛化炭素繊維の、X線回折法によって求めた黒鉛結晶のc軸方向の結晶子サイズは33nmであった。またab軸方向の結晶子サイズは57nmであった。
また焼成までを同じ工程で作製し、ミリングを実施しなかったウェブを、非酸化性雰囲気とした電気炉にて3000℃で熱処理した黒鉛化ウェブより、単糸を抜き取り、電気比抵抗を測定したところ、2.2μΩ・mであった。下記式(1)を用いて求めた熱伝導度は530W/m・Kであった。
[数2]
C=1272.4/ER−49.4 (1)
(ERは電気比抵抗を示し、ここでの単位はμΩ・mである)
[実験例2]
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmの孔径の紡糸口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分6000mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均繊維径が11μmのピッチ系繊維を作製した。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付280g/mのピッチ系繊維からなるウェブとした。
このウェブを空気中で175℃から280℃まで平均昇温速度7℃/分で昇温して不融化を行った。不融化したウェブを窒素雰囲気中800℃で焼成した後、ミリングし、平均繊維長が300μmの繊維に篩い分けを行った。その後、非酸化性雰囲気とした電気炉にて3000℃で熱処理することで黒鉛化し、黒鉛化繊維とした。平均繊維径は8.1μmであった。真密度は、2.21g/ccであった。透過型電子顕微鏡で100万倍の倍率で観察し、400万倍に写真上で拡大した。ピッチ系黒鉛化炭素繊維の端面はグラフェンシートが閉じていた。また、走査型電子顕微鏡で4000倍の倍率で観察した、ピッチ系黒鉛化炭素繊維の表面には大きな凹凸はなく平滑であった。
本ピッチ系黒鉛化炭素繊維の、X線回折法によって求めた黒鉛結晶のc軸方向の結晶子サイズは41nmであった。またab軸方向の結晶子サイズは68nmであった。
焼成までを同じ工程で作製し、ミリングを実施しなかったウェブを、非酸化性雰囲気とした電気炉にて3000℃で熱処理した黒鉛化繊維ウェブより、単糸を抜き取り、電気比抵抗を測定したところ、2.0μΩ・mであった。前記式(1)を用いて求めた繊維軸方向の熱伝導度は580W/m・Kであった。
[実験例3]
(ピッチ系黒鉛化炭素繊維不織布の製造)
実験例1で作成したピッチ系黒鉛化炭素繊維50重量部、実験例2で得たピッチ系黒鉛化炭素繊維40重量部、およびバインダーとして平均繊維長5mmのPVA繊維(商品名ビニロン)10重量部を混合した後に、30℃の水浴を用いて抄紙し、マット状として後、窒素雰囲気下1500℃で焼成処理することによりピッチ系黒鉛化炭素繊維不織布を得た。
得られたピッチ系黒鉛化炭素繊維不織布中の炭素含有率は99重量%、厚みは0.3mm、充填率は35体積%であった。
[実験例4]
(ランダムマット炭素繊維集合体の製造)
実験例1で作成したランダムマット炭素繊維前駆体を空気中で170℃から310℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して不融化を行い、ついで700℃で焼成した後、さらにそのまま3000℃で焼成、黒鉛化することによりランダムマットピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体を得た。熱伝導率、比重等の値については実施例1のピッチ系黒鉛化炭素繊維の値と同等であった。
[実施例1]
実験例2で熱伝導率580W/m・Kを記録したピッチ系黒鉛化炭素繊維70重量部と二次粒径18μmの銀―銅合金(72重量%銀―28重量%銅)の微粒子30重量部とを混合し、少量の増粘剤(パラフィンワックス2重量%)を追加し、注意深く、丹念に混合・攪拌し比重の差異の影響が少なくなるようにした。ついで圧力8トン/cm下で粉体成形を行い、引き続いて、この粉体成型物を坩堝に収め、窒素雰囲気、加圧下、1000℃で熔融、焼結を行い、板状の金属炭素複合材料を得た。
この金属炭素複合材料のプレス面内方向の熱伝導率は420W/m・K、プレス面に垂直な方向の熱伝導率は320W/m・Kと高い値であった。また複合材料成形体のプレス面内方向の熱膨張率は約6×10−6/Kと好適な値であった。
[実施例2]
実験例3で作成したピッチ系黒鉛化炭素繊維不織布60重量部と、マトリックスとして二次粒径18μmの銀―銅合金(72重量%銀―28重量%銅)40重量部とを配合し、ポリビニルアルコール1%水溶液を噴霧しながら、少量ずつ両者を混合した。尚、ピッチ系黒鉛化炭素繊維不織布はマトリクス材と混合しながら、所定の枚数を積層していく形とした。
ついで、この複合体を、窒素雰囲気、加圧下、1000℃で熔融、焼結を行い、板状の金属炭素複合材料を得た。
この金属炭素複合材料のプレス面内方向の熱伝導率は450W/m・Kであり、またプレス面に垂直な方向の熱伝導率は270W/m・Kであった。またプレス面内方向の熱膨張率は約4.5×10−6/K〈室温〜600℃〉であった。なお、電波遮蔽性能をストリップ路線法で観測したところ、2.6GHzにおいて12dBの遮蔽性を呈した。
[実施例3]
実験例3で作成したピッチ系黒鉛化炭素繊維不織布55重量部と、実験例2で得たピッチ系黒鉛化炭素繊維15重量部、マトリックスとして二次粒径18μmの銀―銅合金(72重量%銀―28重量%銅)30重量部を配合し、ポリビニルアルコール1%水溶液を噴霧しながら、少量ずつ両者を混合した。尚、ピッチ系黒鉛化炭素繊維不織布は、ピッチ系黒鉛化炭素繊維およびマトリクス材と混合しながら所定の枚数を積層する形とした。
ついで、この複合体を、窒素雰囲気、加圧下、1000℃で熔融、焼結を行い、板状の金属炭素複合材料を得た。
この金属炭素複合成型体のプレス面内方向の熱伝導率は470W/m・Kであり、プレス面に垂直な方向の熱伝導率は300W/m・Kであった。またプレス面内方向の熱膨張率は約4.3×10−6/K〈室温〜600℃〉であった。なお、電波遮蔽性能をストリップ路線法で観測したところ、2.6GHzにおいて14dBの遮蔽性を呈した。
[実施例4]
実験例4で作成したランダムマットピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体60重量部と、マトリクスとして二次粒径18μmの銀―銅合金(72重量%銀―28重量%銅)40重量部と配合し、ポリビニルアルコール1%水溶液を噴霧しながら、少量ずつ両者を混合した。尚、ランダムマットピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体はマトリクス材と混合しながら、所定の枚数を積層していく形とした。
ついで、この複合体を、窒素雰囲気、加圧下、1000℃で熔融、焼結を行い、板状の金属炭素複合材料を得た。
この金属炭素複合材料のプレス面内方向の熱伝導率は480W/m・Kであり、またプレス面に垂直な方向の熱伝導率は310W/m・Kであった。またプレス面内方向の熱膨張率は約4×10−6/K〈室温〜600℃〉であった。
なお、電波遮蔽性能をストリップ路線法で観測したところ、2.6GHzにおいて21dBの遮蔽性を呈した。
[実施例5]
実験例4で作成したランダムマット黒鉛炭素繊維集合体70重量部と、マトリクスとして二次粒径15μmの窒化アルミニウム粉末〈真密度4.5g/cc;熱伝導率170〜200W/m・K;熱膨張係数4.4×10−6/K〉30重量部を配合した以外は、実施例4と全く同様の方法で板状の金属炭素複合成形体を得た。
この金属炭素複合成型体のプレス面内方向の熱伝導率は420W/m・Kであり、またプレス面に垂直な方向の熱伝導率は270W/m・Kであった。またプレス面内方向の熱膨張率は1.5×10−6/K〈室温〜600℃〉であった。
本発明の金属炭素複合成形体は、その熱伝導率の高さを利用することで、電子部品用放熱板として用いることができる。また、黒鉛化繊維フィラーの添加量を多くすることで、高い熱伝導度が得られるため、電子部品においても、比較的耐熱性が要求される自動車や大電流を必要とする産業用パワーモジュールのコネクタ等に好適に用いることができる。具体的には、放熱板、半導体パッケージ用部品、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、ダイパッド、プリント配線基板、冷却ファン用部品、筐体等に用いることができる。また、熱交換器の部品として用いることもでき、ヒートパイプに用いることができる。さらに、炭素繊維フィラーの電波遮蔽性を利用し、特にGHz帯の電波遮蔽用部材として好適に用いることが出来る。

Claims (10)

  1. 平均繊維径0.1〜30μm、真密度2.0〜2.5g/ccの黒鉛結晶を有するピッチ系黒鉛化炭素繊維および又は該炭素繊維からなるピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体を、得られる金属炭素複合材料を基準として20〜90体積%と、金属種を含むマトリクス材料を、得られる金属炭素複合材料を基準として10〜80体積%を、少なくとも含んでなる、金属炭素複合材料。
  2. ピッチ系黒鉛化炭素繊維のc軸方向の結晶子サイズ(Lc)が20〜100nmである、請求項1に記載の金属炭素複合材料。
  3. ピッチ系黒鉛化炭素繊維のab軸方向の結晶子サイズ(La)が30〜100nmである、請求項1または2に記載の金属炭素複合材料。
  4. ピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体は、不織布、ランダムマットの中から選ばれる少なくとも1種の形状を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の金属炭素複合材料。
  5. ピッチ系黒鉛化炭素繊維のアスペクト比が平均2〜8000である、請求項1〜4のいずれかに記載の金属炭素複合材料。
  6. 金属種を含むマトリクス材料として、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、タングステンの金属群、もしくは該金属群による合金、もしくは該金属群を含む合金、もしくは該金属群の炭化物、窒化物、炭窒化物の中から選ばれる1種以上の材料を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の金属炭素複合材料。
  7. 金属種を含むマトリクス材料の一次もしくは二次粒径が平均0.01〜600μmの微粒子と、ピッチ系黒鉛化炭素繊維および又はピッチ系黒鉛化炭素繊維集合体を用いて、粉体圧縮成形を行い、ついで加圧下もしくは真空下で加熱を施し、該微粒子を熔融して、成型体の空隙に含浸せしめ、焼結を行う事により、一体複合化してなる請求項1〜6のいずれかに記載の金属炭素複合材料。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の金属炭素複合材料に、切断、切削、研磨を施して、薄片、小片又は部品に加工処理されてなる金属炭素複合材料。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の金属炭素複合材料に接合、積層、組込、組立処理を施してなる金属複合複合材料。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の金属複合材料からなる放熱部材。
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