本発明の液晶表示装置用素子1(第1の実施態様の液晶表示装置用素子1)は、図1に示すように、光透過性を有する基材2と位相差層4とを有しており、特に図1の例では、基材2上に位相差層4を積層し、さらに位相差層4上に被覆層5を積層している。また、この液晶表示装置用素子1は、図2(A)(B)に示すように、対向しあう一対の基板25(対向基板22,TFTアレイ基板23)と、該一対の基板25の間に液晶組成物より形成される駆動液晶層28と、液晶組成物を一対の基板の間の空間内に封止してその空間外に液晶組成物を漏出させないようにするシール部8とを備える液晶表示装置51に組み込まれて用いられるものである。図2(A)(B)は、液晶表示装置51の概略構成を説明するための、それぞれ断面図、平面図である。なお、説明の都合上、図2(B)においてTFTアレイ基板23の記載を省略している。
基材2は、光透過性を有する基材形成材からなり、基材形成材を単層で構成されても、複数種類の基材形成材にて多層に構成されてもよい。基材2の光線透過率は、適宜選定可能である。
基材形成材は、光学的に等方性を有するように構成されていることが好ましい。基材形成材としては、ガラス基板などのガラス材の他、種々の材質からなる板状体を適宜選択できる。具体的には、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどからなるプラスチック基板であってもよいし、またさらにポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロプレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトンなどのフィルムを用いることもできる。ただ、特に、基板形成材は無アルカリガラスであることが好ましい。
位相差層4は、その厚み方向に位相差層4の内部を進行して一方側の表面から入射されて他方側の表面より出射する光につき、その光が位相差層4の内部を進行する際に光を複屈折させる機能を有する層である。
位相差層4は、その厚み方向に互いに逆側を向く位相差層4の表面の一方側から入射して位相差層4の内部を進行して他方側の表面より出射する光につき、その光が位相差層4の内部を進行する際に光を複屈折させる機能を有する層であり、位相差層4の厚み方向にz軸をとり、z軸と垂直に交差し且つ1点で交わるように相互に直交するx軸、y軸をとってxyz空間を想定した場合、x軸、y軸、z軸方向の光の屈折率をnx、ny、nzとして、nx、ny、nzのうちのいずれか1つが他よりも大きいもしくは小さいような状態になっている層を挙げることができる。
例えば、位相差層4は、その屈折率がnx>ny=nz、あるいは、ny>nx=nzであるような場合は、いわゆる「+Aプレート」(正のAプレート)として機能し、屈折率がnx=ny>nzであるような場合は、いわゆる「−Cプレート」(負のCプレート)として機能し、屈折率がnx=ny<nzであるような場合は、いわゆる「+Cプレート」(正のCプレート)として機能する。
位相差層4は、分子構造中に重合性官能基を有する液晶分子(重合性液晶分子という)を重合反応させてなる高分子構造を形成している。
位相差層4は、液晶分子を特定の方向に配向させた状態にて形成されている。液晶分子は、その分子構造に応じた光軸を有し、その光軸の状態にて定まる複屈折特性を備えており、特定の方向に液晶分子を配向させて固定することで、その配向状態に応じた複屈折特性を有する層構造を構成することができ、具体的には、いわゆる正のAプレート、負のCプレート、正のCプレートなどの機能を有する層を構成することができる。
位相差層4を構成する液晶分子は、位相差層4の複屈折特性に応じて適宜選択できる。例えば、位相差層4が正のAプレートや正のCプレートの機能を発揮するような複屈折特性を有する層構造である場合には、位相差層4を構成する液晶分子としては、ネマチック液晶相を形成可能な液晶分子やスメクチック液晶相を形成可能な液晶分子を用いることができ、位相差層4が負のCプレートの機能を発揮するような複屈折特性を有する層構造である場合には、位相差層4を構成する液晶分子としては、上記したネマチック液晶相を形成可能な液晶分子のほか、コレステリック液晶相を形成可能な液晶分子を用いることができる。
位相差層4を構成する重合性液晶分子は、その液晶分子の構造中に不飽和2重結合を重合性官能基として有するものが好ましい。また、重合性液晶分子には、耐熱性の点から液晶相状態で架橋重合反応可能な重合性液晶分子(架橋重合性液晶分子、あるいは架橋性液晶分子という)がより好ましく用いられ、架橋重合性液晶分子としては分子構造の両末端に不飽和2重結合を有するもの(不飽和2重結合を2以上有するもの)が好ましい。なお、架橋重合性液晶分子を用いて位相差層4が形成される場合、位相差層4には、架橋重合性液晶分子を相互に架橋させてなる架橋高分子構造が形成されることになる。
位相差層4を得るために用いられる架橋性液晶分子としては、架橋性を有するネマチック液晶分子(架橋性ネマチック液晶分子)などをあげることができる。架橋性ネマチック液晶分子としては例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。また、このような架橋性液晶分子として、より具体的には、下記化1に示す一般式(1)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(I))、下記化2に示す一般式(2)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(II))もしくは2種以上の混合物、化3、化4に示す化合物(化合物(III))のうちの1種の化合物或いは2種以上の混合物、またはこれらを組み合わせた混合物を用いることができる。
化1に示す一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれに、水素またはメチル基を示すが、架橋性液晶分子が液晶相を示す温度の範囲をより広くするには少なくともR1及びR2のどちらか一方が水素であることが好ましく、両方が水素であることがより好ましい。また一般式(1)におけるX及び一般式(2)のYは、水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基またはニトロ基のいずれであってもよいが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、一般式(1)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環と間のアルキレン基の鎖長を示すaおよびb並びに、一般式(2)におけるdおよびeは、それぞれ個別に1〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物(I)またはd=e=0である一般式(2)の化合物(II)は安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物(I)または(II)自体の結晶性が高い。また、aやb、あるいはdやeがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物(I)または一般式(2)の化合物(II)は、等方相転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物は、どちらについても液晶分子が液晶性を安定的に示す温度範囲(液晶相を維持する温度範囲)が狭いものとなり、位相差層4に用いるには好ましくない。
架橋性液晶分子として、上記した化1、化2、化3、化4では重合性を備える液晶(重合性液晶)のモノマーを例示したが、重合性液晶のオリゴマーや重合性液晶のポリマー等を用いてもよく、これらについても、上記した化1、化2、化3、化4などのオリゴマーやポリマーなどといった公知なものを適宜選択して用いることができる。
位相差層4においては、液晶分子の重合度(架橋重合性液晶分子の場合は、架橋重合度)が80以上程度であることが好ましく、90以上程度であることがより好ましい。位相差層4を構成する液晶分子の重合度が80より小さいと、均一な配向性を十分に維持できない虞がある。なお、上記重合度、架橋重合度は、液晶分子の重合性官能基のうち液晶分子の重合反応に消費された割合を示す。
上記したような液晶分子を用い、位相差層4は、その機能に応じて、次のように形成される。
位相差層4が正のCプレートとしての光学補償機能を有する層である場合には、位相差層4は、その光軸が上記にて想定したxyz空間におけるz軸方向を向くように、正の複屈折異方性の液晶分子を配向させて固定することにより形成される。
具体的には、位相差層4は、次のようにして形成することができる。
まず、位相差層4を構成する上記した化合物(I)化合物(II)化合物(III)のような液晶分子と、溶媒とを配合して液晶材料が調整される。液晶材料には、必要に応じて、液晶分子を垂直に配向させる配向助剤(垂直配向助剤ということがある)などを含む添加剤が適宜添加されてもよい。
液晶材料の調整に用いる溶媒としては、位相差層4を構成する液晶分子を溶解させることができるものであれば特に限定されず、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種又は2種以上が使用可能である。単一種の溶媒を使用しただけでは、架橋性液晶分子等の配合物成分の溶解性が不充分である場合や、液晶材料を塗布する際における塗布の相手方となる素材(基材を構成する素材)が侵される虞がある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、これらの不都合を回避することができる。上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいものは、エーテル類又はケトン類と、グリコール類とを混合した混合系溶媒である。液晶材料溶液の配合物成分の濃度は、液晶材料に用いる配合物成分の溶媒への溶解性や位相差層に望まれる層厚み等により異なるが、通常は1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲である。
液晶材料に含まれる垂直配向助剤としては、ポリイミドや、界面活性剤やカップリング剤が具体的に例示される。
垂直配向助剤としてポリイミドを用いる場合、ポリイミドは、長鎖アルキル基を有するものであることが、液晶表示装置用素子1に形成される位相差層4の厚さを広い範囲で選択することができて好ましい。なお、垂直配向助剤がポリイミドである場合、ポリイミドとしては、具体的には、日産化学社製のSE−7511やSE−1211、あるいはJSR社製のJALS−2021−R2等を例示できる。
垂直配向助剤として界面活性剤を用いる場合、界面活性剤は、重合性液晶分子をホメオトロピック配向させることができるものであればよいが、位相差層の形成の際に液晶分子を液晶相への転移温度まで加熱する必要があることから、液晶相への転移温度でも分解されない程度に耐熱性を有していることが要請される。また、位相差層4の形成の際、液晶分子は有機溶媒に溶解させる場合があることから、そのような場合には、液晶分子を溶解させる有機溶媒との親和性が良好であることが要請される。このような要請をみたすものであれば、界面活性剤はノニオン系、カチオン系、アニオン系等の種類を限定されず、1種類の界面活性剤のみを用いてもよいし、複数種の界面活性剤を併用してもよい。
垂直配向助剤としてカップリング剤を用いる場合、カップリング剤としては、具体的には、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなどのシラン化合物を加水分解して得られるシランカップリング剤や、アミノ基含有シランカップリング剤、フッ素基含有シランカップリング剤などを例示することができる。これらのカップリング剤は、複数種選択されて、液晶材料に添加されてもよい。
また、液晶材料には、必要に応じて、光重合開始剤、増感剤が添加される。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル(もしくはビベンゾイル)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオサントン等を挙げることができる。
液晶材料に光重合開始剤が配合される場合、光重合開始剤の配合量は、0.01〜10重量%である。なお、光重合開始剤の配合量は、重合性液晶分子の配向をできるだけ損なわない程度であることが好ましく、この点を考慮して、0.1〜7重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。
また、液晶材料に増感剤が配合される場合、増感剤の配合量は、重合性液晶分子の配向を大きく損なわない範囲で適宜選択でき、具体的には0.01〜1重量%の範囲内で選択される。光重合開始剤及び増感剤は、それぞれ、1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
このように液晶材料が調整されると、次いで、この液晶材料を基材2に塗布して液晶塗布膜を作成する。
この液晶材料の塗布方法としては、ダイコート、バーコート、スライドコート、ロールコート等といった各種印刷法やスピンコート方法などを、適宜採用することができる。
次に、基材2表面に塗布して作製された液晶塗布膜に含まれる重合性液晶分子には、例えば次に示すように配向性が付与される。ここに液晶表示装置用素子1が正のCプレートである場合には、液晶分子をホメオトロピック配向させる。液晶分子に対する配向性の付与は、液晶塗布膜を加熱して、液晶塗布膜の温度を、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子が液晶相となる温度(液晶相温度)以上、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子が等方相(液体相)となる温度未満にすることで、実施される。このとき液晶塗布膜の加熱手段は、特に限定されず、液晶塗布膜を形成した基材を加熱雰囲気下におく手段でもよいし、液晶塗布膜に赤外線を照射して加熱する手段でもよい。
なお、重合性液晶分子を配向させる方法は、上記方法による他、液晶塗布膜に含まれる重合性液晶分子やこの液晶塗布膜の状態に応じ、液晶塗布膜を一旦等方相温度まで加熱し、その後に液晶塗布膜を冷却し、その冷却の過程で自発的に液晶分子に配向を誘起させる方法や、液晶塗布膜に対して所定方向から電場や磁場を負荷する方法によっても実現可能である。
また、液晶相となる温度範囲が室温よりも高く、通常室温では液晶相を示さない重合性液晶分子が液晶材料に含有される液晶分子として用いられた場合であっても、室温で過冷却状態の液晶相を示す液晶分子を含有した液晶材料であれば、その液晶材料を、液晶分子が液晶相を示す時間の範囲内で、室温でも、配向性を付与された液晶分子を含有する液晶塗布膜を形成するために使用することが可能である。
このようにして液晶塗布膜中に含まれる液晶分子に配向性が付与された状態が形成されると、液晶分子同士を重合反応(液晶分子が架橋重合性液晶分子の場合は、架橋重合反応)させる。
この重合反応は、液晶材料中に添加された光重合開始剤の感光波長の光(具体的には例えば紫外線)などの活性放射線を、液晶相の状態となっている液晶分子を含有している液晶塗布膜に向けて、その液晶塗布膜全面に照射することで進行する。このとき、液晶塗布膜に照射する光の波長は、この塗膜中に含まれている光重合開始剤の種類に応じて適宜選択される。なお、液晶塗布膜に照射する光は、単色光に限らず、光重合開始剤の感光波長を含む一定の波長域を持った光であってもよい。
また、液晶分子の重合反応は、液晶塗布膜が液晶相を示す状態で、光重合開始剤の感光波長の光などの活性放射線を、遮光パターンを有するフォトマスクなどを介して液晶塗布膜に照射して(露光して)重合反応を部分的に進行させ(部分的重合工程という)、部分的重合工程の後、液晶分子が等方相となる温度(Ti)まで液晶塗布膜を加熱し、この状態でさらに感光波長の光などの活性放射線を液晶塗布膜に照射して重合反応を進行させる方法や、部分的重合工程の後に液晶塗布膜を温度Ti以上に加熱して液晶分子を熱重合させる処理を施すことにより液晶塗布膜に含まれる液晶分子の重合反応を所定の重合度に至るまで進める方法で実施されてもよい。なお、上記した温度Tiは、重合反応を進行させる前の液晶塗布膜において液晶分子が等方相となる温度である。
ここに、図1に示す位相差層4の例では、基材2上に全面ベタに位相差層4を形成する場合が示されているが、このことは位相差層4が基材上に所定のパターンで形成されることを完全に排除するものではない。位相差層4のパターン形成は、液晶塗布膜の面内方向所定の位置として選択された位置における液晶分子を重合させることで実施可能である。すなわち、液晶分子の重合反応がフォトマスクを用いた部分的重合工程を経て実施される場合、液晶塗布膜を形成した基材に対して部分的重合工程が実施された後、その基材を、液晶分子の重合反応が不十分で未硬化な状態にある液晶材料を溶解可能な溶液に浸漬することにより、液晶塗布膜において液晶分子の重合反応が進まなかった部分を基材面から除去し、基材上に液晶相の液晶分子を含む層構造を所定のパターンで形成する(パターニングする)ことも可能である。
なお活性放射線を照射して液晶塗布膜中の液晶分子を重合反応させることによる液晶塗布膜の硬化は、空気雰囲気下で実施されるのみならず、不活性ガス雰囲気中でも実施できる。
また、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を重合させて位相差層4となした後、重合された液晶分子を含む位相差層4を更に加熱する処理(重合後加熱処理ということがある)が施されることが、位相差層4の硬さを向上させることができて好ましい。ただし、重合後加熱処理を行う場合、基材2は、耐熱性を有することが必要であることから、基材2を構成する基材形成材として耐熱性を有するガラス基板などが好ましく用いられる。
重合後加熱処理を行うにあたり、位相差層4の加熱温度は、150〜260℃であるが、200〜250℃であることが、重合後加熱処理後において位相差層4を、重合後加熱処理の前よりも効果的に硬くすることができる観点から好ましい。重合後加熱処理を行う時間については、5〜90分であるが、重合後加熱処理を行う際の加熱温度についての上記観点と同様の観点から、15〜30分程度であることが好ましい。なお、加熱温度が260℃もしくは加熱時間が90分を超えると、位相差層4の硬度・強度は上がるが位相差層4自体が強く黄変してしまう虞が大きくなり、一方加熱温度が150℃もしくは加熱時間が5分を下回ると、十分な硬度・強度が得られない虞が大きくなる。
そして、位相差層4は、加熱された後、降温される。
重合後加熱処理は、位相差層4を形成した基材2を、オーブン装置などの焼成装置に導入し、圧力が大気圧、空気雰囲気の条件下で焼成することによって具体的に実施できる。その他、赤外線照射による方法でも実施することができる。
重合後加熱処理の工程を行うにあたり、位相差層4の加熱の際の昇温、加熱後の降温は徐々に行われることが好ましい。
位相差層4は、正のCプレートとしての光学補償機能を発揮する層である場合においては、その高分子構造(液晶分子が架橋重合性液晶分子である場合は、架橋高分子構造)を構成する個々の液晶分子のチルト角と方位角(位相差層4の平面視上、液晶分子の光軸が位相差層4の厚み方向に対して倒れる方位)について、位相差層4の厚さ方向および面内方向に異なる位置に存在する液晶分子同士のチルト角と方位角がそれぞれ互いに略等しい(理想的には、完全に等しい)ことが好ましい。この場合、位相差層4に含まれるそれぞれの液晶分子のチルト角と方位角は略均一に揃い、位相差層4は、その複屈折特性の均一なものとなり、面内方向にむらの少ないものとなる。
なお、位相差層4が正のCプレートとしての機能を有する層である場合においては、基材2と位相差層4との間に予め垂直配向膜を介在させ、垂直配向膜の表面に対して直接に位相差層4が積層形成されてもよく、こうすることで、位相差層4の光軸をよりz軸方向に均一化しつつ向けることができて好ましい。この場合、位相差層4は、基材2の表面に対して間接に形成されることになる。
垂直配向膜は、垂直配向膜を構成する成分を含んだ垂直配向膜組成液をフレキソ印刷やスピンコート等の方法で基材2上に塗布して垂直配向膜形成用塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることで形成することができる。垂直配向膜組成液としてはポリイミドを含む溶液が挙げられる。そのようなポリイミドを含む垂直配向膜組成液としては、具体的には、日産化学社製のSE−7511やSE−1211、あるいはJSR社製のJALS−2021−R2等を挙げることができる。
垂直配向膜は、その膜厚みが0.01〜1μm程度の範囲であることが好ましい。垂直配向膜の膜厚が、0.01μmよりも薄いと、液晶分子をホメオトロピック配向させることが困難になる虞が大きくなる。また、垂直配向膜の膜厚が1μmよりも厚いと、この垂直配向膜による光の散乱の程度が大きくなって液晶表示装置用素子の光透過率の低下を来す虞が大きくなる。
なお、垂直配向膜が撥水性又は撥油性の高いものである場合には、垂直配向膜上に液晶材料を塗布して位相差層4を形成する前に、液晶分子をホメオトロピック配向させることが可能な範囲内でUV洗浄やプラズマ処理を施して、液晶組成液を塗布しようとする垂直配向膜表面の濡れ性を予め高めておいてもよい。
位相差層4が負のCプレートとしての光学補償機能を有する層である場合、位相差層4は、その光軸がz軸方向に向かうように、負の屈折率異方性の液晶分子を配向させて固定することにより形成できる。そのほか、負のCプレートとしての光学補償機能を有する位相差層4は、上記正のCプレートとしての機能を有する層である場合と同様の化合物(I)(II)(III)に示すような架橋性ネマチック液晶などの液晶分子を溶媒に添加した液晶材料を用いて、これにカイラル剤を更に添加して、重合性液晶分子にコレステリック規則性を付与してカイラルネマチック液晶となすための液晶材料(カイラル剤含有液晶材料ということがある)を調製し、このカイラル剤含有液晶材料を用いて形成してもよい。
また、位相差層4が負の屈折率異方性の液晶分子を配向させて負のCプレートとしての光学補償機能を発揮する層をなす場合においては、上記した位相差層4が正のCプレートとしての光学補償機能を発揮する層である場合と同様に、位相差層4の高分子構造や架橋高分子構造を構成する個々の液晶分子のチルト角と方位角について、位相差層4の厚さ方向および面内方向に異なる位置に存在する液晶分子同士のチルト角と方位角がそれぞれ互いに略等しいことが好ましく、理想的には、完全に等しいことが好ましい。
カイラル剤含有液晶材料を用いた位相差層4の形成については、具体的には、上記したような液晶分子と、カイラル剤と、光開始剤と、溶媒を混合して液晶材料を調整し、この液晶材料を、基材2面上に塗布して液晶塗布膜を作成して、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を重合して焼成することにより、負のCプレートとしての光学補償機能を備える位相差層4が形成される。なお液晶分子の重合は、上記正のCプレートとしての機能を備える位相差層4を作成する場合と同様に、活性放射線を液晶塗布膜に照射することによって実施することができる。
カイラル剤は、分子内に光学活性な部位を有する低分子量化合物で、分子量1500以下の化合物であることが好ましい。具体的には、カイラル剤としては下記の化5に示すような化合物を例示することができるが、化1に示す化合物(I)、化2に示す化合物(II)や化3、化4に示す化合物(III)と溶液状態或いは溶融状態で相溶性を有し、かつ架橋性ネマチック液晶の分子の液晶性を損なうことなく螺旋ピッチを誘起できるものであれば、化5に示す化合物に限定されない。ただし、カイラル剤としては、その分子構造中における両方の末端部位に重合性官能基を有するもの(重合型カイラル剤)が、耐熱性の良い位相差層4を得る上で好ましく、またカイラル剤は分子構造内に光学活性な部位を有する化合物であることが重要である。
一般式(3)〜(5)において、R4は水素又はメチル基を示し、Yは下記、化6、化7に示す(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、中でも式(i)、(ii)、(iii)、(v)及び(vii)の何れか一つであることが好ましい。またアルキレン基の繰り返し数を示すh及びiは、それぞれ個別に2〜12の範囲であることがさらに好ましい。h又はiの値が2未満である化合物は、安定性に欠け、加水分解を受けやすく、結晶性も高い。一方、h又はiの値が13以上である化合物は、融点(Tm)が低い。これにより、hやiの値が上記好ましい範囲を外れる化合物をカイラル剤として用いると、化合物(I)又は化合物(II)に例示される架橋重合性液晶分子との相溶性が低下し、濃度によっては相分離等が起きる虞がある。なお、化6の式(i)、(ii)中のZは、水素原子、塩素原子、臭素原子、メトキシ基、シアノ基、ニトロソ基、又は、−(CH2)mCH3(ただし、m=1〜4)にて示される官能基、を示す。
このようなカイラル剤が、化1に示す化合物(I)、化2に示す化合物(II)や化3、化4に示す化合物(III)を重合性液晶分子として含む液晶材料において配合されると、その液晶材料を用いて位相差層4を形成するにあたり、位相差層4に含まれる重合性液晶分子に対して正の一軸ネマチック規則性で螺旋ピッチを誘起することができる。
カイラル剤は、液晶分子を螺旋状に配向させるために添加されるが、液晶分子が近紫外線領域の螺旋ピッチをとると選択反対現象により特定色の反射色を生じることから、カイラル剤の配合量は、選択反対現象が紫外領域になるような螺旋ピッチが得られるような量とすることが好ましい。
またカイラル剤としては、例えば1つもしくは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミン、キラルなスルフォキシド等のようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、またはクムレン、ビナフトール等の軸不斉を持つ化合物等が挙げられるが、選択したカイラル剤の性質によっては、ネマチック規則性の破壊、配向性の低下を招き、また非重合性のカイラル剤の場合には重合性液晶の重合による硬化性能を低下させる事態を招くばかりか、液晶材料を用いて形成される位相差層の電気的信頼性を低下させる事態を招く虞があり、更に光学活性な部位を有するカイラル剤の多量使用はコストアップを招く。従ってカイラル剤としては、少量でも液晶分子の配向に螺旋ピッチを誘発させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、より具体的には、例えばMerck社製S−811等の市販のものを用いることができる。
位相差層4が正のAプレートとしての光学補償機能を有する層である場合、位相差層4は、正の誘電率異方性の液晶分子をその光軸がx軸とy軸を含むxy平面に平行するように配向させて固定することにより形成される。
このとき、位相差層4と基材2との間に液晶分子を水平配向させることが可能な配向膜(水平配向膜)を介在させ、位相差層4は、その配向膜表面上に積層形成されることが好ましい。位相差層4と基材2との間に水平配向膜を介在させるには、基材2上に水平配向膜を成膜し、さらにその水平配向膜上に位相差層4を積層すればよい。
基材2上における水平配向膜の作成は、配向膜をなす樹脂膜を構成する樹脂材料を調整し、その樹脂材料を基材2上に塗布して水平配向膜形成用塗膜を形成し固化した後、水平配向膜形成用塗膜の表面をラビング処理や光配向処理を施すことによって水平配向膜形成用塗膜を配向膜となすことにより、具体的に実現することができる。
水平配向膜の表面上には、つぎのように位相差層4が積層される。
まず、上記化合物(I)(II)(III)といった液晶分子を溶媒に溶解させた液晶材料を調整しておき、その液晶材料を、先に成膜しておいた基材2の水平配向膜上に塗布して液晶塗布膜を作成し、その液晶塗布膜に含まれる液晶分子をプラナー配向(水平配向)させた状態にして重合させることで液晶分子を固定し、液晶塗布膜を位相差層4となす。こうして、正のAプレートとしての光学補償機能を発揮可能な位相差層4を得ることができる。
なお、正のAプレートとしての光学補償機能を発揮する位相差層4を作成するにあたり、液晶材料の調整に用いる溶媒は、正のCプレートを作成するための液晶材料に用いた溶媒と同様のものを適宜選択して用いることができ、また、液晶分子の重合は、上記正のCプレートとしての機能を有する位相差層4を作成する場合と同様に、光重合開始剤の感光波長の光や紫外線などといった活性放射線を液晶塗布膜に照射することによって実施することができる。
本発明の液晶表示装置用素子1において、位相差層4には、液晶表示装置用素子1が液晶表示装置に組み込まれた場合に位相差層4の厚み方向に見て駆動液晶層の形成された領域に対して重なり合う領域(図2の例において領域a)が存在しており、その重なり合う領域が位相差層4表面上において液晶画面用領域(領域a(液晶画面用領域a))をなしている。また、位相差層4には、液晶表示装置用素子1が液晶表示装置に組み込まれた場合に位相差層4の厚み方向に見てシール部8の占める領域(シール部8と下地をなす面との当接領域)に対して重なり合う領域(図2の例において領域b)が存在しており、その重なり合う領域が位相差層4表面上においてのシール部対応領域(領域b(シール部対応領域b)をなしている。
位相差層4には、位相差層4の部分を覆う被覆層5が設けられて、位相差層4とシール部8との接触を遮断する遮断層の機能を果たす。位相差層4上における被覆層5の設けられる部分(被覆層形成予定部)(図2中、符号c(被覆層形成予定部c))は、位相差層4表面上のシール部対応領域bを含む所定の領域として定められる部分である。この被覆層5の設けられる被覆層形成予定部cについては、位相差層4表面上の液晶画面用領域a外の領域として定められる部分に設定されることが、位相差層4の厚み方向に見た場合に液晶画面用領域a内に入りこまないように設定されて、被覆層5が光の位相差に影響をできるだけ与えないようにする点で好ましい。図2の例では、平面視上(図2(B))、シール部対応領域bは、駆動液晶層を取り囲むように額縁状に形成され、被覆層形成予定部cも、そのシール部対応領域bを包含して額縁状に構成され、そして被覆層5が額縁状に構成されている。
なお、図2では、平面視上、被覆層形成予定部cがシール部対応領域bの全体を包含しているが、これに限定されず、被覆層形成予定部cとシール部対応領域bとが符合してもよい。
被覆層5の高さ(厚み)の値は、これを備える液晶表示装置用素子1を組み込んだ液晶表示装置における駆動液晶層の厚みの値を超えない範囲の値で、適宜設定可能である。
被覆層5を構成する材料としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの樹脂材料(樹脂材料A)を好ましく用いることができる。被覆層5を構成する材料は、駆動液晶層の厚みを容易に変動させない程度に硬化可能な樹脂であって、位相差層との接触界面で位相差層を構成する液晶材料を溶出させないもしくは殆ど溶出させない、という条件をみたすものが選択される。
位相差層4上への被覆層5の形成は、例えば、次のように印刷法やフォトリソグラフィー法などを適宜用いて具体的に実現することができる。
被覆層5を構成する樹脂材料Aを有機溶媒などに溶解させてインキ組成物を調整し、このインキ組成物を位相差層4の表面上の表面上の被覆層形成予定部cにインクジェット法など適宜方法を用いて塗布して、さらに塗布された樹脂材料Aを、樹脂材料Aの性質に応じた適宜方法(例えば加熱など)にて硬化させることで、被覆層5を形成することできる。
また、被覆層5は、位相差層4の上に、フォトリソグラフィー法を用いて形成できる。この場合、具体的には、被覆層5は、これを構成する上記したような樹脂材料Aを含有する樹脂組成物(被覆層形成用樹脂組成物)を、位相差層4の表面上に塗布してこれを乾燥させ、被覆層形成予定部cに対応したパターンを形成したマスク(被覆層用フォトマスク)(図4(A)において符号200)を介して位相差層4上の被覆層形成用樹脂組成物に向けて紫外線を照射(露光)した後、現像して被覆層形成予定部c以外の被覆層形成用樹脂組成物を取り除き、基材2をオーブンで加熱するなどといった公知方法を適宜用いて被覆層形成予定部cに残された被覆層形成用樹脂組成物を焼成することにより形成される。図4(A)の被覆層用フォトマスク200を用いた場合には、額縁状に光透過領域(図4(A)紙面中、白抜き表示領域部分)が形成されており、位相差層4上の被覆層形成用樹脂組成物において露光される領域も額縁状となって、被覆層5が額縁状に形成される。
第1の実施態様の液晶表示装置用素子1は、次に示すようにして製造される。
基材2上に上記に示すように調整された液晶材料を塗布して液晶塗布膜を作成する。このとき、液晶材料は、位相差層4に求められる光学補償機能に応じて適宜選択される。
基材2上に液晶材料を塗布する方法としては、ダイコート、バーコート、スライドコート、ロールコート、スリットコート等といった各種印刷法やスピンコートなどの方法やこれらを組合せた方法を適宜用いることができる。
また、基材2上に液晶材料を塗布して液晶塗布膜が成膜されると、液晶塗布膜の乾燥が行われるが、その乾燥は、減圧乾燥によって減圧状態下で行われる他、大気圧下で行われてもよいが、大気圧下で自然乾燥されることが、液晶分子により均一に配向性を付与することができて好ましい。そして、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を重合させて位相差層4となす。
さらに位相差層4の表面の被覆層形成予定部cに被覆層5を設け、液晶表示装置用素子1を製造することができる。
本発明の液晶表示装置用素子1については、第1の実施形態の液晶表示装置用素子1に、駆動液晶層の厚みの変化を規制する柱体3を位相差層4表面上の液晶画面用領域a内の所定の部分(柱体形成予定部)に配設したもの(第2の実施態様の液晶表示装置用素子1)であってもよい(図3(A)(B))。
液晶表示装置用素子1において柱体3が配置される柱体形成予定部について、その位置、その数や一箇所あたりの寸法は、液晶表示装置の設計に応じて適宜設定される。この場合、液晶表示装置の設計仕様に応じて、液晶表示装置を構成する一対の基板において液晶表示画面となる部分が定まり、さらにそれぞれの基板において液晶表示画面を構成する個々の絵素となる部分や画素となる部分も定められ、液晶表示装置用素子1において液晶画面用領域aおよび画素とする部分(画素部)は、通常、基板の平面視上、基板においてそれぞれ液晶表示画面となる部分および画素となる部分に対して重なり合う部分に定められる。そして、柱体形成予定部は、その位置、その数や一箇所あたりの寸法などの諸条件について、液晶表示装置用素子1において液晶画面用領域a内にあって画素部を除いた部分(非画素部)内に適宜定められる。
本発明の液晶表示装置用素子1において、柱体3は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、及びアミド系又はエステル系ポリマー等の光硬化性樹脂などといった樹脂材料(樹脂材料B)から構成されている。
柱体3の断面形状は、円柱形状、四角柱形状、多角柱形状、円錐台形状など特に限定されない。
柱体3について、液晶表示装置用素子1面内方向断面の寸法は、液晶表示装置用素子1の平面視上、非画素部から画素部へと柱体3が食み出ない寸法を適宜設定することができる。柱体3は、液晶表示装置用素子1面内方向断面の断面積が25〜2500μm2程度の範囲にあるものが選択されるのが通常である。
また、柱体3について、液晶表示装置用素子1厚さ方向の寸法(柱体3の長さ)は、液晶表示装置用素子1を液晶表示装置に組み込んだ場合に柱体3の長さに応じてセルギャップの大きさが規定されることから、0.5μmから10μmの範囲であることが好ましい。
第2の実施態様の液晶表示装置用素子1は、次のように製造することができる。
まず、基材2上に位相差層4を積層形成する。これは、第1の実施態様の液晶表示装置用素子1と同様にして具体的に実施することが可能である。
基材2に位相差層4が形成されると、その上に、たとえばフォトリソグラフィー法などを用いて、柱体3が形成される。具体的には、柱体3は、これを構成する上記したような樹脂材料Bを含有してなる樹脂組成物(柱体形成用樹脂組成物)を、位相差層4の表面上に塗布してこれを乾燥させ、柱体形成予定部分に対応したパターンを形成したマスク(柱体用フォトマスク)(図4(B)において符号201)を介して位相差層4上の柱体形成用樹脂組成物に向けて紫外線を照射した後、現像して柱体形成予定部分以外の柱体形成用樹脂組成物を取り除き、基材2をオーブンで加熱するなどといった公知方法を適宜用いて柱体形成予定部分に残された柱体形成用樹脂組成物を焼成することにより形成される。図4(B)の被覆層用フォトマスク201を用いた場合には、格子点状に光透過領域(図4(B)紙面中、白抜き表示領域部分)が形成されており、位相差層4上の柱体形成用樹脂組成物において露光される領域も格子点状となって、柱体5が格子点状の各位置に分散形成される。
さらに、位相差層4の表面上被覆層形成予定部cに被覆層5を形成する。被覆層5は、上記した第1の実施態様の液晶表示装置用素子1と同様にして形成することができる。
こうして、第2の実施態様の液晶表示装置用素子1を製造することができる。
なお、第2の実施態様の液晶表示装置用素子1を製造するにあたり、柱体3と被覆層5の形成の順序は特に限定されず、被覆層5を形成した後に柱体3を形成してもよい。
被覆層5の形成を行った後に柱体3を形成する方法は、上記した、柱体3を形成する工程と、被覆層5を形成の工程とを入れ替えることで具体的に実現可能である。
このような液晶表示装置用素子1では、柱体3と被覆層5は、互いに高さを異にして形成され、すなわち、柱体3の高さ(厚み)よりも被覆層5の高さ(厚み)のほうが薄くなっている(図3(A))。
また、第2の実施態様の液晶表示装置用素子1において、柱体3を構成する樹脂材料Bは、その樹脂材料Bをなす分子の構造内に重合性官能基を1分子中に5個あるいはその前後の個数備えるものが多いうえ、位相差層4に比べて架橋密度を高くすることができるものであるのが通常であるので、柱体3は位相差層4よりも剛性があり、また、柱体3を構成する樹脂材料Bがシール材と接触しても、位相差層4を構成する液晶材料がシール材と接触する場合に比べて、不純物などの漏出の虞が格段に小さいことから、樹脂材料Bは被覆層5を構成する樹脂材料Aの条件をよく満たしている。したがって、柱体3と被覆層5は、同一の組成物、例えば同一の光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂など、にて形成されていてもよい。
このような液晶表示装置用素子1は、例えば、次のように製造することが可能である。
まず、第1の実施態様の液晶表示装置用素子1と同様にして基材2上に位相差層4を形成する。ついで、位相差層4表面上に柱体3と被覆層5とを形成する。
柱体3と被覆層5は、同一の光硬化性樹脂を含む組成物(樹脂組成物)を位相差層4表面上に塗布して樹脂塗布膜を成膜するとともに樹脂塗布膜における柱体3と被覆層5を形成する所定の部分(柱体形成予定部と被覆層形成予定部c)に向けて紫外線を照射して光硬化性樹脂を硬化させて形成する。ただし、柱体3を形成する所定の部分(柱体形成予定部)に向けて照射される紫外線の照射線量(R1)と、被覆層5を形成する所定の部分(被覆層形成予定部c)に向けて照射される紫外線の照射線量(R2)とを異ならせて、樹脂塗布膜に向けて紫外線が照射される。
具体的には、樹脂塗布膜に向けて、柱体用フォトマスク201を介して紫外線を照射し(照射線量R1)、次いで、被覆層用フォトマスク200を介して紫外線を照射した(照射線量R2)後、現像して柱体形成予定部と被覆層形成予定部c以外の樹脂組成物を取り除き、基材2をオーブンで加熱するなどといった公知方法を適宜用いて柱体形成予定部と被覆層形成予定部cに残された樹脂組成物を焼成することにより形成される。
こうして液晶表示装置用素子1を得ることができる。
なお、図3(A)に示す例では、照射線量R1のほうが照射線量R2よりも大きい場合に相当しており、この場合、樹脂塗布膜を構成する樹脂組成物の硬化は、柱体形成予定部に対応する部分のほうが被覆層形成予定部に対応する部分よりも進行し、柱体3の厚みのほうが被覆層5の厚みよりも大きくなる。すなわち、柱体3の厚みと被覆層5の厚みを互いに異にして形成される状態となる。
位相差層4上に柱体3と被覆層5を形成するにあたり、上記のように2種類のフォトマスクを用いて柱体3と被覆層5を形成する場合に限定されず、次に示すように1種類のフォトマスクを用いて柱体3と被覆層5を形成することも可能である。
その場合、まず、フォトマスクとして、柱体形成予定部と被覆層形成予定部の両方に対応するパターンを形成したフォトマスク(柱体被覆層兼用フォトマスク)(図5において符号202)を作成しておく。
この柱体被覆層兼用フォトマスク202は、柱体形成予定部と被覆層形成予定部とで紫外線の透過率を異にしているものである。図5の柱体被覆層兼用フォトマスク202の例では、紫外線の透過率は柱体形成予定部(図5の紙面中、格子点状の白抜き表示領域)のほうが被覆層形成予定部(図5の紙面中、白抜きでも黒色ベタ塗りでもない額縁状の領域)よりも大きい。柱体被覆層兼用フォトマスク202において、紫外線の透過率は、柱体形成予定部と被覆層形成予定部のそれぞれに対応するパターンの部分で適宜設定される。柱体被覆層兼用フォトマスク202としては、面内方向に異なる所定の位置を通過する紫外線の透過率を互いに異ならせる多階調マスクを用いることができ、ハーフトーンマスクや、グレイトーンマスクを具体的に挙げることができる。ハーフトーンマスクや、グレイトーンマスクは、従前より公知な方法を適宜用採用して作成することが可能である。
次に、同一の光硬化性樹脂を含む樹脂組成物を位相差層4表面上に塗布して樹脂塗布膜を成膜するとともに、柱体被覆層兼用フォトマスク202を介して樹脂塗布膜における柱体形成予定部と被覆層形成予定部に向けて紫外線を照射する。その後、現像して柱体形成予定部と被覆層形成予定部以外の樹脂組成物を取り除き、基材2をオーブンで加熱するなどといった公知方法を適宜用いて柱体形成予定部と被覆層形成予定部に残された樹脂組成物を焼成することにより形成される。
なお、紫外線が柱体被覆層兼用フォトマスク202を介して樹脂塗布膜に照射されることで、紫外線の照射線量(柱体被覆層兼用フォトマスクを通過する前の紫外線の照射線量)が、紫外線の光源から樹脂塗布膜に向けて出射される段階において、柱体形成予定部に向かって進行する紫外線と、被覆層形成予定部に向かって進行する紫外線とで同じ場合にあっても、柱体被覆層兼用フォトマスクを通過して柱体を形成する所定の部分(柱体形成予定部)に照射される紫外線の照射線量と、柱体被覆層兼用フォトマスクを通過して被覆層を形成する所定の部分(被覆層形成予定部)に照射される紫外線の照射線量とは互いに異なる。したがって、柱体3と被覆層5は、厚みを互いに異にして形成される。
具体的には、柱体被覆層兼用フォトマスク202を通過して柱体形成予定部に照射される紫外線の照射線量は、柱体被覆層兼用フォトマスク202を通過して被覆層形成予定部に照射される紫外線の照射線量よりも多く、柱体3の厚みのほうが被覆層の厚みよりも厚くなる。
本発明の液晶表示装置用素子1(第1の実施態様の液晶表示装置用素子1、第2の実施態様の液晶表示装置用素子1)は、その厚み方向に進行する光のうち所定範囲の波長の可視光を通過させる着色層、光を遮る遮光層をなすブラックマトリクス、光を反射させる反射板、TFTなどのスイッチング素子、ITO膜などの透明電極で構成される層、などといった層構造を、さらに備えたものであってもよい。
本発明の液晶表示装置用素子1において、着色層13がさらに備えられている場合について説明する。特に、第2の実施形態の液晶表示装置用素子1において、基材2と位相差層4の間に、色パターンとブラックマトリクスとを有する着色層がさらに形成されている場合の実施態様(第3の実施態様の液晶表示装置用素子1)を一例として説明する(図6、7)。図6、図7は、着色層13が備えられている場合の液晶表示装置用素子1の実施例の一つを説明するための断面を示すそれぞれ概略断面図、概略平面図である。なお、図7では、説明の都合上、位相差層4を省略している。
液晶表示装置用素子1は、基材2の一方の表面に遮光性のブラックマトリクス15が縦横に格子状(格子縞状)に塗工形成され、これによりブラックマトリクス15の非形成領域が開口部20として格子点状に多数形成される。このとき、ブラックマトリクス15の形成領域が遮光部に相当し、開口部20が透過部に相当する。
ブラックマトリクス15は、例えば、金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性又は光吸収性を有する金属薄膜を基材2面にパターニングすることにより、形成することができる。また、ブラックマトリクス15は、黒色顔料を含む樹脂等の有機材料を所定形状に印刷することにより形成することも可能である。
ブラックマトリクス15を配置した基材2の上には、開口部20を覆うように三色の色パターン16,17,18が短冊状に配列されて、これら色パターン16,17,18とブラックマトリクス15とで着色層13が形成されている(図6、図7)。色パターン16,17,18は光透過性を有しており、透過する可視光を分光してそれぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光となす。したがって図7に二点鎖線で示すように、RGBの三色の色パターン(赤色(R)の色パターン16、緑色(G)の色パターン17、青色(B)の色パターン18)によってそれぞれ被覆された開口部20が形成されてそれぞれ画素をなし、そして三色の色パターン16,17,18によって被覆された三つの開口部20があわさって、一つの絵素21が形成される。
色パターン16,17,18は、色種ごとに、各色種に対応する顔料と樹脂などを配合してなる着色材料を溶媒に分散させた着色材料分散液を基材2に塗布して形成される塗膜を、例えばフォトリソグラフィー法で、例えば短冊状などといった所定形状にパターニングすることで形成されるほか、着色材料分散液を所定形状に基材2に塗布することによっても形成できる。
着色層13においてブラックマトリクス15が形成される場合、このブラックマトリクス15は、遮光部としての機能として、おおよそ短冊状に塗工される色パターン16,17,18の混色を防止する機能と、開口部20を平面視上区画化して、絵素21の輪郭を鮮明化する機能、さらにまた、液晶表示装置用素子1が液晶表示装置に組み込まれる際に液晶表示装置に通常配置され液晶を駆動させる(駆動液晶層に含まれる駆動液晶の配向性を制御する)ために用いられるTFTなどの駆動回路や電極などを、透過光から隠蔽する機能を併せもつ。
本発明の液晶表示装置用素子1においては、ブラックマトリクス15の配置形状は矩形格子状である場合に限定されず、ストライプ状や三角格子状などに形成してもよい。また着色層13を構成する色パターンについても、RGB方式の三色の場合のほか、その補色系であるCMY方式とすることも可能であり、さらに単色もしくは二色の場合、または四色以上の場合なども採りうる。また色パターンの形状も、短冊状にパターン形成する場合のほか、矩形状や三角形状などの微細パターンを基材2上に多数分散配置するパターンの場合など、目的に応じて種々のパターンを採りうる。
基材2上に着色層13が形成されると、着色層13を覆って位相差層4が形成される。位相差層4は、第1の実施態様の液晶表示装置や第2の実施態様の液晶表示装置と同様に、位相差層4を構成する液晶材料を調整し、着色層13上に塗布して液晶塗布膜を得て、その液晶塗布膜に含まれる液晶の分子に所定の配向性を付与して固定することにより作製することができる。
位相差層4の表面上には、柱体形成予定部や被覆層形成予定部にそれぞれ柱体3や被覆層5が配設されている。これら柱体3や被覆層5は、第1の実施態様の液晶表示装置や第2の実施態様の液晶表示装置と同様にして配設することができる。
上記第3の実施態様の液晶表示装置用素子1においては、色パターン16,17,18とブラックマトリクス15の両方を備えた着色層13を形成した場合を例として説明したが、その用途や光学的な仕様によっては色パターン16,17,18もしくはブラックマトリクス15のいずれかのみを備えるものであってもよい。例えば、液晶表示装置用素子1は、ブラックマトリクス15を不要とする場合(この場合には、着色層13は、色パターン16,17,18で構成される。)もある。
なお、本発明の液晶表示装置用素子1(第1の実施態様の液晶表示装置用素子、第2の実施態様の液晶表示装置用素子、第3の実施態様の液晶表示装置用素子)を説明するにあたり、位相差層4として単一層積層された場合について詳細に説明したが、これに限定されず、液晶表示装置用素子1は、必要に応じて、位相差層4を、複数種類、複数層形成されていてもよい。
例えば、液晶表示装置用素子1は、基材2上に位相差層4として、正のCプレートとしての光学補償機能を有する層と、正のAプレートとしての光学補償機能を有する層とを2層積層してもよい。
次に、本発明の液晶表示装置用素子1を用いた液晶表示装置について説明する。
なお、液晶表示装置としては、IPSモードであって、着色層13と柱体3を備える液晶表示装置用素子1(第3の実施態様の液晶表示装置用素子1)を組み込んでいる場合(図8)、を例として説明する。図8は、液晶表示装置51を説明するための図である。
本発明の液晶表示装置51は、図8に示すように、対向する一対の基板25(対向基板22、TFTアレイ基板23)の間に、電界の付与された状態で電界の変化に応じて駆動可能(配向を変動可能)に液晶表示装置の駆動用の液晶組成物(駆動用液晶組成物24)を封入して駆動液晶層28を形成しており、一対の基板25の間の空間から駆動液晶組成物24が漏出しないようにシール部8が形成されている。そして、液晶表示装置51は、TFTアレイ基板23の厚さ方向に、TFTアレイ基板23の外側位置からTFTアレイ基板23に向かって光を照射するバックライト(図示しない)を配設して構成されている。
対向基板22は、基材2上に、ブラックマトリクス15と色パターン16,17,18を備えた着色層13を積層している。対向基板22は、着色層13を被覆して位相差層4を積層形成している。
さらに対向基板22における位相差層4上に、柱体3が、その基底部(図5において上方側の部分)を、それぞれ位相差層4表面上の柱体形成予定部に、フォトリソグラフィー法などの公知方法を用いて分散配置され、さらに、被覆層5が、被覆層形成予定部に、フォトリソグラフィー法などの公知方法を用いて配置される。
TFTアレイ基板23は、基材2と同様に基材形成材にて形成可能で透明な基材41のインセル側(駆動用液晶組成物24の封入される側)の面上に、駆動液晶層28の液晶44に対する電圧の印加有無のスイッチング駆動する駆動用回路をなすTFTと、これにより駆動液晶層28への電圧の負荷量が制御される液晶駆動用電極とを設けている(図示せず)。液晶駆動用電極は、駆動液晶層28の面内方向の電場を生じさせるとともに、駆動液晶層28の面内方向に液晶44を適宜配向させる。
対向基板22とTFTアレイ基板23とは、対面配置され、TFTアレイ基板23には、そのインセル側の最表面に、多数の柱体3の先端部(同図における下方)が当接する。ここに、柱体3は、対向基板22とTFTアレイ基板23との間に介在して、両方の基板22,23を一定の間隔を開けて対面配置された状態にて保つ機能、いわゆる支柱としての機能、を発揮する。
また、対向基板22とTFTアレイ基板23とを対面配置する際、対向基板22の液晶画面用領域に駆動用液晶組成物24が滴下され、さらに対向基板22のシール部対応領域にシール材が塗布される。この場合平面視上、シール部対応領域は、液晶画面用領域の周囲を取り囲むように形成されており、さらに被覆層5の形成された領域内に形成される。
したがってシール材の塗布にあたり、シール材の塗布範囲としては、対向基板22面内方向について、被覆層5上に塗布されることになる。また、シール材の塗布厚みは、対向基板22の厚み方向について、対向基板22とTFTアレイ基板23との間に隙間を生じないような厚みとなっている。このようにシール材が塗布されると、シール材が硬化されてシール部対応領域に塗布されたシール材がシール部8をなす。図8の例では、駆動液晶層の周囲をその面内方向に取り囲んで被覆層5とシール部8が額縁状に形成される。
なお、シール材としては、通常の液晶表示装置に用いられるものであれば特に限定されず、例えば樹脂を含有するシール材が用いられる。シール材に含まれる樹脂としては、例えば、ビスフェノールF型、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、もしくはトリフェノールメタン型エポキシ樹脂、等の1種または2種以上が用いられ、具体的には例えば、三井化学製のシール材XN−5A等が用いられる。このシール材は、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、アニリンブラック、シアニンブラック等の微粒子、タルク、マイカ等の無機質充填剤、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、セロソルブ、カルビトール類等の溶剤、イミダゾール類、トリフェニルホスフィンビシクロウンデセン、トリスジメチルアミノメチルフェノール等の硬化促進剤等を挙げることができる。
液晶表示装置51において、対向基板22には、基板2の厚さ方向の表面のうち着色層13の非形成面の上には、直線偏光板33が配置されている。そして、TFTアレイ基板23には、そのアウトセル側(インセル側とは逆側)の面に、直線偏光板42が配置されている。対向基板22の直線偏光板33と、TFTアレイ基板23の直線偏光板42とは、互いの透過軸が直交するように配されている。なお、図中、直線偏光板33、42の透過軸は矢印にて示す。
液晶表示装置51には、必要に応じて、対向基板22における直線偏光板33の内側に、位相差フィルム30が介在配置されていてもよい。図8に示す例では、液晶表示装置51として、位相差層4を正のCプレートの光学補償機能を有する層として形成した液晶表示装置用素子1を組み込み、且つ、位相差フィルム30として、正のAプレートとしての光学補償機能を有するものが示されている。図8中、位相差層4、位相差フィルム30の光学補償機能を規定する複屈折特性は、それぞれ屈折率楕円体100,101にて示す。
この液晶表示装置51では、対向基板22において、基材2と着色層13と位相差層4が積層されてなる層構造が備えられており、この層構造は、本発明における液晶表示装置用素子1を構成する。すなわち、液晶表示装置51には、液晶表示装置用素子1が組み込まれて構成されている。
なお、液晶表示装置51においては、位相差フィルム30は、必要に応じて複数枚、複数種類介在させていてもよい。したがって、例えば、液晶表示装置51は、位相差層4を正のCプレートの光学補償機能を有する層として形成した液晶表示装置用素子1を組み込み、且つ、位相差フィルム30として、正のAプレートとしての光学補償機能を有するもの、さらに負のCプレートの機能を有するものなど、その他の機能を有するものと、2枚以上を積層させて構成されていてもよい。
なお、本明細書において、液晶表示装置用素子1を組み込む液晶表示装置がIPSモードである場合について説明したが、このことは、この液晶表示装置用素子1を例えばMVAモードやOCBモード(Optically Compensated Birefringenceモード)などといった他のモードの液晶表示装置に使用されることを否定するものではない。
次に、本発明の液晶表示装置用素子1についてより詳細な実施例を示す。なお、実施例では、位相差層4が正のCプレートとしての光学補償機能を有する層である場合の液晶表示装置用素子の例について詳細に示す。
実施例1
基材としてのガラス基板(厚み0.7mm、溶融成形ホウケイ酸薄板ガラス)(コーニング社製、品番:7059)を準備し、着色材料分散液を用いてガラス基板に着色層を形成した。着色層の形成は次に示すようにして実施された。
[着色層の形成]
<着色層の形成に用いる着色材料分散液の調整>
ブラックマトリクス(BM)、及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の色パターンの着色材料分散液として、顔料分散型フォトレジストを用いた。顔料分散型フォトレジストは、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合することにより得られた。得られた顔料分散型フォトレジストは、下記に示すような組成である。尚、分散機としては、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いた。
(ブラックマトリクス用フォトレジスト)
・黒顔料・・・・・14.0重量部
(大日精化工業(株)製、TMブラック#9550)
・分散剤・・・・・1.2重量部
(ビックケミー(株)製、Disperbyk111)
・ポリマー・・・・・2.8重量部
(昭和高分子(株)製、VR60)
・モノマー・・・・・3.5重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・添加剤・・・・・0.7重量部
(綜研化学(株)製L−20)
・開始剤・・・・・1.6重量部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)
・開始剤・・・・・0.3重量部
(4,4´−ジエチルアミノベンゾフェノン)
・開始剤・・・・・0.1重量部
(2,4−ジエチルチオキサントン)
・溶剤・・・・・75.8重量部
(エチレングリコールモノブチルエーテル)
(赤色(R)着色画素用フォトレジスト)
・赤顔料・・・・・4.8重量部
(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・1.2重量部
(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
(緑色(G)着色画素用フォトレジスト)
・緑顔料・・・・・3.7重量部
(C.I.PG7(大日精化製、セイカファストグリーン5316P))
・黄顔料・・・・・2.3重量部
(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
(青色(B)着色画素用フォトレジスト)
・青顔料・・・・・4.6重量部
(C.I.PB15:6(BASF社製、ヘリオゲンブルーL6700F))
・紫顔料・・・・・1.4重量部
(C.I.PV23(クラリアント社製、フォスタパームRL−NF))
・顔料誘導体・・・・・0.6重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース12000)
・分散剤・・・・・2.4重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
尚、上記ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
<着色層のパターン形成>
洗浄処理を施したガラス基板上面に、上記各色の着色材料分散液を次に示すように塗布し、ガラス基板に着色層を積層形成した。
まず、ガラス基板に、上述で調製したBM用フォトレジストをスピンコート法で塗布し、90℃、3分間の条件でプリベーク(予備焼成)し、所定のパターンに形成されたマスクを用いて露光(照射線量100mJ/cm2)し、続いて0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、30分間ポストベーク(焼成)し、厚さが1.2μmのBMを形成したガラス基板(BM形成基材)を作製した。BMは、平面視上縦横格子状のパターンに形成された。
次に、予め赤色の色パターンに対応する位置に対応するように調整した赤色(R)の顔料分散型フォトレジストを上記BM形成基材上にスピンコート法で塗布し、80℃、5分間の条件でプリベークし、各色の色パターンに応じた所定の着色パターン用フォトマスクを用いて、紫外線露光(照射線量300mJ/cm2)した。さらに、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、60分間ポストベーク(焼成)し、BMの配置パターンに対して所定の位置に膜厚2.6μmの赤色(R)の色パターンを短冊状に形成した。このとき、色パターンは、その短冊状の長手方向が、BMの格子状パターンにおける縦横2方向に伸びるフォトレジストのパターンのうち一方向に伸びるパターンに対して平行するように、形成されていた。
続いて、上記赤色(R)の色パターンのパターン形成方法と同様の方法を用いて、緑色(G)の色パターン(膜厚2.6μm)、青色(B)の色パターン(膜厚2.6μm)それぞれにつき、パターン形成した。
こうして、ガラス基板上に、BMおよび、赤色の色パターン、緑色の色パターン、青色の色パターンから構成される着色層が形成された。
着色層を備えたガラス基板が得られると、これをスピンコーター(ミカサ社製、1H−360S)に設置し、着色層の表面上に、次に示すようにして調整された液晶材料をスピンコーティングすることにより、液晶材料3(mL)を基材の上に塗布して液晶塗布膜を作製した。なお、この例では、液晶塗布膜は、着色層の上に直接に着色層を被覆して形成されることになる。
[液晶材料の作成]
重合性液晶分子としての下記化8に示す化合物(a)、(b)、(c)、(d)と、光重合開始剤、シランカップリング剤、溶媒を混合して下記組成の液晶材料を調整した。
<液晶材料の組成>
化合物(a) 8.3 重量部
化合物(b) 4.7 重量部
化合物(c) 5.4 重量部
化合物(d) 5.4 重量部)
光重合開始剤 1.3 重量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア907)
シランカップリング剤 0.05 重量部
(アミン基含有シランカップリング剤(GE東芝シリコーン社製、TSL−8331))
溶媒 75.0 重量部
(クロロベンゼン)
[液晶塗布膜に含まれる液晶についての液晶相状態の形成]
液晶塗布膜の形成された基板を、ホットプレート上にて100℃、5分間加熱して、溶媒を除去するとともに液晶塗布膜中に含まれる液晶分子を液晶相に転移させた。この液晶相への転移の確認は、液晶塗布膜が白濁状態から透明状態となったことを目視にて確認することで行われた。このとき、液晶塗布膜中の液晶分子はホメオトロピック配向した状態となっている。
[液晶分子の架橋重合反応]
次に、窒素雰囲気下で、透明状態の液晶塗布膜全面に、紫外線照射装置(ハリソン東芝ライティング社製、「商品名TOSCURE751」)を用いて照射線量が200mJ/cm2の紫外線(365nm)を60秒間照射して、230℃のホットプレート上に1時間静置して液晶塗布膜中の液晶分子を架橋重合反応させて液晶分子をこれに配向性を付与した状態で固定し、液晶塗布膜を位相差層となし、基材上に着色層と位相差層を積層した構造体(位相差層形成基材)を得た。なお、位相差層の厚みは、4.5μmであった。位相差層の厚みは、触針式膜厚計アルファステップ(テンコール社製)を用いて測定された。
得られた位相差層形成基材の位相差層表面上に、次のように、柱体と被覆層をフォトリソグラフィー法にて形成した。
[柱体と被覆層の作成]
<柱体形成予定部と被覆層形成予定部の設定>
得られた位相差層形成基材の位相差層表面上において、平面視上、非画素部にあって、ブラックマトリクスの縦横2方向に伸びる領域のうち短冊状の色パターンの長手方向に対して平行する領域に重なる領域内に柱体形成予定部を定めた。このとき、柱体形成予定部は、その位置や柱体1つあたりの領域の面積などについて、位相差層表面の240μm×240μmの矩形領域あたり断面積100μm2の円柱状の柱体が1個の割合(1個/(240μm)2の分散度(密度))で、10cm×10cmの矩形領域内に分布して配設されるようなパターンにて設定された。
また、位相差層形成基材の位相差層表面上において、被覆層形成予定部が定められた。被覆層形成予定部は、液晶表示装置用素子を組み込んだ液晶表示装置を想定し、液晶表示装置におけるシール部として設計される部分、液晶表示画面に対応する部分として想定される部分をそれぞれ定め、平面視上、その部分に対して位相差層表面と重なり合う領域(シール部対応領域)を特定するとともに、液晶画面用領域を特定した。そして、このシール部対応領域を含む部分であって且つ非画素部の領域にある部分より、被覆層形成予定部が定められた。被覆層形成予定部は、幅1.5mmの矩形状(内寸法10cm×10cm)で、液晶画面用領域を取り囲む額縁状の形状のパターンに設定された。
<柱体と被覆層を構成する樹脂材料の調整>
柱体と被覆層を構成する樹脂材料としては、同一のものが用いられた。すなわち、柱体と被覆層のいずれについても、樹脂材料を含有する樹脂組成物として、光硬化性樹脂としての紫外線硬化性の透明なネガ型レジスト(JSR社製、NN780)が用いられた。
<柱体と被覆層の形成に用いるフォトマスクの作成>
フォトマスクについて、柱体形成予定部のパターンに対応したパターンに形成されたフォトマスクを作成して柱体用フォトマスクとなし、被覆層形成予定部のパターンに対応したパターンに形成されたフォトマスクを作成して被覆層用フォトマスクとなし、2種類のフォトマスクを作成した。
<柱体と被覆層の形成>
位相差層形成基材の位相差層表面上に、上記ネガ型レジストを、一面ベタに塗布して樹脂塗布膜を成膜し、温度80℃で5分間の条件にてプリベークを実施した後、この樹脂塗布膜に対し、柱体用フォトマスクを介して365nmの紫外線(照射線量100mJ)を照射し(露光し)、次いで、柱体用フォトマスクに変えて被覆層用フォトマスクを介して365nmの紫外線(照射線量30mJ)を照射し(露光し)、温度200℃で60分間の条件にてポストベークを実施し、さらにその後、現像を行った。こうして、位相差層表面上に柱体と被覆層を形成して、液晶表示装置用素子を得た。なお、この液晶表示装置用素子において、柱体の高さ(厚み)は、4.5μm、被覆層の厚みは1.5μmであった。
得られた液晶表示装置用素子を用いて、これを組み込んだ液晶表示装置を作製し、光学補償性能試験を行った。光学補償性能試験としては、液晶表示装置を暗表示した際における、液晶表示画面における表示ムラの状態の測定がなされた。
[液晶表示装置の作成と液晶表示画面の表示ムラの測定]
<液晶表示装置の作成>
まず、表面上に画素ごとにTFTと電極とを配設されたガラス基板(TFTアレイ基板)を用意した。その一方で、液晶表示装置に封入される液晶(駆動液晶)の分子を水平に配向させる水平配向膜を構成する配向膜組成物としてAL1254(JSR社製)が準備された。この配向膜組成物を、フレキソ印刷法を用いて、用意されたガラス基板のTFTの形成面上に、全面に塗布して塗布膜を得て、この塗布膜を焼成し、さらにその塗布膜の表面にレーヨン製ラビング布を用いてラビング処理を施して、その塗布膜を水平配向膜となした。
つぎに、上記にて得られた液晶表示装置用素子と、水平配向膜やTFTや電極を形成したTFTアレイ基板とについて、液晶表示装置用素子の柱体および被覆層の形成面とTFTアレイ基板の水平配向膜の形成面とを対面させるとともに、さらにエポキシ樹脂をシール材とし、そのシール材を液晶表示装置用素子の被覆層上に塗布してTFTアレイ基板を重ね合わせ、シール材と液晶表示装置用素子の被覆層との間およびこれに対向するTFTアレイ基板とシール材との間に隙間を生じないようにシールし、150℃で0.3kg/m2の圧力をかけることで液晶表示装置用素子とこれに対向するTFTアレイ基板とを接合するとともに、さらに、対面する液晶表示装置用素子とTFTアレイ基板との間に形成された空間部に、電場の変化に応じて配向を変化させる駆動用の液晶(MLC6608,メルク社製)を真空注入法を用いて封入して駆動液晶層を形成し、温度;110℃で1時間加熱(アフターアニール)して流動方向をキャンセルして、一体の構造体(液晶セル)を得た。この液晶セルにおいては、シール部は、内寸法が10cm×10cmの正方形に形成された。そして、得られた液晶セルを、温度65℃、湿度95%の雰囲気下に500時間放置し、その後、この液晶セルの厚さ方向(駆動液晶層の厚さ方向)外側位置に、2枚の偏光板を、液晶セルを挟みこむとともに透過軸を直交させて配置して貼り付け、液晶表示装置が作製された。この液晶表示装置は、液晶表示装置用素子を組み込んだ基板(対向基板)と、TFTと電極を配置したTFTアレイ基板とでなる一対の基板の間に駆動液晶層が形成された構造を備えている。
<表示ムラの測定>
得られた液晶表示装置のTFTアレイ基板側の外側位置から光(白色光)を照射するとともに、液晶表示画面を暗表示させて、液晶表示画面のシール部と駆動液晶層との境界位置付近における表示ムラの状態を目視にて次のように観測して、液晶表示装置の良否を判定した。
実施例1に基づき液晶表示装置用素子を30枚得て、それぞれ液晶表示装置(30個)を作成し、表示ムラの観測を行った。表示ムラの状態の観測は、まず液晶表示画面の中心位置の状態を基準としてシール部と駆動液晶層との境界位置に表示ムラが認識されるかについて観察し、さらに表示ムラが認められる場合には、その表示ムラの認識される領域が、シール部と駆動液晶層との境界位置を基準として液晶表示画面の中心位置に向かってどの程度までひろがっているかを観測することで実施され、次のように評価した。
液晶表示装置の評価
◎:表示ムラが認識されない、もしくは、表示ムラが認識されるものの、シール部と駆動液晶層との境界位置からの距離にして200μm未満の範囲内にすぎない。
○:表示ムラが、シール部と駆動液晶層との境界位置からの距離にして200μm以上の範囲に認識されるものの、それでも、シール部と駆動液晶層との境界位置からの距離にして500μm未満の範囲に留まる。
△:表示ムラが、シール部と駆動液晶層との境界位置からの距離にして500μm以上の範囲に認識されるが、シール部と駆動液晶層との境界位置からの距離にして700μm未満の範囲に収められる。
×:表示ムラが、シール部と駆動液晶層との境界位置からの距離にして700μm以上の範囲に広がり、かつ、表示ムラの程度は、液晶表示画面の表示機能の低下を確認できる程度にまで及んでいる。
液晶表示装置30個について、液晶表示装置の評価を行った結果、◎が27個(90%)、○が3個(10%)、△、×はともにゼロであり、表示ムラの抑えられた液晶表示装置が効果的に得られることが確認された。
実施例2
実施例1で用いたフォトマスクを、柱体形成予定部のパターンに対応したパターンと、被覆層形成予定部のパターンに対応したパターンの両方のパターンを形成した柱体被覆層兼用フォトマスクとし、また、その柱体被覆層兼用フォトマスクとして、被覆層形成予定部に対応するパターンを形成している部分の紫外線透過率を、柱体形成予定部のパターンに対応したパターンを形成している部分の紫外線透過率の30%にするハーフトーンマスク1種類を用い、柱体形成予定部のパターン、被覆層形成予定部のパターンに対応したパターンを通過する紫外線の照射線量をそれぞれ100mJ、30mJとして、位相差層上に柱体と被覆層を形成したほかは、実施例1と同様にして、液晶表示装置用素子を得た。なお、この液晶表示装置用素子において、柱体の厚みは4.5μm、被覆層の厚みは1.5μmであった。
さらに、実施例1の液晶表示装置用素子に替えて実施例2の液晶表示装置用素子を用いたほかは実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成し、さらにその液晶表示装置について表示ムラの観測を行った。液晶表示装置30個について、液晶表示装置の評価を行った結果、◎が24個(80%)、○が6個(20%)、△、×はともにゼロであり、表示ムラの抑えられた液晶表示装置が効果的に得られることが確認された。
比較例1
被覆層を設けなかったほかは実施例1と同様にして、基材上に着色層と位相差層を形成し、さらに柱体を配設したもの(比較用素子)を得た。この比較用素子において、柱体の厚みは4.5μmであった。
さらに、実施例1の液晶表示装置用素子に替えて比較用素子を用いたほかは、実施例1と同様にして液晶表示装置を作成し、さらにその液晶表示装置について表示ムラの観測を行った。液晶表示装置30個について、液晶表示装置の評価を行った結果、◎、○はともにゼロ個、△は15個(50%)、×は15個(50%)であり、表示ムラを抑えられた液晶表示装置が効果的には得られていないことが確認された。