JP2008239769A - グラフト共重合体及び樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】洗浄工程を省略しても吸湿性の上昇を抑制でき、電気的特性が確保されており、しかも耐衝撃性を向上させることができるグラフト共重合体を提供する。
【解決手段】本発明のグラフト共重合体は、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤を用いて重合されたグラフト共重合体であって、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び鉄イオンの含有量の合計が30ppm以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば靭性の向上のために用いられるグラフト共重合体に関する。また、半導体封止材等に使用される樹脂組成物に関する。
電気電子製品、自動車部品、建材等には樹脂材料が使用されることがあり、その樹脂材料としては、目的に応じた性能を有するものが使用されている。例えば、トランジスタ、IC等の電子部品においては、電気的特性(例えば、比誘電率及び誘電正接)に優れることから、エポキシ樹脂組成物が半導体素子の封止に広く用いられている。エポキシ樹脂組成物による封止は、量産性に優れ、安価であるものの、エポキシ樹脂組成物は半導体素子に比べて大きい線膨張係数を有するため、封止後に応力が生じやすかった。
そこで、半導体封止材の低応力化を目的として、ブタジエン系ゴム粒子等のゴム粒子を添加し分散させて靭性向上を図る方法が採られている(例えば特許文献1〜4参照)。
特開2000−7890号公報 特開昭62−22825号公報 特開2003−55533号公報 特開2004−315572号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では吸湿性が高くなった。吸収された水分ははんだ熱によって気化、膨張するため、成形品にクラックが生じることがあった。
特許文献4に記載の方法では、洗浄工程を経ることで吸湿性の上昇を抑えているが、工程が煩雑になること、マスターバッチ化されているため添加部数が制限されることが問題であった。
また、近年の半導体素子の高機能化、高集積化に伴って、パッケージの薄型化が求められており、封止に用いる樹脂材料の高靭性化が求められている。
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、洗浄工程を省略しても吸湿性の上昇を抑制できる上に、電気的特性が確保され、しかも靭性を向上させることができるグラフト共重合体を提供することを目的とする。また、吸湿性が低く、クラックの発生が防止される上に、電気的特性が確保され、しかも靭性が高い樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、グラフト共重合体に特定の金属イオンが多量に含まれていると、吸湿性が高くなり、クラックを誘発することを見出した。また、特定の乳化剤を用いると、吸湿性が低くなることを見出した。そして、これらの知見に基づき、さらに検討して、以下のグラフト共重合体及び樹脂組成物を発明した。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤を用いて重合されたグラフト共重合体であって、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び鉄イオンの含有量の合計が30ppm以下であるグラフト共重合体。
[2] [1]に記載のグラフト共重合体と、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのマトリクス成分とを含有する樹脂組成物。
[3] 半導体封止材用である[2]に記載の樹脂組成物。
本発明のグラフト共重合体は、洗浄工程を省略しても吸湿性の上昇を抑制できてクラック発生を防止できる上に、電気的特性が確保され、しかも靭性を向上させることができる。
本発明の樹脂組成物は、吸湿性が低く、クラックの発生が防止される上に、電気的特性が確保され、しかも靭性が高い。
本発明のグラフト共重合体は、グラフト共重合体のラテックスから得られたものである。グラフト共重合体とは、ゴム状重合体にビニル単量体をグラフト重合して得たものである。
靭性をより向上させることができる点では、グラフト共重合体として、粒子状のゴム状重合体にビニル単量体をグラフト重合して得たコア/シェル型構造を有するものが好ましい。
グラフト共重合体を構成するゴム状重合体としては、例えば、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴムもしくはシリコーン/アクリル系複合ゴムを用いることができる。ゴム状重合体の中でも、シリコーン系ゴムまたはシリコーン/アクリル系複合ゴムが好ましく、シリコーン系ゴムがより好ましい。
近年、環境面、安全面の点から、ハロゲンフリー及びアンチモンフリーでの難燃性付与が求められているが、ゴム状重合体がシリコーン系ゴムまたはシリコーン/アクリル系複合ゴムであれば、その要求を容易に満たすことができる。特にシリコーン系ゴムは、難燃性付与の効果に優れている。
ジエン系ゴムとしては、1,3−ブタジエンの単独重合体、または、1,3−ブタジエンとこれに共重合し得る1種以上のビニル単量体とが共重合した共重合体が挙げられる。ジエン系ゴムは、架橋構造を有する。
ここで、1,3−ブタジエンに共重合し得るビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル単量体等が挙げられる。
また、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アリル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物等の架橋性単量体を更に併用することもできる。
該ビニル単量体及び架橋性単量体は、1種又は2種以上を使用することができる。
ジエン系ゴムを得る方法としては、例えば、1,3−ブタジエンのみ、または、1,3−ブタジエンとこれに共重合し得るビニル単量体とを乳化重合する方法が挙げられる。
ジエン系ゴムを乳化重合により得る際に使用する重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)等のアゾ系化合物、過硫酸アンモニウム塩等の過硫酸化合物、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、または上記過硫酸化合物を一成分としたレドックス系開始剤、上記有機過酸化物を一成分としたレドックス系開始剤を使用できる。
これらの中でも、グラフト共重合体中の不純金属イオン合計含有量を容易に少なく(具体的には30ppm以下に)できることから、過硫酸アンモニウム塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)を用いることが好ましい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の重合開始剤を併用することもできる。
ジエン系ゴムを乳化重合により得る際に使用する乳化剤は、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤であり、該グラフト共重合体を配合した樹脂組成物が電気的特性により優れる点で、ノニオン系乳化剤が好ましい。ここでいう電気的特性とは、比誘電率および誘電正接のことである。樹脂組成物が半導体封止材として用いられた場合、比誘電率および誘電正接は信号速度等に影響する。
ノニオン系乳化剤としては、乳化重合の安定性の点から、ポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテルが好ましい。
アンモニウム塩型アニオン系乳化剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム塩、アルキルスルホコハク酸アンモニウム塩、アルケニルスルホコハク酸アンモニウム塩等が挙げられ、乳化重合の安定性の点から、ラウリル硫酸アンモニウム塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム塩が好ましい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の乳化剤を併用することもできる。
重合温度は、重合開始剤の種類にもよるが40〜80℃程度であることが好ましい。
また、重合時には、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、α−メチルスチレン等の連鎖移動剤を添加して、分子量を調整してもよい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、乳化重合により得たジエン系ゴムのラテックスに酸あるいは塩等を添加し、ジエン系ゴムの粒子を肥大化させて、粒子径を調整してもよい。
アクリル系ゴムとしては、1種もしくは2種以上のアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体、または、アルキル(メタ)アクリレートとこれに共重合し得る1種以上のビニル単量体との共重合体が挙げられる。
アクリル系ゴムは単層であってもよいし、2層以上の多層構造を有するものであってもよい。また、2種類以上のポリアルキル(メタ)アクリレート成分を含み、ガラス転移温度を2つ以上有するポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムであってもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとこれに共重合し得る1種以上のビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;メタクリル酸変性シリコーン、フッ素含有ビニル化合物等の各種のビニル単量体が挙げられる。
このビニル単量体の含有量は全単量体中の30質量%以下であることが好ましい。ビニル単量体の含有量が30質量%を超えると、ゴムとしての性能を確保できなくなるおそれがある。
アルキル(メタ)アクリレートとこれに共重合し得る1種以上のビニル単量体には、分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体が、好ましくは全単量体中の20質量%以下、より好ましくは0.1〜18質量%の範囲で含まれていてもよい。
分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体は、架橋剤又はグラフト交叉剤としての役割を有するものである。この単量体を共重合することにより架橋構造を有するアクリル系ゴムを得ることができる。
架橋剤としての役割を果たす単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、多官能メタクリル基変性シリコーン等が挙げられる。
グラフト交叉剤としての役割を果たす単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。アリルメタクリレートは架橋剤として用いることもできる。
これら分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してよい。
アクリル系ゴムを得る方法としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートのみ、または、アルキル(メタ)アクリレートとこれに共重合し得るビニル単量体とを乳化重合する方法が挙げられる。
アクリル系ゴムを乳化重合により重合する際の重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)等のアゾ系化合物、過硫酸アンモニウム塩等の過硫酸化合物、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、または上記過硫酸化合物を一成分としたレドックス系開始剤、上記有機過酸化物を一成分としたレドックス系開始剤を使用できる。
これらの中でも、グラフト共重合体中の不純金属イオン合計含有量を容易に少なく(具体的には30ppm以下に)できることから、過硫酸アンモニウム塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)を用いることが好ましい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の重合開始剤を併用することもできる。
アクリル系ゴムを乳化重合により得る際に使用する乳化剤は、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤であり、グラフト共重合体を配合した樹脂組成物が電気的特性により優れる点で、ノニオン系乳化剤が好ましい。
ノニオン系乳化剤としては、乳化重合の安定性の点から、ポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテルが好ましい。
アンモニウム塩型アニオン系乳化剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム塩、アルキルスルホコハク酸アンモニウム塩、アルケニルスルホコハク酸アンモニウム塩等が挙げられ、乳化重合の安定性の点から、ラウリル硫酸アンモニウム塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム塩が好ましい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の乳化剤を併用することもできる。
重合温度は、重合開始剤の種類にもよるが40〜80℃程度であることが好ましい。
また、重合時には、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、α−メチルスチレン等の連鎖移動剤を添加して、分子量を調整してもよい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、乳化重合により得たアクリル系ゴムのラテックスに酸あるいは塩等を添加し、アクリル系ゴムの粒子を肥大化させて、粒子径を調整してもよい。
シリコーン系ゴムは、オルガノシロキサンの重合体である。シリコーン系ゴムとしては、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが好ましい。
ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンとしては、例えば、メチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンとの共重合体が挙げられる。
メチルシロキサンとしては、3員環以上のメチルシロキサン系環状体が挙げられ、中でも、3〜7員環のものが好ましい。
メチルシロキサンの具体例としては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して用いられる。
ビニル重合性官能基含有シロキサンは、ビニル重合性官能基を含有し、かつメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合し得るものである。
ビニル重合性官能基含有シロキサンの中でも、メチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物が好ましい。ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物としては、具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン及びδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシラン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシラン、さらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
上記シロキサンにシロキサン系架橋剤を併用してもよい。シロキサン系架橋剤としては、3官能性又は4官能性のシラン系架橋剤、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
シロキサン系架橋剤を併用することで架橋構造を有するシリコーン系ゴムを得ることができる。
上記ポリオルガノシロキサンの製造方法としては、例えば、メチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンと必要に応じてシロキサン系架橋剤とを含む混合物を乳化剤と水によって乳化させてラテックスを調製する工程と、このラテックスを粒子化する工程と、酸触媒によりシロキサンを重合する工程と、アンモニア水等のアルカリ性物質により酸を中和して、重合を停止させる工程とを有する方法が挙げられる。
シロキサンを乳化するための乳化剤は、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤であり、グラフト共重合体を配合した樹脂組成物が電気的特性により優れる点で、ノニオン系乳化剤が好ましい。
ノニオン系乳化剤としては、乳化重合の安定性の点から、ポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテルが好ましい。
アンモニウム塩型アニオン系乳化剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム塩、アルキルスルホコハク酸アンモニウム塩、アルケニルスルホコハク酸アンモニウム塩等が挙げられ、乳化重合の安定性の点から、ラウリル硫酸アンモニウム塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム塩が好ましい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の乳化剤を併用することもできる。
ラテックスを粒子化する方法としては、例えば、高速回転による剪断力で粒子化するホモミキサーを用いる方法、高圧発生機による噴出力で粒子化するホモジナイザーを用いる方法などが挙げられる。得られるポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径分布が小さくなる点では、ホモジナイザーが好ましい。
酸触媒としては、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類及び硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸触媒は、シロキサン、乳化剤及び水とともに添加してもよいし、ラテックスに一括して添加してもよいし、ラテックスに一定速度で滴下してもよい。
シリコーン/アクリル系複合ゴムは、ポリオルガノシロキサン成分のラテックス中にアルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、ラジカル重合開始剤により乳化重合させて得たものである。
ポリオルガノシロキサン成分にアルキル(メタ)アクリレートを添加する方法としては、例えば、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスに一括で添加する方法、ポリオルガノシロキサン成分のラテックス中に一定速度で滴下する方法が挙げられる。得られるグラフト共重合体を含む樹脂組成物の靭性がより高くなる点では、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスに一括で添加する方法が好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート及びヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してよい。
グラフト共重合体を含む樹脂組成物の靭性及び成形後の光沢を考慮すると、n−ブチルアクリレートが好ましい。
また、アルキル(メタ)アクリレートとしては、多官能性アルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してよい。
アルキル(メタ)アクリレートを重合させる際の重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)等のアゾ系化合物、過硫酸アンモニウム塩等の過硫酸化合物、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、または上記過硫酸化合物を一成分としたレドックス系開始剤、上記有機過酸化物を一成分としたレドックス系開始剤を使用できる。
これらの中でも、グラフト共重合体中の不純金属イオン合計含有量を容易に少なく(具体的には30ppm以下に)できることから、過硫酸アンモニウム塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)を用いることが好ましい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の重合開始剤を併用することもできる。
アルキル(メタ)アクリレートを重合させる際に使用する乳化剤は、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤であり、グラフト共重合体を配合した樹脂組成物が電気的特性により優れる点で、ノニオン系乳化剤が好ましい。
ノニオン系乳化剤としては、乳化重合の安定性の点から、ポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテルが好ましい。
アンモニウム塩型アニオン系乳化剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム塩、アルキルスルホコハク酸アンモニウム塩、アルケニルスルホコハク酸アンモニウム塩等が挙げられ、乳化重合の安定性の点から、ラウリル硫酸アンモニウム塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム塩が好ましい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の乳化剤を併用することもできる。
グラフト重合方法としては、水系での重合が好ましく、乳化重合がより好ましい。水系での重合、特に乳化重合であれば、分散性の高い粒子状のグラフト共重合体が容易に得られる。
また、過硫酸塩等の親水基を有する開始剤を用いるいわゆるソープフリー重合と乳化重合とを組み合わせたソープフリー乳化重合を適用することも好ましい。
以下、乳化重合によるグラフト重合について説明する。
上記ゴム状重合体にグラフト重合するビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びアルキル置換スチレン等の芳香族ビニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル単量体、ヒドロキシメタクリレート等のヒドロキシ基を有するビニル単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、上記架橋性単量体を併用することもできる。
グラフト重合において、ゴム状重合体とビニル単量体との合計量を100質量%とした際に、ビニル単量体の全量は5〜50質量%であることが好ましい。ビニル単量体の全量が50質量%を超えると,靭性を向上させることができないことがあり、5質量%未満であると、樹脂組成物中でのグラフト共重合体の分散性が低くなることがある。
グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、ゴム状重合体の重合と同様に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)等のアゾ系化合物、過硫酸アンモニウム塩等の過硫酸化合物、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、または上記過硫酸化合物を一成分としたレドックス系開始剤、上記有機過酸化物を一成分としたレドックス系開始剤を使用できる。
これらの中でも、グラフト共重合体中の不純金属イオン合計含有量を容易に少なく(具体的には30ppm以下に)できることから、過硫酸アンモニウム塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)を用いることが好ましい。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の重合開始剤を併用することもできる。
また、グラフト重合の際には、連鎖移動剤を添加して、分子量やグラフト率を調整してもよい。
乳化グラフト重合の際に使用する乳化剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤のいずれも使用できるが、吸湿性の上昇をより抑制できることから、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤が好ましく、グラフト共重合体を配合した樹脂組成物が電気的特性に優れる点で、ノニオン系乳化剤がより好ましい。
ノニオン系乳化剤としては、乳化重合の安定性の点から、ポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテルが好ましい。
アンモニウム塩型アニオン系乳化剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム塩、アルキルスルホコハク酸アンモニウム塩、アルケニルスルホコハク酸アンモニウム塩等が挙げられ、乳化重合の安定性の点から、ラウリル硫酸アンモニウム塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム塩が好ましい。
なお、乳化グラフト重合時の乳化剤は、新たに添加せずに、ゴム状重合体のラテックスに含まれるものをそのまま使用してもよい。
グラフト重合は、樹脂組成物中での分散性と応力緩和性のバランスがよくなる点では、一段もしくは二段以上の多段グラフト重合を適用することが好ましい。
上記のように重合することにより、グラフト共重合体のラテックスを得ることができる。
このグラフト共重合体のラテックスに乳化剤をさらに添加することもできる。さらに添加する乳化剤についても、上記と同様に、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤が好ましい。
また、グラフト共重合体のラテックスに、必要に応じて、酸化防止剤や添加剤を適宜添加することもできる。
上記乳化グラフト重合により得たグラフト共重合体のラテックスの平均粒子径は、分散性の観点から、0.01〜3μmであることが好ましく、0.01〜1.5μmであることがより好ましく、0.1〜1.5μmであることが特に好ましい。
グラフト共重合体のラテックスから、グラフト共重合体の粉体を回収する方法としては、例えば、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、凝固法等が挙げられる。中でも、樹脂組成物中でのグラフト共重合体の分散性が高くなることから、噴霧乾燥法が好ましい。
噴霧乾燥法は、ラテックスを乾燥機中に微小液滴状に噴霧し、これに熱風を当てて乾燥する方法である。噴霧乾燥装置における液滴を発生する方法としては、例えば、回転円盤型式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、加圧二流体ノズル式等が挙げられる。
乾燥機の容量としては、実験室で使用するような小規模な容量から、工業的に使用するような大規模な容量までのいずれであってもよい。
乾燥機における乾燥用加熱ガスの供給部の構造、乾燥用加熱ガス及び乾燥粉末の排出部の構造は目的に応じて適宜選択すればよい。
加熱ガスの温度は200℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。
噴霧乾燥するグラフト共重合体のラテックスは単独であってもよいし、複数であってもよい。さらには、噴霧乾燥時のブロッキング、嵩比重等の粉末特性を向上させるために、ラテックスにシリカ等の任意成分を添加してから噴霧乾燥することもできる。
噴霧乾燥法により得たグラフト共重合体の粉体は、平均粒子径が10〜200μmであることが好ましく、20〜180μmであることがより好ましい。グラフト共重合体の粉体の平均粒子径が200μmを超えても、10μm未満であっても、グラフト共重合体の樹脂組成物中での分散性が低下して、靭性が向上しないことがある。
グラフト共重合体の粉体の水分含有量は、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。グラフト共重合体の粉体の水分含有量が1.5質量%を超えると、グラフト共重合体を含む樹脂組成物を成形した際等にクラックを発生することがある。
本発明のグラフト共重合体は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び鉄イオンの含有量の合計(以下、不純金属イオン合計含有量という。)が30ppm以下であり、20ppmであることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、全く含まないことが最も好ましい。不純金属イオン合計含有量が30ppm以下であることにより、このグラフト共重合体を、例えば改質剤として他の樹脂に添加した場合に、その改質剤の本来の機能、作用を発揮させた上で、吸湿性の上昇を抑制でき、クラックの発生等を防止できる。
不純金属イオン含有量は、乾式灰化処理後の誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP分析)により測定される。
グラフト共重合体がシリコーンを含まない場合の乾式灰化処理は、白金るつぼに1.5g計量したグラフト共重合体を電気ヒータ(200℃)で3時間予備処理を行った後、電気炉(650℃)で30分加熱する処理である。このように灰化処理したものに35%塩酸を10ml加えて溶解させた後、100mlメスフラスコに移し、精製水でメスアップしたものを測定試料としてICP分析を行う。
グラフト共重合体がシリコーンを含む場合の乾式灰化処理は、グラフト共重合体0.25gを専用容器(四フッ化ポリエチレン製)に計量し、硝酸8mlを添加し、マイクロ波により分解させる処理である。この処理により、有機物を分解し、有機ケイ素を無機ケイ素にする。このように灰化処理したものを冷却後、フッ化水素酸2mlを添加し、再度マイクロ波により分解させ溶解させた後、精製水でメスアップしたものを測定試料としてICP分析を行う。
不純金属イオン合計含有量を30ppm以下にするためには、例えば、上述したようにラジカル重合の重合開始剤として、上記金属イオンを含まない過硫酸アンモニウム塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)を用いればよい。
より具体的には、以下の[A]の製造方法によりグラフト共重合体を製造すればよい。
[A] ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤を用いた乳化重合によりゴム状重合体のラテックスを調製し、
該ゴム状重合体にビニル単量体を乳化グラフト重合するグラフト共重合体の製造方法であって、
乳化グラフト重合の際の重合開始剤として、過硫酸アンモニウム塩または4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)を用いるグラフト共重合体の製造方法。
以上説明したグラフト共重合体は、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤を用いて重合されたものであり、ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤が残留している。また、上記グラフト共重合体は不純金属イオン合計含有量が30ppm以下である。
本発明者らが調べた結果、このようなグラフト共重合体は、吸湿性の上昇を抑制できる上に、電気的特性が確保され、しかも靭性を向上させることができることが判明した。このようなグラフト共重合体は、半導体封止材用の樹脂組成物の靭性向上剤として好適に利用できる。
また、このグラフト共重合体では、洗浄工程を省略しても吸湿性の上昇を抑制できるから、グラフト共重合体を製造するための工程を簡略化できる。
本発明の樹脂組成物は、上述したグラフト共重合体と、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのマトリクス成分とを含有するものである。
硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂が挙げられる。これらの中でも、電気的特性に優れ、半導体封止にとりわけ適していることから、エポキシ系樹脂が好ましい。
また、不具合が無ければ上記硬化性樹脂の2種以上を混合して使用することもできる。また、硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂とに分類できるが、そのいずれであってもよい。
エポキシ系樹脂としては、その分子中にエポキシ結合を少なくとも2個有するものであれば分子構造、分子量等に特に制限はない。具体的には、例えば、ジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型等の各種エポキシ系樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してよい。
また、エポキシ系樹脂としては、グラフト共重合体の分散性の点からは、固形状のものが好ましい。
エポキシ系樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤、アミン系硬化剤及び酸無水物硬化剤等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してよい。硬化剤使用量は、エポキシ基の化学量論量であることが好ましい。
フェノール樹脂としては、例えば、各種フェノール類とホルムアルデヒド又は炭素数2以上のアルデヒドから誘導されるレゾール型フェノール樹脂あるいはノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。フェノール樹脂は、乾性油、キシレン樹脂、メラミン樹脂等で変性されたものであってもよい。
また、フェノール樹脂としては、グラフト共重合体の分散性が高くなる点からは、固形状のものが好ましい。
フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂である場合には、硬化剤として、ヘキサミン等のポリアミン、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、ポリホルムアルデヒド化合物あるいはレゾール型フェノール樹脂等が併用される。
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和二塩基酸と、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA等の多価アルコールと、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の不飽和二塩基酸とを180〜250℃で反応させて得られるものが挙げられる。
また、不飽和ポリエステル樹脂は、上記不飽和二塩基酸と共重合可能な、その他の単量体を共重合させてもよい。その他の単量体としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ビニルトルエン、アクリル酸エステル類等が挙げられる。また、その他の単量体のプレポリマーを用いることもできる。
マトリクス成分が上記硬化性樹脂である場合の、樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)中のグラフト共重合体の含有量及び硬化性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の使用目的に応じて適宜選択されるが、グラフト共重合体の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましい。グラフト共重合体の含有量が、0.1質量部以上であれば、靭性を充分に向上させることができ、50質量部以下であれば、硬化性樹脂中で分散不良を起こさない。
また、硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、各種添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、種々の硬化促進剤、シリコーンオイル、天然ワックス類、合成ワックス類等の離型剤、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ等の粉体やガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、ハイドロタルサイト類、希土類酸化物等のハロゲントラップ剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物の調製方法としては、例えば、各成分を溶液状態で混合する方法、各成分をミキシングロールやニーダー等を用いて溶融混合し、冷却した後、粉砕もしくは打錠する方法等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、トランスファー成形、シートコンパウンドモールディング成形、バルクモールディング成形等が挙げられる。
また、硬化性樹脂組成物が溶液状態である場合には、接着剤として塗布することもできる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリエチレン、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の硬質、半硬質、軟質の含塩素系樹脂;ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリレート−スチレン共重合体(MS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル樹脂(ASA)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン樹脂(AES)等のスチレン系樹脂(St系樹脂);ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂(Ac系樹脂);ポリカーボネート系樹脂(PC系樹脂);ポリアミド系樹脂(PA系樹脂);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂(PEs系樹脂);ポリ乳酸、熱可塑性ポリビニルアルコール、その他生分解性を有する植物原料、石油原料由来の環境適応樹脂(生分解性樹脂);(変性)ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE系樹脂)、ポリオキシメチレン系樹脂(POM系樹脂)、ポリスルフォン系樹脂(PSO系樹脂)、ポリアリレート系樹脂(PAr系樹脂)、ポリフェニレン系樹脂(PPS系樹脂)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(PU系樹脂)等のエンジニアリングプラスチックス、PC/ABS等のPC系樹脂/St系樹脂アロイ、PVC/ABS等のPVC系樹脂/St系樹脂アロイ、PA/ABS等のPA系樹脂/St系樹脂アロイ、PA系樹脂/TPEアロイ、PA/PP等のPA系樹脂/ポリオレフィン系樹脂アロイ、PBT系樹脂/TPE、PC/PBT等のPC系樹脂/PEs系樹脂アロイ、ポリオレフィン系樹脂/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ、PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂アロイ、PVC/PMMA等のPVC系樹脂/Ac系樹脂アロイ等のポリマーアロイが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス1,4−ポリイソプレン等が挙げられる。
マトリクス成分が上記熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーである場合の、樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物)中のグラフト共重合体の含有量及び熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーの含有量は、熱可塑性樹脂組成物の使用目的に応じて適宜選択されるが、グラフト共重合体の含有量は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましい。グラフト共重合体の含有量が0.1質量部以上であれば、靭性を充分に向上させることができ、50質量部以下であれば、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー中で分散不良を起こさない。
熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの両方を含有する場合には、上記と同様の理由から、グラフト共重合体の含有量は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、熱又は光に対する安定剤、例えばフェノール系、フォスファイト系、イオウ系安定剤、紫外線吸収剤、アミン系の光安定剤、耐加水分解性等の改質剤、例えばエポキシ系改質剤が含まれてもよい。
また、必要に応じて、難燃化剤や酸化チタン、タルク等の充填剤、染顔料、可塑剤等を含有することもできる。
熱可塑性樹脂組成物の調製方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー等により各成分を混合し、これにより得た混合物を押し出し機、ニーダー、ミキサー等で溶融混合する方法、予め溶融させた成分に他成分を逐次混合していく方法が挙げられる。また、各成分の混合物を成形機で直接成形する方法でもよい。
熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、押し出し成形、熱成形、発泡成形、溶融紡糸等を適用できる。
本発明の樹脂組成物は、上述したグラフト共重合体を含有するものであるから、吸湿性が低く、クラックの発生が防止される上に、電気的特性が確保され、しかも靭性が高い。このような樹脂組成物は、半導体封止材用として好適である。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各記載中「部」は質量部を、「%」は質量%を意味するものとする。
以下の例において、ラテックスの平均粒子径、グラフト共重合体の粉体の平均粒子径、グラフト共重合体の粉体の水分含有量、残存金属イオン量は、以下の(1)〜(4)の方法により測定した。
(1)ラテックスの平均粒子径
得られたラテックスを脱イオン水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA−910)を用い、50%体積平均粒子径を測定した。
(2)グラフト共重合体の粉体の平均粒子径
得られたグラフト共重合体の粉体を脱イオン水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA−910)を用い、50%体積平均粒子径を測定した。
(3)グラフト共重合体の粉体の水分含有量
得られたグラフト共重合体の粉体をMoisture Analyzer−MB45(Ohaus製)を用いて、105℃で15分間処理し、水分含有量を測定した。
(4)不純金属イオン量
段落0050に記載した方法により乾式灰化処理したグラフト共重合体に35%HClを10ml加えて溶解させた後、100mlメスフラスコに移し、精製水でメスアップしたものを測定試料としてICP発光分析装置(Thermo社製IRIS Intrepid II XSP)により不純金属イオン量を測定した。なお、検量線は0/0.1/1/10ppmの4点、各金属イオンの測定波長はナトリウムイオン589.5nm、カリウムイオン766.4nm、カルシウムイオン184.0nm、マグネシウムイオン279.5nm、アルミニウムイオン396.1nm、鉄イオン259.9nmとした。
[参考例1]シリコーン系ゴムラテックス(L−1)の製造
γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2.0部及びオクタメチルシクロテトラシロキサン98.0部を混合して、シロキサン系混合物100部を得た。
これにポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテル1.00部を溶解した脱イオン水150部を添加し、ホモミキサーにて10000rpmで5分間攪拌した。次いで、ホモジナイザーに20MPaの圧力で3回通過させて、安定な予備混合オルガノシロキサンエマルションを得た。
冷却コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、上記予備混合オルガノシロキサンエマルションを入れ、ドデシルベンゼンスルホン酸0.60部と脱イオン水30.0部との混合物を3分間にわたり添加した。
これにより得た水溶液を80℃に加熱した状態で、80時間温度を維持してシロキサンを反応させた後、冷却した。次いで、これにより得た反応物を室温で6時間保持した後、アンモニア水溶液で中和して、シリコーン系ゴムラテックス(L−1)を得た。
このシリコーン系ゴムラテックス(L−1)を180℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、29.3%であった。また、このラテックスの平均粒子径は700nmであった。
[参考例2]シリコーン系ゴムラテックス(L−2)の製造
参考例1におけるポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテル1.00部をラウリル硫酸アンモニウム1.50部に、ドデシルベンゼンスルホン酸0.60部を硫酸0.20部に、80℃での維持時間を80時間から4時間に変更したこと以外は参考例1と同様にして、シリコーン系ゴムラテックス(L−2)を得た。
このシリコーン系ゴムラテックス(L−2)を180℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、30.7%であった。また、このラテックスの平均粒子径は300nmであった。
[参考例3]シリコーン系ゴムラテックス(L−3)の製造
参考例2におけるラウリル硫酸アンモニウム1.50部をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.00部に変更したこと以外は参考例2と同様にして、シリコーン系ゴムラテックス(L−3)を得た。
このシリコーン系ゴムラテックス(L−3)を180℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、29.8%であった。また、このラテックスの平均粒子径は310nmであった。
[実施例1]グラフト共重合体(IM−1)の製造
参考例1によって得たシリコーン系ゴムラテックス(L−1)273.0部(ポリマー換算で80.0部)をセパラブルフラスコに採取し、脱イオン水6.5部を添加、混合した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、70℃まで昇温した。液温が70℃となった時点で、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)0.1部を脱イオン水34.0部に溶解させた水溶液を添加した後に、メチルメタクリレート19.5部、アクリル酸ブチル0.5部の混合液を1時間にわたって滴下して重合した。滴下終了後、温度70℃以上の状態を1時間保った後に冷却して、グラフト共重合体(IM−1)のラテックスを得た。グラフト共重合体(IM−1)のラテックスの平均粒子径は770nmであった。
得られたグラフト共重合体(IM−1)のラテックスを、乾燥機内に圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃で乾燥して、グラフト共重合体(IM−1)の粉体を得た。グラフト共重合体(IM−1)の粉体の平均粒子径は38μm、水分含有量は0.85%であった。
[実施例2]グラフト共重合体(IM−2)の製造
参考例1によって得たシリコーン系ゴムラテックス(L−1)68.26部(ポリマー換算で19.9部)をセパラブルフラスコに採取し、脱イオン水178.40部を添加、混合した後、ブチルアクリレート59.6部及びアリルメタクリレート0.5部の混合物を添加した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。液温が60℃となった時点で、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)0.1部を脱イオン水6.7部に溶解させた水溶液を添加してラジカル重合を開始させた。(メタ)アクリレート成分の重合を完結させるため、1時間この状態を維持して、シリコーン/アクリル系複合ゴムのラテックスを得た。
このラテックスの液温が65℃に低下した後、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)0.1部を脱イオン水6.7部に溶解させた水溶液を添加し、さらに、メチルメタクリレート19.5部及びアクリル酸ブチル0.5部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃以上の状態を1時間保った後に冷却して、シリコーン/アクリル系複合ゴムにメチルメタクリレート及びアクリル酸ブチルをグラフト重合させたグラフト共重合体(IM−2)のラテックスを得た。グラフト共重合体(IM−2)のラテックスの平均粒子径は1100nmであった。
得られたグラフト共重合体(IM−2)のラテックスを、乾燥機内に圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃で乾燥して、グラフト共重合体(IM−2)の粉体を得た。グラフト共重合体(IM−2)の粉体の平均粒子径は40μm、水分含有量は0.90%であった。
[実施例3]グラフト共重合体(IM−3)の製造
参考例2によって得たシリコーン系ゴムラテックス(L−2)65.08部(ポリマー換算で19.9部)をセパラブルフラスコに採取し、脱イオン水181.59部を添加、混合した後、ブチルアクリレート59.6部及びアリルメタクリレート0.5部の混合物を添加した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。液温が60℃となった時点で、過硫酸アンモニウム0.08部を脱イオン水6.7部に溶解させた水溶液を添加してラジカル重合を開始させた。(メタ)アクリレート成分の重合を完結させるため、1時間この状態を維持し、シリコーン/アクリル系複合ゴムのラテックスを得た。
このラテックスの液温が65℃に低下した後、メチルメタクリレート19.5部及びアクリル酸ブチル0.5部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃以上の状態を1時間保った後に冷却し、シリコーン/アクリル系複合ゴムにメチルメタクリレート及びアクリル酸ブチルをグラフト重合させたグラフト共重合体(IM−3)のラテックスを得た。グラフト共重合体(IM−3)のラテックスの平均粒子径は530nmであった。
得られたグラフト共重合体(IM−3)のラテックスを、乾燥機内に圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃で乾燥して、グラフト共重合体(IM−3)の粉体を得た。グラフト共重合体(IM−3)の粉体の平均粒子径は38μm、水分含有量は0.79%であった。
[実施例4]グラフト共重合体(IM−4)の製造
セパラブルフラスコに、脱イオン水88部、n−ブチルアクリレート4.914部、アリルメタクリレート0.123部を投入し、窒素雰囲気中、250rpmで撹拌しながら80℃に昇温した。
次に、予め調製した過硫酸アンモニウム0.10部、脱イオン水5.2部の溶液を一括投入し、60分間保持し第一段目のソープフリー重合を行った。
次に、第一段目の重合が終了したセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート63.882部、アリルメタクリレート1.597部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム0.6部、脱イオン水34.0部の混合液を180分かけて滴下した。その後、1時間保持し、第二段目の乳化重合を行って、アクリル系ゴムラテックス(L−4)を得た。
得られたラテックス(L−4)に、メチルメタクリレート28.894部、ブチルアクリレート0.59部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム0.4部、脱イオン水15.6部の混合液を100分かけて滴下した。その後、1時間保持してから乳化重合を終了させて、グラフト共重合体(IM−4)のラテックスを得た。グラフト共重合体(IM−4)のラテックスの平均粒子径は600nmであった。
得られたグラフト共重合体(IM−4)のラテックスを、乾燥機内に圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃で乾燥して、グラフト共重合体(IM−4)の粉体を得た。グラフト共重合体(IM−4)の粉体の平均粒子径は38μm、水分含有量は0.85%であった。
[比較例1]グラフト共重合体(IM−5)の製造
セパラブルフラスコに、脱イオン水88部、n−ブチルアクリレート4.914部、アリルメタクリレート0.123部を投入し、窒素雰囲気中、250rpmで撹拌しながら80℃に昇温した。
次に、予め調製した過硫酸カリウム0.10部、脱イオン水5.2部の溶液を一括投入し、60分間保持し第一段目のソープフリー乳化重合を行った。
次に、第一段目の重合が終了したセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート63.882部、アリルメタクリレート1.597部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.6部、脱イオン水34.0部の混合液を180分かけて滴下した。その後、1時間保持し、第二段目の乳化重合を行って、アクリル系ゴムラテックス(L−5)を得た。
得られたラテックス(L−5)に、メチルメタクリレート28.894部、ブチルアクリレート0.59部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.4部、脱イオン水15.6部の混合液を100分かけて滴下した。その後、1時間保持してから乳化重合を終了させて、グラフト共重合体(IM−5)のラテックスを得た。グラフト共重合体(IM−5)のラテックスの平均粒子径は620nmであった。
得られたグラフト共重合体(IM−5)のラテックスを、乾燥機内に圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃で乾燥して、グラフト共重合体(IM−5)の粉体を得た。グラフト共重合体(IM−5)の粉体の平均粒子径は38μm、水分含有量は0.55%であった。
[比較例2]グラフト共重合体(IM−6)の製造
参考例3によって得たシリコーン系ゴムラテックス(L−3)67.11部(ポリマー換算で19.9部)をセパラブルフラスコに採取し、脱イオン水179.55部を添加混合した後、ブチルアクリレート59.7部、アリルメタクリレート0.5部、キュメンハイドロパーオキサイド0.3部の混合物を添加した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.24部を脱イオン水6.7部に溶解させた水溶液を添加してラジカル重合を開始させた。(メタ)アクリレート成分の重合を完結させるため、1時間この状態を維持して、シリコーン/アクリル系複合ゴムのラテックスを得た。
このラテックスの液温が65℃に低下した後、メチルメタクリレート19.5部、アクリル酸ブチル0.5部、キュメンハイドロパーオキサイド0.20部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃以上の状態を1時間保った後に冷却して、シリコーン/アクリル系複合ゴムにメチルメタクリレート及びアクリル酸ブチルをグラフト重合させたグラフト共重合体(IM−6)のラテックスを得た。グラフト共重合体(IM−6)のラテックスの平均粒子径は550nmであった。
得られたグラフト共重合体(IM−6)のラテックスを、乾燥機内に圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧し、熱風入口温度180℃で乾燥して、グラフト共重合体(IM−6)の粉体を得た。グラフト共重合体(IM−6)の粉体の平均粒子径は40μm、水分含有量は0.75%であった。
上記のようにして得たグラフト共重合体(IM−1)〜(IM−6)の不純金属イオン含有量を表1に示す。
Figure 2008239769
[実施例5〜10、比較例3〜5]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化(株)製アデカレジンEP−4100E)100部、テトラヒドロメチル無水フタル酸(旭電化(株)製アデカハードナーEH−3326)85部、及び表2に示すグラフト共重合体をフラスコ内で60℃、150rpmにて90分間撹拌した。次いで、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール1部を添加し、更に撹拌混合して、熱硬化性樹脂組成物を得た。
この熱硬化性樹脂組成物を金型に充填し、80℃で2時間、120℃で6時間加熱し、硬化させて、シート状の成形体を製造した。
この成形体を用い、アイゾット衝撃強度、吸水率、比誘電率、誘電正接、難燃性を以下のように評価した。評価結果を表2に示す。
[アイゾット衝撃強度]
シート状成形体を切断して試験片を作製し、ASTM D256に基づいて測定した(厚み:1/4インチ、単位:J/m)。アイゾット衝撃強度は靭性の指標になる。
[吸水率]
シート状成形体を、厚み3mm×幅50mm×長さ50mmに切断して試験片とし、JIS K 6911に基づいて測定した。吸水率は吸湿性の指標になる。
[比誘電率、誘電正接]
シート状成形体を、厚み3mm×幅30mm×長さ30mmに切断して試験片を作製し、この試験片を温度23℃、湿度60%下に90時間静置した後、以下に示す条件にて、樹脂シートの誘電率及び誘電正接を測定した。
測定装置:RF impedance/material analyzer HP4291B(アジレント・テクノロジー(株)製)
測定周波数:1MHz、1GHz
測定温度 :23℃
測定湿度 :60%
[難燃性評価]
シート状成形体を、厚み3mm×幅12.7mm×長さ127mmに切断して試験片5本を作製し、これらを温度23℃、湿度50%の環境下に48時間静置した後、UL94試験を行った。5本のうち脱脂綿を着火させる有炎落下物が発生した本数を数えた。本数が少ないほど、難燃性に優れる。
Figure 2008239769
ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤を用いて重合されたグラフト共重合体であり、不純金属イオン合計含有量が30ppm以下であった実施例5〜10の熱硬化性樹脂組成物では、アイゾット衝撃強度が高く、靭性に優れていた。また、吸水率が小さかった。
シリコーン系ゴムを用いた実施例5〜7の熱硬化性樹脂組成物では、特に難燃性に優れていた。
シリコーン/アクリル系複合ゴムを用いた実施例8及び9の熱硬化性樹脂組成物は、特にアイゾット衝撃強度が高く、靭性に優れていた。
ノニオン系の乳化剤を用いて重合したグラフト共重合体を含有する実施例5〜8の熱硬化性樹脂組成物は、比誘電率及び誘電正接の電気的特性に優れていた。
これに対し、グラフト共重合体を含まない比較例3の熱硬化性樹脂組成物では、アイゾット衝撃強度が低かった。
アクリル系ゴムを得る際の重合開始剤として過硫酸カリウムを用い、乳化剤としてジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムを用い、不純金属イオン合計含有量が30ppmを超えていた比較例4の熱硬化性樹脂組成物は吸水率が高かった。
また、シリコーン系ゴムを得る際の乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用い、シリコーン/アクリル系複合ゴムを得る際に硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を用い、不純金属イオン合計含有量が30ppmを超えていた比較例5の熱硬化性樹脂組成物も吸水率が高かった。

Claims (3)

  1. ノニオン系乳化剤またはアンモニウム塩型アニオン系乳化剤を用いて重合されたグラフト共重合体であって、
    ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び鉄イオンの含有量の合計が30ppm以下であるグラフト共重合体。
  2. 請求項1に記載のグラフト共重合体と、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのマトリクス成分とを含有する樹脂組成物。
  3. 半導体封止材用である請求項2に記載の樹脂組成物。
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