JP2008275039A - 減速機および電動ブレーキ - Google Patents

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Abstract

【課題】小型の電動モータで、制動に必要なトルクを発生するとともに、適切な減速比を得られることにより、応答性に優れた電動ブレーキを可能とする減速機を提供する。
【解決手段】減速機19は、トルクが入力される第1の太陽歯車21と、第1の太陽歯車21の周囲を公転しながら自転する第1の遊星歯車22とを備える。第1の遊星歯車22に噛み合う固定内歯車23と、第1の太陽歯車21と同軸上で一体に回転する第2の太陽歯車24とを備える。また、第2の遊星歯車25と、第2の遊星歯車25の公転軌跡の周囲に回転可能に配置され、トルクを出力する可動内歯車26とを備える。さらに、第1の遊星歯車22および第2の遊星歯車25を自転および公転可能に支持するキャリア27を備える。そして、第1の太陽歯車と第2の太陽歯車との歯数差を変更することで減速比を変更する。
【選択図】図1

Description

本発明は、遊星歯車を用いた減速機と、この減速機を用いた電動ブレーキに関する。
車両用ブレーキ装置として、近年、電動モータの回転力によって制動力を発生させる電動ブレーキの開発が行われている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
電動ブレーキは、運転者によるブレーキペダルの踏力を検知し、検知した踏力の力量に応じて電動モータの回転を制御し、所望の制動力を得るものである。
電動ブレーキの構成は、電動モータ、減速機、運動変換機を備えており、電動モータの回転数を減速機により減速させ、運動変換機としてのボールネジやボールランプ機構などにより、減速機で減速された電動モータの回転運動を、例えば、回転体の回転を制動するブレーキパッドを押圧するロッドの直線運動に変換して制動力を発生させるようになっている。
減速機で減速することによりトルクが大きくなるが、電動ブレーキに減速機を用いないで電動モータの回転運動を直線運動に変換して制動力を発生させた場合に、減速機によりトルクが増大されないので、大きなモータトルクが必要となり、大型のモータを使うことになってしまう。この場合に、電動ブレーキが大型化し、車両への搭載性が悪化するという問題が発生する
このため、電動ブレーキの開発に当たっては、減速機を用いる傾向にある。
ここで、特許文献1に記載された電動ブレーキでは、減速機として減速比を大きく得るために不思議遊星歯車機構を採用している。
この特許文献1における不思議遊星歯車機構は、図6に概略を示すように、電動モータのロータと一体に回転することによりトルクの入力側となる太陽歯車1が、同軸上で一体に回転する2つの第1および第2の遊星歯車2,3と噛み合うようになっている。そして、第1および第2の遊星歯車2,3は、一体に太陽歯車の周囲を公転しながら自転する。
そして、第1の遊星歯車2は、その公転軌跡の周囲に設けられるとともに電動ブレーキのキャリパに固定されている固定内歯車4と噛み合っている。また、第2の遊星歯車3は、その公転軌跡の周囲に設けられ、トルクの出力側となる可動内歯車5と噛み合っている。
そして、固定内歯車4の歯数と可動内歯車5の歯数とが異なるものとなっているが、固定内歯車4の歯数と可動内歯車5の歯数差は極めて僅かなものとなっている。
この場合に、第1の遊星歯車2に噛み合う固定内歯車4との噛み合いピッチ円の半径Raと、第2の遊星歯車3に噛み合う可動内歯車5の噛み合いピッチ円の半径Rbとの差が小さく、非常に大きい減速比を得ることができる。言い換えれば、第1の遊星歯車2と第2の遊星歯車3とは同じ歯数となっているが、第1の遊星歯車2に噛み合う固定内歯車4の噛み合いピッチ円の径Raと、第2の遊星歯車3に噛み合う可動内歯車5の噛み合いピッチ円の半径Rbとに僅かに差を付けて固定内歯車4の歯数と可動内歯車5の歯数とを僅かに異ならせることで、大きな減速比を得られるようにしている。
なお、第1の遊星歯車2と第2の遊星歯車3とは、同じキャリア6に一体となって自転および公転可能に支持され、太陽歯車1と可動内歯車5とキャリア6とは、同軸上でそれぞれ個別に回転可能(相対回転可能)に配置され、さらに、これらと同軸上に回転不可に固定内歯車4が配置されている。
また、特許文献2に記載される電動ブレーキでは、差動遊星歯車機構を作用している。この電動ブレーキでは、電動モータが減速機の外周側に配置される構造となっている。すなわち、図7に示すように、電動モータのステータの内側にある円筒状のロータと一体となっているとともに減速機のトルクの入力側となる可動内歯車7が回転し、その内側に可動内歯車7に噛み合う第1の遊星歯車8が配置されている。また、第1の遊星歯車8は、モータケースの後端面を構成するカバーに固定された固定太陽歯車9に噛み合って公転および自転するようになっている。なお、図7は、減速機部分のみの概略構成を示す。
また、第1の遊星歯車8と同軸上に配置されて一体に公転および自転する第2の遊星歯車10が、トルクの出力側となる可動太陽歯車11と噛み合っている。そして、2つの固定および可動太陽歯車9,11の歯数差が変速比の大きさに寄与する。
なお、第1の遊星歯車8と第2の遊星歯車10とは、同じキャリア12に一体的に自転および公転可能に支持され、可動太陽歯車11と可動内歯車7とキャリア12とは、同軸上でそれぞれ個別に回転可能(相対回転可能)に配置され、さらに、これらと同軸上に回転不可に固定太陽歯車9が配置されている。
特開2006−112476号公報 特開2002−48170公報
しかしながら、特許文献1に記載される電動ブレーキでは、上述のように大きな減速比を得られるが、大きな減速比の減速機で応答性の良い電動ブレーキを制作する場合、モータの時定数遅れ、モータイナーシャ等を考慮すると、電動モータの回転数を極めて高くする必要がある。この場合に、極めて回転数の高いモータのロータ等を支える軸受などに要求されるスペックを満たすことができない場合がある。このため、応答性の良い電動ブレーキを作ることが難しい。
この問題を解決するためには、減速比を小さくすればよいが、減速比を小さくするためには固定内歯車と可動内歯車の歯数差を大きくする必要がある。しかし、第1の遊星歯車と第2の遊星歯車は同じ歯数で成り立っており、これら第1の遊星歯車と第2の遊星歯車とに噛み合う固定内歯車と可動内歯車の歯数差を大きくすると、遊星歯車と内歯車との噛み合いができなることが考えられる。そのため、上述の特許文献1の不思議遊星歯車機構の構造において、減速比を小さくすることは困難であり、上述のように、この構造で応答性の良い電動ブレーキを製造することが困難である。
また、特許文献2に記載される電動ブレーキでは、上述のように電動モータが減速機の外周側に配置される構造となっているとともに、減速機において、トルクの入力が行われる入力歯車が可動内歯車であるため、応答性の良い減速比となるように減速機を設計した場合に、入力歯車が外歯車(太陽歯車)のときに比べて、径方向の寸法が大きくなることが懸念される。径方向の寸法が大きいとモータイナーシャが大きくなり、モータの回転始動時における目標回転数に到達するまでの時間が遅くなる可能性がある。すなわち、特許文献2に示される電動ブレーキの構造においても、応答性の良いブレーキを作ることが難しい。
また、所望の減速比を得るために、遊星歯車機構を直列に並べて接続する方法が知られているが、この場合には、ボールネジなどの運動変換機の外周に減速機を配置した場合に、太陽歯車が大きくなり、一つ一つの遊星歯車機構の減速比が小さくなるため、ある程度大きな減速比の減速機を作ろうとすると、遊星歯車機構の数が増えるという問題があり、さらに、これにより減速機を有する電動ブレーキの配置スペースが大きくなるという問題が発生する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電動ブレーキに用いた場合に、小型の電動モータでも必要なトルクを得られるとともに、電動モータの回転数を極めて大きくしなくても必要な応答性を確保できる減速比に容易に設計可能で、かつ、接続される電動モータのモータイナーシャが大きくなりすぎることがない減速機と、この減速機を用いた電動ブレーキとを提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、トルクが入力される第1の太陽歯車と、
第1の太陽歯車に噛み合うとともに第1の太陽歯車の周囲を公転しながら自転する第1の遊星歯車と、
第1の遊星歯車の公転軌跡の周囲に固定配置され、第1の遊星歯車に噛み合う固定内歯車と、
第1の太陽歯車と同軸上で一体に回転する第2の太陽歯車と、
第2の太陽歯車に噛み合うとともに第2の太陽歯車の周囲を公転しながら自転する第2の遊星歯車と、
第2の遊星歯車の公転軌跡の周囲に回転可能に配置され、第2の遊星歯車に噛み合うとともにトルクを出力する可動内歯車と、
第1の遊星歯車および第2の遊星歯車を自転可能に支持するとともに第1の遊星歯車および第2の遊星歯車の公転に伴なって回転するキャリアとを備える減速機であって、
第1の太陽歯車の歯数と第2の太陽歯車の歯数とが異なり、第1の遊星歯車の歯数と第2の遊星歯車の歯数が異なり、固定内歯車の歯数と可動内歯車の歯数が異なることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の減速機において、第1の太陽歯車の回転中心から第1の遊星歯車の回転中心までの距離と、第2の太陽歯車の回転中心から第2の遊星歯車の回転中心までの距離とが等しいことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、トルクが入力される太陽歯車と、
太陽歯車に噛み合うとともに太陽歯車の周囲を公転しながら自転する第1の遊星歯車と、
第1の遊星歯車の公転軌跡の周囲に固定配置され、第1の遊星歯車に噛み合う固定内歯車と、
第1の遊星歯車と一体に自転するとともに公転する第2の遊星歯車と、
第2の遊星歯車の公転軌跡の周囲に回転可能に配置され、第2の遊星歯車に噛み合うとともにトルクを出力する可動内歯車と、
第1の遊星歯車および第2の遊星歯車を自転可能に支持するとともに第1の遊星歯車および第2の遊星歯車の公転に伴なって回転するキャリアとを備える減速機であって、
第1の遊星歯車の歯数と第2の遊星歯車の歯数が異なり、固定内歯車と可動内歯車の歯数が異なることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の減速機を備えた電動ブレーキであって、
電動モータと、
電動モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機と、
電動モータと運動変換機との間に介在して電動モータの回転力を減速して運動変換機に伝動する前記減速機とを備えていることを特徴とする。
請求項1に記載の減速機によれば、第1の太陽歯車が回転すると、第1の太陽歯車に噛み合うとともに固定内歯車に噛み合っている第1の遊星歯車が自転するとともに第1の太陽歯車の外周と固定内歯車の内周との間を周回するように公転する。また、第2の太陽歯車が第1の太陽歯車と同軸(同心)上で一体に回転する。
これにより、第2太陽歯車に噛み合うとともに可動内歯車に噛み合っている第2の遊星歯車が自転するとともに、第2の太陽歯車の外周と固定内歯車の内周との間を周回するように公転する。
そして、第2の遊星歯車に噛み合う可動内歯車が回転し、この回転が出力される。
このような減速機を電動ブレーキに用いるものとすると、各歯車の歯数を変更することにより、減速比の異なる減速機を容易に設計することができる。
なお、例えば、第1の太陽歯車の歯数と、第2の太陽歯車の歯数とを変更すると、それにともなって、第1の太陽歯車に噛み合う第1の遊星歯車の歯数と、第2の太陽歯車に噛み合う第2の遊星歯車の歯数を変更する必要があり、さらに、第1の遊星歯車に噛み合う固定内歯車の歯数と、第2の遊星歯車に噛み合う可動歯車の歯数も変更する必要がある。
そして、減速比を大きくする場合には、第1の太陽歯車と第2の太陽歯車との歯数差(第1の遊星歯車と第2の遊星歯車との歯数差および固定内歯車と可動内歯車との歯数差)を小さくし、減速比を小さくする場合には、第1の太陽歯車と第2の太陽歯車との歯数差(第1の遊星歯車と第2の遊星歯車との歯数差および固定内歯車と可動内歯車との歯数差)を大きくする。
さらに、本発明では、第1の太陽歯車、すなわち、外歯車が入力歯車となるので、応答性の良い構成としても、内歯車を入力歯車とした場合に比較して径方向の寸法が大きくならず、モータイナーシャが大きくなるのを抑制できる。
以上のことから、本発明の減速機は、応答性のよい電動ブレーキを制作するのに好適なものと言うことができる。
請求項2に記載の減速機によれば、減速機をより簡単で設計しやすい構造とすることができる。
請求項3に記載の減速機によれば、第1の太陽歯車が回転すると、第1の太陽歯車に噛み合うとともに固定内歯車に噛み合っている第1の遊星歯車が自転するとともに第1の太陽歯車の外周と固定内歯車の内周との間を周回するように公転する。
これにより、第1の遊星歯車と一体に自転および公転する第2の遊星歯車が自転するとともに公転する。
そして、第2の遊星歯車に噛み合う可動内歯車が回転し、この回転が出力される。
このような減速機を電動ブレーキに用いるものとすると、各歯車の歯数を変更することにより、減速比の異なる減速機を容易に設計することができる。
なお、例えば、第1の遊星歯車の歯数と、第2の遊星歯車の歯数とを変更すると、それにともなって、第1の遊星歯車に噛み合う固定内歯車の歯数と、第2の遊星歯車に噛み合う可動歯車の歯数も変更する必要がある。
そして、減速比を大きくする場合には、第1の遊星歯車と第2の遊星歯車との歯数差および固定内歯車と可動内歯車との歯数差を小さくし、減速比を小さくする場合には、第1の遊星歯車と第2の遊星歯車との歯数差および固定内歯車と可動内歯車との歯数差を大きくする。
さらに、本発明では、太陽歯車、すなわち、外歯車が入力歯車となるので、応答性の良い構成としても、内歯車を入力歯車とした場合に比較して径方向の寸法が大きくならず、モータイナーシャが大きくなるのを抑制できる。
以上のことから、本発明の減速機は、応答性のよい電動ブレーキを制作するのに好適なものと言うことができる。
請求項4に記載の電動ブレーキによれば、上述のように応答性の良い電動ブレーキに好適な請求項1〜3のいずれか1つに記載の減速機を用いることで、電動ブレーキの応答性を良くすることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施形態に係る減速機の基本構成を示す概略図である。
また、図1に示される減速機19と図2に示される減速機19とは、基本的構成が同じであり、本実施形態の減速機19であるが、後述のように減速機19を構成する各歯車の歯数を異なるものとすることで、減速比が異なるものとなっている。
この実施形態の減速機19は、図1および図2に示すように、入力軸20に接続されてトルクが入力される第1の太陽歯車21と、第1の太陽歯車21に噛み合うとともに第1の太陽歯車21の周囲を公転しながら自転する第1の遊星歯車22と、第1の遊星歯車22の公転軌跡の周囲に固定配置され、第1の遊星歯車22に噛み合う固定内歯車23と、第1の太陽歯車21と同軸(同心)上で一体に回転する第2の太陽歯車24と、第2の太陽歯車24に噛み合うとともに第2の太陽歯車24の周囲を公転しながら自転する第2の遊星歯車25と、第2の遊星歯車25の公転軌跡の周囲に回転可能に配置され、第2の遊星歯車25に噛み合うとともにトルクを出力する可動内歯車26と、第1の遊星歯車22および第2の遊星歯車25を自転可能に支持するとともに第1の遊星歯車22および第2の遊星歯車25の公転に伴なって回転するキャリア27とを備えている。
第1の太陽歯車21は、入力軸20および第2の太陽歯車24と同軸(同心)上に配置されるとともに一体に回転する。すなわち、これらが相対回転することはない。
そして、これらは、軸受28,29を介してケース30(後述のキャリパ43でもよい)に回転自在に支持されている。
第1の遊星歯車22は、第2の遊星歯車25とともに、キャリア27に支持される同一の支持軸31に回転自在に支持されている。また、支持軸31の第1の遊星歯車22が取り付けられる部分に軸受32が配置され、第2の遊星歯車25が取り付けられる部分に軸受33が配置されている。そして、第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25とは、同軸上で回転可能となっているが、互いに相対回転可能となっている。
なお、第1の遊星歯車22および第2の遊星歯車25は、例えば、3組等の複数組が、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車24と、固定内歯車23および可動内歯車26等の間に周方向に等間隔に配置されている。
また、第1の太陽歯車21と第2の太陽歯車24とが同軸上に配置され、第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25とが同軸上に配置されることから、第1の太陽歯車21の回転中心から第1の遊星歯車22の回転中心までの距離と、第2の太陽歯車24の回転中心から第2の遊星歯車25の回転中心までの距離とが等しいことになる。
固定内歯車23は、第1の太陽歯車21と同軸上に配置され、第1の太陽歯車21との間に第1の遊星歯車22が公転可能な間隔をあけて配置されている。そして、第1の遊星歯車25は、第1の太陽歯車21と固定内歯車23との両方に噛み合った状態で、第1の太陽歯車21が入力軸20から入力されるトルクに基づいて回転した場合に、上述のように自転しながら公転することになる。
また、第2の遊星歯車25は、第2の太陽歯車24に噛み合って、第1の太陽歯車21と一体に第2の太陽歯車24が回転した場合に自転することになるが、第2の遊星歯車25は第1の遊星歯車22を回転自在に支持するキャリア27に回転自在に支持されているので、第1の遊星歯車22と同じ周期で公転することになる。
なお、この例では、第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25が同じキャリア27に支持されるだけではなく、上述のように同じ支持軸31に支持されて同軸上に配置されている。
また、第2の遊星歯車25は、必ずしも第1の遊星歯車22と同軸上に配置される必要はなく、同一のキャリア27に支持されて同一の周期で公転可能となっているとともに、上述のように第1の太陽歯車21の回転中心から第1の遊星歯車22の回転中心までの距離と、第2の太陽歯車24の回転中心から第2の遊星歯車25の回転中心までの距離とが等しくなっていればよい。
したがって、第2の遊星歯車25の自転における回転速度は、第2の太陽歯車24(第1の太陽歯車21)の回転速度と、第1の遊星歯車の公転速度に基づいて決まることになる。
そして、可動内歯車26は、第2の遊星歯車25に噛み合うことにより、第2の遊星歯車25の自転および公転速度に対応する回転速度で回転することになる。
また、可動内歯車26は、ケース30の蓋等に支持される軸受35に回転自在に支持されるとともに、出力軸36に接続されている。
キャリア27は、図1,2において、一部だけが図示されているが、キャリア27は、第1の太陽歯車21、第2の太陽歯車24、固定内歯車23、可動内歯車26と同軸上に回転自在に支持された状態となっている。
このような、差動遊星歯車機構を用いた減速機19においては、入力軸20を介して接続される例えば電動モータの回転にしたがって第1の太陽歯車21が回転すると、第1の太陽歯車21に噛み合うとともに固定内歯車23に噛み合う第1の遊星歯車が自転しながら公転する。
また、第1の太陽歯車21と一体に回転する第2の太陽歯車24が回転し、第2の太陽歯車24に噛み合うとともに、第1の遊星歯車22と一体に公転する第2の遊星歯車25は、第1の遊星歯車22の公転速度と同じ第2の遊星歯車25の公転速度と、第1の太陽歯車21の回転速度と同じ第2の太陽歯車24の回転速度とに基づいた回転速度で自転することになる。なお、この際に、第1の遊星歯車の自転速度と、第2の遊星歯車の自転速度は基本的に一致しない。
そして、この減速機19においては、第1の太陽歯車21の歯数と第2の太陽歯車24の歯数とが異なり、第1の遊星歯車22の歯数と第2の遊星歯車25の歯数が異なり、固定内歯車23の歯数と可動内歯車26の歯数が異なるものとなっている。
また、この減速機19の設計において、減速比を変更する場合には、第1の太陽歯車21の歯数と第2の太陽歯車24の歯数とを変更する。なお、この減速機19において、第1の太陽歯車21の歯数と第2の太陽歯車24の歯数とを変更すると、第1の遊星歯車22の歯数と第2の遊星歯車25の歯数が変更され、固定内歯車23の歯数と可動内歯車26の歯数が変更されることになる。
この際に、第1の太陽歯車21の外径および歯数等の歯車としての条件と、第1の遊星歯車22の外径および歯数等の歯車としての条件と、固定内歯車23の内径および歯数等の歯車としての条件との関係は、従来周知の遊星歯車機構の設計方法に基づいて決定される。同様に、第2の太陽歯車24の外径および歯数等の歯車としての条件と、第2の遊星歯車25の外径および歯数等の歯車としての条件と、可動内歯車26の内径および歯数等の歯車としての条件との関係は、従来周知の遊星歯車機構の設計方法に基づいて決定される。
そして、減速比を小さくしたい場合には、減速機19の設計に際し、図1に示すように、第1の太陽歯車21と第2の太陽歯車24との歯数差(第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25との歯数差および固定内歯車23と可動内歯車26との歯数差)を大きくし、減速比を大きくしたい場合には、減速機19の設計に際し、図2に示すように、第1の太陽歯車21と第2の太陽歯車24との歯数差(第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25との歯数差および固定内歯車23と可動内歯車26との歯数差)を小さくする。
また、図3は、5つの各歯車の歯数が異なる本実施形態の5種類の減速機19における各歯車の歯数と減速比との関係を示す図表である。図3の図表に示されるように、第1の太陽歯車21と第2の太陽歯車24との歯数差(第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25との歯数差および固定内歯車23と可動内歯車26との歯数差)を小さくするほど、減速比を大きくすることができる。そして、図表に示される歯数差の範囲内でも、減速比を12程度から90程度までの範囲(レンジ)で設定することができる。
なお、図1に示される減速機19は、図表のIに対応するもので、図2に示される減速機19は、図表のIIIに対応するもので、各歯車の歯数が図表に示されるものとなっている。
次に上述のような本実施形態の減速機19を用いた電動ブレーキを図4を参照して説明する。電動ブレーキは、例えば、車両のタイヤを制動するもので、非制動部材としてのタイヤと一体に回転するディスクロータ41の両側にブレーキパッド42,42が配置されている。
そして、電動ブレーキは、浮動式のキャリパ43を有し、後述の押圧部材44とキャリパ43の先端部45との間にディスクロータ41と左右のブレーキパッド42,42が配置されている。
そして、キャリパ43の先端部45に対向して設けられる円筒状のキャリパ本体46内には、その後端部の外周部に電動モータ47が配置され、後端部より前の前部の外周部に前記減速機19が配置され、これら前後に並ぶ電動モータ47の前部および減速機19の内側(中心部)にボールネジ機構48が配置されている。
電動モータ47は、その外周部分にステータ50が配置され、ステータ50の内側に有底円筒状のロータ51がキャリパ43に固定された軸受52等により回転自在に支持されている。なお、ロータ51は、その前部の内側にボールネジ機構48の後端部を配置可能に円筒状となっている。
そして、電動モータ47の前に配置される減速機19は以下のようになっている。
すなわち、円筒状のロータ51の前端部には、ロータ51と一体に円環状の第1の太陽歯車21と円環状の第2の太陽歯車24とが前後に並んで形成されている。なお、第1の太陽歯車21の前側に第2の太陽歯車24が形成されている。そして、これら第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車24は、ロータ51と同軸上で一体に回転可能となっている。すなわち、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車24は、上述のように同軸で一体に回転可能となっている。また、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車24の内側には、ボールネジ機構48が配置される。
そして、これら第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車24の外周側には、キャリア27がキャリパ43に固定された軸受54と、後述の可動内歯車26との間に配置された軸受55とにより、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車24と同軸上で回転自在に支持されている。
なお、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車24と、キャリア27とは相対回転可能となっている。
キャリア27には、第1の遊星歯車22を回転自在とする回転軸31aが支持されるとともに、第2の遊星歯車25を回転自在とする回転軸31bが支持されている。したがって、この例においては、第2の遊星歯車22と第2の遊星歯車25とは同軸上に配置されていないが、第1の太陽歯車21の回転中心から第1の遊星歯車22の回転中心までの距離と、第2の太陽歯車24の回転中心から第2の遊星歯車25の回転中心までの距離とが等しくされている。
たとえば、回転軸31aと、回転軸31bとが同一円周上に1つおきに等間隔に3本ずつ合わせて6本配置された状態となっている。なお、上述の例のように第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車とを同軸上に配置しても良い。この場合に、上述のように支持軸31を例えば3本配置することで、三つの第1の遊星歯車22および第2の遊星歯車25を配置することができ、構造が簡略になるが、第1の遊星歯車22および第2の遊星歯車25を回転軸31a、31bと一体に回転するのではなく、支持軸31で軸受32,33を介して互いに相対回転可能とする必要がある。
そして、回転軸31aに回転自在に支持される第1の遊星歯車22は、第1の太陽歯車21に噛み合っている。また、第1の遊星歯車22の公転軌跡の外周側には、キャリパ43に固定された固定内歯車23が設けられ、第1の遊星歯車22は、固定内歯車23に噛み合っている。
また、回転軸31bに回転自在に支持される第2の遊星歯車25は、第2の太陽歯車24に噛み合っている。また、第2の遊星歯車22の公転軌跡の外周側には、前記軸受55とキャリパ43に固定された軸受57とにより、第1の太陽歯車21および第2の太陽歯車24と同軸上で回転自在に可動内歯車26が配置され、第2の遊星歯車22と噛み合っている。
また、可動内歯車26は、その前部が中心側に延出して形成されて内径が縮径された状態となっている。そして、可動内歯車26は、その内周側にボールネジ機構48の後述するナット59が一体に回転可能に接合されている。
ボールネジ機構48は、図示しないボールを介してねじ軸58をナット59に螺合した周知のものである。そして、ねじ軸58は、電動モータ47の前部において円筒状のロータ51の内側に配置されるとともに、その前側で減速機19の円筒状の第1および第2の太陽歯車21,24の内側に配置され、さらに円筒状の可動内歯車26の内側に配置されるように、キャリパ43の円筒状のキャリパ本体46の中心部に配置されている。また、ねじ軸58の先端部には、ブレーキパッド42を押圧する押圧部材44が設けられ、キャリパ43の先端部45と押圧部材44との間に左右のブレーキパッド42,42の間にディスクロータ41を挟む構成となっている。
また、ねじ軸58の後部は、ロータ51の内側において、回転不可でかつ前後動自在に支持されている。ねじ軸58の前部は、ナット59に螺合した状態となっている。そして、ナット59は、上述のように可動内歯車26と一体に回転可能となっており、電動モータ47のロータ51の回転が減速機19の第1の太陽歯車21に入力され、上述のように減速機19の可動内歯車26から減速して出力されることになり、可動内歯車26と一体にナット59が回転し、ナット59に螺合するねじ軸58が前進して、左右のブレーキパッド42,42の間にディスクロータ41を挟みこんで制動するようになっている。
このような、減速機19を用いた電動ブレーキにおいては、電動モータ47と減速機19が運動変換機であるボールネジ機構48の周囲を囲むとともに前後に並んで配置され、電動モータ47のロータ51が減速機19の外歯車である第1の太陽歯車21に接続されている。これにより、減速機19のロータ51が内歯車に接続される場合に比較して、減速機の径方向の寸法が小さくなる可能性が高く、これによって、モータインナーシャを減少させ、モータの回転始動時の目標回転数に到達するまでの時間短縮を図ることができる。
また、減速機19は、上述のように各歯車の歯数を設計時に調整することで、広い範囲に渡って減速比を異なるものとすることができるので、小さな電動モータでも必要十分なトルクを発生させ、かつ、応答性に優れた電動ブレーキとすることができる減速比に容易に設定することができる。
図5は、前記減速機19の変形例としての減速機60を示すものであり、前記減速機19の構成に対して、第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25を1つのキャリア27で回転自在に支持したり、さらに同軸上に回転自在支持したりするだけではなく、一体に回転可能とすることで、第1の太陽歯車21から可動内歯車26に動力を伝達可能として、第2の太陽歯車24を省略した構造となっている。
すなわち、減速機60は、入力軸20に接続されてトルクが入力される太陽歯車21と、太陽歯車21に噛み合うとともに太陽歯車21の周囲を公転しながら自転する第1の遊星歯車22と、第1の遊星歯車22の公転軌跡の周囲に固定配置され、第1の遊星歯車22に噛み合う固定内歯車23と、第1の遊星歯車22と一体に自転するとともに公転する第2の遊星歯車25と、第2の遊星歯車25の公転軌跡の周囲に回転可能に配置され、第2の遊星歯車25に噛み合うとともにトルクを出力する可動内歯車26と、第1の遊星歯車22および第2の遊星歯車25を自転可能に支持するとともに第1の遊星歯車22および第2の遊星歯車25の公転に伴なって回転するキャリア27とを備えている。
そして、第1の遊星歯車22の歯数と第2の遊星歯車25の歯数が異なり、固定内歯車23と可動内歯車26の歯数が異なるものとなっている。
このような減速機60においては、減速機19と同様にトルクの入力歯車が外歯車である太陽歯車とされている。
また、第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25の歯数差と、固定内歯車23と可動内歯車26の歯数差とを変更することで、変速比を変更可能となっている。
なお、この減速機60において、第1の遊星歯車22の歯数と第2の遊星歯車25の歯数が変更すると、太陽歯車21の歯数が変更され、固定内歯車23の歯数と可動内歯車26の歯数が変更されることになる。
この際に、太陽歯車21の外径および歯数等の歯車としての条件と、第1の遊星歯車22の外径および歯数等の歯車としての条件と、固定内歯車23の内径および歯数等の歯車としての条件との関係は、従来周知の遊星歯車機構の設計方法に基づいて決定される。同様に、第2の遊星歯車25の外径および歯数等の歯車としての条件と、可動内歯車26の内径および歯数等の歯車としての条件との関係は、従来周知の遊星歯車機構の設計方法に基づいて決定される。
そして、減速比を小さくしたい場合には、減速機60の設計に際し、第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25との歯数差および固定内歯車23と可動内歯車26との歯数差を大きくし、減速比を大きくしたい場合には、減速機60の設計に際し、第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25との歯数差および固定内歯車23と可動内歯車26との歯数差を小さくする。
以上のことから、この変形例の減速機60においても、上述の減速機19と同様の作用効果を奏することができる。
また、減速機60は、減速機19に対して上述のように、第1の遊星歯車22と第2の遊星歯車25とをキャリア27に一体に回転可能に支持し、第2の太陽歯車24を省略する構成とすることで、上述の電動ブレーキに減速機19と同様に組み込むことができる。
本発明は、電動モータ等の回転駆動源に接続もしくは組み込まれる減速機、特に電動ブレーキに電動モータとともに組み込まれる減速機に適用することができ、車両や各種機械における制動のための電動ブレーキに適用することができる。
本発明の実施形態に係る減速機を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る減速機を示す概略図である。 前記減速機における各歯車の歯数と減速比の関係を示す図表である。 前記減速機が組み込まれた電動ブレーキを示す断面図である。 前記減速機の変形例となる減速機を示す概略図である。 従来の減速機を示す概略図である。 従来の減速機を示す概略図である。
符号の説明
19 減速機
21 第1の太陽歯車(太陽歯車)
22 第1の遊星歯車
23 固定内歯車
24 第2の太陽歯車
25 第2の遊星歯車
26 可動内歯車
27 キャリア+
48 ボールネジ機構(運動変換機)
60 減速機

Claims (4)

  1. トルクが入力される第1の太陽歯車と、
    第1の太陽歯車に噛み合うとともに第1の太陽歯車の周囲を公転しながら自転する第1の遊星歯車と、
    第1の遊星歯車の公転軌跡の周囲に固定配置され、第1の遊星歯車に噛み合う固定内歯車と、
    第1の太陽歯車と同軸上で一体に回転する第2の太陽歯車と、
    第2の太陽歯車に噛み合うとともに第2の太陽歯車の周囲を公転しながら自転する第2の遊星歯車と、
    第2の遊星歯車の公転軌跡の周囲に回転可能に配置され、第2の遊星歯車に噛み合うとともにトルクを出力する可動内歯車と、
    第1の遊星歯車および第2の遊星歯車を自転可能に支持するとともに第1の遊星歯車および第2の遊星歯車の公転に伴なって回転するキャリアとを備える減速機であって、
    第1の太陽歯車の歯数と第2の太陽歯車の歯数とが異なり、第1の遊星歯車の歯数と第2の遊星歯車の歯数が異なり、固定内歯車の歯数と可動内歯車の歯数が異なることを特徴とする減速機。
  2. 第1の太陽歯車の回転中心から第1の遊星歯車の回転中心までの距離と、第2の太陽歯車の回転中心から第2の遊星歯車の回転中心までの距離とが等しいことを特徴とする請求項1に記載の減速機。
  3. トルクが入力される太陽歯車と、
    太陽歯車に噛み合うとともに太陽歯車の周囲を公転しながら自転する第1の遊星歯車と、
    第1の遊星歯車の公転軌跡の周囲に固定配置され、第1の遊星歯車に噛み合う固定内歯車と、
    第1の遊星歯車と一体に自転するとともに公転する第2の遊星歯車と、
    第2の遊星歯車の公転軌跡の周囲に回転可能に配置され、第2の遊星歯車に噛み合うとともにトルクを出力する可動内歯車と、
    第1の遊星歯車および第2の遊星歯車を自転可能に支持するとともに第1の遊星歯車および第2の遊星歯車の公転に伴なって回転するキャリアとを備える減速機であって、
    第1の遊星歯車の歯数と第2の遊星歯車の歯数が異なり、固定内歯車と可動内歯車の歯数が異なることを特徴とする減速機。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の減速機を備えた電動ブレーキであって、
    電動モータと、
    電動モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機と、
    電動モータと運動変換機との間に介在して電動モータの回転力を減速して運動変換機に伝動する前記減速機とを備えていることを特徴とする電動ブレーキ。
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