以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
PDP装置を構成するプラズマディスプレイパネル(PDP)における、放電ガスの組成と、放電により発生する各紫外線強度との関係に関しては、Ne(ネオン)を主成分とする放電ガス中に含有されるXe成分の組成比が大きいほど放電により発せられる真空紫外線全体の強度が増すこと、および発せられる真空紫外線における構成成分の比率が変化することが分かっている。具体的には、放電ガス中のXe組成比の変化により発生する真空紫外線に含まれる波長147nmの紫外線成分と173nmの紫外線(Xe2分子線)成分との強度比率(I173/I147)が変化すること、すなわち、Xe組成比の増大に従って、強度比率(I173/I147)が大きくなることが分かっている。
本発明においては、波長147nmの光励起条件に加え、波長173nmの光励起条件下において高色純度かつ高効率な発光を達成できる新規な珪酸塩蛍光体を実現した。その結果、この新規珪酸塩蛍光体を使用して優れた色特性と高効率を実現する新規PDP装置を実現することができた。
新規に実現した本発明を構成するEu賦活珪酸塩蛍光体は、下記の一般式(1)で表されるEu賦活珪酸塩蛍光体である。
(BaxSr1−x)2−e・M1・Si2O7:Eue (1)
上記式(1)中、M1はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分Baの組成比を示すx、およびEuの組成比を示すeは、それぞれ0<x≦0.5、0.001≦e≦0.2である。
新規に実現した上記Eu賦活珪酸塩蛍光体は、上記式(1)の表記に従う場合、母体骨格成分として、SrおよびBaを含有して複合酸化物である母体骨格を形成することが可能である。そして、同時に上記式(1)の表記に従う場合、母体骨格成分M1として、MgおよびZnの少なくとも一方を含有して複合酸化物である母体骨格を形成することが可能である。
このようにして形成された母体骨格にEu成分として上記した組成比範囲のEu2+を賦活することにより、効率良く発光する複合酸化物としての青色蛍光体を構成することが可能となる。そしてさらに、母体骨格成分として、Ba成分を最適量となる範囲で制御して含有させることにより、発光効率および輝度を良好なレベルに維持しつつ、色純度を従来に比べて著しく向上させることが可能となる。
ここで、Baの含有量については、上記式(1)の表記に従う場合、蛍光体成分(Ba)の組成比(x)が0<x≦0.5である。しかし、後に説明する蛍光体特性の評価結果よび考察に従い、特に、Baの組成比(x)が0.2≦x≦0.5である場合に高色純度化の効果がより顕著であり、より好ましい。さらに、発光の色純度をより良好なものとすることも考慮すると、Baの組成比(x)は、0.25≦x≦0.4であることが好ましい。また、発光の色純度をより安定的に良好なものとすることも考慮すると、Baの組成比(x)が0.3≦x≦0.4であることが最も好ましい。
以下、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体の特性と評価の結果について、比較例となるCMS等蛍光体の対応する測定データと比較しながら説明する。
上記の技術を支持する検討として、後の実施例の記載で詳述するように、本発明者は、本発明を構成する新規蛍光体の例である(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、および(Ba0.1Sr0.9)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、そして蛍光体Sr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03を合成し、市販されて購入により入手可能なCMSを比較例として、定法に従い中心発光波長147nm及び173nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用いて発光特性を評価した。
発光特性については、まず波長147nm及び173nmの各励起条件下での発光スペクトルを評価し、上記各蛍光体間の比較を行った。図1は上記本発明を構成する新規蛍光体の例のうちの主な蛍光体の波長147nm励起条件における発光スペクトルである。図2は、上記本発明を構成する新規蛍光体の例のうちの主な蛍光体の波長173nm励起条件における発光スペクトルである。そして、図3は、上記本発明を構成する新規蛍光体の例の波長147nmおよび173nmの両励起条件下の発光スペクトルにおけるスペクトルピークの波長値(極大波長(nm))をまとめた表である。
図1および図2に示す主な蛍光体例のスペクトルの比較からわかるように、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体においては、母体骨格中のBa組成比が増加する、すなわち、上記式(1)中、成分Baの組成比を示すxが0(Ba成分を組成式上含まないことを示す蛍光体)から0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5と順次増大するに従って、波長147nmおよび173nmの両励起条件下においてそれぞれ発光スペクトルのピークは短波長側にシフトすることがわかる。
なお、上記のスペクトル極大の短波長側シフトに際し、スペクトルの形状については、若干の形状のブロード化などを除き、新たなピークが形成されるなどの顕著なるスペクトル形状の差異は見られていない。
また、波長147nmおよび173nmの両励起条件下での発光特性を比較すると、何れの条件においてもBa組成比(x)が0から0.2までの増加ではスペクトルの極大波長値の変化はなだらかで比較的小さいのに、0.2から0.5に増大する際に発光極大波長の大きな低下が発現している。すなわち、Ba組成比(x)が0.2から0.5に増大する際に発光極大波長は464nmから432nmへと急激に低波長側にシフトしている。
このときより詳細に見てみると、波長147nm励起条件においては、Ba組成比(x)が0.25から0.3に増大する際、発光極大波長が452nmから436nmと大きく低下する、すなわち大きく低波長側にシフトしているのに対し、波長173nm励起条件においては、Ba組成比(x)が0.25から0.3に増大する際、発光極大波長は452nmから440nmへと低下の程度は小さく、スペクトルの低波長側へのシフトが緩やかになっている。このことから、本発明を構成する新規蛍光体においては、Ba組成比(x)が0.2から0.5に増大する際に発光特性の大きな変化が起こるものの、波長147nm励起条件と比較して波長173nm励起条件においては、特にBa組成比(x)が0.2から0.4までに発生する急激な発光特性の変化が比較的に緩やかであることがわかる。
次に、蛍光体の発光色を表すCIE(International Commission onIllumination)表色系における色度、その色度の(x,y)座標におけるx値とy値について、波長147nm及び173nmの各励起条件にて評価を行った。
図4は、上記本発明を構成する新規蛍光体の例の波長147nmおよび173nmの両励起条件下での発光の色度(x,y)のx値とy値をまとめた表である。そして、図5は、上記本発明を構成する新規蛍光体の例におけるBa組成比(x)に対し、波長147nm及び173nmの両励起条件下で得られる発光の色度(x,y)のx値及びy値をそれぞれプロットしたグラフである。
図4に示した表および図5に示すように、母体骨格中のBa組成比が増加する、すなわち、上記式(1)中、成分Baの組成比を示すxが0(Ba成分を組成式上含まないことを示す蛍光体)から0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5と順次増大するに従って、波長147nmおよび173nmの両励起条件下において、発光色特性が変化することがわかる。
そして、その際、波長147nmおよび173nmの両励起条件下において、発光の色度(x,y)のx値では0.13程度から0.16程度とそれほど変化が大きくないのに対し、色度(x,y)のy値においては0.17程度から0.03程度まで大きく変化することがわかる。このような変化は、上記本発明を構成する新規蛍光体が、Baの組成比(x)の増大に伴い、発光する青色の色味において深みが増し、青色が高色純度化していることを表している。
そして、さらに詳細に検討すると、波長147nmおよび173nmの何れの条件においても、Ba組成比(x)が0から0.2までの増加では発光の色度(x,y)のy値の変化は比較的なだらかな低下を示しているのに対し、0.2から0.3に増大する際には発光の色度(x,y)のy値の大きな低下が起こっている。そして、Ba組成比(x)が0.3を超えると色度(x,y)のy値の再び緩やかに低下するようになっている。すなわち、Ba組成比(x)が0.2から0.3に増大する際に発光色である青色の高純度化が急激に起こっていることがわかる。
以上の結果は、上記した発光スペクトルにおいて見出されたBa組成比(x)の増大に伴うピーク及びスペクトル全体の低波長側シフトと密接に対応していると推察される。そして、併せて、本発明を構成する新規蛍光体の発光特性、特に色特性を考慮する場合、発光の色度(x,y)のy値のように、Ba組成比(x)に対し、急峻に性能が変化する現象が現れることから、Ba組成比(x)の組成領域の選択はPDP装置の高性能化において非常に重要なものとなることがわかる。
また、さらに、波長147nm励起条件においては、Ba組成比(x)が0.2から0.3に増大する際、発光の色度y値は0.136から0.038へと大きく低下する、すなわち大きな色の変化を起しているのに対し、波長173nm励起条件においては、Ba組成比(x)が0.2から0.3に増大する際、発光の色度(x,y)のy値は0.136から0.051へと低下の程度は小さく、色の変化が波長147nm励起条件に比べ緩やかになっている。
このことから、本発明を構成する新規蛍光体においては、Ba組成比(x)が0.2から0.3に増大する際に発光特性の大きな変化が起こるものの、波長147nm励起条件と比較して波長173nm励起条件においては、特にBa組成比(x)が0.2から0.3までに発生する急激な色特性の変化が波長147nm励起条件に比べ比較的に緩やかであることがわかる。
よって、検討結果をまとめると、本発明を構成する新規蛍光体においては、Ba組成比(x)に対し、急峻に性能が変化する組成領域が存在するものの、その急峻さは波長147nm励起条件で評価した場合と173nm励起条件で評価した場合とでは異なっており、173nm励起条件のほうが緩やかであることがわかった。
従って、本発明の実施形態であるPDP装置における使用蛍光体の組成選択によって発光の色特性制御を実現しようとする場合、波長173nm励起条件のほうが波長147nm励起条件に比べ変化の程度が緩やかであり、より安定的で高精度な色特性制御を行うことが出来ることがわかる。
以上より、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体は、波長147nm励起条件の場合に比べ波長173nm励起条件のほうが色特性制御は容易であることがわかる。なお、こうした特性発現の励起波長依存性を十分に理解したうえで上記Eu賦活珪酸塩蛍光体において最適なBa組成比(x)の組成領域を慎重に選択し、その結果構成されるPDP装置の色特性等の性能を制御することが非常に重要な事項となる。
次に、比較例としてCMSを選択し、上記の本発明を構成する新規蛍光体と同様、波長147nm及び173nmの各励起条件にて、色度の(x,y)座標におけるx値とy値についての評価を行った結果を示す。CMSの評価結果は、波長147nm励起条件でx値=0.152、y値=0.047であり、波長173nm励起条件でx値=0.182、y値=0.108である。
従って、波長173nm励起条件で評価した場合、上記本発明を構成する新規蛍光体の例においては、Ba組成比(x)=0.25の組成(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03において波長173nm励起条件での発光色の色度(x,y)のy値が0.101であることを考慮して、Ba組成比(x)=0.25以上の組成範囲とすることで波長173nm励起の条件でCMSより低いy値、すなわち優れた青色純度を示すことが可能となる。
すなわち、波長173nm励起条件下での従来CMSとの色特性比較を考慮すると、Ba組成比(x)=0.25以上を選択することが好ましい。Ba組成比(x)=0.25およびその値以上とすることで、本発明を構成する上記の新規蛍光体においては、波長173nm励起条件で、比較例であるCMSより青色発光の色度(x,y)のy値より小さな値を実現できる。
次に、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体について色特性の観点からPDP用途としての性能を考察する。
PDP装置をカラーTV用途として使用する場合、放送方式ごとのR(赤),G(緑),B(青)各色の色度を考慮し対応可能な、ディスプレイとしての色特性、表色範囲が求められる。従来放送方式であるNTSC(National Television System Committee)規定においては、例えば、青色の色度(x,y)はx値=0.14、y値=0.08であり、表色範囲としてNTSC比100%以上の確保など、より広い色再現性を実現することが望まれる。その結果、PDP装置においてB(青)表示を担う青色蛍光体では、発光色の色度のy値において0.08に近い値か、より深みのある青色も表現できる0.08より小さな値を求められる。
また、今後主流となっていくことが予想される方式であるHDTV(High Definition TeleVision)規格においては、青色の色度(x,y)はx値=0.15、y値=0.06であり、PDP装置においてB(青)表示を担う青色蛍光体では、発光色の色度のy値において0.06に近い値か、より深みのある高色純度の青色も表現できる、0.06より小さな値を求められる。
よって、本発明を構成する上記の新規蛍光体においてカラーTV用途にも使用可能なPDP装置用として使用されるようにするためには、色性能、特に色度(x,y)のy値が0.08近傍もしくはそれ以下であることが好ましい。
よって、上記した色特性評価の結果に基づいて考察すると、一般式(BaxSr1−x)2−e・M1・Si2O7:Eueで表される本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体において、Ba組成比(x)=0.25の組成(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03において波長147nm励起条件での発光色の色度(x,y)のy値が0.079であることを考慮して、その組成を含みうるBa組成比(x)の範囲を選択することが好ましい。すなわち、本検討にかかる本発明においては、Ba組成比(x)=0.2以上を選択することが好ましい。
そしてさらに、そのBa組成比(x)=0.25以上の組成範囲とすることでより確かな色性能の実現が可能となり、より好ましい。
なお、Ba組成比(x)=0.25以上とすることで、本発明を構成する上記の新規蛍光体においては同時に、上記したように、波長173nm励起条件で、比較例であるCMSより青色発光の色度(x,y)のy値より小さな値を実現できる。
従って、以上より、一般式(BaxSr1−x)2−e・M1・Si2O7:Eueで表される本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体において、Ba組成比(x)はx≧0.2であることが好ましく、x≧0.25であることがより好ましい。
また、一般式(BaxSr1−x)2−e・M1・Si2O7:Eueで表される本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体において、Ba組成比(x)が0.3である蛍光体(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03は、発光色の色度(x,y)のy値で、波長147nm励起条件で0.038、波長173nm励起条件で0.051を示す。すなわち、NTSC方式の定める青色の色度(x,y)のy値=0.08より小さく、HDTV方式の定める青色の色度(x,y)のy値=0.06より小さい。
よって、この蛍光体(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03を用いて構成されたPDP装置をカラーTV用途として使用する場合、NTSC方式に対しては十分対応できて表色範囲の拡大が可能であり、さらにHDTV方式にも対応可能であって表色範囲の拡大が可能であることがわかる。
また、上記したように、比較例であるCMSの示す波長147nm及び173nmの両励起条件下でのy値(0.047及び0.108)より何れも小さい。
よって、一般式(BaxSr1−x)2−e・M1・Si2O7:Eueで表される本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体において、Ba組成比(x)はx≧0.3であることがさらに好ましい。
次に、本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体におけるBa組成比(x)の上限について考察する。
上記したように、本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体において、成分Baの組成比を示すxが0から0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5と順次増大するに従って、波長147nmおよび173nmの両励起条件下において、発光色特性の変化、特に発光色の色度(x,y)のy値の低下の起こることがわかっている。そして、一般式(BaxSr1−x)2−e・M1・Si2O7:Eueで表される本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体において、Ba組成比(x)が0.5である蛍光体(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の発光色の色度(x,y)のy値が波長147nm励起条件で0.030、波長173nm励起条件で0.036を示している。すなわち、何れの条件でもy値が0.04以下になっており、良好な青色の表現範囲を超えて、若干値が小さくなりすぎる懸念が生じている。すなわち、蛍光体発光によって示される青色が深すぎてしまう恐れが生じている。
そして、Ba組成比(x)が0.5を超えてさらに大きくなると、発光色の色度(x,y)のy値はさらに小さくなることが推定でき、y値は0.03以下の値になることが容易に推察できる。
PDP装置をカラーTV用途として使用しようとする場合、NTSC他放送方式ごとのR(赤),G(緑),B(青)各色の実現し、放送方式ごとに定められた表色範囲を忠実に再現可能であることも必要であり、上記したNTSC方式の青色色度(x,y)、HDTV方式の青色色度(x,y)を考慮すると、y値が0.03以下となるまで小さくなることは不要である可能性が高いと考えられる。
例えば、上記した発光色である青色の色度(x,y)のy値が0.08、さらには0.06を超えて著しく小さい値とすることは、かえって青色の制御困難な色の範囲を広げることになりかねず、代償として輝度の低下など好ましくない副作用を引き起こす懸念があり、そのようなy値の低下は事実上不要と考えられる。
よって、発光色の色度(x,y)のy値は0.04程度若しくはそれ以上とすることが好ましく、Ba組成比(x)が0.5である蛍光体(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の波長173nm励起条件での発光色の色度(x,y)のy値が0.036であることから、本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体において、Ba組成比(x)はx≦0.5の値を有することが好ましい。そして、波長147nmの励起条件でも発光色の色度(x,y)のy値が0.04程度若しくはそれ以上となるよう、Ba組成比(x)はx≦0.4であることがより好ましい。
なお、このとき、上記したように、例えば、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03と(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の示す発光色の色度(x,y)のy値は、波長147nm励起条件で0.036と0.038であり、波長173nm励起条件で0.046と0.051を示す。
すなわち、波長173nm励起条件下では、本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体はCMSより高色純度であって、かつ、y値が過剰に小さい値となることも無い。
よって、本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体は、波長173nmの励起条件のもとで、より好ましい色特性を発揮するとこがわかる。
従って、PDP装置における使用蛍光体の組成選択によって発光の色特性制御を実現しようとする場合、波長173nm励起条件のほうが波長147nm励起条件より制御がより行いやすいことがわかる。すなわち、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体は、波長147nm励起条件の場合に比べ波長173nm励起条件のほうが、好ましい範囲での色特性制御が可能であることがわかる。
以上の考察に従うと、一般式(BaxSr1−x)2−e・M1・Si2O7:Eueで表される本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体においては、Baの組成化により発光色の色度(x,y)のy値を低下させることが可能であることから意図してBa成分を含有させることが好ましい。
そして、また、当該y値があまりに小さくなり過ぎて輝度低下など上記したような懸念を生じさせないよう、上記に従い上限値を定め、Ba組成比(x)は0<x≦0.5とすることが好ましい。
また、本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体における波長147nm励起条件での発光色の色度(x,y)のy値の好ましい範囲を考慮して、Ba組成比(x)は0.2≦x≦0.5とすることが好ましく、上記に従い、0.25≦x≦0.5とすることがより好ましい。
そして、波長173nm励起条件での発光色の色度(x,y)のy値の好ましい範囲も考慮し、また本発明のPDP装置をカラーTV用途として使用する場合に、今後主流となるHD-TV方式にも対応することを考慮して、本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体において、Ba組成比(x)を0.3≦x≦0.5とすることがさらに好ましく、上記したより好ましい上限についても考慮して0.3≦x≦0.4とすることが最も好ましい。
そして更に、本発明のEu賦活珪酸塩蛍光体においては、波長147nm励起条件の場合に比べ波長173nm励起条件下での使用がより好ましい。
なお、Ba組成比(x)の下限を0<xと定めることについて説明を加える。本願においては、Baを添加することを前提し、Baの組成比(x)の下限を0より大きい(0<x)と定めることは、蛍光体の合成時にBa組成が含有されるよう意識的にBa成分の原料を用いることを意味する。すなわち、Ba成分が組成化された本発明を構成する上記Eu賦活珪酸塩蛍光体の合成時に、明確にBa成分の原料を使用して他の原料との調合をし、蛍光体合成を行うことを意味する。
一方、例えばSrやMgやEuからなる別の蛍光体の例についてであるが、通常のMg成分やEu成分を含有する蛍光体を合成する際に通常の原料として使用する蛍光体合成用Mg原料化合物やEu原料化合物などには、微量の不純物として、Ca成分原料が含まれる場合がある。すなわち、Ca成分の含有を意図しないで合成されたMgもしくはEu成分からなる蛍光体には、数ppm〜数十ppmといった極微量のCa成分が含有されることがある。そのため、Ca組成の含有を意図せず、その含有が組成式上明記されない蛍光体においても、分析等の手法により組成の詳細を解析すると、Ca成分を含まれることが判明する場合がある。
従って、このような意図しない成分の含有、すなわち不純物として蛍光体中に特徴のある成分が含まれる場合と、発光輝度等性能の改善を目的として、Ba成分の含有を明確に意図し、さらにその組成比の最適範囲を明確にした本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体とは、明確に区別される必要がある。かかる区別のためには、本発明を構成する新規蛍光体において、蛍光体の合成作業によりBa成分の組成化を意図する際に、実質的に制御し得る量をBa成分含有の下限とすることが好ましい。
よって、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体において、例えば純度99.9%以上の高純度の合成原料を使用した場合でも、特定成分が不純物として含有され得る量は、数ppm〜数十ppm(1000g中、数mg〜数十mg)のオーダーであることを考慮し、また、10g程度の所謂実験室レベルでの少量の蛍光体合成時においても実質的に制御し得る量の下限が0.1mg程度(10ppm)であること、さらに、原料である各化合物間でそれほどの大きな分子量の違いが無いこと、同程度の分子量オーダーであることなども併せて考慮し、Ba成分の含有量の下限を改めて設定することとする。
すなわち、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体においては、Ba成分の含有量を100ppm程度もしくはそれ以上とすることを想定し、Baの組成比(x)の下限をx=0.0001とすることができる。
そして、意図しないで含有されてしまう場合と明確に区別し、また、より純度の低い蛍光体原料を使用した場合でも排除可能とすることを考慮すると、明確な区別を実現するためには、Ba成分の含有量の下限を上記値の10倍程度とし、Baの組成比(x)の下限をx=0.001とすることが好ましい。
そしてさらに、より純度の低い蛍光体原料を使用した場合に意図せずに含有され得る量を考慮すると、明確な区別を実現するためには、Ba成分の含有量の下限を上記の100倍程度とし、Baの組成比(x)の下限をx=0.01とすることが好ましい。
すなわち、本発明を構成する新規蛍光体において、発光の色特性、色度を考慮してBa成分を添加すると共に、Baの組成比の最適範囲を明確化する場合、Baの組成比(x)の下限をx=0.0001とすることができる。また、Baの組成比(x)は、0.001≦xとすることが好ましく、さらに0.01≦xとすることがより好ましい。
以上、本願における0<x、その他、0.01<x等の記載については、上記何れかの下限設定の場合を含めて開示するものとする。よって、例えば、波長173nmの紫外線励起条件での輝度評価結果から、本発明を構成する上記Eu賦活珪酸塩蛍光体において、望ましいBaの含有量については、Baの組成比(x)を0.01≦x≦0.5とすることがより好ましい。
また、賦活剤であるEu成分の含有量についても、意図せずに含有され得る量を考慮して下限を定め、また、自己消光を制御して、所望の発光特性を得ることを目的として、上限を定めることにより、上記組成式(1)においてEuの組成比を示すeは、0.001≦e≦0.2とすることが好ましい。
次に、CMSの課題であった波長173nm励起条件下での低発光効率に対し、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体による改善の状況を検討するため、波長173nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用い、CMSを基準として発光効率を比較、評価した結果を考察する。
発光効率の評価方法としては下記に詳述するように、発光効率を反映するパラメータとして知られている、発光の輝度(Br)を発光の色度(x,y)のy値で除した値、すなわち(Br/y)値を算出し、CMSのBr/y値を基準として、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体が示すBr/y値がそれぞれ何倍になっているかをもって、比較検討を行う。
検討の結果、CMSを基準として、本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体の例において、(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では1.8倍、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では1.7倍、(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では1.9倍、(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では1.5倍、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では2.1倍、(Ba0.1Sr0.9)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では、1.5倍であり、そして、蛍光体Sr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では3.9倍であることがわかる。
本発明を構成する何れの新規蛍光体においても、波長173nm励起条件において、CMSに比べ発光効率が向上していることがわかる。
以上より、Ba組成比範囲が上記のように最適化された新規Eu賦活珪酸塩蛍光体を使用して本発明のPDP装置を構成することにより、高効率で広い色再現性を備えるPDP装置の実現が可能であることが分かる。
なお、上記の一般式(1)で表される本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体は、発光装置としてPDP以外のもの、例えば平面型希ガス放電蛍光ランプや三波長型白色蛍光ランプなどに適用し、青色発光蛍光体として使用することも可能である。すなわち、上記の一般式(1)で表される本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体を使用することにより、高輝度・高効率で広い色再現性を備える高信頼性の平面型希ガス放電蛍光ランプや、三波長型白色蛍光ランプなどの発光装置を実現することが可能となる。
次に、PDPにおける高Xe濃度化の効果と本願発明との関係について説明する。上述したように、PDPにおいては、放電ガス中におけるXe組成比の増大に従って、発生する真空紫外線量全体が増大すると共に、発生真空紫外線に含まれる波長147nmの紫外線成分と173nmの紫外線(Xe2分子線)成分との強度比率(I173/I147)が大きくなることが分かっている。
図6は、AC型PDPにおける放電ガス中のXe組成比(%)と強度比率(I173)/I147)との関係を示すグラフである。
検討の結果、AC型PDPでは、Xe組成比が4%においてI173/I147(4%)=1.2である。Xe組成比が1〜4%である通常仕様のPDPでは、放電によって発生する真空紫外線に含まれる波長147nmの紫外線成分と173nmの紫外線成分との強度比率は波長173nm成分の強度が若干大きい程度から同等もしくはむしろ173nm成分の強度が小さい傾向にあることがわかっている。
そして、さらなる検討の結果、Xe組成比6%では放電によって発生する真空紫外線強度全体が増大すると共に、I173とI147の比は、I173/I147(6%)=1.9と大幅に大きくなる。そして、Xe組成比が10%においては、放電によって発生する真空紫外線強度がさらに増大すると共に、I173/I147(10%)=3.1と大幅に大きくなる。また、Xe組成比が12%においては、放電によって発生する真空紫外線強度がより増大すると共に、I173/I147(12%)=3.8と著しく大きくなることが分かった。
従って、放電ガス中のXe組成比が通常仕様のPDPよりも大きい、例えば6%のXe組成比を持つ高キセノン化対応仕様のPDPにおいては、使用蛍光体の173nmの真空紫外線に対する特性の寄与が大きくなる。よって、波長173nmの紫外線に対してより高い輝度など、より良い特性の発光を示す蛍光体の使用が好ましい。
さらに、Xe組成比をより高い10%以上とし、より高効率の発光を求める場合においては、波長173nmの紫外線に対してより高い輝度など、より良い特性の発光を示すという蛍光体の性能に対する要求は、より大きなものとなる。また、Xe組成比をより高い12%以上とし、より高効率の発光を求める場合においては、I173/I147(12%)=3.8と著しく大きくなるため、波長173nmの紫外線に対して、より高い輝度など、より良い特性の発光を示すという蛍光体の性能に対する要求は、さらに大きなものとなる。
上述のように、上記一般式(1)で表される本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体を、Xe組成を含む放電ガスを用いたPDPに使用した場合、波長147nmの光の励起に加え、波長173nmの光の励起によって、蛍光体において良好な発光特性が得られることから、発生するXe2分子線も有効に利用できることになり、高性能のPDPの提供が可能となる。
また、上記一般式(1)で表される本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体は、例えばXe組成比が6%以上、より好ましくは147nm成分に対する173nmの紫外線成分強度比が強い(Xe2分子線を積極的に利用する)Xe組成比=10%以上、さらに好ましくはI173/I147(12%)=3.8と著しく大きいXe組成比=12%以上となる量でXeガスを含んで構成された放電ガスを使用する所謂「高Xe濃度化対応のPDP」の技術にもよく適合する。そして、高Xe濃度化された放電ガスを使用した高性能のPDPを実現することが可能となる。
そして、上記式(1)で表される本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体は、発光の色性能、特に色純度のBa成分含有量による依存性が見られるが、波長147nmの紫外線励起の場合に比べ、波長173nm励起の場合により好ましい色特性値の範囲内で緩やかに変化しており、Ba含有量の最適範囲がより明確で、Ba含有量による色特性の制御が容易である。従って、波長173nmの真空紫外線により励起されることが主要となる条件下では、色特性や効率などの点において、より有意な効果および顕著な特徴が現れることになる。
よって、上記式(1)で表される本発明を構成する新規Eu賦活珪酸塩蛍光体を、組成比が6%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは12%以上となる量でXe組成を含む放電ガスを用いたPDPに使用した場合、PDP内で発生するXe2分子線をより有効に利用して優れた発光特性を示すようになるので、高性能のPDPの提供が可能となり、ひいては高性能のPDP装置の提供が可能となる。
以上の検討に基づき、上記式(1)で表される本発明を構成するEu賦活珪酸塩蛍光体を使用したAC型PDPの一実施形態は、以下のように構成される。
図7は、PDPの主要部の構造の一例を示す要部分解斜視図である。本発明の実施形態であるPDP100は、いわゆる対向放電に対応するための構造を有しており、間隔をあけて対向配置された一対の基板1、6と、基板6の対向面に設けられ、基板1、6が重ね合わされた時にそれらの間隔を保持して基板1、6の間に空間を形成する隔壁7と、基板1、6のそれぞれの対向面に配設された電極2、9と、基板1、6の間に形成された空間内に封入され、電極2若しくは電極2、9に印加された電圧による放電により紫外線を発生する放電ガス(図示せず)とを備えている。なお、図8は電極2の延在する方向に沿った一断面を示したものであり、図9は電極2の延在する方向に沿った他の断面を示したものであり、図10は電極9の延在する方向に沿った一断面を示したものである。
そして、一対の基板1、6の対向面のうちの一方(基板6側)の上および隔壁7の壁面上には、上記式(1)で表されるEu賦活珪酸塩蛍光体を含む蛍光体層10が形成されている。
蛍光体層10は、通常、赤、青、緑の3色の発光に対応する蛍光体、すなわち、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体または緑色発光蛍光体からなり、放電によって上記放電ガスから発生する波長147nmおよび173nmの真空紫外線によって、蛍光体層10における青色を構成する上記式(1)で表されたEu賦活珪酸塩蛍光体と、他の色(赤および緑)を構成する蛍光体とが励起され、可視光を発光するよう構成されている。
なお、図7に示された符合3のラインは、電極2と一体となって電極抵抗を低下させるために設けられたAgまたはCu−Crからなるバスラインであり、符合4、8の各層は、誘電体層であり、符合5の層は、電極保護のために設けられた保護膜である。以下、本発明を実施するための最良の形態に対応する実施例について説明する。
(実施例1)
本発明に係る第1の実施例であるプラズマディスプレイパネル(PDP)を作るために、まず、本発明の主要な構成部材であるEu賦活珪酸塩蛍光体の合成を行った。合成したのは、下記の一般式(1)で表されるEu賦活珪酸塩蛍光体であって、成分Baの組成比を示すxが、x=0.5、x=0.4、X=0.3,x=0.25、x=0.2、及びx=0.1である(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03および(Ba0.1Sr0.9)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03であり、x=0である蛍光体Sr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03である。
(BaxSr1−x)2−e・M1・Si2O7:Eue (1)
組成式(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の蛍光体の合成は、先ず、BaCO3を0.973g(4.925mmol)、SrCO3を0.727g(4.925mmol)、MgCO3を0.481g(5.00mmol)、SiO2を0.601g(10.00mmol)、Eu2O3を0.0265g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.196g(2.00mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中900℃で3時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気中900℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物を粉砕後、水洗、乾燥を行い、上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
組成式(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の蛍光体の合成は、先ず、BaCO3を0.778g(3.94mmol)、SrCO3を0.872g(5.91mmol)、MgCO3を0.481g(5.00mmol)、SiO2を0.601g(10.00mmol)、Eu2O3を0.0265g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.196g(2.00mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中900℃で3時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気中900℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物を粉砕後、水洗、乾燥を行い、上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
組成式(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の蛍光体の合成は、先ず、BaCO3を0.583g(2.95mmol)、SrCO3を1.018g(6.90mmol)、MgCO3を0.481g(5.00mmol)、SiO2を0.601g(10.00mmol)、Eu2O3を0.0265g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.196g(2.00mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中900℃で3時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気中900℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物を粉砕後、水洗、乾燥を行い、上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
組成式(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の蛍光体の合成は、先ず、BaCO3を0.486g(2.46mmol)、SrCO3を1.091g(7.39mmol)、MgCO3を0.481g(5.00mmol)、SiO2を0.601g(10.00mmol)、Eu2O3を0.0265g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.196g(2.00mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中900℃で3時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気中900℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物を粉砕後、水洗、乾燥を行い、上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
組成式(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の蛍光体の合成は、先ず、BaCO3を0.389g(1.97mmol)、SrCO3を1.163g(7.88mmol)、MgCO3を0.481g(5.00mmol)、SiO2を0.601g(10.00mmol)、Eu2O3を0.0265g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.196g(2.00mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中900℃で3時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気中1000℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物を粉砕後、水洗、乾燥を行い、上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
組成式(Ba0.1Sr0.9)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の蛍光体の合成は、先ず、BaCO3を0.194g(0.98mmol)、SrCO3を1.309g(8.87mmol)、MgCO3を0.481g(5.00mmol)、SiO2を0.601g(10.00mmol)、Eu2O3を0.0265g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.196g(2.00mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中900℃で3時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気中1000℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物を粉砕後、水洗、乾燥を行い、上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
組成式Sr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の蛍光体の合成は、先ず、SrCO3を1.454g(9.85mmol)、MgCO3を0.481g(5.00mmol)、SiO2を0.601g(10.00mmol)、Eu2O3を0.0265g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNH4Brを0.196g(2.00mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中900℃で3時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気中1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物を粉砕後、水洗、乾燥を行い、上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
(実施例2)
次に、定法に従い中心発光波長147nmおよび173nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用いて、上記の実施例1において合成した蛍光体(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.1Sr0.9)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、およびSr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03を用い、発光特性を評価した。比較例として、市販されて購入により入手可能なCMSを用い、発光特性を併せて測定した。
はじめに、中心発光波長147nm及び173nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用い、定法に従い波長147nm及び173nmの各励起条件下での発光スペクトルを評価した。結果は、波長147nm及び173nmの各励起条件下での主な蛍光体の発光スペクトルを図1と図2にまとめた。そして、上記蛍光体の波長147nmおよび173nmの両励起条件下の発光スペクトルにおけるスペクトルピークの波長値(極大波長(nm))を図3の表にまとめた。
図1および図2に示す主な蛍光体例のスペクトルの比較からわかるように、本発明を構成する上記のEu賦活珪酸塩蛍光体においては、母体骨格中のBa組成比が増加する、すなわち、上記式(1)中、成分Baの組成比を示すxが0(Ba成分を組成式上含まないことを示す蛍光体)から0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5と順次増大するに従って、波長147nmおよび173nmの両励起条件下において発光スペクトルのピークは短波長側にシフトすることがわかった。
なお、上記のスペクトル極大の短波長側シフトに際し、スペクトルの形状については、若干の形状のブロード化などを除き、新たなピークが形成されるなどの顕著なるスペクトル形状の差異は見られなかった。
次に、定法に従い中心発光波長147nmおよび173nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用いて、上記の実施例1において合成した蛍光体(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、(Ba0.1Sr0.9)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03、およびSr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03の発光色を表すCIE(International Commission onIllumination)表色系における色度、その色度の(x,y)座標におけるx値とy値について測定を行った。比較例として、市販されて購入により入手可能な上記のCMSを用い、併せて測定した。
測定の結果、波長147nm励起条件の場合、(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.161,0.030)、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.160,0.037)、(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.159,0.038)、(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.160,0.079)、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.141,0.136)、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.150,0.144)、Sr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.132,0.172)を示した。
比較例であるCMSでは、波長147nm励起条件の場合、(x,y)=(0.152,0.047)を示した。
次に、測定の結果、波長173nm励起条件の場合、(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.166,0.036)、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.164,0.046)、(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.163,0.051)、(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.162,0.101)、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.140,0.136)、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.143,0.127)、Sr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では(x,y)=(0.133,0.171)を示した。
比較例であるCMSでは、波長147nm励起条件の場合、(x,y)=(0.182,0.108)を示した。
測定結果は、図4の表にまとめた。そして、上記の実施例1において合成した蛍光体における測定結果をもとに、Ba組成比(x)に対し、波長147nm及び173nmの両励起条件下で得られる発光の色度(x,y)のx値及びy値をそれぞれプロットし、図5にまとめた。
図4に示した表および図5に示すように、上記の実施例1において合成した蛍光体において、母体骨格中のBa組成比が増加する、すなわち、上記式(1)中、成分Baの組成比を示すxが0(Ba成分を組成式上含まないことを示す蛍光体)から0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5と順次増大するに従って、波長147nmおよび173nmの両励起条件下において、発光色特性が変化することがわかった。
そして、Ba組成比(x)=0.25およびその値以上とすることで、上記の実施例1において合成した蛍光体においては、波長173nm励起条件で、比較例であるCMSより青色発光の色度(x,y)のy値より小さな値を実現できることがわかった。
次に、波長173nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用い、CMSを基準として、上記の実施例1において合成した蛍光体の発光効率を評価した。発光効率の評価方法としては、上記の実施例1において合成した蛍光体の波長173励起条件下での輝度(Br)を測定し、上記した発光の色度(x,y)のy値の測定結果を用い、発光効率を反映するパラメータとして知られている発光の輝度(Br)を発光の色度(x,y)のy値で除した値、すなわち(Br/y)値を算出し、CMSのBr/y値を基準として、記の実施例1において合成した蛍光体が示すBr/y値がそれぞれ何倍になっているかをもって比較する方法を採用した。
その結果、CMSを基準として、上記の実施例1において合成した蛍光体において、(Ba0.5Sr0.5)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では1.8倍、(Ba0.4Sr0.6)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では1.7倍、(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では1.9倍、(Ba0.25Sr0.75)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では1.5倍、(Ba0.2Sr0.8)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では2.1倍、(Ba0.1Sr0.9)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では、1.5倍、そして、Sr1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03では3.9倍であった。
記の実施例1において合成した蛍光体の何れにおいても、波長173nm励起条件において、CMSに比べ発光効率が向上し、1.5倍以上となっていることがわかった。
(実施例3)
次に、青の蛍光体層を構成する青色蛍光体として上記の実施例1において合成した蛍光体蛍光体(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03を用い、図7に示すプラズマディスプレイパネルであるPDP100を作製した。
図7は、本発明の実施形態であるPDPの構造を示す要部分解斜視図である。また、図8〜図10は本発明の実施形態であるPDPの構造を示す要部断面図である。
PDP100を作製するには、まず、背面基板6上に、Agなどで構成されたアドレス電極9と、ガラス系の材料で構成された誘電体層4とを形成した後、同じくガラス系の材料で構成された隔壁材を厚膜印刷し、ブラストマスクを用いてブラスト除去を行うことにより隔壁7を形成する。
次に、この隔壁7上に,赤、緑及び青の各蛍光体層10を該当する隔壁7間の溝面を被覆する形で、順次ストライプ状に形成した。
ここで、各蛍光体層10は、赤、緑及び青に対応し、赤色蛍光体粒子40重量部(ビヒクル60重量部)、緑色蛍光体粒子40重量部(ビヒクル60重量部)、青色蛍光体粒子35重量部(ビヒクル65重量部)とし、それぞれビヒクルと混ぜて蛍光体ペーストとし、スクリーン印刷により塗布した後、乾燥及び焼成工程により蛍光体ペースト内の揮発成分の蒸発と有機物の燃焼除去を行って形成する。なお、本実施例で用いた蛍光体層10は、中央粒径が3μm程度の各蛍光体粒子で構成されている。
また、青色以外の各色蛍光体の材料については,赤色蛍光体は(Y,Gd)BO3:Eu蛍光体とY2O3:Eu蛍光体1:1の混合物であり、緑色蛍光体はZn2SiO4:Mn蛍光体である。
次に、表示電極2、バスライン3、誘電体層4、及び保護膜5を形成した前面基板1と、背面基板6をフリット封着し、パネル内を真空排気した後、放電ガスを注入し封止する。その放電ガスは、ネオン(Ne)を主体とし、組成比が10%となる量でキセノン(Xe)ガスを含んで構成されたガスである。
本実施例に係るPDP100は、そのサイズが3型で一画素のピッチが1000μm×1000μmである。
本実施例のような面放電型カラーPDP装置のPDP100では、例えば一対の表示電極2のうちの一方(一般に、走査電極と呼ぶ)に負の電圧を、アドレス電極9と他方の表示電極2に正の電圧(前記表示電極2に印加される電圧に比して正の電圧)を印加することにより放電が発生し、これにより、一対の表示電極2の間で放電を開始するための補助となる壁電荷が形成される(これを書き込みと呼ぶ)。この状態で一対の表示電極2の間に、適当な逆電圧を印加すると、誘電体層4(及び保護膜5)を介して、両電極2の間の放電空間に放電が発生する。放電終了後、前記一対の表示電極2に印加する電圧を逆にすると、新たに放電が発生する。これを繰り返すことにより継続的に放電が発生する(これを維持放電又は表示放電と呼ぶ)。
次に、上記した本発明を構成する蛍光体(Ba0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03を用いたPDP100を使用し、駆動回路と組み合わせて放電、点灯駆動できるようにし、画像表示を行うよう構成されたPDP装置を作製した。
このPDP装置は、深い色の青色による画像表示が可能で、画像の色が綺麗であり、表示性能に優れていた。このようにして作製したカラーPDP装置は、広い色再現性を備え、高効率を示すものであった。
また、本実施例では、赤および緑の蛍光体に関して詳細な検討結果を示していないが、以下に示す各組成の蛍光体でも同様にPDPを作製することができる。例えば赤色蛍光体としては、(Y,Gd)BO3:Eu、(Y,Gd)2O3:Eu、(Y,Gd)(P,V)O4:Euからなる群より選択された一種以上の蛍光体が利用可能である。また、緑色蛍光体としては、Zn2SiO4:Mn、(Y,Gd,Sc)2SiO5:Tb、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Tb、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce、(Y,Gd)B3O6:Tb、および(Y,Gd)PO4:Tbからなる群より選ばれた一種以上の蛍光体が利用可能である。さらに、ここに示していない蛍光体との組合せも適用できる。
また、青色蛍光体については、色特性などを考慮して所望の特性を実現するため、上記のBa0.3Sr0.7)1.97・Mg・Si2O7:Eu0.03など、前記一般式(1)で表されるEu賦活珪酸塩系蛍光体とともに、従来青色発光蛍光体であるBaMgAl10O17:Eu、CaMgSi2O6:EuおよびSr3MgSi2O8:Euからなる群より選択された一種以上の蛍光体を組み合わせて使用することも可能である。その場合、混合比率については、PDP装置設計における好ましい青色を表現できる組成を考慮し、さらに輝度性能を考慮して、調整、制御をすることが可能である。さらに、ここに示していない蛍光体との組合せも適用できる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更することは可能である。