JP2008536899A - ジチオカルバメートの光分解によるアルコキシアミンの製造方法 - Google Patents
ジチオカルバメートの光分解によるアルコキシアミンの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】【解決手段】ニトロオキシドとジチオカルバメートとから光分解反応によってアルコキシアミンを製造する新規な方法。本発明方法金属を含む廃液を生じず、アルコキシアミンの公知の合成方法より低温度でバッチまたは連続モードで実行できる。
Description
本発明はジチオカルバメートタイプの有機化合物とニトロオキシドとの間の光化学反応によってアルコキシアミンを製造する方法に関するものである。
本発明方法は特にヒドロキシルアミンN-(tert-ブチル)-N-(1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル)-O-(2-カルボキシルプロプ(carboxyprop)-2-イル)アルコキシアミンの合成に適している。
本発明方法は特にヒドロキシルアミンN-(tert-ブチル)-N-(1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル)-O-(2-カルボキシルプロプ(carboxyprop)-2-イル)アルコキシアミンの合成に適している。
本発明方法で製造されたアルコキシアミンはポリマー材料またはポリマー添加剤(例えば分散剤、レオロジ改質剤、乳化剤、衝撃添加剤)の合成で使用できる。すなわち、プラスチック、エラストマー、ペイント、接着剤、化粧品、紙、水性結合剤(例えばセメントまたはブラスター)、セラミック、ビチューメン、滑剤、石油掘削、乳化、封止(活性成分の抑制成長)等の分野で使用できる。
アルコキシアミンは種々の方法で合成できる。例えば下記文献には現在の合成方法がまとめられている。
A. Studer in Chem. Soc. Rev., 2004, 33, 267-273
A. Studer in Chem. Soc. Rev., 2004, 33, 267-273
現在最も一般的に用いられている方法はニトロオキシドによるラジカルトラッピング法である。このラジカルは一般に活性化ハロゲン化物と銅錯体から作るか、C-H結合を有する化合物に過酸化物を熱反応させて作るか、下記文献に記載のようにアゾ化合物の光分解によって作られる。
米国特許第 4,581,429号明細書
これらの方法は実施が難しい精製階段を必要とし、金属を含む(または含まない)廃液を多量に生じるか、シリカクロマトグラフのような産業的に大量生産不可能なステップを必要とする。
ジチオカルバメートタイプの化合物の光分解も公知である。例えば下記文献では光重合の開始剤として光分解反応を使用している。
T. Otsu et al. in Makromol. Chem., Rapid Commun. 1982, 3, 133-140
T. Otsu et al. in Makromol. Chem., Rapid Commun. 1982, 3, 133-140
しかし、アルコキシアミンの合成のためにニトロオキシドの存在下で使用したものはない。
本発明の目的は、ジチオカルバメート-タイプの有機化合物の光分解によってアルコキシアミンを製造することによって上記の欠点を解決した工業的なプロセスを提供することにある。
本発明は、下記の反応式に従ってジチオカルバメーとニトロオキシドとを光分解反応させて式:R1ONR2R3のアルコキシアミンを作り、得られたアルコキシアミンを精製することを特徴とする、アルコキシアミンの製造方法にある:
(ここで、
R1は、ヘテロ原子、特にOおよびNまたはアルカリ金属、特にNaおよびKを含んでいてもよい、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の炭化水素基、
R2とR3は、ヘテロ原子、特にO、N、S、P、Siを含んでいてもよい、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の1〜30の炭素原子を有する炭化水素基で、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R2とR3が互い接続して窒素原子を含む環状構造を形成してもよい、
R4とR5は、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の1〜18の炭素原子を有する炭化水素基で、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R4とR5が互い接続して窒素原子を含む環状構造を形成してもよい)
R1は、ヘテロ原子、特にOおよびNまたはアルカリ金属、特にNaおよびKを含んでいてもよい、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の炭化水素基、
R2とR3は、ヘテロ原子、特にO、N、S、P、Siを含んでいてもよい、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の1〜30の炭素原子を有する炭化水素基で、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R2とR3が互い接続して窒素原子を含む環状構造を形成してもよい、
R4とR5は、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の1〜18の炭素原子を有する炭化水素基で、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R4とR5が互い接続して窒素原子を含む環状構造を形成してもよい)
本発明方法は特に、下記文献に記載のニトロオキシド N-tert- チル-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル・ニトロオキシドから熱に敏感なアルコキシアミンを合成するのに適している。
欧州特許第EP 1 349 862号公報
さらに、本発明方法は下記文献に記載の下記式(I)のアルコキシアミン N-(tert-ブチル)-N-(1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル)-O-(2-カルボキシルプロプ-2-イル)ヒドロキシルアミンの合成に特に適している:
本発明方法はさらに、ポリマー上に存在するジチオカルバメート官能基をアルコキシアミン官能基に変換するのにも応用できる。
本発明方法はニトロオキシドの存在下でジチオカルバメートタイプの化合物を光分解することに本質がある。
上記のジチオカルバメートタイプの有機化合物はいくつかの方法で合成できる。例えば、下記文献に記載のように、臭素化誘導体とナトリウムジアルキルジチオカルバメートと間の求核置換反応から作ることができる。
G. Nachmias in Annales de chimie, 1952, volume 7, p.584-631
G. Nachmias in Annales de chimie, 1952, volume 7, p.584-631
下記文献に記載のハロホルム合成(クロロホルム+アセトン+ジアルキルジチオカルバミド酸ナトリウム)もある。
米国特許公開第US 2003/0120101号公報
さらには下記文献に記載のアゾ化合物おとジアルキルチウラムジスルフィドとの反応もある。
Zard et al. in Tetrahedron Letters, 1999, 40, 277-280
Zard et al. in Tetrahedron Letters, 1999, 40, 277-280
ジチオカルバメート/ニトロオキシドのモル比は1〜2の間にあるのが好ましい。光分解は例えば200〜600ナノメートルの波長を有する電磁波を出す一つまたは複数の水銀蒸気ランプを用いて実行できる。この反応は一般に0〜60℃の温度で溶剤の存在下で実行される。溶剤は使用する官能基に応じて選ばれるが、一般に使われる溶剤としては下記が挙げられる: 水、メタノールエチルアルコール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノールまたはエチレングリコールのようなアルコール、THFのようなエーテル、酢酸エチルのようなエステル、アセトニトリルのようなニトリル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンまたはtert-ブチルベンゼンのような芳香族化合物、シクロヘキサンのようなアルカンまたは四塩化炭素のような塩素化溶剤または上記溶剤の複数の混合物。
光分解反応は一般に不活性雰囲気(窒素、アルゴン)下で、激しく撹拌しながら、ディフューザまたは再循環ポンプを用いて窒素をバブリングしながら行う。
得られたアルコキシアミンは当業者に公知の方法で精製する。
得られたアルコキシアミンは当業者に公知の方法で精製する。
チウラムジスルフィド・タイプの副生成物は種々の方法(例えば沈降または選択的液体抽出)によってアルコキシアミンから分離できる。必要な場合には、チウラム・ジスルフィド・タイプの副生成物を上記非特許文献5(Zard et al. in Tetrahedron Letters, 1999, 40, 277-280)に記載の下記の反応式に従ってアゾ化合物との熱反応によってジチオカルバメートへ再変換することもできる。
本発明の方法はバッチまたは連続モードで実行できる。
ジチオカルバメート/ニトロオキシドを化学量論量の条件近にして反応を行うと、本発明方法のアルコキシアミンの収率が特に高くなる。さらに、本発明方法は低温で起こるという追加の効果もある。それによって、例えば、N-tert-ブチル-1- ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル・ニトロオキシドのようなニトロオキシドから熱に敏感なアルコキシアミンを特定の予防措置をせずに容易に合成することができ、特に、アルコキシアミン N-(tert-ブチル)-N-(1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル)-O-(2-カルボキシルプロプ-2-イル)ヒドロキシルアミンを合成することもできる。
ジチオカルバメート/ニトロオキシドを化学量論量の条件近にして反応を行うと、本発明方法のアルコキシアミンの収率が特に高くなる。さらに、本発明方法は低温で起こるという追加の効果もある。それによって、例えば、N-tert-ブチル-1- ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル・ニトロオキシドのようなニトロオキシドから熱に敏感なアルコキシアミンを特定の予防措置をせずに容易に合成することができ、特に、アルコキシアミン N-(tert-ブチル)-N-(1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル)-O-(2-カルボキシルプロプ-2-イル)ヒドロキシルアミンを合成することもできる。
さらに、光分解反応完了後のアルコキシアミンの精製は極めて簡単で、金属を含む廃液は発生せず、従って、環境保全の観点からも否定できない効果がある。
本発明方法に従って製造されたアルコキシアミンは循環タイプのラジカル重合の重合開始剤またはラジカル反応の開始剤として使用でき、特に、制御されたラジカル重合で使用できる。
本発明のさらに他の対象は、少なくとも一つのラジカル重合可能なモノマーの重合階段を含むポリマー材料の製造方法において、上記の重合段階を上記の方法で得られたアルコキシアミンの存在下で行うことを特徴とする方法にある。
100mlのガラスの丸底フラスコ中に6.68gの2-ブロムイソ酪酸(0.04モル)と、60mlの水とを導入する。反応媒体中にNa2CO3を添加してpH =9まで中和する。次に、9gの(0.04モル)のジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物を加えた後、反応媒体を室温で15時間撹拌する。その後、反応液に33%塩酸を添加してpH =2に酸性化する。白い沈殿が生じる。この沈殿を回収し、濾過し、減圧下で乾燥すると、3.1gのS-(1-メチル-1-カルボキシエチル)-N,N-ジエチルジチオカルバメートが得られる(収率=33%)。1H NMRで特徴付けた結果は下記の通り。
1H NMR(CDCl3−300MHz):
1.25-1.30 ppm(6H、m);1.78 ppm(6H、s);3.5-4 ppm(4H、m)。
一方、N-tert-ブチル-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル・ニトロオキシド(SG1)は特許文献2(欧州特許第EP 1 349 862号公報)に基の方法で製造した。
1H NMR(CDCl3−300MHz):
1.25-1.30 ppm(6H、m);1.78 ppm(6H、s);3.5-4 ppm(4H、m)。
一方、N-tert-ブチル-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル・ニトロオキシド(SG1)は特許文献2(欧州特許第EP 1 349 862号公報)に基の方法で製造した。
上記で製造した4.8g (20.4mmol;1.3の当量)のジチオカルバメートと、4.62g の上記SG1(15.7mmol;1の当量)と、350mlのエチルアルコールとを光化学反応装置中に導入する。この反応装置を窒素で脱気し、ランプを点灯し、反応混合物の色が消えるまで、反応を20℃で4時間実行した。使用した光化学反応装置はジャケット付きの石英ランプ用ホルダーを備た350mlのガラス製反応装置である。使用したランプは150Wの中圧力水銀蒸気ランプで、254〜350ナノメートルの光を出す(HeraeusのTQ150)。
得られた反応液を2ml の33%塩酸を含む200mlの水中へ注いだ。淡黄色の沈降物を濾過し、得られた粉末をpH =9の炭酸ナトリウムを含む200mlの水に採る。
黄色固形物の形で懸濁状態で残ったテトラエチルチウラムジスルフィドは濾過で除去し、濾過液に33% HClを添加してpH =2まで酸性化した。形成された白い沈殿を濾過し、水で洗浄し、減圧下に乾燥すると、4.5gのアルコキシアミン(I)が得られる(収率= 75%)。生成物を1H、13Cお31P NMRで特徴付けた結果は下記文献に記載のデータと一致した。
国際特許公開第WO 2004/014926号公報
黄色固形物の形で懸濁状態で残ったテトラエチルチウラムジスルフィドは濾過で除去し、濾過液に33% HClを添加してpH =2まで酸性化した。形成された白い沈殿を濾過し、水で洗浄し、減圧下に乾燥すると、4.5gのアルコキシアミン(I)が得られる(収率= 75%)。生成物を1H、13Cお31P NMRで特徴付けた結果は下記文献に記載のデータと一致した。
実施例2
実施例1の手順を繰り返したが、ジチオカルバメート/ニトロオキシドの比を1.3ではなく1.5に代えた。すなわち6.93g(23.5mmol)のジチオカルバメートと、4.62gのSG1(15.7mmol)とを用いた。
回収されたアルコキシアミン(I)は5.4g、すなわち90%の収率であった。
実施例1の手順を繰り返したが、ジチオカルバメート/ニトロオキシドの比を1.3ではなく1.5に代えた。すなわち6.93g(23.5mmol)のジチオカルバメートと、4.62gのSG1(15.7mmol)とを用いた。
回収されたアルコキシアミン(I)は5.4g、すなわち90%の収率であった。
Claims (6)
- 下記の反応式に従ってジチオカルバメーとニトロオキシドとを光分解反応させて式:R1ONR2R3のアルコキシアミンを作り、得られたアルコキシアミンを精製することを特徴とする、アルコキシアミンの製造方法:
(ここで、
R1は、ヘテロ原子、特にOおよびNまたはアルカリ金属、特にNaおよびKを含んでいてもよい、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の炭化水素基、
R2とR3は、ヘテロ原子、特にO、N、S、P、Siを含んでいてもよい、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の1〜30の炭素原子を有する炭化水素基で、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R2とR3が互い接続して窒素原子を含む環状構造を形成してもよい、
R4とR5は、直鎖または分岐鎖を有する、環式または非環式の、芳香族または非芳香族の1〜18の炭素原子を有する炭化水素基で、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R4とR5が互い接続して窒素原子を含む環状構造を形成してもよい) - 上記の光分解反応を200〜600ナノメートルの間の波長で行う請求項1に記載の方法。
- 水、メタノール、エチルアルコール、プロパノール、イソプロパノール、tert- ブタノールまたはエチレングリコールのようなアルコール、THFのようなエーテル、酢酸エチルのようなエステル、アセトニトリルのようなニトリル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンまたはtert-ブチルベンゼンのような芳香族化合物、シクロヘキサンのようなアルカン、四塩化炭素のような塩素化溶剤から選択される溶剤の単独または混合物の存在下で、0〜60℃の温度で上記光分解反応を行う請求項1または2に記載の方法。
- 上記光分解反応を不活性雰囲気(窒素、アルゴン)下で激しく撹拌しながら行う請求項1化のいずれか一項に方法。
- N-tert-ブチル-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル・ニトロオキシドを使用する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- N-tert-ブチル-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル・ニトロオキシドと、S-(1-メチル-1-カルボキシエチル)-N,N-ジエチルジチオカルバメートまたはS-(1-メチル-1-カルボキシエチル)-N,N-ジメチルジチオカルバメートとから、アルコキシアミン N-(tert-ブチル)-N-(1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル)-O-(2-カルボキシルプロプ-2-イル)ヒドロキシルアミンを製造する請求項5に記載の方法。
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