JP2008223087A - 二次電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Cu:1.0超〜1.8%、Mn:1.0超〜1.7%、Mg:0.1〜0.6%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる組成とする。昇温速度30〜90℃/時間、420〜520℃、4〜12時間の条件または、一段目を200〜300℃、1〜2時間、二段目を420〜520℃、4〜12時間とする条件で均質化処理を施す。さらに、冷間加工に際し、460〜530℃、時間20〜180秒、冷却速度20〜200/秒の中間焼鈍を施す。引張強度260〜350MPa、導電率IACS39%以上、円相当直径0.5μm〜10μmの金属間化合物粒子が平均で11000〜30000個/mm2分散した二次電池ケース用アルミニウム合金板が得られる。
【選択図】なし
Description
二次電池ケース成形は、通常多段プレスによって成形されるために、ケース材料には良好な成形性が求められる。このために、従来では純アルミニウム系(JIS−1000系)またはAl−Mn系のJIS−3003合金などのような比較的軟質のものが用いられることが多い。二次電池は、上述材料からなるケースに電極体を入れた後に、レーザ溶接により蓋を付けて密封することで製造される。こうして製造された二次電池を携帯電話などに使用するが、放電後に充電する際、ケース内部の温度が上昇して、ケース内部の圧力が上昇する。また、携帯電話などの携帯電子機器を乗用車中に放置する場合がある。夏のとき、車内の温度70℃以上にも高くなり、電池ケース内部の圧力が大幅に上昇する。このような場合、上述した比較的軟質のケース材料で製造されたケースに大きな膨れが生じるという問題がある。この膨れの生成を抑制するために、高強度のケース材料が要求される。最近、JIS−3003合金に少量のCuとMgを添加し、強度の向上を図れた材料が用いられるようになっている。
特許文献7では合金元素の固溶量を増加させることにより、成形後の電池ケースの強度向上を図り、導電率を45IACS%以下としたアルミニウム合金板を得ている。
一方、前記特許文献6に示された高強度アルミニウム合金板は十分に高い強度が得られているが、ケース成形性が劣り、成形時の不良率が高い問題がある。また、前記特許文献7に示されたアルミニウム合金板は合金元素の固溶量が増加すると、レーザ溶接性が劣り、溶接不良率が増加するという問題がある。
まず、二次電池ケース用アルミニウム合金板の構成部分について説明する。なお、以下で説明する各成分の含有量はいずれも質量%で示される。
Cuは、固溶硬化と析出硬化に寄与する元素であり、強度とクリープ性を高めて、耐膨れ性の向上に寄与する効果があるので含有させる。ただし、Cu含有量が1.0%以下では、その効果は不十分となる。逆にCu含有量が1.8%を超えると、多段絞り成形時に割れが発生してケース成形ができなくなる。このために、Cu含有量を1.0%超〜1.8%に制限する。なお、同様の理由で下限を1.05%、上限を1.70%とするのが望ましい。
Mnは、Al−Mn系の金属間化合物粒子を形成する元素である。適切なサイズのこの金属間化合物粒子があれば、ケース成形時に金型とアルミニウム合金板との摩擦が低下し、プレス成形性が向上する。これにより、260MPa以上の高強度と良好な成形性との両立ができるアルミニウム合金板の製造が可能となる。Mn量が1.0%以下では、十分なAl−Mn系の金属間化合物粒子の形成ができないために、前記の効果が不十分となり、プレス成形性が低下する。なお、同様の理由で下限を1.05%、上限を1.65%とするのが望ましい。
Mgは、固溶硬化に寄与する元素であり、強度とクリープ性を高めて、耐膨れ性を向上させる効果がある。Mg含有量が0.1%未満では、その効果は不十分となり、Mg含有量が0.6%を超えると、強度は更に向上するが、レーザ溶接性とプレス成形性が低下する。Mg含有量の更に好ましい範囲は0.25〜0.45%である。
FeとSiは、不可避不純物として存在し、強度を若干高める効果がある。また、Al−Mn系金属間化合物粒子中に固溶して、この金属間化合物粒子の数を増やす効果がある。したがって、FeとSiの添加量も金属間化合物粒子の数とサイズに影響を及ぼす。上記の金属間化合物粒子の制限を維持するために、Mn+Fe+Siの量を1.5〜2.0%範囲に制限することが好ましい。
Siはレーザ溶接性を若干劣化させる。レーザ溶接性を満足できる場合、Si含有量を制限する必要はないが、高いレーザ溶接性を要求される場合、Si含有量を0.3%以下に制限する必要がある。さらに、0.1%以下に制限することが好ましい。
Fe含有量は、上記のMn+Fe+Siの合計制限条件を満足したとしても、その単体添加量が高くなると、鋳造時に10μm以上の粗大な晶出物が生成しやすくなり、プレス成形時の不良率が上昇する。このために、高いプレス成形性が要求される場合、Fi含有量を0.6%以下に制限することが好ましい。
アルミニウム合金の場合、結晶粒微細化のために、ZrとCrを添加することが多い。本発明は、ZrとCrを必須としていないが、結晶粒微細化の効果を高め、プレス成形性を向上させるために、Zr、Crの単独添加または複合添加をすることも可能である。これらの総量は、0.05〜0.2%が好ましい。0.05%未満では、結晶粒微細化の効果が不十分となり、含有量が0.2%を超えると、鋳造時に粗大な晶出物が生成しやすくなって、プレス成形性を低下する。
Al−Mn系の金属間化合物粒子のサイズと数によっても、摩擦低減の効果と成形時の割れ感受性が変化する。したがって、二次電池ケース用として製造された高強度アルミニウム合金板では、金属間化合物粒子のサイズと数が適切な範囲にあるのが望ましい。
円相当直径0.5μm以上の金属間化合物粒子はケース成形時の金型との間の摩擦を下げる作用がある。一方、10μmより大きい金属間化合物粒子は、成形時の亀裂の起点となりやすく、プレス成形時の不良率が上昇する。このために、円相当直径を0.5〜10μmに着目する。また、10μm以下の粒子でもその数が多いとやはりプレス成形時の不良率が高くなる。したがって、5μm以上、10μm以下の金属間化合物の数を平均で2500個/mm2以下に制限することが好ましい。さらに、円相当直径0.5〜10μmの金属間化合物粒子の数は11000個/mm2未満の場合、成形時の摩擦を下げる前記の作用は不十分となる。逆に30000個/mm2を超えた場合、10μmを超える大きな金属間化合物粒子の発生確率が高くなり、5μm以上、10μm以下の金属間化合物の数を2500個/mm2以下に制限することが難しくなる。また、Mn含有量が1.7%を越えると、10μmを超える粗大な金属間化合物粒子が生成しやすくなり、プレス成形性が低下する。上記金属間化合物は、Al−Mn系、Al−Mn−Fe系またはこれらを主として構成されている。
また、上記の組成からなるアルミニウム合金板は、引張試験で求めた引張強度が260MPa以上であることが好ましい。引張強度がこの範囲内であれば、本発明のアルミニウム合金板を成形した二次電池ケースに、充放電サイクル時への十分な耐膨れ性を与えることができる。しかし、引張強度は350MPaを超えると、ケース成形時に亀裂が発生しやすくなる。同様の理由で引張強度を280〜330MPaに制限することが好ましい。
また、上記の組成からなるアルミニウム合金板の導電率はIACS39%以上であることが好ましい。この範囲であれば、固溶合金元素量が十分低いために、良好なレーザ溶接性が得られる。さらに、合金元素の添加量が多い場合、最終圧延後に時効処理を行うことにより、固溶合金元素が一層析出して、更なる良好なレーザ溶接性を得ることができる。この場合、IACS43%以上の導電率が好ましい。本発明は、導電率の上限を特に規制しないが、時効処理などを十分実施してもIACS50%以上のものが得られにくい。
以上の組成からなる本発明のアルミニウム合金板は強度が高く、耐膨れ性、プレス成形性、及び溶接性(特にレーザ溶接性)に優れたものである。
上記本発明の組成からなるアルミニウム合金は、通常は、溶解、鋳造、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延の各工程を経て板材とする。また、強度をさらに高めるために、最終冷延後に時効処理を施すことも可能である。
(実施例1)
表1は、製造された発明材1〜3のアルミニウム合金板の成分組成である(残部にはその他の不純物を含む)。なお、表1中の単位は質量%である。製造されたアルミニウム合金板が表1に示す組成成分となるように配合されたアルミニウム合金の鋳塊を半連続鋳造により鋳造し、得られた鋳塊を面削して表面の不均一層を除去した。その後、60℃/hr.の昇温速度で500℃まで加熱し、8時間保持する均質化処理を行い、400℃まで冷却して、速やかに熱間圧延を施して、厚さ7mmまたは2mmの板材とした。続いて、厚さ0.88mmまで冷間圧延し、昇温速度100℃/秒、保持温度500℃、保持時間30秒、冷却速度150℃/秒という条件で中間焼鈍を行った。その後、室温で100時間放置の自然時効を施して、厚さ0.52mmまで最終冷間圧延した。最終冷間圧延の際の圧下率は40.9%であった。
また、比較例のアルミニウム合金板が表1に示す成分組成となるようにした他は、上記実施例と同様の方法により製造した。
なお、金属間化合物粒子の分布密度、プレス成形性、レーザ溶接性は、以下に示す方法により求めた(以下同様である)。
引張強度は、得られた板材からJIS5号試験片を採取し、JIS Z 2241に定めた方法による引張試験を行った。
導電率は、所定の製造工程で製造された最終板を用いて、シグマテスターSIGMATEST2.067によって23℃の環境で測定した。
表1に示した発明材3および比較材3と同成分の鋳塊を面削して表面の不均一層を除去し、表3に示すような条件で均質化処理を行い、400℃まで冷却して、速やかに熱間圧延を施して、厚さ7mmまたは2mmの板材とした。その後の製造工程は実施例1と同じであった。即ち、厚さ0.88mmまで冷間圧延し、昇温速度100℃/秒、保持温度500℃、保持時間30秒、冷却速度150℃/秒という条件で中間焼鈍を行った。その後、室温で100時間放置の自然時効を施して、厚さ0.52mmまで最終冷間圧延した。最終冷間圧延の際の圧下率は40.9%であった。
表1に示した発明材2と同成分の鋳塊を面削して表面の不均一層を除去し、昇温速度80℃/hr.、一段保持温度250℃、保持時間2時間、二段保持温度480℃、保持時間6時間の条件で均質化処理を施して、420℃まで冷却して、速やかに熱間圧延を施して、厚さ7mmまたは2mmの板材とした。さらに表5に示す条件に従って中間焼鈍、最終冷延または時効処理を施した。いずれの材料も最終板厚は0.52mmである。これに合せるために、発明材5および比較材12〜14の中間焼鈍は0.88mm厚さ、発明材6と比較材15の中間焼鈍は0.52mm最終厚さ、発明材7の中間焼鈍は0.61mm厚さで行った。
表6に発明材5〜7および比較材12〜15の引張強度、0.5〜10μm金属間化合物粒子の分布密度、プレス成形性、100℃で180MPa初期荷重を負荷したときの定常クリープ速度と減速クリープ段階の歪み量、導電率およびレーザ溶接性の評価結果を示した。
Claims (10)
- 質量%で、Cu:1.0超〜1.8%、Mn:1.0超〜1.7%、Mg:0.1〜0.6%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする二次電池ケース用高強度アルミニウム合金材。
- 前記組成において前記不可避不純物中のFe、Si含有量と前記Mn含有量の総量が、質量%で1.5〜2.0%であることを特徴とする請求項1記載の二次電池ケース用高強度アルミニウム合金材。
- 前記組成において、質量%で、前記不可避不純物中のFe含有量が0.6%以下、Si含有量が0.3%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池ケース用高強度アルミニウム合金材。
- 前記組成において、さらに、ZrとCrの一種または二種を、質量%の総量で、0.05〜0.2%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池ケース用高強度アルミニウム合金材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の組成を有し、引張強度が260〜350MPaの範囲にあって、導電率がIACS39%以上、且つ円相当直径0.5μm以上、10μm以下の金属間化合物粒子が面方向平均で11000〜30000個/mm2分散していることを特徴とする二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の組成を有するアルミニウム合金材に、昇温速度30〜90℃/時間、保持温度420〜520℃、保持時間4〜12時間の条件で均質化処理を施すことを特徴とする二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の組成を有するアルミニウム合金材に、保持温度200〜300℃、保持時間1〜3時間の条件で一段目の均質化処理を行い、保持温度420〜520℃、保持時間4〜12時間の条件で二段目の均質化処理を施すことを特徴とする二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の組成を有するアルミニウム合金材を冷間加工する際に、加熱温度460〜530℃、保持時間20〜180秒、冷却速度20〜200/秒の中間焼鈍を施すことを特徴とする二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記焼鈍後に、140〜250℃で2〜12時間の時効処理を施すことを特徴とする請求項8記載の二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記焼鈍後に、圧下率65%以下の最終冷間圧延を行うことを特徴とする請求項8または9記載の二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
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