JP2008230971A - ジアリールカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 芳香族ヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニルとを反応器に供給して反応させることにより、ジアリールカーボネートを連続的に製造する方法において、該反応器として反応塔を用いて、かつ、該反応塔に供給する該ハロゲン化カルボニルの流量をG[m3/秒]、該反応塔の水平方向の塔内断面積をA[m2]とした場合に、0.01≦G/A≦0.10[m/秒]とする。
【選択図】 図1
Description
例えば、溶媒を用いて、水酸化ナトリウム溶液存在下、芳香族ヒドロキシ化合物と、ハロゲン化カルボニルであるホスゲンとの反応を行なうことにより、ジアリールカーボネートを得られることが知られている。この反応では溶媒と水酸化ナトリウム溶液とを使用するが、副生物として塩化ナトリウムを大量に生成すること、溶媒を回収しなければならないこと等の課題を有していた。
ここで、上述の反応を気液反応で行なった場合、通常、芳香族ヒドロキシ化合物が液相となる。このとき、原料を効率的に利用するためには、ハロゲン化カルボニルをほぼ完全に反応させることが望ましい。そのため芳香族ヒドロキシ化合物を、ハロゲン化カルボニルに対して大過剰に用いて、ほぼ完全に反応させることが考えられる。しかし、この場合、未反応の芳香族ヒドロキシ化合物を回収する負担が大きくなる傾向がある。
そこで、ほぼ化学量論的な比率で、芳香族ヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニルとを反応させることが望ましい。しかし、上述の反応では、ハロゲン化水素が副生するため、反応後半では気相中のハロゲン化カルボニルの濃度が、著しく低下する傾向があった。そのため、気相と液相とを十分な時間接触させ、さらに気相と液相との接触界面を大きくするために、可動部を有する反応器を用いて、強攪拌下にて気泡を小さく砕くという手法が用いられてきた。
したがって、気液反応では、気相と液相との接触界面を大きくするため、通常、攪拌装置による気−液回分反応方式、又は、連続反応方式にて反応が行われる。
しかし、上述のように芳香族ヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニルとを直接反応させる場合、気相反応であっても、気液反応であっても、例えばホスゲンや塩化水素のような有毒ガスを多量に扱うことになる。そのため、可動部を有する反応器では、有毒ガス漏洩の可能性があり、安全性の面で課題を有していた。
ことも好ましい(請求項12)。
本発明のジアリールカーボネートの製造方法においては、芳香族ヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニルとを原料として、それらを反応させることによりジアリールカーボネートを製造する。以下、これらの原料について説明する。
本発明に用いられる芳香族ヒドロキシ化合物は、芳香環とヒドロキシ基とを有する化合物であればよく、本発明の効果を著しく損なわない限り、他に制限はない。
芳香環としては、π電子が非局在化している環であれば、その種類は制限されず、芳香族炭化水素環でも芳香族複素環でもよい。個々の環を構成する原子数は、通常4以上、好ましくは5以上、また、通常7以下、好ましくは6以下である。芳香族複素環の場合、環を構成する炭素以外の原子(ヘテロ原子)としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、芳香族ヒドロキシ化合物一分子あたりの環の数も制限されず、単一の芳香環を有していてもよく、一の芳香環に他の一又は二以上の環が縮合してなる縮合環を有していてもよい。縮合環の場合、芳香環に縮合する環の数は制限されないが、通常は2以下、好ましくは1である。
また、ヒドロキシ基は、芳香族ヒドロキシ化合物の一分子中に少なくとも1つ存在すればよく、その上限は制限されないが、好ましくは1つである。また、ヒドロキシ基は通常は上述の芳香環に結合するが、その結合位置も任意である。
フェノール及びその誘導体の具体例としては、フェノール;クレゾール、イソプロピルフェノール、等のアルキルフェノール;クロロフェノール、等のハロゲン化フェノール;メトキシフェノール、等のアルコキシフェノール;等が挙げられる。
その他の芳香族ヒドロキシ化合物の例としては、ナフトール、等の芳香族炭化水素多環式ヒドロキシ化合物;4−ヒドロキシキノリン、等の芳香族複素単環式又は多環式ヒドロキシ化合物;等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、フェノール及びその誘導体が好ましく、中でも、フェノールが好ましい。
なお、本発明の製造方法において、芳香族ヒドロキシ化合物としては、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に用いられるハロゲン化カルボニルは、カルボニル基とハロゲン原子とが結合した化合物であれば、本発明の効果を著しく損なわない限り、他に制限はない。
本発明に用いられるハロゲン化カルボニルとしては、例えば、ホスゲン、ブロムカルボニル等が挙げられる。中でもホスゲンが特に好ましい。
なお、本発明の製造方法において、ハロゲン化カルボニルとしては、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明のジアリールカーボネートの製造方法では、上述の原料(芳香族ヒドロキシ化合物及びハロゲン化カルボニル)を反応器に供給する際の存在状態は任意であるが、通常は、双方の原料を共に気体の状態で反応器に供給して直接反応させる(即ち、気相反応させる)か、何れか一方の原料を気体の状態で、他方を液体の状態で反応器に供給して直接反応させる(即ち、気液反応させる)。
しかし、芳香族ヒドロキシ化合物を気体状態で供給するためには、高い反応温度と高減圧下での反応となる傾向があり、工業的に不利となる可能性がある。
従って、本発明のジアリールカーボネートの製造方法においては、芳香族ヒドロキシ化合物を液体状態にて、ハロゲン化カルボニルを気体状態にて、反応器に供給して直接反応させる(即ち、気液反応させる)ことが好ましい。
以下の記載では、芳香族ヒドロキシ化合物を液体状態にて、ハロゲン化カルボニルを気体状態にて、反応器に供給して直接反応させる場合(即ち、気液反応の場合)を中心に説明する。但し、本発明の製造方法は気液反応させる場合に制限されるものではない。
本発明の製造方法においては、反応器として反応塔を用いることを特徴としている。ここで、本発明において「反応塔」とは、可動部分を有さない反応器のことをいう。ここで「可動部分」とは、反応器を貫通して反応器に備えられている駆動部のことをいう。駆動部の例としては、攪拌装置が挙げられる。
以下、本発明の製造方法で使用される反応塔及びその周辺部品(これらを総称して「反応塔ユニット」という場合がある。)の構成を、代表的な2つの態様を挙げて説明する。但し、本発明の製造方法で使用可能な反応塔ユニットの構成は、以下に挙げる2つの態様に制限されるものではなく、任意の構成とすることができる。
図1は、本発明の製造方法で使用される反応塔ユニットの一態様を模式的に示す側面図である。具体的に、図1に示す反応塔ユニット10は、反応塔1と、供給管2,3と、オーバーフロー管4と、気相管5と、ジャケット6と、調節機構2a,3a,4a,5aとを備えてなる。そして、原料である芳香族ヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニルとを、共に反応塔1の下部から供給するように構成されている。
図1において、符号1は、反応塔を示す。反応塔1の内部に上述の原料が供給されることで、反応が進行し、ジアリールカーボネートが製造される。なお、反応時において反応塔1の内部に存在する成分を、本明細書では適宜「反応系」という場合がある。また、反応時に反応系の液相が存在する主な部分を、図1では模式的に斜線を付している。
なお、図1においては表記の簡便のため、反応塔1の壁の厚みをないものと見做して、後述のL、H、G等の寸法を表示している。但し、これらはあくまでも模式的な表示であり、実際には反応塔1の壁は厚みを有するため、後述のL、H、G等の寸法はその壁の厚みを考慮して決められることになる。
反応塔1内部の高さは、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、通常1m以上、好ましくは3m以上、より好ましくは5m以上、また、通常30m以下、好ましくは20m以下、より好ましくは18m以下である。上記範囲よりも大きすぎると反応塔のサイズが大きくなり、強度等の点でコスト高になる可能性があり、小さすぎると反応が十分に進行しない可能性がある。
反応塔1の内径は、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、通常0.05m以上、好ましくは0.1m以上、より好ましくは0.2m以上、また、通常10m以下、好ましくは5m以下、より好ましくは4m以下である。上記範囲よりも大きすぎると反応塔のサイズが大きくなり、気相が反応系に均一に分散しづらくなる傾向があり、小さすぎると内壁の反応系に及ぼす影響が大きくなる傾向がある。
図1において、符号2〜5は、反応塔1に原料などを供給したり、又は生成物などを取り出したりするための管を示す。これらの管2〜5には、図示するように、開閉する量を調整すること等によって流通量を調節する機構2a〜5a(以下、「調節機構」という)を備えていてもよい。調節機構の例としては、バルブ、流量計等が挙げられる。また、この調節機構2a〜5aは、管2〜5を流通する物質の様態(気体、液体、等)や、物理的性質(粘性、圧力、温度、等)、化学的性質(酸化還元性、pH、等)によって最適なものを選択すればよい。また、管2〜5の材質は、上述の反応塔の材質と同様のものを用いることができる。
以下、管2〜5の詳細について説明する。
図1の管2は、芳香族ヒドロキシ化合物を供給する供給口となる管(以下、反応塔1の内部に原料や触媒等の成分を供給する供給口となる管を、適宜「供給管」ということがある)である。供給管2は、反応塔1の下部に備えられる。具体的には、供給管2の反応塔1における接触下端が、反応塔1の下部になるように備えられる。ここで、「反応塔の下部」とは、反応塔1内の底部から、反応塔1内部の高さの2分の1までの間の部分をいうものとする。図1中の供給管2に向けられた矢印は、芳香族ヒドロキシ化合物の供給方向を示している。
図1において、供給管2には、芳香族ヒドロキシ化合物の供給量を調節できる調節機構2aが備えられている。なお、供給管2は、この調節機構2aを備えていなくてもよい。但し、供給管2が調節機構2aを備えていないときは、予め供給量を調整された芳香族ヒドロキシ化合物を、供給管2に供給することが好ましい。
図1の管3は、ハロゲン化カルボニルを供給する供給管である。供給管3は、反応塔1の下部に備えられる。図1中の供給管3に向けられた矢印は、ハロゲン化カルボニルの供給方向を示している。
図1において、供給管3には、ハロゲン化カルボニルの供給量を調節できる調節機構3aが備えられている。なお、供給管3は、この調節機構3aを備えていなくてもよい。但し、供給管3が調節機構3aを備えていないときは、予め供給量を調整されたハロゲン化カルボニルを、供給管3に供給することが好ましい。
図1の管4は、反応塔1の内部の成分について、気相と液相との分離(本明細書ではこれを「気液分離」という場合がある。)を行なった後の、液相を排出するための管(以下、反応塔1の内部の成分の液相を排出するための管を、適宜「オーバーフロー管」ということがある)である。液体状態の芳香族ヒドロキシ化合物と、気体状態のハロゲン化カルボニルとを反応させると、反応後の反応系には液相と気相とが存在する。液相には、反応により主生成したジアリールカーボネートが存在する。また、気相には、反応により副生成したハロゲン化水素が存在し、さらに、過剰に加えられたハロゲン化カルボニルや未反応のハロゲン化カルボニルも存在する。
ここで、芳香族ヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニルとを反応塔1の下部に供給し、該下部から上方に並流させて反応させ、反応塔1の上部(この定義については後述する。)に存在する反応後の液相のみをオーバーフロー管4から溢れ出させることによって、液相と気相との分離(気液分離)を行なうことができる。反応後の液相には、主に主生成物であるジアリールカーボネートが存在するため、各原料を反応塔1の下部から供給管2,3を通じて連続的に供給し、反応後の反応系を反応塔1の上部でオーバーフロー管4により気液分離することで、主生成物のみを連続的に得ることができる。
なお、オーバーフロー管4の反応塔1における接触下端と、反応塔1内の頂上部との距離をL、反応塔1の内径をDとした場合に、L/Dの値が通常1以上、好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.2以上、また、通常10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは2以下、となる位置にオーバーフロー管4を備えることが好ましい。L/Dの値が大きすぎると、反応塔が大きくなり、コスト高になる傾向がある。また、L/Dの値が小さすぎると、反応液が泡立つために、気液分離が困難になる傾向がある。
さらに、反応塔1内の底部から反応時における反応系の液相の液面(これを以下「反応系の液面」という場合がある。反応系の液面は、即ち、オーバーフロー管4の反応塔1における接触下端と概ね等しくなる。)までの高さをH、該反応塔1の直径をDとした場合に、H/Dの値が通常10以上、好ましくは20以上、さらに好ましくは40以上、また、通常100以下、好ましくは70以下、さらに好ましくは50以下となる位置にオーバーフロー管4を備えることが好ましい。
また、図中のオーバーフロー管4から伸びている矢印は、液相の排出方向を示している。
図1の管5は、気液分離された気相を排出する管(以下、反応塔1の内部の成分の気相を排出するための管を、適宜「気相管」ということがある)である。気相管5は、反応塔1の上部に備えられる。なお、図中の気相管5から伸びている矢印は、気相の排出方向を示している。
図1において、気相管5には、例えばバルブのような、気相管5の開閉量を調節できる調節機構5aが備えられている。但し、気相管5は、この調節機構5aを有していなくてもよい。
図1において、符号6は、ジャケットを示す。ジャケット6は、反応塔1の外側面の少なくとも一部を覆うように設けられ、反応塔1を保温、加熱、又は、冷却等することにより、反応塔1内部の温度を制御するものである。
なお、図1では図示の明確化のため、反応塔1の図中手前側に存在するジャケット6の一部を一点鎖線で透視して示している。また、図1の反応塔ユニット10では反応塔1がオーバーフロー管4を有しているため、ジャケット6はそのオーバーフロー管4の反応塔1に対する取り付け部を避けて設けられている。
ジャケット6の例としては、電熱線式ジャケット、熱媒体循環式ジャケット等が挙げられるが、熱媒体循環式ジャケットが好ましい。熱媒体としては、オイル、水、水蒸気などの使用が可能であるが、中でもオイルが好ましい。高温でも使用可能だからである。
なお、反応塔1内部の少なくとも一部に、充填物(図1に図示しない)を充填することが好ましい。液体状態の芳香族ヒドロキシ化合物と、気体状態のハロゲン化カルボニルとを反応させるには、反応塔1内において反応系をよく混合し、液相と気相との接触面積を大きくすることが重要である。そのために、反応塔1に充填物を充填し、それにより混合性を高め、より小さな反応塔1で高反応率を達成することができる。以下、充填剤について説明する。
充填剤の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、例えば、ガラス、セラミック、プラスチック、等を用いることができる。中でも、ガラス、セラミック、等が好ましい。
本発明における、反応器は、上述の構成の他、コンデンサー、ガススパージャー、目皿等のその他の構成を備えていてもよい。
図2は、本発明の製造方法で使用される反応塔ユニットの別の態様を模式的に示す側面図である。なお、図2において、図1と共通の機能を有する構成要素は、同じ符号を用いて示している。
具体的に、図2に示す反応塔ユニット10’は、反応塔1’と、供給管2,3と、気相管5と、ジャケット6’と、液相管7と、調節機構2a,3a,5a,7aとを備えてなる。そして、原料である芳香族ヒドロキシ化合物を反応塔1’の上部に、ハロゲン化カルボニルを反応塔1’の下部に供給するように構成されている。
以下、図1を用いて説明した、第1の態様にかかる反応塔ユニット10の構成との相違点について説明する。
芳香族ヒドロキシ化合物を供給する供給管2は、反応塔1’の上部に備えられる以外は、図1の供給管2と同様である。供給管2から供給される芳香族ヒドロキシ化合物の供給の速度と、後述する液相管7から排出される液相の排出の速度とを調整することによって、反応塔1’内の底部から該反応系の液面までの高さ(H)を調整し、H/Dの値を上述の範囲とすることができる。
また、図2において、液相管7は、液相管7の開閉量を調節できる調節機構7aを有している。但し、液相管7は、この調節機構7aを有していなくてもよい。
本発明のジアリールカーボネートの製造方法では、上述した反応器(反応塔)に芳香族ヒドロキシ化合物と、ハロゲン化カルボニルとを供給することで、ジアリールカーボネートを連続的に製造することができる。以下、上記の原料の供給方法、触媒等、ジアリールカーボネートの製造方法について説明する。
本発明の製造方法では、反応器内における連続相が、芳香族ヒドロキシ化合物であることが好ましい。ここで、連続相とは、反応塔内において一連の相を形成している相のことをいう。
これは、未反応芳香族ヒドロキシ化合物は、原料としてリサイクルすることが可能であるが、未反応ハロゲン化カルボニルは、副生したハロゲン化水素と混合して回収が困難となるためである。そのため、可能な限りハロゲン化カルボニルの反応率を向上させることが好ましく、このとき、芳香族ヒドロキシ化合物がハロゲン化カルボニルよりモル当量以上過剰に用いられてもよい。
滞留時間は、反応器に供給する芳香族ヒドロキシ化合物の流量や、該反応塔の底部から反応系の液面までの高さを調整することにより、調整できる。
反応器に供給するハロゲン化カルボニルの流量(G[m3/秒])と、反応器の水平方向の塔内断面積(A[m2])との比(G/A[m/秒])の値は、通常0.01m/秒以上、好ましくは0.015m/秒以上、さらに好ましくは0.2m/秒以上、また、通常0.10m/秒以下、好ましくは0.05m/秒以下、さらに好ましくは0.03m/秒以下である。G/A[m/秒]の値が大きすぎると、フラッティングに似た現象が起こる可能性がある。また、上述の範囲を下回るには、反応塔が大きくなる傾向がある。なお、本発明において、反応器に供給するハロゲン化カルボニルの流量(G[m3/秒])とは、特に断り書きのない限り、気体の標準状態(273.15K,105Pa)に換算した値をいうものとする。
ここで、「反応塔内の空間体積」とは、反応塔の液体部分の容積を意味する。図1を例に説明すると、高さHで表わされる部分の容積を意味する。なお、反応塔に充填剤が充填されている場合には、反応塔の液体部分の容積から充填剤の体積を除いた値とする。また、多孔性の充填剤の場合、充填剤の空隙は充填剤の体積には含まない。
また、「反応塔の気相体積」とは、反応塔の液相部分に存在する気体の体積をいう。図1を例に説明すると、高さHで表わされる部分の容積のうち、気泡として存在する気体の体積である。
本発明のジアリールカーボネートの製造方法では、反応塔に材料が供給されれば、その供給方法に制限はない。例えば、芳香族ヒドロキシ化合物を反応塔上部から供給し、ハロゲン化カルボニルを反応塔下部から供給することができる。また、両方の材料を、反応塔の下部から供給することもできる。中でも、後者の方が好ましく、芳香族ヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニルを反応器の下部に供給し、下部から上部に並流させて反応させることが好ましい。
本発明において、反応を触媒の存在下で行うことが好ましい。本発明に用いられる触媒は、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、均一触媒を用いることが好ましい。
このような触媒としては、例えば、芳香族含窒素複素環化合物及びその塩、第3級窒素塩基、アルカリ金属塩、等が挙げられる。中でも芳香族含窒素複素環化合物及びその塩が好ましい。
なお、本発明の製造方法において、これらの触媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上述の条件を満たす限り、本発明の製造方法におけるその他の反応条件は制限されないが、代表的な条件は以下の通りである。
本発明の製造方法により主生成物として得られるジアリールカーボネートは、通常は、反応後の反応系の液相中に液体の状態で含まれることになる。よって、反応後の反応系の液相を回収することにより、ジアリールカーボネートを得ることができる。
回収後の液相に含まれるジアリールカーボネートを、その状態のまま目的とする用途に用いてもよいが、必要に応じて単離・精製等の後処理を加えてもよい。
本発明のジアリールカーボネートの製造方法によれば、可動部を有さない反応器を用いることができるため、毒性の高い原料が漏出する可能性が低まり、また作業者が可動部による負傷すること等が防げるため、安全性が高い。
また、効率的な条件で連続的にジアリールカーボネートを製造することができるため、歩留まりが高く、経済的に有利である。
(塩化カルボニル未反応率)
反応器から抜き出された気相を、容量既知のガラス製容器に充分な時間供給させ、密閉した後、30容量%アニリン/アセトニトリル溶液を50mL加えて、塩化カルボニルとアニリンとを反応させ、未反応の残存塩化カルボニルを全量ジフェニルウレアへと変換した。この溶液を液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、型番LC6A;カラムはGLサイエンス社製、型番MCI GEL ODS−1HU;移動相は50%アセトニトリル/水(0.1mol/l酢酸アンテニウム含有))で定量分析し、ジフェニルウレアの量を測定した。得られた測定値から、未反応の塩化カルボニルの量を算出した。
この算出された未反応の塩化カルボニルの量から、以下式を用いて塩化カルボニル未反応率(%)を求めた。
<実施例1>
反応器として、反応塔の内径(D)が0.05m(水平方向の塔内断面積(A)が0.00196m2)のオイル循環式ジャケット付きガラス製反応塔を、160℃のオイルを循環させ、ラシヒリング(磁製、外径6mm×6mm、中空部径3mm)1989gを、反応塔の底部から0.1m〜1.1mの部分に充填した状態で使用した。
そこへ、塩化カルボニルを、該反応塔の塔下部より、555g/時(G=0.000035m3/秒、該フェノールに対して0.46モル当量)で連続的に供給し、反応液を塔下部より抜き出した。このときのG/Aは0.018であった。
なお、塔下部より反応液を抜き出す速度を調整し、該ガラス製反応塔の底部から反応系の液面までの高さ(H)を1.1mになるようにした。このときのH/Dは22であった。
連続式の反応中の塩化カルボニル未反応率を、上述の測定方法に従って分析し、算出すると15.67%であった。
反応器として、オーバーフロー管を備える他は、実施例1と同様の構成のガラス製反応塔を用いた。
該オーバーフロー管は、反応塔との接触下端と反応塔頂との距離(L)が0.1mであって、反応塔との接触下端と反応塔の底部との距離が1.1mである位置に備えられた。なお、該反応塔のL/Dは2であった。
該反応塔に実施例1と同じラシヒリング427gを、反応塔の底部から0.1m〜0.32mの部分(塔下部のみ)に充填した。
そこへ、ピリジン3.0モル%含有フェノールを塔下部より供給し、該オーバーフロー管からオーバーフローさせて気液を分離した以外は、実施例1と同様の条件で操作を行った。なお、反応塔の底部から反応系の液面までの高さ(H)は、該オーバーフロー管によって気液を分離したため、1.1mであった。ゆえに該反応塔のH/Dは22であった。
連続式の反応中の塩化カルボニル未反応率を、上述の測定方法に従って分析し、算出すると6.93%であった。
反応器として、実施例2と同様のオーバーフロー管を備えるガラス製反応塔を用いた。
該ガラス製反応塔に、実施例1と同様のラシヒリング1989gを、反応塔の底部から0.1m〜1.1mの部分に充填した状態で使用した。
そこへ、ピリジン3.0モル%含有フェノールを塔下部より供給し、該オーバーフロー管からオーバーフローさせて気液を分離した以外は、実施例1と同様の条件で操作を行った。
連続式の反応中の塩化カルボニル未反応率を、上述の測定方法に従って分析し、算出すると1.95%であった。
ピリジン3.0モル%含有フェノールを589g/時、塩化カルボニルを277g/時(G=0.000018m3/秒、該フェノールに対して0.46モル当量)供給した以外は、実施例3と同様の条件で操作を行った。なお、このときのG/Aは0.01であった。
連続式の反応中の塩化カルボニル未反応率を、上述の測定方法に従って分析し、算出すると0.12%であった。
反応器として、反応塔の内径(D)が0.05m(水平方向の反応塔内の断面積(A)が0.00196m2)で、さらに、オーバーフロー管を備える、オイル循環式ジャケット付きガラス製反応塔を、160℃のオイルを循環させ、インタロックスサドル(岩尾磁器工業製、粒径1/4インチ)3957gを、反応塔の底部から0.1m〜2.1mの部分に充填した状態で使用した。なお、1インチは2.54cmである。
該オーバーフロー管は、該反応塔との接触下端と反応塔頂との距離(L)が0.1mであって、反応塔との接触下端と反応塔の底部との距離が2.1mである位置に備えられた。なお、該反応塔のL/Dは2であった。
次に、ピリジン3.0モル%含有フェノールを150℃に加熱した状態で、該反応塔の塔下部より、1471g/時で連続的に供給した。
そこへ、塩化カルボニルを、該反応塔の塔下部より、694g/時(G=0.000044m3/秒、該フェノールに対して0.46モル当量)で連続的に供給し、該オーバーフロー管からオーバーフローさせて気液を分離した。このときのG/Aは0.022あった。なお、反応塔の底部から反応系の液面までの高さ(H)は、該オーバーフロー管によって気液を分離したため、2.1mであった。ゆえに該反応塔のH/Dは42であった。
連続式の反応中の塩化カルボニル未反応率を、上述の測定方法に従って分析し、算出すると0.28%であった。
反応器として、塔径(D)が0.085m(水平方向の断面積(A)が0.00567m2)で、さらに、オーバーフロー管、及び、オイル循環式ジャケットを備える、ディスクタービン型攪拌翼付きガラス製反応器を、160℃のオイルを循環させた状態で使用した。
該オーバーフロー管は、反応塔との接触下端と反応塔頂との距離(L)が0.0757mであって、反応塔との接触下端と反応塔の底部との距離が0.085mである位置に備えられた。なお、該反応塔のL/Dは0.89であった。
該反応塔のディスクタービン型撹拌翼を、攪拌動力0.56kW/m3で混合しながら、ピリジン3.0モル%含有フェノールを150℃に加熱した状態で、該反応塔の塔下部より、470g/時で連続的に供給した。
そこへ、塩化カルボニルを、該反応塔の塔下部より、223g/時(G=0.000014m3/秒、該フェノールに対して0.46モル当量)で連続的に供給し、該オーバーフロー管からオーバーフローさせて気液を分離した。このときのG/Aは0.0024であった。なお、反応塔の底部から反応系の液面までの高さ(H)は、該オーバーフロー管によって気液を分離したため、0.085mであった。ゆえに該反応塔のH/Dは1であった。
連続式の反応中の塩化カルボニル未反応率を、上述の測定方法に従って分析し、算出すると29.61%であった。
攪拌動力を1.05kW/m3とした以外は、比較例1と同様の条件で操作を行った。
連続式の反応中の塩化カルボニル未反応率を、上述の測定方法に従って分析し、算出すると16.64%であった。
実施例3において、塩化カルボニルを供給する前に、窒素ガスを0.0004m3/秒で供給した以外は、実施例3と同様にして実施しようとしたところ、塔上部にて気液分離が十分なされないことが判明したので、塩化カルボニルによる反応は不可能であると判断し、実験を中止した。
まず、実施例1〜5と比較例1〜2の塩化カルボニル未反応率を比較すると、本発明に係る反応塔の様に、可動部(ディスクタービン型撹拌翼)を有さない反応器であっても、ジアリールカーボネートが効率よく生産できていることが分かった。また、比較例3において、G/Aの値が0.10を超える窒素ガスを供給すると、気液分離が塔上部で十分なされないことが分かった。従って、仮に窒素ガスの代わりに塩化カルボニルを反応塔に供給したとしても、反応生成物であるジアリールカーボネートを、未反応の塩化カルボニルや副生成物と、十分分離できないと判断した。
2 供給管(芳香族ヒドロキシ化合物の供給管)
3 供給管(ハロゲン化カルボニルの供給管)
4 オーバーフロー管
5 気相管
6,6’ ジャケット
7 液相管
2a,3a,4a,5a,7a 調節機構
10,10’ 反応塔ユニット
D 反応塔の内径
L オーバーフロー管の反応塔における接触下端と、反応塔内の頂上部との距離
H 反応塔内の底部から反応系の液面までの高さ
Claims (15)
- 芳香族ヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニルとを反応器に供給して反応させることにより、ジアリールカーボネートを連続的に製造する方法であって、
該反応器が反応塔であり、
該反応塔に供給する該ハロゲン化カルボニルの流量をG[m3/秒]、該反応塔の水平方向の塔内断面積をA[m2]とした場合に、0.01≦G/A≦0.10[m/秒]である
ことを特徴とする、ジアリールカーボネートの製造方法。 - 該反応塔内部の反応系の少なくとも一部が液状であるとともに、
該反応塔内の底部から該反応系の液面までの高さをH、該反応塔の内径をDとした場合に、H/D≧10である
ことを特徴とする、請求項1記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該芳香族ヒドロキシ化合物を液体状態で、かつ、該ハロゲン化カルボニルを気体状態で、それぞれ該反応塔に供給する
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該芳香族ヒドロキシ化合物と該ハロゲン化カルボニルとを該反応塔の下部に供給し、該下部から上方に並流させて反応させる
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該反応塔が、その上部にオーバーフロー管を有し、該オーバーフロー管によって液相と気相とを分離するように構成されるとともに、
該オーバーフロー管の該反応塔における接触下端と、該反応塔内の頂上部との距離をL、該反応塔の内径をDとした場合に、L/D≧1である
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該反応塔内の気相体積をVg、該反応塔内の空間体積をVVとした場合に、0.05≦Vg/VV≦0.50である
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該反応塔内部の少なくとも一部に充填物を充填した状態で上記反応を行なう
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該充填物が不規則充填物である
ことを特徴とする、請求項7記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該反応塔内部の該充填材を充填した部分における空間率が、40%以上、70%以下である
ことを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該反応塔内部の少なくとも一部において、該芳香族ヒドロキシ化合物が連続相を形成する
ことを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該芳香族ヒドロキシ化合物の該反応塔内における滞留時間が、0.5時間以上、4時間以内である
ことを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該反応塔に供給される該芳香族ヒドロキシ化合物の温度を130℃以上とする
ことを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該ハロゲン化カルボニルが、ホスゲンである
ことを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 反応系に均一触媒を存在させる
ことを特徴とする、請求項1〜13の何れか一項に記載のジアリールカーボネートの製造方法。 - 該均一触媒が、芳香族複素環式含窒素塩基性化合物もしくはその塩である
ことを特徴とする、請求項14記載のジアリールカーボネートの製造方法。
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