JP2008239870A - 微細銅フタロシアニン顔料の製造方法 - Google Patents

微細銅フタロシアニン顔料の製造方法 Download PDF

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【課題】二次凝集が進まずに微粒子同士が互いに融着しにくく、比表面積が大きい特徴を有する透明性に優れた微細銅フタロシアニンを製造する方法を提供すること。
【解決手段】特定のフタロシアニン誘導体と銅フタロシアニンを酸性溶媒に溶解してなる酸性溶液を水と混合する第1工程と得られた混合液から析出物を分離する第2工程と得られた析出物を、ケトン系有機溶剤で処理するか、または有機溶媒の存在下に機械的応力により分散する第3工程を含む微細銅フタロシアニンの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、塗料用、樹脂用、印刷インキ用、水性インキ用、カラーフィルター用、ジェットインキ用等の着色に用いられる有機顔料微粒子の製造方法に関し、平均粒子径が30〜100nmであり、比表面積が大きく、透明性に優れた微細銅フタロシアニンを製造する方法に関する。
有機顔料は、着色材として使われており、その中で、銅フタロシアニンは、着色力や分散性に優れた青色用着色材として広く用いられている。従来、鮮明性や透明性などの向上した有機顔料が求められているが、銅フタロシアニンを含有する顔料においても更なる透明性の向上が求められている。
着色材の鮮明性や透明性を向上させるためには、有機顔料の微粒子を分散させることが効果的なことが知られているが、有機顔料が粗大な粒子であると、分散剤や分散方法を改良しても優れた微細分散体を得ることが困難であるか不可能なため、鮮明性や透明性を発揮するのに十分な微細性を有することが必要である。また、有機顔料の微粒子を分散させるためには、それに適した分散剤や分散装置を用いることが必要である。
有機顔料の一次粒子の評価法として、電子顕微鏡写真から粒子径を評価する方法や比表面積から評価する方法が良く用いられている。比表面積とは顔料への窒素の吸着量より測定される数値であり、単位重量あたりの表面積(m/g)で表される。これは顔料の粒子サイズの逆数に相関する値であり、粒子が微細になると比表面積は大きくなるという関係にある。電子顕微鏡写真では顔料が微細に見えるにも関わらず、比表面積が小さいということは、微細な顔料の一次粒子が物理的にもしくは融着を生じながら密に二次凝集しているということを意味する。このように二次凝集が多い場合は、分散操作を行っても微細分散させることは困難であり、顔料の分散安定性や色の鮮明性や透明性に悪影響を及ぼす。従って、微細顔料の鮮明性や透明性を発現するためには、比表面積が大きく二次凝集が進んでいない微細顔料を得ることが望ましい。
従来の有機顔料微粒子を得る方法としては、ソルベントソルトミリング法(例えば、特許文献1参照)や晶析法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
ソルベントソルトミリング法は、顔料に無機塩等の摩砕助剤と有機溶媒を混ぜて磨砕装置により顔料を細かく砕いて微細化する手法である。この手法は摩砕により微細化を行うには有効であるが、無機塩等による装置の腐食、装置の材料の磨耗による顔料への汚染が起こり、問題となっている。無機塩類を除くためには、水等による洗浄を行う必要がある。
また、晶析法による顔料微細化としては、顔料を顔料溶解性の高い有機溶媒、例えばN−メチル−2−ピロリドン(通称名:NMP)等のアミド系有機溶媒に溶解した後に、水と混合させ、再沈殿させる方法があり、一次粒子の平均粒子径が20〜30nmの微細な顔料を得ることが可能である。しかし、一般的には、有機顔料はNMPに対する溶解性は有するものの、銅フタロシアニンは当該有機溶媒に対する溶解性が非常に低く、この方法では目的とする微細銅フタロシアニンを得ることは困難であるか、不可能である。
銅フタロシアニンの処理方法として、アシッドペースト法が知られている。アシッドペースト法は顔料を硫酸等の酸類に溶解させた後に大量の水に投入して沈殿させる方法である。本法では、酸性溶媒は銅フタロシアニンを溶解するので、得られた銅フタロシアニン酸性溶液を水と混合させることにより晶析を行うことは可能であるが、顔料粒子の成長による二次凝集が激しく、微細な顔料粒子を得ることが出来ないという欠点がある。
また、溶液を混合する装置として、例えば特許文献3には、微小空間での迅速な混合を達成しうる連続式混合装置としてマイクロ混合器が開示されており、また、特許文献4には、顔料を含む酸性溶媒と水との接触による発熱を防止する機構を有する熱交換器付きのマイクロ混合器が開示されている。しかしながら、これらの文献においても本発明のごとき平均粒子径が30〜100nmであり、比表面積が大きく、透明性に優れた微細銅フタロシアニンの製造については、記載がない。
特開2002−121420号公報 特開2004−91560号公報 特表平9−506034号公報 特開2006−281008号公報
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、二次凝集が進まずに微粒子同士が互いに融着しにくく、比表面積が大きい特徴を有する透明性に優れた微細銅フタロシアニンを製造する方法を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明では、微細銅フタロシアニンの製造において、
(1)一般式(1)
Figure 2008239870
(但し、式中X1は、金属酸化物を表す。)
または、一般式(2)
Figure 2008239870
(但し、式中X2は金属原子を表し、Yは、フタルイミドメチル基、または一般式(3)
Figure 2008239870
(但し、式中mは、1〜6の整数を表し、R及びRは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるスルホンアミド基を表わす。また、n、n、n、nは、置換基Yの数を表し、各々独立に0から4の整数であって、そのうちの少なくとも一つが0でなく、n+n+n+n=1〜4である。)
で表されるフタロシアニン誘導体と銅フタロシアニンを酸性溶媒に溶解してなる酸性溶液を水と混合する第1工程
(2)前記(1)で得られた混合液から顔料析出物を分離する第2工程
(3)前記(2)で得られた顔料析出物を、ケトン系有機溶媒で処理するか、または有機溶媒の存在下に機械的応力により分散する第3工程
を含む微細銅フタロシアニンの製造方法を提供する。
本発明によれば、二次凝集が進まずに微粒子同士が互いに融着しにくく、比表面積が大きい特徴を有する透明性に優れた微細銅フタロシアニンを製造する方法を提供することが出来る。
本発明に係る有機顔料微粒子の製造方法は、銅フタロシアニンと、結晶成長抑制剤としてフタロシアニン誘導体を酸性溶媒に溶かした酸性溶液と水を混合する第1工程と、該混合液から析出した顔料粒子を分離する第2工程と、該顔料粒子をケトン系有機溶媒で処理するか、または有機溶媒の存在下に機械的応力により分散する第3工程を含むものである。
即ち、本発明は、
1.微細銅フタロシアニンの製造において、
(1)一般式(1)
Figure 2008239870
(但し、式中X1は、金属酸化物を表す。)
または、一般式(2)
Figure 2008239870
(但し、式中X2は金属原子を表し、Yは、フタルイミドメチル基、または一般式(3)
Figure 2008239870
(但し、式中mは、1〜6の整数を表し、R及びRは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるスルホンアミド基を表わす。また、n、n、n、nは、置換基Yの数を表し、各々独立に0から4の整数であって、そのうちの少なくとも一つが0でなく、n+n+n+n=1〜4である。)
で表されるフタロシアニン誘導体と銅フタロシアニンを酸性溶媒に溶解してなる酸性溶液を水と混合する第1工程
(2)前記(1)で得られた混合液から顔料析出物を分離する第2工程
(3)前記(2)で得られた顔料析出物を、ケトン系有機溶媒で処理するか、または有機溶媒の存在下に機械的応力により分散する第3工程
を含む微細銅フタロシアニンの製造方法、
2.前記一般式(1)中のX1が、酸化チタン、または酸化バナジウムである1に記載の微細銅フタロシアニンの製造方法、
3.前記一般式(2)中のX2が、銅原子である1または2に記載の微細銅フタロシアニンの製造方法、
4.前記ケトン系有機溶媒がアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンである1乃至3のいずれかに記載の微細銅フタロシアニンの製造方法、
5.酸性溶媒が、硫酸またはメタンスルホン酸である1乃至4のいずれかに記載の微細銅フタロシアニン誘導体の製造方法、
6.酸性溶液を水と混合する第1工程において、酸性溶液を微小流路を通じて流通させ、その流通過程で、水と連続的に混合させるものである1乃至5のいずれかに記載の微細銅フタロシアニンの製造方法、
7.前記微小流路の等価直径が3mm以下である6に記載の微細銅フタロシアニンの製造方法
からなるものである。
以下に、本発明の製造方法について更に詳細に説明する。
(第1工程)
本発明における第1工程は、フタロシアニン誘導体と銅フタロシアニンを酸性溶媒に溶解してなる酸性溶液を水と混合する工程である。
ここで用いられるフタロシアニン誘導体は、一般式(1)
Figure 2008239870
(但し、式中X1は、金属酸化物を表す。)
または、一般式(2)
Figure 2008239870
(但し、式中X2は金属原子を表し、Yは、フタルイミドメチル基、または一般式(3)
Figure 2008239870
(但し、式中mは、1〜6の整数を表し、R及びRは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるスルホンアミド基を表わす。また、n、n、n、nは、置換基Yの数を表し、各々独立に0から4の整数であって、そのうちの少なくとも一つが0でなく、n+n+n+n=1〜4である。)
で表されるフタロシアニン誘導体である。
一般式(1)で表されるフタロシアニン誘導体において、X1は金属酸化物であり、金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化ニッケルなどが挙げられる。これらのなかでは、酸化チタン、酸化バナジウムが好ましい。当該フタロシアニンは、通常公知の方法で製造出来る。
一般式(2)で表されるフタロシアニン誘導体においては、X2は金属原子であり、例えば、銅、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛等の金属原子が挙げられるが、特に銅原子が好ましい。
また、前記フタロシアニン誘導体においては、フタロシアニン環が少なくとも1個以上のフタルイミドメチル基で置換されているか、またはフタロシアニン環が少なくとも1個以上の一般式(3)で表されるスルホンアミド基で置換されている。
ここで、置換するフタルイミドメチル基は、少なくとも1個以上であれば特に限定なく用いることが出来るが、好ましくは1乃至は2個であり、置換される位置に限定はない。当該フタロシアニン誘導体は、通常公知の方法で合成することができる。
また、置換する一般式(3)で表されるスルホンアミド基は、フタロシアニン骨格に置換するスルホンアミド基であり、mは、1〜6の整数を表すが、2〜4が好ましく、特に3が好適である。また、RまたはRは直鎖状或いは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基を挙げることができる。
また、前記スルホンアミド基は、フタロシアニン環に少なくとも1個以上置換されていればよく、特に限定なく用いることが出来るが、好ましくは1乃至2個であり、置換される位置に限定はない。
酸性溶液は、前記フタロシアニン誘導体と銅フタロシアニンを酸性溶媒に溶解した溶液である。酸性溶媒は、フタロシアニン誘導体または銅フタロシアニンに酸性溶媒を溶解させることが必要であり、このような溶媒としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、クロロスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。そのなかでも、顔料溶解性の点から、硫酸、メタンスルホン酸、クロロスルホン酸から選ばれる一種類の溶媒、あるいは2種類以上の混合溶媒が好ましい。これらは含水している場合が多いが、含水率が高いと銅フタロシアニンの溶解性が低下するため、十分な顔料溶解性を有するため酸濃度が高いことが好ましく、好ましい濃度としては、質量%で94〜100%、さらに好ましくは97〜100%の濃度を挙げることができる。
フタロシアニン誘導体と銅フタロシアニンを酸性溶媒に溶解させる際の質量%は、1〜20%が好ましく、4〜15%がより好ましい。顔料の濃度が1%より小さい場合は、顔料が希薄なため製造効率が悪くなり、20%よりも大きい場合は顔料を完全に溶解させるまでに長時間を要するという問題がある。
一般式(1)または(2)で表されるフタロシアニン誘導体の含有量は、十分な結晶成長抑制効果を得るために、好ましくは顔料に対して質量%で1〜30%、特に好ましくは3〜20%である。1%以下の添加では結晶成長抑制効果が小さく、30%を超える濃度であると、得られた顔料の色調は銅フタロシアニン本来の色調からの乖離が大きくなり、好ましくない。
銅フタロシアニン酸性溶液は、前記した特定量の銅フタロシアニンおよび結晶成長抑制剤を添加し、溶解させて調整する。この際、銅フタロシアニンの溶解を促進させるために加熱することは妨げないが、酸による銅フタロシアニンの分解を防止するために、加熱することなく溶解させることが好ましい。溶解温度としては、0〜40℃、好ましくは5〜25℃の温度を挙げることができる。また、顔料溶解液中に微量含まれる未溶解粗粒や不純物を除去するために、次操作に移る前にろ過を行っても良い。ろ過は通常公知の方法によって行うことができる。
次に、調整した酸性溶液と水を混合する。
操作は、酸性溶液を撹拌下の水中に注入もしくは滴下して銅フタロシアニン析出物を得る。この時、注入する管の内径は小さい方が、該酸性溶液と水が接触する際の両者の単位重量あたりの界面が増えるので、両者の混合性が向上して好ましい。しかし内径が小さすぎると目詰まりし易いという問題が生じるため、注入もしくは滴下する管の内径は具体的には、直径0.05mm〜5mmが好ましく、さらに好ましくは0.1mm〜3mmである。
水に混合する際の銅フタロシアニン酸性溶液の重量は、この銅フタロシアニン酸性溶液と水とを混合した混合溶液100部に対して、2〜30部であるのが好ましく、2〜15部であるのがより好ましい。銅フタロシアニン酸性溶液の重量比を2〜30部とすることにより、廃液量が少なくなり、濾過を短時間で行うことができ、かつ混合溶液中の水溶性溶媒量が適量となるため再沈による粒子の固化を充分とすることができる。
酸性溶液と水との混合時の撹拌速度は、速い方が二液の混合が速やかになるために好ましい。具体的には、例えば200mL容器で混合する場合は、300rpm〜1500rpmが好ましいが、撹拌装置の性能が高ければさらに高速で撹拌することが可能であり、より高速であっても構わない。撹拌下の水に混合する場合は、汎用の装置を使用できる利点がある。
また、銅フタロシアニン酸性溶液と水を混合する際には、流通した水と混合してもよい。この場合は、顔料を含む酸性溶液が、流通した水と接触するために、常に新しい水と接触させることができ、均一な製品を作るために好ましい。
また、流通した水と混合する場合は、公知公用のスタティックミキサーやあるいは高速回転するローターが組み込まれた連続分散機などの連続式混合装置を使用することもできる。銅フタロシアニン酸性溶液が水と接触すると直ちに顔料析出物が生じることから、短時間のうちに速やかに進行させることが好ましく、そのためには微小空間での迅速な混合が好ましい。
このような微小空間での迅速な混合を達成しうる連続式混合装置として、公知公用のマイクロ混合器(例えば特許文献3参照)である、混合すべき材料を供給するためにガイドブロックを前置した少なくとも1つの混合室を備えた静的マイクロ混合器を挙げることができる。さらに好ましくは、顔料を含む酸性溶媒と水との接触による発熱を防止する機構を有する熱交換器付きのマイクロ混合器(例えば特許文献4参照)を用いることができる。
混合時には、銅フタロシアニンが溶解した酸性溶液を適当な流動性を有する程度の温度に維持し、水は低温に調節した後に混合し、さらに、混合に伴う混合熱によって生じる温度上昇を抑えるために、混合と同時に混合液を冷却することが好ましく、このような混合プロセスに、熱交換機構付のマイクロミキサーを用いることにより、より微細で均一な微粒子を得ることができる。
(第2工程)
次に、晶析した顔料析出物を分離する第2工程を行う。
本工程ではろ過または遠心沈降によって顔料粒子を分離することが可能である。濾過の際、顔料析出物をアルコールで洗浄してもよく、さらに水やアルカリ水で洗浄することにより、酸性溶媒からの酸性成分を流し出すことができる。本工程では、アモルファス様の顔料粒子の凝集体が得られる。
(第3工程)
本工程では、第2工程で得られた顔料粒子の凝集体を、有機溶媒中で懸濁撹拌する工程を行う。
本発明者らは、顔料粒子の凝集を解しつつ、該顔料粒子の結晶性を向上させ、所望の比表面積が大きい、顔料微粒子が得られる好適な有機溶媒を検討した。その結果、特にケトン系有機溶媒が特に好ましいことを見出した。有機溶媒としてアルコール類を用いると、顔料粒子の解れや結晶性の向上が不充分となり、比表面積が大きくならない。また、芳香族系溶剤を適用すると、著しい結晶成長が起こるため微細な顔料を得ることが出来ず、不適であった。
好ましいケトン系有機溶媒として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを挙げることができる。処理は、第2工程で得られた顔料析出物をケトン系有機溶媒中に懸濁攪拌することにより行う。処理温度は、0〜40℃を挙げることができるが、好ましくは10〜25℃である。また、処理時間は、0.5〜2時間を挙げることができる。処理終了後は、通常公知のろ過法、遠心沈降法等によって目的とする銅フタロシアニンを得ることができる。
また、ケトン系有機溶媒による処理を行う代わりに、機械的応力により分散する工程を行うことによっても、好適に分散体を得ることができる。ここでいう機械的応力とは、機械的に加えられた応力のことであって、機械的応力を加える装置としては、通常公知の分散装置を挙げることができる。そのような装置として、例えば、ビーズミルを挙げることができ、有機溶媒の存在下に行うこともできる。好適な有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを挙げることができる。
分散は、前記のケトン系有機溶媒で処理する工程かまたは有機溶媒の存在下に機械的応力により分散する工程を各々単独で、または組み合わせて行うこともできる。
本発明により得られる微細フタロシアニンは、一次粒子の平均粒子径は30〜100nmであれば、目的とする特性を発揮することが可能であるが、30〜50nmが特に好ましい。
ここで、本発明において一次粒子の平均粒子径とは、次の様に測定される。まず、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の50個につき、個々の粒子の内径の最長の長さ(最大長)を求める。個々の粒子の最大長の平均値を一次粒子の平均粒子径とする。一方、粒子の最大長となる線に直交する様に無数に引くことの出来る仮想線のうち最短となる長さを最小長とし、これも50個につき求めることが出来る。アスペクト比は、この様にして得られた個々の粒子の最大長の平均値と最小長の平均値を求め、これらの値を用いて(最大長の平均値)/(最小長の平均値)に基づいて算出する。
また、本発明により得られる微細フタロシアニンの比表面積は、50〜100m/gであれば、目的とする特性を発揮することが可能である。
ここで、比表面積は、BET1点法により測定した。BET1点法は、窒素とヘリウムの混合ガス(3:7)を用い、液体窒素温度で試料に窒素分子を吸着させた後、室温への昇温により脱着する窒素分子の量から、BET式を用いて試料の比表面積を求める方法である。
以上の製造方法により得られる小さい銅フタロシアニンは、比表面積が大きく一次粒子の平均粒径が小さい特徴を有し、微細な分散体を得ることができ、例えば塗膜の透明性を良好とする塗料を製造することが可能となる。
次に、実施例により本発明の内容を更に詳細に説明する。
(実施例1)
銅フタロシアニンを0.45g、チタニルオキシフタロシアニン0.05gを、酸性溶媒である98%硫酸9.5gに入れ、25℃で1時間撹拌して溶解させ、顔料溶液を得た。この顔料溶液を氷浴下で5℃まで冷却した後に、タービン翼600回転で撹拌した5℃の水中に、内径1.2mmの管を用いて100g/minの速度で送液した。
送液後撹拌した後に、再沈した顔料析出物をこの溶液から速やかに吸引濾過した。濾過後の残渣の流動性がなくなる程度で、さらに上から水を50mL加え吸引濾過を続けた。ろ過の終了後、顔料粒子からなる残渣を分離した。この残渣(顔料粒子)を、熟成溶剤であるアセトン100mL中に取り出し、懸濁させた。この懸濁液を25℃で30分間撹拌を行った。再び吸引濾過を行い、残渣を真空乾燥して、銅フタロシアニン顔料の微粒子を得た。
(顔料微粒子の比表面積)
得られた顔料微粒子の比表面積は、BET法でFlow Sorb 22300(製品名:(株)島津製作所製)により測定した。
(顔料微粒子の電子顕微鏡観察)
得られた顔料微粒子を透過型電子顕微鏡で観察した。図1は、実施例1の銅フタロシアニン顔料微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。20個の粒子を無作為に選択してその長径測ったところ、一次粒子径は30〜50nmであった。
(メラミンアルキッド塗料での透明性の比較試験)
得られた顔料微粒子から塗料を作成し、透明性を後述する比較例1、比較例2と比較して評価した。得られた顔料微粒子4gと、アミラック(商標名)No.1026クリヤー(関西ペイント株式会社製)16.0gと、焼き付けシンナーNo.3(同社製)10.0gと、3mmφガラスビーズ80gとを、容量100mLのポリエチレン製の瓶に入れ、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散させた。その後、アミラック(商標名)No.1026クリヤー50.0gを追加し、ペイントコンディショナーで更に10分間分散させて、メラミンアルキッド原色塗料を得た。
このメラミンアルキッド原色塗料を、アート紙上に10mil(254μm)のアプリケーターにより塗布展色し、1時間放置した後、140℃の乾燥機中で20分間焼き付けて乾燥した。
得られたメラミンアルキッド原色塗料6.0gと、アミラック(商標名)No.1531ホワイト(関西ペイント株式会社製)10.0gとをポリエチレン製のカップに入れ、均一に混合してメラミンアルキッド淡色塗料を得た。
このメラミンアルキッド淡色塗料を、アート紙上に6mil(152μm)のアプリケーターにより塗布展色し、1時間放置した後、140℃の乾燥機中で20分間焼き付けて乾燥した。目視によりこれら両塗膜の透明性を判断した。透明性が実施例2以上のものを良好(○)とし、実施例5未満のものを劣悪(×)と評価した。
この顔料微粒子の製造条件と比表面積、塗料試験による透明性の評価の結果を、表1に各々示した。
(実施例2)
(実施例1)における結晶成長抑制剤をチタニルオキシフタロシアニンからフタルイミドメチル基置換銅フタロシアニンに代えた以外は、実施例1と同様にして顔料微粒子を製造した。
(実施例3)
アセトンをメチルエチルケトンに代えた以外は、(実施例2)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(実施例4)
銅フタロシアニンを0.95g、結晶成長抑制剤をチタニルオキシフタロシアニン0.05g、硫酸を9gに代えた以外は、(実施例1)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(実施例5)
酸性溶媒を95%硫酸に代えた以外は、(実施例2)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(実施例6)
タービン翼で600回転で撹拌した5℃の2mol/Lアルカリ水中に送液する以外は、(実施例1)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(実施例7)
2重管式の混合器(内管:内径0.5mm/外径:1.6mm、外管:内径1.8mm/外径:3.2mm)及び−0.5℃の冷媒を流通させた冷却環を用いて、実施例1記載の組成顔料溶液を毎分0.5gの速度で該2重管式混合器の内管に送液し、毎分9.5gの速度で外管に供給した水と内管出口部にて流通混合させ、実施例1と同様にして顔料微粒子を製造した。
(実施例8)
結晶成長抑制剤チタニルオキシフタロシアニンをバナジウムオキシフタロシアニンに代
えた以外は、(実施例1)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(実施例9)
銅フタロシアニンを0.475g、結晶成長抑制剤をスルホンジメチルアミノメチルアミド置換銅フタロシアニン0.025に代えた以外は、(実施例1)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(実施例10)
銅フタロシアニンを0.45g、チタニルオキシフタロシアニン0.05gを、酸性溶媒である98%硫酸9.5gに入れ、25℃で1時間撹拌して溶解させ、顔料酸性溶液を得た。この顔料酸性溶液を氷浴下で5℃まで冷却した後に、タービン翼600回転で撹拌した5℃の水中に、内径1.2mmの管を用いて100g/minの速度で送液した。図2に、本実施例に用いられる2重管式の混合器の一例を示す模式図を示す。
送液後撹拌した後に、再沈した顔料析出物をこの溶液から速やかに吸引濾過した。濾過後の残渣の流動性がなくなる程度で、さらに上から水を50mL加え吸引濾過を続けた。ろ過の終了後、顔料粒子からなる残渣を分離した。この残渣(顔料粒子)を真空乾燥した後に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート12g及び0.3〜0.4mmセラミックビーズ中でペイントコンディショナーにより2時間分散処理を行った。分散液からビーズを除去後、吸引濾過を行い、残渣を真空乾燥して、銅フタロシアニン顔料の微粒子を得た。
(比較例1)
第3工程の熟成溶剤を25℃のメタノールに代えた以外は、(実施例2)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(比較例2)
結晶成長抑制剤を添加しない以外は、(実施例1)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(比較例3)
第3工程の有機溶媒処理を行わない以外は、(比較例2)と同様にして顔料微粒子を製造した。
(比較例4)
第3工程の有機溶媒処理を行わない以外は、(比較例1)と同様にして顔料微粒子を製造した。
Figure 2008239870
本発明の(実施例1)により得られる銅フタロシアニン顔料微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。 本発明の(実施例10)に用いられる2重管式の混合器の一例を示す模式図である。
符号の説明
1・・顔料酸性溶液入口、2・・内菅、3・・水入口、4・・外菅、5・・冷媒入口、6・・冷却菅、7・・冷媒出口、8・・顔料微粒子分散液出口

Claims (7)

  1. 微細銅フタロシアニンの製造において、
    (1)一般式(1)
    Figure 2008239870
    (但し、式中X1は、金属酸化物を表す。)
    または、一般式(2)
    Figure 2008239870
    (但し、式中X2は金属原子を表し、Yは、フタルイミドメチル基、または一般式(3)
    Figure 2008239870
    (但し、式中mは、1〜6の整数を表し、R及びRは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
    で表されるスルホンアミド基を表わす。また、n1、n2、n3、n4は、置換基Yの数を表し、各々独立に0から4の整数であって、そのうちの少なくとも一つが0でなく、n1+n2+n3+n4=1〜4である。)
    で表されるフタロシアニン誘導体と銅フタロシアニンを酸性溶媒に溶解してなる酸性溶液を水と混合する第1工程
    (2)前記(1)で得られた混合液から顔料析出物を分離する第2工程
    (3)前記(2)で得られた顔料析出物を、ケトン系有機溶媒で処理するか、または有機溶媒の存在下に機械的応力により分散する第3工程
    を含む微細銅フタロシアニンの製造方法。
  2. 前記一般式(1)中のX1が、酸化チタン、酸化バナジウムである請求項1に記載の微細銅フタロシアニンの製造方法。
  3. 前記一般式(2)中のX2が、銅原子である請求項1または2のいずれかに記載の微細銅フタロシアニンの製造方法。
  4. 前記ケトン系有機溶媒がアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンである請求項1乃至3のいずれかに記載の微細銅フタロシアニンの製造方法。
  5. 酸性溶媒が、硫酸またはメタンスルホン酸である請求項1乃至4のいずれかに記載の微細銅フタロシアニン誘導体の製造方法。
  6. 酸性溶液を水と混合する第1工程において、酸性溶液を微小流路を通じて流通させ、その流通過程で、水と連続的に混合させるものである請求項1乃至5のいずれかに記載の微細銅フタロシアニンの製造方法。
  7. 前記微小流路の等価直径が3mm以下である請求項6に記載の微細銅フタロシアニンの製造方法。
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