JP2011218980A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト補強層を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、高速耐久性の向上と軽量化、及び車内騒音の低減を実現することができるものを提供する。
【解決手段】ベルト補強層7,8の厚みを(B)を、ベルト層の上面からトレッド部の主溝の底までの距離(A)の25%未満とし、ベルト補強層7,8に用いる有機繊維コードとして下記(I)式で表される撚り係数(K)が800以上であるものを用いる。
K=T・(D/ρ)1/2 ……(I);
ここで、Tは10cm当りの撚り数(回/10cm)、Dはコード全体としての公称繊度(デシテックス(dtex))、ρは繊維の比重である。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機繊維コードをベルト補強層(バンド層、キャッププライ)の補強材として用いた空気入りラジアルタイヤに関する。特には、走行時の騒音を抑えつつ、軽量化、及び、高速走行した場合の耐久性を向上させることのできる空気入りラジアルタイヤに関する。
空気入りラジアルタイヤにおいて、高速耐久性や転がり抵抗、ロードノイズの改善を目的として、ベルト層の外周側に、補強コードをタイヤ周方向に配列してなるベルト補強層を配置することが行われている。このベルト補強層は、特には、高速走行時において、スチールコードなどからなるベルト層の浮き上がりを防止するために設けられる。特に、ベルト層の幅方向両端部(ショルダー部近傍)での浮き上がりを防止すべく、ベルト補強層は、少なくともベルト層の幅方向両端部を覆うように配置される。
ベルト補強層には、従来、双撚り構造の有機繊維コードが主として用いられる。すなわち、ナイロンやポリエステル(PETその他)などの有機繊維の素線(フィラメント)の束に下撚りを施した上で、このように得られた「ヤーン」を複数本束ねて、さらに上撚りによって撚り合わせたコードが主として用いられている(例えば特許文献1)。
このような双撚り構造の繊維コードは、下撚りと上撚りとの撚り方向が互いに逆のため、形態保持性は良好であるものの撚り工程が多く製造コストが高くなる。また、コードの径が太くなるなどの理由からコード重量の増加を招き、さらには、断面形状が複雑となるためにプライ厚さを増大させるなど、タイヤ重量増加の原因ともなっている。
そこで、例えば下記特許文献2においては、片撚り構造の有機繊維コードをベルト補強層(バンド層)の補強材として用いるとともに、所定荷重時の伸び率や、「残留張力」、コード打ち込み本数などの各種条件を特定の範囲内とすることが提案されている。具体的な実施例(表1の実施例1〜2)によると、ナイロン66の1400〜2100dtxの、素線(フィラメント)の束に、10cmあたり16〜20の撚りを掛けて得たコードであって、種々の条件に合致するものを用いている。そして、このような有機繊維コードを採用することにより、「低コスト化や軽量化を達成しながら、高速操縦安定性、高速耐久性、及びノイズ性能を向上しうる」としている。
特許文献2の請求項1、0020段落などによると、片撚り構造の有機繊維コードについて、「コード太さDの平方根に10cm当たりのコード撚り数Nを掛けた撚り係数T(=N・D1/2)を150〜750」と、従来よりも小さい範囲に減じる必要があるとしている。そして、撚り係数Tが大きいと、「締め付け力の向上効果等が充分に達成され」ないので、撚り係数Tは、「200〜600の範囲が好ましい」としている。しかし、特許文献2の構成では、軽量化を達成しつつ、タイヤの高速耐久性を向上する上で必ずしも充分でなかった。そのため、依然として、双撚り構造などの繊維コードが、一般にベルト補強層に用いられている。
一方、特許文献3においては、片撚り構造の有機繊維コードをベルト補強層(バンド層)の補強材として用いることにより、タイヤの高速耐久性が低下するのを防止すべく、ベルト層の補強コードの傾斜角を大きくするとともに、ビードフィラーの高さを低めに抑えることが示されている。すなわち、片撚り構造の有機繊維コードをベルト補強層に用いるためには、ベルト補強層以外の構造に工夫を加えることがあるということを示唆するものと考えられる。
特開2005−022455公報 特開2002−154304公報 特開2007−045245公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ベルト補強層に用いる繊維コードの構成などを改良することで、低コスト化や軽量化を達成しながら、高速耐久性を向上させた空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に鑑み、有機繊維コードの撚り係数及び繊度、並びにベルト補強層の厚みについて、鋭意検討していく中で、偶然に、ある特定の条件を採用することにより、非常に優れた効果が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、トレッド部に設けたベルト層と、該ベルト層の半径方向外側に、少なくとも該ベルト層の両端部(トレッドの幅方向両端部に対応)を覆うように配置されたベルト補強層とを備え、ベルト補強層に片撚り構造の有機繊維コードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト補強層の厚み(B)を、ベルト層の上面からトレッド部の主溝の底までの距離(A)の25%未満とし、前記有機繊維コードとして下記(I)式で表される撚り係数(K)が800以上であるものを用いる。
K=T・(D/ρ)1/2 ……(I);
ここで、Tは10cm当りの撚り数(回/10cm)、Dはコード全体としての公称繊度(デシテックス(dtex))、ρは繊維の比重である。
好ましくは、上記の繊維コードの公称繊度(D)が2000dtex未満、好ましくは1000〜1900dtexである。また、好ましくは、ベルト補強層の厚み(B)が前記距離(A)の20〜24%であり、上記の繊維コードの撚り係数(K)が、800〜2000である。
本発明によれば、特には、片撚り構造の繊維コードをベルト補強層に用いるにあたり、ベルト補強層の厚みを小さく設定するとともに、繊維コードとして撚り係数(K)の値が比較的大きいものを用いることにより、低コスト化及び軽量化を達成しながら、高速耐久性を向上させることができる。
実施形態の空気入りラジアルタイヤを軸方向に切断した半断面図である。
図1は本発明の一実施形態に係る乗用車用の空気入りラジアルタイヤ(以下、ラジアルタイヤという)Tの概略半断面図である。
ラジアルタイヤTは、一対のビード部1およびサイドウォール部2と、その両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とからなり、ビード部1に埋設したビードコア4、4間にわたり補強する2プライのラジアルカーカス5が、カーカス5の端部をビードコア4の周りにタイヤ内側から外側に折り返されビードフィラー9に沿って巻き上げられサイドウォール部2で係止されている。また、ラジアルカーカス5のクラウン部外周に設けられる2層のコード交差層からなるベルト6、及び、該ベルト6の外周に沿って巻回した有機繊維コードよりなるベルト補強層7、8を備えている。なお、タイヤ内面にインナーライナー層10が設けられ、タイヤ外面にはトレッド部3に、タイヤ周方向に延びる4本の主溝11及び副溝などからなるトレッドパターンが設けられる。図示の具体例で、主溝11は、4本(半断面の図中2本)が、タイヤ周方向に延びており、
ベルト補強層7、8の有機繊維コードは、タイヤ加硫成形において熱収縮することでベルト2を周方向に締め付け、タイヤ周方向の剛性やベルト拘束力を高めて、高速走行時の遠心力によるベルトのせり上がりや径成長、ベルト端部の歪みを抑制し、高速で耐久性と操縦安定性を良好にすることができる。
カーカス5としては、ポリエステル、ナイロン、レーヨンなどの有機繊維コードが、またベルト2には、フィラメント径が0.20〜0.30mm程度の1×4、1×5、2+2、2+1構造などのスチールコード、あるいはアラミドコードなどの剛直な有機繊維コードが使用されている。なお、カーカス、ベルト、ベルト補強層の積層枚数は、タイヤサイズや用途により適宜増減し使用することができる。
図示の例において、ベルト補強層7、8は、ベルト6の外周上において内側のベルト補強層7がベルト6の全幅(WA+WB)を覆っており、折り返された外側のベルト補強層8が、ベルト6の両端部WBを覆っている。ベルト補強層7、8は下記の所定の繊維コードをタイヤ周方向に対してほぼ0°の角度、例えば0〜5°の角度でスパイラル状に巻回することで、ベルト6を周方向に締め付け、タイヤ周方向及び径方向の剛性やベルト拘束力を高めるタガ効果を得て、高速走行時の遠心力によるベルトのせり上がりや径成長、ベルト端部の歪みを抑制し、高速での耐久性能と操縦安定性を良好にしている。ベルト補強層7、8は、例えば有機繊維コードを引き揃えてゴムで被覆されたリボン状の帯状部材を、タイヤ成型の際に成型ドラム1周毎に側端部同士を突き合わせながらスパイラル状に巻き付けることにより設けられる。また、接着処理済みのシングルコードをタイヤ幅方向にずらせながらスパイラル状に巻き付けてからゴム引きしたものでもよい。
図示の例において、主溝11は、ベルト6の両端部WBを覆う個所には設けられず、ベルト6の両端部以外WAを覆う個所にのみ設けられる。外側のベルト補強層8がベルト6の両端部WBの箇所にのみ配置されるので、主溝11が形成された領域では、内側のベルト補強層7のみが存在する。
ここで、ベルト補強層7,8の厚み(B)は、主溝11の底11aから外側のベルト6の上面までの距離(A)の25%未満になるように設定される。すなわち、次式(II)を満足させる。;
B/A×100<25・・・(II);
なお、好ましくは、20〜24%に、より好ましくは22〜24%に設定される。このような範囲に設定することで、タイヤの耐久性及び車内静粛性を保ちつつ、タイヤ軽量化を達成することができる。
また、ベルト補強層7、8に用いる有機繊維コードは、上記(I)式で表される撚り係数(K)が800以上、好ましくは800〜2000、より好ましくは800〜1700、さらに好ましくは800〜1500である。この範囲に撚り係数を設定することで、加硫成形時の熱収縮により適度にベルト6を締め付け、上記のタイヤ周方向の剛性とベルト拘束性を向上し操縦安定性を確保することができ、特には、高速耐久性を高く保つことができる。
有機繊維コードの撚り係数(K)が上記範囲より低い場合、耐疲労性が低下し、挫屈疲労からコード破断やトレッドセパレーションなどを起こしやすくなる。また、撚り係数が上記範囲を超えると、ゴムとの複合体とした際の剛性が小さくなることから、タイヤ装着時の操縦安定性が低下する。
有機繊維コードの公称繊度(D)、すなわちコード全体としての見かけの繊度(重量/単位長さ)が、1000〜2000dtex、好ましくは1050〜1700dtexである。有機繊維コードの公称繊度(D)がこの範囲より低い場合には、コードの強度(N)が低下することから、ベルト補強層7、8の強度を確保するために、コードの打ち込み本数や補強層数を増加する必要がある。例えば、コード打ち込み本数について、セパレーションなどの故障が生じやすくなるまで多くする必要がある。そのため、接着性、発熱性に不利となるとともに耐久性が低下する。一方、有機繊維コードの公称繊度(D)が上記範囲を超える場合には、コード径が大きくなってしまうために、ベルト補強層7、8の厚みが大きくなってしまう。このため、タイヤの軽量化を達成することができず、結果的に燃費にも不利となる。
有機繊維コードの材質としては、ナイロン66その他のナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)その他のポリエステル繊維、アラミド繊維など、必要な強度及び剛性を備えたものであれば、いずれでも良い。また、複数種の有機繊維を組み合わせた複合繊維などからなるのであっても良い。
ベルト補強層7、8に用いる有機繊維コードが、ポリエステルなどからなる場合、好ましくは、少なくとも、下記の接着性樹脂液を用いたディップ処理(接着性のコーティング処理)がなされたものを用いる。すなわち、(1)ブロックドイソシアネート水溶液及びエポキシ化合物分散液の少なくとも一方と、(2)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液とを、同時にまたは逐次に用いて、一段または複数段の処理のディップ処理を行ったものを用いる。好ましくは、上記(1)を含む第1処理液によるディップ処理、及び、上記(2)を含む第2処理液によるディップ処理を順次行うのが好ましく、特に、この順番で行うのが好ましい。
ディップ処理についての好ましい第1の実施形態によると、第1処理液として(A)キャリアー(例えば、レゾルシンとp−クロルフェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物)を含む処理液と(B)ブロックドイソシアネート水溶液とを含むものを用い、第2処理液としては、(B)ブロックドイソシアネート水溶液と(C)エポキシ化合物の分散液及び(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液を含むものを用いる。ディップ処理の好ましい第2の実施形態によると、第1処理液として(E)オキサゾリン基を含む化合物、(C)エポキシ化合物、及び(F)ゴムラテックスを含むものを用い、第2処理液として、(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液を含むものを用いる。なお、第2処理液によるディップ処理の後、再度、第1処理液によるディップ処理を行っても良い。このようなディップ処理により、ポリエステルコードに耐熱接着性を付与することができる。
ベルト補強層7、8に用いる有機繊維コードは、撚り数(T)が、好ましくは21より大きく50以下である。このように撚り数(T)を適度に大きくすることで、ポリエステルコードの耐疲労性を良好なものとし、これにより、耐疲労性を大きくすることができる。撚り数(T)が21以下であると、タイヤ高速耐久性を向上することが困難となり、50を超えると、操縦安定性を維持するのが困難になる。
タイヤサイズが215/60R16 95Hであって、図1に示すようにベルト補強層7,8を設けたタイヤ構造を有する空気入りラジアルタイヤを試作した。カーカス5は、ポリエステルコード1670dtex/2、打ち込み数24本/25mmの2プライとし、ベルト6はスチールコード2+2×0.25(エンド数23本/25mm)の2プライ(コード角度21度)とし、ベルト補強層以外は共通の構造、部材とした。
ベルト補強層の補強コードとしての有機繊維コードには、東洋紡績(株)製の「エステル」の所定品種のものをポリエステル(PET)コードとしてそのまま用いるか、または、旭化成(株)製の「レオナ66」の所定品種のものをナイロンコードとしてそのまま用いた。各実施例及び比較例で用いた有機繊維コードの構成及び条件は、下記表1〜2に示すとおりである。
なお、全ての実施例及び比較例において、主溝11の底11aからベルト補強層7の上面までの距離(A')は、一定の値(2mm)とした。また、ベルト補強層7,8の厚みについて、表1の各実施例及び各比較例では有機繊維コードの径の1.7倍とし、表2の各比較例では有機繊維コードの径の2.2倍とした。なお、「公称繊度」は、撚りを掛ける前のフィラメントの繊度値の総和であるため、撚りを掛けた後のコードについての繊度(所定長さあたりの重量)、すなわち、「正量繊度」を測定した場合、少しずれている。
比較対照に用いた従来例(表1の比較例3)の空気入りラジアルタイヤには、ナイロンコード(Ny66)として、旭化成(株)製の「レオナ66」940dtex/2(撚り数29×29回/10cm)を使用した。すなわち、公称繊度が940dtxであるフィラメントの束に下撚りを加えてストランドとし、2本のストランドを合わせて下撚りとは逆の向きに上撚りを加えることで得られた双撚り構造のナイロンコードを用いた。
ベルト補強層の補強コードとしてのポリエステル(PET)コードには、下記の第1及び第2処理液により、順に、ディップ処理を行った。すなわち、耐熱接着性付与のための処理を行った。一方、ナイロンコードには、レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)混合液による1回のディップ処理のみを行った。
・第1処理液:キャリアー(p−クロルフェノール・ホルマリンレゾルシン縮合物のアンモニア水溶液;ナガセケムテックス(株)デナボンド)を固形分換算で1.5重量%含み、また、ブロックドイソシアネート水溶液(ポリウレタンプレポリマーブロック化体、固形分30%;第一工業製薬(株)エラストロンBN−27)を固形分換算で22重量%含む。
・第2処理液:ブロックドイソシアネート水溶液(ポリウレタンプレポリマーブロック化体、固形分30%;第一工業製薬(株)エラストロンBN−27)を固形分換算で9重量%含み、エポキシ化合物の分散液(ソルビトール・ポリグリシジル・エーテル;ナガセケムテックス(株)デナコールEX−614)を固形分換算で1重量%あまり含み、界面活性剤(ジアルキルスルホコハク酸エステルソーダ塩、固形分75%;第一工業製薬(株)ネオコールP)を固形分換算で0.1〜0.2重量%含み、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)の混合液を固形分換算で約15重量%含む。
ベルト補強層に用いる有機繊維コード、及び、得られたタイヤについての評価は下記のとおりに行った。
・引張強度(コード強力)及び5%伸張モジュラス:JIS L1017に準拠した引張試験を22℃雰囲気中で行うことにより測定した。
・軽量化重量:最も一般的な従来例である比較例3のタイヤを基準にし、重量の減少分を求めた。
Figure 2011218980
・タイヤ高速耐久性:ECE−R30で定められた条件に準拠してドラム試験を行い、規定の速度、時間条件では故障の発生が認められず各試験タイヤは合格したので、さらに10分ごとに速度を10Km/hずつ増速して故障するまでドラム走行を続け、故障発生時までの走行距離を測定した。
・タイヤ一般耐久性、及びコード耐久性:ドラム試験機により、FMVSS139に規定される条件で試験を行った。10000km走行した時点で、タイヤの故障の有無を判定した。いずれも故障が見られなかったので、表1〜2中の各実施例及び比較例にて「○」と表記した。続いて15000kmまで走行した時点で、タイヤを解体し、タイヤ10本あたりの、ベルト補強層のコードの破断箇所の数を数えた。
・車内音(ロードノイズ):試作タイヤを、標準リムを用いて内圧220kPaとして実車(排気量3,000cc、セダン)に装着した。運転席と後席右側の2名乗車により、メーター読みにて60km/hの定常走行で、乗り心地性評価用テストコースを走行した。この際、車室内運転席窓側耳の位置にマイクロフォンを設置し、250Hzの音圧レベル(dB)を測定した。
Figure 2011218980
表1の結果に示すとおり、実施例1〜2では、典型的な従来例(比較例3)に比べ、顕著な軽量化及びタイヤ高速耐久性の向上を実現できた。また、車内音も1段階だけ改善された。また、ナイロンコード(有機繊維コードII)を用いた実施例1と、ポリエステルコード(有機繊維コードVI)を用いた実施例2とでは、大差がなかった。なお、典型的な従来例である比較例3は、双撚りのコードを用いた点、及び、このためにベルト補強層の厚み(B)の割合が31%と大きくなってしまった点を除けば、実施例1の構成と同一である。
比較例1〜2の空気入りラジアルタイヤは、下記に言及する構成を除き、実施例1のタイヤと同一である。比較例1のタイヤは、有機繊維コードとして、撚り係数(K)が421と低いもの(有機繊維コードI)を用いた結果、一般耐久試験の後、有機繊維コードに破断が見られた。比較例2のタイヤは、典型的な従来例(比較例3)と同様、双撚りのコードであって撚り係数(K)が487と低いもの(有機繊維コードIII)を用いた結果、コード径及びベルト補強層の厚み(B)が大きくなってしまい、軽量化の効果が得られなかった。また、タイヤ高速耐久性にほとんど改善が見られず、車内音はむしろ増加した。比較例4のタイヤは、撚り係数が563と小さいもの(有機繊維コードV)を用いた点のみ、実施例2と異なるが、撚り係数が過小であるために、コード耐久性が低かった。
表2に構成及び評価結果を示す比較例5〜10のタイヤは、それぞれ、上記の有機繊維コードI〜VIを用いたが、ベルト補強層の厚みをコード径の1.7倍とする代わりに2.2倍としている。他の点では、同一の有機繊維コードを用いた実施例または比較例と同一である。比較例5のタイヤは、対応する比較例1よりも、タイヤ高速耐久性及びコード耐久性がさらに低くなり、車内音も増加した。実施例1に対応する比較例6のタイヤは、典型的な従来例(比較例3)に比べて、高速耐久性の向上がほとんど見られず、車内音レベルも同一であった。比較例7のタイヤは、対応する比較例2に比べて、タイヤ高速耐久性、コード耐久性及び車内音レベルのいずれにおいても、さらに劣っていた。比較例8のタイヤは、対応する比較例3(典型的な従来例)に比べて、タイヤ高速耐久性及び車内音レベルが劣っていた。また、比較例9のタイヤも、対応する比較例4に比べて、タイヤ高速耐久性及び車内音レベルが劣っていた。さらに、実施例2に対応する比較例10のタイヤは、典型的な従来例(比較例3)に比べて、高速耐久性の向上がほとんど見られず、車内音レベルも同一であった。
上記実施例においては、ベルト6の全幅(A+B)を覆うベルト補強層7を設けるものとして説明したが、ベルト6の両端部(B)すなわちショルダ部に対応する領域のみに設けるものであっても良い。すなわち、折り返し部に相当するベルト補強層8のみが設けられるのであっても、上記のようなベルト補強層の厚みの設定、及び有機繊維コードの構成を用いることにより、車内音の低減を図りつつ、タイヤ高速耐久性の向上、及びタイヤ軽量化を実現することができる。
以上の通り、本発明の空気入りラジアルタイヤは、高速耐久性の向上と軽量化、及び車内騒音の低減を実現するもので、特には各種乗用車用タイヤに好適である。
3……トレッド部、 5……カーカス、 6……ベルト、 7、8……ベルト補強層、
10……インナーライナー、 11……主溝(周方向溝)、 11a……主溝の底、
A……主溝の底からベルトまでの間隔、 B……ベルト補強層の厚み、
T……空気入りラジアルタイヤ

Claims (2)

  1. トレッド部に設けたベルト層と、該ベルト層の半径方向外側に、少なくとも該ベルト層の両端部を覆うように配置されたベルト補強層とを備え、ベルト補強層に片撚り構造の有機繊維コードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいてベルト補強層の厚み(B)を、ベルト層の上面からトレッド部の主溝の底までの距離(A)の25%未満とし、前記有機繊維コードとして下記(I)式で表される撚り係数(K)が800以上であるものを用いる。
    K=T・(D/ρ)1/2 ……(I);
    ここで、Tは10cm当りの撚り数(回/10cm)、Dはコード全体としての公称繊度(デシテックス(dtex))、ρは繊維の比重である。
  2. 前記繊維コードの公称繊度(D)が2000dtex未満であることを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
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