JP2008300546A - 有機薄膜トランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】 有機物を利用して薄膜トランジスタを製造しようとする場合、有機半導体薄膜のキャリア移動度が小さく、実用的な動作速度を有する有機薄膜トランジスタは得られなかった。この課題を解決するために縦型有機薄膜トランジスタが検討され、高速動作が期待されているが、十分な電流オンオフ比が得られないという課題がある。
【解決手段】 本発明の有機薄膜トランジスタは、第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を有機半導体層の形成前に成膜し、同時にパターニングする。パターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を覆うように第1の電極上に有機半導体層を形成する。本発明によれば、良好な製造歩留まりで製造でき、かつ電流オンオフ比の大きな有機薄膜トランジスタが得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明の有機薄膜トランジスタは、第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を有機半導体層の形成前に成膜し、同時にパターニングする。パターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を覆うように第1の電極上に有機半導体層を形成する。本発明によれば、良好な製造歩留まりで製造でき、かつ電流オンオフ比の大きな有機薄膜トランジスタが得られる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、有機材料を半導体層として有する有機薄膜トランジスタに関し、特にソースドレイン間の電流変調量が大きく、かつ製造歩留まりが良好な有機薄膜トランジスタに関する。
薄膜トランジスタは、液晶表示装置等の表示用のスイッチング素子として広く用いられている。従来、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor以下、TFTとも呼ぶ)は、アモルファスや多結晶のシリコンを用いて作製されていた。しかし、このようなシリコンを用いたTFTの作製に用いられるCVD装置は、非常に高額であり、このTFTを用いた表示装置等の大型化は、製造コストの大幅な増加を伴うという問題点があった。また、アモルファスや多結晶のシリコンを成膜するプロセスは非常に高い温度下で行われる。そのため基板として使用可能な材料の種類が限られ、軽量な樹脂基板等は使用できないという問題があった。
上記問題を解決するために、アモルファスや多結晶のシリコンに代えて有機物を用いたTFTが提案されている。この有機物でTFTを形成する際に用いる成膜方法として、真空蒸着法や塗布法等が知られている。これらの成膜方法によれば、コストアップを抑えつつ素子の大型化が実現可能になり、成膜時に必要となるプロセス温度を比較的低温にすることができる。このため、有機物を用いたTFTでは、基板に用いる材料の選択時の制限が少ないといった利点が得られ、その実用化が期待されている。
実際、近年、有機物を用いたTFTは盛んに報告されるようになった。有機薄膜トランジスタに関する報告例としては、下記非特許文献1〜14や特許文献1〜9などがある。これらのTFTの有機化合物層に用いる有機物としては、共役系ポリマーやチオフェンなどの多量体(特許文献1〜5)、或いは金属フタロシアニン化合物(特許文献6)、またペンタセンなどの縮合芳香族炭化水素(特許文献7、8)などが、単体或いは他の化合物との混合物の状態で用いられている。
また、半導体層の材料として有機材料を使用することにより、素子の基板もガラスなどの硬い材料はもちろんのこと、樹脂やプラスチックを適用することができる。そのため素子全体にフレキシブル性を持たせることが可能となり、フレキシブル有機薄膜トランジスタに関する研究も盛んに行われている。さらに、有機薄膜トランジスタの製造プロセスとして溶液を用いた塗布プロセスを採用することができる。このように低コスト化等を目標とした塗布プロセス、印刷プロセスを適用した製造方法の研究も盛んに行われている。
このように有機材料を用いたTFTの開発は多く行われている。しかし、有機材料をTFTのチャネル材料に用いた場合、シリコン系の材料に比べてキャリアの移動度が著しく小さく、実用的な動作速度を有する有機TFTを作製することは非常に困難であった。シリコン系材料の場合、アモルファスシリコンでは移動度1〜10(cm2/Vs)、ポリシリコンでは100(cm2/Vs)程度が得られる。これに対し、有機材料の移動度は特殊な単結晶を除いて1(cm2/Vs)以下であり、トランジスタの動作性能のひとつである遮断周波数はせいぜい数kHz程度であった。
この移動度の低い有機TFTを実用化させるための方法のひとつとして、縦型有機トランジスタが検討されている(たとえば、非特許文献13、14、特許文献9)。この構造においては実際に遮断周波数数十kHzでの動作に成功している。しかし、縦型有機トランジスタにおいて、十分なソースとドレイン間に流れる電流オンオフ比が得られないという課題がある。
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特開平8−228034号公報
特開平8−228035号公報
特開平9−232589号公報
特開平10−125924号公報
特開平10−190001号公報
特開2000−174277号公報
特開平5−55568号公報
特開2001−94107号公報
特開2004−6476号公報
有機物を利用して薄膜トランジスタを製造しようとする場合、従来はシリコンデバイスと類似のMOS型構造で検討されてきた。しかし有機半導体薄膜のキャリア移動度が小さく、実用的な動作速度を有する有機薄膜トランジスタは得られていない。さらにこの課題を解決するために静電誘導型トランジスタに類似の構造を有する縦型有機薄膜トランジスタが検討され、高速動作が期待されている。
しかしながら縦型有機薄膜トランジスタは、構造上ソース電極とドレイン電極が重なっている部分が大きく、ゲート電極による変調が効きにくい部分が多く存在する。そのため、ゲート電極で変調できるソース−ドレイン電流量に限界があり、結果として、ソース−ドレイン間の電流オンオフ比の大きな素子を得ることは困難であった。また、電流オンオフ比を大きくするためにはゲート電極の加工を非常に微細に行う必要があり、有機薄膜トランジスタの特徴である製造プロセスの簡便性が失われてしまうという欠点を有していた。
また、縦型有機薄膜トランジスタのゲート電極は、その周囲を有機半導体層に囲まれ、有機半導体層中に挿入された構造である。そのため、ゲート電極の作製プロセスの微細な変化によって、作製する有機薄膜トランジスタの性能が変化しやすく、製造歩留まりを向上させることが困難であるという欠点を有していた。さらに有機半導体層を形成した後に、電極を形成するプロセスが必要になる。この電極の形成プロセスによる有機半導体層へのダメージが、歩留まりを低下させる原因のひとつとなっていた。
本発明は、上記に鑑み、高速動作が可能な縦型の有機薄膜トランジスタにおいて、複雑なプロセスを用いることなく電流オンオフ比の大きな有機薄膜トランジスタを良好な製造歩留まりで提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、ゲート電極膜厚を従来よりも厚くすることで、ソース−ドレイン電流のオンオフ比が向上することを見いだし、本発明を発明するに到ったものである。
本発明に係る有機薄膜トランジスタは、基板上に第1の電極を有し、その第1の電極上に同一の形状でパターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を有し、さらに、これらのパターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を覆うように第1の電極上に有機半導体層と、第2の電極とを順に積層した構造を有し、前記第3の電極の膜厚が80nm以上、5μm以下の厚さを有することを特徴とする。
さらに本発明に係る有機薄膜トランジスタの製造方法は、基板上に第1の電極を形成する工程と、その第1の電極上に第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層となる膜を順に成膜し、同一の形状にパターニングする工程と、これらのパターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を覆うように第1の電極上に有機半導体層を形成する工程と、その有機半導体層の上に第2の電極を形成する工程と、を備え、前記第3の電極の膜厚を80nm以上、5μm以下の厚さとすることを特徴とする。
本発明の有機薄膜トランジスタは、第3の電極の膜厚を80nm以上、5μm以下の厚さとする。第3の電極の膜厚を厚くすることで、大きな電流オンオフ比を有し、かつ製造歩留まりの良好な有機薄膜トランジスタを得ることができる。
以下、図面等を参照し、本発明に係る実施形態例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。図1は本発明に係る実施形態例の有機薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。図2は比較形態例の縦型構造を有する有機薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。図3及び図4は本発明に係る有機薄膜トランジスタにおける開口部を有する第3の電極(ゲート電極)の第1例(櫛歯状)及び第2例(円形状)を示す平面パターン図である。図5は第3の電極の側部に絶縁性薄膜を有する有機薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
本発明の実施形態例の有機薄膜トランジスタ10Aは、図1に示すように、ソース電極、ゲート電極、ドレイン電極を縦方向に配置した構造を有している。有機薄膜トランジスタ10Aは、基板11、第1の電極12、第1の絶縁層15、第3の電極14、第2の絶縁層16、有機半導体層17、第2の電極13から構成されている。第3の電極14はゲート電極であり、第1の電極12と第2の電極13は一方がソース電極であり、他方がドレイン電極である。第3の電極14に加える電圧によって第1の電極12と第2の電極13との間を流れる電流を制御する。以下、第1の電極12をソース電極、第2の電極13をドレイン電極として説明する。また図1には本発明に関係するトランジスタの部分のみを示している。しかし、図示していないが、各電極はそれぞれの取り出しパッド等を備えているものである。
基板11上に第1の電極12を形成する。その第1の電極12上に、第1の絶縁層15、第3の電極14、第2の絶縁層16となる膜を順に積層し、これらの膜を同一形状にパターニングする。ここで第3の電極14の膜厚は、通常の膜厚よりも厚く形成する。このパターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を覆うように、第1の電極12上の全面に有機半導体層17を形成する。さらに、有機半導体層17上に第2の電極上13を形成する。第2の絶縁層の上面には有機半導体層17を形成しないで、第2の絶縁層と第2の電極13と直接接するように形成することもできる。
第3の電極は、第1及び第2電極にはさまれた部位に配置され、たとえば櫛歯状や円形状の開口部19の開口部を有している。一方第1の電極12と第2の電極13は、開口部を有していない。この第3の電極14は、開口部を有することから第1の電極12と第2の電極13より小さい面積で構成されている。このように第3の電極は、第1及び第2の電極より平面視上小さい面積とすることが有効である。第3の電極が小さければ、特に開口部を有さなくても動作可能であるが、第3の電極が開口部を有することにより、より大きな電流を得ることが可能となる。この第3の電極パターン例として、図3、図4に櫛歯状、円形状の開口部19を有する平面パターンを示す。しかしこれらの形状は特に限定されない。これらの櫛歯状、円形状の開口部を有する有機薄膜トランジスタは、製造冶具の製造が簡便であり、かつ製造プロセスを複雑にすることなく製造することができる。
また、縦型の有機薄膜トランジスタの場合、第1の電極及び第2の電極との間に第3の電極が挿入された構造であり、それぞれの電極は非常に近い位置に縦方向に積層して配置される。そのため第3の電極を流れる漏れ電流が発生しやすいという問題がある。従って、他の実施形態例として図5に示すように第3の電極の側面に絶縁性薄膜18を形成し、第3の電極の周囲を絶縁物で囲い、この漏れ電流を抑制することもできる。
比較形態例の有機薄膜トランジスタ20は、図2に示すように基板11、第1の電極12、第1の有機半導体層17−1、開口部を有する第3の電極14、第2の有機半導体層17−2、第2の電極13から構成される。有機薄膜トランジスタ20は、基板11上に第1の電極12を形成し、さらに第1の有機半導体層17−1を形成する。その後開口部を有する第3の電極14を形成し、第2の有機半導体層17−2、第2の電極13を形成する。比較形態例の第3の電極14の膜厚は、一般的な膜厚で50nm以下の薄い膜厚である。
次に、本発明における有機薄膜トランジスタに使用される材料や、その製造方法について説明する。基板11として用いることが可能な材料としては、ガラス、シリコン等の無機材料やアクリル系樹脂のようなプラスチックなどを使用することができる。しかし、特にこれらに限定されるものではなく、その基板上に形成される複合型論理素子を保持できる材料であればよい。また、基板以外の構成要素により有機薄膜トランジスタの構造を十分に支持し得る場合には、使用しない事も可能である。
電極12〜14の製造方法としては、特にこれらに限定されるものではないが、真空蒸着法、スパッタ法、エッチング法、リフトオフ等通常の電極形成プロセスを利用できる。また、導電性ポリマーのような有機材料を電極として使用する場合には、特にこれらに限定されないが、スピンコート法、ディップ法等の溶液プロセスも利用することができる。
これらの電極の材料としては、導電性の材料であれば特に限定されない。しかしゲート電極となる第3の電極14は、たとえば多くの有機半導体材料とショットキー接合を形成することが容易なアルミニウムを用いると安定した有機薄膜トランジスタを得ることができる。また第1の電極12及び第2の電極13としては、多くの有機半導体材料へのキャリア注入が容易なインジウムすず酸化物、金、銀、パラジウム、白金のうちから選択された1つの材料で形成することにより有機薄膜トランジスタの性能を有効に活用することができる。
絶縁層15、16の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法などのドライプロセスを利用できるが、特に限定されない。また、絶縁層を溶液により形成する場合にはスピンコート法、ディップ法等の溶液プロセスも利用することができる。これらの絶縁層15、16に使用される材料としては、電気絶縁性を有している材料であれば特に限定されること無く使用することができる。しかしスパッタ、蒸着等の真空プロセスで形成できる二酸化珪素や、有機材料から選択することで製造プロセスを複雑にすることなく有機薄膜トランジスタを製造することができる。
さらに、他の実施形態例として、たとえば図5に示すように第3の電極の側面にも絶縁性薄膜18を形成することができる。第3の電極14の側面に絶縁性薄膜18を有することにより第3の電極に流れる漏れ電流をさらに抑制することができる。この絶縁性薄膜18としては、ゲート電極にアルミニウムを使用した場合、アルミニウム電極を形成した後に表面を酸化して、アルミニウム酸化物とすることで絶縁性薄膜として使用することができる。
また有機半導体層17、17−1、17−2の形成方法としては、真空蒸着法等のドライプロセスの他、スピンコート法、ディップ法等の溶液プロセスも利用することができるが、特に限定されるものではない。この有機半導体材料としては、銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物、ペンタセンなどのアセン系化合物、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンなどの芳香族系アミン化合物、ポリ−3−ヘキシルチオフェンなどのポリマーなどを使用することができる。しかし、電極から注入されたキャリアを輸送する性能を有していれば特に限定されることは無い。
有機薄膜トランジスタ10Aの電極12,13、絶縁層15,16の膜厚は、特に制限されることはない。しかし、一般に、膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎるとチャネル長が長くなり、或いは高い印加電圧が必要となって素子の性能劣化の要因になる。そのため、数nmから500nmの範囲が好ましい。
以下、本発明にかかる有機薄膜トランジスタの具体的な実施例として、その代表的な構成材料と、作製されたトランジスタの特性について、詳細に説明する。図2に示す有機薄膜トランジスタを比較例とし、図1、図5に示す本発明の有機薄膜トランジスタを実施例1〜14として作製する。作製した有機薄膜トランジスタのそれぞれの電流オンオフ比、製造歩留まり、あるいはゲート電流値を測定し、比較する。ここでの実施例における第3の電極14の開口部パターンは、図3に示す櫛歯状の形状である。ここでの第1の電極12はソース電極、第2の電極13はドレイン電極、第3の電極14はゲート電極として説明する。しかし、第1の電極12をドレイン電極、第2の電極13をソース電極とすることもできる。以下、実施例をもとに本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(比較例1)
比較形態例で説明した図2の有機薄膜トランジスタ20を、以下の手順で作製した。基板11として無アルカリガラス基板を用い、この基板上にソース電極12として金を、シャドウマスクを用いた真空蒸着法にて100nm形成した。第1の有機半導体層17−1として銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて100nm形成した。次にゲート電極14としてアルミニウムを、シャドウマスクを用いた真空蒸着法により成膜した。この時の膜厚は30nmとした。ここで用いたシャドウマスクは、ゲート電極の電極幅20μm、電極間隔20μmになるように設計した。次いで第2の有機半導体層17−2として銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて100nm形成した。最後にドレイン電極13として真空蒸着法により金を100nm成膜し、比較例としての有機薄膜トランジスタ201を作製した。
比較形態例で説明した図2の有機薄膜トランジスタ20を、以下の手順で作製した。基板11として無アルカリガラス基板を用い、この基板上にソース電極12として金を、シャドウマスクを用いた真空蒸着法にて100nm形成した。第1の有機半導体層17−1として銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて100nm形成した。次にゲート電極14としてアルミニウムを、シャドウマスクを用いた真空蒸着法により成膜した。この時の膜厚は30nmとした。ここで用いたシャドウマスクは、ゲート電極の電極幅20μm、電極間隔20μmになるように設計した。次いで第2の有機半導体層17−2として銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて100nm形成した。最後にドレイン電極13として真空蒸着法により金を100nm成膜し、比較例としての有機薄膜トランジスタ201を作製した。
作製した有機薄膜トランジスタ201のソース電極とドレイン電極間に5Vの電圧を印加し、ゲート電極にオン電圧−5V、オフ電圧5Vの電圧を印加し、流れる電流を測定した。ゲート電圧−5Vのときのソース−ドレイン電流(オン電流)と、ゲート電圧5Vのときのソース−ドレイン電流(オフ電流)とのオンオフ比は2.3×102であった。また、この比較例の有機薄膜トランジスタ201の製造歩留まりを1として、以下の実施例における製造歩留まりとを比較する。
(実施例1〜7)
実施例1〜7は、有機薄膜トランジスタのゲート電極の厚みを40nmから100nmまで10nm毎に変化させた実施例である。実施形態例で説明した図1の有機薄膜トランジスタ10Aを、以下の手順で作製した。無アルカリガラス基板上にソース電極として金を、シャドウマスクを用いた真空蒸着法にて100nm形成し、ソース電極12とした。ソース電極12上に、第1の絶縁層15としての二酸化ケイ素100nm、ゲート電極14としてのアルミニウム40nm〜100nm(10nmステップ)、第2の絶縁層16としての二酸化ケイ素50nmをスパッタ法により形成した。
実施例1〜7は、有機薄膜トランジスタのゲート電極の厚みを40nmから100nmまで10nm毎に変化させた実施例である。実施形態例で説明した図1の有機薄膜トランジスタ10Aを、以下の手順で作製した。無アルカリガラス基板上にソース電極として金を、シャドウマスクを用いた真空蒸着法にて100nm形成し、ソース電極12とした。ソース電極12上に、第1の絶縁層15としての二酸化ケイ素100nm、ゲート電極14としてのアルミニウム40nm〜100nm(10nmステップ)、第2の絶縁層16としての二酸化ケイ素50nmをスパッタ法により形成した。
第2の絶縁層16の二酸化ケイ素上にレジストを塗布し、ゲート電極の電極幅20μm、電極間隔20μmになるように露光した。レジストの現像、エッチング、レジストの除去を行い、絶縁層とゲート電極のパターニングを行った。エッチングはRIE(Reactive Ion Etching; 反応性イオンエッチング)法によりエッチングガスを交換しながら行った。第1の絶縁層、ゲート電極、第2の絶縁層が形成された第1の電極上に銅フタロシアニンを、シャドウマスクを用いた蒸着法にて形成した。有機半導体層は第2の絶縁層16の上面に100nmの厚みになるようにゲート電極の膜厚に応じて形成した。最後に第2の電極として真空蒸着法により金を100nm成膜し有機薄膜トランジスタ101〜107を得た。
比較例と同じ条件で測定した結果を下記表1に示す。電流のオンオフ比は、ゲート電極の膜厚70nmまでは、その向上はわずかであるが、80nm以上では100倍以上のオンオフ比の著しい向上が見られた。ゲート電極の膜厚がオンオフ比に与える影響としては、ゲート電極の膜厚が厚ければ厚いほどその効果が大きいと考えられる。しかし、縦型のトランジスタは、ソース電極とドレイン電極を縦方向に積層し、そのチャネル長が短いことで、良い特性が得られるトランジスタである。従ってソース電極とドレイン電極間が広がりすぎると、縦型としての良好なトランジスタ特性を示さなくなる。
この縦型構造の利点を生かすためには、ソース電極とドレイン電極との間隔(チャネル長)は5μm程度以下が好ましい。そのためゲート電極の厚さも5μm以下が好ましく、ゲート電極の厚さとしては、80nm以上、5μm以下が好ましい。さらに成膜等の製造における生産性や、段差における被覆性から、その段差は1μm程度以下が好ましい。従ってゲート電極の厚さは、80nm以上、1μm以下がより好ましいと考えられる。
また、有機薄膜トランジスタ101〜107の歩留まりはいずれも、比較例に対し1.5倍以上に向上している。歩留まりが向上する理由は、ゲート電極を有機半導体層の形成に先駆けて行うことが考えられる。実施例においてはゲート電極を形成した後に、有機半導体層を形成する。このプロセスフローにおいて、製造プロセスの安定化が困難なゲート電極である第3の電極を有機半導体層の形成に先駆けて行うことにより、第3の電極の形状コントロールがしやすくなる。さらに、有機半導体層へのプロセスダメージを抑制できる。また、従来2回のプロセスで形成していた有機半導体層を1回の工程で形成できる。その結果、有機薄膜トランジスタの製造歩留まりを向上させることができる。このように有機薄膜トランジスタの製造歩留まりを向上させながら、ソースドレイン電流のオンオフ比を向上できる。
このように有機薄膜トランジスタの製造プロセスにおいて、ゲート電極を有機半導体層の形成に先駆けて行い、ゲート電極である第3の電極の膜厚を80nm以上とする。このプロセスによって、電流のオンオフ比を大きく、製造歩留まりを向上させることが出来る有機薄膜トランジスタが得られる。
(実施例8〜9)
実施例8、9は、実施例5に対し有機半導体層として下記(表2)の有機半導体層材料を使用した実施例である。有機半導体層材料として表2に示した化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(108、109)を作製した。
実施例8、9は、実施例5に対し有機半導体層として下記(表2)の有機半導体層材料を使用した実施例である。有機半導体層材料として表2に示した化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(108、109)を作製した。
ここでの有機半導体材料として、有機薄膜トランジスタ108はN,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン、有機薄膜トランジスタ109はポリ−3−ヘキシルチオフェンを使用している。この有機半導体材料としては、銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物、ペンタセンなどのアセン系化合物、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンなどの芳香族系アミン化合物、ポリ−3−ヘキシルチオフェンなどのポリマーなどを使用することができる。しかし、電極から注入されたキャリアを輸送する性能を有していれば特に限定されることは無い。
作製した有機薄膜トランジスタ108、109について、実施例5と同様にして得られたオンオフ比、歩留まり比の結果を表2に示す。本実施例によれば、比較例に対し131〜415倍の良好なオンオフ比、及び1.42〜1.58倍の良好な歩留まり比を有する有機薄膜トランジスタが得られた。
(実施例10〜12)
実施例10〜12は、実施例5に対し第1の電極及び第2の電極として下記(表3)の金属及び金属化合物を使用した実施例である。第1の電極及び第2の電極材料として表3に示した金属及び金属化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(110〜112)を作製した。第1の電極と第2の電極材料として、有機薄膜トランジスタ110はインジウムすず酸化物と金、有機薄膜トランジスタ111は白金と金、有機薄膜トランジスタ112は金と銀とを、それぞれ使用している。また第3の電極としては、実施例5と同様にアルミニウムを使用している。
実施例10〜12は、実施例5に対し第1の電極及び第2の電極として下記(表3)の金属及び金属化合物を使用した実施例である。第1の電極及び第2の電極材料として表3に示した金属及び金属化合物を用いた以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタ10A(110〜112)を作製した。第1の電極と第2の電極材料として、有機薄膜トランジスタ110はインジウムすず酸化物と金、有機薄膜トランジスタ111は白金と金、有機薄膜トランジスタ112は金と銀とを、それぞれ使用している。また第3の電極としては、実施例5と同様にアルミニウムを使用している。
これらの電極の材料としては、導電性の材料であれば特に限定されない。しかしゲート電極となる第3の電極は、たとえば多くの有機半導体材料とショットキー接合を形成することが容易なアルミニウムを用いると安定した有機薄膜トランジスタを得ることができる。また第1の電極及び第2の電極としては、多くの有機半導体材料へのキャリア注入が容易なインジウムすず酸化物、金、銀、パラジウム、白金のうちから選択された1つの材料で形成することにより有機薄膜トランジスタの性能を有効に活用することができる。
作製した有機薄膜トランジスタ110〜112について、実施例5と同様にして得られたオンオフ比、歩留まり比の結果を表3に示す。本実施例によれば、比較例に対し35〜2957倍の良好なオンオフ比、及び1.33〜1.55倍の良好な歩留まり比を有する有機薄膜トランジスタが得られた。
(実施例13)
実施例13は、実施例5に対し第2の絶縁層にレジスト材料(たとえば東京応化製、商品名TMR−10)を用いた実施例である。第2の絶縁層にレジスト材料を用い、第2の絶縁層をレジストとして兼用した以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタを作製し、有機薄膜トランジスタ113を作製した。
実施例13は、実施例5に対し第2の絶縁層にレジスト材料(たとえば東京応化製、商品名TMR−10)を用いた実施例である。第2の絶縁層にレジスト材料を用い、第2の絶縁層をレジストとして兼用した以外は実施例5と全く同様に有機薄膜トランジスタを作製し、有機薄膜トランジスタ113を作製した。
ゲート電極14の上下に配置される第1の絶縁層15及び第2の絶縁層16は、電気絶縁性を有していれば特に限定されること無く使用することができる。第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層のパターニングは、同一のシャドウマスクを用いて、スパッタ、真空蒸着などの成膜方法を用いて行うこともできる。また、広範囲に3つの層(第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層)を形成した後、リソグラフィー法などによるエッチングでも行うことができる。パターニングの形状制御性や製造歩留まりの面からエッチング法によるパターニングの方が制御性や微細加工性に優れている。
エッチング法の場合、第1の絶縁層は二酸化ケイ素を用いることにより、その後のプロセス、すなわち第3の電極形成、第2の絶縁層膜形成、エッチングなどのプロセスへの耐久性も大きくこの点で、第1の絶縁層には二酸化ケイ素が望ましいといえる。第2の絶縁層は特に限定されるものではないが、上記の観点から二酸化ケイ素が安定した素子を与えることができる。また、本実施例のように絶縁性を有する感光性ポリマーを用いることによりリソグラフィーのレジストとしても用いることで、プロセスを簡略化することができる。
作製した有機薄膜トランジスタについて、実施例5と同様にオンオフ比を測定した結果、1.8×104(比較例との比78倍)であり良好なオンオフ比を有する有機薄膜トランジスタが得られた。また、このときの製造歩留まりは、比較例の1.47倍と良好であった。
(実施例14)
実施例14は、図5に示すように実施例5に対しゲート電極の側面に絶縁性薄膜18に追加した実施例である。実施例5において、ドレイン電極やゲート電極をパターニングした後、純酸素雰囲気下に6時間放置し、ゲート電極のアルミニウム側面に酸化アルミニウム皮膜を形成させ、有機薄膜トランジスタ114を作製した。この絶縁膜の形成工程以外の製造方法は実施例5と全く同様にし、有機薄膜トランジスタを作製した。
実施例14は、図5に示すように実施例5に対しゲート電極の側面に絶縁性薄膜18に追加した実施例である。実施例5において、ドレイン電極やゲート電極をパターニングした後、純酸素雰囲気下に6時間放置し、ゲート電極のアルミニウム側面に酸化アルミニウム皮膜を形成させ、有機薄膜トランジスタ114を作製した。この絶縁膜の形成工程以外の製造方法は実施例5と全く同様にし、有機薄膜トランジスタを作製した。
縦型有機薄膜トランジスタの場合、ドレイン電極及びソース電極とゲート電極が非常に近い位置に縦方向に積層して配置される。そのためゲート電極を流れる漏れ電流が発生しやすいという問題が生じる。その場合、ゲート電極の上面もしくは下面もしくは周囲に絶縁性の薄膜を有することで漏れ電流を抑制することができる。本実施例においてはゲート電極の上下面に絶縁層16、15を有し、さらにゲート電極の側面に絶縁性薄膜18を形成する。このようにゲート電極の周囲を絶縁物で囲うことで、漏れ電流を抑制している。また絶縁性薄膜18としては、ゲート電極にアルミニウムを使用した場合、そのアルミニウム電極の側面を酸化して、アルミニウム酸化物とすることで絶縁性薄膜として使用することができる。
実施例5と同様にオンオフ比を測定し、2.0×104のオンオフ比(比較例との比87倍)が得られた。また、このときのゲート電極を流れる電流は15ナノアンペアで、実施例5のときのゲート電流値(65ナノアンペア)の5分の1程度であった。
以上実施例1〜14として、本発明にかかる有機薄膜トランジスタの具体的な実施例の構成と、その特性を説明した。本発明の有機薄膜トランジスタは、第3の電極(ゲート)を有機半導体層の形成プロセスの前に形成する。第1の電極や第3の電極等を形成した後に、有機半導体材料を第3の電極を覆うように第1の電極上に有機半導体層を形成する。この第3の電極の厚さは、80nm以上、5μm以下の膜厚とする。第3の電極の膜厚を厚くすることで、ソースドレイン電流のオンオフ比を従来の5倍以上向上させることができる。本発明によれば、特に複雑なプロセスを用いることなく、良好な製造歩留まりで製造でき、かつ電流オンオフ比の大きな有機薄膜トランジスタが得られる。
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明した。しかし本発明に係る有機薄膜トランジスタは、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではない。すなわち本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施した有機薄膜トランジスタも、本発明の範囲に含まれるものである。
10A:有機薄膜トランジスタ
10B:有機薄膜トランジスタ(櫛歯開口部構造)
10C:有機薄膜トランジスタ(円形開口部構造)
10D:絶縁性薄膜を有する有機薄膜トランジスタ
20:比較例の縦型有機薄膜トランジスタ
11:基板
12:第1の電極
13:第2の電極
14:第3の電極
15:第1の絶縁層
16:第2の絶縁層
17、17−1、17−2:有機半導体層
18:側部の絶縁性薄膜
19:ゲート電極開口部
10B:有機薄膜トランジスタ(櫛歯開口部構造)
10C:有機薄膜トランジスタ(円形開口部構造)
10D:絶縁性薄膜を有する有機薄膜トランジスタ
20:比較例の縦型有機薄膜トランジスタ
11:基板
12:第1の電極
13:第2の電極
14:第3の電極
15:第1の絶縁層
16:第2の絶縁層
17、17−1、17−2:有機半導体層
18:側部の絶縁性薄膜
19:ゲート電極開口部
Claims (13)
- 基板上に第1の電極を有し、その第1の電極上に同一の形状でパターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を有し、さらに、これらのパターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を覆うように第1の電極上に有機半導体層と、第2の電極とを順に積層した構造を有し、前記第3の電極の膜厚が80nm以上、5μm以下の厚さを有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
- 前記第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層は開口部を有し、その開口部が櫛歯状もしくは円形状の形状であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記有機半導体層が銅フタロシアニン、ペンタセン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン、ポリ−3−ヘキシルチオフェンのうちから選択された1つの有機材料を含むことを特徴とする請求項1、または2に記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極がアルミニウムからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第1の電極及び第2の電極がインジウムすず酸化物、金、銀、パラジウム、白金のうちから選択された1つの導電性材料を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第1の絶縁層と第2の絶縁層がそれぞれ異なる材料から形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第1の絶縁層が二酸化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第2の絶縁層が感光性を有する有機材料からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極の側部に絶縁性の薄膜を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記第3の電極の側部に配置される絶縁性薄膜がアルミニウムの酸化物からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
- 基板上に第1の電極を形成する工程と、その第1の電極上に第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層となる膜を順に成膜し、同一の形状にパターニングする工程と、これらのパターニングされた第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層を覆うように第1の電極上に有機半導体層を形成する工程と、その有機半導体層の上に第2の電極を形成する工程とを備え、前記第3の電極の膜厚を80nm以上、5μm以下の厚さとすることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
- 前記第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層となる膜を順に成膜し、同一の形状にパターニングする工程において、それぞれの膜を反応性イオンエッチング法によりエッチングガスを交換しながら連続してエッチングすることを特徴とする請求項11に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
- 前記第1の絶縁層、第3の電極、第2の絶縁層となる膜を順に成膜し、同一の形状にパターニングする工程の後に、酸素雰囲気中に放置し、パターニングされた第3の電極の側面を酸化する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項11、または12に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
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KR101197145B1 (ko) * | 2010-01-29 | 2012-11-08 | 서울대학교산학협력단 | 수직형 박막 트랜지스터 |
-
2007
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