JP2008246507A - Ni基合金フラックス入りワイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】9%Ni鋼又はNi基合金の溶接において、水平すみ肉溶接又は横向溶接に際し、耐ピット性に優れると共に溶接作業性及びビード外観が良好であり、また、立向上進溶接が可能なNi基合金フラックス入りワイヤを提供すること。
【解決手段】Ni基合金を外皮とするフラックス入りワイヤにおいて、フラックス中にワイヤ全質量に対して、TiO、SiO及びZrOを総量で4.0質量%以上含み、さらに、Mn酸化物をMnO換算で0.6〜1.2質量%含み、かつ、TiO、SiO、ZrO及びMnO(換算量)の含有量を質量%で、それぞれ、[TiO]、[SiO]、[ZrO]及び[MnO]としたとき、[TiO]/[ZrO]が2.3〜3.3、[SiO]/[ZrO]が0.9〜1.5、及び、([TiO]+[SiO]+[ZrO])/[MnO]が5〜13である。
【選択図】なし

Description

本発明は、化学プラント等に構造部材として使用される高耐食オーステナイト系ステンレス鋼、あるいはLNGタンクなどに構造部材として使用される9%Ni鋼の溶接に用いられるNi基合金フラックス入りワイヤに関するものである。
化学プラントや、海水による腐食環境に曝される構造物などに構造部材として使用される高耐食オーステナイト系ステンレス鋼の溶接には、一般的に共金系ではなく、インコネル625、ハステロイC276系に代表されるNi基合金溶接材料が用いられている。また、極低温圧力容器であるLNGタンクなどに構造部材として使用される9%Ni鋼の溶接にも、Ni基合金溶接材料が用いられている。
これらのNi基合金溶接材料による溶接法としては、GTAW、SAW、SMAWが主流であるが、作業能率の向上を図るため、Ni基合金を外皮とするフラックス入りワイヤであるNi基合金フラックス入りワイヤを用いるFCAWの適用が広がりつつある。特に近年では、下向溶接や水平すみ肉溶接だけでなく、立向溶接や上向溶接にもNi基合金フラックス入りワイヤを適用できるようにすることが要望されており、溶接姿勢として全姿勢において溶接作業性、耐欠陥性、耐割れ性、溶接部機械的性能などを満足するNi基合金フラックス入りワイヤが望まれている。
従来、Ni基合金フラックス入りワイヤとして、ワイヤ全重量に対してフラックスを6〜26%充填し、フラックス中にワイヤ全重量比でTiOを3〜12%、Alを0.1〜3%、SiOを0.1〜3%、Na、K、Liの化合物をNa、K、Liに換算し、Naを0.1〜1.8%、Kを0.01〜1.5%、Liを0.01〜0.58%、Na+K+Liを0.4〜2.5%、NaF,LiFを含む金属弗化物をFに換算して0.2〜1.5%、Fe,Mnの酸化物を0.1〜2%、Tiを1%以下、金属成分の合計を1〜21%、スラグ成分の合計を5〜18%にしたNi基合金フラックス入りワイヤが知られている(特許第2565831号公報)。
しかしながら、前記従来のNi基合金フラックス入りワイヤは、下向溶接に比べて溶融金属の凝固速度が速い水平すみ肉溶接又は横向溶接に際し、ビード表面のピットの発生に関して改善の余地があった。
特許第2565831号公報
そこで、本発明の課題は、9%Ni鋼又はNi基合金の溶接において、下向溶接に比べて溶融金属の凝固速度が速い水平すみ肉溶接又は横向溶接に際し、耐ピット性に優れるとともに、溶接作業性及びビード外観が良好であり、また、同じく溶融金属の凝固速度が遅い立向上進での溶接を行うことができるNi基合金フラックス入りワイヤを提供することにある。
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
請求項1の発明は、Ni基合金を外皮とするフラックス入りワイヤにおいて、フラックス中にワイヤ全質量に対して、TiO、SiO及びZrOを総量で4.0質量%以上含み、さらに、Mn酸化物をMnO換算で0.6〜1.2質量%含み、かつ、TiO、SiO、ZrO及びMnO(換算量)の含有量を質量%で、それぞれ、[TiO]、[SiO]、[ZrO]及び[MnO]としたとき、[TiO]/[ZrO]が2.3〜3.3、[SiO]/[ZrO]が0.9〜1.5、及び、([TiO]+[SiO]+[ZrO])/[MnO]が5〜13であることを特徴とするNi基合金フラックス入りワイヤである。
請求項2の発明は、請求項1に記載のNi基合金フラックス入りワイヤにおいて、前記フラックス中にワイヤ全質量に対して、さらに、フッ化物をF換算で0.2〜1.2質量%含むことを特徴とするものである。
本発明のNi基合金フラックス入りワイヤは、フラックス中に、TiO、SiO及びZrOを主成分とするスラグ系成分に、溶融スラグの凝固開始及び凝固完了の温度を低下させる成分であるMnO(Mn酸化物)を適量添加して含有している。これにより、溶融スラグの凝固完了の温度と溶融金属が凝固開始するまでの温度との差が小さく、溶融スラグの凝固が完了するまでに溶融金属からガスが放出され、スラグと溶融金属との界面にガスの気泡が捕捉(トラップ)されることを回避することができるので、下向溶接に比べて溶融金属の凝固速度が速い(下向溶接に比べて溶接入熱が比較的小さい)水平すみ肉溶接又は横向溶接に際しても、ビード表面にピットの発生の極めて少ない良好な溶接ビードを得ることができる。また、ZrO含有量に対するTiO含有量の比、及びZrO含有量に対するSiO含有量の比を適正範囲に規定することで、溶接作業性が良好で、ビード外観の良好な溶接ビードを得ることができる。さらに、MnO含有量に対するTiO、SiO及びZrOの総含有量の比を適正範囲に規定することで、下向溶接に比べて溶融金属の凝固速度が遅い立向上進での溶接を行うことができる。
以下、本発明について、さらに詳しく説明する。
本発明者らは、Ni基合金フラックス入りワイヤによる水平すみ肉溶接又は横向溶接において、溶接ビード表面にピットが発生する原因を調査した。これについて説明する。
Ni基合金フラックス入りワイヤによるアーク溶接では、アーク熱で溶融した溶融金属には、金属(Fe、Cr、Mn、Si、K及びNa)の蒸発ガス、シールドガス及びその分解ガス(CO、CO、O、及びAr)、及びフラックスに含まれる酸化物や水分の分解ガス(O、O、O、H)などのガスが気泡として含まれる。この溶融金属中のガスは、気泡となって浮力により溶融池表面に浮上し、溶融金属が凝固するまでにその大半が溶融池より放出される。
さて、炭素鋼やステンレス鋼に代表されるFe基溶接材料が、その溶融金属の凝固開始温度が1450〜1550℃であるのに対して、Ni基合金溶接材料は、Fe基溶接材料に比べて、その溶融金属の凝固開始温度が1300〜1400℃と比較的低いという特徴がある。したがって、Ni基合金溶接材料では、溶融金属表面における溶融スラグの凝固・形成が完了してから、溶融金属の凝固が開始するまでの時間差が長くなる傾向にある。
この点に着目したところ、従来のNi基合金フラックス入りワイヤでは、溶融金属内から浮上したガスが、凝固したスラグと溶融金属の界面に気泡状態でトラップ(捕捉)されてしまい、溶融金属の凝固完了後に溶接ビード表面に半球状の欠陥(ピット)となって現れることが分かった。
さらに、ピットの発生を促進する要素として、ビード表面を覆うスラグの厚さが重要な要素であることが分かった。すなわち、スラグが厚くなるとガスの気泡がスラグと溶接金属の界面にトラップされ、溶接ビード表面にピットとして現れることが分かった。
スラグの厚さは、フラックスに含有されるスラグ原料の添加量に影響されるが、スラグの不均一な被りにも影響を受ける。すなわち、スラグの被りが不均一となると、部分的に厚いスラグで被われる部分が生じるため、ピットの発生が増加する傾向にあった。逆に、スラグの被りを均一にすることが、ピットの発生を低減することに有効であるが分かった。
このようなことから、溶融スラグの凝固と溶融金属の凝固との時間差を制御し、すなわち、溶融スラグの凝固完了の温度と溶融金属が凝固開始するまでの温度との差が小さくなるように、かつ、ビードに対するスラグの被りを均一にすることで、ガスの気泡がスラグと溶融金属の界面にトラップされないようするための、スラグの適正成分などを検討した結果、本発明に至った。
そして、フラックス中にフッ化物を適正量添加することにより、フッ化物の熱 分解によるフッ素ガス発生が、溶融金属の攪拌を促進するため、ガスの気泡の早期浮上を助け、スパッタやビード外観などを損なうことなく、ピットの発生をより低減できることも分かった。
次に、本発明によるNi基合金フラックス入りワイヤの構成について説明する。
[外皮] 外皮にNi基合金を使用するのは、溶接金属の均一性を損なわないためとフラックスが充填過剰とならないようにフラックス中からの合金添加量を抑えるためである。Ni基合金としては、Niを50%以上含有したNi−Cr合金、Ni−Cr−Mo合金、Ni−Cr−Fe合金などが挙げられる。
[フラックス率(フラックス充填率)] フラックス率(ワイヤ全質量に対する割合)は、ワイヤ製造工程において安定した充填率を確保し、かつ、溶接時に十分なスラグ包皮を確保して健全な溶接金属を得るために15質量%以上が必要である。しかし、40質量%を上回るとアークの集中力低下による溶接作業性の悪化、特にスラグ巻き込み等の溶接欠陥を生じ易くなるので、フラックス率は、15〜40質量%の範囲がよい。
[Ni:35〜70質量%] Niは、溶接金属の耐食性を確保する主成分であり、フラックス入りワイヤ中のNi含有量がワイヤ全質量に対して35質量%未満であると、その効果がなく、70質量%を超えると、ワイヤ全体として残りの30質量%未満において各種フラックス成分、金属成分を添加する必要があり、それらの成分を添加可能な量が少なすぎそれらの成分による効果が得られない。
次に、フラックス成分及びその含有量(対、ワイヤ全質量)について説明する。
[(TiO+SiO+ZrO)≧4.0質量%] フラックスを構成する原料としては、Ni、Cr、Mo、Nb、Ti、Mn、Si、Wなどの合金と合わせて、TiO、SiO及びZrOを主体とした酸化物、NaF、KSiF、CaFなどのフッ化物、及びCaCO、BaCOなどの炭酸塩を添加する。これらの化合物原料は、アークの安定化に寄与し、ワイヤ電極の溶融速度を一定にするほか、アーク熱によって溶解した後、スラグとなって溶融金属中を浮上して溶接金属表面を被覆することで、良好な形状、かつ光沢のある美麗なビードを形成する役割を担う。このうち、TiO、SiO及びZrOは、その効果(詳しくは後述する)が大きく、はずすことのできない添加が不可避な成分である。TiO、SiO及びZrOが総量で4.0質量%未満では、前記の効果が得られない。
[MnO:0.6〜1.2質量%] CaF等の塩基性フッ化物や、CaO、BaO等の塩基性酸化物をフラックス中に添加すると、ピットの発生を抑制することができる。また、これらの塩基性化合物は、スラグの塩基度が上昇することで溶接金属中の酸素量を低減させて、溶接金属の機械的性能(衝撃値)や耐高温割れ性を向上させる。しかしながら、CaF、CaO、BaO等の塩基性化合物は、フラックス中に添加すると、アーク安定性に悪影響を及ぼし、溶接作業性を著しく悪化させ、スパッタ発生量が増大し、そのため低溶接電流域で行われる立向上進溶接が困難になる。このように、ピットの発生を抑制するためにフラックス中に塩基性化合物を添加すると、溶接作業性を著しく悪化させ、また、立向上進溶接が困難であった。
そこで、本発明は、TiO、SiO及びZrOを主成分とするスラグ系成分に、MnOを適量添加することにより、スラグの凝固温度が低下し、ピットの発生を抑制できるようにしたものである。
MnOは、その融点が550℃と低いため、溶融スラグの凝固開始及び凝固完了の温度を低下させる成分である。また、スラグの流動性を良好にする作用があるため、スラグ巻き欠陥の発生を抑制し、また、ビードのなじみや、ビード形状を改善する効果がある。そして、MnOによってスラグの流動性が向上することにより、ビード全体にスラグが均一に薄く被るので、凝固中の溶融金属から発生する各種ガスが凝固中の該スラグを通して外部へ容易に逃げることができ、ピットの発生を一層抑制することができる。
MnOの含有量は、このような効果を得るために0.6質量%以上必要である。しかし、MnOの含有量が1.2質量%を超えると、スラグがビード表面に焼付いて剥離し難くなる。したがって、MnOの含有量は、0.6〜1.2質量%の範囲とする。
[[TiO]/[ZrO]:2.3〜3.3] ZrOは、アークの吹きつけを良くする作用があり、比較的低溶接電流域においてもアークを安定させることができる。また、スラグの凝固を速くし、立向上進溶接を容易にする効果がある。ZrO源としては、ジルコンサンド、ジルコニアなどが挙げられる。TiOは、アークを安定させ、また、スラグの被りを良くしてビード形状を良好にする効果がある。TiO源としては、イルミナイト、ルチール、白チタンなどが挙げられる。
ZrO含有量に対するTiO含有量の比が2.3未満では、MnOの存在下においてスラグの凝固温度が高くなり、ピットの発生数が増加する。また、スラグの被り、スラグの剥離性が悪くなり、そのためビード外観が悪くなる。一方、ZrO含有量に対するTiO含有量の比が3.3超でも、スラグの凝固温度が高くなり、ピットの発生数が増加する。したがって、ZrO含有量に対するTiO含有量の比は、2.3〜3.3の範囲とする。
[[SiO]/[ZrO]:0.9〜1.5] SiOは、スラグの流動性を良くする効果がある。SiO源としては、珪砂、長石などが挙げられる。ZrO含有量に対するSiO含有量の比が0.9未満では、MnOの存在下においてスラグの凝固温度が高くなり、ピットの発生数が増加する。また、スラグの流動性が悪くなり、そのためスラグの被り、及びビードのなじみが悪くなる。一方、ZrO含有量に対するSiO含有量の比が1.5超では、スラグの剥離性が悪化する。また、溶接金属中のSi濃度が高くなり、溶接金属の耐割れ性が悪化する。したがって、ZrO含有量に対するSiO含有量の比は、0.9〜1.5の範囲とする。
[([TiO]+[SiO]+[ZrO])/[MnO]:5〜13]
MnO含有量に対するTiO、SiO及びZrOの総含有量の比が5未満では、スラグの凝固温度が低くなり過ぎるため(スラグの凝固が遅くなり過ぎるため)、水平すみ肉溶接又は横向溶接でのビードにおいて、下脚部側の止端部にスラグが集中し、上脚部のスラグの被りが悪くなる。また、スラグの凝固が遅すぎるため、立向上進溶接が困難となる。一方、MnO含有量に対するTiO、SiO及びZrOの総含有量の比が13超では、逆にスラグの凝固温度が高くなり過ぎるため(スラグの凝固が早くなり過ぎるため)、ビード表面にピットが発生する。したがって、MnO含有量に対するTiO、SiO及びZrOの総含有量の比は、5〜13の範囲とする。
[フッ化物:F換算で0.2〜1.2質量%] フッ化物を0.2質量%以上添加すると、アーク熱によって分解したフッ化物から発生するフッ素ガスによって、ピットの原因となる、金属(Fe、Cr、Mn、Si、K及びNa)の蒸発ガス、シールドガス及びその分解ガス(CO、CO、O、及びAr)、及びフラックスに含まれる酸化物や水分の分解ガス(O、O、O、H)などのガスのアーク中での蒸気分圧が低下するため、ピットの発生の抑制に有効である。しかしながら、フッ化物の含有量が1.2質量%を超えて多くなるとアークが不安定となる。したがって、フッ化物の含有量は、0.2〜1.2質量%の範囲とする。
以下、本発明の実施例について説明する。
試験に用いた実施例及び比較例のNi基合金フラックス入りワイヤは、公知の手順により製作した。表1に示す外皮にフラックスを内包し、ワイヤ直径が1.2mmになるように伸線加工した後、加工によって硬化した外皮を軟化させるため1000℃の水素還元雰囲気内で当該ワイヤを焼鈍し、供試ワイヤとして、表2と表3に示す実施例のワイヤ、及び表4と表5に示す比較例のワイヤを作製した。なお、外皮として、厚さ0.4mm、幅9.0mmのNi基合金からなる帯状材を用いた。
供試ワイヤに関する耐ピット性、アーク安定性、ビード外観及びスラグ剥離性の評価は、板厚12mm、幅80mm、長さ300mmの9%Ni鋼からなるすみ肉T継手の水平すみ肉溶接を半自動溶接で行うことで実施した。水平すみ肉溶接の溶接条件は、溶接電流:200A(DC:ワイヤ+)、アーク電圧:30V、溶接速度:35cm/分、シールドガス:100%CO、シールドガス流量:25リットル/分とした。
アーク安定性、ビード外観及びスラグ剥離性の評価は、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや不良なものを△、不良であったものを×とした。
ビード表面に生じるピットについては、ビード表面に染色探傷試験を施して、検出された染色点の数をもって評価した。なお、溶接ビードの始端部(長さ50mm)及び終端部(長さ50mm)については、評価対象外領域とした。耐ピット性の評価は、ビード長さ50mm当たりの平均ピット発生数が、0個(ピット発生なし)のものを◎、10個以下のものを○、10〜30個のものを△、30個以上のものを×とした。
スパッタ発生量についても調査し、9%Ni鋼製の平板上をビードオンプレートで連続1分間溶接し、その際に発生したスパッタを銅製の捕集箱で捕集して、そのスパッタ発生量を重量測定した。
また、立向上進溶接の評価は、板厚12mm、幅80mm、長さ300mmの9%Ni鋼からなるすみ肉T継手の立向上進溶接を半自動溶接で行うことで実施した。立向上進溶接の溶接条件は、溶接電流:140A(DC:ワイヤ+)、アーク電圧:26V、溶接速度:約6cm/分、シールドガス:100%CO、シールドガス流量:25リットル/分とした。
立向上進溶接の評価は、溶接が容易に可能なものを◎、溶接が普通に可能なものを○、溶接がなんとか可能なものを△、溶接不可のものを×とした。
試験結果を表2〜表5(実施例:表2,表3、比較例:表4,表5)に示す。
Figure 2008246507
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表2及び表3より明らかなように、実施例のNo.1〜No.16のワイヤは、水平すみ肉溶接に際し、ピット発生数が少なくて耐ピット性が良好であり、溶接作業性(アーク安定性、スラグ剥離性及びスパッタ発生量)及びビード外観が良好であった。また、立向上進溶接についても、ビードを垂れ下がりなく良好な形状に形成しながら立向上進での溶接を行うことができた。
一方、比較例のNo.17のワイヤは、ZrO含有量に対するTiO含有量の比が本発明で規定する範囲を下回るため、ピットが多く発生し、かつ、スラグの被り、スラグの剥離性が悪く、そのためビード外観が悪かった。比較例のNo.18のワイヤは、アーク安定性、ビード外観及び立向上進溶接において良好であったが、ZrO含有量に対するTiO含有量の比が本発明で規定する範囲を上回るため、ピットが多く発生した。
比較例のNo.19のワイヤは、アーク安定性と立向上進溶接において良好であったが、ZrO含有量に対するSiO含有量の比が本発明で規定する範囲を下回るため、ピットが多く発生し、かつ、スラグの被り、ビードのなじみが悪かった。比較例のNo.20のワイヤは、アーク安定性と立向上進溶接において良好であったが、ZrO含有量に対するSiO含有量の比が本発明で規定する範囲を上回るため、スラグの剥離性が悪かった。
また、比較例のNo.21のワイヤとNo.29のワイヤは、MnO含有量に対するTiO、SiO及びZrOの総含有量の比が本発明で規定する範囲を下回るため、水平すみ肉溶接におけるビードの上脚部のスラグの被りが悪く、かつ、立向上進の溶接ができなかった。比較例のNo.22及びNo.30のワイヤは、アーク安定性、ビード外観及び立向上進溶接において良好であったが、MnO含有量に対するTiO、SiO及びZrOの総含有量の比が本発明で規定する範囲を上回るため、ピットが多く発生した。
比較例のNo.23のワイヤとNo.27のワイヤは、MnO含有量が本発明で規定する範囲を下回るため、ピット発生数が著しく多かった。比較例のNo.24のワイヤとNo.28のワイヤは、MnO含有量が本発明で規定する範囲を上回るため、アークが不安定でスパッタ発生量も多く、ビード表面にスラグが焼付き、ビード外観が不良であった。
比較例のNo.25のワイヤは、MnO含有量が本発明で規定する範囲を下回り、かつ、MnO含有量に対するTiO、SiO及びZrOの総含有量の比が本発明で規定する範囲を上回るため、ピット発生数が著しく多かった。
比較例のNo.26のワイヤは、MnO含有量が本発明で規定する範囲を下回り、かつ、MnO含有量に対するTiO、SiO及びZrOの総含有量の比が本発明で規定する範囲を上回るため、ピット発生数は非常に少ないものの、アーク安定性とビード外観が悪く、また、立向上進溶接が不可能であった。
また、比較例のNo.31のワイヤは、ZrO含有量に対するTiO含有量の比が本発明で規定する範囲を上回り、かつ、ZrO含有量に対するSiO含有量の比が本発明で規定する範囲を上回るため、ピットが多く発生するとともに、スラグの剥離性が悪かった。

Claims (2)

  1. Ni基合金を外皮とするフラックス入りワイヤにおいて、フラックス中にワイヤ全質量に対して、TiO、SiO及びZrOを総量で4.0質量%以上含み、さらに、Mn酸化物をMnO換算で0.6〜1.2質量%含み、かつ、TiO、SiO、ZrO及びMnO(換算量)の含有量を質量%で、それぞれ、[TiO]、[SiO]、[ZrO]及び[MnO]としたとき、[TiO]/[ZrO]が2.3〜3.3、[SiO]/[ZrO]が0.9〜1.5、及び、([TiO]+[SiO]+[ZrO])/[MnO]が5〜13であることを特徴とするNi基合金フラックス入りワイヤ。
  2. 前記フラックス中にワイヤ全質量に対して、さらに、フッ化物をF換算で0.2〜1.2質量%含むことを特徴とする請求項1に記載のNi基合金フラックス入りワイヤ。
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