以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1乃至図4には、本発明に従う構造を有する洗車機の一実施形態として、自動車の洗浄に使用される洗車機10が、その正面形態と側面形態と上面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態の洗車機10は、機台ベース12を有している。そして、この機台ベース12に対して、それを走行可能とする2種類の走行輪である4個のキャスタ14と左右の走行用タイヤ16a,16bが、それぞれ取り付けられている。また、洗車ブラシ18が、回転軸20回りに回転可能に支持されている。
より具体的には、機台ベース12は、基台部22を更に有している。この機台ベース12の基台部22は、図5乃至図8に示される如く、略長手矩形の平板形態を呈している。また、その下面の四隅部には、自由回転する車輪を備えたキャスタ14が、それぞれ一つずつ取り付けられている。更に、このキャスタ14は、鉛直方向に延びる回動軸(図示せず)を有して、かかる回動軸回りに回動可能とされた、従来より公知の緩衝キャスタからなっている。かくして、4個のキャスタ14により、基台部22に対する下方への衝撃入力に対して緩衝作用が発揮されるようになっている。また、それと共に、路面上等での機台ベース12の自由な方向への走行が許容されるように構成されている。なお、図1乃至図8、更には後述する図9と図11乃至図14については、洗車機10の全体的乃至は部分的な構造の理解を容易とするために、一部の部材や部品が各図毎に省略されて示されていることが、理解されるべきである。
また、かかる基台部22の下面の長手方向中央部における幅方向の左右両側端部には、左走行用タイヤ16aと右走行用タイヤ16bとが、それらに固定された車軸24を、基台部22の幅方向内側に向かって水平に延出せしめた状態で、それぞれ配置されている。更に、それらの車軸24は、2個のベアリング26,26を有するステー27にて、基台部22の下面に回転可能に、それぞれ取り付けられている。
また、基台部22の下面における左走行用タイヤ16aと右走行用タイヤ16bの間には、それらを回転駆動せしめる走行駆動源としての左走行用モータ28aと右走行用モータ28bとが配置されている。即ち、左及び右走行用モータ28a,28bは、それぞれの駆動軸30を、基台部22の長手方向に延出せしめた状態、換言すれば、左及び右走行用タイヤ16a,16bの各車軸24に直交して延びる状態で、配置されている。なお、それら左及び右走行用モータ28a,28bは、それぞれ、互いに同一方向に回転駆動せしめられる、例えば、従来から公知の誘電モータからなっている。
そして、そのように配置された左及び右走行用モータ28a,28bのそれぞれの駆動軸30が、各車軸24における走行用タイヤ16側とは反対側の端部に対して、そこに取り付けられるギヤボックス32内に収容された、回転方向を変換するギヤ(図示せず)を介して連結されている。これによって、同一方向に回転駆動せしめられる左及び右走行用モータ28a,28bの回転駆動に伴って、左及び右走行用タイヤ16a,16bが同一方向に回転せしめられるようになっている。そして、機台ベース12の全体が、図5に矢印:アにて示される基台部22の長手方向の一方側に向かって走行せしめられるようになっている。なお、以下からは、機台ベース12の幅方向において、左走行用タイヤ16aが位置する側を左側、またその部分を左側部と言う。更に、右走行用タイヤ16bが位置する側を右側、またその部分を右側部と言う。そしてまた、機台ベース12の長さ方向において、走行方向前方側(図5中、矢印:アにて示される側)の部分を前部、その後方側(図5中、矢印:アとは反対側)部分を後部と言うこととする。
また、図4乃至図6から明らかなように、機台ベース12における基台部22の前側及び後側の各端面には、アウトリガー34が、それぞれ1個ずつ固設されている。このアウトリガー34は、長手矩形の筒体乃至はパイプからなるハウジング36と、このハウジング36内に、その両側開口部から突出/引込されることで、水平方向においてそれぞれ伸縮可能となるように収納された、2個の棒状乃至はロッド状のアーム38,38と、それら各アーム38の先端部に対して、上下方向に移動可能に挿通配置されて、上下方向に移動せしめられることにより、下方に向かって伸縮可能とされた棒状乃至はロッド状の接地ロッド40と、この接地ロッド40を任意の伸縮位置にて固定する一対の固定ナット42,42とを含んでなる公知の構造を有している。
そして、例えば、洗車機10が、使用後に、所定の場所に保管される際に、各アウトリガー34の2個のアーム38,38が水平方向に伸長せしめられると共に、各接地ロッド40が、その下端部において接地する位置まで下方に伸長せしめられた上で、各固定ナット42にて、その伸長位置が固定されることによって、機台ベース12(洗車機10)が地面に固定されるようになっている。そうして、洗車機10の保管場所からの移動が阻止されるように構成されているのである。一方、洗車機10の使用時には、各接地ロッド40を上方に上げると共に、2個のアーム38,38をハウジング36に収容することによって、アウトリガー34が容易に収納可能とされている。
また、図1,図2に示される如く、基台部22の左側部の上方には、タンクテーブル44が、基台部22の上面と所定距離隔てた位置において、図示しない複数の支柱により支持されて、設置されている。また、基台部22の左側部における前部と後部とには、略コ字形状を呈する板材からなる保護カバー46が、基台部22とタンクテーブル44の間を覆うようにして、それぞれ立設されている。
さらに基台部22の左側部上には、ガソリンエンジン式やディーゼルエンジン式などの内燃機関式の発電機48と制御装置50とが、2個の保護カバー46,46の間に挟まれて、タンクテーブル44の下方に並んで位置するように設置されている。これによって、発電機48と制御装置50とが、その前後方向を2個の保護カバー46,46にて保護された状態で、位置せしめられている。
なお、ここで用いられる内燃機関式の発電機48は、よく知られているように、ガソリンや軽油等を燃料とする内燃機関(エンジン)の駆動によって交流電圧を発生するものである。そして、本実施形態においては、この発電機48が、例えば、回転子コイルに流れる電流を制御して、出力電圧を一定に保つことにより、電力動揺を減衰し、その安定化を図るように構成された、公知の自動電圧調整装置(図示せず)を内蔵している。
このような発電機48が、それに並んで配置された制御装置50と、機台ベース12における基台部22の下面に取り付けられた左及び右走行用モータ28a,28bとに、電気的に接続されている。それによって、各走行用モータ28に対して一定の電圧が安定的に供給され、また、その給電が、制御装置50にて制御されるように構成されている。
また、制御装置50には、操作手段としてのリモコン装置52が、更に電気的に接続されている。そして、このリモコン装置52に設けられる各種の押しボタンの押圧操作に基づいて、発電機48から各走行用モータ28への給電の開始及び停止が行われるようになっている。即ち、各走行用モータ28の駆動及び停止が制御装置50にて制御されて、機台ベース12の前進及び停止が行われるようになっている。
かくして、本実施形態の洗車機10においては、特開2006−264676号公報に記載される如きリモコン装置52の押しボタンの押圧操作に基づいて、機台ベース12の走行方向を左右の二方向に手動で変更し得るようになっているのである。そして、それによって、洗車されるべき自動車の近くまで、容易に自走可能とされている。しかも、機台ベース12の走行を可能となす左及び右走行用タイヤ16a,16bが、機台ベース12に設置された発電機48から左及び右走行用モータ28a,28bの給電によって回転駆動せしめられるようになっている。そのため、例えば、位置固定に設けられた電源からの給電により各走行用タイヤ16a,16bが回転駆動せしめられる場合とは異なって、機台ベース12が、より自由に且つ広範囲にわたって移動可能とされている。
また、タンクテーブル44上には、洗浄液としての洗浄水が内部に収容されたタンク54が設置されている。即ち、タンク54は、発電機48の上方において、基台部22の幅方向中央部よりも左側に偏倚した位置に固設されている。また、このタンク54内には、水中ポンプ56が収容配置されている。そして、この水中ポンプ56には、タンク54の外部に延び出す送水パイプ58が接続されている。これによって、タンク54内の洗浄水が、水中ポンプ56の駆動により、送水パイプ58を通じて外部に送り出されるようになっている。また、かかる水中ポンプ56は、前記リモコン装置52に設けられた押しボタンの押圧操作により、前記発電機48から給電されて、駆動せしめられるようになっている。このように、本実施形態においては、水中ポンプ56と送水パイプ58とを含んで、洗浄液供給機構が構成されている。なお、図1及び図2中、60は、タンク54内への給水を行うための給水パイプである。また、62は、タンク54内の洗浄水の収容量を確認するための水位計である。また、洗浄水には、水や、水に適当な添加物(洗剤等)を溶解したもの、水に適当な処理(加熱等)を加えたもの等が何れも採用され得る。
さらに、図1乃至図4に示されるように、機台ベース12の基台部22における上記発電機48や制御装置50、タンク54の設置側とは反対側の右側部分には、ブラシカバー64が、立設されている。このブラシカバー64は、カバー本体66と2個の支柱部68,68とからなっている。そして、カバー本体66は、全体として、横断面が半円に満たない円弧状乃至はU字状とされた分割筒形状を呈する薄肉の樹脂板やステンレス板、アルミ板等にて形成されて、基台部22上に、凹状内面を右側に向けて配されている。2個の支柱部68,68は、カバー本体66の周方向の両側端縁部に沿って、それぞれ高さ方向に延出し、且つ互いに対向する状態で、機台ベース12の基台部22に立設されている。なお、本実施形態において、カバー本体66の左側面である凸状外面には、補強部材70が固定されている。この補強部材70は、カバー本体66の湾曲に沿って厚さ方向で湾曲せしめられた板状の部材であって、上下方向で所定距離を隔てて複数がカバー本体66に取り付けられており、カバー本体66の前後方向(湾曲方向)で略全長に亘って延びて、カバー本体66を補強している。
また、このようなブラシカバー64の2個の支柱部68,68の上端部には、補強体72が設けられている。この補強体72は、図4に示されるように、各支柱部68の上端部同士の間に跨って延びる、長手の狭幅平板状を呈する2個の第一リブ74a,74aと、それら2個の第一リブ74a,74aの間に跨って延びる狭幅平板状の2個の第二リブ74b,74bとが一体的に組み合わされて、成っている。
また、このブラシカバー64に設けられた補強体72における2個の第一リブ74a,74aのうちの一方のものの長さ方向中央部には、第一ベアリング76が、内孔を上下方向に開口させる状態で固着されている。更に、基台部22においても、その右側面の前後方向の中央部に、第二ベアリング78が、内孔を上下方向に開口させ、且つ第一ベアリング76と同心的に位置せしめた状態で、固着されている。
そして、洗車ブラシ18の回転軸20が、その上端部と下端部とにおいて、上記第一ベアリング76と第二ベアリング78のそれぞれの内孔内に挿入されて固定されている。これによって、洗車ブラシ18が、その一部を、基台部22から右側に突出させた状態で、機台ベース12に対して位置固定に、従って、上下方向に延びる回転軸20回りに安定的に回転可能な状態で、支持されている。なお、この洗車ブラシ18は、上部側に位置する、毛足の長い上部ブラシ21aと、下部側に位置する、上部ブラシ21aよりも毛足の短い複数の下部ブラシ21bとを有している。
かくして、ここでは、ブラシカバー64(カバー本体66)が、洗車ブラシ18の周囲のうち、洗車側とは反対側にあたる、左側の半分に満たない部分を、全長にわたって覆い(取り囲み)つつ、機台ベース12に対して、基台部22上における洗車ブラシ18と前記発電機48及び制御装置50との間に位置する状態で、支持されている。なお、図1中、80は、昇降用梯子である。
また、かかるブラシカバー64の各支柱部68の上端部に設けられた補強体72の上面には、例えば誘導モータからなるブラシ駆動モータ82が、図示しない駆動軸を水平方向に延出せしめた状態で固定されている。更に、かかるブラシ駆動モータ82の駆動軸と、第一ベアリング76の内孔を貫通して延びる回転軸20の上端縁部との間には、ギヤボックス84が介在せしめられている。そして、それら回転軸20とブラシ駆動モータ82の駆動軸とが、このギヤボックス84内に収容された回転方向を変換するギヤ(図示せず)を介して、連結されている。これによって、ブラシ駆動モータ82の駆動に伴って、洗車ブラシ18が、回転軸20回りに回転駆動せしめられるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態においては、ブラシ駆動モータ82を含んで、回転駆動機構が構成されている。
また、このようなブラシ駆動モータ82は、前記リモコン装置52に設けられた押しボタンの押圧操作により、前記制御装置50の制御の下で、駆動・停止が行われるようになっている。即ち、かかる押しボタンを1回押圧操作することで、ブラシ駆動モータ82が、自走可能な機台ベース12に設置された発電機48から給電されて、駆動せしめられる。また、そのような状態下において、押しボタンをもう1回押圧操作すると、ブラシ駆動モータ82の駆動が停止せしめられるようになっている。これによって、本実施形態においては、任意の場所で、洗車ブラシ18を回転駆動せしめることが出来、以て、所望の場所での洗車が可能となっている。
さらに、ここでは、ブラシ駆動モータ82が、制御装置50に内蔵された回転速度調節装置にて、回転速度が任意に調節されるようになっている。なお、前記せる如くブラシ駆動モータ82が、誘導モータにて構成されている。それ故、回転速度調節装置による回転速度制御は、例えば、従来より公知のデューティー比制御や、コンバータ制御とインバータ制御を併用した制御、更にはサイクルコンバータ制御等によって容易に実現される。
そして、そのように、ブラシ駆動モータ82が、制御装置50に内蔵の回転速度調節装置にて回転速度が任意に調節されるようになっていることによって、例えば、洗車作業において、車体外周面86(図1や図4に二点鎖線で示す)の汚れ状態等に応じて、洗車ブラシ18の回転速度を増減出来る。また、洗車ブラシ18の回転を緩やかな速度でスタートさせる、所謂ソフトスタートを行うことが可能となる。これによって、洗浄作業の効率化や、洗車ブラシ18の急激な高速回転スタートの衝撃による危険性の回避等が、有利に図られ得る。
さらに、かかるブラシカバー64の各支柱部68の両側部には、前記水中ポンプ56に接続された送水パイプ58から分岐した2本の延長パイプ88が、それぞれ、ブラシカバー64の高さ方向に沿って延びるように配設されている。そして、それら各延長パイプ88には、複数の噴射口90が、互いに所定間隔をおいて設けられている。これにより、水中ポンプ56の駆動に伴って、洗浄水が、ブラシカバー64の全長に亘って、その両サイドに位置せしめられた複数の噴射口90から一斉に噴射されるようになっている。また、前記せる如く、水中ポンプ56が、自走可能な機台ベース12の基台部22に設置された発電機48からの給電によって駆動せしめられるようになっている。そのため、各噴射口90からの洗浄水の噴射が任意の場所で行われ得る。このことから明らかなように、ここでは、水中ポンプ56と送水パイプ58と延長パイプ88と噴射口90とにて、比較的に簡略な構造をもって、洗浄液噴射機構が構成されている。
このように、本実施形態では、重量の大きな発電機48及び制御装置50と洗車ブラシ18とが、機台ベース12の基台部22の左側部分と右側部分とに、それぞれ分かれて位置するように設置されている。これによって、洗車機10全体の重量バランスが良好に確保され、以て、機台ベース12の走行安定性の向上が図られている。
而して、かくの如き構造とされた洗車機10を用いて、洗車作業を行う際には、図1及び図4に示されるように、先ず、洗車ブラシ18が、洗車されるべき自動車の車体外周面86に押し当てられるように、機台ベース12を配置する。つまり、機台ベース12を、その進行方向に向かって右側に車体外周面86が位置するように配置する。また、その状態下で、水中ポンプ56の作動により、ブラシカバー64の両サイドに設置された各噴射口90から、タンク54内の洗浄水を噴射させる。それと共に、洗車ブラシ18を、ブラシ駆動モータ82にて回転させる。そして、左及び右走行用モータ28a,28bの駆動に伴う左及び右走行用タイヤ16a,16bの回転駆動により、洗車ブラシ18を、洗車されるべき自動車の車体外周面86に押し当てつつ、かかる車体外周面86に沿って走行せしめる。これによって、自動車の車体外周面86が、全周に亘って洗浄されるようになるのである。
ここにおいて、本実施形態に係る洗車機10にあっては、洗車ブラシ18の回転作動による洗浄水の周囲への飛散が、ブラシカバー64と、飛散抑制部材92の協働によって効果的に軽減乃至は解消されるようになっている。なお、飛散抑制部材92は、洗車方向前後の少なくとも一方に設けられており、本実施形態では、洗車ブラシ18の走行方向前側に飛散抑制部材92aが配設されていると共に、洗車ブラシ18の走行方向後側に飛散抑制部材92bが配設されている。
より詳細には、飛散抑制部材92が、ブラシカバー64に取り付けられる支持アーム94を有している。この支持アーム94は、矩形断面を有する中空パイプ状乃至は中実ロッド状を呈する、鉄等の材料で形成された高剛性の部材であって、容易に変形しないようになっている。また、本実施形態において、支持アーム94は、図1乃至図4に示されているように、一方の端部が補強部材70を介してブラシカバー64に取り付けられており、間接的に機台ベース12で支持されるようになっている。更に、本実施形態では、前後方向両側に位置するように配設された一組の支持アーム94a,94bが、それぞれブラシカバー64側から前後方向外側に向かって所定の長さで延びると共に、中間部分で屈曲せしめられることにより洗車側である右側に向かって延び出している。これにより、図4に示されているように、支持アーム94がブラシカバー64の前後方向端部に対して、前後方向外側に所定長さ:Xだけ延び出している。一方、支持アーム94の洗車側端部は、図4に示されているように、洗車対象である自動車の車体外周面86に対して左側に離隔して位置せしめられていると共に、ブラシカバー64の洗車側端部よりも右側(車体外周面86に近い側)に位置せしめられている。なお、後述する緩衝ブラシ102の安定した支持を実現するために、洗車機10において、高さ方向で離隔する複数組の支持アーム94a,94bが設けられていることが望ましく、本実施形態では、上下方向で離隔する4組の支持アーム94a,94bが設けられている。
また、本実施形態における支持アーム94は、その起端部が支持軸96によってブラシカバー64に対して揺動可能に取り付けられている。より詳細には、補強部材70において支持アーム94が取り付けられる部分には、外周側に突出する一対の基端プレート98,98が上下方向で対向して一体形成されている。更に、基端プレート98,98の中央部分には、図中必ずしも明示しないが、それぞれ厚さ方向で貫通する小径の円形孔が設けられている。また、支持アーム94の基端部分は、上下方向で薄肉とされた板状とされており、一対の基端プレート98,98の対向面間に挿し入れられるようになっている。更に、支持アーム94の基端部分には、図中には明示されていないが、厚さ方向(上下方向)で貫通する円形孔が設けられており、基端プレート98,98に設けられた円形孔と位置合わせされている。そして、一対の基端プレート98,98の対向面間に支持アーム94の基端部分が挟みこまれると共に、基端プレート98,98と支持アーム94の基端部に設けられた円形孔に対して上下方向に延びる支持軸96が挿通されることにより、支持アーム94が補強部材70、ひいてはブラシカバー64や機台ベース12に対して揺動可能に取り付けられるようになっている。なお、上述の如き支持アーム94のブラシカバー64への取付け方法は、あくまでも例示であって、何等限定的に解釈されるものではない。
さらに、支持軸96を中心として揺動可能に支持された支持アーム94は、付勢手段としてのばね99によって、長さ方向中間部分がブラシカバー64に対して弾性的に連結されている。より詳細には、ばね99は、一般的な金属製のコイルスプリングであって、一方の端部が、支持アーム94の基端部分で前後方向外側に延び出す部分に取り付けられていると共に、他方の端部が、ブラシカバー64の周方向中間部分に取り付けられている。これにより、支持アーム94に対して作用せしめられるばね99の付勢力を利用して、支持アーム94がブラシカバー64に対して弾性的に位置決めされるようになっていると共に、緩衝ブラシ102の車体外周面86への押し当て量が増すことにより、支持アーム94が該ばね99の付勢力に抗して揺動変位せしめられ得るようになっている。
また、支持アーム94の洗車側先端部には、高さ方向で延びる取付ロッド100が設けられている。取付ロッド100は、上下方向で略直線的に延びる中実ロッド形状乃至は中空パイプ形状を有する高剛性の部材とされており、上下方向で離隔して設けられた複数の支持アーム94a(94b)の先端部分が、取付ロッド100によって相互に連結されている。また、本実施形態における取付ロッド100は、その下端部が最下段に配された支持アーム94よりも下方に延び出すようにされており、取付ロッド100の下端が洗車ブラシ18の下端よりも下方にまで至っている。一方、取付ロッド100の上端は、洗車ブラシ18の上端よりも上方に延び出しており、もって、取付ロッド100の長さが、洗車ブラシ18の高さ方向(図1における上下方向)での寸法よりも大きくされている。
また、取付ロッド100には、当接緩衝部材としての緩衝ブラシ102が取り付けられている。緩衝ブラシ102は、多数の線条体(毛)が基部に植設されて形成されることで形成されている。また、緩衝ブラシ102は、該基部が取付ロッド100の洗車側の面に固定されることにより、取付ロッド100の上下方向全長に亘って取り付けられており、取付ロッド100側から洗車側に向かって突出するように緩衝ブラシ102の毛足が伸びている。また、図1及び図4からも明らかなように、緩衝ブラシ102は、洗車機10の使用状態下(洗車時)において、先端部分が車体外周面86に対して当接せしめられるだけの毛足の長さを有している。また、本実施形態では、緩衝ブラシ102の毛足の長さが、上下方向の全長に亘って略一定とされている。更に、本実施形態においては、緩衝ブラシ102が、洗車ブラシ18と同様に、上下方向で複数に分割されており、緩衝ブラシ102が劣化した場合などにおいて、劣化箇所のみを交換出来るようになっている。
なお、緩衝ブラシ102の取付ロッド100に対する固定方法は、特に限定されるものではないが、緩衝ブラシ102の劣化による交換や、後述するような他の態様の当接緩衝部材との交換等を容易に実現するために、着脱可能に固定されていることが望ましい。具体的には、例えば、緩衝ブラシ102の基部(植毛された板部)に対して、毛足と反対側に向かってボルトが突設せしめられると共に、該ボルトが取付ロッド100に設けられたボルト孔に挿通せしめられて、ナットに螺着せしめられることにより、緩衝ブラシ102が取付ロッド100に固定されるようになっていても良い。また、例えば、取付ロッド100と緩衝ブラシ102の基端部にそれぞれ面ファスナーを接着して、該面ファスナーの係合作用によって緩衝ブラシ102が取付ロッド100に固定されるようになっていても良い。更には、緩衝ブラシ102が取付ロッド100に対して接着等の手段で着脱不可能に固定されていると共に、取付ロッド100が支持アーム94に対して着脱可能に取り付けられるようになっていても良い。更に、緩衝ブラシ102の基部が支持アーム94によって直接に支持されるようになっていても良いことは言うまでもない。
また、支持アーム94a,94bには、通気性カバーとしての飛散抑止ネット104a,104bが取り付けられて支持されている。飛散抑止ネット104は、洗浄水の通過を充分に制限し得ると共に、空気の通過を充分に許容し得る網目の細かいレース状のネットであって、一般的に知られているナイロン等の化学繊維で形成された網が好適に採用される。本実施形態において、このような飛散抑止ネット104は、支持アーム94の突出先端(洗車側端部)とブラシカバー64の洗車側端部(周方向両端部)に設けられた支柱部68との間に跨って広がるように配設されており、上下で離隔して配設される複数の支持アーム94a,94a,・・・(支持アーム94b,94b,・・・)の間と、それら支持アーム94a(支持アーム94b)と支柱部68の間とが、飛散抑止ネット104a(飛散抑止ネット104b)で覆われるようになっている。それにより、洗車ブラシ18の周囲が、洗浄水の通過を抑えるブラシカバー64と飛散抑止ネット104と緩衝ブラシ102で取り囲まれるようになっている。なお、以上の説明からも明らかなように、飛散抑止ネット104や緩衝ブラシ102と、それらを支持する支持アーム94及び取付ロッド100によって、本実施形態における飛散抑制部材92が構成されている。
なお、図1〜3と後述する図11及び図14においては、飛散抑止ネット104が、図中に薄墨を施すことによって示されている。また、飛散抑止ネット104の材料は、特に限定されるものではないが、洗浄液に対する耐侵食性や耐腐食性を考慮して選択される。特に、洗浄液として洗剤等を水に混ぜた水溶液等を使用する場合には、耐侵食性に優れた材料を採用することが望ましい。更に、飛散抑止ネット104の支持アーム94及び取付ロッド100とブラシカバー64への取付方法は、特に限定されるものではないが、例えば、支持アーム94や取付ロッド100,ブラシカバー64に対して鉤状の係止部材を突設せしめて、飛散抑止ネット104の網目を利用して該係止部材に引っ掛けることにより支持せしめたり、飛散抑止ネット104にボルト孔やナットを有する取付金具を予め取り付けておいて、該取付金具をそれら支持アーム94や取付ロッド100,ブラシカバー64(支柱部68)に対してボルト固定することにより支持せしめること等が考えられる。
以上に示すが如き構造の飛散抑制部材92を備えた洗車機10にあっては、洗車作業に際して、洗浄水の飛散が効果的に防がれるようになっている。即ち、洗車機10の使用状態である洗車作業中において、緩衝ブラシ102が車体外周面86に当接せしめられるようになっており、本実施形態では、洗車ブラシ18が、車体外周面86と、緩衝ブラシ102と、飛散抑止ネット104と、ブラシカバー64とによって全周に亘って取り囲まれるようになっている。このように、ブラシカバー64と車体外周面86の間の隙間を飛散抑制部材92によって覆うことにより、洗浄水を噴射させつつ、洗車ブラシ18を回転させることによる洗浄水の飛散が有利に防がれるようになっているのである。
また、本実施形態では、緩衝ブラシ102の車体外周面86への押し当て量は、洗車ブラシ18の車体外周面86への押し当て量よりも小さくされており、支持アーム94の先端(取付ロッド100)と車体外周面86の間の隙間が緩衝ブラシ102によって塞がれていると共に、緩衝ブラシ102が必要以上に強く車体外周面86に押し当てられることによって洗車機10の走行が阻害されたり、車体外周面86に傷が生じたりするのを有利に防ぐことが出来る。特に本実施形態においては、支持アーム94がブラシカバー64及び機台ベース12によって揺動可能に支持されている。これにより、機台ベース12と車体外周面86が接近せしめられた場合にも、支持アーム94が揺動せしめられて逃げることによって、緩衝ブラシ102の車体外周面86に対する押し当て量の増大が緩和されるようになっている。しかも、支持アーム94は、ばね99の付勢力によって初期位置に弾性的に位置決めされており、機台ベース12と車体外周面86が接近せしめられた後に離隔せしめられて所定位置に戻されると、支持アーム94がばね99の付勢力によって初期の位置に復帰せしめられるようになっている。それ故、緩衝ブラシ102の当接状態を有利に維持することも可能となっている。
しかも、本実施形態に係る洗車機10では、湾曲板状のブラシカバー64が洗車ブラシ18の半周に満たない部分を覆うように配されていると共に、ブラシカバー64の洗車側端部から洗車対象面である車体外周面86に至る領域を通じての前後方向両側への洗浄水の飛散が、緩衝ブラシ102と飛散抑止ネット104で防がれるようになっている。これら緩衝ブラシ102と飛散抑止ネット104は、何れも、洗浄水の飛散を有効に抑え得ると共に、強風が吹き付けられた場合には、緩衝ブラシ102を構成する線状体(緩衝ブラシ102の毛足)の隙間や飛散抑止ネット104の網目を通じて、風が反対側に吹き抜けるようになっている。それによって、強い風が吹き付けられた場合にも、風との接触面積が比較的に小さく抑えられて、風の接触による洗車機10の転倒が有利に防がれるようになっている。そして、その結果として、そのような風による転倒によって生ずるであろうと懸念される幾つかの問題が、悉く、未然に回避され得るのである。
特に、図4に示されているように、本実施形態に係る飛散抑制部材92は、ブラシカバー64よりも前後方向でXだけ延び出すように設けられている一方、上下方向で離隔して複数配設される長手状の支持アーム94の間が、空気を通過せしめ得る飛散抑止ネット104で覆われることで形成されている。それ故、支持アーム94(飛散抑制部材92)がブラシカバー64よりも前後方向外側に延び出している場合にも、左右方向で吹き付ける風との接触面積が著しく大きくなるのを、有利に防ぐことが出来る。従って、洗浄液の飛散抑制のために洗車機10が大型化した場合にも、風の当接による洗車機10の転倒が効果的に防がれるようになっている。
さらに、本実施形態では、通気性飛散防止体として飛散抑止ネット104が採用されていることから、飛散抑止ネット104の網目を通じて洗車箇所(洗車ブラシ18の車体外周面への当接箇所)が視認可能となっている。それ故、洗車作業の確認や管理を目視によって容易に行うことが出来る。
また、本実施形態に係る洗車機10は、自動車の車体外周面86に沿って自動的に移動せしめられるようになっており、人手を掛けずに、自動的に洗車作業が実行され得るようになっている。
すなわち、図4及び図9に示されているように、本実施形態に係る洗車機10において、支持アーム94には、支持アーム94の揺動変位を検出する検出手段としてのセンサ106が取り付けられている。センサ106は、例えば、従来から知られている透過型や反射型の光電センサや磁気センサ等が用いられて、センサ106によってブラシカバー64と支持アーム94の相対的な位置の変化が検出されるようになっている。また、本実施形態では、センサ106は、各支持アーム94a,94bにそれぞれ取り付けられている。更に、本実施形態において、センサ106は、図4や図9に示されているように、支持アーム94の前後方向に延び出す基端部分に取り付けられており、支持アーム94の該基端部分と支柱部68の相対距離の変化を検出することによって、支持アーム94の揺動変位が検出されるようになっている。なお、図9においては、支持アーム94を揺動不能に取り付けた態様における支持アーム94aの位置が、二点鎖線によって示されている。
そして、本実施形態に係る洗車機10にあっては、上記の如き洗車作業において、洗車されるべき自動車の車体外周面86に沿って走行せしめられるべき機台ベース12が、かかる車体外周面86に対して走行方向が右側となるように傾斜する程、車体外周面86への緩衝ブラシ102aの押し当て量が増大する(図9参照)。それによって、緩衝ブラシ102aを支持する支持アーム94aが、ブラシカバー64に対して相対的に揺動変位せしめられるようになっている。その反対に、機台ベース12の走行方向が車体外周面86に対して左側となる程、車体外周面86への緩衝ブラシ102bの押し当て量が増大して、緩衝ブラシ102bを支持する支持アーム94bが、ブラシカバー64に対して相対的に揺動変位せしめられるようになっている。
従って、ここでは、そのような支持アーム94a,94bのブラシカバー64に対する相対変位をセンサ106a,106bによって検出することにより、機台ベース12の走行方向の車体外周面86に対する傾斜を検出可能となっている。そして、センサ106a,106bによる検出結果に従って、左右の走行用タイヤ16a,16bを回転せしめる左右の走行用モータ28a,28bへの給電が制御されて、機台ベース12の走行方向の車体外周面86に対する傾斜が補正されるようになっている。
すなわち、図10にブロック図で示されているように、前後の支持アーム94a,94bに取り付けられたセンサ106a,106bにおいて、センサ106aが支持アーム94aの揺動変位を検出した場合には、制御装置50における調節部108から操作部110に対して、左走行用モータ28aの駆動停止信号が出力されるようになっている。これにより、操作部110にて、左走行用モータ28aに対する発電機48からの給電が停止されて、左走行用タイヤ16aの回転が停止せしめられる(回転速度がゼロとされる)ようになっている。
一方、センサ106bが支持アーム94bの揺動変位を検出した場合には、調節部108から操作部110に対して、右走行用モータ28bの駆動停止信号が出力されるようになっている。これにより、操作部110にて、右走行用モータ28bに対する発電機48からの給電が停止されて、右走行用タイヤ16bの回転が停止せしめられる(回転速度がゼロとされる)ようになっている。
さらに、制御装置50においては、調節部108からの入力信号に基づく操作部110による左走行用モータ28a又は右走行用モータ28bの駆動停止操作の開始からの経過時間が、タイマ装置としてのタイマ部111にて計測されるようになっている。そして、このタイマ部111による計測時間が予め設定された設定時間となったときに、操作部110にて、左又は右走行用モータ28a,28bに対する発電機48からの給電が再開されて、左又は右走行用モータ28a,28bの駆動が再開されるようになっている。
すなわち、ここでは、センサ106a,106bの検出結果に基づいて、制御装置50の操作部110により、左走行用モータ28aと右走行用モータ28bのそれぞれの駆動力が相対的に変化せしめられて、左走行用タイヤ16aと右走行用タイヤ16bのそれぞれの回転速度が互いに異なるように調節されるように構成されているのである。
かくして、本実施形態の洗車機10においては、センサ106a,106bの検出結果に基づいて、機台ベース12の走行方向が車体外周面86に対して傾斜しているか否かが判断されて、機台ベース12の走行方向が車体外周面86に接近する方向(右側)に傾斜していると判断されたときに、制御装置50の調節部108と操作部110とタイマ部111とにて、左走行用モータ28aの駆動のみが、所定時間の間停止せしめられる。それにより、先に詳述せる如く、走行方向が左側に変更されるようになっている。一方、機台ベース12の走行方向が車体外周面86から離隔する方向(左側)に傾斜していると判断されたときには、右走行用モータ28bの駆動のみが所定時間の間停止せしめられる。それにより、先に詳述せる如く、走行方向が右側に変更されるようになっている。そして、その結果、機台ベース12の走行方向が車体外周面86に追従した、所謂ならい制御方式によって制御されるようになっており、人手を掛けずに、自動的に洗車され得るようになっているのである。
このように、本実施形態においては、洗浄水の飛散を抑制乃至は防止するために設けられた飛散抑制部材92を巧く利用して、機台ベース12の走行方向が簡単な構造によって制御されるようになっている。なお、本実施形態では、支持アーム94の揺動変位の検出信号に基づいて、走行用モータ28が停止せしめられると共に、タイマ部111による計時によって、所定時間の経過で走行用モータ28が再始動せしめられることにより、機台ベース12の走行方向が制御されるようになっている。しかしながら、例えば、支持アーム94の揺動変位の検出信号に基づいて走行用モータ28が停止せしめられると共に、ばね99の付勢力による支持アーム94の初期位置への復帰を、センサ106で検出することによって走行用モータ28が再始動せしめられることにより、機台ベース12の走行方向が制御されるようになっていても良い。勿論、これらの制御方法は、何れも例示であって、その他、公知の各種の制御方法を適宜に採用して機台ベース12の走行方向を制御することが出来る。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、前記実施形態では、当接緩衝部材として緩衝ブラシ102を用いることにより、前後方向で風が吹き付けた場合にも、緩衝ブラシ102の毛足の隙間を通じて風が吹き抜けるようになっている。しかしながら、当接緩衝部材は、前記実施形態に示されたブラシ状のものに何等限定されることはなく、例えば、図11に示されるように、当接緩衝部材として、基部112とそれに固着された弾性補強部材としての緩衝ゴム113と可視光透過性シートとしての透明シート114を含んで構成された緩衝部材116を用いることも出来る。具体的には、例えば、緩衝部材116は、取付ロッド100に取り付けられる基部112に対して、基部112の長手方向で所定距離を隔てて複数の緩衝ゴム113が固着されていると共に、それら複数の緩衝ゴム113の間が透明シート114によって覆われた構造とされている。
より詳細には、基部112は、略ロッド形状を有しており、取付ロッド100の洗車側端面に取り付けられるようになっている。なお、好適には、基部112は、前記実施形態における緩衝ブラシ102と同様に着脱可能な態様で取付ロッド100に取り付けられるようになっている。
また、基部112には、複数の緩衝ゴム113が取り付けられている。緩衝ゴム113は、弾性的な変形を許容するゴム弾性体で形成されており、略矩形のブロック形状乃至はロッド形状を有して、長手状とされた基部112に対して接着等の手段で固着されて取付ロッド100から自動車の車体側に向かって突出せしめられている。また、複数の緩衝ゴム113が、基部112の長手方向(高さ方向)で離隔して突設せしめられており、例えば、図11においては、各支持アーム94の位置に合わせて、それぞれ緩衝ゴム113が配設されている。
さらに、基部112とそれに固着された緩衝ゴム113で形成された骨組みに対して、透明シート114が取り付けられている。透明シート114は、例えば、ビニル樹脂等で形成された薄肉のシートであって、可視光線を透過する性質を有しており、透明シート114を透かして反対側が視認可能とされている。このような透明シート114は、図12に示されているように、基部112と緩衝ゴム113で形成された骨組みに重ね合わされて、接着等の手段によって固着せしめられており、上下に離隔して設けられる複数の緩衝ゴム113の間を塞ぐように広がって配設されている。これにより、緩衝部材116が形成されている。
このような構造とされた緩衝部材116は、基部112が、例えば、ボルト固定や係止、接着等の手段によって取付ロッド100に固定されることにより、取付ロッド100、ひいては、支持アーム94によって支持されている。なお、緩衝部材116は、取付ロッド100に対して緩衝ゴム113と透明シート114を直接的に固着せしめることによっても実現し得る。
このような緩衝部材116を当接緩衝部材として採用することによっても、緩衝ゴム113を車体外周面86に接触せしめることで、支持アーム94の突出先端と車体外周面86の隙間を緩衝ゴム113及び透明シート114で覆って、洗車ブラシ18の回転による洗浄水の飛散を有効に抑えることが出来る。しかも、透明シート114を採用することにより、洗車作業中において、洗車箇所を視認することが可能となっており、自動車の車体外周面86に対する洗車機10の位置等を目視によってより一層容易に確認することが出来る。なお、この図11に示される実施形態、及び後述する図13,14に示される実施形態に関しては、図1乃至図10に示される前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1乃至図10と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明は省略した。
なお、当接緩衝部材は、具体的に例示された緩衝ブラシ102や緩衝部材116によって限定されるものではなく、車体外周面86への当接状態に応じて変形せしめられて車体外周面86に対して緩衝的に当接可能であり、且つ初期形状に復元する復元力を有している部材であれば良い。具体的には、例えば、当接緩衝部材を板状のゴム弾性体で形成された弾性ゴム板で形成することも出来る。このような弾性ゴム板を当接緩衝部材として採用すれば、当接緩衝部材の車体外周面86への緩衝的な当接状態を安定して実現出来ると共に、当接緩衝部材に隙間が生じるのを防いで、洗浄液の飛散を有利に防ぐことが出来る。なお、かかる弾性ゴム板は、全体に繋がった単一のものの他、適当な幅を有する短冊状のものを複数組合せても良い。また、当接緩衝部材として、緩衝ブラシ102と弾性ゴム板を組み合わせて併用しても良い。
また、前記実施形態では、支持アーム94のブラシカバー64に対する相対的な揺動変位をセンサ106で検出することにより、車体外周面86に対する洗車機10の走行方向の傾斜を検知できるようになっていたが、例えば、図13に示されているように、支持アーム94をブラシカバー64に対して相対変位不能に固定すると共に、支持アーム94乃至は取付ロッド100の一部から延び出すセンサ部材118を設けて、センサ部材118の車体外周面86に対する接触の有無を検出することにより、車体外周面86に対する洗車機10の走行方向の傾斜を検知できるようにしても良い。
すなわち、図13に示す実施形態において、センサ部材118は、取付ロッド100の前後方向外側の面に取り付けられる検出部120を有している。この検出部120としては、公知のリミットスイッチ(位置検出スイッチ)等が好適に用いられて、後述する支持スプリング122の揺動変位の有無を検出出来るようになっている。また、検出部120には、支持スプリング122が揺動可能に取り付けられて、洗車側に向かって前後方向外側に傾斜して延び出しており、支持スプリング122の揺動変位が検出部120において検出されて、電気的な信号として調節部108に伝達されるようになっている。更に、支持スプリング122は、その一方の端部が検出部120に取り付けられていると共に、他方の端部には、スポンジボール124が取り付けられている。このスポンジボール124は、洗車時において車体外周面86に対して所定距離を隔てて位置するように設けられていると共に、洗車機10の走行方向が車体外周面86に対して大きく傾斜せしめられた場合には、車体外周面86に当接せしめられるようになっている。なお、本実施形態では、前後一組の支持アーム94a,94bに対してセンサ部材118aとセンサ部材118bが取り付けられるようになっている。
そして、洗車機10の走行方向が車体外周面86に対して大きく傾斜せしめられて、センサ部材118a又はセンサ部材118bのスポンジボール124が車体外周面86に当接せしめられると、支持スプリング122がスポンジボール124に作用する当接反力によって揺動変位せしめられる。この揺動変位が検出部120において検出されて、調節部108に伝達されることにより、洗車機10の走行方向が自動的に変化せしめられて、洗車機10の走行方向が車体外周面86に沿ってならい制御されるようになっている。なお、走行方向の制御方法については、前記実施形態と同様であることからここでは説明を省略する。また、センサ部材118が取り付けられる部位については、何等限定されるものではなく、例えば、ブラシカバー64の支柱部68に取り付けられていても良い。
また、前記実施形態では、支持アーム94がブラシカバー64に取り付けられて、ブラシカバー64を介して機台ベース12に取り付けられていた。然るに、例えば、図14に示されているように、支持アーム94は、基台部22やタンクテーブル44,タンク54等に固定されるようになっていても良い。なお、風を通す飛散抑止ネット104を使用することにより、支持アーム94を前後方向で比較的に大きく延び出させた場合にも、左右方向で吹き付ける風による洗車機10の転倒を有利に回避することが出来る。
また、前記実施形態では、洗車機10の走行方向前後において、支持アーム94a,94bが洗車ブラシ18を前後両側で挟み込むように設けられていたが、支持アーム94、換言すれば、飛散抑制部材92は、洗車機10の前後方向の少なくとも一方に設けられていれば良く、例えば、進行方向への洗浄液の飛散のみが問題となるような場合には、洗車ブラシ18の前方にのみ飛散抑制部材92が設けられていても良い。
また、前記実施形態では、通気性カバーの一例として、飛散抑止ネット104が示されている。しかしながら、通気性カバーは、必ずしもネットでなくても良く、気体(空気)を透過せしめると共に、洗浄液の飛散を抑えるものであれば良い。また、通気性カバーは、洗浄液の飛散を完全に阻止するものではなくても良く、洗浄液の自由な通過を制限するものであれば良い。具体的には、例えば、目の粗い織布や不織布,多孔性の成形樹脂シート,更にそれらに親水性や疎水性等の適当な処理を施したもの等も採用され得る。なお、本発明において、通気性カバーは、洗浄液の周囲への飛散を半分以上抑えるものを用いることが望ましい。
さらに、前記実施形態では、洗車機10に設けられた支持アーム94が揺動可能に取り付けられていると共に、付勢手段としてのばね99によって弾性的に位置決めされるようになっていた。このような支持アーム94を弾性的に位置決めする付勢手段は、必ずしも前記実施形態に示されているような金属ばねを採用したばね99ではなくても良く、例えば、ゴム弾性体によるばねを採用したり、通気性カバー(飛散抑止ネット104)の伸縮性を巧く利用したりして、付勢手段を実現することも出来得る。
また、前記実施形態においては、走行方向を自動的に制御する自走式の洗車機10について説明したが、本発明は、自走式以外の洗車機に対しても適用可能である。具体的には、例えば、人力によって移動せしめられる洗車機等にも、本発明は好適に適用され得る。また、走行方向の自動的な制御を行わない自走式の洗車機に対しても本発明は適用可能である。なお、例えば、支持アーム94とブラシカバー64の相対変位を検出した場合に、ランプの点灯や警告音等によって近くの作業者に走行方向の補正を促すようにされていても良い。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10:洗車機、12:機台ベース、16:走行用タイヤ、18:洗車ブラシ、20:回転軸、22:基台部、28:走行用モータ、40:制御装置、56:水中ポンプ、64:ブラシカバー、68:支柱部、70:補強部材、82:ブラシ駆動モータ、90:噴射口、92:飛散抑制部材、94:支持アーム、96:支持軸、99:ばね、100:取付ロッド、102:緩衝ブラシ、104:飛散抑止ネット、106:センサ、112:緩衝ゴム、114:透明シート