JP6360363B2 - 銅合金管 - Google Patents

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Description

本発明は、高強度であり、且つ、ろう付け加熱の時に強度低下が少ない銅合金管に関する。
従来より、ルームエアコン、パッケージエアコン等の空調機用熱交換器、冷凍機等の伝熱管又は冷媒配管には、銅管が使用されている。この銅管は、規定の成分に溶解及び調整され、鋳造されたビレットを、熱間にてマンドレル押出し、次いで、圧延及び抽伸等の冷間加工を行い、肉厚を薄くして、規定の寸法に仕上げることにより、製造される。更に、熱交換性能を向上させるために、上記のようにして得た銅管の内面に、らせん状の溝を形成させることが行われる。
このような銅管の材料として、強度、加工性、伝熱性等の諸物性、及び原材料コスト、加工コスト等の製造コストにバランスの取れた、リン脱酸銅(JIS C1220T)が使用されてきた。
近年、銅管には、製造コストのコストダウンの要求から、薄肉化が求められている。ところが、リン脱酸銅は、ろう付け加熱の際に、結晶粒が粗大化し、強度低下を起こすため、薄肉化は難しかった。そのため、これに替わり、薄肉化が可能な銅合金管の開発が求められている。
そこで、特許文献1には、重量%でCo:0.02乃至0.2%、P:0.01乃至0.05%を含有し、残りがCu及び不可避不純物からなり、前記不可避不純物として含まれる酸素含有量を50ppm以下である熱交換器用継目無銅管が、特許文献2には、Sn:0.1乃至1.0質量%、P:0.005乃至0.1質量%、O:0.005質量%以下及びH:0.0002質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下である銅合金が開示されている。
特開2000−1728号公報(請求項1) 特開2003−268467号公報(請求項1)
しかしながら、特許文献1及び2の銅合金には、700℃以上の温度でろう付け加熱を行うと、強度が大きく低下するという問題があった。
従って、本発明の目的は、強度が高く且つ700℃以上の温度でのろう付け加熱しても、強度低下が少ない銅合金管を提供することにある。
本発明者らは、以下の発明によって解決される。
すなわち、本発明(1)は、0.80〜1.20質量%のFeと、0.20〜0.40質量%のPと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金からなり、
Feの含有量をA質量%、Pの含有量をB質量%としたとき、A/Bが4.5以下であり、
引張強度が300MPa以上であり、且つ、伸び(δ)が30%以上であり、
700〜950℃の温度で加熱後の引張強度が300MPa以上であること、
を特徴とする銅合金管(A)を提供するものである。
また、本発明(2)は、本発明(1)の銅合金管(A)を、700〜950℃の温度で加熱する加熱処理及び冷却を行い得られる銅合金管(B)を提供するものである。
本発明によれば、強度が高く且つ700℃以上の温度でのろう付け加熱しても、強度低下が少ない銅合金管を提供することができる。
本発明の銅合金管(A)は、0.80〜1.20質量%のFeと、0.20〜0.40質量%のPと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金からなり、
Feの含有量をA質量%、Pの含有量をB質量%としたとき、A/Bが4.5以下であること、
を特徴とする銅合金管である。
また、本発明の銅合金管(B)は、銅合金管(A)を、700〜950℃の温度で加熱する加熱処理し、次いで、冷却を行うことにより得られる銅合金管である。
つまり、本発明において、銅合金管(A)は、700〜950℃の温度で加熱する加熱処理及び冷却を行う前の銅合金管であり、銅合金管(B)は、700〜950℃の温度で加熱する加熱処理及び冷却を行った後の銅合金管である。
そして、銅合金管をろう付け加熱によりろう付けして、熱交換器を製造する熱交換器の製造方法では、銅合金管を所定の形状に加工して、他の部材と共に組み付けた後、通常、700〜950℃の温度に加熱して、ろう付けが行われる。ろう付け加熱後、ろう付け加熱された熱交換器は、冷却される。よって、銅合金管をろう付け加熱によりろう付けして、熱交換器を製造する熱交換器の製造方法において、本発明の銅合金管(A)は、ろう付け加熱に供される銅合金管(ろう付け加熱用の銅合金管)、すなわち、ろう付け加熱前の銅合金管であり、また、本発明の銅合金管(B)は、ろう付け加熱及び冷却により得られる銅合金管、すなわち、ろう付け加熱及び冷却後の銅合金管である。なお、銅合金管をろう付け加熱によりろう付けして、熱交換器を製造する熱交換器の製造方法においては、700〜950℃の温度に加熱して行うろう付け加熱が、700〜950℃の温度で加熱する加熱処理である。
本発明の銅合金管(A)は、FeとPとを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金製の管材である。
本発明の銅合金管(A)は、Feを含有し、銅合金管(A)中のFeの含有量は、0.80〜1.20質量%であり、且つ、Pの含有量は、0.20〜0.40質量%である。FeはPとの化合物の析出物を多く形成し、引張強さを向上させる成分である。銅合金管(A)中のFeの含有量及びPの含有量が上記範囲にあることにより、700℃以上の温度での溶体化処理とその後の析出処理により、FeとPとの化合物を十分に析出させることができ、高い強度を維持することができる。銅合金管(A)中のFeの含有量が、上記範囲を超えると、伸びが低くなり過ぎるため、ヘアピン曲げ又は拡管性に悪影響を及ぼし、Pの含有量が、上記範囲を超えると、伸びが低くなるため、加工性が低くなり、熱間加工又は冷間加工の際に、割れが生じるおそれがある。また、Feの含有量及びPの含有量が上記範囲未満だと、FeとPとの化合物の析出量が少なくなり、強度が低くなってしまう。
本発明の銅合金管(A)中のFeの含有量をA質量%、Pの含有量をB質量%としたとき、A/Bは4.5以下である。銅合金管(A)のA/Bの値が上記範囲にあることにより、700〜950℃の温度で加熱及び冷却されても強度が低下しない。一方、A/Bの値が上記範囲を超えると、Pに対するFeの量が多くなり過ぎるため、強度を高めることに寄与するFeとPとの化合物の形成が不十分となり、強度を高めることに寄与するFeとPとの化合物が十分に析出しなくなるので、700〜950℃の温度で加熱及び冷却されると強度が低下してしまう。
本発明の銅合金管(A)の引張強度は、300MPa以上である。銅合金管(A)の引張強度が上記範囲未満だと、薄肉化したときの強度が不十分となる。
本発明の銅合金管(A)の伸び(δ)は、30%以上、好ましくは35%以上である。本発明の銅合金管(A)の伸び(δ)が上記範囲未満だと、ヘアピン曲げ性が悪くなる。
本発明の銅合金管(A)は、少なくとも、鋳造工程、熱間押出加工前の加熱処理、熱間押出加工、冷間加工、溶体化処理、焼鈍及び析出処理を行い得られる銅合金管である。また、本発明の銅合金管(A)は、更に、管内面にらせん状の溝を形成させる転造加工を行い得られる銅合金管であってもよい。また、本発明の銅合金管(A)は、これらの工程又は処理の間に、必要に応じ、均質化処理、中間焼鈍等と呼ばれる加熱及び冷却を行う処理を行い得られたものであってもよい。溶体化処理は、熱間押出加工前の加熱処理や、中間焼鈍処理で兼ねることができ、また、析出処理は均質化処理後の冷却処理で兼ねることができる。
鋳造工程では、常法に従って、溶解及び鋳造して、所定の元素が所定の含有量で配合されているビレットを得る。例えば、銅の地金及び本発明の銅合金管の含有元素の地金又は含有元素と銅の合金を、本発明の銅合金管中の含有量が、所定の含有量となるように配合して、成分調整を行い、次いで、高周波溶解炉等を用いて、ビレットを鋳造する。次いで、鋳造後、ビレットを冷却する。
熱間押出加工前の加熱処理では、鋳造により得られたビレットを、850〜950℃の温度で加熱する。この加熱処理は鋳造時の偏析を解消するための均質化処理を兼ねることができる。
熱間押出工程では、850〜950℃の温度に加熱されたビレットを、熱間押出する。熱間押出は、マンドレル押出によって行われる。すなわち、加熱前に、冷間で予め穿孔したビレット、あるいは、押出前に熱間で穿孔したビレットに、マンドレルを挿入した状態で、熱間押出を行う。そして、熱間押出を行った後、速やかに冷却して、熱間押出素管を得る。
冷間加工では、熱間加工により得られた熱間押出素管を、冷間圧延や冷間引き抜き等の冷間での加工を行い、管の外径及び肉厚を減じていき、継目無素管を得る。
銅合金管(A)が、内面溝が形成されていない内面平滑管(ベアー管)の場合は、冷間加工に次いで、冷間加工により得られた継目無素管を、600〜700℃で加熱し、次いで、冷却する焼鈍及び析出処理を行う。そして、焼鈍及び析出処理を行うことにより、銅合金管(A)を得る。
また、銅合金管(A)が、内面溝が形成されている内面溝付管の場合、冷間加工に次いで、冷間加工により得られた継目無素管を、700〜900℃で加熱する中間焼鈍を行い、冷却後、転造加工を行う。転造加工では、継目無素管内に、外面にらせん状の溝加工を施した転造プラグを配置して、高速回転する複数の転造ボールによって、管の外側から押圧して、管の内面に転造プラグの溝を転写して、管の内面に溝を形成させる。次いで、転造を施した継目無管を、600〜700℃で加熱し、冷却する焼鈍及び析出処理を行う。そして、焼鈍及び析出処理を行うことにより、銅合金管(A)を得る。
上記のようにして得られる銅合金管(A)は、継目無管であるが、熱交換器の伝熱管として、熱交換器の製造に用いられるときには、所定の長さ及び形状に加工された後、熱交換器の他の部材と共に組み付けられて、700〜950℃の温度でろう付け加熱及び冷却されて、ろう付けされる。
本発明の銅合金管(B)は、本発明の銅合金管(A)を、700〜950℃の温度で加熱する熱処理及び冷却を行い得られる銅合金管である。本発明の銅合金管(A)が700〜950℃の温度で加熱されると析出物が再固溶状態となるが、FeとPとの化合物は析出速度が速いために、加熱後の冷却過程において、銅合金中にFeとPとの化合物が多数析出する。そして、多数析出したFeとPとの化合物により、銅合金の強度が高められるので、本発明の銅合金管(B)は、本発明の銅合金管(A)の強度を維持するか、あるいは、本発明の銅合金管(A)より強度が高くなる。本発明の銅合金管(B)を得るために、本発明の銅合金管(A)を700〜950℃で加熱するときの加熱時間は、適宜選択されるが、通常10〜3600秒、好ましくは30〜180秒である。また、700〜950℃での加熱処理後の冷却は、放冷で十分であり、例えば、析出金属元素の析出を促すために、徐冷を行う必要はない。つまり、本発明の銅合金管((A)及び(B))では、FeとPとの化合物は析出速度が速いために、放冷時の冷却速度でも強度の維持又は向上に寄与するのに十分な量のFeとPとの化合物が析出する。なお、本発明の銅合金管(B)は、本発明の銅合金管(A)の全体が700〜950℃での加熱処理及び冷却されることにより得られたものであっても、本発明の銅合金管(A)のうちの一部が700〜950℃での加熱処理及び冷却されることにより得られたものであってもよい。
熱交換器の製造の際に、本発明の銅合金管(A)を、所定の長さ及び形状に加工した後、熱交換器の他の部材と共に組み付けて、700〜950℃の温度でろう付け加熱し、次いで、冷却して、ろう付けする場合は、700〜950℃の温度で行うろう付け加熱が、700〜950℃の温度で加熱する加熱処理に該当する。また、熱交換器の製造の際は、ろう付け加熱後は、通常、放冷により冷却されるが、本発明の銅合金管(A)を、700〜950℃の温度でろう付け加熱した後の冷却は、放冷でよい。そして、700〜950℃の温度でろう付け加熱及び冷却された後の銅合金管、つまり、熱交換器の伝熱管としてろう付けされた銅合金管が、本発明の銅合金管(B)である。
本発明の銅合金管(B)の化学組成は、本発明の銅合金管(A)と同じである。つまり、本発明の銅合金管(B)は、0.80〜1.20質量%のFeと、0.20〜0.40質量%のPと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金からなり、Feの含有量をA質量%、Pの含有量をB質量%としたとき、A/Bが4.5以下である。
本発明の銅合金管(B)の引張強度は、300MPa以上である。銅合金管(B)の引張強度が上記範囲未満だと、薄肉化したときの強度が不十分となる。
本発明の銅合金管(A)は、700〜950℃の温度で加熱され、次いで、冷却されても、強度が維持されるか、あるいは、強度が高くなる銅合金管である。また、本発明の銅合金管(B)は、本発明の銅合金管(A)が700〜950℃の温度で加熱され、次いで、冷却された後の銅合金管である。
熱交換器の製造の際に、銅合金管を、所定の長さ及び形状に加工した後、熱交換器の他の部材と共に組み付けて、700〜950℃の温度でろう付け加熱し、次いで、冷却して、ろう付けする場合、ろう付け部分が700〜950℃に加熱されても、銅合金管のうちのろう付け部分以外の部分の温度は、700〜950℃までは高くならない。そのため、ろう付け加熱及び冷却により製造される熱交換器の製造用に、本発明の銅合金管(A)が用いられる場合、ろう付け後の熱交換器中の銅合金管には、700〜950℃に加熱された部分と、700℃までは加熱されなかった部分が存在する。そうすると、本発明の銅合金管(A)の強度が300MPa以上でないと、ろう付け後の熱交換器中の銅合金管の全ての部分が、300MPa以上とならない。言い換えると、700℃までは加熱されなかった部分は、本発明の銅合金管(A)の強度が300MPa以上であれば、ろう付け後も300MPa以上の強度であり、且つ、700〜950℃に加熱された部分は、本発明の銅合金管(A)が規定の化学組成を有することにより、ろう付け後も、ろう付け加熱及び冷却前の強度が維持されるか、あるいは、それより強度が向上するので、ろう付け後の強度が300MPa以上となる。よって、本発明の銅合金管(A)の強度が300MPa以上であることにより、薄肉化が可能となる。
本発明の銅合金管(A)が加熱処理されるときの加熱温度は、好ましくは850〜900℃である。
本発明の銅合金管(A)を用いて製造される熱交換器は、伝熱管がろう付けされており、該伝熱管が本発明の銅合金管(B)である熱交換器である。この熱交換器は、伝熱管として本発明の銅合金管(B)を有し、伝熱管以外に、フィン材、分流器、継手、エンドプレート等の部材を有する。
本発明の銅合金管(A)を用いる熱交換器の製造方法は、本発明の銅合金管(A)及び本発明の銅合金管(A)以外の熱交換器用の部材を、熱交換器の構造に組み立て、次いで、700〜950℃の温度でろう付け加熱し、次いで、冷却して、本発明の銅合金管(B)を有する熱交換器を得る、熱交換器の製造方法である。
(実施例及び比較例)
Cuの地金、Cu−Fe母合金、Cu−P母合金を用いて、高周波溶解炉にて、表1に示す化学組成で、φ100mmの鋳塊を製造し、次いで、φ90mmに皮剥きしてビレットを得た。次いで、ビレットを900℃に加熱して、熱間押出を行い、φ20mm×厚み1.5mmの熱間押出素管とした。次いで、900℃の炉内で加熱し、直ちに水槽へ投入して冷却した。次いで、冷間でφ10mm×厚さ0.5mmに引抜加工を行った後、650℃で0.5時間の加熱を行い、銅合金管aを得た。次いで、得られた銅合金管aを850〜900℃で30秒間加熱処理し、銅合金管bを得た。
なお、銅合金管の性能評価の指標とするために、比較例8には、リン脱酸銅C1220を用いた。
Figure 0006360363
JIS Z 2241に準じて、得られた銅合金管aの0.2%耐力、引張強さ、伸び、及び得られた銅合金管bの引張強さを測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0006360363
本発明によれば、ろう付け後の強度が高く、薄肉化が可能となるので、コストを削減することができる。

Claims (3)

  1. 0.80〜1.20質量%のFeと、0.20〜0.40質量%のPと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金からなり、
    Feの含有量をA質量%、Pの含有量をB質量%としたとき、A/Bが4.5以下であり、
    引張強度が300MPa以上であり、且つ、伸び(δ)が30%以上であり、
    700〜950℃の温度で加熱後の引張強度が300MPa以上であること、
    を特徴とする銅合金管(A)。
  2. 請求項1記載の銅合金管(A)を、700〜950℃の温度で加熱する加熱処理及び冷却を行い得られる銅合金管(B)。
  3. 熱交換器の伝熱管であることを特徴とする請求項2記載の銅合金管(B)。
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