JP2008288005A - 非水電解質二次電池用正極活物質および非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極活物質および非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた充放電サイクル特性を有する非水電解質二次電池と、該非水電解質二次電池を構成し得る正極活物質を提供する。
【解決手段】 特定の製造方法により製造されてなり、組成式LiMnCoNi(Mは、Ti、Zr、Hf、Ge、SeおよびPbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表され、かつ前記組成式におけるa、b、X、YおよびZが、0.95≦a≦1.2、0.005≦W<0.1、0.95<X+Y+Z+W≦1.05、1.8≦b≦2.2で、かつ下記(1)〜(3)のいずれかを満たし、層状結晶構造を有することを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質である。
(1)0.3≦X<0.36、0.3≦Y+W<0.36、0.3≦Z<0.36
(2)0.3≦X<0.36、0.3≦Y<0.36、0.3≦Z+W<0.36
(3)0.3≦X<0.36、0.3≦Y<0.36、0.3≦Z<0.36
【選択図】 なし

Description

本発明は、充放電サイクル時の放電容量維持率に優れた非水電解質二次電池と、該非水電解質二次電池を構成し得る正極活物質に関するものである。
高エネルギー密度を持つ非水電解質二次電池はノートパソコンや携帯電話などの電源として広く用いられている。また、近年になって、電動工具などのパワーツール用の電源としての非水電解質二次電池の開発も進んでおり、高出力化と優れた充放電サイクル特性が求められている
現在用いられている非水電解質二次電池用の正極活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、またはこれらの遷移金属部の一部を他の元素で置換したリチウム複合酸化物などが挙げられる。中でもコバルト酸リチウムが広く用いられているが、Co原料が高価であることからその代替が考えられている。
例えば、LiMn1/3Co1/3Ni1/3に代表されるようなリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物は、エネルギー密度、安全性、コストの面でバランスが良く、これを非水電解質二次電池用の正極活物質として利用する開発が進められている(例えば、特許文献1〜2)。
ところで、非水電解質二次電池では、充放電を繰り返すことで、正極活物質の結晶構造が崩壊するなどして電池特性が低下することがある。そのため、非水電解質二次電池において、良好な充放電サイクル特性を確保するには、充放電時における正極活物質の安定性を高めることが求められる。
前記のようなリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物に関しては、例えば、特許文献3に、組成式LiNiMnCoα(ただし、M:Fe、Cr、Cu、Al、Mg、Si、X+Y+Z+α=1、0.25≦X≦0.55、0.25≦Y≦0.55、0.15≦Z≦0.4、0≦α≦0.1)で表される六方晶系の層状結晶構造の複合酸化物とすることで、その層状結晶構造が安定化する旨記載されている。
その一方で、非特許文献1では、Al、Fe、Tiといった元素を有するリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物を用いた電池の特性について検討しており、電池特性はLiMn1/3Co1/3Ni1/3を用いた電池の場合に、充放電サイクル時の放電容量維持率が最も良好であり、リチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物に、TiやAlを含有させても、充放電サイクル特性には改善が見られないことを報告している。
国際公開第02/078105号公報 特開2003−59490号公報 特開2005−259617号公報 第47回電池討論会予稿集,p.370−371
前記のように、リチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物では、特定の添加元素を含有させることで、その層状結晶構造を安定化させ得ると考えられる一方で、このような複合酸化物を用いて構成した電池では、予想に反して充放電サイクル特性を良好に改善することができない。
例えば、前記のようなパワーツールの電源に使用される非水電解質二次電池には、特に良好な充放電サイクル特性が要求されることから、前記のリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物を、かかる非水電解質二次電池の正極活物質に適用するには、更なる改良が求められる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた充放電サイクル特性を有する非水電解質二次電池と、該非水電解質二次電池を構成し得る正極活物質を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の非水電解質二次電池用正極活物質は、CuKα線によるX線回折において、2θが20°から55°の範囲に現れる、Liの化合物に由来するピークを除く全てのピークの半価幅が0.75°以上となるまで原料を粉砕助剤と共に粉砕混合し、Mn、Co、Ni、M(Mは、Ti、Zr、Hf、Ge、SeおよびPbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)およびLiを含む複合物を形成する第一工程と、前記複合物を酸素含有雰囲気中で焼成する第二工程とを有する製造方法により製造されてなり、組成式LiMnCoNiで表され、かつ前記組成式におけるa、b、X、YおよびZが、下記(1)〜(3)のいずれかを満たし、層状結晶構造を有することを特徴とするものである。
(1)0.95≦a≦1.2、0.3≦X<0.36、0.3≦Y+W<0.36、0.3≦Z<0.36、0.005≦W<0.1、0.95<X+Y+Z+W≦1.05、1.8≦b≦2.2;
(2)0.95≦a≦1.2、0.3≦X<0.36、0.3≦Y<0.36、0.3≦Z+W<0.36、0.005≦W<0.1、0.95<X+Y+Z+W≦1.05、1.8≦b≦2.2;
(3)0.95≦a≦1.2、0.3≦X<0.36、0.3≦Y<0.36、0.3≦Z<0.36、0.005≦W<0.1、0.95<X+Y+Z+W≦1.05、1.8≦b≦2.2;
また、本発明の非水電解質二次電池は、前記本発明の非水電解質二次電池用正極活物質を有することを特徴とするものである。
充放電サイクル時の容量維持率を向上させ、優れた充放電サイクル特性を有する非水電解質二次電池を構成するには、前記の通り、正極活物質の結晶構造を安定化させることが挙げられる。本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、前記の製造方法によって製造され、かつ前記組成式で表される層状結晶構造を有する正極活物質を用いて非水電解質二次電池を構成することで、その充放電サイクル時の容量維持率を高く保持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本明細書でいう充放電サイクル時の容量維持率とは、電流密度0.2mA/cmで充放電を繰り返したときの初回放電容量に対する特定サイクルでの放電容量の比を意味している。
本発明によれば、優れた充放電サイクル特性を有する非水電解質二次電池と、該非水電解質二次電池を構成し得る正極活物質を提供することができる。
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」という場合がある)は、CuKα線によるX線回折において、2θが20°から55°の範囲に現れる、Liの化合物に由来するピークを除く全てのピークの半価幅が0.75°以上となるまで原料を粉砕助剤と共に粉砕混合し、Mn、Co、Ni、M(Mは、Ti、Zr、Hf、Ge、SeおよびPbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)およびLiを含む複合物を形成する第一工程と、前記複合物を酸素含有雰囲気中で焼成する第二工程とを有する製造方法により製造されてなるものであり、前記特定の組成式で表され、層状結晶構造を有している。かかる正極活物質を有する正極を用いて非水電解質二次電池を構成することにより、充放電サイクル時の容量維持率を高めることができる。
本発明に係る製造方法では、特に前記第一工程に特徴がある。前記の第一工程は、本発明の正極活物質の結晶構造を安定化させるための必須の工程である。すなわち、この第一工程の主たる目的は、リチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物を構成する全ての元素を含む原料を、アモルファスレベルにまで粉砕混合することによって、各原料間の界面にメカノケミカル反応を促進させて、中間相を形成させることである。この中間相が前記の第二工程における焼成時に、リチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物の結晶核となると考えている。メカノケミカル反応の詳細な機構は不明であるが、反応時に生じる表面の歪みなどで中間相にエネルギーが蓄積されていると考えられる。この蓄積されたエネルギーが焼成時に結晶成長を促進させると考えている。
なお、前記の通り、リチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物では、非特許文献1で報告されているように、結晶構造を安定化すると考えられるAl、Tiなどの元素添加が、電池の充放電サイクル特性の向上に直接繋がっていない。このことから、非水電解質二次電池用正極活物質として使用できるリチウム複合酸化物では、主成分の遷移金属元素(Mn、Co、Ni)として複数の遷移金属元素を有する多元系では、結晶構造を安定にしつつ異種元素を添加することが困難であると推察される。そこで、メカノケミカル反応による焼成時の結晶成長の促進を利用すれば、リチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物においても結晶構造を安定にしつつ異種元素を添加することができることを、本発明者らは着想するに至った。
前記第一工程では、粉砕後の粉体のX線回折(CuKα)プロファイルにおけるCo、Mn、Niを含む原料に起因する各ピーク(Li化合物に由来するピークを除く)のうち、2θが20°から55°の範囲で最も半価幅の小さなピークの半価幅の値が0.75°以上になっていれば、メカノケミカル反応が進行したと判断する。前記最も半値幅の小さなピークの半値幅が0.75°未満であると、粉砕後のX線回折においてCo、Mn、Niなどの原料のピークがはっきりと確認できるので、焼成後の正極活物質において、結晶性が劣ったり不純物相が生じ易くなったりする虞があるからである。
本発明の正極活物質は、前記の製造方法により得られるものであり、組成式LiMnCoNi(Mは、Ti、Zr、Hf、Ge、SeおよびPbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表され、かつ前記組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(1)〜(3)のいずれかを満たすものである。
本発明の正極活物質のうち、前記組成式で表され、かつ組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(1)を満たすリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物において、Mnの量X、Coの量と元素Mとの和Y+W、Niの量Z、および酸素の量bは、それぞれ、0.30≦X<0.36、0.30≦Y+W<0.36、0.30≦Z<0.36、1.8≦b<2.2である。前記組成式で表され、かつ組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(1)を満たすリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物では、Coの一部が元素Mで置換されていると考えられ、Mnの量と、Coと元素Mとの合計量と、Niの量とがモル比で、1:1:1またはその近傍にある。このような組成の正極活物質とすることで、その層状結晶構造を安定化することができ、かつ元素Mの添加による容量低下も抑制することができる。
なお、前記組成式で表され、かつ組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(1)を満たすリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物では、Mnの量XとCoの量YとNiの量Zと元素Mの量Wとの関係は、0.95<X+Y+Z+W≦1.05である。X+Y+Z+Wが大きすぎると、容量が低下してしまう。
また、本発明の正極活物質のうち、前記組成式で表され、かつ組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(2)を満たすリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物において、Mnの量X、Coの量Y、Niと元素Mとの和Z+W、および酸素の量bは、それぞれ、0.30≦X<0.36、0.30≦Y<0.36、0.30≦Z+W<0.36、1.8≦b<2.2である。前記組成式で表され、かつ組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(2)を満たすリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物では、Niの一部が元素Mで置換されていると考えられ、Mnの量と、Coの量と、Niと元素Mとの合計量とがモル比で、1:1:1またはその近傍にある。このような組成の正極活物質とすることによっても、その層状結晶構造を安定化することができ、かつ元素Mの添加による容量低下も抑制することができる。
なお、前記組成式で表され、かつ組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(2)を満たすリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物では、Mnの量XとCoの量YとNiの量Zと元素Mの量Wとの関係は、0.95<X+Y+Z+W≦1.05である。X+Y+Z+Wが大きすぎると、容量が低下してしまう。
更に、本発明の正極活物質のうち、前記組成式で表され、かつ組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(3)を満たすリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物において、Mnの量X、Coの量Y、Niの量Z、および酸素の量bは、それぞれ、0.30≦X<0.36、0.30≦Y<0.36、0.30≦Z<0.36、1.8≦b<2.2であり、かつMnの量XとCoの量YとNiの量Zと元素Mの量Wとの関係は、0.95<X+Y+Z+W≦1.05である。
すなわち、前記組成式で表され、かつ組成式におけるa、b、X、YおよびZが、前記(3)を満たすリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物では、Mnの量とCoの量とNiの量とがモル比で、1:1:1またはその近傍にあり、元素Mの添加によって、Mn、CoおよびNiの一部が元素Mで置換されていると考えられる。このような組成の正極活物質とすることによっても、その層状結晶構造を安定化することができ、かつ元素Mの添加による容量低下も抑制することができる。
本発明の正極活物質における元素Mは、Ti、Zr、Hf、Ge、Se、Pbが挙げられ、正極活物質は、これらの添加元素Mのうち1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。かかる元素の存在によって、充放電サイクル時の容量維持率の高い電池を構成し得る正極活物質とすることができる。前記元素Mの中でも、Tiが特に好ましい。Tiは、本発明に係る元素Mの量の範囲内で特に固溶し易いためである。
本発明の正極活物質における元素Mの量Wは、組成式に係る前記(1)〜(3)のいずれを満たすものにおいても、大きすぎると正極活物質の単位質量当たりの容量が低下してしまうことから0.1以下であり、容量低下をより抑制する点からは0.05以下であることが好ましい。また、元素Mの量Wは、小さすぎると元素Mの添加による効果が得られないため、組成式に係る前記(1)〜(3)のいずれを満たすものにおいても、Wは0.005以上であり、元素Mの添加による効果がより得られやすくなる点で0.01以上であることが好ましい。
本発明の正極活物質では、組成式に係る前記(1)〜(3)のいずれを満たすものにおいても、Liの量aは0.95以上1.2以下である。Liの量aが小さすぎると、目的とする組成の正極活物質以外の副相が生成し易く、容量が低下してしまう。また、Liの量aが大きすぎると、製造時の第二工程で焼成した際に粗大な粒子が生成し易く、更に正極活物質粉体のpHも上がるため、正極を製造する際に使用する正極活物質を含有する組成物(塗料)の調製が困難となる虞がある。
なお、本発明の正極活物質は層状結晶構造を有するものであるが、これはX線回折測定により確認することができる。
本発明の正極活物質は、前記の第一工程と第二工程とを有する製造方法により製造される。第一工程は、Mn、Co、Ni、添加元素MおよびLiを含む複合物を形成する工程である。
第一工程では、まず、Mnを含む化合物(以下、「マンガン化合物」という)、Coを含む化合物(以下、「コバルト化合物」という)、Niを含む化合物(以下、「ニッケル化合物」という)、Liを含む化合物(以下、「リチウム化合物」という)および元素Mを含む化合物(以下、「M含有化合物」という)を所定比で測り取り、粉砕混合機で処理する。このときの各原料の比率を調節することにより、正極活物質の組成を、前記組成式に係る前記(1)〜(3)のいずれかを満足し得るように調整することができる。
粉砕混合機としては強い圧縮、せん断応力がかかるものが望ましい。種類は特に限定しないが、例として、三井鉱山株式会社製「乾式アトライタ」、「湿式アトライタ」、「ダイナミックミル」;ホソカワミクロン株式会社製「攪拌型ボールミル ATR」;株式会社奈良機械製作所製「メカノマイクロス」;などが挙げられる。
原料のマンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、リチウム化合物およびM含有化合物としてはそれぞれ、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、塩基性炭酸塩、硝酸塩、塩化物塩、硫酸塩、有機酸塩などが挙げられるが、鉱酸塩は焼成時に有害なガスを発生することから、工業的には酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、塩基性炭酸塩が好ましい。これらの原料はそれぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、マンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、リチウム化合物およびM含有化合物を別々に用いる必要はなく、コバルト元素、マンガン元素、ニッケル元素、リチウム元素およびM含有化合物の中から二種以上の元素を含む共沈体のような複合体を用いてもよいし、コバルト元素、マンガン元素、ニッケル元素、リチウム元素および元素M中から二種類以上の元素を含む化合物を用いてもよく、要はコバルト元素とマンガン元素とニッケル元素とリチウム元素と元素Mとが必要量含まれるようにすればよい。また、リチウム化合物に関しては、焼成時の拡散が速いため、マンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、M含有化合物と同時に粉砕混合する必要は無く、マンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、M含有化合物を粉砕混合した後にリチウム化合物を添加してもよい。更にそのリチウム化合物の添加の方法も特に限定はなく、リチウム化合物をマンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、M含有化合物に施したのと同様に粉砕混合しても良いし、水や有機溶媒に溶解させて、マンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、M含有化合物の粉砕混合したものに混ぜ合わせても良い。
なお、第一工程では、粉砕時に粉体の再凝集を防ぐために、粉砕助剤を加えることが必要である。粉の性状によっては粉砕時に粉が再凝集または粉砕混合機の容器への固着を起こして粉砕が進まない。粉砕助剤を加えることで粉に流動性が生まれ、再凝集、固着を防ぎ、粉砕時のエネルギーを効率よく粉体に伝えることができ、メカノケミカル反応を促進することができる。また、粉砕を水や有機溶媒中で行い、湿式粉砕として反応をさせてもよいが、乾式粉砕であれば粉砕後に得られた粉砕を乾燥させる必要がなく、生産コストの面でも有利である。本発明法ではこの粉砕助剤を一種類用いても良いし、複数を併用しても良い。なお、特に乾式で混合粉砕を行う場合、原料の容器付着による混合の偏りを防ぐために、第一工程の前にプレミックス工程を入れてもよい。
前記の粉砕助剤としては、水、シリコンオイル、アセトン、脂肪酸(マレイン酸、オレイン酸、カプリル酸、ステアリン酸など)、金属アルコキシド類(テトラエトキシシランなど)、アミン類(トリエタノールアミンなど)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、1−ブタノールなど)、脂肪酸塩(ステアリン酸ナトリウムなど)、アミンアセテート、コロイド状シリカ、カーボンブラック、鉱物微粉(カオリン、タルクなど)、カチオン性界面活性剤(ドデシルアンモニウムクロリドなど)、ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなど)、無機塩類(炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなど)、水溶性ポリマー(ポリカルボキシレートなど)、トリポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
粉砕助剤の添加量は、第一工程での粉砕に供する混合物100質量部に対して、乾式粉砕では通常は0.01〜30質量部であり、生産コストを考慮すると、0.1〜10質量部であることが好ましい。液体の粉砕助剤を多量に用いるといわゆる湿式粉砕となる。この場合は、第一工程での粉砕に供する混合物100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、粉砕助剤の量の上限は、混合物100質量部に対して100000質量部とする。多すぎるとコスト面で不利であり、余り粘度の高い液体を多量に用いると逆に反応が進みにくくなって、不純物生成の原因となる。
本発明の正極活物質を製造するための第二工程は、第一工程で得られた粉体(Mn、Co、Ni、添加元素MおよびLiを含む複合物の粉体)を酸素含有雰囲気中で焼成する焼成工程である。
粉体の焼成には、例えば、ボックス炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルンなどを使用することができる。焼成工程は、昇温・最高温度保持・降温の三工程に分けたとき、二番目の最高温度保持部分は必ずしも一回には限られず、目的に応じて二段階またはそれ以上の段階をふませてもよく、二次粒子を破壊しない程度に凝集を解消することを意味する解砕工程、または一次粒子若しくは更に微小粉末まで砕くことを意味する粉砕工程を挟んで、昇温・最高温度保持・降温の工程を二回またはそれ以上繰り返してもよい。
昇温工程では、通常1〜20℃/分の範囲で炉内を昇温させる。昇温速度が速すぎると炉内温度が設定温度に追従しきれなくなり、遅すぎると工業的に不利である。
焼成温度は、400℃以上1200℃以下が好ましく、600℃以上1000℃以下がより好ましい。焼成温度まで昇温した後に保持する時間は0.5〜50hが好ましく、4〜20hがより好ましい。保持時間が長すぎると粉体同士の焼結が進み、その後の解砕が困難になり、短すぎると結晶性の高い粉体が得られない。
前記の第二工程を経て本発明の正極活物質が得られるが、第二工程の後に、焼成後の正極活物質の焼成による軽い凝集をほぐす目的で解砕工程を入れてもよい。
本発明の正極活物質は非水電解質二次電池の正極用活物質に好ましく利用でき、本発明の正極活物質の使用によって、充放電サイクル時の容量維持率の高い非水電解質二次電池を構成できる。
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の正極活物質を有していればよく、その他の構成・構造については、従来公知の非水電解質二次電池で採用されている構成・構造を適用できる。
正極としては、例えば、集電体の片面または両面に、本発明の非水電解質二次電池用正極活物質を含有する正極合剤層を有するものが挙げられる。
正極における正極合剤層は、本発明の正極活物質を少なくとも有する正極合剤を、集電体上に層状に成形したものである。また、正極合剤層には、結着剤と導電助剤を含有させることが望ましい。正極合剤層に導電助剤と結着剤とを含有させることで、正極の電子伝導性と強度とを高めることができる。
正極の導電助剤としては、電池内で化学的に安定なものであれば、無機材料、有機材料のいずれも使用できる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;アルミニウム粉などの金属粉末;フッ化炭素;酸化亜鉛;チタン酸カリウムなどからなる導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などが挙げられる。これらの導電助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックは、平均粒径が0.01〜1μmと小さいため、正極活物質粒子間の隙間に充填でき、本来電池容量に関与しないスペースを利用できるので、正極活物質粒子の量を減らすことなく電子伝導性を付与できるからである。
正極の結着剤としては、電池内で化学的に安定なものであれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体またはそのNaイオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体またはそのNaイオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体またはそのNaイオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体またはそのNaイオン架橋体などが挙げられる。これらの結着剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、PVDFとPTFEが特に好ましい。これらは、少量で結着力を発揮できるからである。
正極は、例えば、正極活物質に導電助剤や結着剤などを適宜添加した正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させ(結着剤は溶剤に溶解していてもよい)、スラリー状やペースト状の組成物とし、該組成物を集電体に塗布して帯状の成形体(正極合剤層)に形成することで作製される。ただし、正極の作製方法は、前記の方法に限られず、他の方法により作製してもよい。集電体上に形成する正極合剤層の厚みは、通常20〜100μmである。
正極の集電体の材質は、構成された電池において化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウム、アルミニウム合金またはステンレス鋼の表面に炭素層またはチタン層を形成した複合材などを用いることができる。これらの中でも、アルミニウムまたはアルミニウム合金が特に好ましい。これらは、軽量で電子伝導性が高いからである。前記集電体には、例えば、前記材質からなるフォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが使用される。また、集電体の表面に、表面処理を施して凹凸を付けることもできる。集電体の厚さは特に限定されないが、通常1〜500μmである。
正極合剤層においては、正極活物質と結着剤と導電助剤の合計質量に対して、正極活物質を80質量%以上98質量%以下含み、結着剤を1質量%以上10質量%以下含み、導電助剤を1%以上19%以下含むことが好ましい。この範囲内であれば、電極反応に直接関与しない結着剤の含有量が少ないので、電極を高容量化できるからである。
負極には、例えば、負極活物質と結着剤などとを有する負極合剤を、集電体上に層状(負極合剤層)に成形したものが使用できる。負極の負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、Si、Snなどのリチウムと合金化可能な金属またはその合金などが用いられる。また、金属リチウムやリチウム−アルミニウム合金を用いることもできる。
負極の結着剤としては、正極用の結着剤として例示した各種結着剤が使用でき、その中でも、スチレンブタジエンゴム、PVDF、エチレン−アクリル酸共重合体またはそのNaイオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体またはそのNaイオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体またはそのNaイオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体またはそのNaイオン架橋体が特に好ましい。
負極合剤層には導電助剤を添加しなくてもよいが、添加してもよい。負極の導電助剤としては、正極用の導電助剤として例示した各種導電助剤が使用できる。
負極は、例えば、負極活物質に結着剤(更には必要に応じて導電助剤)などを適宜添加した負極合剤を、NMPなどの溶剤に分散させ(結着剤は溶剤に溶解していてもよい)、スラリー状やペースト状の組成物とし、該組成物を集電体に塗布して帯状の成形体(負極合剤層)に形成することで作製される。ただし、負極の作製方法は、前記の方法に限られず、他の方法により作製してもよい。集電体上に形成する負極合剤層の厚みは、通常20〜100μmである。
負極の集電体の材質は、構成された電池において化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。例えば、銅または銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、銅、銅合金またはステンレス鋼の表面に炭素層またはチタン層を形成した複合材などを用いることができる。これらの中でも、銅または銅合金が特に好ましい。これらは、リチウムと合金化せず、電子伝導性も高いからである。負極の集電体には、正極の集電体と同様に、例えば、前記材質からなるフォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが使用される。また、集電体の表面に、表面処理を施して凹凸を付けることもできる。集電体の厚さは特に限定されないが、通常1〜500μmである。
非水電解質としては、溶媒に電解質塩を溶解させたものが使用できる。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒の1種を、または2種以上混合した混合溶媒を用いることができる。これらの中では、ECとMECとDECとの混合溶媒が好ましく、この混合溶媒は、混合溶媒の全容量に対してDECを15容量%以上80容量%以下含むことが特に好ましい。この範囲内であれば、電池の低温特性や充放電サイクル特性を維持しつつ、高電圧充電時における溶媒の安定性を高めることができるからである。
非水電解質に係る電解質塩としては、リチウムの過塩素酸塩、有機ホウ素リチウム塩、トリフロロメタンスルホン酸塩などの含フッ素化合物の塩、またはイミド塩などが好適に用いられる。このような電解質塩の具体例としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiCF2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここで、Rfはフルオロアルキル基を表す。〕などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、LiPFやLiBFなどが、充放電特性が良好なことから特に好ましい。これらの含フッ素有機リチウム塩はアニオン性が大きく、かつイオン分離しやすいので前記溶媒に溶解しやすいからである。
セパレータとしては、その材質や形状は特に限定されず、絶縁性があり、イオン透過率が高く、電気抵抗が低く、保液性が高いものが好ましい。通常、厚さが10〜300μmで、空孔率が30〜80%であるセパレータが使用される。また、セパレータの孔径は、電極より脱離した活物質、導電助剤および結着剤などが通過しない程度であることが好ましく、例えば、0.01〜1μmであることが好ましい。
セパレータは、内部短絡による発熱(100〜140℃)に応じてセパレータが軟化または溶融することにより、セパレータの孔部が閉塞されて電流を遮断するシャットダウン機能を有することが好ましい。電池の安全性を更に向上できるからである。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンからなる微孔性フィルムや不織布などをセパレータとして用いると、シャットダウン機能を付与できるので好ましい。また、前記材質の微孔性フィルムと不織布とを複数積層するか、または微孔性フィルム同士や不織布同士を複数積層することによって構成される複層構造のセパレータを用いることにより、高温環境下で使用する場合の電池の信頼性をより高めることができる。
これら電池部品を納める電池ケースとしては、金属製の角形ケース、金属製の円筒ケース、ラミネートフィルムからなるラミネートケースなどが好ましく用いられる。
本発明の非水電解質二次電池は充放電サイクル時の容量維持率が高いことから、こうした特性を生かして、電動工具などのパワーツールの電源用途を始めとして、従来公知の非水電解質二次電池が適用されている用途に好ましく用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極活物質の合成>
原料として炭酸リチウム、酸化マンガン、水酸化コバルト、水酸化ニッケルおよび酸化チタン(アナターゼ型)を使用し、正極活物質を合成した。原料は各々のモル比がLi:Mn:Co:Ni:Ti=1.05:0.33:0.33:0.30:0.03となるように秤量した。これらの原料を乳鉢にて混合した。得られた原料混合物と、5mmφジルコニアビーズと、粉砕助剤であるプロピレングリコール(原料混合物100質量部に対して、プロピレングリコール3質量部)とを、ジルコニア製ポットに入れ、遊星ボールミルにより2時間精密粉砕して、平均粒径が数十nmであるアモルファス状態の粉体を得た。この粉体のX線回折(以下、「XRD」という)測定により得られたX線回折を測定した。粉体のアモルファス化が進み、2θが20°から55°の範囲でLi原料起因のピークを除くピークでは最も半価幅の小さいピークの半価幅の値は0.75°以上であった。
得られた粉体を電気炉に入れ、大気雰中囲気下、昇温速度10℃/minの条件で昇温し、その後1000℃で6時間焼成した。焼成後、降温速度10℃/minで炉内を冷却し、電気炉内が常温になったことを確認した後に焼成物を回収し、軽く解砕した後、フルイ分級により粒径30μm以上の粗大粒子を除去して、層状結晶構造を有する正極活物質を得た。
得られた正極活物質は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析により、仕込み相当のLi1.08Mn0.33Co0.33Ni0.30Ti0.03であることを確認した。XRD測定でLiNiOと同じ層状構造を有することを確認した。更にX線マイクロアナライザー(以下、EPMA)による正極活物質の元素マッピングにおいて、Tiの偏析がないことを確認した。また、正極活物質のBET比表面積は、1.15m/gであった。
<正極の作製>
前記の正極活物質100質量部と、導電助剤である鱗片状黒鉛10質量部と、結着剤であるPVDF5質量部とを配合して、正極合剤を得た。この正極合剤に分散媒であるNMPを添加し、混練して正極合剤含有スラリーを調製した。得られた正極合剤含有スラリーを集電体であるアルミニウム箔(厚み15μm)の片面に塗布し、乾燥後、圧延ロール機でプレスして、正極を得た。
<非水電解質二次電池の作製>
前記の正極を11mmφの大きさで打ち抜いた。この正極を用い、対極に金属リチウム板(厚み1mm)を、セパレータに多孔質樹脂からなるものを、および電解液にECとDECとの50:50(質量比)の混合溶媒に、LiPFを1mol/lの濃度で溶解させたものを、それぞれ用いて、非水電解質二次電池(二極式セル)を作製した。
実施例2
モル比でLi:Mn:Co:Ni:Ti=1.05:0.33:0.30:0.33:0.03となるように各原料の仕込み比を調整した以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を合成した。得られた正極活物質についてICP発光分析を行い、仕込み相当のLi1.05Mn0.33Co0.30Ni0.33Ti0.03であることを確認した。また、XRD測定でLiNiOと同じ層状構造を有することを確認した。得られた正極活物質のBET比表面積は1.19m/gであった。
前記の正極活物質を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池(二極式セル)を作製した。
実施例3
モル比でLi:Mn:Co:Ni:Ti=1.05:0.30:0.30:0.30:0.09となるように各原料の仕込み比を調整した以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を合成した。得られた正極活物質についてICP発光分析を行い、仕込み相当のLi1.05Mn0.30Co0.30Ni0.30Ti0.10であることを確認した。また、XRD測定でLiNiOと同じ層状構造を有することを確認した。得られた正極活物質のBET比表面積は1.25m/gであった。
前記の正極活物質を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池(二極式セル)を作製した。
比較例1
Ti源となる酸化チタンを使用しない他は、モル比でLi:Mn:Co:Ni=1.05:0.33:0.33:0.33となるように各原料の仕込み比を調整し、実施例1と同様にして、正極活物質を合成した。得られた正極活物質についてICP発光分析を行い、仕込み相当のLi1.05Mn0.33Co0.33Ni0.33であることを確認した。また、XRD測定でLiNiOと同じ層状構造を有することを確認した。得られた正極活物質のBET比表面積は1.19m/gであった。
前記の正極活物質を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池(二極式セル)を作製した。
比較例2
モル比でLi:Mn:Co:Ni:Ti=1.05:0.33:0.33:0.33:0.10となるように各原料の仕込み比を調整した以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を合成した。得られた正極活物質についてICP発光分析を行い、仕込み相当のLi1.05Mn0.33Co0.33Ni0.33Ti0.10であることを確認した。また、XRD測定でLiNiOと同じ層状構造を有することを確認した。得られた正極活物質のBET比表面積は1.10m/gであった。
前記の正極活物質を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池(二極式セル)を作製した。
実施例1〜3および比較例1〜2の非水電解質二次電池の放電容量を下記の方法で測定した。
<非水電解質二次電地の放電容量の測定>
充放電容量測定用の非水電解質二次電池(二極式セル)について、温度25℃で、まず電流密度0.2mA/cmの定電流で電圧4.3Vまで充電した後、充電時間の総計が8時間になるまで、充電電圧を4.3Vに保持した。充電終了後の非水電解質二次電池を5分間開放させた後、0.2mA/cmの定電流で終止電圧2.6Vまで放電させた。このときの正極活物質1gあたりの放電容量を、非水電解質二次電地の放電容量とした。初回放電容量は、充放電サイクル試験における1サイクル目の放電容量を意味する。また、容量維持率は、電流密度0.2mA/cmで充放電を繰り返したときの初回放電容量に対する所定サイクル時の放電容量の比を意味する。
実施例1〜3および比較例1〜2の初回放電容量、充放電50サイクル後の放電容量、並びに充放電50サイクル後の容量維持率を表1に示す。
Figure 2008288005
実施例1〜3の正極活物質への添加元素はTiであり、Tiの添加量は被置換元素に対して10mol%である。実施例1の正極活物質における被置換元素はNiの一元素であり、実施例2の正極活物質における被置換元素はCoの一元素であり、実施例3の正極活物質における被置換元素は、Mn、Co、Niの三元素である。
表1から、実施例1〜3の非水電解質二次電池の充放電50サイクル後における容量維持率は、Tiを添加していない正極活物質を用いた比較例1の電池よりも高いことが分かる。また、実施例1〜3の非水電解質二次電池の初回放電容量は、Tiを添加していない正極活物質を用いた比較例1の電池に対し90%以上を保持し、Tiを添加しても初回放電容量が損なわれないことが分かる。
一方、比較例2の正極活物質は、Mnの量X、Coの量Y、Niの量Z、およびTiの量Wが、X+Y+Z+W=1.10の量的関係を有し、かかるX+Y+Z+Wの量が大きすぎるために、これを用いた比較例2の電池では、初回放電容量が低下していることが分かる。

Claims (4)

  1. CuKα線によるX線回折において、2θが20°から55°の範囲に現れる、Liの化合物に由来するピークを除く全てのピークの半価幅が0.75°以上となるまで原料を粉砕助剤と共に粉砕混合し、Mn、Co、Ni、M(Mは、Ti、Zr、Hf、Ge、SeおよびPbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)およびLiを含む複合物を形成する第一工程と、前記複合物を酸素含有雰囲気中で焼成する第二工程とを有する製造方法により製造されてなり、
    組成式LiMnCoNiで表され、かつ前記組成式におけるa、b、X、YおよびZが、下記(1)〜(3)のいずれかを満たし、層状結晶構造を有することを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
    (1)0.95≦a≦1.2、0.3≦X<0.36、0.3≦Y+W<0.36、0.3≦Z<0.36、0.005≦W<0.1、0.95<X+Y+Z+W≦1.05、1.8≦b≦2.2
    (2)0.95≦a≦1.2、0.3≦X<0.36、0.3≦Y<0.36、0.3≦Z+W<0.36、0.005≦W<0.1、0.95<X+Y+Z+W≦1.05、1.8≦b≦2.2
    (3)0.95≦a≦1.2、0.3≦X<0.36、0.3≦Y<0.36、0.3≦Z<0.36、0.005≦W<0.1、0.95<X+Y+Z+W≦1.05、1.8≦b≦2.2
  2. 前記組成式における元素Mの量Wが、0.05以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  3. 前記組成式における元素MがTiである請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質を有することを特徴とする非水電解質二次電池。
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