JP2005179208A - ω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩の製造法 - Google Patents
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従来、ω−メルカプトアルキルピリジン類の製造法としては、例えば、2−ビニルピリジンに硫化水素を反応させて、2−(2−メルカプトエチル)ピリジンを製造する方法が公知である(非特許文献1及び非特許文献2を参照)。
該方法では、有機溶媒に対するω−メルカプトアルキルピリジン類の鉱酸塩や有機酸塩の溶解度が大きく、析出した結晶の濾過や、濾過後の結晶の洗浄を行う際に、濾洗液へのロスを招いてω−メルカプトアルキルピリジン類の鉱酸塩や有機酸塩の収量が著しく低下するという問題があった。
さらに、ω−メルカプトアルキルピリジン類の鉱酸塩や有機酸塩を濾過するための設備や、濾過後の湿潤結晶を乾燥させるための設備が必要になるという問題があった。
本発明の製造法で使用するω−メルカプトアルキルピリジン類(I)としては、例えば下式(III)
で表されるピリジン類と硫化水素とを上記ピリジン類とは異なる第三級アミンの存在下に反応させて得られたものが挙げられる。
上記の反応により得られた反応液を、例えば疎水性有機溶媒の存在下に水洗して得たω−メルカプトアルキルピリジン類を用いてもよく、上記反応液を蒸留することによって得られたω−メルカプトアルキルピリジン類を用いてもよい。また、ピリジン類(III)とチオ尿素との反応液を、さらにアルカリ等で分解して得たω−メルカプトアルキルピリジン類を含む反応液を用いてもよい。勿論、該反応液を蒸留することによって得たω−メルカプトアルキルピリジン類を用いてもよい。
ピリジン類(III)にハイドロキノン類やカテコール類等の重合禁止剤が含まれる場合は、反応に使用する前にピリジン類中の重合禁止剤を蒸留等の手段を用いて除去することが好ましい。
本発明の製造法において、好ましく用いられる第三級アミンは、下記(A)〜(C)からなる群から選ばれる一種以上のアミンである。
[該含窒素芳香族複素環化合物は、複素環を構成する炭素原子に炭素数1〜8のアルキル基が結合していてもよく、さらに、該アルキル基中の水素原子はアミノ基、N−アルキルアミノ基(但し、該アルキルは炭素数が1〜8である)、N,N−ジアルキルアミノ基(但し、各アルキルはそれぞれ独立に炭素数が1〜8である)又は水酸基で置換されていてもよい。]
[式(1)におけるR3〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表す。]
[式(2)におけるR6〜R9は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表し、pは1〜3の整数を表す。]
[式(5)及び(6)におけるR13〜R15は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表す。また、φ1〜φ3は、それぞれ独立に芳香族炭化水素基を表す。]
上記の環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基やシクロヘキシル基等の炭素数4〜12の環状アルキル基が挙げられる。
また、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基やベンジル基等の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が挙げられる。
式(1)で表される第三級アミンの具体例としては、トリメチルアミンやトリエチルアミン等が挙げられる。
式(2)で表される第三級アミンの具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等が挙げられる。
式(3)で表される第三級アミンとしては、N,N−ジエチルエタノールアミン等が例示される。
また、式(4)で表される第三級アミンとしては、N−メチルジエタノールアミン等が例示される。
第三級アミンとしては、ω−メルカプトアルキルピリジン類(II)鉱酸塩の収率の観点からは、前記(A)及び(B)の第三級アミンが好ましく、(A)の式(1)、(2)、(5)及び(6)で表される第三級アミン並びに(B)の脂環式第三級アミンからなる群から選ばれる一種以上の第三級アミンがより好ましく、前記式(1)及び(2)で表される第三級アミンが特に好ましい。
硫化水素の使用量は、ピリジン類(III)1モルに対して、通常は1〜30モルの範囲である。反応容器として、密封容器を用いた場合は、ピリジン類(III)1モルに対して、通常は1〜10モルの範囲である。
具体的には、(ア)第三級アミンとピリジン類(III)と必要に応じて反応溶媒を含む混合物中に硫化水素を導入する方法;(イ)第三級アミンと反応溶媒の混合物中に又は第三級アミン中に硫化水素を導入後、ピリジン類(III)を導入する方法;(ウ)反応容器内の硫化水素中に、第三級アミンを導入し、次いでピリジン類(III)を導入する方法;(エ)反応容器内の硫化水素中に、第三級アミンとピリジン類(III)を順次又は同時に導入する方法(オ)反応容器に、第三級アミンとピリジン類(III)と硫化水素を同時に導入する方法等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、上記の(イ)と(ウ)の方法の如く、硫化水素が予め存在する反応容器又は反応槽にピリジン類(III)を導入する方法が、下式(V)
硫化水素導入後のゲージ圧(大気圧に対する差圧)は、好ましくは0.1〜1.5MPaであり、より好ましくは0.2〜1.0MPaである。反応容器内での硫化水素の形態は気体状態でもよいし、液体状態でもよい。また、加圧の際に窒素やヘリウム等の不活性ガスを用いて圧力調整してもよい。さらに、反応終了後に残存した硫化水素は、別に設置した反応容器に移しておき、次回の反応に再使用してもよい。
水洗して得られる疎水性有機溶媒を含むω−メルカプトアルキルピリジン類(I)は、そのまま、例えば鉱酸で中和後、ω−メルカプトアルキルピリジン類(I)の鉱酸塩の水溶液として、ビスフェノールA製造用のキレート触媒の添加剤等として用いられる。
ピリジン類と硫化水素との反応で得られた反応混合物を用いる場合には、該反応混合物を溶解する疎水性有機溶媒として、例えば、炭素数5以上の脂肪族ケトン(メチルイソブチルケトン等)、脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)、脂環式炭化水素(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(トルエン、エチルベンゼン、キシレンやシメン等)が用いられる。
また、反応溶媒として用いる疎水性有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)や芳香族炭化水素類(トルエン、エチルベンゼン、キシレン、シメン等)が用いられる。
上記の疎水性有機溶媒としては、上述した2種以上の溶媒の混合物を使用してもよい。
疎水性有機溶媒の使用量が0.5重量倍未満では水洗時の分液性が悪くなり、且つω−メルカプトアルキルピリジン類(II)の得量が低下する傾向がある。一方、疎水性有機溶媒の使用量が5重量倍を超えても、ω−メルカプトアルキルピリジン類の得量が向上することはない。
水洗時の水量が2重量倍を超えると、ω−メルカプトアルキルピリジン類(I)の収率が低下する傾向がある。また、水洗時の水量が1重量倍未満であると、疎水性有機溶媒と水の分液性が悪化する傾向があり、操作性の観点から好ましくない。
水洗を行わない場合には、反応混合物中の着色物が除去できず、水洗の回数が増えるとω−メルカプトアルキルピリジン類(I)の得量が低下する傾向がある。
上記の疏水性有機溶媒としては、前述したω−メルカプトアルキルピリジン類(I)の製造で用いられる溶媒と同じである。
本発明の製造法において用いられる鉱酸類としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸や燐酸等が挙げられる。該鉱酸類のうち、塩酸が好ましい。
ω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩(II)の水溶液を得るための水量は、ω−メルカプトアルキルピリジン類(I)100重量部に対して、通常は50〜500重量部の範囲であり、好ましくは100〜200重量部の範囲である。
水量が、ω−メルカプトアルキルピリジン類(I)100重量部に対して、50重量部未満では、ω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩(II)の結晶が析出しやすくなる傾向があり、好ましくない。
使用される鉱酸類の形態は、特に限定されず、水等の溶媒で希釈して溶液として用いてもよい。
4−(2−メルカプトエチル)ピリジンの収率は、反応終了後の溶液をアセトニトリル/水の混合液で希釈して、下記条件の液体クロマトグラフを用いて、面積百分率法によって求めた。
<面積百分率法>
カラム:L−column ODS 4.6mmφ×15cm
移動相:2.5mmol/Lの1−ペンタンスルホン酸ナトリウム塩を含有するアセトニトリル/水
検出:UV254nm
オートクレーブ内を硫化水素で置換した後、約0.5MPa(ゲージ圧5kg/cm2)に保ちながら、硫化水素545g(16モル)を導入した。
次いで、4−ビニルピリジン421.6g(4モル)とN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン23.4g(0.2モル)の混合溶液を攪拌下に5℃で3時間かけて滴下した。滴下終了後、3℃で1時間攪拌した後、オートクレーブ内の圧力を徐々に大気圧に戻して過剰の硫化水素を除去し、4−(2−メルカプトエチル)ピリジンの反応液の577gを得た。
次いで、窒素雰囲気下で反応液の全量を別の反応容器に移し、除々に30℃まで昇温後、同温度でトルエン2020gを加えた後、水380gのイオン交換水で3回洗浄した。 得られた洗浄混合物を濾過して、4−(2−メルカプトエチル)ピリジンのトルエン溶液2590gを得た。この溶液を分析した結果、4−(2−メルカプトエチル)ピリジンの含量は20.2%であった。
反応容器に参考例1で得た4−(2−メルカプトエチル)ピリジンのトルエン溶液400gを窒素雰囲気下で加え、さらにイオン交換水72gを加えた。次に、25〜30℃の温度で攪拌しながら、同温度で36%塩酸59.2gを約2時間で滴下し、滴下終了後、25〜30℃で約1時間保温した。その後、トルエン層を水層から分離、除去して、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩の水溶液219gを得た。
この塩酸塩水溶液のpHを測定した。また、塩酸塩水溶液中の上記塩酸塩の含量を分析した。pHは1.0であり、前記塩酸塩の含量は4−(2−メルカプトエチル)ピリジン換算で36.8重量%であった。塩酸塩化反応の収率は99.7%であった。
36%塩酸63.0gを用いる以外は実施例1と同様の操作を行って、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩の水溶液223gを得た。
この塩酸塩水溶液のpHを測定した。また、塩酸塩水溶液中の上記塩酸塩の含量を分析した。pHは0.5であり、塩酸塩の含量は4−(2−メルカプトエチル)ピリジン換算で36.1重量%であった。塩酸塩化反応の収率は99.8%であった。
36%塩酸69.3gを用いる以外は実施例1と同様の操作を行って、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩の水溶液226gを得た。
この塩酸塩水溶液のpHを測定した。また、塩酸塩水溶液中の上記塩酸塩の含量を分析した。pHは0.1であり、塩酸塩の含量は4−(2−メルカプトエチル)ピリジン換算で35.8重量%であった。塩酸塩化反応の収率は100%であった。
36%塩酸21.8gを用いる以外は実施例1と同様の操作を行って、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩の水溶液124gを得た。
この塩酸塩水溶液のpHを測定した。また、塩酸塩水溶液中の上記塩酸塩の含量を分析した。pHは4であり、塩酸塩の含量は4−(2−メルカプトエチル)ピリジン換算で23.5重量%であった。塩酸塩化反応の収率は34.6%であった。
36%塩酸56.7gを用いる以外は実施例1と同様の操作を行って、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩の水溶液210gを得た。
この塩酸塩水溶液のpHを測定した。また、塩酸塩水溶液中の上記塩酸塩の含量を分析した。pHは2.9であり、塩酸塩の含量は4−(2−メルカプトエチル)ピリジン換算で37.0重量%であった。塩酸塩化反応の収率は96.2%であった。
Claims (8)
- 式(III)で表されるピリジン類とは異なる第三級アミンが、下記(A)〜(C)からなる群から選ばれる少なくとも一種のアミンである請求項2に記載のω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩の製造法。
(A):下式(a)で表わされる第三級アミン
[式(a)におけるR21〜R23は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基、炭素数4〜12の環状アルキル基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表す。該鎖状アルキル基、該環状アルキル基及び該芳香族炭化水素基中の水素原子は、アミノ基、炭素数1〜8のN−アルキルアミノ基、炭素数1〜8のN,N−ジアルキルアミノ基及び水酸基から選ばれる一つ以上の基で置換されていてもよい。]
(B):下式(b)で表わされる脂環式第三級アミン
[式(b)における複素環中の窒素原子に結合するR24は、炭素数1〜8の鎖状アルキル基、炭素数4〜12の環状アルキル基又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表し、該鎖状アルキル基、該環状アルキル基及び該芳香族炭化水素基中の水素原子は、それぞれ、アミノ基、N−アルキルアミノ基(但し、該アルキルは炭素数が1〜8個である)、N,N−ジアルキルアミノ基(但し、各アルキルはそれぞれ独立に炭素数が1〜8個である)又は水酸基で置換されていてもよい。また、式(b)における複素環中の一部の−CH2−は、−NH−又は−O−で置換されていてもよい。mは0〜8の整数を表し、mが0であるときは単結合を表す。]
(C):含窒素芳香族複素環化合物
[含窒素芳香族複素環化合物は、複素環を構成する炭素原子に炭素数1〜8のアルキル基が結合していてもよく、該アルキル基中の水素原子はアミノ基、N−アルキルアミノ基(但し、該アルキルは炭素数が1〜8である)、炭素数1〜8のN,N−ジアルキルアミノ基(但し、各アルキルはそれぞれ独立に炭素数が1〜8である)又は水酸基で置換されていてもよい。] - 式(III)で表されるピリジン類が、4−ビニルピリジン及び/又は2−ビニルピリジンである請求項2又は3に記載のω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩の製造法。
- ピリジン類とは異なる第三級アミンが、下式(1)、(2)、(5)及び(6)で表されるアミン群から選ばれる一種以上のアミンである請求項2〜4のいずれかに記載のω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩の製造法。
[式(1)におけるR3〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表す。]
[式(2)におけるR6〜R9は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表し、pは1〜3の整数を表す。]
[式(5)及び(6)におけるR13〜R15は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の鎖状アルキル基又は炭素数4〜12の環状アルキル基を表す。また、φ1〜φ3は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基を表す。] - 疎水性有機溶媒が、次のa)〜d)群から選ばれる一つ以上の溶媒である請求項1〜5のいずれかに記載のω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩の製造法。
a)脂肪族炭化水素類
b)脂環式炭化水素類
c)芳香族炭化水素類
d)炭素数5以上の脂肪族ケトン - 式(I)で表されるω−メルカプトアルキルピリジン類と鉱酸類(z)とを、水の存在下に、疏水性有機溶媒の存在下又は非存在下、反応終了時のpHが1以下になるように反応させる請求項1〜6のいずれかに記載のω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩の製造法。
- 鉱酸類(z)が、塩酸、硫酸、硝酸及び燐酸から選ばれる一つ以上の酸である請求項1〜7のいずれかに記載のω−メルカプトアルキルピリジン類鉱酸塩の製造法。
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JPN6008064491, Zeitschrift fuer Chemie, 1961, Vol.1, p.19−21 * |
JPN6008064494, Journal of Industrial and Engineering Chemistry, 1952, Vol.44, p.1659−1662 * |
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