JP2008309997A - 位相差フィルム、それを用いた偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

位相差フィルム、それを用いた偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高温下における光学特性の変化を改良した位相差フィルム。
【解決手段】環状オレフィン樹脂を主成分とする位相差フィルムであって、下記一般式(1)で表わされる。
Figure 2008309997

【選択図】なし

Description

本発明は、位相差フィルム、それを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。より詳しくは、環状オレフィン樹脂を主成分とする位相差フィルムであって、位相差ムラが少なく、高温の環境に曝された際にも光学特性の変化が少ない延伸フィルムに関する。また、当該位相差フィルムを有する画像安定性に優れる偏光板及び液晶表示装置に関する。
液晶表示装置には、液晶セルの複屈折による位相差を補償するために位相差フィルムが広く用いられている。これまで、様々な構成の位相差フィルムが提案されてきたが、透明樹脂を延伸により配向させて得られる延伸フィルムが広く用いられてきた。当該延伸フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂などからなるフィルムが挙げられるが、特に耐熱性に優れ、吸湿性が低く、光弾性定数が小さい環状オレフィン樹脂からなるフィルムが近年注目を浴びている。
ところで、上記の如き樹脂フィルムはその性質上、延伸により位相差を発現する際に、温度に対する位相差発現感度が非常に敏感であり、延伸時に位相差ムラが大きく生じやすいという問題があった。
特許文献1には、この問題を解決するために、樹脂の分子量分布をブロードにして、成形性、延伸適性を改善するという方法が開示されている。
しかしながら、この様に成形、延伸して作製した位相差フィルムは、その位相差安定性が充分でなく、即ち高温下に長時間曝された際に、位相差が低下してしまうという問題があった。
高温域に長時間曝されることにより光学特性が変化すると、画像特性に影響を与えるという好ましくない現象が生じる。このような現象は、高分子フィルムを延伸することで光学特性を発現させるという製法上、高分子の緩和現象により、ある程度は避けられないことである。光弾性定数が小さい環状オレフィン樹脂は、ポリカーボネート等に比べ緩和による光学特性の変化が小さく、上記のような現象に対して優位性をもった材料ではあるが、液晶表示装置の画質に対する要求は年々厳しさを増しておりさらなる改良が求められている。
高温で使用しても表示特性の悪化(位相差の低下)が比較的小さい光学異方体として、特許文献2のようなフィルムも開示されているが、未だ高温域での安定性に欠けていた。特に、表示画面を斜めから観察した場合に表示品位が低下する問題が顕在化していた。
また特許文献3には、高温で延伸するなど延伸時の条件を最適化することにより位相差の安定性が向上する技術が開示されているが、充分な位相差を得るためには大きな延伸倍率が必要であり、また高温であるため工程への負荷が大きかった。
特許第2977274号公報 特開平8−278406号公報 特開2006−235085号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、環状オレフィン樹脂の優れた耐熱性、耐湿性等の特性を損なわずに優れた延伸適性を持たせ、高温下における光学特性の変化を改良した位相差フィルムであって、従来の設備で作製可能である位相差フィルムを提供することである。更には当該フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
本発明に係る上記課題は、下記の手段により解決される。
1.環状オレフィン樹脂を主成分とする位相差フィルムであって、下記一般式(1)で表わされる構造を有し、重量平均分子量(Mw)が200〜8,000である化合物を、荷重たわみ温度調整剤として、0.1〜30質量%含有することを特徴とする位相差フィルム。
Figure 2008309997
〔式中、l、mは0又は1以上の整数であり、nは0又は1である。X1はビニレン基又はエチレン基を表し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表し、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子又はケイ素原子を含む連結基を有していてもよい。〕
2.前記1に記載の位相差フィルムであって、下記関係式(I)及び(II)式を満たすことを特徴とする位相差フィルム。
関係式(I):40≦Re≦120
関係式(II):100≦Rth≦300
(但し、Re=(nx−ny)×d,Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
3.前記1又は2に記載の位相差フィルムを、少なくとも一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
4.前記3に記載の偏光板を、少なくとも視認側かバックライト側のどちらか一方に用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明の上記手段により、環状オレフィン樹脂の優れた耐熱性、耐湿性等の特性を損なわずに優れた延伸適性を持たせ、高温下における光学特性の変化を改良した位相差フィルムであって、従来の設備で作製可能である位相差フィルムを提供することができる。
更には当該フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。すなわち、環状オレフィン樹脂を主成分とする本発明の位相差フィルムは、高温高湿の長期に渡って光学特性が良好に保たれる偏光板(位相差板)として、液晶表示装置、有機EL表示装置に広く適用可能である。
本発明の位相差フィルムは、環状オレフィン樹脂を主成分とする位相差フィルムであって、前記一般式(1)で表わされる構造を有し、重量平均分子量(Mw)が200〜8,000である化合物を、荷重たわみ温度調整剤として、0.1〜30質量%含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1〜4に係る発明に共通する技術的特徴である。
以下、本発明、その構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態等について詳細な説明をする。なお、本明細書において、「位相差フィルム」を、適宜、「光学フィルム」とも称する。
(環状オレフィン樹脂)
本発明の位相差フィルムの主成分として用いる環状オレフィン樹脂は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するポリオレフィン樹脂であり、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するポリオレフィン樹脂が好ましい。
脂環式構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
本発明に使用される脂環式ポリオレフィン樹脂中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。脂環式ポリオレフィン樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると延伸ポリオレフィンフィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
環状オレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体又はそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体又はそれらの水素化物等を挙げることができる。
これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性基の種類としては、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物、ノルボルネン構造を有する単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体の水素添加物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の水素添加物、およびノルボルネン構造を有する単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体との付加共重合体の水素添加物は、これらの重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素添加触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を好ましくは90%以上水素添加することによって得ることができる。
ノルボルネン系樹脂の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系樹脂の繰り返し単位全体に対して90質量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの質量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる位相差フィルム(光学フィルム)を得ることができる。
本発明に用いる環状オレフィン樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常20,000〜150,000、好ましくは25,000〜100,000、より好ましくは30,000〜80,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度および成型加工性とが高度にバランスされ好適である。
環状オレフィン樹脂のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは130〜160℃、より好ましくは135〜150℃の範囲である。ガラス転移温度が130℃を下回ると高温下における耐久性が悪化し、160℃を上回るものは耐久性は向上するが通常の延伸加工が困難となる。
環状オレフィン樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は1.2〜3.5、好ましくは1.5〜3.0、さらに好ましくは1.8〜2.7である。この数値が3.5を超えると低分子成分が増すため緩和時間の短い成分が増加し、一見同じ面内リターデーションを有するフィルムであっても高温暴露時の緩和が短時間で大きくなってしまうことが推定される。一方1.2を下回るような分子量分布のものは樹脂の生産性の低下とコスト増につながりディスプレイ部材としては現実的でない。
本発明に用いる環状オレフィン樹脂は、光弾性係数の絶対値が10×10-12Pa-1以下であることが好ましく、7×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、4×10-12Pa-1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。環状オレフィン樹脂の光弾性係数が10×10-12Pa-1を超えると、延伸フィルムの面内リターデーションのバラツキが大きくなるおそれがある。
本発明において、環状オレフィン樹脂には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まないとは、環状オレフィン樹脂からなるフィルムへ粒子を添加しても、未添加状態からのヘイズの上昇巾が0.05%以下の範囲である量までは許容できることを意味する。特に、脂環式ポリオレフィン樹脂は、多くの有機粒子や無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた粒子を添加した環状オレフィン樹脂フィルムを延伸すると、空隙が発生しやすく、その結果として、ヘイズの著しい低下が生じるおそれがある。
本発明において、環状オレフィン樹脂に荷重たわみ温度調整剤を入れる事により、上述したように優れた延伸適性を持たせ、高温下における光学特性の変化を改良した位相差フィルムを得ることができる。
これは、樹脂のガラス転位温度Tg(℃)と、荷重たわみ温度Tt(℃)との差が大きくなる事により、低温においてもフィルムに無理な力がかかることなく延伸ができ、その結果、リターデーションのムラが大幅に低減され、またリターデーションの熱緩和特性も改良されると考えられる。
具体的には、TgとTtとの差が、Tg−Tt=5〜30(℃)であり、より好ましくは10〜30(℃)である。TgとTtとの差が5(℃)よりも小さくなると、延伸時にかかる応力にムラを生じやすくなり、結果、リターデーションムラの大きな位相差フィルムになってしまう。また、30(℃)を越えた場合には、リターデーションの熱緩和特性が悪くなってしまう。
〈一般式(1)で表される構造を有する化合物:荷重たわみ温度調整剤〉
本発明の位相差フィルムは、荷重たわみ温度調整剤として、耐熱性や環状オレフィン樹脂との相溶性の観点から、前記一般式(1)で表わされる構造を有する化合物を含有することを特徴とする。なお、「荷重たわみ温度調整剤」とは、樹脂のガラス転位温度(Tg)をあまり低下させずに荷重たわみ温度(Tt)を下げ、樹脂の優れた耐熱性を損なうことなく延伸適性を大幅に向上させ、更にはリターデーション値の長期保存性を付与する機能を有する化合物をいう。
当該一般式(1)において、l、mは0又は1以上の整数であり、nは0又は1である。X1はビニレン基又はエチレン基を表し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表し、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子又はケイ素原子を含む連結基を有していてもよい。
具体的には、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体又はそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体又はそれらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
本発明に係る前記一般式(1)で表わされる構造を有する化合物は、荷重たわみ温度調整剤として用いた場合、良好な効果を発現させることができる。この場合、荷重たわみ温度調整剤の分子量(Mw)は、200〜8,000であることを要する。200よりも小さいと、本発明の効果がほとんどなく、また揮発し易くなるという問題がある。また8,000を超えると、樹脂との相溶性が悪く、ヘイズが発生してしまう場合がある。
荷重たわみ温度調整剤としての添加量は、荷重たわみ温度調整剤としての効果、樹脂との相溶性、ヘイズが発生防止等の観点から、0.1〜30質量%であることを要する。
0.1質量%以下では、上記同様あまり効果がなく、30質量%を越えてしまうと、樹脂との相溶性が悪くなってしまい、ヘイズが発生する可能性がある。
〈その他の樹脂〉
本発明の位相差フィルムを構成する樹脂としては、環状オレフィン樹脂以外にポリスチレン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、或いはこれらの多元(二次元、三次元等)共重合ポリマーをブレンドしても良い。特に相溶性の観点から、ポリスチレン、ポリスチレンと無水マレイン酸との共重合ポリマーが好ましい。
〈各種添加剤〉
本発明に用いる環状オレフィン樹脂には、荷重たわみ温度調整剤の他に、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加してもよい。
(位相差フィルムの特性)
本発明の位相差フィルムは、種々の目的に応じて光学特性を変化させることができるが、下記関係式(I)及び(II)式を満たすことが好ましい。
関係式(I):40≦Re≦120
関係式(II):100≦Rth≦300
(但し、Re=(nx−ny)×d,Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
本発明の位相差フィルムは、1mm厚換算での全光線透過率が80%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、全光線透過率が90%以上である。また、本発明の位相差フィルムは、1mm厚でのヘイズが0.3%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、ヘイズが0.2%以下である。ヘイズが0.3%を超えると、延伸環状オレフィンフィルムの透明性が低下し、位相差フィルムに適用できないおそれがある。
本発明の位相差フィルムは面内リターデーションRe及び厚さ方向リターデーションRthの値はディスプレイの設計によって異なるが、Reで40〜120nm、Rthで100〜300nm程度の範囲から適宜選択される。
なお、本願において、「Re」は、フィルムの遅相軸方向の屈折率nx、遅相軸に面内で直交する方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nz、フィルムの平均厚みdとしたときに、(nx−ny)×dで定義される値であり、「Rth」は、((nx+ny)/2−nz)×dで定義される値である。
本発明の位相差フィルムの平均厚さは、機械的強度などの観点から、好ましくは20〜100μm、さらに好ましくは30〜90μm、特に好ましくは35〜85μmである。また、厚み変動は、この長手方向及び幅方向にわたって前記平均厚さの±3%以内であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムの残留揮発性成分の含有量は特に制約されないが、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以下である。残留揮発性成分の含有量が0.1質量%を超えると、経時的に本発明の位相差フィルムの光学特性が変化するおそれがある。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、延伸ポリオレフィンフィルムのReやRthの経時変化を小さくすることができ、さらには本発明の位相差フィルムを備える偏光板や液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
揮発性成分は、本発明の位相差フィルムに微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体や溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、分子量200以下の物質の合計として、本発明の位相差フィルムをガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
本発明の位相差フィルムの飽和吸水率は好ましくは0.10質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.03質量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、本発明の位相差フィルムのReやRthの経時変化を小さくすることができ、さらには本発明の位相差フィルムを備える偏光板や液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間、浸漬し、増加した質量の浸漬前の試験片質量に対する百分率で表される値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。
本発明の位相差フィルムは、Reのバラツキが5nm以内、好ましくは3nm以内、さらに好ましくは2nm以内である。Reのバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、Reのバラツキは、光入射角0°(入射光線と本発明の位相差フィルム表面が直交する状態)の時のReをフィルムの幅方向に測定したときの、そのReの最大値と最小値との差である。
本発明の位相差フィルムは、90℃の条件下に120時間曝した際の下記式で表される値(ΔRe)が2以下であることが好ましい。
ΔRe=100×[Re(処理前)−Re(処理後)]/Re(処理前)
(なお、Re(処理前)とは、90℃の条件下に120時間曝す前の面内リターデーションを任意の場所で5点測定したものの平均値であり、Re(処理後)とは、90℃の条件下に120時間曝した後の面内リターデーションを任意の場所で5点測定したものの平均値である。)
ΔReが2を超えるフィルムを、表示装置に用いた場合には、高温域で表示画面に視認方向による色味変化が大きく生ずるおそれがある。
本発明の位相差フィルムは長尺状であることが好ましい。長尺状とは、フィルムの幅方向に対し少なくとも10倍程度以上の長さを有するものを言い、好ましくは20倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものを言う。
(位相差フィルムの製造方法)
本発明に用いる環状オレフィン樹脂からなる位相差フィルムを製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、溶融押出法や加熱溶融成形法や溶液流延法などの従来公知の方法が挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。
溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法等が挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
加熱溶融成形法は、更に詳細に、押し出し成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できるが、これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押し出し成形法、インフレーション成形法、及びプレス成形法が好ましく、押し出し成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜設定される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、フィルムにヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるボイド等が発生したり、フィルムが黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。成形時のフィルムの厚みは、通常40〜300μm、好ましくは50〜200μm、より好ましくは60〜100μmの範囲である。厚みが薄過ぎる場合は、延伸などの後加工が困難となり、厚過ぎる場合はカールが発生したり生産性が低下する。
溶液流延法により作製する場合は、環状オレフィン樹脂及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中の樹脂の濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、樹脂の濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。溶剤の種類は、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、トルエン、THF、シクロヘキサン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられるが、安全性の面からメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。また上記溶剤と、メタノール、エタノール、n−ブタノール等のいわゆる貧溶媒とを合わせて用いても良い。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることが出来る。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明の位相差フィルム(光学フィルム)を作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向(縦方向)に延伸し、更にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことが出来るが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
本発明の位相差フィルムの幅は1.4m以上が生産性の点から好ましい。より好ましくは1.4〜3mの範囲である。本発明によれば、1.4m以上の幅広のフィルムを用いても、ムラのない位相差フィルム(光学フィルム)を形成することができる。
本発明に係る環状オレフィン樹脂を本発明の位相差フィルムに適用するには、シートを少なくとも一軸方向に延伸することが好ましく、より好ましくは幅方向に延伸することである。尚、実質的な一軸延伸、例えば、分子の配向に影響のない範囲で延伸した後、分子を配向させるべく一軸方向に延伸する二軸延伸であってもよい。好ましくは二軸延伸であり、延伸するにはテンター装置等を用いることが好ましい。
延伸倍率は1.1〜10倍、好ましくは1.2〜8倍であることが好ましい。延伸倍率が低過ぎると平面性が劣化したり所望の光学性能が発現しなかったり、高過ぎると破断することもある。
延伸は、通常、シートを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われる。延伸温度が低過ぎると破断し、高過ぎると分子配向しないため、平面性の劣化や所望の光学性能が得られない。
この様にして得たフィルムは、延伸により分子が配向されて、所望の大きさのリターデーションを持たせることができる。
本発明の位相差フィルムの表面には、必要に応じて表面処理を行うことができる。表面処理する方法としては、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理などが挙げられる。表面処理することにより、例えば偏光板保護フィルムとして用いる際に偏光子との接着性を改善することができる。
(偏光板)
本発明に係る偏光板は、一般的な方法で作製することができる。偏光板の少なくとも一方の面に本発明の位相差フィルム用いることが好ましい。すなわち、本発明の位相差フィルムの裏面側を、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、プライマー溶液を介して貼り合わせることが好ましい。プライマー溶液としては、無水マレイン酸変性スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物を、溶媒に溶解させたものなどを好ましく用いることができる。
もう一方の面には該フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。別の偏光板保護フィルムには、ハードコート層、防眩性ハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等の機能性層を設けることが好ましい。市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4UE、KC8UE、KC4FR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N、以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の位相差フィルム、別の偏光板保護フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。
(液晶表示装置)
本発明に係る偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明に係る液晶表示装置を作製することができる。例えば、本発明に係る偏光板を、少なくとも視認側かバックライト側のどちらか一方に用いる態様が好ましい。
液晶表示装置としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどを挙げることができる。この中でも、特にVAモードの液晶表示装置に対して、視野角補償効果が大きい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(分子量測定)
重量平均分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
(ガラス転位温度測定)
セイコーインスツルメンツ(株)製DSC−6600を用い、サンプル質量10mg、昇温度速度10℃/minにて測定を行った。
(荷重たわみ温度測定)
予め乾燥させておいたフィルムを、ASTM D−648に準拠して測定を行った。
(荷重たわみ温度調整剤、K1の合成)
窒素雰囲気下、脱水したトルエン690質量部に、ノルボルネン300質量部を、1−ヘキセン1.1質量部、塩化タングステンの0.3質量%トルエン溶液11質量部およびテトラブチルスズ0.6質量部とともに加え、60℃、常圧にて1時間重合させた。トルエンを溶剤に用いた高速液体クロマトグラフィー(ポリスチレン換算)により、得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
この重合反応溶液240質量部にアルミナ担持ニッケル触媒(触媒1質量部中、ニッケル0.70質量部および酸化ニッケル0.2質量部含有、細孔容積0.8cm3/g、比表面積300cm2/cm)6質量部とイソプロピルアルコール5質量部とを加え、オートクレーブ中で230℃、4.4×106Pa(45kgf/cm2)で5時間反応させた。水素添加触媒を濾過して除去した水素添加反応溶液をアセトン250質量部とイソプロパノール250質量部との混合溶液に、攪拌しながら注いで、樹脂を沈澱させ、濾別して回収した。回収した樹脂をさらにアセトン200質量部で洗浄した後、1.3×102Pa(1mmHg)以下に減圧した真空乾燥器中、100℃で24時間乾燥させた。得られた調整剤K1の重量平均分子量(Mw)は30,000であった。
(荷重たわみ温度調整剤、K2〜4)
荷重たわみ温度調整剤K2、K3、K4として、市販の試薬ノルボルナン単量体、2量体、3量体(アルドリッチ社製)を用いた。
(荷重たわみ温度調整剤、K5〜K10の合成)
K1の合成において、ノルボルネン、塩化タングステンの量及び反応時間を調整し、後はK1と同様な手順により表1に示すような調整剤K5〜K10を合成した。
(荷重たわみ温度調整剤、K11の合成)
エチレン雰囲気下、容量1.6lのオートクレーブに、ノルボルネン濃度が20mol/lで、総液量が640mlとなるようにトルエンとフェニルノルボルネン−トルエン溶液を入れた。メチルアルミノキサン(アルベマール社製、MAO20%トルエン溶液)をAl基準で5.88mmol、メチレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド1.5μmolを添加し、エチレンを導入して圧力を0.2MPaに保持しながら、65℃で10分間反応させた。
反応終了後、放冷しながらエチレンを脱圧し、系内を窒素で置換した。その後、吸着水分量を10質量%に調整したシリカ(富士シリシア社製、グレード:G−3粒径:50μm)を3.0g加えて1時間反応させた。その反応液を濾紙(5C、90mm)とセライト(和光純薬工業社)をセットした加圧ろ過器(アドバンテック東洋株式会社、型式KST−90−UH)に入れ、窒素で加圧ろ過して重合液を回収した。その重合液を5倍量のアセトン中に少量ずつ滴下して析出させ、脂環式構造を有する重合体樹脂K11を得た。K11のMwは6,000であった。
(位相差フィルムF1の作製)
市販のノルボルネン系樹脂ARTON−G7810(JSR社製)と、上記で合成した荷重たわみ温度調整剤K2とを90:10の割合で混ぜ、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間乾燥して水分を除去した後に、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押し出し成形機(Tダイ幅500mm)を使用し、溶融樹脂温度240℃、Tダイ温度240℃の成形条件にて、成形し延伸して位相差フィルムF1を得た。F1のTgは171℃であり、荷重たわみ温度(Tt)は164℃であった。
なお、表1に示したように、ノルボルネン系樹脂(ARTON−G7810(JSR社製)又はノルボルネン系樹脂ZEONOR1420(日本ゼオン社製))、荷重たわみ温度調整剤、その分子量及び添加量を変えて、位相差フィルムF1の作製方法と同様にして、位相差フィルムF2〜11及びF23〜47を作製した。
(位相差フィルムF12〜F22の作製)
(ドープ組成物)
ARTON−G7810 90質量部
荷重たわみ温度調整剤K7 10質量部
メチレンクロライド 250質量部
エタノール 10質量部
上記組成にて、市販の樹脂ARTON−G7810(JSR社製)と合成した荷重たわみ温度調整剤K7とを溶媒に溶解させドープを作製した。次に、ドープ組成物を濾過した後、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体上に均一に流延した。その後、剥離可能な範囲まで乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からドープを剥離した。次にテンターにて幅方向に延伸しながら120℃で乾燥させた後、幅保持を解放して、多数のロールで搬送させながら120℃で乾燥させた後、さらに135℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、位相差フィルムF12を得た。
なお、上記の位相差フィルムF12の作製方法において、メチレンクロライド及びエタノールは変えず、樹脂に対する荷重たわみ温度調整剤の比率のみを変えて各種ドープを作製し、それらを用いて位相差フィルムF13〜F22を位相差フィルムF12と同様にして作製した。
以上の方法によって作製した位相差フィルムF1〜F47の内容を表1に示す。
Figure 2008309997
〈評価〉
(リターデーションの測定)
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長が590nmにおけるフィルムのリターデーション測定を行った。アッベ屈折率計で測定したフィルム構成材料の平均屈折率と膜厚dを入力し、面内リターデーション(Re)及び厚み方向のリターデーション(Rth)の値を得た。また、上記装置によって3次元屈折率nx、ny、nzの値が算出される。
式(i) Re=(nx−ny)×d
式(ii) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、dは各々の厚み(nm)を表す。)
次いで、測定波長を480nm、630nmに変えて、該当波長のリターデーション値Re(480)、Re(630)、Rth(480)、Rth(630)の値を得、Re(480)/Re(630)及び、Rth(480)/Rth(630)を求めた。結果を表2に示した。
(リターデーションムラの測定)
上記作製したフィルムの面内リターデーション(Re)を任意の場所5点で測定し、その平均値を求めた。
(リターデーション耐久性の測定)
上記作製したフィルムF1〜F47を90℃の条件下に120時間曝し、処理前と処理後の面内リターデーションを任意の場所5点で測定し平均をして、その変化量(ΔRe)の平均値を求めた。
(ヘイズ測定)
上記作製した位相差フィルムF1〜F47のヘイズを、ヘーズメーターNDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定した。
〈偏光板の作製〉
(偏光板H1〜H47の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し50℃で6倍に延伸して膜厚25μmの偏光子を作った。
上記作製した位相差フィルムF1〜F47と、上記作製した偏光子とを、調製したプライマー溶液を介して接着し、もう一方には40℃の2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液にて鹸化処理を施した4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を、全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として貼り合わせ乾燥させて、偏光板1〜47を作製した。
〈液晶表示装置の作製〉
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
SONY製20型ディスプレイKLV−20AP2の予め貼合されていた液晶セルの両側の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板H1〜47を、作製したフィルムと液晶セルとが貼り合わさるようにそれぞれ貼合した。その際、偏光板の貼合の向きは、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置1〜47を作製した。
(視野角変動)
上記のようにして作製した液晶表示装置1〜47を用いて、下記の評価を行った。
23℃、55%RHの環境で、ELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。続いて上記偏光板を90℃の環境下で120時間処理したものを同様に測定し、下記基準で3段階評価した。
◎:視野角変動がない
○:視野角変動が僅かに認められる
△:視野角変動が認められる
×:視野角変動が非常に大きい
上記の、測定及び評価結果をまとめて表2及び表3に示す。
Figure 2008309997
Figure 2008309997
表2及び表3に示した結果から明らかなように、本発明に係る位相差フィルムは、環状オレフィン樹脂の優れた耐熱性、耐湿性等の特性を損なわずに優れた延伸適性を有し、高温下における光学特性の変化が小さく改良されていることが分かる。また、上記の製造方法から、本発明の位相差フィルムは、従来の設備で作製可能であることが分かる。
更には、本発明の位相差フィルムを用いることにより視野角変動が殆ど無い優れた偏光板及び液晶表示装置を提供することができることが分かる。

Claims (4)

  1. 環状オレフィン樹脂を主成分とする位相差フィルムであって、下記一般式(1)で表わされる構造を有し、重量平均分子量(Mw)が200〜8,000である化合物を、荷重たわみ温度調整剤として、0.1〜30質量%含有することを特徴とする位相差フィルム。
    Figure 2008309997
    〔式中、l、mは0又は1以上の整数であり、nは0又は1である。X1はビニレン基又はエチレン基を表し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表し、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子又はケイ素原子を含む連結基を有していてもよい。〕
  2. 請求項1に記載の位相差フィルムであって、下記関係式(I)及び(II)式を満たすことを特徴とする位相差フィルム。
    関係式(I):40≦Re≦120
    関係式(II):100≦Rth≦300
    (但し、Re=(nx−ny)×d,Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
    式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
  3. 請求項1又は2に記載の位相差フィルムを、少なくとも一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
  4. 請求項3に記載の偏光板を、少なくとも視認側かバックライト側のどちらか一方に用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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