JP2008247725A - セラミックス・有機物複合構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
まず、本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法は、下記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを混合する混合工程と、上記混合工程で得られたセラミックス・有機物複合体をゲル化するゲル化工程と、を有することを特徴とするものである。
図1は本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法の流れ(セラミックス・有機物複合構造体作製フロー図)の一例を示したものである。図1に示すように、この例では、まず、環状カリックスアレーン合成工程によって、上記一般式(1)に示される環状カリックスアレーンを合成する。次に、上記環状カリックスアレーン合成工程の後、図1に示すように混合工程を経る。上記混合工程においては、上記環状カリックスアレーン合成工程で得られた環状カリックスアレーンを、所定の温度で、例えばエタノール等の親水性溶媒中に溶解させる。これに、さらに所望のセラミックス微粒子を添加して混合することにより、図2で示される上記一般式(1)のレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーン1の親水基R1を上記セラミックス微粒子表面の親水基に溶媒和した親水性溶媒に付着させて、図3で例示するようにセラミックス微粒子2と、それを包接する環状カリックスアレーン部3(複数の環状カリックスアレーン1からなる)とからなるセラミックス・有機物複合体4を得ることができる。上記混合工程の後、通常、水添加工程が行われる。上記水添加工程においては、上記混合工程において用いるエタノール等の親水性溶媒に水を加える。これにより、環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子との間の水素結合を安定化させることができる。さらに、上記水添加工程の後に、ゲル化工程が行われる。上記ゲル化工程においては、上記環状カリックスアレーン合成工程、混合工程、水添加工程を経て得られた図3で示されるセラミックス・有機物複合体4を含有した溶液を所定の温度まで冷却してゲル化する。これにより、図4に示されるような、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体5を得ることができる。
以下、本発明に必須の工程である混合工程、ゲル化工程と、その他の工程について詳細に説明する。
本発明における混合工程について説明する。本発明における混合工程とは、例えば、図1で示すセラミックス・有機物複合構造体の作製フロー図において、後述する環状カリックスアレーン合成工程で得られた環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを所定の温度で、所定の溶媒中にて混合することにより、環状カリックスアレーンによって包接されたセラミックス微粒子、すなわち、セラミックス・有機物複合体を得る工程である。具体的には、エタノール溶媒中に環状カリックスアレーンを添加して、所定の温度で溶解させた後、さらに所望のセラミックス微粒子を、所定の量、添加して攪拌・超音波分散等する方法が挙げられる。
上記R2としては、通常、炭素数が1〜17までの直鎖状アルキル基、またはフェニル基である。上記R2が直鎖状アルキル基の場合には、中でも炭素数が10、11、17のものが後述するゲル化工程において、ゲル化しやすい等の理由から好ましい。
また、本発明においては、上記親水性溶媒に、後述する水添加工程を経ることにより水を添加することが好ましい。水は、上記セラミックス微粒子の表面の親水基と水和して、この水和した水により環状カリックスアレーンの親水基の水素結合を安定化させることができる。このため、例えば、環状カリックスアレーンにより包接されていないセラミックス微粒子表面部分が減少することなどにより、セラミックス微粒子を環状カリックスアレーンがより安定的に、全体を包接することができる。したがって、後述するゲル化工程においてゲル化した際に、配列の乱れ等が少なく、セラミックス微粒子が3次元的により規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる。
次に、本発明におけるゲル化工程について説明する。本発明におけるゲル化工程とは、例えば、図1で示すセラミックス・有機物複合構造体の作製フロー図において、上述した混合工程、水添加工程を経ることにより得られた環状カリックスアレーンによって包接されたセラミックス微粒子、すなわち、セラミックス・有機物複合体をゲル化させることにより、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得る工程である。より具体的な方法としては、上記混合工程、水添加工程を経て得られた、上記セラミックス・有機物複合体を含有した溶液の温度を下げて冷却することにより、セラミックス・有機物複合体をゲル化させ、その後、乾燥等して不純物を除去することにより上記セラミックス・有機物複合構造体を得る方法等が挙げられる。
本発明においては、本発明に必須の工程である上記混合工程、ゲル化工程の他に、必要に応じて、環状カリックスアレーン合成工程、水添加工程を行うことができる。以下、これらについて詳細に説明する。
(1)環状カリックスアレーン合成工程
本発明における環状カリックスアレーン合成工程について説明する。本発明における環状カリックスアレーン合成工程とは、例えば、図1で示されるセラミックス・有機物複合構造体の作製フロー図において、上述した混合工程において添加され用いられる環状カリックスアレーンを合成する工程である。このような環状カリックスアレーン合成工程について、以下に説明する。
上記環状カリックスアレーンの製造方法としては、上記一般式(1)に示される所望のレゾルシン4量体からなる環状カリックスアレーンが得られるものであれば、特に限定されるものではない。具体的な方法としては、レゾルシノールあるいはレゾルシノール誘導体とアルデヒド化合物(パラホルムアルデヒドあるいはパラアルデヒド)とを所定のモル比で、エタノールあるいは酢酸溶媒中塩酸あるいは硫酸触媒下、所定の温度で数時間反応させることで環状化合物、線状化合物を合成することができる。この合成された生成物から、メタノール等で再結晶することにより単離して、環状カリックスアレーンのみを得ることができる。例えば、下記式(2)に示されるような反応を挙げることができ、生成物から、環状カリックスアレーンのみを単離して得ることができる。
次に、本発明における水添加工程について説明する。本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法においては、上記水添加工程を有することが好ましい。本発明における水添加工程とは、例えば、図1で示すセラミックス・有機物複合構造体の作製フロー図において、上述した混合工程で得られた環状カリックスアレーンにより包接されたセラミックス微粒子、すなわち、セラミックス・有機物複合体を含有した親水性溶媒中に水を添加することにより、上記セラミックス微粒子の表面の親水基と水和して、この水和した水により環状カリックスアレーンの親水基の水素結合を安定化させる工程である。
本発明により得られるセラミックス・有機物複合構造体の用途としては、セラミックスの種類等により変化するものであり、特に限定されるものではないが、例えば、触媒等として、用いることができる。
次に、本発明のセラミックス焼結体の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のセラミックス焼結体の製造方法は、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法」により得られたセラミックス・有機物複合構造体を、焼結する焼結工程を有することを特徴とするものである。
図5は本発明のセラミックス焼結体の製造方法の流れ(セラミックス焼結体作製フロー図)の一例を示したものである。図5に示すように、本発明のセラミックス焼結体の製造方法においては、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法」により得られたセラミックス・有機物複合構造体を焼結して、セラミックス・有機物複合構造体における有機物(環状カリックスアレーン)が焼成してなくなり、3次元的に規則的に配列したセラミックス微粒子が焼結されて緻密な焼結体を得ることができる焼結工程を有する。
このようなセラミックス焼結体の製造方法においては、少なくとも上記焼結工程、を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他の工程を有していても良い。
以下、本発明に必須の工程である焼結工程と、その他の工程について詳細に説明する。
本発明における焼結工程について説明する。本発明における焼結工程とは、図5で示すセラミックス焼結体作製フロー図において、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法」により得られた、3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を焼結して、高密度セラミックスを得る工程である。例えば、常圧焼結法等を用いて、所定の温度履歴にしたがって、所定の温度にて所定の時間焼結する方法等が挙げられる。
一般的なセラミックスの焼結においては、通常、バインダーを添加してセラミックス原料粒子同士の結合力を改善し、粒子の配列を良好にして焼結する。これにより、より高密度なセラミックスを得ることができる。本発明においては、上記セラミックス・有機物複合構造体における有機物(環状カリックスアレーン)が3次元的に規則的に配列したセラミックス微粒子を取り囲んで、優れたバインダーとしての役割を果たしているため、これを焼結することにより高密度セラミックスを得ることができるものと推測される。
また、上記焼結を行う際の、焼結条件、例えば、雰囲気、焼結温度、焼結時間等については、所望の緻密な焼結体を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、所望の条件に応じて適宜選択することができる。
本発明により得られるセラミックス焼結体の用途としては、セラミックスの種類等により変化するものであり、特に限定されるものではないが、例えば、磁性材料、電子材料、光学材料、構造材料等として、用いることができる。
本発明のセラミックス・有機物複合構造体について、以下詳細に説明する。
本発明のセラミックス・有機物複合構造体は、上記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンによりセラミックス微粒子が包接され、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列していることを特徴とするものである。
図4は本発明のセラミックス・有機物複合構造体の構成の一例を示す模式図である。本発明のセラミックス・有機物複合構造体はゲル状であり、図4に示すように、本発明のセラミックス・有機物複合構造体5は、セラミックス微粒子2と、その周りに包接して取り囲んでいる環状カリックスアレーン部3とを有するものである。また、上記環状カリックスアレーン部3同士のアルキル鎖の結合、親水基部分の水素結合により3次元的に規則的に配列している。
以下、本発明のセラミックス・有機物複合構造体について、構成ごとに詳細に説明する。
本発明における環状カリックスアレーン部は、複数の環状カリックスアレーンがセラミックス微粒子を包接することにより形成されている。上記環状カリックスアレーンとしては、下記一般式(1)で示されるものであり、図2で示されるような立体構造を持ち、親水基R1および疎水基R2を有している。親水基R1はセラミックス微粒子に包接した状態で、親水基R1同士で水素結合を作っており、また、疎水基R2はセラミックス微粒子とは逆方向に形成されており、疎水基R2同士で結合している。このため、図4に例示するように、上記環状カリックスアレーン部が包接したセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列することができる。
本発明に用いられるセラミックス微粒子は、ゲル状となった上記環状カリックスアレーン部によって包接されることにより、3次元的に規則的に配列することができる。
本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法としては、上記のセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法」に記載した製造方法により得ることができる。
本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法としては、セラミックスの種類等により変化するものであり、特に限定されるものではない。用途の例としては、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法4.用途」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比1:1で、20mlのエタノール中、1.5ml塩酸(HCl)触媒下、75℃で3時間反応させることで合成して、環状カリックスアレーンを得た。反応後の溶液中にメタノールを添加して、再結晶することで生成物の中から環状カリックスアレーンを単離した。
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比5:4で、20mlエタノール中、1.5ml塩酸(HCl)触媒下、75℃で3時間反応させることで合成して、環状カリックスアレーンを得た。反応後の溶液中にメタノールを添加して、再結晶することで生成物の中から環状カリックスアレーンを単離した。
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比1:2で、50mlエタノール中、1.5ml塩酸(HCl)触媒下、75℃で6時間反応させることで合成して、線状体を得た。反応後の溶液中にアセトンを添加して、カリックス部を抽出除去した。これをTHFに溶かして再沈させることで、線状体を単離した。
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比2:3で、45mlエタノール中、1.5ml塩酸(HCl)触媒下、75℃で3時間反応させることで合成して、線状体を得た。反応後の溶液中にアセトンを添加して、カリックス部を抽出除去した。これをTHFに溶かして再沈させることで、線状体を単離した。
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比1:2で、20mlエタノール中、0.75ml塩酸(HCl)触媒下、50℃で4.5時間反応させることで合成して、ゲル状物質(線状体)を得た。反応後の溶液中にアセトンを添加して、カリックス部を抽出除去した。これをTHFに溶かして再沈させることで、線状体を単離した。
実験例1、2で得られた環状カリックスアレーンのNMR(核磁気共鳴、Nuclear Magnetic Resonance)測定を行った。実験例1、2についての測定結果を図6に示す。図6に示されるように、実験例1、2においては、環状カリックスアレーンを示すNMRスペクトルが得られ、環状カリックスアレーンが得られたことが確認できた。
(セラミックス・有機物複合構造体作製)
実験例1で得られた環状カリックスアレーンを用いて、エタノール溶媒中、環状カリックスアレーンを1〜20wt%(図7参照)、10〜70nmの粒径を持つシリカ微粒子を1〜5wt%(図7参照、5wt%の場合)添加し、混合した(この時点では、溶液で、ゲル化はしていない)。次に、ここに、10〜50wt%の水を添加してセラミックス・有機物複合構造体を作製した。
[実施例2]
実験例2で得られた環状カリックスアレーンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セラミックス・有機物複合構造体を作製した。
[比較例1]
実験例3で得られた線状体を用いて、エタノール溶媒中、線状体を1〜20wt%、10〜70nmの粒径を持つシリカ微粒子を1〜5wt%添加し、混合した。次に、ここに、10〜50wt%の水を添加して、セラミックス・有機物複合構造体を作製した。
[比較例2]
実験例4で得られた線状体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、セラミックス・有機物複合構造体を作製した。
[比較例3]
実験例5で得られた線状体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、セラミックス・有機物複合構造体を作製した。
実施例1、実施例2および比較例1〜3で得られたセラミックス・有機物複合体に対して、ゲル化したかどうか確認を行った。実施例1、実施例2においては、ゲル化が起こり、シリカ微粒子が3次元的に規則的に配列したゲル状組織体が得られた。図7は、実施例1において、環状カリックスアレーンの濃度を変化させた場合のゾル‐ゲル転移温度を測定した実験結果である。図7においては、シリカの含有量は5wt%で、エタノールと、添加した水とのモル比は2:1である。図7に示されるように、実施例1においては、幅広い環状カリックスアレーン濃度範囲でゲル化できることがわかった。また、図8は、実施例で得られたゲル状組織体の代表的なTEM写真である。図8に示されるように、実施例においてはナノメートルサイズのSiO2(シリカ)微粒子(黒色部分)が、環状カリックスアレーン(白色部分)により、包接され、3次元的に規則的に配列していることが確認された。一方、比較例1〜3では、ゲル化は起こらず、粒子配列も起こらなかった。線状体は、環状体(環状カリックスアレーン)に比べて、溶媒への溶解性が悪い。これは親水部と疎水部の配置が環状体の場合には相対する位置となっているのに対し、線状体ではランダムになっていることが原因と考えられる。こうした溶媒への溶解性が原因となり、ゲル化が起こらず、粒子配列も起こらなかったものと推測される。
2 … セラミックス微粒子
3 … 環状カリックスアレーン部
4 … セラミックス・有機物複合体
5 … 3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体
Claims (3)
- 請求項1に記載のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法により得られたセラミックス・有機物複合構造体を、焼結する焼結工程を有することを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
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