JP2008273454A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】高速耐久性、乗り心地、音振特性等の他のタイヤ性能を維持しつつ、操縦安定性を向上する空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】ラジアルカーカス5のクラウン部3外周に設けられる少なくとも2層のコード交差層からなるベルト6と、該ベルト6の外周に沿って巻回した有機繊維コードよりなるベルト補強層7、8とを備える空気入りラジアルタイヤTにおいて、前記ベルト補強層7、8をタイヤ幅方向の中央部と両端部とに区分し、前記中央部のベルト補強層7の補強コードとしてナイロンコードを使用し、前記両端部のベルト補強層8の補強コードとしてポリエステル(PET)コードを使用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、ベルト補強層をナイロンコードとポリエステルコードとで構成することにより、高速耐久性、乗り心地、音振特性(ロードノイズ)等の他のタイヤ性能を維持しつつ、操縦安定性を向上するようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
空気入りラジアルタイヤにおいて、高速耐久性や転がり抵抗、ロードノイズの改善を目的として、ベルト層の外周側に補強コードをタイヤ周方向に配列してなるベルト補強層を配置することが行われている。このようなベルト補強層の補強コードとしては、ナイロンコードが一般的に使用され、ポリエステルコードを使用することも提案されている(例えば、特許文献1〜2)。しかしながら、近年では車両の高級化に伴って、操縦安定性と乗り心地、ロードノイズなど諸性能とバランスの良い両立の改善要求が益々強くなっており、従来のナイロンコードを用いた場合、その要求特性を必ずしも満足することができないのが現状である。
上記ベルト補強層にポリエステル系合成繊維からなる補強コードを用いると、該ポリエステルコードは、一般にナイロン繊維に比べて高モジュラスであることからトレッド剛性やベルトのタガ効果を向上し操縦安定性、高速耐久性を向上できるが、その使用量を多くすると乗り心地やロードノイズが悪化する傾向にあった。
また、ポリエステル系合成繊維は、一般に、ベルト補強層を構成するゴム材料との接着性がナイロン繊維より低く、特に高速走行時の高温下での接着性がナイロンコードを使用した場合よりも劣ることから高速耐久性にも問題が残されていた。
一方、ベルト補強層をタイヤ幅方向の中央部と両端部とに区分し、中央部の補強コードとしてポリエステルコードを使用し、両端部の補強コードとして、前記ポリエステルコードよりもコード硬さが低いポリエチレンナフタレートコードを使用した空気入りラジアルタイヤ(特許文献3)、ベルト層の少なくとも両エッジ部の外周に、150℃下のゴムに対する剥離力が常温下の剥離力の45%以上、80%未満である接着剤処理されたポリエステルコードを使用したベルト補強層を備えた空気入りラジアルタイヤ(特許文献4)などが提案されているが、中央部にモジュラスの高いポリエステル系コードを使用すると、荒れた路面を走行した場合に路面からの突き上げが大きく乗り心地やロードノイズが悪化する欠点があった。
特開平9−66705号公報 特開2001−63312号公報 特開2006−192914号公報 特開2006−248345号公報
上記各文献に記載のように、接着技術の改良によりポリエステルコードをベルト補強層に適用し高速耐久性や操縦安定性、ロードノイズの改善がなされているが、従来のポリエステルコードではゴムとの接着性に由来する耐久性の問題、高モジュラスであるための乗り心地やロードノイズ悪化の問題を十分解消するには至っていない。
そこで、本発明の目的は、高速耐久性、乗り心地、音振特性(ロードノイズ)等の他のタイヤ性能を維持しつつ、操縦安定性を向上するようにした空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
本発明者は、ベルト補強層に従来の比較的モジュラスの低いナイロンコードとモジュラスの高いポリエステルコードとを併用し、ポリエステルコードの使用量を適正範囲とし、さらにポリエステルコードのゴム材料との接着性を改良することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の空気入りラジアルタイヤは、ラジアルカーカスのクラウン部外周に設けられる少なくとも2層のコード交差層からなるベルトと、該ベルトの外周に沿って巻回した有機繊維コードよりなるベルト補強層とを備える空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト補強層をタイヤ幅方向の中央部と両端部とに区分し、前記ベルト補強層の中央部の補強コードとしてナイロンコードを使用し、前記ベルト補強層の両端部の補強コードとしてポリエステル(PET)コードを使用したことを特徴とする。
本発明においては、前記ベルト補強層の両端部は、ベルト端部を覆うベルト両端領域と、該ベルト両端部よりベルト幅方向内方に入った1.5cmの位置から最大ベルト幅の1/3の位置の間で終端する領域であることが好ましい。
また、前記ベルト補強層8におけるポリエステルコードの使用量は、タイヤ径方向において2層巻き以内とし、最大ベルト幅をW(mm)とした場合、タイヤ断面積中のポリエステルコード断面積の和が2.4〜0.48W(mm)であることが好ましい。
さらに、前記ポリエステルコードは、少なくとも2回の接着液処理がなされ、第1回接着処理が、(A)キャリアーを含む処理液と(B)ブロックドイソシアネート水溶液とを含む第1処理液で処理され、第2回以降の接着処理が、(B)ブロックドイソシアネート水溶液と(C)エポキシ化合物の分散液及び(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液を含む第2処理液で処理され、該接着処理済みポリエステルコードの樹脂付着率が10重量%未満であることが好適である。
本発明の空気入りラジアルタイヤによれば、高速耐久性、乗り心地、音振特性(ロードノイズ)等の他のタイヤ性能を維持しつつ、操縦安定性を向上することができ、ラジアルタイヤの諸性能をバランス良く両立させたタイヤを提供することができる。
図1は本発明の一実施形態に係る空気入りラジアルタイヤ(以下、ラジアルタイヤという)Tの概略半断面図である。
ラジアルタイヤTは、一対のビード部1およびサイドウォール部2と、その両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とからなり、ビード部1に埋設したビードコア4、4間にわたり補強する2プライのラジアルカーカス5が、カーカス5の端部をビードコア4の周りにタイヤ内側から外側に折り返されビードフィラー9に沿って巻き上げられサイドウォール部2で係止されている。ラジアルカーカス5のクラウン部外周に設けられる2層のコード交差層からなるベルト6、該ベルト6の外周に沿って巻回した有機繊維コードよりなるベルト補強層7、8を備えている。
カーカス5としては、ポリエステル、ナイロン、レーヨンなどの有機繊維コードが、またベルト2には、フィラメント径が0.20〜0.30mm程度の1×4、1×5、2+2、2+1構造などのスチールコード、あるいはアラミドコードなどの剛直な有機繊維コードが使用されている。
ベルト補強層7、8は、補強コードをタイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で配列してなっている。例えば、処理済みコードを所定間隔で引き揃えてゴム被覆されたリボン状の帯状部材を、タイヤ2nd成型の際に成型ドラム1周毎に帯状部材をベルト上でずらせながら側端部同士を突き合わせスパイラル状に巻き付けることによりコード角度はタイヤ周方向に対して実質的に0°に成型される。また、処理済みのシングルコードをタイヤ幅方向にずらせながらベルト上にスパイラル状に巻き付けたものでもよい。
ベルト補強層7、8は、ベルト6の外周上の両端部を覆い、有機繊維コードをタイヤ周方向に対してほぼ0°の角度でスパイラル状に巻回することで、ベルト6を周方向に締め付け、タイヤ周方向及び径方向の剛性やベルト拘束力を高めるタガ効果を得て、高速走行時の遠心力によるベルトのせり上がりや径成長、ベルト端部の歪みを抑制し、高速で耐久性能と操縦安定性を良好にしている。
従来、このベルト補強層7、8の補強コードとしては、ナイロン6、ナイロン66などのナイロンコードが、その収縮特性、接着性などの理由から主流に使用されてきたが、上記したように比較的低モジュラスなナイロンコードを使用すると、操縦安定性と乗り心地、ロードノイズなど諸性能とバランスの良い両立を必ずしも満足することができなかった。
そこで、ベルト補強層にポリエステル系合成繊維からなるモジュラスの高い補強コードを用いると、操縦安定性、高速耐久性を向上できるが、その使用量を多くすると乗り心地やロードノイズが悪化するという問題があった。
本発明の空気入りラジアルタイヤTにおいては、ベルト補強層7,8をタイヤ幅方向の中央部と両端部とに区分し、中央部のベルト補強層7の補強コードとしてナイロンコードを使用し、両端部のベルト補強層8の補強コードとしてポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET))コードを使用している。
前記両端部のベルト補強層8のタイヤ幅方向に占める領域は、ベルト端部6aを覆うベルト両端領域と、該ベルト両端部6aよりベルト幅方向内方に入った1.5cmの位置Xから最大ベルト幅Wの1/3の位置Yの間で終端する領域であることが好ましい。さらに、最大ベルト幅Wの1/4の位置Zの間で終端する領域であることがより好ましい。
ベルト補強層8のタイヤ幅方向に占める領域が、該ベルト両端部6aよりベルト幅方向内方に入った1.5cmの位置Xよりタイヤ外側であると、ベルト端部域におけるベルト補強層8のモジュラスが不足し、操縦安定性やロードノイズの向上効果が十分得られず、最大ベルト幅Wの1/3の位置Yよりタイヤ中央部で終端すると、中央部のナイロンコード量が少なくなり乗り心地性、ロードノイズを確保し難くなる。
このように両端部のベルト補強層8に高モジュラスのポリエステルコードを使用することで、ベルト両端部を押さえて操縦安定性と高速耐久性を向上し、中央部のベルト補強層7の中央部に低モジュラスのナイロンコードを使用することで、乗り心地や音振特性(ロードノイズ)と高速耐久性の改善効果を確保することができる。
ベルト補強層7、8の全域にポリエステルコードを適用した場合、操縦安定性や高速耐久性の向上効果は高く発現するが、ベルト補強層全体の剛性が高くなり、乗り心地やロードノイズを悪化させるようになる。そのため、操縦安定性に対する感度が高い両端部のベルト補強層7にポリエステルコードを適用し、中央部には従来から使用されている低モジュラスのナイロンコードを適用する。
なお、上記モジュラスの評価としては、JIS L1017に準拠する引張試験における2.0cN/dtex荷重時の伸度(中間伸度)を用い、中間伸度は5.0%以下、好ましくは4.0%以下である。前記処理コードの中間伸度は、接着剤処理における最終段の熱処理ゾーン(ノルマライジングゾーン)の張力、コードの撚数が挙げられ、K=T・(D/1.111)1/2で表される処理コードの撚係数Kが2500以下であることが好ましい。この式におけるTはコードの上撚り数(回/10cm)、Dはコードの基準繊度(dtex)である。撚係数Kが2500を超えると、高モジュラスコードが得られ難くなるばかりでなく、強力も低下しタイヤ補強コードとして不向きとなる。
また、図1では、ベルト補強層7は1層からなり、両端部に位置するベルト補強層8は2層からなる補強層が示されているが、ベルト補強層7は2層以上としても、ベルト補強層8を1層からなる補強層としてもよい。
上記ベルト補強7に適用されるナイロンコードとしては、ナイロン6、ナイロン66などが挙げられ、コードの繊度は特に制限されないが800〜1500dtex/2の範囲が乗り心地、ロードノイズを確保する点で好ましく、中でも市販品が利用できる840dtex/2、1400dtex/2が好適に使用することができる。
また、上記ベルト補強8に適用されるポリエステルコードとしては、ポリエステル系合成繊維からなるものであればよいが、汎用性、コストからポリエチレンテレフタレート(PET)が好適である。
ポリエステルコードの繊度は特に制限されないが900〜1800dtex/2の範囲がコードのモジュラスを適正にする点で好ましく、ポリエステルコードとして市販品が利用できる1100dtex/2、1670dtex/2を好適に使用することができる。
前記ベルト補強層8におけるポリエステルコードの使用量は、タイヤ径方向において2層巻き以内とし、最大ベルト幅をW(mm)とした場合、タイヤ断面積中のポリエステルコード断面積の和が2.4〜0.48W(mm)であることが好ましい。
ベルト補強層8を3層巻き以上とすると、ベルト端部の補強層の厚みが増大し、乗り心地やロードノイズを悪化させ、またベルト端部が発熱しやすくなりスチールベルト端の接着故障を引き起こしやすくする。
また、ポリエステルコード断面積の和が2.4mm未満であるとベルト端部を効果的に押さえることができず、0.48Wmmを超えるとポリエステルコードの使用量が多くなりベルト中央部まで影響し乗り心地やロードノイズを維持できなくなる。
前記ポリエステルコードは、特定の接着処理液を使用し、少なくとも2回の接着液処理がなされることが好ましい。処理液としては、第1回接着処理は、(A)キャリアーを含む処理液と(B)ブロックドイソシアネート水溶液とを含む第1処理液、第2回の接着処理は、(B)ブロックドイソシアネート水溶液と(C)エポキシ化合物の分散液及び(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液を含む第2処理液が挙げられる。第3回接着処理として第2回接着処理と同内容の処理を繰り返し行ってもよい。これにより、ポリエステルコードに耐熱接着性を付与することができ、高速耐久性をより向上することができる。
接着性確保の目安としては、初期加硫後(140℃×40分加硫)の剥離接着試験後のゴム被覆率が90%以上、過加硫後(170℃×60分加硫)の剥離接着試験後のゴム被覆率が80%以上であることが必要である。
また、該接着処理済みポリエステルコードの樹脂付着率が10重量%未満であることが好ましく、樹脂付着率が10重量%を超えるとコードが硬くなり強力や耐疲労性を低下させ、また乗り心地、ロードノイズにも影響する。樹脂付着率の下限は、特に制限されないが、3重量%未満になると耐熱接着性が確保し難くなるので、好ましい下限は3重量%以上、より好ましくは4重量%以上である。
上記(A)キャリアーを含む処理液としては、キャリアーを水に溶解、分散または乳化させたものであり、キャリアー以外の溶剤、分散液、乳化剤あるいは安定剤等の助剤や紡糸油剤等が含有されていてもよい。キャリアーとは、ポリエステル繊維内部に浸入拡散し、ポリエステル繊維の膨潤を高め、繊維内部構造を接着剤分子が入りやすいよう変化せしめる物質であり、キャリアー作用を活用してブロックドイソシアネート水溶液、エポキシ化合物の分散液およびRFL溶液をポリエステル繊維により強固に結合させ耐熱接着性を向上させるものである。
キャリアーとして好ましいものは、p−クロルフェノール、o−フェニルフェノール等のフェノール誘導体類、モノクロルベンゼン、トリクロルベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類およびレゾルシンとp−クロルフェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物等が挙げられる。特に好ましい例はレゾルシンとp−クロルフェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物である。
(B)ブロックドイソシアネートが水溶液は、含まれるイソシアネート成分としては特に限定されないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のポリイソシアネートが好ましく、更には、ジフェニルメタンジイソシアネート系ポリイソシアネート混合体が耐熱性能に優れ好ましい。
(C)エポキシ化合物の分散液に含まれるエポキシ化合物は特に限定されないが、好ましくは2官能以上の多官能エポキシを用いることで、樹脂の架橋密度が高くなり、優れた耐熱接着性が得られる。エポキシ化合物の好ましい例としては、グリセロール・ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル等、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
(D)RFL混合液はレゾルシンとホルマリンを酸またはアルカリ触媒下で反応させて得られる初期縮合物とスチレンブタジエンラテックス、カルボキシ変性スチレンブタジエンラテックス、スチレンブタジエンビニルピリジンラテックス、カルボキシ変性スチレンブタジエンビニルピリジンラテックス、天然ゴム、ポリブタジエンラテックス等の1種または2種以上の混合水溶液が用いられる。好ましくはスチレンブタジエンビニルピリジンラテックス、カルボキシ変性スチレンブタジエンビニルピリジンラテックスを用いることで、優れた耐熱接着性を得ることが出来る。レゾルシン、ホルマリン、ラテックスの配合比率は公知技術のいずれを適用してもよい。
上記第1処理液で処理することで、イソシアネートによるアミンバリア層が、キャリアー効果で繊維と強固に結合し、繊維および繊維と隣接する接着剤層およびそれらの界面の劣化を著しく抑制させ、次いで、第2処理液は、イソシアネートおよびエポキシによるラテックスの架橋改質効果により、RFL樹脂の耐熱性が向上し、これら全体の効果により優れた耐熱接着性および強力保持率が得られるものとなる。
なお、前記第1処理液は、総固形分100重量部に対し、(B)ブロックドイソシアネート固形分が40〜95重量部配合されていることが好ましい。40重量部より少ないと樹脂の架橋が不十分であり充分な耐熱接着性が得られず、95重量部より多いとキャリアー成分が少なくなり、この場合も充分な耐熱接着性が得られない。
また、前記第2処理液は、総固形分100重量部に対し、(B)ブロックドイソシアネート固形分が5〜40重量部配合されていることが好ましい。5重量部より少ないと、樹脂の架橋が不十分であり充分な耐熱接着性が得られず、40重量部より多いとRFL成分が少なくなり過ぎるため充分な初期接着性が得られない。更に第2処理液は、総固形分100重量部に対して、(C)エポキシ化合物固形分が0.5〜10重量部配合されていることが好ましい。この範囲より少なくても多くても、良好な接着性は得られない。
また、接着処理装置は、特に限定されることがなく、ゴム業界で通常に使用されるディッピング処理装置によることができる。例えば、コードを処理液中でディップ処理を施した後、所定温度の乾燥処理(ドライ)ゾーンで処理液の乾燥処理を行った後、連続して配置された緊張熱処理(ヒートストレッチ)ゾーン及び緊張緩和熱処理(ヒートリラックス)ゾーンの中を所定張力下で順次通過させて熱処理して熱セットさせコード物性が調整される方法が挙げられる。
これらの装置はシングルコード処理機、複数のシングルコードを同時に処理できるコードセッター、あるいはすだれ織物を処理することができる、いわゆるディッピングマシンなどのゴム工業で通常に使用される公知のディップ処理機によることができる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本実施例により限定されるものではない。
タイヤサイズが215/55R1798V、図1に示すベルト補強層を設けたタイヤ構造を有する空気入りラジアルタイヤを試作した。カーカスはポリエステル1670dtex/2(エンド数22本/インチ)の2プライ、ベルトはスチールコード2+2×0.25(エンド数20本/インチ)の2プライとし、ベルト幅は1stベルト187mm、2ndベルト177mmとし、ベルト補強層以外は共通の構造とした。
ベルト補強層に使用した補強コードの種類、コード特性、接着処理を表1に示す。表1に記載の補強コードをベルト補強層中央部と両端部とに表2に記載の仕様に従い適用した。各タイヤの乗り心地、音振特性(ロードノイズ)、操縦安定性、高速耐久性を下記試験方法により評価した。結果を表2に示す。
使用した補強コードは、1100dtex/2(撚り数43×43回/10cm)のポリエチレンテレフタレート(PET)コード(東洋紡績(株)製、エステル)、940dtex/2(撚り数30×30回/10cm)ナイロン(Ny)66コード(旭化成(株)製、レオナ66)及び1100dtex/2(撚り数43×43回/10cm)のポリエチレンナフタレート(PEN)コード(試作品)である。コード特性はJIS L1017に準じ、標準状態で引張試験した。
なお、ベルト補強層の補強コードの接着剤処理に使用した処理液は下記の通りである。
[処理液組成A](本発明にかかる処理液)
・第1処理液:キャリアー(p−クロルフェノール・ホルマリンレゾルシン縮合物のアンモニア水溶液;ナガセケムテックス(株)デナボンド)を含む処理液及びブロックドイソシアネート水溶液(ポリウレタンプレポリマーブロック化体、固形分30%;第一工業製薬(株)エラストロンBN−27)を含む処理液。
・第2処理液:ブロックドイソシアネート水溶液(ポリウレタンプレポリマーブロック化体、固形分30%;第一工業製薬(株)エラストロンBN−27)、エポキシ化合物の分散液(ソルビトール・ポリグリシジル・エーテル;ナガセケムテックス(株)デナコールEX−614)、界面活性剤(ジアルキルスルホコハク酸エステルソーダ塩、固形分75%;第一工業製薬(株)ネオコールP)及びレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)の混合液を含む処理液。
[処理液組成B](公知のナイロン用処理液)
・RFLの混合液。
[処理液組成C](従来のPET用処理液)
・第1処理液:エポキシ化合物の分散液(ソルビトール・ポリグリシジル・エーテル;ナガセケムテックス(株)デナコールEX−614)を含む処理液。
・第2処理液:RFLの混合液。
Figure 2008273454
[乗り心地性]
試作タイヤを標準リムを用いて、内圧220kPaとして実車(排気量3,000cc、セダン)に装着して、乗り心地性評価用テストコースを60〜100km/hの各種の速度で走行したときの3名のテストドライバーの官能評価により、10点満点で評価を行い平均値を求めた。値が大きいほど良好である。
[ロードノイズ]
乗り心地評価と同様に試作タイヤを実車に装着して、運転席と後席右側の2名乗車により、メーター読みにて60km/hの定常走行で、3名のテストドライバーの官能評価により、10点満点で評価を行い平均値を求めた。値が大きいほど良好である。
[操縦安定性]
乗り心地評価と同様に試作タイヤを実車に装着して、操縦安定性評価用テストコースを60〜140km/hの各種の速度で走行したときの3名のテストドライバーの官能評価により、10点満点で評価を行い平均値を求めた。値が大きいほど良好である。
[高速耐久性]
ドラム試験機により、JIS D4230に規定される高速耐久性試験を終了した後、さらに30分毎に速度を10km/hずつ増加させて、タイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。比較例8(コントロール)を100とする指数で示した。値が大きいほど良好である。
Figure 2008273454
表2に示す結果から明らかなように、本発明にかかる実施例1、2のラジアルタイヤはベルト補強層全体にナイロンコードを使用した従来タイヤの比較例10に対して、乗り心地、ロードノイズ、操縦安定性と高速耐久性のバランスよい性能が得られる。これに対して両端部のベルト補強層幅が小さい比較例1は、操縦安定性が劣り、逆に広すぎる比較例2は乗り心地、ロードノイズが悪化し、またモジュラスの高すぎるPENコードを用いた比較例3、ベルト補強層をPETコードのみで構成した比較例5は乗り心地、ロードノイズが悪化している。また、両端部のみにベルト補強層を配した比較例5,6は中央部の成長が大きく耐久性が劣り、乗り心地や操縦安定性とのバランスも崩れる。さらに、PETコードの使用量の多い比較例7、8は全体にタイヤ性能が低下し、特に耐久性が劣る。また、従来の処理液を用いた比較例9は耐熱性が劣り高速耐久性が確保できない。
以上の通り、本発明の空気入りラジアルタイヤは、高速耐久性、乗り心地、音振特性(ロードノイズ)等の他のタイヤ性能を維持しつつ、操縦安定性を向上することができ、乗用車用のラジアルタイヤ、特に扁平率が60%以下の扁平タイヤに好適である。
実施形態の空気入りラジアルタイヤの半断面図である。
符号の説明
3……トレッド部
5……カーカス
6……ベルト
7……中央部ベルト補強層
8……両端部ベルト補強層
T……空気入りラジアルタイヤ

Claims (4)

  1. ラジアルカーカスのクラウン部外周に設けられる少なくとも2層のコード交差層からなるベルトと、該ベルトの外周に沿って巻回した有機繊維コードよりなるベルト補強層とを備える空気入りラジアルタイヤにおいて、
    前記ベルト補強層をタイヤ幅方向の中央部と両端部とに区分し、前記ベルト補強層の中央部の補強コードとしてナイロンコードを使用し、前記ベルト補強層の両端部の補強コードとしてポリエステルコードを使用した
    ことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
  2. 前記ベルト補強層の両端部は、ベルト端部を覆うベルト両端領域と、該ベルト両端部よりベルト幅方向内方に入った1.5cmの位置から最大ベルト幅の1/3の位置の間で終端する領域である
    ことを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
  3. 前記ベルト補強層の両端部におけるポリエステルコードの使用量は、タイヤ径方向において2層巻き以内とし、最大ベルト幅をW(mm)とした場合、タイヤ断面積中のポリエステルコード断面積の和が2.4〜0.48W(mm)である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  4. 前記ポリエステルコードは、少なくとも2回の接着液処理がなされ、
    第1回接着処理が、(A)キャリアーを含む処理液と(B)ブロックドイソシアネート水溶液とを含む第1処理液で処理され、
    第2回以降の接着処理が、(B)ブロックドイソシアネート水溶液と(C)エポキシ化合物の分散液及び(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液を含む第2処理液で処理され、
    該接着処理済みポリエステルコードの樹脂付着率が10重量%未満である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
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