JP2009001082A - 二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】特に、CA45度〜55度程度の大CAでの旋回時におけるタイヤの横剛性およびねじり剛性を向上しつつ、縦バネを低下させて、チャタの発生を抑制しつつ旋回時の操縦安定性能の向上を図った二輪車用空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア1と、カーカス2とを備える二輪車用空気入りタイヤである。タイヤを標準リムに装着し、規格内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ高さからトレッド端高さまでの距離をHとし、タイヤ幅方向断面におけるリムフランジ高さに相当するタイヤ側面上の点をRとしたとき、カーカ2の内側に、下端が、ビードコア1よりタイヤ半径方向外側であって点Rからタイヤ半径方向外側に0.1Hの位置までの間に存在する、高さ10mm以上の硬質ゴム層6が配置され、かつ、硬質ゴム層6の20℃におけるショアA硬度が、60〜95の範囲内である。
【選択図】図1

Description

本発明は二輪車用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、トレッド部の改良に係る二輪車用空気入りタイヤに関する。
自動二輪車は、車体を傾けて旋回するという特徴があるため、車体の傾きによって、路面に接地するタイヤの部分が移動する。キャンバー角(車体のバンク角ともいう、以下、「CA」とも称する)が0度のとき、すなわちバイクが直立しているときは、トレッドのセンター部が接地し、車体を傾けるにしたがって、接地面がトレッドショルダー部に移動する。最も車体が傾いたときのCAは45度〜55度であり、この場合の接地面はトレッドのショルダー部のみとなる。接地幅は、通常、トレッド幅の1/4程度である。二輪車用タイヤの特徴として、接地面が移動するために、タイヤのトレッドの占める割合が大きいことが挙げられる。これに対して、タイヤのサイド部の範囲は狭くなる。
図4は、二輪車が大きなCA(CA50度)で旋回しているときの荷重直下におけるタイヤの断面図であり、タイヤトレッドの4分の1の範囲が接地している。また、タイヤのサイド部は大きな変形を荷重直下で受けることがわかる。特に、リムフランジ10の高さに相当する位置のサイド部は、タイヤ幅方向外側に倒れ込むように変形している。リムフランジがあるため、リムフランジにタイヤサイド部の表面が当たって、ビード部およびサイド部の最大幅位置が、リムフランジを支点として外曲げされる方向となっている。
このようなCA50度での旋回時には、図4中に矢印で示すように、トレッド面に、トレッドセンター側からトレッドショルダー側に向かう横力が働く。この横力はキャンバースラストと呼ばれ、この横力によりバイクは旋回することができる。また、サイド部は、片側だけが大きくたわんで、荷重を支えるために大きく変形する。
タイヤの操縦安定性能を考えた場合、サイド部は横方向に対して強くなければならない。すなわち、図4に示す横力に対抗して横方向にサイド部が変形しにくい方が、操縦安定性能は高くなる。また、二輪車用タイヤは、図示するように、垂直方向に対してねじれない方が良い。このようなねじれが生ずると、舵角を戻す方向にタイヤがねじれるため、横力を失うことになる。すなわち、サイド部は、鉛直軸に対してねじれにくいことも必要である。このように、サイド部については、CA50度において横方向の剛性とねじれ方向の剛性とを適度に保つことが、操縦安定性能を高める上で必要である。
このような要請から、ビード部のビードコア付近からサイド部に掛けて、ビードフィラーと呼ばれる硬質ゴムを配置したり、ビードコアの周りに角度付きの補強部材を配置して、ビードコア周りの剛性を高めることが考えられている。このような手法は、乗用車用やトラックバス用などの四輪車用タイヤでも、有利な操縦安定性能の改善手段として大きな横力(この場合はサイドフォースまたはコーナリングフォース)を発生させる目的で、多く見られる手法である。
二輪車用タイヤに関する改良技術としては、例えば、特許文献1,2に、タイヤのサイド部の剛性を向上することを目的として、カーカスの折返し部の外側に硬質ゴム部材を配置した二輪車用空気入りタイヤが開示されている。また、特許文献3には、乗り心地を向上させつつ操縦安定性とコーナーリング性能を向上させることを目的として、ビード部のカーカス・プライ本体部及び/または折り返し部に、繊維の交差型多方向配列になる不織布とゴムとの複合部材よりなるビード補強層を配置した空気入りタイヤが開示されている。
特開平9−39521号公報(特許請求の範囲等) 特開2005−212692号公報(特許請求の範囲等) 特開平9−202118号公報(特許請求の範囲等)
前述したように、二輪車用の空気入りタイヤでは、二輪車が車体を傾けて旋回することから、直進時と旋回時では、タイヤトレッド部が路面と接する場所が異なる。つまり、直進時にはトレッドの中央部分を使用し、旋回時にはトレッドの端部を使用するという特徴がある。また、タイヤに求められる性能も、直進時にはタイヤの周方向(赤道方向)に対する入力(即ち、加速・減速)に対してグリップすることが求められ、旋回時にはタイヤの横方向(幅方向)に対してグリップすることが求められる。
二輪車を速く旋回させるには、旋回速度にともなって大きくなる遠心力と釣り合わせるために車体を大きく倒す必要があり、さらにその遠心力と同じ力だけ、タイヤが路面にグリップできなければならない。つまり、車体を大きく傾けたときのタイヤのグリップが不足する場合は、速く旋回できないことになるため、ここでのグリップが旋回性能に及ぼす影響は非常に大きい。また、二輪車用タイヤのサイド部は、車体を大きく倒したときに大きな変形を受ける。
車体を大きく倒した旋回(CA45度〜55度の傾き)では、図4に示したように、タイヤの横グリップを発生させるには、タイヤの横方向の変形に対する剛性と、タイヤの鉛直下向きの軸周りの回転に対するねじり剛性を大きくすることが必要である。この2つの剛性が確保できれば、タイヤにしっかり感が生じて、ライダーは安心して車体を傾けることができる。
タイヤサイド部の横剛性は、前述したように、サイド部に硬質ゴム部材等を配置することで、向上することが可能である。しかしながら二輪車用タイヤの場合、サイド部が小さいために、単に硬質ゴム部材等を配置するのみでは鉛直方向の剛性(=縦バネ)が高くなりすぎて、大CA時(CAが45度〜55度)には旋回しながらタイヤが上下方向に振動しやすく、タイヤがゴツゴツしたり、振動に応じてタイヤが横に滑って逃げていく(跳ねる)ような現象が生ずる。特に、後者の現象はチャタと呼ばれ、大CA時に起こると、速度を上げられないことや車輌バランスを崩すこと、転倒しやすくなることなどから、ライダーが高速で旋回できなくなり、安全面でも操縦安定性能の面でも好ましくない。したがって、チャタの発生を防止しつつ、横剛性およびねじり剛性を向上できる技術が求められていた。
そこで本発明の目的は、特に、CA45度〜55度程度の大CAでの旋回時におけるタイヤの横剛性およびねじり剛性を向上しつつ、縦バネを低下させて、チャタの発生を抑制しつつ旋回時の操縦安定性能の向上を図った二輪車用空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のようなことを見出した。すなわち、上記したチャタの現象の発生を抑制するためには、大CA時におけるタイヤの縦バネ、つまり、鉛直方向の剛性を低下させることが必要である。つまり、図4において、鉛直下向き方向のバネを低下させることが重要となる。
この点、図4に示すように、タイヤが大CAで縦にたわむときのサイド部の変形は、リムフランジの部分での大きな屈曲となる。したがって、この部分を曲がりやすくすることが縦バネを低下させることに大きな影響を与えるものと考えられる。一方で、単にリムフランジ高さの位置の剛性を低下させてしまうと、縦バネは下がるものの、横剛性およびねじり剛性についても低下するため、好ましくない。
本発明者は、かかる観点からさらに検討した結果、タイヤサイド部において、カーカス内側の特定の位置に硬質ゴム層を配置することで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の二輪車用空気入りタイヤは、左右一対のビード部にそれぞれ埋設された一対のビードコアと、両ビード部間にトロイド状に跨って延在する少なくとも1枚のカーカスとを備える二輪車用空気入りタイヤにおいて、
タイヤを標準リムに装着し、規格内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ高さからトレッド端高さまでの距離をHとし、タイヤ幅方向断面におけるリムフランジ高さに相当するタイヤ側面上の点をRとしたとき、
前記カーカスの内側に、下端が、前記ビードコアよりタイヤ半径方向外側であって点Rからタイヤ半径方向外側に0.1Hの位置までの間に存在する、高さ10mm以上の硬質ゴム層が配置され、かつ、該硬質ゴム層の20℃におけるショアA硬度が、60〜95の範囲内であることを特徴とするものである。
ここで、規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格によって定められている規格である。例えば、アメリカ合衆国では「The Tire and Rim Association Inc.のYear Book」であり、欧州では「The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual」であり、日本では日本自動車タイヤ協会の「JATMA Year Book」にて規定されている。よって、規格内圧は、前記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対する空気圧であり、また、標準リムは、前記規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、「Approved Rim」、「Recommended Rim」)である。
本発明においては、前記硬質ゴム層の下端が、前記ビードコアよりタイヤ半径方向外側であって、リムフランジ高さより低い位置に存在することが好ましい。また、タイヤを標準リムに装着し、規格内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ高さからトレッド端高さまでの距離をHとし、リムフランジ高さから前記硬質ゴム層の上端高さまでの距離をAとしたとき、下記式、
0.1H≦A≦0.7H
で表される関係、特には下記式、
0.2H≦A≦0.6H
で表される関係を満足することが好ましい。
さらに、本発明において前記硬質ゴム層の最大厚み部は、好適には1mm以上7mm以下の厚さを有する。さらにまた、点Rにおける前記カーカスのタイヤ幅方向最外層コードからタイヤ表面までのゴムの厚さが0.3mm以上2.0mm以下であることが好ましく、前記カーカスの端部が、両側からビードワイヤに挟み込まれて係止されていることも好ましい。
本発明によれば、上記構成としたことにより、CA45度〜55度程度の大CAでの旋回時におけるタイヤの横剛性およびねじり剛性を向上しつつ、縦バネを低下させて、チャタの発生を抑制しつつ旋回時の操縦安定性能の向上を図った二輪車用空気入りタイヤを実現することが可能となった。
なお、前記特許文献3には、ビード補強層をカーカスプライ本体部の軸方向内側に配置することが記載されているが、かかるビード補強層は不織布とゴムとの複合部材よりなるものであり、本発明に係る硬質ゴム層とは部材構成上異なっている。すなわち、不織布を含む複合部材を配置した場合には、横剛性は向上しても、縦バネは十分に低減できないと考えられ、本発明の所期の効果は得られない。また、特許文献3では、その請求項3および図1に示されているように、カーカスプライ折り返し部の軸方向外側にビード補強層を配置する場合も想定されており、かかる配置においては、本発明に係る横剛性およびねじり剛性の向上と縦バネの低下との両立は図れるものではない。したがって、特許文献3に開示された技術は本発明の技術思想とは本質的に異なるものである。
以下、本発明の好適実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の一好適例の二輪車用空気入りタイヤの幅方向片側断面図を示す。図示するように、本発明の二輪車用タイヤは、左右一対のビード部11にそれぞれ埋設された一対のビードコア1と、一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨って延在する少なくとも1枚のカーカス(ボディプライ)2と、そのタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも1枚のベルト層3と、環状に形成されてその半径方向外側に配置されたトレッド部12とを備えている。また、ビード部11とトレッド部12との間には、サイド部13が配置されている。
本発明においては、図示するように、ビード部11からサイド部13にかけてのカーカス2の内側に、高さ10mm以上の硬質ゴム層6が配置されている。かかる硬質ゴム層6は、より具体的には、タイヤを標準リム10に装着し、規格内圧を充填した無負荷状態において、図示するように、リムフランジ高さの位置からトレッド端高さの位置までの距離をHとし、タイヤ幅方向断面におけるリムフランジ高さに相当するタイヤ側面上の点をRとしたとき、下端が、ビードコア1よりタイヤ半径方向外側であって点Rからタイヤ半径方向外側に0.1Hの位置までの間に存在するように配置する。
ここで、リムフランジ高さとは、ビードベース部(点P)を基準として、リムフランジがタイヤに接する部分のうち最も回転軸から離れた位置までの距離である。本発明においては、このリムフランジ高さに相当するタイヤ側面上の点をRとしている。
通常、このような硬質ゴム層はビードフィラーゴム(アペックスゴムとも称される)と呼ばれ、カーカス2がビードコア1の周りに折り返されている場合には、ビードコア間に跨ってトロイド状に延在するカーカス2の本体部2Aと、折り返された折り返し部2Bとの間に断面三角形状に配置される(図3参照)。また、カーカス2が折り返されずに係止されている場合には、カーカス2の外側に配置される。これに対し、本発明では、かかる硬質ゴム層6を、最内層に位置するカーカス2の内側に配置している。この理由は、図4の変形図によって説明できる。
すなわち、前述したように、二輪車用タイヤが大CA(CA45度〜55度)で旋回する場合、図4に示すように、片側のサイド部は非常に大きな屈曲変形を受けるが、この変形を観察すると、特に大きな曲げが加わる部分は、リム(ホイールのタイヤと接する部分)のフランジ高さに接する点R近傍である。この点R近傍の変形は、図示するように、タイヤのサイド部を外側に折り曲げる方向の曲げである。この曲げ方向にタイヤ(サイド部)が曲がりにくいと、サイド部がたわめず、縦バネ(図4に示す鉛直方向のバネ)が高くなる。縦バネが高いとタイヤが跳ねやすく、チャタが発生しやすい。
一方、この点R近傍は、ほぼ剛体であるリムと、弾性体であるタイヤとの境界であり、この部分の剛性がタイヤの横剛性(図4の左から右へ動かすときの剛性、つまり図中に矢印で示す横力の方向の剛性)と、ねじり剛性(図4の鉛直軸周りを回転するねじり剛性)とに大きく寄与する。つまり、点R近傍を非常に柔らかくすると、縦バネは下げられる反面、横剛性およびねじり剛性についても低下するが、タイヤの操縦安定性能を向上させるためには高い横剛性および高いねじり剛性が必要であり、チャタを防止する観点からは低い縦バネが必要である。
この点、図3に示す従来のタイヤでは、点R周りの曲げ剛性が非常に高くなる。すなわち、カーカスの本体部2Aと折り返し部2Bとに囲まれた三角地帯に硬質ゴム16が存在するため、図4に示すような曲げ変形をしようとする場合には、内側のカーカス本体部2Aが伸びなければならないが、カーカス内には有機繊維等の補強コードが存在するため伸びることができずに、結果として、点R周りで曲がりにくくなるのである。
これに対し、本発明においては、図1に示すように、ビード部からサイド部にかけてのカーカス2の内側に硬質ゴム層6を配置している。したがって、図4の曲げ方向にタイヤが変形した場合には、硬質ゴム層6が伸びることができれば、比較的容易に曲がることができることになる。硬質ゴム層6は、硬質とはいえゴムであるため、カーカス2を形成する有機繊維等のコードよりも引張り弾性率は低く、例えば、有機繊維コードがナイロンである場合には、硬質ゴム層6はナイロンコードよりも50〜100倍引張り弾性率が低く、すなわち、柔らかい。そのため、最内側にカーカスのナイロンコードがある従来構造に比べて、本発明のタイヤは点R回りに曲がりやすく、縦バネを高める恐れがない。その一方で、硬質ゴム層6による補強をしているため、横バネおよびねじりバネについては、所望に向上させることが可能である。したがって本発明においては、点R付近の外曲げを容易として縦バネを抑制するとともに、横剛性およびねじり剛性を向上することが可能となるのである。
ここで、カーカス2の端部は、図1に示すようにビードコア1の周りに折り返して固定する他、図2に示すように両側からビードワイヤで挟み込んで固定してもよい。縦バネを低下させる点からは、サイド部のプライ数が少なくなる図2の係止構造が有利である。図2は、1枚のカーカスをビード部11でビードワイヤにより両側から挟み込んで係止した構造を示す。このようにカーカス2が折り返されずにビード部で係止されている場合、点R付近にカーカスが1枚だけ存在する場合があるが、この場合もカーカス2の内側に硬質ゴム層6を配置することで、サイド部が点R周りに外曲げされた際には、内側の硬質ゴム層6が伸びることで曲がることが可能となる。これが逆に、従来のようにカーカスの外側に硬質ゴムを配置した場合は、ゴムが非圧縮性を有するため、リムフランジとカーカスに挟まれたゴムは圧縮されない。そのため、外曲げされるためにはカーカスが伸びることが必要となるが、前述したとおりカーカスの有機繊維コードは硬質ゴムの50倍〜100倍の弾性率を持ち、伸びにくいため、結果として、点R周りに曲がりにくくなってしまう。
なお、本発明に係る硬質ゴム層6は、好適には点Rに跨るように、すなわち、点Rよりタイヤ半径方向内側から点Rよりタイヤタイヤ半径方向外側までにわたって配設される。この場合、硬質ゴム層6の下端は、ビードコア1よりタイヤ半径方向外側であって、リムフランジ高さより低い位置に存在することになる。前述したように、点Rの近傍は、ほぼ剛体であるリムと弾性体であるタイヤのサイド部とをつなぐ部分であり、この根元の変形がタイヤの剛性に強く影響を与えるため、この部分に硬質ゴム層6を配置することで、効率的にタイヤの横剛性とねじり剛性を向上できる。また、硬質ゴム層6は、本発明の条件を満足する限り、下端が点Rよりタイヤ半径方向に位置するよう配置してもよい。この場合、縦バネは非常に低下する。但し、横バネの上昇割合の点では、若干劣る。
硬質ゴム層6の高さhは、10mm以上とすることが必要であり、好適には15mm以上とする。硬質ゴム層6の高さhが10mm以上ないと、横剛性とねじり剛性とを高める効果が不十分となる。また、その上限は、30mm程度である。
また、硬質ゴム層6の上端の位置は、タイヤを標準リムに装着し、規格内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ高さからトレッド端高さまでの距離をHとし、リムフランジ高さから硬質ゴム層6の上端高さまでの距離をAとしたとき、下記式、
0.1H≦A≦0.7H、
特には下記式、
0.2H≦A≦0.6H
で表される関係を満足するものとすることが好ましい。硬質ゴム層6によりサイド部の全てを補強すると、サイド部がたわめなくなり、縦バネが上がりすぎる。一方、あまりにも補強する部分が少ないと、横バネおよびねじりバネを向上させることができない。それゆえ、0.1H以上0.7以下とする。なお、サイド部の根元を補強する理由は先に述べたように、剛体に近いリムに接触する部分を補強することがもっとも効率が良いからである。また、ベルトに近い、すなわちトレッド端部に近い位置を補強すると、この部分が変形しにくくなり、その影響がトレッド部にも伝播し、トレッドがたわめなくなって接地面積が低下し、操縦安定性能が低下する。それゆえ、サイド部においてトレッド端に近い部分は補強しないことが好ましい。
硬質ゴム層6の硬さは、20℃におけるショアA硬度で60〜95の範囲内とする。通常のトレッドゴムの硬度は40程度であり、硬度60は硬いゴムの部類である。また、ショアA硬度の上限は100であり、これはガラスに相当する。本発明に用いる硬質ゴム層6の硬さは、好適には65〜85とすることが、縦バネを上げずに横バネおよびねじりバネを高めるために理想的である。なお、ショアA硬度は、ISO7619に準じて測定することができる。
なお、硬質ゴム層6は、好適には、最大厚み部において1mm以上7mm以下の厚さとする。厚みが1mm以上ないと補強ゴムとして十分機能しないおそれがある一方、7mmよりも厚いと、タイヤの重量が重くなりすぎて不利となる。
また、本発明においては、点Rにおける、カーカス2のタイヤ幅方向最外層コードからタイヤ表面までのゴムの厚さが0.3mm以上2.0mm以下、特には0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。カーカスの外側表面には、プライがリムとの間で擦り切れて切断されないようにしたり、外傷によってタイヤがサイドからバーストしないようにするために、通常サイドゴムと言われるゴムが配置されており、これは硬質ゴムではない。この部分のゴムが厚すぎると、ゴムの非圧縮性のために、図4に示す外曲げが阻害されることになる。つまり、点Rに接触するタイヤのサイド部は、表面をリム(金属、ほぼ剛体)で固定され、内部にはカーカスの骨格部材がある。そのため、カーカス表面のゴムの層が厚い場合、このゴムがつぶれないと、点Rに相当するサイド部が外曲げできないが、ゴムは非圧縮性であるためつぶれないことから、このゴムが厚ければ厚いほど変形が阻害されるのである。一方、カーカスの表面にゴムを全く配置しないと、カーカスがリムと擦れて、切れてしまう恐れがある。それゆえ、この部分のゴムの厚みは0.3mm以上が好適である。また、厚み2mm以下が好適であるのは、2mmを超えるとサイド部の点R付近が曲がりにくく、縦バネが高くなるからである。
本発明のタイヤにおいては、硬質ゴム層6について上記条件を満足することが重要であり、これにより本発明の所期の効果を得ることができ、それ以外のタイヤ構造や材質等の条件については、特に制限されるものではない。
例えば、図示する例では、ベルト層3として、タイヤ周方向に対し0度〜5度の角度を有する補強素子からなるスパイラルベルト4と、交錯ベルト層5とが配設されている。ベルト層3は少なくとも一層設けることが必要であり、1層の場合には、通常、スパイラルベルトを配置する。スパイラルベルト4は、タイヤの周方向に対して略平行(0〜5度の角度)に、ゴム被覆コードを螺旋巻きして形成される。例えば、スチールの単線を5本束ねて1×5構造のスチールコードとし、これを2本並べて未加硫ゴムで被覆したストリップ部材を、トレッド部に螺旋巻きすることで形成することができる。または1本のコードに未加硫ゴムを被覆して螺旋巻きしてもよく、あるいは、3本以上のコードを並べて螺旋巻きしてもよい。また、コードの種類としては、スチールコードに限定されず、芳香族ポリアミド(商品名:ケブラー)に代表される引張り剛性の高い有機繊維コードを用いてもよい。また、交錯ベルト層5は、例えば、芳香族ポリアミド等の有機繊維からなる補強コードを、タイヤ周方向に対して±20度〜80度で交錯させて設けることができる。
ベルト層は、図示するように、スパイラルベルト4と交錯ベルト層5とを組合せて設けてもよいが、スパイラルベルト4のみ、または、交錯ベルト層5のみの単独で構成してもよい。また、スパイラルベルトを2重にして配置してもよく、スパイラルベルトの他にタイヤ周方向に対する角度が90度のベルトを追加して、スパイラルベルトと網目を形成させて強化してもよい。また、交錯ベルト層についても、2層に限らず、3層以上で設けてもよく、特に制限はない。
また、例えば、本発明のタイヤは、図示するように、一対のビード部11と、それに連なる一対のサイド部13と、両サイド部13間にトロイド状をなして連なるトレッド部12とを備えており、これら各部をビード部相互間にわたり補強するカーカス2は、比較的高弾性のテキスタイルコードを互いに平行に配列してなるカーカスプライの少なくとも1枚からなる。カーカスプライの枚数は、1枚でも2枚でもよく、3枚以上でもかまわない。カーカスプライを1枚とする場合は、タイヤ周方向に対して90度をなすいわゆるラジアルプライとすることが一般的であるが、2枚とする場合は、ラジアルプライを2枚重ねてもよく、2枚をタイヤ周方向に対し45度〜85度の角度で交錯させて配置してもよい。なお、点R付近のサイド部の外曲げを容易にする観点からは、カーカスの枚数が少ないほうが好ましい。
また、タイヤの最内層にはインナーライナーが配置され(図示せず)、トレッド部12の表面には、適宜トレッドパターンが形成されている(図示せず)。本発明は、ラジアルタイヤに限らず、バイアスタイヤにも適用可能である。
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明する。
下記条件に従い、タイヤサイズ190/50ZR17にて、図1に示す構造を有する二輪車用空気入りタイヤを作製した。各供試タイヤは、一対のビードコア間にトロイド状に跨って延在するカーカスプライの1枚からなるカーカスを備えており、カーカスプライは、ナイロン繊維を撚った直径0.7mmのコードを用いて、これを打ち込み数60本/50mmにて配置することで形成した。また、カーカスはラジアル方向(タイヤ周方向に対する角度が90度)に配設した。なお、カーカス2の端部は、ビード部において、ビードコア1の周りに巻き回し折り返して係止されており、カーカスプライの折り返し部の表面には、室温20℃におけるショアA硬さ35のサイドゴム(表面ゴム)が配置されている。
また、カーカスのタイヤ半径方向外側には、スパイラルベルトを配置した。スパイラルベルトは、芳香族ポリアミド繊維(商品名:ケブラー)を撚った直径0.7mmのコードを、打ち込み数50本/50mmで略タイヤ周方向にスパイラル状に巻き付けて形成されたものであり、2本の並列したコ−ドを被覆ゴム中に埋設した帯状体(ストリップ)を、略タイヤ周方向に沿って螺旋状にタイヤ回転軸方向に巻き付ける手法で製造した。さらに、スパイラルベルトのタイヤ半径方向外側には、2枚の交錯ベルト層を配置した。交錯ベルト層は、芳香族ポリアミド繊維を撚った直径0.7mmのコードを、打ち込み数40本/50mmにて、タイヤ周方向に対し±65度の角度で互いに交錯させて配置した。交錯ベルト層の外側には、トレッド部が設けられており、トレッド部の厚みは7mmであった。なお、本実施例のタイヤでは、トレッド部表面には溝を配置しなかった。
上記構造を基本とし、タイヤサイド部における補強構造を下記に従い変更して、各従来例、実施例および比較例の供試タイヤを製造した。タイヤサイド部の各部寸法は、図1に示すとおりである。トレッドの展開幅(丸みにそって図った弧の長さ)は240mmであり、スパイラルベルトの幅は220mm、1枚目(内側)の交錯ベルトの幅は240mm、2枚目(外側)の交錯ベルトの幅は230mmであった。
また、タイヤを標準リムに装着し、規格内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ高さ(点R)からトレッド端高さ(点Q)までの距離をHとし、タイヤ幅方向断面におけるリムフランジ高さに相当するタイヤ側面上の点をRとしたとき、Hは38mmであり、ビードベース部(点P)からリムフランジ(点R)までのリムフランジ高さは18mmであった。また、カーカスの折り返し端部は、点Rから高さ35mmの位置であった。さらに、点Rに相当するタイヤサイド部における、折り返しカーカスのタイヤ幅方向最外層コードからタイヤ表面までのゴムの厚さ(カーカスを形成するナイロンコードの表面から、タイヤ表面までの距離)は、1mmであった。
<従来例1>
図3に示すように、カーカスの本体部2Aと折り返し部2Bとの間に、ビードフィラー16を配置した。ビードフィラーの上端高さは、点Rから10mmの位置であった。また、下端位置はビードワイヤに接しており、これは点Rから−12mmの位置に相当する。ビードフィラーの断面形状は、底面が4mm、高さが22mmの三角形であった。また、ゴムのショアA硬度は、室温20℃で70であった。
<実施例および比較例1〜3>
図1に示すように、従来例のビードフィラーに代えて、カーカスの内側に硬質ゴムのシートからなる硬質ゴム層を貼り付けて、実施例1のタイヤを作製した。シートの厚みは2mmであった。また、シートの断面形状は長方形であったが、加硫時に内面からブラダーに押されて、シートの端部が若干薄くなった。最大厚み部は2mmのままであった。また、ショアA硬度は、従来例1と同じで70であった。この硬質ゴムの下端位置は、点Rから−6mmの位置であった。
硬質ゴム層の高さA、厚み、ゴムの硬さ、貼り付け位置および折り返しカーカスのタイヤ幅方向最外層コードからタイヤ表面までの厚さを下記表に示すようにそれぞれ変えた以外は実施例1と同様にして、各実施例のタイヤを作製した。
<比較例4>
ビードフィラーの上端高さを、点Rから15mmの位置に変えた以外は従来例1と同様にして、比較例4の供試タイヤを作製した。
<剛性評価>
作製した各供試タイヤについて、縦バネ、横バネおよびねじりバネの評価試験を実施した。各供試タイヤをリム幅6インチ、リム径17インチのホイールに組み、内圧230kPaを充填した。縦バネは、各供試タイヤをCA50度、荷重1.2kNで金属製の平面に押し付け、荷重を1.8kNまで増したときに、鉛直方向のたわみ量と、荷重の変化から求めた。つまり、荷重の増分0.6kNを、たわみ量の増分で除したものが縦バネとなる。
次に、横バネは、金属平面の上に紙やすりを貼り付けて摩擦係数を高め、各供試タイヤをCA50度、荷重1.5kNで押し付け、横力を1kN加えた後、さらに横力を1.2kNまで増やし、横力1kNの横変位量と、横力1.2kNの横変位量との差分と、横力の増分0.2kNから求めた。つまり、横力増分0.2kNを、横変位量の変化で除したものが横バネとなる。
次に、ねじりバネは、以下のようにして求めた。まず、紙やすりを貼った金属路面に、各供試タイヤをCA50度、荷重1.5kNで押し付け、タイヤを鉛直軸の周りに0.5度回転させる。そのときに必要だった鉛直軸周りのトルクを計測する。さらに、1度まで回転させて、そのときのトルクを計測し、トルクの増分を、角度の差分0.5度で除したものをねじりバネとした。
上記各剛性(バネ)についての評価結果は、従来例1の値を100として、指数で示した。
<キャンバースラストの測定>
また、各供試タイヤのキャンバースラストを計測した。キャンバースラストは、3mの金属ドラムに紙やすりを貼り付けて路面に見立て、各供試タイヤをCA50度、荷重1.5kN、SA0度で押し付け、速度70km/hで回転させたときのタイヤの横力として測定した。評価結果は、従来例1のキャンバースラストを100として、指数で示した。
<実車テスト>
最後に、実車テストを実施した。1000ccのスポーツタイプのバイクにタイヤを取り付けて走行させた。検討タイヤはリアであったため、フロントタイヤは従来のもので固定して、リアタイヤのみを変更して熟練ライダーによるサーキット走行を実施し、10点満点で評価した。走行は、サーキットで激しい走行を実施し、最高速度は180km/hに達した。また、速度80km/hでの、バイクを大きく倒したCA50度相当の旋回も含んでいる。さらに、旋回中におけるチャタの発生の有無についても確認した。チャタが発生すると、操縦安定性能の評点が悪くなる。
これらの結果を、下記の表1,2中に示す。
Figure 2009001082
Figure 2009001082
従来例1と実施例1との比較から、ビードフィラー(硬質ゴム)を最内層カーカスの内側に配置することで、縦バネが低下していることがわかる。これは、図4で示したように、このリムフランジ高さ点R周りの外曲げが、曲がりやすくなるからである。また、従来例1と実施例1とは、硬質ゴムの使用量は同じである。従来例1は、底辺が4mm高さが22mmの三角形であり、実施例1は、厚みが2mm高さが11mmの長方形断面のシートである。同じ量の硬質ゴムを用いて、実施例1では縦バネを低下させる一方、横バネとねじりバネは維持することができる。
また、室内ドラムで計測したキャンバースラスト指数(横力)は、両者とも100であり、タイヤの軸力は両者とも同等であるが、サーキット走行の評点は、実施例1の方が高い。これは、実車のバイクの走行は振動を伴って走行されるため、縦バネが低下すると、振動に対して振動吸収性能が高く、タイヤが常に路面に接触しているためである。室内ドラムの評価では、路面が平らであるためタイヤに振動が起こらない。そのため同じ横力を得られたが、実車テストでは、縦バネが低い実施例1の方が高い操縦安定性能を示した。このように、横バネ、ねじりバネが同等であっても縦バネを低下させることができれば、実車走行において操縦安定性能が向上することがわかる。
<硬質ゴムの高さの比較>
比較例1と実施例1〜6との比較からは、硬質ゴムの高さの効果がわかる。比較例1のように、硬質ゴムがリムフランジの高さ(点R)と同じ高さの場合は、横バネやねじりバネは小さい。実施例1では効果が得られており、最も効果が高いのは、実施例3および4である。ただし、硬質ゴムの高さが20mmを超えると縦バネが従来例1と同等となっており、硬質ゴムの位置をカーカスの最内層側としたことよりも、高さを上げて、ゴムの使用量を増やしたことで縦バネが上がってしまう。
高さAは、0.66H程度であれば、縦バネは若干高いが、実車テストでチャタは発生せず、良好な効果が得られている。一方、高さAが0.79Hになると、サイド部の全体を固めていることになり、縦バネが高くなって、横バネやねじりバネは高くなるものの、縦バネが高いことからチャタが発生して、操縦安定性能がやや低下する。
なお、比較例4は、従来例1と同様にカーカスの本体部と折り返し部との間に断面三角形のビードフィラーを配置した構造において、ビードフィラーの高さを15mmに上げたものである。この場合、同じ高さ15mmの実施例3と比べて、明らかに縦バネが高いことがわかる。そのため、実車においてチャタが発生している。このように、従来例1と同様の構造においてビードフィラー高さを上げると、縦バネの上昇割合が大きく、チャタの発生を招くが、本発明では、硬質ゴム層の位置をカーカス最内層に移動することで、縦バネを大きく下げることに成功し、ねじりバネと横バネ上昇のメリットを享受しているといえる。
<硬質ゴムの厚みの効果>
実施例2、実施例7〜11を比較することで、硬質ゴムの厚みの効果がわかる。実施例7のように、ゴムシートの厚みが0.7mmと薄いと、シートを貼っても、横バネとねじりバネの上昇が僅かである。しかし、縦バネは非常に小さく、実車テストでは振動吸収性能が高くなって、操縦安定性能がわずかに上がった。また、実施例8はシートの厚みが1mmであるが、1mmあれば、横バネとねじりバネを良好に向上できる。一方、実施例10のようにシートの厚みが6mmになると、縦バネが101となり、縦バネの上昇がやや大きい。また、実施例10(シートの厚み6mm)と実施例11(シートの厚み8mm)とを比べると、縦バネは確実に上がるが、ねじりバネの上昇が僅かになっており、ねじりバネ補強効果に飽和が見られる。さらに、実施例11は縦バネが高すぎて実車試験でチャタを発生させた。以上より、シートの厚みは1mm以上7mm以下が良いと判断できる。好ましくは1mm以上5mm以下が、縦バネを従来例1と同等以下にするのに適している。
<硬質ゴムの硬さの効果>
比較例2、実施例3および実施例16〜18の比較から、硬質ゴムの硬さをどの程度に設定すればよいかがわかる。比較例2(硬さ50)では、横バネ、ねじりバネの向上効果が少なく、補強ゴムの硬さが柔らかすぎることがわかる。実施例16では、横バネとねじりバネの上昇が確認できる。また、実施例17および実施例18では、横バネおよびねじりバネの上昇率に飽和が見られる。実施例18でもチャタが発生せずに走行できているので、硬さは実施例18程度でもかまわない。それゆえ、60から95のショアA硬さとした。好ましくは、縦バネを抑制しつつ、横バネとねじりバネを効率的に上昇させることを考えると、60〜85の硬さのゴムが適している。
<フランジ高さR点に接する最外層カーカス表面のゴムの厚みの効果>
実施例3および実施例12〜15から、カーカスの折り返し部表面に配置されたサイドゴムの厚みの効果がわかる。縦バネを下げるためには、この表面のゴムは薄ければ薄いほど良い。また、この表面のゴムは硬質ゴムではないため、厚くしても横バネやねじりバネ上昇の効果はほとんどない。しかし、実施例12のタイヤは、実車走行を行った後に、リムフランジ高さ点Rに相当する位置に、ゴムの剥がれが若干見られた。これは、表面のゴムが薄すぎて、リムと擦れたときにゴムの変形が大きくなり、表面のゴムが破壊されやすかったからである。したがって、表面のゴムは薄すぎると、プライの損傷を招く恐れがある。また、表面のゴムが2.5mmと厚めの実施例15では、縦バネが高くなってきている。これは、先にも述べたように、表面のゴムが背面をカーカスの折り返しに固定され、表面はリムフランジに固定されるため、非圧縮のゴムが逃げ場を失い、たとえゴムが柔らかくても、図4に示す外曲げに対して抵抗を持つからである。以上のことから、表面のゴムの厚みは0.3mmから2mmが適当である。
<硬質ゴム層の開始位置の効果>
実施例3、実施例19,20および比較例3の比較から、硬質ゴムの下端位置の効果がわかる。実施例19では点Rから硬質ゴム層が開始されている。実施例3(R点の下6mmから開始)と実施例19(点Rから開始)との比較から、点Rから開始しても、横バネおよびねじりバネの上昇効果が得られていることがわかる。また、開始位置をトレッド側に移動することで縦バネが低下することがわかる。実施例20は、開始位置がさらに3mmトレッド側に移動した場合であり、比較例3は6mm移動した場合である。6mm移動すると、横バネおよびねじりバネが低下してしまう。3mmの移動では、横バネおよびねじりバネは従来例と同等レベルであるが、縦バネを大きく低下させることができており、実車テストで操縦安定性能が向上した。
以上より、本発明に係る各実施例のタイヤにおいては、いずれも従来例1のタイヤと比較して、縦バネを同等レベル以下にしてチャタの発生を抑制できるとともに、横バネおよびねじりバネを向上して横力(キャンバースラスト)を増加させることで、操縦安定性能が向上されていることがわかる。
次に、図2に示す、カーカス端部を折り返さずにビードワイヤで両側から挟み込んで係止した構造のタイヤにおいて、本発明の効果を確認した。タイヤサイズは190/50ZR17とした。各供試タイヤは、一対のビードコア間にトロイド状に跨って延在するカーカスプライの1枚からなるカーカスを備えており、カーカスプライは、ナイロン繊維を撚った直径0.7mmのコードを用いて、これを打ち込み数50本/50mmにて配置することで形成した。また、カーカスはラジアル方向(タイヤ周方向に対する角度が90度)に配設した。
また、カーカスのタイヤ半径方向外側には、スパイラルベルトを配置した。スパイラルベルトは、直径0.21mmのスチール単線を1×3タイプで撚ったスチールコードを打ち込み間隔50本/50mmでスパイラル状に巻きつけて形成されたものであり、2本の並列したコ−ドを被覆ゴム中に埋設した帯状体(ストリップ)を、略タイヤ周方向に沿って螺旋状にタイヤ回転軸方向に巻き付ける手法で製造した。さらに、スパイラルベルトのタイヤ半径方向外側にはトレッド部が設けられており、トレッド部の厚みは7mmであった。なお、本実施例のタイヤでは、トレッド部表面には溝を配置しなかった。
上記構造を基本とし、タイヤサイド部における補強構造を下記に従い変更して、従来例および実施例の供試タイヤを製造した。タイヤサイド部の各部寸法は、図2に示すとおりである。以下に示す以外の条件については、従来例1等と同様にした。
<従来例2>
カーカスのタイヤ半径方向外側に硬質ゴムを配置した。硬質ゴムは点Rより下側8mmから開始し、高さAは12mmであった。これは0.32Hに相当する。硬質ゴムの厚みは3mmであり、ショアA硬度は室温20℃で75であった。また、硬質ゴムの表面には、室温20℃におけるショアA硬度が35である柔らかいゴムが厚み0.5mmで配置されており、このゴムがリムフランジに接している。
<実施例21>
図2に示すように、硬質ゴムの位置をカーカスの内側に変えた以外は従来例2と同様にして、実施例21のタイヤを作製した。
これら各供試タイヤについて、従来例1等と同様の試験を実施した結果を、下記の表3中に示す。
Figure 2009001082
上記表に示すように、実施例21では、硬質ゴムをカーカス最内層に配置することで、縦バネが低下している。また、横バネおよびねじりバネは従来例2と同様であった。実車テストを行ったところ、実施例21では縦バネが低下して振動吸収性能が高くなり、操縦安定性能が向上しているとの評価が得られた。
本発明の一好適例に係る二輪車用空気入りタイヤを示す幅方向断面図である。 本発明の他の好適例に係る二輪車用空気入りタイヤを示す幅方向断面図である。 従来の二輪車用空気入りタイヤを示す幅方向断面図である。 二輪車が大きなCA(CA50度)で旋回しているときの荷重直下におけるタイヤを示す断面図である。
符号の説明
1 ビードコア
2 カーカス(2A 本体部,2B 折り返し部)
3 ベルト層
4 スパイラルベルト
5 交錯ベルト層
6 硬質ゴム層
11 ビード部
12 トレッド部
13 サイド部
16 硬質ゴム(ビードフィラー)

Claims (7)

  1. 左右一対のビード部にそれぞれ埋設された一対のビードコアと、両ビード部間にトロイド状に跨って延在する少なくとも1枚のカーカスとを備える二輪車用空気入りタイヤにおいて、
    タイヤを標準リムに装着し、規格内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ高さからトレッド端高さまでの距離をHとし、タイヤ幅方向断面におけるリムフランジ高さに相当するタイヤ側面上の点をRとしたとき、
    前記カーカスの内側に、下端が、前記ビードコアよりタイヤ半径方向外側であって点Rからタイヤ半径方向外側に0.1Hの位置までの間に存在する、高さ10mm以上の硬質ゴム層が配置され、かつ、該硬質ゴム層の20℃におけるショアA硬度が、60〜95の範囲内であることを特徴とする二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 前記硬質ゴム層の下端が、前記ビードコアよりタイヤ半径方向外側であって、リムフランジ高さより低い位置に存在する請求項1記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  3. タイヤを標準リムに装着し、規格内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ高さからトレッド端高さまでの距離をHとし、リムフランジ高さから前記硬質ゴム層の上端高さまでの距離をAとしたとき、下記式、
    0.1H≦A≦0.7H
    で表される関係を満足する請求項1または2記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  4. 下記式、
    0.2H≦A≦0.6H
    で表される関係を満足する請求項3記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  5. 前記硬質ゴム層の最大厚み部が、1mm以上7mm以下の厚さを有する請求項1〜4のうちいずれか一項記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  6. 点Rにおける、前記カーカスのタイヤ幅方向最外層コードからタイヤ表面までのゴムの厚さが、0.3mm以上2.0mm以下である請求項1〜5のうちいずれか一項記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  7. 前記カーカスの端部が、両側からビードワイヤに挟み込まれて係止されている請求項1〜6のうちいずれか一項記載の二輪車用空気入りタイヤ。
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