JP2008255379A - 熱交換器用銅合金管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Co:0.05乃至0.4質量%、Sn:0.05乃至1.0質量%、Zn:0.005乃至1.0質量%、Ni:0.005乃至0.2質量%、P:0.05乃至0.4質量%、S:0.005質量%以下、O:0.005質量%以下、及びH:0.0002質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる。焼鈍後の引張り強さが260N/mm2以上であり、平均結晶粒径が30μm以下であると共に、前記銅合金管の引張強さをσa1、破壊圧力をPFa1、前記銅合金管と同一外径及び肉厚のりん脱酸銅管の引張強さをσd1、破壊圧力をPFd1としたとき、PFa1/σa1>PFd1/σd1である。
【選択図】なし
Description
Coは本発明の合金中において、Pとの化合物により析出物を形成して、引張強さを向上させたり、強度を向上させることができる成分である。Coの含有量が0.4質量%を超えると強度が高くなりすぎて伸びが低下してしまい、加工性に悪影響を及ぼすことになる。また本発明の合金へのCo含有量が0.05質量%未満だと、所定の強度を得ることができない。したがって、Coの含有量を0.05乃至0.4質量%とすることが必要である。
Snは固溶硬化によって、引張強さを向上させたり、りん銅ろうなどのろう付けによる熱影響に対して結晶粒度の粗大化が抑制されて耐熱性が向上する。Snの含有量が1.0質量%を超えると、鋳塊における凝固偏析が激しくなり、通常の熱間押出又は/及び加工熱処理により偏析が完全に解消しないことがあり、銅合金管の組織、機械的性質、曲げ加工性、ろう付け後の組織及び機械的性質の不均一をもたらす。また、押出圧力が高くなり、Sn≦1質量%の合金と同一押出圧力とするには、押出温度を上げることが必要になり、それにより押出材の表面酸化が増加し、生産性の低下、銅合金管の表面欠陥が増加する。また、本発明の銅合金管のSn含有量が0.05質量%未満であると、焼鈍後及びろう付け加熱後に十分な引張強さをもち、細かい結晶粒径を有する銅合金管を得ることができなくなり、また、りん銅ろうなどによるろう付け加熱時の強度低下抑制効果及び結晶粒粗大化防止効果が、不十分なものとなってしまう。従って、Snの含有量を0.05乃至1.0質量%とすることが必要である。
Znを添加することにより、銅合金管の熱伝導率を大きく低下させることなく、強度、耐熱性及び疲れ強さを向上させることができる。また、Znを添加することにより、りん銅ろうなどのろう材の濡れ性を向上させることが可能である。更に、Znの添加により、冷間圧延、抽伸及び転造等に用いる工具の磨耗を低減させることができ、抽伸プラグ、溝付プラグ等の寿命を延命させる効果があり、生産コストの低減に寄与する。また、熱交換器の組み立て工程においても、ヘアピン曲げ時のマンドレルの磨耗を低減し、更にアルミフィンへ伝熱管を密着させるときの拡管加工時の拡管ビュレットの磨耗も低減することができる。Znの含有量が1.0質量%を超えると、応力腐食割れ感受性が高くなる。また、Znの含有量が0.005質量%未満であると、上述の効果が十分でなくなる。従って、Znの含有量を0.005乃至1.0質量%とすることが必要である。
銅合金管にNiを添加することにより、少ないCo量で前述のCoの機能を発揮させることができる。このとき、Niの含有量が0.005質量%未満であると、上述の効果が十分でなくなる。また、Niの含有量が0.2質量%を超えると、熱間及び冷間加工性が阻害され、生産性の低減及び歩留の低下がおこる。従って、Niの含有量を0.005乃至0.2質量%にすることが必要である。
Pは本発明の合金中において、前述の如く、Coとの化合物により析出物を形成して、引張強さを向上させたり、強度を向上させる成分である。本発明の銅合金へのP含有量が0.4質量%を超えると、導電率が低下したり、熱間加工性及び冷間加工性が阻害されることになる。一方、P含有量が0.01質量%未満であると、所定の強度を得ることができず、また脱酸が不十分となり、酸化物が鋳塊に巻き込まれ、鋳塊の健全性が低下すると共に、製造された管の曲げ加工性が低下しやすくなる。従って、Pの含有量を0.01乃至0.4質量%にすることが必要である。
Sは本発明の合金中において、Cuと化合物を形成して母相中に存在する。Sの含有量が増えると、鋳塊時の鋳塊割れ、熱間押出割れが増加する。また、熱間押出割れが発生しなくても、押出材を冷間圧延、抽伸すると、材料内部のCu−S化合物は管の軸方向に伸張し、Cu−S化合物界面で割れが発生しやすくなる。これにより、製品加工中及び製品において、表面疵及び割れ等が発生し、製品の歩留りを低下させる。また、Cu−S化合物界面で割れが発生しない場合でも、本発明の合金管に曲げ加工を行う際、割れ発生の起点となり、曲げ部で割れが発生する頻度が高くなる。このような問題を改善するために、本発明の合金へのS含有量は0.005%以下、望ましくは0.003%以下、更に望ましくは0.0015%以下にする必要がある。Sは、銅地金及びスクラップ等の原料から、スクラップに付着する油から、また、溶解鋳造雰囲気(溶湯を被覆する木炭/フラックス、溶湯と接触する雰囲気中のSOxガス、炉材等)から比較的簡単に溶湯中に取り込まれるため、S含有量を0.005質量%以下とするには、低品位のCu地金及びスクラップの使用量を低減し、溶解雰囲気のSOxガスを低減し、適正な炉材を選定し、Mg及びCa等のSと親和性が強い元素を溶湯に微量添加する等の対策が有効である。なお、S以外の不純物元素As、Bi、Sb、Pb、Se、Teについても同様に、これらの元素は鋳塊、熱間押出材及び冷間加工材の健全性を低下させ、また管の曲げ加工性を損なうことから、これらの元素の合計含有量は0.0015%以下、望ましくは0.0010%以下、更に望ましくは0.0005%以下とすることが好ましい。
本発明の銅合金管において、Oの含有量が0.005質量%を超えると、Cu及びSnの酸化物が鋳塊に巻き込まれ、鋳塊の健全性が低下すると共に、製造された管の曲げ加工性が低下しやすくなる。このため、Oの含有量を0.005質量%以下とする必要がある。曲げ加工性をより改善するには、Oの含有量を0.003質量%以下とすることが望ましく、0.0015%以下とすることが更に望ましい。
溶解鋳造時に溶湯に取り込まれる水素が多くなると、ピンホール、粒界に濃化等の状態で鋳塊中に存在し、熱間押出時の割れを発生させる。また、押出後も焼鈍時粒界にHの膨れが発生しやすくなり、製品歩留が低下する。このため、本発明の銅合金管においてはHの含有量を0.0002質量%以下とすることが必要である。製品歩留りをより向上させるにはHの含有量を0.0001質量%以下とすることが望ましい。
引張強さが260N/mm2未満であると、銅合金管をエアコン等の熱交換器に組み込んだときの強度が不十分であり、また手ろう付け後又は炉中ろう付け後の強度を十分に維持できない。なお、ここでいう引張り強さは焼鈍して軟質材とした本発明の銅合金管の管軸方向の引張り強さである。
管内に静水圧を作用させると、管軸直交断面においては肉厚と直交する方向に力が加わり、管内の表面疵、硫化物等の介在物、管内表面又は内部の微細な割れ等の欠陥を基点にして割れが発生し、亀裂が伝播して破壊に至る。本発明者等は、これを防止するためには、管軸直交断面における肉厚と直交する方向の平均結晶粒径を30μm以下にすると有効であることを見出したものである。前記方向の平均結晶粒径は20μm以下であることがより望ましい。また、管軸直交断面における肉厚方向に垂直な方向の平均結晶粒径が30μmを超えると、エアコン等の熱交換器に組み込む際、曲げ加工したときに曲げ部に割れが発生しやすくなる。
本発明の銅合金管は、その耐圧破壊圧力PFa1と引張り強さσa1との比PFa1/σa1が、りん脱酸銅管の耐圧破壊圧力PFd1と引張り強さσd1とのPFd1/σd1より大きいので、例えば同一引張り強さ、同一肉厚の管を用いた場合も、本発明の銅合金管はより大きい耐圧強度を保証することができる
Fe、Mn、Mg、Cr、Ti、Zr及びAgはいずれも本発明の銅合金の強度、耐圧破壊強度、及び耐熱性を向上させ、結晶粒を微細化して曲げ加工性を改善する。前記元素群から選択された1種以上の元素の合計含有量が0.07質量%を超えると、押出圧力が上昇するため、これらの元素を添加しないものと同一の押出力で押出しようとすると、熱間押出温度を上げることが必要になる。それにより、押出材の表面酸化が多くなるため、本発明の銅合金管において表面欠陥が多発し、製品歩留りが低下する。このため、Fe、Mn、Mg、Cr、Ti、Zr及びAgからなる群から選択された1種以上の元素を合計で0.07質量%未満とすることが望ましい。前記含有量は、0.005%未満とすることがより望ましく、0.03質量%未満とすることが更に望ましい。
焼鈍後の銅合金管に対し、抽伸加工により、加工を加えることが好ましい。本発明の銅合金管は焼鈍された状態でも高い強度と優れた耐圧強度を有するが、より高い強度が求められる場合には、焼鈍した銅合金管に低加工率の抽伸加工を行うことにより、その目的を達成することが可能である。抽伸加工は管内にプラグを設置する方法、プラグを設置しない空引き抽伸の両方が可能であるが、加工率が大きくなると、伸びが低下してしまうため、曲げ加工等を行う場合は一定以上の伸びを確保できる加工率を設定することが望ましい。
熱交換器に加工されたとき、ろう付けによる熱影響による800℃、15秒間加熱した後の引張強さが240N/mm2未満であると、運転圧力が高いHFC系フロン冷媒や炭酸ガス冷媒のとき、疲労破壊が起こりやすくなる。
熱交換器に加工されたとき、ろう付けによる熱影響による800℃、15秒間加熱した後に結晶粒径が粗大化するが、その値が100μmを超えると、ろう付け部において耐圧強度の低下が大きく、運転圧力が高いHFC系フロン冷媒や炭酸ガス冷媒用の熱交換器に用いたとき信頼性が低下する。従って、平均結晶粒径が100μm以下、更には60μm以下が望ましい。
本発明の銅合金管は、800℃に15秒間加熱した後、その耐圧破壊圧力PFa2と引張り強さσa2との比PFa2/σa2が、りん脱酸銅管の耐圧破壊圧力PFd2と引張り強さσd2とのPFd2/σd2より大きいので、例えば同一引張り強さ、同一肉厚の管を用いた場合も、本発明の銅合金管はより大きい耐圧強度を保証することができる。
熱交換器に加工されたとき、炉中ろう付けによる熱影響による800℃、10分間加熱した後の引張強さが230N/mm2未満であると、運転圧力が高いHFC系フロン冷媒や炭酸ガス冷媒のとき、疲労破壊が起こりやすくなる。
熱交換器に加工されたとき、炉中ろう付けによる熱影響による800℃、10分間加熱した後に結晶粒径が粗大化するが、その値が200μmを超えると、炉中ろう付け部において耐圧強度の低下が大きく、運転圧力が高いHFC系フロン冷媒及び炭酸ガス冷媒用の熱交換器に使用したときに、信頼性が低下する。従って、平均結晶粒径は200μm以下、更には100μm以下が望ましい。
本発明の銅合金管は、800℃、10分間加熱した後、その耐圧破壊圧力PFa3と引張り強さσa3との比PFa3/σa3が、りん脱酸銅管の耐圧破壊圧力PFd3と引張り強さσd3とのPFd3/σd3より大きいので、例えば同一引張り強さ、同一肉厚の管を用いた場合も、本発明の銅合金管はより大きい耐圧強度を保証することができる。
本発明の銅合金管は、りん脱酸銅管に比べて引張り強さと伸びを大きく、且つ結晶粒径を小さくすることができるので、転造加工による内面溝付管の製造に好適である。特に、引張り強さが大きいことから、転造加工時に引抜き方向に伸びにくいので溝付プラグの溝部への合金管の肉の充填が円滑であり、良好なフィン形状を有する内面溝付管を高速で加工することが可能になる。
第1実施例は、平滑管についてのものである。電気銅を溶解した溶湯に、Co、Sn、Zn及びNiを添加した後、Cu−P母合金を添加することにより、所定組成の溶湯を作製し、直径300mmのビレットに鋳造した。次に、前記ビレットを800乃至930℃に加熱後、ビレット中心をピアシング加工し、熱間押出により外径100mm、肉厚10mmの押出素管を作製した。この断面減少率は90%以上であった。押出後の素管は急冷され、押出直後から水冷までの時間及び水冷後の押出素管の表面温度等より、300℃までの平均冷却速度は20℃/秒以上と見積られた。押出素管を圧延及び抽伸して、外径9.52mm、肉厚0.80mmの素管を製作した。なお、圧延における断面減少率は90%以下、抽伸における1パスあたりの加工率を40%以下とした。還元性ガス雰囲気にしたローラーハース炉で、前記抽伸管を640乃至690℃(実体温度)に加熱し(平均昇温速度10乃至25℃/分)、その温度で30乃至90分保持後、室温まで冷却して供試材とした。
第2実施例は、内面溝付管についてのものである。第1実施例(平滑管)の押出後の圧延管を内面溝付加工用の素管とした。
上述の実施例及び比較例について、以下に示す試験を実施した。なお、従来品とはJISH3300C1220T、りん脱酸銅管を示す。破壊圧力は、300mmの長さに切断した供試材の片端を封じ、もう片端から水圧を負荷して供試材が破裂したときの圧力を計測した。
Claims (6)
- Co:0.05乃至0.4質量%、Sn:0.05乃至1.0質量%、Zn:0.005乃至1.0質量%、Ni:0.005乃至0.2質量%、P:0.05乃至0.4質量%、S:0.005質量%以下、O:0.005質量%以下、及びH:0.0002質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金管であって、焼鈍後の引張り強さが260N/mm2以上であり、平均結晶粒径が30μm以下であると共に、前記銅合金管の引張強さをσa1、破壊圧力をPFa1、前記銅合金管と同一外径及び肉厚のりん脱酸銅管の引張強さをσd1、破壊圧力をPFd1としたとき、PFa1/σa1>PFd1/σd1であることを特徴とする熱交換器用銅合金管。
- 更に、Fe、Mn、Mg、Cr、Ti及びAgからなる群から選択された1種以上の元素を合計0.07質量%未満含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用銅合金管。
- 請求項1又は2に記載の焼鈍後の熱交換器用銅合金管に、更に、抽伸加工を付加したものであることを特徴とする熱交換器用銅合金管。
- 800℃で15秒間加熱した後の引張強さが240N/mm2以上であり、平均結晶粒径が100μm以下であり、引張強さをσa2、破壊圧力をPFa2、前記銅合金管と同一外径及び肉厚のりん脱酸銅管の引張強さをσd2、破壊圧力をPFd2としたとき、PFa2/σa2>PFd2/σd2であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱交換器用銅合金管。
- 800℃で10分間加熱した後の引張強さが230N/mm2以上であり、平均結晶粒径が200μm以下であり、引張強さをσa3、破壊圧力をPFa3、前記銅合金管と同一外径及び肉厚のりん脱酸銅管の引張強さをσd3、破壊圧力をPFd3としたとき、PFa3/σa3>PFd3/σd3であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱交換器用銅合金管。
- 前記銅合金管が内面溝付管であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱交換器用銅合金管。
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