JP2008254989A - 酸化亜鉛及びその製造方法並びにそれを用いた化粧料 - Google Patents
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Abstract
【課題】形状、大きさの整った針状形状を有する酸化亜鉛粒子、また、その酸化亜鉛粒子が集積した特定形状を有する集積体を製造する。
【解決手段】亜鉛化合物水溶液と、カルボン酸及び/又はその塩と、アルカリ化合物とを混合して、酸化亜鉛を製造する方法において、カルボン酸及び/又はその塩の混合量が、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM)の合量のモル比で表して0.2以上である。また、アルカリ化合物の量が、アルカリ化合物の価数をnとしたとき、カルボン酸及び/又はその塩に存在するカルボキシル基(−COOH)を中和する量と、亜鉛化合物の亜鉛濃度X(モル/リットル)に対して、(4X+0.2)/n(モル/リットル)以上の範囲となる量との合量である。
【選択図】図1
【解決手段】亜鉛化合物水溶液と、カルボン酸及び/又はその塩と、アルカリ化合物とを混合して、酸化亜鉛を製造する方法において、カルボン酸及び/又はその塩の混合量が、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM)の合量のモル比で表して0.2以上である。また、アルカリ化合物の量が、アルカリ化合物の価数をnとしたとき、カルボン酸及び/又はその塩に存在するカルボキシル基(−COOH)を中和する量と、亜鉛化合物の亜鉛濃度X(モル/リットル)に対して、(4X+0.2)/n(モル/リットル)以上の範囲となる量との合量である。
【選択図】図1
Description
本発明は、酸化亜鉛及びその製造方法並びにそれを用いた化粧料に関する。
酸化亜鉛は、白色顔料、紫外線遮蔽材、充填剤、吸着剤、光触媒、触媒、セラミックス原料、導電材、圧電材料、ガスセンサー、電子写真感光材料、バリスタ、蛍光体、エミッタ、電子デバイス等種々の用途に用いられており、また、化粧料、外用剤、塗料、樹脂組成物等に配合して用いられている。
酸化亜鉛を製造するには、例えば、亜鉛塩を含む溶液をアルカリ中和剤で中和することにより、液中で直接酸化亜鉛を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献2には、前記の酸化亜鉛を直接製造するに際し、レイノルズ数30以上の撹拌を行いながら、1秒〜15分間で亜鉛の塩を含む水溶液と沈殿剤とを混合し、pH11以上の母液から沈殿を生成させて、平均粒子径0.1〜0.88μm、平均粒子厚さ0.01〜0.2μm、平均板状比3以上の薄片状酸化亜鉛粉末を製造する方法が提案されており、沈殿生成に際し、クエン酸、エタノールアミン等の水溶性有機物を共存させることも開示している。特許文献2の実施例14ではクエン酸1g(その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)のモル比で表して0.024に相当)、実施例13ではサリチル酸10g(その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)のモル比で表して0.12に相当)を添加して、薄片状酸化亜鉛粉末を製造している。
更に、特許文献3には、亜鉛塩水溶液にアルカリを加え水酸化亜鉛[Zn(OH)2]の沈殿を得た後、水酸化亜鉛の沈殿が全部溶解するまでアルカリを更に加えて、透明で均一なテトラヒドロキシ亜鉛酸イオン[Zn(OH)4 2−]を生成し、次いで、30℃以上100℃未満で加熱することによって0.01μmから10μmの大きさを有する酸化亜鉛粒子や膜を製造する方法を開示している。
酸化亜鉛を製造するには、例えば、亜鉛塩を含む溶液をアルカリ中和剤で中和することにより、液中で直接酸化亜鉛を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献2には、前記の酸化亜鉛を直接製造するに際し、レイノルズ数30以上の撹拌を行いながら、1秒〜15分間で亜鉛の塩を含む水溶液と沈殿剤とを混合し、pH11以上の母液から沈殿を生成させて、平均粒子径0.1〜0.88μm、平均粒子厚さ0.01〜0.2μm、平均板状比3以上の薄片状酸化亜鉛粉末を製造する方法が提案されており、沈殿生成に際し、クエン酸、エタノールアミン等の水溶性有機物を共存させることも開示している。特許文献2の実施例14ではクエン酸1g(その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)のモル比で表して0.024に相当)、実施例13ではサリチル酸10g(その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)のモル比で表して0.12に相当)を添加して、薄片状酸化亜鉛粉末を製造している。
更に、特許文献3には、亜鉛塩水溶液にアルカリを加え水酸化亜鉛[Zn(OH)2]の沈殿を得た後、水酸化亜鉛の沈殿が全部溶解するまでアルカリを更に加えて、透明で均一なテトラヒドロキシ亜鉛酸イオン[Zn(OH)4 2−]を生成し、次いで、30℃以上100℃未満で加熱することによって0.01μmから10μmの大きさを有する酸化亜鉛粒子や膜を製造する方法を開示している。
前記の従来技術は、亜鉛塩を含む溶液を水酸化ナトリウム、アンモニア等のアルカリ中和剤で中和して酸化亜鉛を直接析出させることにより、薄片状、針状の粒子形状を有する酸化亜鉛を製造することができるが、特許文献1、2の酸化亜鉛は、粒子径、形状のばらつきが大きいなどの問題がある。また、特許文献3の針状酸化亜鉛は、ガラス基板上に酸化亜鉛膜を析出させるもので、粉末を得るものではない。そのため、酸化亜鉛はそれぞれの用途に応じて、形状、大きさ、結晶性等の制御が求められている。
本発明者は、酸化亜鉛の粒子形状、粒子径やそれらの集積体の形状、大きさ等を制御する方法を探索した結果、亜鉛化合物水溶液と、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM)の合量のモル比で表して0.2以上のカルボン酸及び/又はその塩と、アルカリ化合物とを混合して、水溶液から酸化亜鉛を析出させると、形状、大きさの整った針状形状を有する酸化亜鉛粒子が得られること、また、その酸化亜鉛粒子が集積した特定形状を有する集積体が得られることなどを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)亜鉛化合物水溶液と、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM)の合量のモル比で表して0.2以上のカルボン酸及び/又はその塩と、アルカリ化合物とを混合して、酸化亜鉛を析出させることを特徴とする酸化亜鉛の製造方法、
(2)前記(1)の製造方法によって得られる、特定の長さの針状形状を有する酸化亜鉛粒子、その針状酸化亜鉛粒子が集積した酸化亜鉛集積体、特に、針状酸化亜鉛粒子が放射状に集積して、いがぐりに類似した形状を有する酸化亜鉛集積体、
(3)前記の酸化亜鉛を含有する化粧料、などである。
(1)亜鉛化合物水溶液と、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM)の合量のモル比で表して0.2以上のカルボン酸及び/又はその塩と、アルカリ化合物とを混合して、酸化亜鉛を析出させることを特徴とする酸化亜鉛の製造方法、
(2)前記(1)の製造方法によって得られる、特定の長さの針状形状を有する酸化亜鉛粒子、その針状酸化亜鉛粒子が集積した酸化亜鉛集積体、特に、針状酸化亜鉛粒子が放射状に集積して、いがぐりに類似した形状を有する酸化亜鉛集積体、
(3)前記の酸化亜鉛を含有する化粧料、などである。
本発明の酸化亜鉛の製造方法は、形状、大きさの整った針状形状を有する酸化亜鉛粒子、その酸化亜鉛粒子が集積した種々の形状を有する酸化亜鉛集積体を水溶液から析出させることができることから、生産性良く製造することができる。
また、前記の製造方法によって得られた酸化亜鉛粒子やその集積体は、形状や大きさが整い、分散性が良く、化粧料、外用剤、塗料、樹脂組成物等に充填剤、白色顔料等として配合する際に、あるいはセラミックス原料、導電材等に使用する際に、酸化亜鉛の特性を充分活用することができる。また、特定の大きさを有することから化粧料に配合すると、分散性が良く肌へのすべり感が良くなる。
また、前記の製造方法によって得られた酸化亜鉛粒子やその集積体は、形状や大きさが整い、分散性が良く、化粧料、外用剤、塗料、樹脂組成物等に充填剤、白色顔料等として配合する際に、あるいはセラミックス原料、導電材等に使用する際に、酸化亜鉛の特性を充分活用することができる。また、特定の大きさを有することから化粧料に配合すると、分散性が良く肌へのすべり感が良くなる。
本発明の酸化亜鉛は、六方晶、立方晶、立方晶面心構造いずれかのX線回折パターンを示すZnOを少なくとも50重量%含むものであり、水酸化亜鉛や製造の際に使用する硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物が含まれていても良い。また、製造の際に使用する亜鉛化合物を構成していた硫酸根、硝酸根、塩素、酢酸等が含まれていても良く、また、カルボン酸、その塩、アルカリ化合物等の材料が含まれていても良い。更に、酸化亜鉛の粒子表面にはシリカ、アルミナ等の無機化合物やシロキサン等の有機化合物の表面処理剤を被覆していても良い。
本発明の酸化亜鉛の製造方法は、亜鉛化合物水溶液と、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM)の合量のモル比で表して0.2以上のカルボン酸及び/又はその塩と、アルカリ化合物とを混合し、酸化亜鉛を析出させることを特徴とする。亜鉛化合物は、水溶性のものであればどのようなものでも用いることができ、例えば硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等を用いることができる。種々の形状の酸化亜鉛粒子、その酸化亜鉛粒子が集積した種々の形状の集積体が得られ易いことから硫酸亜鉛が好ましい。また、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等、中性の水に溶解しないものでも、酸、アルカリ化合物に溶解する化合物であれば、上記の亜鉛化合物と同様に用いることができる。
前記のカルボン酸はカルボキシル基を有する化合物であり、制限なく用いることができるが、例えば、次のようなものを用いることができ、特にクエン酸及び/又はその塩を用いると所望の酸化亜鉛を製造することができるため好ましい。
(1)ポリカルボン酸、特にジカルボン酸、トリカルボン酸、例えば、シュウ酸、フマル酸。
(2)ヒドロキシポリカルボン酸、特にヒドロキシジ−又はヒドロキシトリ−カルボン酸、例えばリンゴ酸、クエン酸又はタルトロン酸。
(3)(ポリヒドロキシ)モノカルボン酸、例えばグルコヘプトン酸又はグルコン酸。
(4)ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えば酒石酸。
(5)ジカルボキシルアミノ酸及びその対応するアミド、例えばアスパラギン酸、アスパラギン又はグルタミン酸。
(6)ヒドロキシル化され又はヒドロキシル化されていないモノカルボキシルアミノ酸、例えばリジン、セリン又はトレオニン。
カルボン酸塩としては、どのような塩でも制限なく用いることができるが、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。カルボン酸及び/又はその塩の量は、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM、ここで、Mはアルカリ金属、アンモニウム等を示す。)の合量のモル比で表すが、これはカルボキシル基(−COOH)とその塩(−COOM)の合量が酸化亜鉛の粒子形状等に影響を及ぼすためである。例えばクエン酸は1分子中に3個のカルボシキル基を有するため、3個分の影響力がある。前記のモル比で表してカルボキシル基及び/又はその塩は0.2以上が必要であり、0.2〜10の範囲の量が好ましく、0.5〜3の範囲がより好ましい。カルボキシル基及び/又はその塩のモル比を0.2より少なくするとその添加効果が得られない。
(1)ポリカルボン酸、特にジカルボン酸、トリカルボン酸、例えば、シュウ酸、フマル酸。
(2)ヒドロキシポリカルボン酸、特にヒドロキシジ−又はヒドロキシトリ−カルボン酸、例えばリンゴ酸、クエン酸又はタルトロン酸。
(3)(ポリヒドロキシ)モノカルボン酸、例えばグルコヘプトン酸又はグルコン酸。
(4)ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えば酒石酸。
(5)ジカルボキシルアミノ酸及びその対応するアミド、例えばアスパラギン酸、アスパラギン又はグルタミン酸。
(6)ヒドロキシル化され又はヒドロキシル化されていないモノカルボキシルアミノ酸、例えばリジン、セリン又はトレオニン。
カルボン酸塩としては、どのような塩でも制限なく用いることができるが、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。カルボン酸及び/又はその塩の量は、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM、ここで、Mはアルカリ金属、アンモニウム等を示す。)の合量のモル比で表すが、これはカルボキシル基(−COOH)とその塩(−COOM)の合量が酸化亜鉛の粒子形状等に影響を及ぼすためである。例えばクエン酸は1分子中に3個のカルボシキル基を有するため、3個分の影響力がある。前記のモル比で表してカルボキシル基及び/又はその塩は0.2以上が必要であり、0.2〜10の範囲の量が好ましく、0.5〜3の範囲がより好ましい。カルボキシル基及び/又はその塩のモル比を0.2より少なくするとその添加効果が得られない。
前記のアルカリ化合物は、水溶性でありアルカリ性を呈するものであれば適宜使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、酢酸ナトリウム、アンモニアガス、アンモニア水、水酸化アンモニウム等のアンモニウム化合物などが好ましく用いられる。アルカリ化合物の好ましい量は、アルカリ化合物の価数をnとしたとき、カルボン酸及び/又はその塩に存在するカルボキシル基(−COOH)を中和する量と、亜鉛化合物の亜鉛濃度X(モル/リットル)に対して、(4X+0.2)/n(モル/リットル)以上の範囲となる量との合量であれば、所望の酸化亜鉛を製造することができるため好ましい。ここでは、カルボン酸及び/又はその塩にカルボキシル基(−COOH)が存在するとそれを中和するためのアルカリ化合物が必要となる。混合するカルボン酸塩にカルボキシル基(−COOH)が含まれておらず、カルボキシル基の塩(−COOM)だけからなる場合は、中和のためのアルカリ化合物は必要がない。一方、亜鉛化合物の中和量は(4X+0.2モル/リットル)以上のアルカリ化合物量が必要となり、亜鉛濃度Xの4倍量のアルカリ量を混合すると次の式により沈殿物が生成し、更に0.2モル/リットルを余分に追加することにより、所望の酸化亜鉛を製造できる。
Zn2+ + 4OH− → ZnO2 2− + 2H+ + 2OH−
Zn2+ + 4OH− → ZnO2 2− + 2H+ + 2OH−
前記の亜鉛化合物の水溶液とカルボン酸及び/又はその塩とアルカリ化合物とを混合する。具体的には、亜鉛化合物水溶液とカルボン酸及び/又はその塩との混合溶液に撹拌下アルカリ化合物又はその水溶液を添加し混合しても良く、また、アルカリ化合物又はその水溶液に撹拌下亜鉛化合物水溶液とカルボン酸及び/又はその塩とのそれぞれの溶液あるいは混合溶液を添加し混合しても良いが、亜鉛化合物の水溶液とカルボン酸及び/又はその塩とアルカリ化合物又はその水溶液とをいずれも40℃以下に保持して混合するのが好ましい。前記の温度が40℃よりも高いと、アルカリ化合物との混合により部分的に酸化亜鉛が析出し不均一な状態となり易いため好ましくなく、好ましい温度は10〜40℃、より好ましい温度は10〜30℃である。撹拌は通常の混合撹拌の手段を用いることができ、例えば撹拌羽根を付けた撹拌機等で行うことができる。その撹拌機の運転条件は適宜設定することができる。例えば、回転数は20〜2000rpm程度で行うことができ、また、下記のレイノルズ係数で表して10以上程度が好ましく、10〜50000程度がより好ましい。
レイノルズ係数=(翼径)2×撹拌速度×溶液密度/溶液粘度
添加時間は適宜設定できるが、例えば1秒〜1時間程度が好ましく、1秒〜30分程度がより好ましい。アルカリ化合物との混合によりpHを7以上に調整するのが好ましく、7よりも低いと所望の酸化亜鉛が得られにくい。好ましいpHは8〜14程度、より好ましくは10〜14程度である。アルカリ化合物を混合し所定のpHに調整して沈殿物を析出させた後、必要に応じて10分〜5時間程度そのpHを保持しても良い。その後、撹拌しながら、前記の水溶液を好ましくは40℃以上、より好ましくは60〜250℃程度、更に好ましくは80〜110℃程度に加温して、沈殿物を酸化亜鉛に変化させる。所定の温度に加温した後、必要に応じて10分〜10時間程度その温度を保持しても良い。
レイノルズ係数=(翼径)2×撹拌速度×溶液密度/溶液粘度
添加時間は適宜設定できるが、例えば1秒〜1時間程度が好ましく、1秒〜30分程度がより好ましい。アルカリ化合物との混合によりpHを7以上に調整するのが好ましく、7よりも低いと所望の酸化亜鉛が得られにくい。好ましいpHは8〜14程度、より好ましくは10〜14程度である。アルカリ化合物を混合し所定のpHに調整して沈殿物を析出させた後、必要に応じて10分〜5時間程度そのpHを保持しても良い。その後、撹拌しながら、前記の水溶液を好ましくは40℃以上、より好ましくは60〜250℃程度、更に好ましくは80〜110℃程度に加温して、沈殿物を酸化亜鉛に変化させる。所定の温度に加温した後、必要に応じて10分〜10時間程度その温度を保持しても良い。
亜鉛化合物とカルボン酸及び/又はその塩とアルカリ化合物との混合水溶液には更に、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等の塩類を混合しても良く、アルカリ化合物と混合する前の亜鉛化合物水溶液に塩類を添加するのが好ましい。塩類の添加量は、亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.0001以上の範囲が好ましく、0.001〜10程度がより好ましい。
このようにして得られた酸化亜鉛は、必要に応じて濾過・洗浄して固液分離し、乾燥、乾式粉砕を行うと、酸化亜鉛粉末が得られる。固液分離には、フィルタープレス、ロールプレス等の通常工業的に用いられる濾過器を用いることができる。乾燥にはバンド式ヒーター、バッチ式ヒーター、噴霧乾燥機等が、乾式粉砕にはハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルペライザー、解砕機等の摩砕粉砕機、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー等の圧縮粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等を用いることができる。乾燥温度は適宜設定することができるが、80〜200℃程度が適当である。また、必要に応じて前記の酸化亜鉛粉末を200〜800℃程度の温度で焼成しても良く、結晶性を更に高めることができるため好ましい。焼成は通常、空気、酸素、窒素等の雰囲気下で行うことができ、焼成時間は10分〜10時間程度が適当である。
前記の製造方法の条件を適宜選択することによって、種々の形状の酸化亜鉛が得られる。例えば、亜鉛化合物の種類、アルカリ化合物の量や種類等を選択することにより、次のような酸化亜鉛を製造することができる。
(1)平均短軸径が0.01〜1.0μmであり、平均長軸径が1〜30μmである針状形状を有する酸化亜鉛
針状形状を有する酸化亜鉛の粒子は長軸径が短軸径より大きく、軸比(長軸径/短軸径)を有するものである。その針状の形状とは針状以外に柱状、棒状、紡錘状、繊維状等と呼ばれる軸比を有するものも包含する。このような粒子形状は電子顕微鏡写真で確認することができ、それらの大きさは、少なくとも20個の粒子の長軸径、短軸径を計測して、それらの粒子を角柱相当体と仮定し、下記式によって重量平均長軸径、重量平均短軸径を算出する。
重量平均長軸径=Σ(Ln・Ln・Dn2)/Σ(Ln・Dn2)
重量平均短軸径=Σ(Dn・Ln・Dn2)/Σ(Ln・Dn2)
上記式中、nは計測した個々の粒子の番号を表し、Lnは第n番目の粒子の長軸径、Dnは第n番目の粒子の短軸径をそれぞれ表す。
針状形状を有する酸化亜鉛の平均短軸径は、0.01〜1.0μmであり、0.05〜0.5μm程度が好ましい。また、平均長軸径は1〜30μmであり、2〜15μm程度が好ましい。
(1)平均短軸径が0.01〜1.0μmであり、平均長軸径が1〜30μmである針状形状を有する酸化亜鉛
針状形状を有する酸化亜鉛の粒子は長軸径が短軸径より大きく、軸比(長軸径/短軸径)を有するものである。その針状の形状とは針状以外に柱状、棒状、紡錘状、繊維状等と呼ばれる軸比を有するものも包含する。このような粒子形状は電子顕微鏡写真で確認することができ、それらの大きさは、少なくとも20個の粒子の長軸径、短軸径を計測して、それらの粒子を角柱相当体と仮定し、下記式によって重量平均長軸径、重量平均短軸径を算出する。
重量平均長軸径=Σ(Ln・Ln・Dn2)/Σ(Ln・Dn2)
重量平均短軸径=Σ(Dn・Ln・Dn2)/Σ(Ln・Dn2)
上記式中、nは計測した個々の粒子の番号を表し、Lnは第n番目の粒子の長軸径、Dnは第n番目の粒子の短軸径をそれぞれ表す。
針状形状を有する酸化亜鉛の平均短軸径は、0.01〜1.0μmであり、0.05〜0.5μm程度が好ましい。また、平均長軸径は1〜30μmであり、2〜15μm程度が好ましい。
(2)平均短軸径が0.01〜1.0μmであり、平均長軸径が1〜30μmである針状形状を有する酸化亜鉛粒子が集積した酸化亜鉛、特に、針状形状を有する酸化亜鉛粒子が放射状に集積して、いがぐりに類似した形状を有する酸化亜鉛
前記(1)の針状形状を有する酸化亜鉛粒子が少なくとも二個集積した集積体であって、酸化亜鉛粒子が成長する際に樹枝状結晶成長が起こったような形状をしており、酸化亜鉛粒子が少なくとも二個、好ましくは複数個〜数十個集合して外見上一個の粒子とみなされる集合体である。具体的には、針状形状を有する酸化亜鉛粒子二つが放射状に集積したローマ字Xに類似した形状、ローマ字Xの交点に対して垂直方向に更に少なくとも一個集積した形状、針状形状を有する酸化亜鉛粒子が複数個束なった形状、複数個集積して二つの円錐が頂点で重なったような形状、二つの扇の骨が要部分で重なったような形状(二枚扇状)あるいは数個又はそれ以上集積したいがぐりに類似した形状(栗のいが状)などを有するものが好ましい。このような集積体の大きさは0.5μm以上が好ましく、1〜50μmがより好ましい。
前記(1)の針状形状を有する酸化亜鉛粒子が少なくとも二個集積した集積体であって、酸化亜鉛粒子が成長する際に樹枝状結晶成長が起こったような形状をしており、酸化亜鉛粒子が少なくとも二個、好ましくは複数個〜数十個集合して外見上一個の粒子とみなされる集合体である。具体的には、針状形状を有する酸化亜鉛粒子二つが放射状に集積したローマ字Xに類似した形状、ローマ字Xの交点に対して垂直方向に更に少なくとも一個集積した形状、針状形状を有する酸化亜鉛粒子が複数個束なった形状、複数個集積して二つの円錐が頂点で重なったような形状、二つの扇の骨が要部分で重なったような形状(二枚扇状)あるいは数個又はそれ以上集積したいがぐりに類似した形状(栗のいが状)などを有するものが好ましい。このような集積体の大きさは0.5μm以上が好ましく、1〜50μmがより好ましい。
本発明の酸化亜鉛は、その粒子表面に必要に応じてケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等の酸化物あるいはそれらのリン酸塩等の無機化合物の被覆層を設けることもできる。また、溶媒、塗料やプラスチックス等への分散性を付与するなどの目的で、有機化合物を被覆しても良く、前記の無機化合物と有機化合物の両者を被覆しても良い。有機化合物としては、例えば、(1)有機ケイ素化合物((a)オルガノポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン等又はそれらの共重合体)、(b)オルガノシラン類(アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、クロロアルキルシラン、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン等又はそれらの加水分解生成物)、(c)オルガノシラザン類(ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等)、(2)有機金属化合物((a)有機チタニウム化合物(アミノアルコキシチタニウム、リン酸エステルチタニウム、カルボン酸エステルチタニウム、スルホン酸エステルチタニウム、チタニウムキレート、亜リン酸エステルチタニウム錯体等)、(b)有機アルミニウム化合物(アルミニウムキレート等)、(c)有機ジルコニウム化合物(カルボン酸エステルジルコニウム、ジルコニウムキレート等)等)、(3)ポリオール類(トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等)、(4)アルカノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等)又はその誘導体(酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等)、(5)高級脂肪酸類(ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等)又はその金属塩(アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等)、(6)高級炭化水素類(パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等)又はその誘導体(パーフルオロ化物等)が挙げられる。これらの有機化合物は1種を用いても、2種以上を積層又は混合して用いても良い。化粧料に用いる場合は、オルガノポリシロキサン類、高級脂肪酸類を用いるのが好ましい。無機化合物、有機化合物の被覆量は、酸化亜鉛に対し、0.1〜50重量%の範囲が好ましく、0.1〜30重量%の範囲が更に好ましい。酸化亜鉛の粒子表面に前記の無機化合物や有機化合物を被覆させるには、酸化亜鉛の水性スラリー中で、無機化合物あるいは有機化合物を添加し中和するなどして被覆することができる。また、有機化合物を被覆するには別の方法として、前述の乾式粉砕の際に有機化合物を添加し混合することもできる。
本発明の酸化亜鉛は、日焼け止め化粧料、基礎化粧料等の化粧料に適量配合して用いられる。例えば、前記の酸化亜鉛以外に、通常化粧料の用いられる公知の成分、例えば、(1)溶媒(水、低級アルコール類等)、(2)油剤(高級脂肪酸類、高級アルコール類、オルガノポリシロキサン類(シリコーンオイル)、炭化水素類、油脂類等)、(3)界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性等)、(4)保湿剤(グリセリン類、グリコール等のポリオール系、ピロリドンカルボン酸類等の非ポリオール系等)(5)有機紫外線吸収剤(ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体等)、(6)酸化防止剤(フェノール系、有機酸又はその塩、酸アミド系、リン酸系等)、(7)増粘剤、(8)香料、(9)着色剤(顔料、色素、染料等)、(10)生理活性成分(ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類等)、(11)抗菌剤等が配合されていても良い。化粧料の様態は、固形状、液状、ジェル状等特に制限なく、液状やジェル状の場合、その分散形態も油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、油型等のいずれでも良い。化粧料中の酸化亜鉛の配合量は、0.1〜50重量%の範囲が好ましい。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
実施例1
硫酸亜鉛0.075モルとクエン酸0.075モルを150ccの純水で溶解した。次に2Lの四つ口フラスコに純水500ccを入れ、その中に前記の硫酸亜鉛水溶液を添加し、翼径12cmの2枚羽根の撹拌機を用いて回転数200rpmで撹拌下、室温で0.925モルの水酸化ナトリウムを含む350ccの水溶液を添加し、水溶液のpHを13に調整し、30分間保持して沈殿物を析出させた。その後、100℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、濾過・水洗・乾燥して、本発明の酸化亜鉛粉末(試料A)を得た。
この試料Aは、X線回折の結果、結晶性の良い酸化亜鉛であることを確認した。また、電子顕微鏡写真(図1、図2)から、平均短軸径が0.4μmであり、平均長軸径が2μmである針状形状を有する酸化亜鉛粒子であり、また、その酸化亜鉛粒子の一部が集積した酸化亜鉛、特に、針状形状を有する酸化亜鉛粒子が放射状に集積して、いがぐり状を有する酸化亜鉛(大きさ10μm)であった。
硫酸亜鉛0.075モルとクエン酸0.075モルを150ccの純水で溶解した。次に2Lの四つ口フラスコに純水500ccを入れ、その中に前記の硫酸亜鉛水溶液を添加し、翼径12cmの2枚羽根の撹拌機を用いて回転数200rpmで撹拌下、室温で0.925モルの水酸化ナトリウムを含む350ccの水溶液を添加し、水溶液のpHを13に調整し、30分間保持して沈殿物を析出させた。その後、100℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、濾過・水洗・乾燥して、本発明の酸化亜鉛粉末(試料A)を得た。
この試料Aは、X線回折の結果、結晶性の良い酸化亜鉛であることを確認した。また、電子顕微鏡写真(図1、図2)から、平均短軸径が0.4μmであり、平均長軸径が2μmである針状形状を有する酸化亜鉛粒子であり、また、その酸化亜鉛粒子の一部が集積した酸化亜鉛、特に、針状形状を有する酸化亜鉛粒子が放射状に集積して、いがぐり状を有する酸化亜鉛(大きさ10μm)であった。
実施例2
実施例1においクエン酸0.075モルを0.025モルにし、水酸化ナトリウム0.925モルを0.775モルにしてpHを13に調整すること以外は、実施例1と同様にして、本発明の酸化亜鉛粉末(試料B)を得た。
この試料Bは、X線回折の結果、結晶性の良い酸化亜鉛であることを確認した。また、電子顕微鏡写真(図3、図4)から、平均短軸径が0.5μmであり、平均長軸径が3μmである針状形状を有する酸化亜鉛粒子であり、また、その酸化亜鉛粒子の一部が集積した酸化亜鉛、特に、針状形状を有する酸化亜鉛粒子が放射状に集積して、いがぐり状を有する酸化亜鉛(大きさ25μm)であった。
実施例1においクエン酸0.075モルを0.025モルにし、水酸化ナトリウム0.925モルを0.775モルにしてpHを13に調整すること以外は、実施例1と同様にして、本発明の酸化亜鉛粉末(試料B)を得た。
この試料Bは、X線回折の結果、結晶性の良い酸化亜鉛であることを確認した。また、電子顕微鏡写真(図3、図4)から、平均短軸径が0.5μmであり、平均長軸径が3μmである針状形状を有する酸化亜鉛粒子であり、また、その酸化亜鉛粒子の一部が集積した酸化亜鉛、特に、針状形状を有する酸化亜鉛粒子が放射状に集積して、いがぐり状を有する酸化亜鉛(大きさ25μm)であった。
比較例1
実施例1においてクエン酸を用いないこと以外は実施例1と同様にして、酸化亜鉛粉末(試料C)を得た。
この試料Cは、電子顕微鏡写真(図5)から、平均短軸径が0.6μmであり、平均長軸径が3μmである薄片形状あるいは針状形状を有する酸化亜鉛粒子であったが、形状及び粒径のばらつきが大きいものであった。
実施例1においてクエン酸を用いないこと以外は実施例1と同様にして、酸化亜鉛粉末(試料C)を得た。
この試料Cは、電子顕微鏡写真(図5)から、平均短軸径が0.6μmであり、平均長軸径が3μmである薄片形状あるいは針状形状を有する酸化亜鉛粒子であったが、形状及び粒径のばらつきが大きいものであった。
試料Aを直接肌にのせてこすった際の感触を評価したところ、のびは良好であり、化粧料に配合すると分散性が良く肌へのすべり感が良くなることがわかった。
本発明は、形状、大きさの整った針状形状を有する酸化亜鉛粒子、その酸化亜鉛粒子が集積した種々の形状を有する酸化亜鉛集積体であり、種々の用途に利用することができる。
Claims (9)
- 亜鉛化合物水溶液と、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するカルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOM)の合量のモル比で表して0.2以上のカルボン酸及び/又はその塩と、アルカリ化合物とを混合して、酸化亜鉛を析出させることを特徴とする酸化亜鉛の製造方法。
- アルカリ化合物の量が、アルカリ化合物の価数をnとしたとき、カルボン酸及び/又はその塩に存在するカルボキシル基(−COOH)を中和する量と、亜鉛化合物の亜鉛濃度X(モル/リットル)に対して、(4X+0.2)/n(モル/リットル)以上の範囲となる量との合量であることを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛の製造方法。
- 前記のカルボン酸及び/又はその塩がクエン酸及び/又はその塩であることを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法で得られた酸化亜鉛を200〜800℃の温度で焼成することを特徴とする酸化亜鉛の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる、平均短軸径が0.01〜1.0μmであり、平均長軸径が1〜30μmである針状形状を有する酸化亜鉛。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる、平均短軸径が0.01〜1.0μmであり、平均長軸径が1〜30μmである針状形状を有する酸化亜鉛粒子が集積した酸化亜鉛。
- 針状形状を有する酸化亜鉛粒子が放射状に集積して、いがぐりに類似した形状を有する請求項6に記載の酸化亜鉛。
- 酸化亜鉛粒子が集積した集積体の大きさが1〜50μmである請求項6に記載の酸化亜鉛。
- 請求項5〜8のいずれか一項に記載の酸化亜鉛を含有する化粧料。
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