JP2009026394A - 磁気記録媒体及び磁気記録再生装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る磁気記録媒体は、単結晶基板の上に形成された軟磁性膜と、軟磁性膜の上に形成された非磁性中間層膜と、非磁性中間層膜の上に形成された硬磁性膜とを備え、硬磁性膜が記録単位で隣接ビットと磁気的に分離された構造を持つバターンメディア型の磁気記録媒体において、軟磁性膜(Co膜102)、非磁性中間層膜(Au膜105)、硬磁性膜(Co−26at%Pt合金膜106)のいずれもが単結晶基板101に対してエピタキシャル成長した膜により形成されたことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
「熱揺らぎ問題」に対処できて記録密度を伸ばせる磁気記録方式として、パターンメディア型の磁気記録媒体(以下、パターンメディアと略す)を用いた磁気記録方式の検討が行われている。パターンメディアでは、記録ビットはあらかじめ整形された一様な連続磁性膜から構成され、記録ビット間に空隙を設けるなどの手段によって互いに磁気的に分離されている。例えば、パターンメディアは、図2に示すように、一定の大きさの複数の記録ビットが空隙を隔ててアレイ状に規則正しく形成された構成を備える。パターンメディアは、グラニュラー構造の場合と比べて記録ビットを形成する磁性体の体積を大きくできるため、熱的な安定性が向上する。しかしながら、パターンメディアでは、記録ビットの微細加工が必要であること、記録ビットの位置が固定されてしまうこと、などの技術的な課題も生ずる。
パターンメディアとして、面内磁化膜を用いる方法(例えば特許文献1;2)、単層の垂直磁化膜を用いる方法(例えば特許文献3)や記録磁性膜の下部に軟磁性膜を設けて2層垂直媒体構造を用いる方法(例えば特許文献4)、あるいはパターンメディアに特有な固定記録ビットから発生する磁気情報を処理する方法(例えば特許文献5;6;7)などが検討されている。これらのパターンメディアの中で、1000Gb/in2 (1Tb/in2)以上の高密度磁気記録に適する方式は、磁気ヘッドの記録再生効率が大きい2層垂直媒体構造を用いる方法と考えられる。
パターンメディアでは、個々のビットの磁化反転強度などの磁気的性質を揃える必要があるが、微細加工の際の寸法ばらつき、ビット毎の磁化容易軸分散が存在するためその制御は容易ではない。また高密度磁気記録では、磁気記録再生に用いる磁気ヘッドと記録磁性膜の距離を低減することが必要であり、このため記録磁性膜上に形成される保護潤滑膜の厚さが小さくなる。この場合、記録磁性膜の耐食性や機械強度などが問題となるが、従来技術ではこれらの問題点が十分に検討されているとは言えない状況にあった。
本発明の磁気記録媒体は、単結晶基板の上に形成された軟磁性膜と、軟磁性膜の上に形成された非磁性中間層膜と、非磁性中間層膜の上に形成された硬磁性膜とを備え、硬磁性膜が記録単位で隣接ビットと磁気的に分離された構造を持つパターンメディアにおいて、軟磁性膜、非磁性中間層膜、硬磁性膜のいずれもが単結晶基板に対してエピタキシャル成長した膜により形成されたことを特徴としたので、上記効果に加え、硬磁性膜と軟磁性膜との間に挿入する非磁性中間層膜が、これらの磁性膜とエピタキシャル関係をたもって形成されたことによって、磁性膜間の距離を正確に制御できる。このため、硬磁性膜を微細加工して形成されたビットと軟磁性膜の距離が一定になることにより、磁気的相互作用が均一化され、磁化反転強度などを一様にできるという効果が得られる。この結果、軟磁性膜が2層垂直媒体の裏打ち軟磁性層として望ましい効果を発揮しやすくなる。
エピタキシャル成長させた軟磁性膜は、(111)面が単結晶基板と平行なfcc構造を持つCo、Co合金、NiもしくはNi合金のいずれかにより形成され、エピタキシャル成長させた非磁性中間層膜は、(111)面が単結晶基板と平行なfcc構造を持つAu, Ag, Cu, Pt, Pdもしくはこれらの元素の合金、あるいは、(0001)面が単結晶基板と平行なhcp構造を持つRu, Tiもしくはこれらの元素の合金のいずれかにより形成され、エピタキシャル成長させた硬磁性膜は、(0001)面が単結晶基板と平行なhcp構造を持つCo, Co合金、あるいは、(001)面が単結晶基板と平行なL10構造を持つFePt規則合金もしくはCoPt規則合金、あるいは、(001)面が単結晶基板と平行な希土類元素(Re)とCoの規則合金であるReCo5のいずれかにより形成されたことを特徴としたので、個々のビットの磁気的性質の均一性、微細加工の精度向上、記録磁化膜の耐食性などの点で優れた特性を持つ磁気記録媒体を提供できる。
単結晶基板がAl2O3(0001)もしくはSi(111)であることを特徴としたので、単結晶基板に対して軟磁性膜、非磁性中間層膜、硬磁性膜をエピタキシャル成長させることが可能となる。
エピタキシャル成長させた軟磁性膜は、(110)面もしくは(211)面が単結晶基板と平行なbcc構造を持つFe、Fe合金のいずれかにより形成され、エピタキシャル成長させた非磁性中間層膜は、(111)面が単結晶基板と平行なfcc構造を持つAu, Ag, Cu, Pt, Pdもしくはこれらの元素の合金、あるいは、(0001)面が単結晶基板と平行なhcp構造を持つRu, Tiもしくはこれらの元素の合金のいずれかにより形成され、エピタキシャル成長させた硬磁性膜は、(0001)面が単結晶基板と平行なhcp構造を持つCo, Co合金、あるいは、(001)面が単結晶基板と平行なL10構造を持つFePt規則合金もしくはCoPt規則合金、あるいは、(001)面が単結晶基板と平行な希土類元素(Re)とCoの規則合金であるReCo5のいずれかにより形成されたことを特徴としたので、個々のビットの磁気的性質の均一性、微細加工の精度向上、記録磁化膜の耐食性などの点で優れた特性を持つ磁気記録媒体を提供できる。
単結晶基板がMgO(111), SrTiO3(111), MgO(110),もしくは Si(110)であることを特徴としたので、単結晶基板に対して軟磁性膜、非磁性中間層膜、硬磁性膜をエピタキシャル成長させることが可能となる。
エピタキシャル成長させた軟磁性膜が非磁性材料層をサンドイッチ状に挟むように配置された複数のエピタキシャル軟磁性膜により形成されたことを特徴としたので、磁気記録再生時に発生するスパイクノイズの原因となる磁壁が形成され難くなり、磁気記録媒体の低ノイズ化で望ましい効果が得られる。
硬磁性膜がCo-Pd, Co-Pt, Co-Re, Co-Rh, Co-Ru合金のいずれかにより形成されたことを特徴としたので、磁性膜の耐食性や機械強度を改善でき、磁気記録媒体の生産における歩留まり向上および特性均一化の効果が得られる。
硬磁性膜が2種類以上の組成の異なる積層膜から構成されていることを特徴としたので、膜厚方向で磁気特性、機械的特性あるいは化学的特性の調整が可能となり、磁気ヘッドでの記録効率向上、耐久性や耐食性の改善を図ることができるという効果が得られる。
硬磁性膜の厚さが3nmから30nmの範囲であることを特徴としたので、記録ビットの垂直磁化の不安定化や、磁気ヘッドの記録効率低下を防止できる。
非磁性中間層膜の厚さが0.2nmから10nm、軟磁性膜の厚さが10nmから100nmの範囲であることを特徴としたので、硬磁性膜のエピタキシャル成長の阻害、磁気記録における記録効率低下を防止でき、さらには、薄膜形成時間の短縮化が図れると共に、磁気記録再生において記録再生効率向上に寄与しない無駄な領域の形成を排除できるので、生産性を向上できる。
硬磁性膜が記録単位で隣接ビットと磁気的に分離された構造は、隣接ビット間が非磁性材料で充填されてしかも媒体表面が平滑化された構造であることを特徴としたので、記録再生用の磁気ヘッドの媒体表面上での浮上滑走が安定化するという効果が得られる。
軟磁性膜が、単結晶基板の上にエピタキシャル成長させた他材料層を介して形成されたことを特徴としたので、単結晶基板と軟磁性膜の間に格子定数のミスマッチがある場合には他材料層による歪の緩和、あるいは単結晶基板と軟磁性膜の付着強度の増大を図れるという効果が得られる。
本発明の磁気記録再生装置は、記録時に磁気記録媒体を加熱する加熱装置を備えたことを特徴としたので、加熱装置により磁性膜保磁力を大幅に低減させることができて、低い起磁力でも飽和記録が可能となる。
高密度磁気記録に適したパターンメディアを実現するための条件として、以下の条件を満たす必要がある。その条件は、(1)表面平坦性に優れていること、(2)微細加工精度を高く保てること、(3)記録膜の磁化容易軸分散が小さくてしかも磁化容易軸が基板に対して垂直方向であること、(4)記録膜は耐食性と機械的強度に優れていること、(5)記録膜と裏打ち軟磁性膜の間には非磁性の極薄の磁気分離層の存在が望ましいこと、(6)軟磁性膜は透磁率が大きくてしかも基板面と平行な方向で磁気的特性の均一性に優れること、(7)軟磁性膜の表面平坦性が優れていること、(8)軟磁性膜には磁気記録再生時のスパイクノイズの原因となる磁壁が入りにくいこと、(9)量産性があってコスト低減可能性があること、などである。
外径1インチで厚さ0.5mmのAl2O3(0001)により形成された単結晶基板上に、DCマグネトロンスパッタ法により以下のように薄膜形成を行ない、図1(a)に示す断面構造を持つ試料を作成した。膜形成時の基板温度は300℃とした。単結晶基板101上に、Coを2nm、Cuを2nm、Coを30nm、Auを3nm、Co-25at%Pt合金を15nm、の厚さに形成した。これらの薄膜は単結晶基板101のAl2O3(0001)に対してエピタキシャル成長しており、最初の軟磁性膜を形成するCo膜102はhcp構造、非磁性材料層を形成するCu膜103はfcc構造、2番目の軟磁性膜を形成するCo膜104はfcc構造、非磁性中間層膜を形成するAu膜105はfcc構造、硬磁性膜を形成するCo-25at%Pt合金膜106はhcp構造を持ち、それぞれの膜は以下の方位関係を持つことをX線回折と電子顕微鏡観察で確認した。
Co-25at%Pt(0001)[1120]hcp//Au(111)[110]fcc//Co(111)[110]fcc//Cu(111)[110]fcc//Co(0001)[1120]hcp//Al2O3(0001)[1120]
この試料表面にフォトレジストを塗布し、電子線描画装置による露光、イオンビームエッチングによる微細加工のプロセスを活用してCo-25at%Pt合金膜106を加工して図1(b)に示す断面構造を作成した。この加工においてAu膜105はCo-25at%Pt合金膜106のエッチング加工におけるストッパ膜としての作用を果たした。Co-25at%Pt合金膜106をエッチングで除去して形成された格子状の溝107(図2参照)の幅は2nmであり、この格子状の溝107を隔てて縦横に並ぶように形成された1つ1つの磁性膜111を上方から見た形状は矩形状であり、この磁性膜111の寸法は12nm × 40nmであった。この孤立した1つの磁性膜111を1つの記録単位(記録ビット202(図2参照))とした場合、面記録密度はおよそ1Tb/in2に相当する。ついでRFスパッタ法によって溝107内にSiO2のような非磁性材料108を充填して、この非磁性材料108の表面を研磨する。そして、DCマグネトロン法によって磁性膜111及び研磨した非磁性材料108の表面に0.5nm厚さのカーボン保護膜109を形成し、図1(c)に示す断面構造を持つパターンメディアを作成した。微細加工を施した硬磁性膜であるCo-25at%Pt合金膜106の保磁力は5.2kOeであった。
このパターンメディアの全体構造を図2に示す。図2の拡大図Aでは記録ビット202の配置を分かりやすく説明するために、カーボン保護膜109と非磁性材料108であるSiO2充填材料の図示を省略した。このパターンメディアを図3に示す磁気記録再生装置に組み込んで、記録再生特性の評価を行った。図3において、301はパターンメディア、302はスピンドルモータ、303は記録用の単磁極ヘッド、再生用にトンネル磁気抵抗効果現象を応用したTMRヘッドを組み合わせた磁気ヘッドを搭載したスライダー、304はスライダーを支えるジンバル、305は信号処理などの機能を含む記録再生の電子回路、306は特性評価装置に接続するコネクター、307は位置決め機構である。パターンメディア301と単磁極ヘッド303との距離を3.6nmに保って、ディスク回転数4800rpmの条件で記録再生実験を行った。この結果、作成したパターンメディア301で10-9以下のエラーレートが得られることが確認された。尚、本形態のように、隣接ビット間が非磁性材料で充填されてしかも媒体表面が平滑化された構造により、硬磁性膜が記録単位で隣接ビットと磁気的に分離された構造とすることで、記録再生用の磁気ヘッドの媒体表面上での浮上滑走が安定化する。
外径1インチで厚さ0.5mmのAl2O3(0001) により形成された単結晶基板上に、DCマグネトロンスパッタ法により以下のように薄膜形成を行ない、図4に示す断面構造を持つ試料を作成した。膜形成時の基板温度は300℃とした。単結晶基板401上に、Co膜402を2nm、Cu膜403を2nm、Co-20at%Ni合金膜404を30nm、Au膜405を3nm、Fe-35at%Co合金膜406を10nm、Pt膜407を2nm、Co-50at%Pt合金膜408を10nm、の厚さに形成した。これらの薄膜は単結晶基板401のAl2O3(0001)に対してエピタキシャル成長しており、最初に形成した軟磁性膜を形成するCo膜402はhcp構造、非磁性材料層を形成するCu膜403はfcc構造、2番目の軟磁性膜を形成するCo-20at%Ni合金膜404はfcc構造、非磁性中間層膜を形成するAu膜405はfcc構造、軟磁性膜を形成するFe-35at%Co合金膜406はbcc構造、非磁性中間層膜を形成するPt膜407はfcc構造、硬磁性膜を形成するCo-50at%Pt合金膜408はL10規則合金構造を持ち、それぞれの膜は以下の結晶面が基板面と平行であることをX線回折と電子顕微鏡観察で確認した。
Co-50at%Pt(001)L10 //Pt(111)fcc // Fe-35at%Co(110)fcc // Au(111)fcc // Co-20at%Ni(111)fcc // Cu(111)fcc // Co(0001)hcp // Al2O3(0001)
ここでFe-35at%Co(110)fcc 、Co-20at%Ni(111)fccはいずれも軟磁性膜であるが非磁性の Au(111)fcc を介して互いに反平行に磁気結合している。この構造をとることにより磁壁が存在し難くなり、磁気記録再生の際のスパイクノイズなどの望ましくないノイズを防ぐことができる。ついで実施例1と同様に、最上層のCo-50at%Pt合金膜408を微細加工して、5nm × 18nmの矩形状にパターニングを行った。隣接する矩形パターン間の距離を2nmとした。1つの矩形パターンを1記録ビットとみなすと面記録密度はおよそ4.5Tb/in2となる。Co-50at%Pt合金膜408の磁気異方性エネルギーは3 × 107erg/ccで、微細加工後の保磁力は7.8 kOeであった。この試料を図3に示す磁気記録再生装置に装着して記録再生実験を行った。この実験では、記録用に単磁極ヘッド、再生用に検知電流を素子の垂直方向に流す型の巨大磁気抵抗効果を応用したCPP-GMRヘッド、およびレーザー光導入路が形成された複合ヘッドを使用した。この複合ヘッド主要部とパターニングしたパターンメディアとの関係を図5に示す。ここで408AはパターニングされたCo-50at%Pt磁性膜、412はCPP-GMR素子、409は単磁極ヘッドの主磁極、410は副磁極、411は主磁極を励磁するために電流を流すコイル、413は磁気シールド、414は石英ガラスからなるレーザー光導入路であり磁気記録媒体側端面からレーザー光415が滲み出る構成となっている。パターニングされたCo-50at%Pt磁性膜408Aに磁気記録する場合、まずレーザー光415をパルス照射してこの部分を加熱し、加熱された状態で単磁極ヘッドの主磁極409で磁界を加えて磁気記録する。416は磁束の流れを示す。加熱温度はレーザー出力を調整することで行い、400℃程度までの瞬間加熱が可能である。加熱時の磁性膜保磁力は大幅に低減するので低い起磁力でも飽和記録が可能となる。パターンメディアと複合ヘッドとの距離を2nmに保って、ディスク回転数1800rpmの条件で記録再生実験を行い、10-8以下のエラーレートが得られることを確認した。
外径1インチ、厚さ0.45mmのSi(111) により形成された単結晶基板上に、DCマグネトロンスパッタ法によって図6に示す断面構造を持つ試料を作成した。薄膜形成時の基板温度は250℃である。薄膜形成装置内でSi(111)単結晶基板601の表面をスパッターエッチングして表面に存在する酸化物や不純物を除去した後、Ag膜602を3nm, Ni-45at%Fe合金膜603を30nm, Ru膜604を3nm, Co-20at%Pd合金膜605を15nmの厚さに形成した。これらの薄膜は単結晶基板601のSi(111)に対してエピタキシャル成長しており、他材料層を形成するAg膜602はfcc構造、軟磁性膜を形成するNi-45at%Fe合金膜603はfcc構造、非磁性中間層膜を形成するRu膜604はhcp構造、硬磁性膜を形成するCo-20at%Pd合金膜605はhcp構造を持つ。これらの薄膜は、基板に対して以下の関係でエピタキシャル成長していることをX線回折により確認した。
Co-20at%Pd(0001)hcp//Ru(0001)hcp//Ni-45at%Fe(111)fcc//Ag(111)fcc//Si(111)
この試料を実施例1と同様な微細加工を施し、硬磁性膜のCo-20at%Pd(0001)膜を溝の幅2nmで12nm × 40nmの矩形状孤立膜にパターニングし、ついで溝部への樹脂充填を行った。これを表面研磨して平坦化した後、最表面にカーボン膜を1nmの厚さ形成して磁気記録媒体を作成した。以下、同様な条件で硬磁性膜の種類を、Co-25at%Pt, Co-18at%Ru, Co-30at%Rh, Co-17t%Re, Co-5at%Cr, Co-10at%V, Co-12at%Mo, Co-8at%Ni, Co-5at%Cr-3at%Ta, Co-5at%Cr-4at%V, Co-6at%Cr-2at%Nb, Co-5at%Cr-3at%Siと変化させて膜形成を行い、同様な要領で微細加工や溝部への非磁性材料充填を行い磁気記録媒体を作成した。これらの硬磁性膜はいずれもhcp構造をとり、(0001)hcp面を基板Si(111)およびその他の軟磁性膜、非磁性中間層膜などに対してエピタキシャル成長していることをX線回折により確認した。尚、本形態のように、軟磁性膜が、単結晶基板の上にエピタキシャル成長させた他材料層を介して形成された構成とすることにより、単結晶基板と軟磁性膜の間に格子定数のミスマッチがある場合には他材料層による歪の緩和、あるいは単結晶基板と軟磁性膜の付着強度の増大を図れる。
外径0.8インチ、厚さ0.5mmのAl2O3(1120)により形成された単結晶基板上に、超高真空分子線蒸着(MBE)装置を用いて薄膜形成を行い、図7の断面構造を持つ試料を作成した。基板および形成した薄膜の結晶構造はMBE装置に付随している反射型高速電子線回折(RHEED)装置を用いて調べた。10-8Paの真空雰囲気で基板温度を350℃に保って薄膜形成を行った。蒸着法として高融点金属では電子線加熱(EB)蒸着源を融点が低い金属ではクヌードセン(K)セル型の蒸着源を使用した。Al2O3(1120)単結晶基板701上に他材料層であるRu膜702を3nm, 軟磁性膜である Fe-10at%Ni合金膜703を50nm, 非磁性中間層膜であるCu膜704を10nm形成した。ついでEB蒸着源を用いてCo、Kセル型蒸着源を用いてSmを同時蒸着法により硬磁性膜であるSmCo5膜705を形成した。形成した薄膜の構造をRHEEDによって調べた結果、SmCo5はL10構造を持つ規則合金膜であり、以下の関係を保ってAl2O3(1120)単結晶基板に対してエピタキシャル成長していることを確認した。
SmCo5(001)L10//Cu(111)fcc//Fe-10at%Ni(111)fcc//Ru(0001)hcp//Al2O3(1120)
この試料を実施例1と同様な微細加工を施し、硬磁性膜のSmCo5膜を溝の幅2nmで12nm × 40nmの矩形状孤立膜にパターニングし、ついで溝部への樹脂充填を行った。これを表面研磨して平坦化した後、最表面にカーボン膜を1nmの厚さ形成して磁気記録媒体を作成した。以下、同様な条件で硬磁性膜の種類を希土類元素の種類を変えて、YCo5, LaCo5, CeCo5, PrCo5, NdCo5, (La,Ce)Co5, (Nd,Sm)Co5の形成を行ない、同様な微細加工等を施し、パターンメディア型の磁気記録媒体を作成した。また、これらの合金膜はいずれもL10構造を持つ規則合金膜であり、SmCo5の場合と同様の関係を保って基板に対してエピタキシャル成長していることをRHEEDおよびX線回折により確認した。
外径0.8インチ、厚さ0.5mmのMgO(110)単結晶基板上に、DCマグネトロンスパッタ法により膜形成を行い、図8の断面構造を持つ試料を作成した。MgO(110)単結晶基板801の温度を350℃として、軟磁性膜であるFe膜802を70nm, 非磁性中間層膜であるAu膜803を2nm, 非磁性中間層膜であるPt膜804を3nm, 硬磁性膜であるFe-50at%Pt合金膜805を10nmの厚さに形成した。Fe-50at%Pt合金膜805はL10構造を持つ規則合金であり、それぞれ以下の関係を保ってMgO(110)単結晶基板に対してエピタキシャル成長していることをX線回折で確認した。
Fe-50at%Pt(001)L10//Pt(111)fcc//Au(111)fcc//Fe(211)bcc//MgO(110)
ついで実施例1と同様に、最上層のFe-50at%Pt合金膜805を微細加工して、5nm × 18nmの矩形状にパターニングを行った。隣接する矩形パターン間の距離を2nmとした。1つの矩形パターンを1記録ビットとみなすと面記録密度はおよそ4.5Tb/in2となる。Fe-50at%Pt合金膜805の磁気異方性エネルギーは5 × 107erg/ccで、微細加工後の保磁力は8.6 kOeであった。実施例2と同様な条件でこの磁気記録媒体の記録再生特性の評価を行った。磁気記録媒体と複合ヘッドの距離を3nmに保って、ディスク回転数1200rpmの条件で記録再生実験を行い、10-7以下のエラーレートが得られることを確認した。なお、ここで基板としてMgO(110)の代わりにSi(110)基板を用いても同様な薄膜のエピタキシャル関係が得られ、前述と類似した記録再生特性が得られることも確認された。
外径0.8インチ、厚さ0.5mmのMgO(111)単結晶基板上に、DCマグネトロンスパッタ法により膜形成を行い、図示しないが図8と同様の断面構造を持つ試料を作成した。基板温度を150℃として、軟磁性膜であるFe膜を70nm, 非磁性中間層膜であるAu膜を3nm, 硬磁性膜であるCo-35at%Pt合金膜を12nmの厚さ形成した。Co-35at%Pt合金膜はhcp構造を持ち、それぞれ以下の関係を保ってMgO(111)単結晶基板に対してエピタキシャル成長していることをX線回折で確認した。
Co-35at%Pt(0001)hcp// Au(111)fcc//Fe(110)bcc//MgO(111)
ついで実施例1と同様に、最上層のCo-35at%Pt合金膜をパターニングして、12nm × 40nmの寸法の孤立磁性膜に加工した。隣接孤立磁性膜との距離は3nmとした。この孤立した磁性膜を1つの記録単位とした場合、面記録密度はおよそ1Tb/in2に相当する。Co-35at%Pt合金膜の磁気異方性エネルギーは7 × 106erg/ccで、微細加工後の保磁力は6.6 kOeであった。実施例と同様な条件でこの磁気記録媒体の記録再生特性の評価を行った。磁気記録媒体と複合ヘッドの距離を5nmに保って、ディスク回転数2400rpmの条件で記録再生実験を行い、10-7以下のエラーレートが得られることを確認した。なお、ここで単結晶基板としてMgO(111)の代わりにSrTiO3(111)基板を用いても同様な薄膜のエピタキシャル関係が得られ、前述と類似した記録再生特性が得られることも確認された。
外径1インチ、厚さ0.5mmのAl2O3(0001)単結晶基板上に、DCマグネトロンスパッタ法により膜形成を行い、図9の断面構造を持つ試料を作成した。基板901の温度を300℃として、他材料層であるRu膜902を2nm, 他材料層であるCu膜903を1nm, 軟磁性膜である Co-15at%Fe合金膜904を10nm, 非磁性材料層であるCu膜905を1nm, 軟磁性膜である Co-15at%Fe合金膜906を10nm, 非磁性中間層膜であるPt膜907を1nm, 非磁性中間層膜である Ru膜908を2nm, 硬磁性膜である Co-10at%Ru合金膜909を2nm, 硬磁性膜であるCo-40at%Pd合金膜910を5nmの厚さ形成した。Co-10at%Ru合金膜909とCo-40at%Pd合金膜910はhcp構造を持つ磁性材料であり、それぞれ以下の関係を保ってAl2O3(0001)単結晶基板に対してエピタキシャル成長していることをX線回折で確認した。
Co-40at%Pd(0001)hcp//Co-10at%Ru(0001)hcp//Ru(0001)hcp//Pt(111)fcc//Co-15at%Fe(110)bcc//Cu(111)fcc//Co-15at%Fe(110)bcc//Cu(111)fcc//Ru(0001)hcp//Al2O3(0001)
ついで実施例1と同様に、上層の2つの積層磁性膜, Co-40at%Pd/Co-10at%Ruを微細加工して、5nm × 18nmの矩形状にパターニングを行った。隣接する矩形パターン間の距離を2nmとした。1つの矩形パターンを1記録ビットとみなすと面記録密度はおよそ4.5Tb/in2となる。積層磁性膜の磁気異方性エネルギーは8 × 106erg/ccで、微細加工後の保磁力は5.6 kOeであった。実施例2と同様な条件でこの磁気記録媒体の記録再生特性の評価を行った。磁気記録媒体と複合ヘッドの距離を3nmに保って、ディスク回転数1800rpmの条件で記録再生実験を行い、10-7以下のエラーレートが得られることを確認した。尚、本形態のように、硬磁性膜が2種類以上の組成の異なる積層膜から構成された場合、膜厚方向で磁気特性、機械的特性あるいは化学的特性の調整が可能となり、磁気ヘッドでの記録効率向上、耐久性や耐食性の改善を図ることができる。
外径1インチで厚さ0.5mmのAl2O3(0001) 単結晶基板上に高周波スパッタ法で厚さ50nmのSrTiO3膜を形成した試料を基板として用いた。このSrTiO3膜はAl2O3(0001)基板に対してエピタキシャル成長しており、SrTiO3(111)となっていた。これを基板として用いてDCマグネトロンスパッタ法により以下のような手順の薄膜形成と加工を行ない、図10に示す断面構造を持つ磁気記録媒体を作成した。膜形成時の基板温度は300℃とした。SrTiO3(111)膜1002を形成した単結晶基板1001上に、軟磁性膜であるFe膜1003を5nm、軟磁性膜であるFe-45at%Co合金膜1004を10nm、非磁性材料層であるCu膜1005を2nm、軟磁性膜であるFe-45at%Co合金膜1006を10nm、軟磁性膜であるFe-80at%Ni合金膜1007を2nm、硬磁性膜であるCo-35at%Pt合金膜1008を10nm、の厚さに形成した。これらの薄膜は単結晶基板401のAl2O3(0001)およびSrTiO3(111)に対してエピタキシャル成長しており、最初に形成したFe膜1003はbcc構造、Fe-45at%Co合金膜1004はbcc構造、Cu膜1005はfcc構造、Fe-45at%Co合金膜1006はbcc構造、Fe-80at%Ni合金膜1007はfcc構造、Co-35at%Pt合金膜1008はhcp構造を持ち、それぞれの膜は以下の結晶面が基板面と平行であることをX線回折と電子顕微鏡観察で確認した。
Co-35at%Pt(0001)hcp //Fe-80at%Ni(111)fcc // Fe-45at%Co(110)bcc // Cu(111)fcc // Fe-45at%Co(111)bcc // Fe(110)bcc // SrTiO3(111) // Al2O3(0001)
ここでFe-80at%Ni(111)fcc 、Fe-45at%Co(110)bccはいずれも軟磁性膜であるが非磁性の Cu(111)fcc を介して下層のFe-45at%Co(111)bcc // Fe(110)bcc層と反平行に磁気結合している。この構造をとることにより磁壁が存在し難くなり、磁気記録再生の際のスパイクノイズなどの望ましくないノイズを防ぐことができる。
この実施例では、軟磁性膜と硬磁性膜の間の非磁性中間層を省いた構造を採用した。ついで実施例1と同様に、最上層のCo-35at%Pt合金膜1008を微細加工して、5nm × 18nmの矩形状にパターニングを行った。さらにC膜1010を形成して溝部1009を埋めた後、C膜1010の表面を研磨して硬磁性膜上のC膜厚さが1.5nmとなるようにしてパターンメディアを完成させた。隣接する矩形パターン間の距離を2nmとした。1つの矩形パターンを1記録ビットとみなすと面記録密度はおよそ4.5Tb/in2となる。Co-35at%Pt合金膜1008の磁気異方性エネルギーは1 × 107erg/ccで、微細加工後の保磁力は6.5 kOeであった。この試料を図3に示す磁気記録再生装置に装着して記録再生実験を行った。この実験では、図5に示すような記録用に単磁極ヘッド、再生用に検知電流を素子の垂直方向に流す型の巨大磁気抵抗効果を応用したCPP-GMRヘッド、およびレーザー光導入路が形成された複合ヘッドを使用した。磁気記録媒体と複合ヘッドの距離を2nmに保って、ディスク回転数1800rpmの条件で記録再生実験を行い、10-7以下のエラーレートが得られることを確認した。
106:Co-26at%Pt合金膜、107:溝、108:非磁性材料、109:カーボン保護膜、
202:記録ビット、301:パターンメディア型の磁気記録媒体、
302:スピンドルモータ、303:磁気ヘッドを搭載したスライダー、
304:ジンバル、305:電子回路、306:コネクター、307:位置決め機構、
401:単結晶基板、402:Co膜、403:Cu膜、404;Co-20at%Ni合金膜、
405:Au膜、406:Fe-35at%Co合金膜、407:Pt膜、
408:Co-50at%Pt合金膜、409:単磁極ヘッドの主磁極、410:副磁極、
411:電流を流すコイル、412:CPP-GMR素子、413:磁気シールド、
414:レーザー光導入路、415:レーザー光、416:磁束の流れ、
601:単結晶基板、602:Ag膜、603:Ni-45at%Fe合金膜、604:Ru膜、
605:Co-20at%Pd合金膜、701:Al2O3(0001)単結晶基板、702:Ru膜、
703:Fe-10at%Ni合金膜、704:Cu膜、705:SmCo5膜、
801:MgO(110)単結晶基板、802:Fe膜、803:Au膜、804:Pt膜、
805:Fe-50at%Pt合金膜、901:Al2O3(0001)基板、902:Ru膜、903:Cu膜、
904:Co-15at%Fe合金膜、905:Cu膜、906:Co-15at%Fe合金膜、
907:Pt膜、908:Ru膜、909:Co-10at%Ru合金膜、
910:Co-40at%Pd合金膜。
Claims (15)
- 単結晶基板の上に形成された軟磁性膜と、軟磁性膜の上に形成された硬磁性膜とを備え、硬磁性膜が記録単位で隣接ビットと磁気的に分離された構造を持つバターンメディア型の磁気記録媒体において、軟磁性膜、硬磁性膜のいずれもが単結晶基板に対してエピタキシャル成長した膜により形成されたことを特徴とする磁気記録媒体。
- 単結晶基板の上に形成された軟磁性膜と、軟磁性膜の上に形成された非磁性中間層膜と、非磁性中間層膜の上に形成された硬磁性膜とを備え、硬磁性膜が記録単位で隣接ビットと磁気的に分離された構造を持つバターンメディア型の磁気記録媒体において、軟磁性膜、非磁性中間層膜、硬磁性膜のいずれもが単結晶基板に対してエピタキシャル成長した膜により形成されたことを特徴とする磁気記録媒体。
- エピタキシャル成長させた軟磁性膜は、(111)面が単結晶基板と平行なfcc構造を持つCo、Co合金、NiもしくはNi合金のいずれかにより形成され、エピタキシャル成長させた非磁性中間層膜は、(111)面が単結晶基板と平行なfcc構造を持つAu, Ag, Cu, Pt, Pdもしくはこれらの元素の合金、あるいは、(0001)面が単結晶基板と平行なhcp構造を持つRu, Tiもしくはこれらの元素の合金のいずれかにより形成され、エピタキシャル成長させた硬磁性膜は、(0001)面が単結晶基板と平行なhcp構造を持つCo, Co合金、あるいは、(001)面が単結晶基板と平行なL10構造を持つFePt規則合金もしくはCoPt規則合金、あるいは、(001)面が単結晶基板と平行な希土類元素(Re)とCoの規則合金であるReCo5のいずれかにより形成されたことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
- 単結晶基板がAl2O3(0001)もしくはSi(111)であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- エピタキシャル成長させた軟磁性膜は、(110)面もしくは(211)面が単結晶基板と平行なbcc構造を持つFe、Fe合金のいずれかにより形成され、エピタキシャル成長させた非磁性中間層膜は、(111)面が単結晶基板と平行なfcc構造を持つAu, Ag, Cu, Pt, Pdもしくはこれらの元素の合金、あるいは、(0001)面が単結晶基板と平行なhcp構造を持つRu, Tiもしくはこれらの元素の合金のいずれかにより形成され、エピタキシャル成長させた硬磁性膜は、(0001)面が単結晶基板と平行なhcp構造を持つCo, Co合金、あるいは、(001)面が単結晶基板と平行なL10構造を持つFePt規則合金もしくはCoPt規則合金、あるいは、(001)面が単結晶基板と平行な希土類元素(Re)とCoの規則合金であるReCo5のいずれかにより形成されたことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
- 単結晶基板がMgO(111), SrTiO3(111), MgO(110),もしくは Si(110)であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか又は請求項5に記載の磁気記録媒体。
- エピタキシャル成長させた軟磁性膜が非磁性材料層をサンドイッチ状に挟むように配置された複数のエピタキシャル軟磁性膜により形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 硬磁性膜がCo-Pd, Co-Pt, Co-Re, Co-Rh, Co-Ru合金のいずれかにより形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 硬磁性膜が2種類以上の組成の異なる積層膜から構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 硬磁性膜の厚さが3nmから30nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 非磁性中間層膜の厚さが0.2nmから10nm、軟磁性膜の厚さが10nmから100nmの範囲であることを特徴とする請求項2乃至請求項10のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 硬磁性膜が記録単位で隣接ビットと磁気的に分離された構造は、隣接ビット間が非磁性材料で充填されてしかも媒体表面が平滑化された構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 軟磁性膜が、単結晶基板の上にエピタキシャル成長させた他材料層を介して形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の磁気記録媒体と、記録用および再生用の磁気ヘッドを備えたスライダーと、スライダーを搭載したジンバルと、これらを駆動するための機構と、信号処理と情報をやりとりするためのインターフェースとを備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
- 請求項14に記載の磁気記録再生装置において、記録時に磁気記録媒体を加熱する加熱装置を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
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