JP2006193032A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】 空気入りタイヤ11の高速耐久性を維持しながら、乗り心地性、操縦安定性を向上させる。
【解決手段】 近接ベルトプライ25、次近接ベルトプライ24内に埋設されているベルトコード27、26のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを前記順序で大としたので、接地変形時に曲げの中立軸から離れた位置に発生する引張力または圧縮力が、タイヤ赤道Sに対して比較的大きな傾斜角Aで傾斜している次近接ベルトプライ24のベルトコード26間のコーティングゴムを伸長または圧縮させるようになり、これにより、引張力または圧縮力に対する抵抗機能が低下して、空気入りタイヤ11の縦バネ定数が小さくなる。
【選択図】 図2

Description

この発明は、トレッド部にベルト層と重なり合うベルト補強層を配置した空気入りタイヤに関する。
従来の空気入りタイヤとしては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
特開2002−46415号公報
このものは、幅方向両端部がビードコアの回りに折り返されトロイダル状に延びるカーカス層と、カーカス層の半径方向外側に配置され、タイヤ赤道に対して15度〜35度の範囲内の同一角度で逆方向に傾斜している金属線コードが内部に埋設された2枚のベルトプライからなるベルト層と、該ベルト層の半径方向外側に配置されたトレッドと、前記ベルト層とトレッドとの間に配置され、内部にタイヤ赤道に実質上平行に延びる有機繊維から構成された補強コードが埋設されているベルト補強層とを備えたものである。
そして、このものは、前記ベルト補強層内のタイヤ赤道と実質上平行に延びる補強コードにより、高速走行時における遠心力によって高性能乗用車用、航空機用あるいはトラック・バス用等の空気入りタイヤのトレッド部が半径方向外側に大きく径成長するのを抑制し、これにより、発熱およびベルト端での歪みを低減させて高速耐久性を向上させるようにしている。
そして、このような空気入りタイヤが荷重下で走行すると、トレッド部は接地領域において円弧状から平坦となるよう変形し、曲げの中立軸(通常、外側ベルトプライ上に位置している)より半径方向内側に位置する内側ベルトプライには周方向の引張力が、一方、曲げの中立軸より半径方向外側に位置するベルト補強層には周方向の圧縮力が発生するが、前述のように内側ベルトプライ内の金属線コードはタイヤ赤道に対し15度〜35度の小さな角度で傾斜し、一方、ベルト補強層内の補強コードはタイヤ赤道と実質上平行に延びているため、これら金属線コード、補強コードは周方向に伸長あるいは圧縮され難く、これにより、これら曲げの中立軸の両側に距離を置いて配置された内側ベルトプライ、ベルト補強層は引張力、圧縮力に対して強い抵抗として機能する。
この結果、トレッド部における周方向の面外曲げ剛性(タイヤ幅方向を折り目とする曲げに対する剛性)が高くなり、これにより、空気入りタイヤの縦バネ定数が大きな値となって乗り心地性能が低下するとともに、接地長が短くなって接地面積が減少し操縦安定性が低下するという課題があった。
この発明は、高速耐久性を維持しながら、乗り心地性、操縦安定性を向上させることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
このような目的は、幅方向両端部がビードコアの回りに折り返されトロイダル状に延びるカーカス層と、カーカス層の半径方向外側に配置され、タイヤ赤道Sに対して逆方向に傾斜している非伸張性のベルトコードが内部に埋設された少なくとも2枚のベルトプライからなるベルト層と、該ベルト層の半径方向外側に配置されたトレッドと、前記ベルト層に重なり合うよう配置され、内部にタイヤ赤道Sに実質上平行に延びた非伸張性の補強コードが埋設されているベルト補強層とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記ベルトプライのうち、ベルト補強層に最も近接しているベルトプライを近接ベルトプライと、次に近接しているベルトプライを次近接ベルトプライとしたとき、これら近接ベルトプライ、次近接ベルトプライ内に埋設されているベルトコードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを前記順序で大とすることにより、達成することができる。
この発明においては、近接ベルトプライ、次近接ベルトプライ内に埋設されているベルトコードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを前記順序で大としたので、トレッド部の接地変形時に曲げの中立軸(通常、近接ベルトプライ上に位置している)から半径方向に離れた位置に発生する引張力または圧縮力は、タイヤ赤道に対する傾斜角が比較的大であるベルトコードが埋設された次近接ベルトプライおよびベルト補強層に作用することになる。
ここで、ベルト補強層から離れた位置に配置された次近接ベルトプライのベルトコードはタイヤ赤道Sに対して比較的大である傾斜角Aで傾斜しているため、ベルトコード間のコーティングゴムが前記引張力または圧縮力により伸長または圧縮されるようになり、引張力または圧縮力に対する抵抗機能が低下する。この結果、トレッド部における周方向の面外曲げ剛性が低下し、これにより、空気入りタイヤの縦バネ定数が小さくなって乗り心地性能が向上するとともに、接地長が長くなって接地面積が増大し操縦安定性が向上する。
また、請求項2に記載のように構成すれば、ベルト層が3枚のベルトプライから構成されているときであっても、トレッド部における周方向の面外曲げ剛性を充分に低下させることができる。
さらに、請求項3に記載のように構成すれば、コード傾斜角が同一のベルトプライを用いて空気入りタイヤを製造することができるため、製造が容易となり、コストを低減させることができる。
また、請求項4に記載のように構成すれば、次近接ベルトプライにおけるベルトコード間のコーティングゴムの伸長量または圧縮量が増大し、これにより、トレッド部における周方向の面外曲げ剛性を確実に低下させることができる。
さらに、請求項5に記載のように構成すれば、ベルト層の半径方向内側に配置されたベルト補強層が高速走行時におけるトレッド部の半径方向外側への径成長を抑え、ベルト補強層をベルト層の半径方向外側に配置するのと同等の高速走行時における操縦安定性を確保することができる。
また、請求項6に記載のように構成すれば、ベルト補強層を高能率かつ高精度で成形することができる。
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11は高速走行が可能な乗用車用空気入りラジアルタイヤであり、この空気入りタイヤ11はビードコア12がそれぞれ埋設された一対のビード部13と、これらビード部13から略半径方向外側に向かってそれぞれ延びるサイドウォール部14と、これらサイドウォール部14の半径方向外端同士を連結する略円筒状のトレッド部15とを備えている。なお、この発明は航空機用あるいはトラック・バス用の空気入りタイヤに適用してもよい。
そして、この空気入りタイヤ11は前記ビードコア12間をトロイダル状に延びてサイドウォール部14、トレッド部15を補強するカーカス層18を有し、このカーカス層18の幅方向両端部は前記ビードコア12の回りを軸方向内側から軸方向外側に向かって折り返されている。前記カーカス層18は少なくとも1枚、ここでは2枚のカーカスプライ19から構成され、これらのカーカスプライ19内にはタイヤ赤道Sに対して70〜90度のコード角で交差する、即ちラジアル方向(子午線方向)に延びるナイロン、芳香族ポリアミド、スチール等(ここでは、ナイロン)から構成された多数本の互いに平行なカーカスコード20がそれぞれ埋設されている。
23はカーカス層18の半径方向外側に配置されたベルト層であり、このベルト層23は少なくとも2枚のベルトプライ、ここでは2枚のベルトプライ24、25を半径方向外側に向かってこの順序で積層することにより構成している。ここで、各ベルトプライ24、25の内部には多数本の互いに平行な非伸張性のベルトコード26、27がそれぞれ埋設され、これらのベルトコード26、27はスチール、芳香族ポリアミド等の撚り線あるいはモノフィラメントから構成されている。そして、前記2枚のベルトプライ24、25内のベルトコード26、27はタイヤ赤道Sに対して逆方向に傾斜し互いに交差している。
31は前記カーカス層18、ベルト層23の半径方向外側に配置されたゴムからなるトレッドであり、このトレッド31の外表面(踏面)には、排水性能を向上させるため、幅広で周方向に連続して延びる複数本、ここでは4本の主溝32が形成されている。また、前記トレッド31の外表面には幅方向や斜め方向に延びる多数本の横溝が形成されることもある。
35はベルト層23とトレッド31との間のトレッド部15に該ベルト層23と重なり合うよう配置されたベルト補強層であり、このベルト補強層35は少なくとも1枚(ここでは1枚)の補強プライ36から構成され、各補強プライ36の内部にはタイヤ赤道Sと実質上平行に延びる非伸張性の補強コード37が埋設されている。このようにベルト層23の半径方向外側に該ベルト層23を覆うベルト補強層35を設ければ、高速走行時における遠心力によってトレッド部15が半径方向外側に大きく径成長するのが強力に抑制され、これにより、空気入りタイヤ11の高速耐久性をそのまま確実に維持することができる。
ここで、前述のベルト補強層35は、例えば、補強コード37を1本または少数本並べてゴム被覆した一定幅のリボン状体をベルト層23の外側に螺旋状に巻き付けることで成形することができる。このようにしてベルト補強層35を成形するようにすれば、ベルト補強層35を高能率かつ高精度で成形することができる。また、前記ベルト補強層35内の補強コード37はスチールから構成してもよいが、この実施形態のように芳香族ポリアミドから構成することが好ましい。その理由は、このようにすれば、軽量化を図りながら、高速走行によりトレッド部15が高温となっても、該トレッド部15の径成長を強力に抑制することができるからである。
そして、前述のような空気入りタイヤ11を荷重下で走行させると、タイヤ赤道方向に円弧状形状を呈しているトレッド部15は接地領域において平坦形状となるよう変形し、曲げの中立軸(通常、ベルトプライ25上に位置している)より半径方向内側に位置するベルトプライ24には周方向の引張力が発生するが、ここで、ベルトプライ24内のベルトコード26のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aが小さい場合には、ベルトプライ24はタイヤ赤道S方向に伸び難く、上記接地変形に対して強い抵抗として機能する。従来技術では傾斜角Aは面内剛性を高めるために20〜30度の範囲内となっていることが多いため、前述の通り引張力に対して十分な抵抗となり得る。一方、曲げの中立軸より半径方向外側に位置するベルト補強層35には周方向の圧縮力が発生するが、前述のベルト補強層35内の補強コード37はタイヤ赤道Sと実質上平行に延びているため、従来技術と同様にベルト補強層35は圧縮力に対して強い抵抗として機能する。
しかしながら、この実施形態では、ベルトプライ24、25のうち、ベルト補強層35に最も近接しているベルトプライを近接ベルトプライ25と、近接ベルトプライ25の次に近接しているベルトプライを次近接ベルトプライ24としたとき、これら近接ベルトプライ25、次近接ベルトプライ24内に埋設されているベルトコード27、26のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを前記順序で、即ちベルトコード27、26の順序で大とし、これにより、前述の引張力をタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aが比較的大であるベルトコード26が埋設された次近接ベルトプライ24に作用させるようにしたのである。
ここで、ベルト補強層36から離れた位置に配置された次近接ベルトプライ24のベルトコード26はタイヤ赤道Sに対して比較的大である傾斜角Aで傾斜しているため、ベルトコード26間のコーティングゴムが前記引張力により伸長されるようになり、これにより、曲げの中立軸の片側(引張側)に配置された次近接ベルトプライ24は引張力に対する抵抗機能が低下する。この結果、トレッド部15全体における周方向の面外曲げ剛性(タイヤ幅方向を折り目とする曲げに対する剛性)が低下し、これにより、空気入りタイヤ11の縦バネ定数が小さくなって、突起乗り越し時の突き上げ感や、粗い路面でのごつごつ感等が低減され、乗り心地性能が向上するとともに、接地長が長くなって接地面積が増加し操縦安定性が向上する。
そして、前記次近接ベルトプライ24内のベルトコード26はタイヤ赤道Sに対して45度以上の傾斜角Aで傾斜させることが好ましい。その理由は、該傾斜角Aを45度以上とすると、ベルトコード26が、どちらかと言えば周方向ではなく幅方向に沿って延在することになるため、次近接ベルトプライ24におけるベルトコード26間のコーティングゴムの伸長量が増大し、これにより、トレッド部15における周方向の面外曲げ剛性を確実に低下させることができるからである。但し、前記傾斜角Aが85度を超えると、面内せん断剛性が低下して、コーナリング時に発生する横力の値が充分ではなくなることがあるため、前記傾斜角Aは85度以下とすることが好ましい。
図3、4は、この発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、ベルト補強層40をベルト層41とカーカス層18との間でベルト層41に重なり合うよう配置するとともに、ベルト層41を、近接ベルトプライ42、次近接ベルトプライ43の他に、ベルト補強層40から最も離隔した離隔ベルトプライ44を加えた3枚のベルトプライから構成している。この結果、近接ベルトプライ42、次近接ベルトプライ43、離隔ベルトプライ44は半径方向外側に向かってこの順序で配置されることとなり、近接ベルトプライ42と次近接ベルトプライ43との境界近傍に曲げの中立軸が存在することになる。
この結果、トレッド部15が接地領域において円弧状から平坦となるよう変形したとき、ベルト補強層40、近接ベルトプライ42に周方向の引張力が、一方、次近接ベルトプライ43、離隔ベルトプライ44に周方向の圧縮力が発生する。また、この実施形態においては、前記離隔ベルトプライ44内に埋設されているベルトコード47のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを、次近接ベルトプライ43内に埋設されているベルトコード46のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aより大としている。このようにすれば、ベルト層41が3枚のベルトプライから構成されているときであっても、追加された離隔ベルトプライ44内のベルトコード47間に位置するコーティングゴムが容易に圧縮されるため、トレッド部15における周方向の面外曲げ剛性を充分に低下させることができる。
また、この実施形態においては、前述のようにベルト補強層40をベルト層41とカーカス層18との間に配置しているが、このような位置にベルト補強層40を設けた場合には、ベルト層41の半径方向内側に配置されたベルト補強層40が高速走行時におけるトレッド部15の半径方向外側への径成長を抑えることでき、これにより、ベルト補強層40をベルト層41の半径方向外側に配置するのと同等の高速走行時における操縦安定性を確保することができる。
また、この発明においては、前記離隔ベルトプライ44内に埋設されているベルトコード47のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを、次近接ベルトプライ43内に埋設されているベルトコード46のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aと同一としてもよい。この場合には、コード傾斜角が同一のベルトプライを次近接ベルトプライ43、離隔ベルトプライ44として用いることができるため、空気入りタイヤ11の製造が容易となり、コストを低減させることができる。なお、他の構成、作用は前記実施形態1と同様である。
次に、試験例1について説明する。この試験に当たっては、次近接、近接ベルトプライ内のベルトコードの傾斜角Aがそれぞれ右上がり40度、左上がり40度で、ベルト補強層内の補強コードの傾斜角が0度である図1、2に示すような従来タイヤ1と、次近接、近接ベルトプライ内のベルトコードの傾斜角Aがそれぞれ右上がり60度、左上がり20度で、他は従来タイヤ1と同様である実施タイヤ1と、次近接、近接ベルトプライ内のベルトコードの傾斜角Aがそれぞれ右上がり20度、左上がり60度で、他は従来タイヤ1と同様である比較タイヤ1とを準備した。
ここで、前述の各タイヤは高性能乗用車用タイヤで、サイズが245/55R17であり、また、各タイヤのカーカス層は、タイヤ赤道Sに対して90度で交差するナイロンコードが埋設された2枚のカーカスプライから構成した。また、前記各タイヤのベルトプライ内には直径が 0.3mmのスチールフィラメントを3本撚り合わせて構成したベルトコードを打ち込み間隔(隣接するベルトコードの中心間距離) 1.2mmで埋設し、一方、各タイヤのベルト補強層内には芳香族ポリアミドのフィラメントを撚った直径が 0.7mmの補強コードを打ち込み間隔 1.0mmで埋設した。
次に、前記各タイヤに 220kPaの内圧を充填した後、トレッド部外表面に塗料を塗布し、該塗料が乾燥する前に6kNの荷重を負荷しながら白い紙に押し付けて接地形状を紙に転写した。その後、各タイヤの接地形状におけるタイヤ赤道方向の最大長(接地長)を測定した。その結果は、従来タイヤ1では 135mmであったが、実施タイヤ1では、周方向の面外曲げ剛性が低下したことから、 142mmまで増加していた。なお、比較タイヤ1では、面外曲げ剛性が増加したため、 125mmに減少していた。
次に、前記各タイヤを高性能乗用車に装着した後、最高時速 200kmでドライ路面のサーキットを走行させ、熟練したテストドライバーによって操縦安定性の評価を行った。その評価を満点を 100点として点数で表すと、従来タイヤ1、比較タイヤ1ではそれぞれ70点、60点であったが、実施タイヤ1では80点と操縦安定性が向上していた。これは、前述のように接地長が増加して接地面積が拡大したためと考えられる。
次に、予めテストコースに準備したでこぼこ道、高速道路のつなぎ目を前述と同一の乗用車により通過し、熟練したテストドライバーによって振動乗り心地性の評価を行った。その評価を10段階で表すと、従来タイヤ1、比較タイヤ1ではそれぞれ6、5であったが、実施タイヤ1では7と振動乗り心地性についても向上していた。
次に、試験例2について説明する。この試験に当たっては、ベルト補強層内の補強コードの傾斜角が0度で、近接、次近接、離隔ベルトプライ内のベルトコードの傾斜角Aがそれぞれ右上がり50度、左上がり50度、右上がり50度である図3、4に示すような従来タイヤ2と、近接、次近接、離隔ベルトプライ内のベルトコードの傾斜角Aがそれぞれ右上がり30度、左上がり50度、右上がり70度で、他は従来タイヤ2と同様である実施タイヤ2と、近接、次近接、離隔ベルトプライ内のベルトコードの傾斜角Aがそれぞれ右上がり50度、左上がり70度、右上がり70度で、他は従来タイヤ2と同様である実施タイヤ3と、近接、次近接、離隔ベルトプライ内のベルトコードの傾斜角Aがそれぞれ右上がり70度、左上がり50度、右上がり30度で、他は従来タイヤ2と同様である比較タイヤ2とを準備した。
ここで、前述の各タイヤは高性能乗用車用タイヤで、サイズが245/55R17であり、また、各タイヤのカーカス層は、タイヤ赤道Sに対して90度で交差するナイロンコードが埋設された2枚のカーカスプライから構成した。また、前記各タイヤのベルトプライ内には直径が0.15mmのスチールフィラメントを3本撚り合わせて構成したベルトコードを打ち込み間隔 1.0mmで埋設し、一方、各タイヤのベルト補強層内には芳香族ポリアミドのフィラメントを撚った直径が 0.7mmの補強コードを打ち込み間隔 1.0mmで埋設した。
次に、前記各タイヤに 220kPaの内圧を充填した後、トレッド部外表面に塗料を塗布し、該塗料が乾燥する前に6kNの荷重を負荷しながら白い紙に押し付けて接地形状を紙に転写した。その後、各タイヤの接地形状におけるタイヤ赤道方向の最大長を測定した。その結果は、従来タイヤ2では 132mmであったが、実施タイヤ1、2では、周方向の面外曲げ剛性が低下したことから、それぞれ139、145mmまで増加していた。なお、比較タイヤ2では、面外曲げ剛性が増加したため、 125mmに減少していた。
次に、前記各タイヤを高性能乗用車に装着した後、最高時速 200kmでドライ路面のサーキットを走行させ、熟練したテストドライバーによって操縦安定性の評価を行った。その評価を満点を 100点として点数で表すと、従来タイヤ2、比較タイヤ2ではそれぞれ70点、60点であったが、実施タイヤ2、3ではそれぞれ80点、75点と操縦安定性が向上していた。これは、前述のように接地長が増加して接地面積が拡大したためと考えられる。なお、実施タイヤ3の評価が実施タイヤ2より低いのは、ベルトコードの平均傾斜角Aが実施タイヤ2のものより大であるため、ベルト層のせん断剛性が実施タイヤ2より小さくなったためと思われる。
次に、予めテストコースに準備したでこぼこ道、高速道路のつなぎ目を前述と同一の乗用車により通過し、熟練したテストドライバーによって振動乗り心地性の評価を行った。その評価を10段階で表すと、従来タイヤ2、比較タイヤ2ではそれぞれ6、5であったが、実施タイヤ2、3ではそれぞれ7、8と振動乗り心地性についても向上していた。
この発明は、トレッド部にベルト層と重なり合うベルト補強層を配置した空気入りタイヤの産業分野に適用できる。
この発明の実施形態1を示す子午線断面図である。 そのトレッド部の一部破断平面図である。 この発明の実施形態2を示す子午線断面図である。 そのトレッド部の一部破断平面図である。
符号の説明
11…空気入りタイヤ 12…ビードコア
18…カーカス層 23…ベルト層
24…次近接ベルトプライ 25…近接ベルトプライ
26、27…ベルトコード 31…トレッド
36…ベルト補強層 44…離隔ベルトプライ
S…タイヤ赤道 A…傾斜角

Claims (6)

  1. 幅方向両端部がビードコアの回りに折り返されトロイダル状に延びるカーカス層と、カーカス層の半径方向外側に配置され、タイヤ赤道Sに対して逆方向に傾斜している非伸張性のベルトコードが内部に埋設された少なくとも2枚のベルトプライからなるベルト層と、該ベルト層の半径方向外側に配置されたトレッドと、前記ベルト層に重なり合うよう配置され、内部にタイヤ赤道Sに実質上平行に延びた非伸張性の補強コードが埋設されているベルト補強層とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記ベルトプライのうち、ベルト補強層に最も近接しているベルトプライを近接ベルトプライと、次に近接しているベルトプライを次近接ベルトプライとしたとき、これら近接ベルトプライ、次近接ベルトプライ内に埋設されているベルトコードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを前記順序で大としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記ベルト層を3枚のベルトプライから構成するとともに、ベルト補強層から最も離隔したベルトプライを離隔ベルトプライとしたとき、該離隔ベルトプライ内に埋設されているベルトコードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを次近接ベルトプライ内に埋設されているベルトコードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aより大とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ベルト層を3枚のベルトプライから構成するとともに、ベルト補強層から最も離隔したベルトプライを離隔ベルトプライとしたとき、該離隔ベルトプライ内に埋設されているベルトコードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを次近接ベルトプライ内に埋設されているベルトコードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aと同一とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記次近接ベルトプライ内に埋設されているベルトコードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを45度以上とした請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記ベルト補強層をベルト層とカーカス層との間に配置した請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記ベルト補強層は、補強コードを1本または少数本平行に並べてゴム被覆したリボン状体を螺旋状に巻き付けることで成形した請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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