JP5864074B2 - 電池ケース用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、携帯電話、タブレット型端末、ノート型のパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、その他電子機器等に利用されるリチウムイオン電池のケースの素材として好適なアルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
一般に、角型のリチウムイオン二次電池のケースは、アルミニウム板又はアルミニウム合金板を素材として、プレス成形(深絞り・しごき成形)により製造される。電池は、このケースと蓋で電極、セパレーター、電解液などを封入した構造を有する。このケースと、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の蓋との接合にはレーザー溶接が用いられる。
そこで、電池ケース用のアルミニウム板又はアルミニウム合金板には、製造に必要な特性としてプレス成形性、レーザー溶接性が良好であることが求められ、ケースとした後の強度・耐久性が良好であることも合わせて求められる。ケースの強度・耐久性とは、具体的には長時間の使用でもフクレないこと、外力による変形が起こり難いこと、変形しても孔が開き難いことなどの特性を言う。
従来、電池ケース用の素板としては、Al−Mn系合金が多く用いられている。JISの合金としてはA3003合金や、これにMgとCuを加えた組成となるA3005合金も強度がより大きな合金として用いられている。
従来、携帯電話の発達に伴って、外形寸法の制約の中で電池容量を向上させるためにケースを薄肉化することが必要であった。この場合にも、ケースの耐久性を確保できるように、より高強度のケース用アルミニウム合金が開発されてきた。特許文献1及び2には、高Mg含有量のアルミニウム合金を用いることが記載されている。また、特許文献3及び4には、高Cu含有量のアルミニウム合金を用いることが記載されている。
近年、急速に普及しつつあるスマートフォンやタブレット型端末の電池では、種々のソフトウェアを動作させるために電池容量を増加させる必要性があり、ケースの更なる薄肉化や器具に適合するように従来のものより薄型幅広の形状ケースが求められている。
電池が組み込まれたケースでは、85℃程度まで内部温度が上昇する。これにより、ケースに内圧が発生してケースがフクレてしまう場合がある。そこで、このようなフクレを低減した材料が求められている。また、電池を組み込んだ電子機器が外力を受けること、最も厳しい例としては突起物が押し込まれること(犬がスマートフォンをかむなど)も起こり得る。このような場合、電池ケースが例え変形しても破損しないことが望ましく、耐押し込み性が高い材料が必要となっている。また、ケース成形後の状態において大きな押し込み量となる外力を受けた場合でも穴が開き難い特性とともに、当然ながら変形抵抗が大きいことも求められる。高強度であることは、電池ケースの耐久性の点から望ましい特性である。
しかしながら、高強度の材料では、薄肉で缶厚さが小さく幅や高さが大きい形状を有するケースを成形することが困難である。ケースが薄く幅広になること、すなわち缶の幅/厚さの比が大きくなる程、成形性の難易度が増加する。スマートフォン用として、幅/厚さ比が10以上で高さ>幅のケースが要望されている。しかしながら、このような形状のものを成形するのに、幅/厚さ比が6程度のケースを成形可能な従来の高強度アルミニウム合金板材を用いたのでは、安定的に成形できないことが確認されている。
また、リチウムイオン電池では、電池の内圧が限度を超えて上昇した時にケースの特定部位が破れて電解液を外に逃がす安全機能が必要である。このために、ケースの一部に溝状の薄肉部分が形成される場合がある。このような溝状薄肉部分の形成加工時に割れが生じたり、所定の薄肉厚さに成形加工できないと、正常な安全機能が動作しないことになる。高強度の材料を用いた場合には、このような溝状薄肉部分の形成も困難となる。薄型幅広の形状ケースに、精密な溝加工を施すことも技術的難易度が高く、従来の材料では安定的な溝加工ができないのが実情であった。
このように、電子機器の形状機能の変化で必要とされる幅広・薄型の電池ケースの素材として、成形性、レーザー溶接性、耐フクレ性、耐押し込み性などの特性要求を全て満たすアルミニウム合金板の開発が求められている。
本発明は、一定以上のレーザー溶接性と耐フクレ性を備えつつ、幅広(幅/厚さ比が10以上で高さ>幅)のケースでも安定して成形できる成形性とケースの耐押し込み性とを高レベルで両立した電池ケース用アルミニウム合金板の提供を目的とする。
本発明者らは、種々の検討を行った結果、限定された合金組成範囲を有し、特定の特性条件を満たすアルミニウム合金板において、幅/厚さ比10以上のケースを成形可能な成形性と、高い耐押し込み性などの電池ケースとして具備すべき特性が満たされることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は請求項1において、Mn:0.7〜1.6mass%(以下、「%」と記す)、Cu:0.5〜0.7%、Mg:0.2〜0.5%を含有し、Cu含有量がMg含有量よりも多く、さらに、Cr、Ni及びVから選択される1種又は2種以上を合計含有量で0〜0.2%含有し、不可避的不純物としてFe:0.2%以下に、かつ、Si:0.15%以下に規制されており、残部Al、ならびに、Fe及びSi以外の不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、その金属組織中に円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物が10個/μm3以上分散しており、厚さ50%減少の塑性加工後における引張強さが250N/mm2以上で、かつ、伸びが1.3%以上であり、引張強さ(N/mm2)×伸び(%)が420以上であることを特徴とする電池ケース用アルミニウム合金板とした。
また、本発明は請求項2では請求項1において、前記アルミニウム合金が、0.004〜0.2%のTiを更に含有するか、0.004〜0.2%のTiと0.0001〜0.02%のBとを更に含有するものとした。
本発明は請求項3において、請求項1又は2に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法において、前記アルミニウム合金の鋳造工程と;均質化処理工程と;熱間圧延工程と;冷間圧延工程と;焼鈍処理工程と;再冷間圧延工程と;析出安定化処理工程と;を備え、前記焼鈍工程が、冷間圧延材を5℃/秒以上の昇温速度で480〜580℃の温度まで加熱し、その後直ちに又はその温度において30秒以内保持した後に、5℃/秒以上の冷却速度で冷却する工程であり、前記析出安定化処理工程が、再冷間圧延材を150〜240℃で0.1〜8時間保持する工程であることを特徴とする電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法とした。
本発明は請求項4では請求項3において、前記均質化処理工程において、鋳塊を520〜610℃の温度で0.5〜10時間保持するものとした。
本発明は請求項5では請求項3又は4において、前記熱間圧延工程における圧延材の圧延開始温度を350〜520℃とした。
本発明は請求項6では請求項3〜5のいずれか一項において、前記冷間圧延工程における圧延材の圧下率を40〜80%とした。
本発明は請求項7では請求項3〜6のいずれか一項において、前記再冷間圧延工程における圧延材の圧下率を20〜60%とした。
本発明は請求項8では請求項3〜7のいずれか一項において、前記熱間圧延工程が予備加熱段階を含み、当該予備加熱段階が前記均質化処理工程を兼ねるものとした。
本発明は請求項9では請求項8において、前記予備加熱段階における加熱温度を、前記熱間圧延工程における圧延開始温度とそれより40℃高い温度の範囲内とした。
本発明により、レーザー溶接性と耐フクレ性に優れ、幅広ケース(幅/厚さ比が10以上で高さ>幅)の安定した成形性と耐押し込み性を良好なバランスで両立した電池ケース用アルミニウム合金板が得られる。
本発明に係る電池ケース用アルミニウム合金板は、Mn:0.7〜1.6mass%(以下、単に「%」と記す)、Cu:0.5%〜0.7%、Mg:0.2%〜0.5%を含有し、Cu含有量がMg含有量よりも多く、さらに、Cr、Ni及びVから選択される1種又は2種以上を合計含有量で0〜0.2%含有し、不可避的不純物としてFe:0.2%以下に、かつ、Si:0.15%以下に規制されており、残部Al、ならびに、Fe及びSi以外の不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。また、アルミニウム合金板の金属組織中に、円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物が10個/μm3以上分散している。更に、このアルミニウム合金板は、厚さを50%減少させる塑性加工後において、250N/mm2以上の引張強さと、1.3%以上の伸びを有し、これら引張強さと伸びとの間には、引張強さ(N/mm2)×伸び(%)の数値が420以上の関係がある。以下に、これらの特徴について詳細に説明する。
1.アルミニウム合金の組成
まず、上記アルミニウム合金の組成について説明する。
Mn:0.7〜1.6%
Mnは材料中で一部は固溶し、他はAlとの金属間化合物として分散して分散強化に寄与する必須元素である。Mnを含む金属間化合物を適正に分布することで、プレス成形時の金型への凝着を防ぐ効果も図られる。Mn含有量が0.7%未満では、強度が不十分となりプレス成形時における金型への凝着防止効果が低減して表面擦り傷が発生し易い。一方、1.6%を超えると、Mnを含む粗大な金属間化合物(Giant Compounds)が形成され、材料欠陥となるため不適当である。このように、本発明では、必須元素であるMn含有量を0.7〜1.6%とする。なお、好ましいMn含有量は、0.9〜1.4%である。
まず、上記アルミニウム合金の組成について説明する。
Mn:0.7〜1.6%
Mnは材料中で一部は固溶し、他はAlとの金属間化合物として分散して分散強化に寄与する必須元素である。Mnを含む金属間化合物を適正に分布することで、プレス成形時の金型への凝着を防ぐ効果も図られる。Mn含有量が0.7%未満では、強度が不十分となりプレス成形時における金型への凝着防止効果が低減して表面擦り傷が発生し易い。一方、1.6%を超えると、Mnを含む粗大な金属間化合物(Giant Compounds)が形成され、材料欠陥となるため不適当である。このように、本発明では、必須元素であるMn含有量を0.7〜1.6%とする。なお、好ましいMn含有量は、0.9〜1.4%である。
Cu:0.5〜0.7%、Mg:0.2〜0.5%
CuとMgは、Al−Mg−Cu系析出物の形成に関与し、いずれも強度に寄与する必須元素である。Cu含有量が0.5%未満では強度向上の効果が低く、0.7%を超えると幅広型ケースの成形が困難となり、レーザー溶接時に割れなどの欠陥が生じ易くなるため不適当である。
Mg含有量についても、0.2%未満では強度向上の効果が低く、0.5%を超えると幅広型ケースの成形が困難になり、レーザー溶接時に割れなどの欠陥が生じ易くなるため不適当である。
このように、本発明では、必須元素であるCu含有量とMg含有量をそれぞれ、0.5〜0.7%、ならびに、0.2〜0.5%とする。なお、好ましいCu含有量は、0.54〜0.65%であり、好ましいMg含有量は、0.24%〜0.45%である。
CuとMgは、Al−Mg−Cu系析出物の形成に関与し、いずれも強度に寄与する必須元素である。Cu含有量が0.5%未満では強度向上の効果が低く、0.7%を超えると幅広型ケースの成形が困難となり、レーザー溶接時に割れなどの欠陥が生じ易くなるため不適当である。
Mg含有量についても、0.2%未満では強度向上の効果が低く、0.5%を超えると幅広型ケースの成形が困難になり、レーザー溶接時に割れなどの欠陥が生じ易くなるため不適当である。
このように、本発明では、必須元素であるCu含有量とMg含有量をそれぞれ、0.5〜0.7%、ならびに、0.2〜0.5%とする。なお、好ましいCu含有量は、0.54〜0.65%であり、好ましいMg含有量は、0.24%〜0.45%である。
また、本発明では、CuとMgの含有量の間にCu含有量>Mg含有量となる関係を必要とする。Cu含有量をMg含有量よりも多くすることで、適正な熱処理を施すことにより析出強化の効果を発生させることができる。その結果、ケース成形後において、強度と限界押し込み変形量とを高く保つように調整することが可能となる。これに対して、Mg含有量をCu含有量以上とすると、加工硬化がより助長され強度の上昇には効果があるものの、限界押し込み変形量が低下する要因となる。
Fe:0.2%以下、Si:0.15%以下
FeとSiは、アルミニウム合金中に通常存在する代表的な不可避的不純物元素である。本発明では、この不可避的不純物であるFe量を0.2%以下、好ましくは0.16%以下に規制する。Fe量が0.2%を超えると、材料組織中のFeを含む金属間化合物のサイズが大きくなり、成形性、特に溝加工成形での残厚の安定性を阻害するので不適当である。Fe量の下限は特に限定されるものではなく0%であってもよいが、高純度のアルミニウム地金を必要とするような0.04%未満のFe量としても、高純度地金は価格が高価なため経済的に好ましくない。
FeとSiは、アルミニウム合金中に通常存在する代表的な不可避的不純物元素である。本発明では、この不可避的不純物であるFe量を0.2%以下、好ましくは0.16%以下に規制する。Fe量が0.2%を超えると、材料組織中のFeを含む金属間化合物のサイズが大きくなり、成形性、特に溝加工成形での残厚の安定性を阻害するので不適当である。Fe量の下限は特に限定されるものではなく0%であってもよいが、高純度のアルミニウム地金を必要とするような0.04%未満のFe量としても、高純度地金は価格が高価なため経済的に好ましくない。
本発明では、不可避的不純物であるSi量を、0.15%以下、好ましくは0.12%以下に規制する。Si量が0.15%を超えると、レーザー溶接性を阻害するため不適当である。Si量の下限も特に限定されるものではなく0%であってもよいが、高純度のアルミニウム地金を必要とするような0.03%未満のSi量としても、高純度地金は価格が高価なため経済的に好ましくない。
Cr、Ni、V:0〜0.2%
本発明では、上記必須元素に加えて、Cr、Ni及びVから選択される1種又は2種以上を合計含有量で0〜0.2%含有させてもよい。これらの選択的添加元素は、強度、耐フクレ性及び耐押し込み性を向上させる効果が図られる任意成分である。合計含有量が0.2%を超えると、これら元素を含む粗大な金属間化合物が生成して材料欠陥が発生するため不適当である。なお、これら選択的添加元素の好ましい含有量は、0.02〜0.20%である。0%であってもよいが、0.02%未満では上記効果が十分でない場合があり、0.20%を超えると上記材料欠陥の発生を十分に抑制できない場合がある。
本発明では、上記必須元素に加えて、Cr、Ni及びVから選択される1種又は2種以上を合計含有量で0〜0.2%含有させてもよい。これらの選択的添加元素は、強度、耐フクレ性及び耐押し込み性を向上させる効果が図られる任意成分である。合計含有量が0.2%を超えると、これら元素を含む粗大な金属間化合物が生成して材料欠陥が発生するため不適当である。なお、これら選択的添加元素の好ましい含有量は、0.02〜0.20%である。0%であってもよいが、0.02%未満では上記効果が十分でない場合があり、0.20%を超えると上記材料欠陥の発生を十分に抑制できない場合がある。
Ti:0.004〜0.2%、B:0.0001〜0.02%
本発明では、上記必須元素や選択元素に加え、0.004〜0.2%のTiを単独で添加するか、これに0.0001〜0.02%のBを更に組み合わせて複合添加してもよい。Tiは強度、耐フクレ性及び耐押し込み性を向上させる効果と、鋳造時の結晶粒を微細化する効果を併せ持つ。特に、鋳造結晶粒微細化のためにはBを併せて含有することで、より大きな効果が得られる。Ti含有量が0.004%未満では結晶粒微細化効果が十分得られなくなり、Ti含有量が0.2%を超えるとTi又はTiとBを含む粗大な金属間化合物が生成して材料欠陥が発生するため不適当である。また、B含有量が0.0001%未満では結晶粒微細化効果が十分得られなくなり、B含有量が0.02%を超えるとこれらを含む粗大な金属間化合物が生成して材料欠陥が発生するため不適当である。鋳造結晶粒の微細化効果のみを得るのであれば、0.004〜0.2%のTiと0.0001〜0.02%のBの添加で所定の効果が得られる。この微細化効果に加えて、強度や耐押し込み性の向上も図るには、0.02〜0.2%のTiを含有させることが望ましく、さらには0.04〜0.18%の含有量が望ましく、この場合にも上記含有量のBを併せて含有することにより結晶粒微細化の効果も得られる。
本発明では、上記必須元素や選択元素に加え、0.004〜0.2%のTiを単独で添加するか、これに0.0001〜0.02%のBを更に組み合わせて複合添加してもよい。Tiは強度、耐フクレ性及び耐押し込み性を向上させる効果と、鋳造時の結晶粒を微細化する効果を併せ持つ。特に、鋳造結晶粒微細化のためにはBを併せて含有することで、より大きな効果が得られる。Ti含有量が0.004%未満では結晶粒微細化効果が十分得られなくなり、Ti含有量が0.2%を超えるとTi又はTiとBを含む粗大な金属間化合物が生成して材料欠陥が発生するため不適当である。また、B含有量が0.0001%未満では結晶粒微細化効果が十分得られなくなり、B含有量が0.02%を超えるとこれらを含む粗大な金属間化合物が生成して材料欠陥が発生するため不適当である。鋳造結晶粒の微細化効果のみを得るのであれば、0.004〜0.2%のTiと0.0001〜0.02%のBの添加で所定の効果が得られる。この微細化効果に加えて、強度や耐押し込み性の向上も図るには、0.02〜0.2%のTiを含有させることが望ましく、さらには0.04〜0.18%の含有量が望ましく、この場合にも上記含有量のBを併せて含有することにより結晶粒微細化の効果も得られる。
TiやBの結晶粒微細化成分を加えないと、鋳造時の粗大結晶粒に起因する材料部位による特性差が起こる可能性がある。この発生頻度は低く、局部的に起こる現象であるのでTi、B無添加材を用いることを妨げるほどの問題とはならないが、Ti、Bの添加による微細化効果が図られることにより、量産時の材料製造歩留まりの向上が確実に達成される。
2.アルミニウム合金の金属組織
次に、上記アルミニウム合金の金属組織について説明する。
本発明の電池ケース用アルミニウム合金板においては、金属組織中に円相直当径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物が10個/μm3以上分散している。この析出物は、20個/μm3以上分散しているのが好ましい。ここで、Al−Cu−Mg系析出物とは主要成分としてAl、Cu、Mgを含有する析出物であり、透過電子顕微鏡のEDX分析により確認することができる。また、Al−Cu−Mg系析出物の分散状態も透過電子顕微鏡観察とその画像解析により確認することができる。
次に、上記アルミニウム合金の金属組織について説明する。
本発明の電池ケース用アルミニウム合金板においては、金属組織中に円相直当径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物が10個/μm3以上分散している。この析出物は、20個/μm3以上分散しているのが好ましい。ここで、Al−Cu−Mg系析出物とは主要成分としてAl、Cu、Mgを含有する析出物であり、透過電子顕微鏡のEDX分析により確認することができる。また、Al−Cu−Mg系析出物の分散状態も透過電子顕微鏡観察とその画像解析により確認することができる。
円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物は、上記のように10個/μm3以上の密度で分散することにより強度向上の効果が図られる。円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物の分散密度が10個/μm3未満であって、円相当直径が0.01μm未満のAl−Cu−Mg系析出物が分散しており、又は、CuやMgがマトリックス中に固溶している場合には、成形時に不均一変形が生じて、成形品にしわや表面模様が発生する原因になる。このように、円相当直径0.01μm未満のAl−Cu−Mg系析出物は、成形時における不均一変形発生の原因となるので対象から除外した。一方、円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物の分散密度が10個/μm3未満であって、円相当直径0.1μmを超えるAl−Cu−Mg系析出物が分散している場合には、強度向上効果が不足する。このように、円相当直径0.1μmを超えるAl−Cu−Mg系析出物は、強度向上効果に寄与しないので対象から除外した。なお、円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物の分散密度の上限は特に規定されるものではないが、アルミニウム合金の組成と製造工程によって自ずとこの上限は決まり、本発明で採用する合金組成と製造工程によれば、300個/μm3が分散密度の上限となる。
3.アルミニウム合金板の加工後の強度と延性
次に、上記アルミニウム合金の加工後の強度と延性について説明する。
本発明の電池ケース用アルミニウム合金板では、それを50%板厚減少させる塑性加工を加えた後において、引張強さが250N/mm2以上で、かつ、伸びが1.3%以上とし、更に、これら引張強さと伸びとの間に、引張強さ(N/mm2)×伸び(%)の数値が420以上の関係を有する。引張強さと伸びの測定は、引張試験によって行われる。
次に、上記アルミニウム合金の加工後の強度と延性について説明する。
本発明の電池ケース用アルミニウム合金板では、それを50%板厚減少させる塑性加工を加えた後において、引張強さが250N/mm2以上で、かつ、伸びが1.3%以上とし、更に、これら引張強さと伸びとの間に、引張強さ(N/mm2)×伸び(%)の数値が420以上の関係を有する。引張強さと伸びの測定は、引張試験によって行われる。
ここで、50%板厚減少させる塑性加工とは、プレス成形によるケース成形に相当する加工状態の再現を意図したものである。この塑性加工は、金型を用いたプレス成形によっても、また、簡便には冷間圧延によっても実施できる。板厚減少率の公差は±3%以下であれば許容される。
引張試験用の試験片は、平行部16mm、幅5mmで、標点間距離15mmのものを用いる。耐押し込み性は、局部的な強度と延性に影響されるため、通常の板状JIS試験片(JIS Z2241 13B号試験片)よりも平行部の短い引張試験片での評価値で規定するものとした。引張試験は、上述の塑性加工における材料の主流動方向と平行に行う。
50%板厚減少後の引張強さが250N/mm2未満の場合は、低い押し込み荷重で穴開きが生じ、耐フクレ性に劣るため不適当である。引張強さは、好ましくは260N/mm2以上である。引張強さの上限については、特に限定するものではないが、アルミニウム合金板の成分組成と製造工程によって自ずから決まるものであり、本発明者らの検討で本発明に係る成分組成と製造工程で350N/mm2を超える値は得られておらず、実施例での最高値は334N/mm2である。また、伸びが1.3%未満では、引張強さが大きくても押し込み変形の限界値が小さくなるため不適当である。伸びは、好ましくは1.6%以上である。伸びの上限については、特に限定するものではないが、アルミニウム合金板の成分組成と製造工程によって自ずから決まるものであり、後述の本発明に係る成分組成と製造工程では3%を超える値は得られておらず、実施例中の最高値は2.3%である。更に、耐押し込み性には材料の強度と延性との良好なバランスが必要であり、引張強さ(N/mm2)×伸び(%)の数値が420未満では、耐押し込み性が不足するため不適当である。この数値は、好ましくは500以上であり、上限については、特に限定するものではないが、アルミニウム合金板の成分組成と製造工程によって自ずから決まるものであり、本発明者らの検討で本発明に関わる成分組成と製造工程では800を超える値は得られておらず、実施例中の最高値は745である。
4.アルミニウム合金板の製造方法
次に、本発明の電池ケース用アルミニウム合金板の好適な製造方法について説明する。
本発明の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法は、アルミニウム合金の鋳造工程、鋳塊の均質化処理工程、均質化材の熱間圧延工程、熱間圧延材の冷間圧延工程、冷間圧延材の焼鈍処理工程、焼鈍材の再冷間圧延工程、再冷間圧延材の析出安定化処理工程を、この順序で実施するものである。
次に、本発明の電池ケース用アルミニウム合金板の好適な製造方法について説明する。
本発明の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法は、アルミニウム合金の鋳造工程、鋳塊の均質化処理工程、均質化材の熱間圧延工程、熱間圧延材の冷間圧延工程、冷間圧延材の焼鈍処理工程、焼鈍材の再冷間圧延工程、再冷間圧延材の析出安定化処理工程を、この順序で実施するものである。
4−1.鋳造工程
通常のDC鋳造法を用いて、上述の組成に調整したアルミニウム合金溶湯から鋳塊を作製するのが好ましい。ツインロールキャスターやベルトキャスターによる連続鋳造法も適用可能である。ただし、以下の工程については、最も量産性に優れるDC鋳造法を前提として説明している。
通常のDC鋳造法を用いて、上述の組成に調整したアルミニウム合金溶湯から鋳塊を作製するのが好ましい。ツインロールキャスターやベルトキャスターによる連続鋳造法も適用可能である。ただし、以下の工程については、最も量産性に優れるDC鋳造法を前提として説明している。
4−2.均質化処理工程
均質化処理の条件は特に限定されるものではないが、鋳塊内部の偏析を解消するために、520℃〜610℃の温度で0.5〜10時間保持するのが好ましく、540℃〜600℃の温度で1〜8時間保持するのがより好ましい。温度が520℃未満及び/又は保持時間が0.5時間未満の場合には、均質化効果が不十分となり、続く熱間圧延工程において再結晶粒が粗大化しやすくなるため、成形後に肌荒れが発生し、外観不良の原因となる場合がある。一方、温度が610℃を超える場合は、材料に溶融が生じる虞がある。また、保持時間が10時間を超える場合には、所定の材料強度は得られるが生産性が損なわれる。
均質化処理の条件は特に限定されるものではないが、鋳塊内部の偏析を解消するために、520℃〜610℃の温度で0.5〜10時間保持するのが好ましく、540℃〜600℃の温度で1〜8時間保持するのがより好ましい。温度が520℃未満及び/又は保持時間が0.5時間未満の場合には、均質化効果が不十分となり、続く熱間圧延工程において再結晶粒が粗大化しやすくなるため、成形後に肌荒れが発生し、外観不良の原因となる場合がある。一方、温度が610℃を超える場合は、材料に溶融が生じる虞がある。また、保持時間が10時間を超える場合には、所定の材料強度は得られるが生産性が損なわれる。
なお、均質化処理工程前又は後に、鋳塊の表面部分を除去する面削を行う。均質化処理工程前に面削する場合は、熱間圧延工程のための予備加熱段階によって均質化処理工程を兼ねることができる。この場合、面削した鋳塊を予備加熱温度で保持後に所定温度まで冷却し、その後直ちに熱間圧延工程を開始してもよく、或いは、熱間圧延開始温度とそれより40℃高い温度との範囲を予備加熱温度範囲とし、この予備加熱温度範囲内で保持後に直ちに熱間圧延を開始してもよい。一方、均質化処理工程後に面削する場合は、面削した鋳塊に、熱間圧延工程のための予備加熱段階を独立して行うことが必要となる。この予備加熱段階では、熱間圧延開始温度とそれより40℃高い温度との範囲に到達後に直ちに熱間圧延を開始するのが好ましい。
4−3.熱間圧延工程
熱間圧延開始時における材料温度は特に限定されるものではないが、効率的な圧延を行うためには熱間圧延開始時における材料温度を350〜520℃とするのが好ましい。開始温度が350℃未満では、安定した熱間圧延が困難となり、520℃を超えると熱間圧延工程における再結晶粒が粗大化し、外観不良の原因となる場合があるからである。さらに、同様な理由で、380〜480℃とするのがより好ましい。
熱間圧延開始時における材料温度は特に限定されるものではないが、効率的な圧延を行うためには熱間圧延開始時における材料温度を350〜520℃とするのが好ましい。開始温度が350℃未満では、安定した熱間圧延が困難となり、520℃を超えると熱間圧延工程における再結晶粒が粗大化し、外観不良の原因となる場合があるからである。さらに、同様な理由で、380〜480℃とするのがより好ましい。
4−4.冷間圧延工程
熱間圧延工程に続いて、熱間圧延材を冷間圧延工程にかける。この冷間圧延工程における圧下率は、40〜80%とするのが好ましい。圧下率が40%未満では続く焼鈍処理工程における再結晶粒が粗大化しやすく、外観不良の原因となり、圧下率が80%を超えると冷間圧延における圧下量が増大し、冷間圧延回数が増加するため、コストの観点から好ましくないからである。さらに、同様な理由で、50〜70%とするのがより好ましい。
熱間圧延工程に続いて、熱間圧延材を冷間圧延工程にかける。この冷間圧延工程における圧下率は、40〜80%とするのが好ましい。圧下率が40%未満では続く焼鈍処理工程における再結晶粒が粗大化しやすく、外観不良の原因となり、圧下率が80%を超えると冷間圧延における圧下量が増大し、冷間圧延回数が増加するため、コストの観点から好ましくないからである。さらに、同様な理由で、50〜70%とするのがより好ましい。
4−5.焼鈍処理工程
焼鈍処理工程では、冷間圧延材を5℃/秒以上の昇温速度で480〜580℃の温度まで加熱し、その後直ちに又はその温度において30秒以内保持した後に、5℃/秒以上の冷却速度で100℃以下まで冷却する。このような焼鈍処理は、連続焼鈍ライン(CAL)により行なうのが好ましい。
焼鈍処理工程では、冷間圧延材を5℃/秒以上の昇温速度で480〜580℃の温度まで加熱し、その後直ちに又はその温度において30秒以内保持した後に、5℃/秒以上の冷却速度で100℃以下まで冷却する。このような焼鈍処理は、連続焼鈍ライン(CAL)により行なうのが好ましい。
焼鈍処理は、冷間圧延材の軟化および再結晶化の役割に加えて、析出しているCuをアルミニウム母材中に固溶させる溶体化処理の役割も兼ねており、480℃より低い温度ではCuの固溶が不十分となるため不適当であり、580℃を超えると結晶粒界などで局部的な溶解が発生する可能性があるため不適当である。加熱温度は、500〜550℃が好ましい。
昇温速度が5℃/秒未満では、昇温中に固溶元素が粗大な析出物となり、この析出物が焼鈍処理温度域においても固溶しないため不適当である。昇温速度は、10℃/秒以上が好ましく、CALの構造によって制限されるが、通常、10〜50℃/秒がより好ましい。
上記温度域で30秒を超えて保持しても、前述の溶体化処理効果は増加せず生産性が低下するので、保持時間は30秒以内とする。このような保持後に続いて、材料を5℃/秒以上の冷却速度をもって、100℃以下まで冷却する。冷却速度が5℃/秒未満では、固溶していた元素が冷却中に析出して粗大化することから不適当である。冷却速度は、10℃/秒以上が好ましく、CALの構造や冷却方法によって制限されるが、通常、10〜100℃/秒がより好ましい。また、上記温度域で30秒以内保持するのではなく、この温度域に達したら直ちに上記冷却を行ってもよい。この場合の保持時間は0秒となる。
4−5.再冷間圧延工程
焼鈍工程後に材料を再冷間圧延工程にかける。再冷間圧延の条件は特に限定されるものではなく、必要な製品板強度や成形加工性に応じて設定すれば良い。本発明では、圧下率を20〜60%とするのが好ましい。圧下率が20%未満では成形後の強度が低くなり、圧下率が60%を超えると成形前の強度が高くなり、安定した成形が困難となる。
焼鈍工程後に材料を再冷間圧延工程にかける。再冷間圧延の条件は特に限定されるものではなく、必要な製品板強度や成形加工性に応じて設定すれば良い。本発明では、圧下率を20〜60%とするのが好ましい。圧下率が20%未満では成形後の強度が低くなり、圧下率が60%を超えると成形前の強度が高くなり、安定した成形が困難となる。
4−6.析出安定化処理工程
再冷間圧延工程後に材料を析出安定化処理工程にかける。この工程では材料を、150〜240℃の温度で0.1〜8時間保持する。この析出安定化処理により材料強度と延性の向上が可能であり、50%板厚減少させる塑性加工後の強度及び延性を向上させることができる。
再冷間圧延工程後に材料を析出安定化処理工程にかける。この工程では材料を、150〜240℃の温度で0.1〜8時間保持する。この析出安定化処理により材料強度と延性の向上が可能であり、50%板厚減少させる塑性加工後の強度及び延性を向上させることができる。
上記保持温度が150℃未満では、固溶したままのCu、Mgや、円相当直径が0.01μm未満のAl−Cu−Mg系析出物が多く存在することになる。その結果、成形時に不均一変形が生じ、成形品のしわや表面模様の発生原因となるので不適当である。一方、上記保持温度が240℃を超えると、円相当直径が0.1μmを超えるAl−Cu−Mg系析出物が多く存在することになる。その結果、十分な強度を得られないため不適当である。好ましい析出安定化処理の温度範囲は、200〜240℃の範囲である。
また、保持時間が0.1時間未満では、強度及び延性の向上が十分に得られず、保持時間が8時間を超えると、強度及び延性の更なる向上が得られず材料に軟化が発生するため、いずれも不適当である。なお、好ましい保持時間の範囲は、1〜6時間である。
本発明の電池ケース用アルミニウム合金板の製造工程は、実質的に溶体化処理工程−冷間圧延工程−人工時効処理工程によるものであり、アルミニウム材の調質記号のT8に相当する状態となっている。このT8材はO材に比べて初期の延性には劣るものの、ケース成形途中における底部と壁部の強度差はO材を用いた場合より小さくなり、底部と壁部の境界付近での割れが発生し難いという利点を有する。更に、ケース成形後の耐押し込み性においても、本発明で用いるT8材の方がO材よりも優れるという利点も有する。
以下に、本発明例と比較例の実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
DC鋳造法を用いて、表1の組成を有するアルミニウム合金から厚さ450mmの鋳塊を作製した。鋳塊を均質化処理工程にかけた後に面削を行ない、更に熱間圧延工程のための予備加熱を行った。予備加熱段階後に熱間圧延工程にかけ、更に冷間圧延工程、焼鈍工程、再冷間圧延工程にかけて厚さ0.49mmの板材とし、最後に析出安定化処理工程にかけた。これらの製造条件を表2に示す。なお、製造条件B8については熱間圧延工程後に厚さ0.49mmまで冷間圧延工程にかけ、その後に焼鈍工程にかけたが、再冷間圧延工程及び析出安定化処理工程にはかけなかった。また、予備加熱は、熱間圧延開始温度とそれより40℃高い温度との範囲内の温度に面削した鋳塊を加熱した。そして、前記加熱温度に到達後に直ちに熱間圧延を開始した。
次に、作製した板材について、Al−Cu−Mg系析出物の個数分布(分散密度)、50%板厚減少させる塑性加工後の強度と延性、プレス成形性、プレス成形後の表面品質、溝加工性、ケース耐押し込み性、ケース耐曲げ性、耐フクレ性、レーザー溶接性を下記に示す方法で評価した。評価結果を表3、4に示す。
1.Al−Cu−Mg系析出物の個数分布評価:
集束イオンビーム(FIB)装置を用いて、作製した板材から厚さ200nm以下の観察用薄片サンプルを作製した。作製した薄片サンプルについて、Al−Cu−Mg系析出物の個数分布を分散密度(個/μm3)として測定した。この測定には、板材の任意の断面の走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を用いた。Al−Cu−Mg系析出物は、STEM−EDS(エネルギー分散型X線分光法)分析で含有元素を調べることにより特定を行った。観察は各サンプルについて倍率40000倍で10視野ずつSTEM写真の撮影を行い、それぞれの視野のSTEM写真を画像解析することで、試料中の円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物の分散密度を調べた。なお、分散密度は、上記10視野の算術平均値とした。また、薄片サンプルの厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)に付属の電子エネルギー損失分光(EELS)検出器を用いて測定した。
集束イオンビーム(FIB)装置を用いて、作製した板材から厚さ200nm以下の観察用薄片サンプルを作製した。作製した薄片サンプルについて、Al−Cu−Mg系析出物の個数分布を分散密度(個/μm3)として測定した。この測定には、板材の任意の断面の走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を用いた。Al−Cu−Mg系析出物は、STEM−EDS(エネルギー分散型X線分光法)分析で含有元素を調べることにより特定を行った。観察は各サンプルについて倍率40000倍で10視野ずつSTEM写真の撮影を行い、それぞれの視野のSTEM写真を画像解析することで、試料中の円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物の分散密度を調べた。なお、分散密度は、上記10視野の算術平均値とした。また、薄片サンプルの厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)に付属の電子エネルギー損失分光(EELS)検出器を用いて測定した。
2.50%板厚減少させる塑性加工後の特性評価:
50%板厚減少させる塑性加工は、表3の例では冷間圧延にて、±3%の許容範囲で50%の板厚減少率となるよう実施した。その後、平行部16mm、幅5mmで、標点間距離15mmの試験片を用い、引張試験を実施し、引張強さ(TS)と標点間距離15mmを基準とした伸び(EL)を測定した。
50%板厚減少させる塑性加工は、表3の例では冷間圧延にて、±3%の許容範囲で50%の板厚減少率となるよう実施した。その後、平行部16mm、幅5mmで、標点間距離15mmの試験片を用い、引張試験を実施し、引張強さ(TS)と標点間距離15mmを基準とした伸び(EL)を測定した。
3.プレス成形性評価:
プレスによる絞り・しごき成形によって、厚さ4.0mm、幅45mm、正面と側面の角(R)1.0mm、高さ55mmと65mm、最も面積の広い面の肉厚0.25mmの形状のケースを成形した。同一の例において10個の試料を作製し、全て成形可のものを合格(○)とし、一つ以上が成形否のものを不合格(×)として評価した。
プレスによる絞り・しごき成形によって、厚さ4.0mm、幅45mm、正面と側面の角(R)1.0mm、高さ55mmと65mm、最も面積の広い面の肉厚0.25mmの形状のケースを成形した。同一の例において10個の試料を作製し、全て成形可のものを合格(○)とし、一つ以上が成形否のものを不合格(×)として評価した。
4.プレス成形後の表面品質評価:
上記プレス成形した高さ55mmのケースの表面品質を確認した。不均一変形による表面模様や成形擦り傷があるものは望ましくない。これらの不具合については、電池ケースとしての機能に決定的な悪影響を与えない場合があるが、疲労の起点になるなどの可能性から、無いことが望ましい。同一の例において、10個の全ての試料で成形後の表面に模様や成形擦り傷のないものを「◎」とし、後述の×がなく、一つ以上の試料で僅かに模様や成形擦り傷が発生したものを「○」とし、一つ以上の試料で模様や成形擦り傷の発生が著しいものを「×」とした。◎と○を合格とし、×を不合格とした。
上記プレス成形した高さ55mmのケースの表面品質を確認した。不均一変形による表面模様や成形擦り傷があるものは望ましくない。これらの不具合については、電池ケースとしての機能に決定的な悪影響を与えない場合があるが、疲労の起点になるなどの可能性から、無いことが望ましい。同一の例において、10個の全ての試料で成形後の表面に模様や成形擦り傷のないものを「◎」とし、後述の×がなく、一つ以上の試料で僅かに模様や成形擦り傷が発生したものを「○」とし、一つ以上の試料で模様や成形擦り傷の発生が著しいものを「×」とした。◎と○を合格とし、×を不合格とした。
5.溝加工性評価:
図1に示すように、高さ55mmの上記ケースの最も面積の広い面(片面)の中央に、プレス加工により×型の溝加工(長さ4mm、深さ0.15mm、表面側幅0.3mm、底幅0.15mmの溝をクロスさせたもの)を施した。同一の例によって100個の試料を作製し、これらに溝加工を施した際に、残厚0.10mmに対する差が全て±0.005mm以下のものを合格(○)とし、±0.005mmを越えるものが一つ以上あった場合を不合格(×)とした。
図1に示すように、高さ55mmの上記ケースの最も面積の広い面(片面)の中央に、プレス加工により×型の溝加工(長さ4mm、深さ0.15mm、表面側幅0.3mm、底幅0.15mmの溝をクロスさせたもの)を施した。同一の例によって100個の試料を作製し、これらに溝加工を施した際に、残厚0.10mmに対する差が全て±0.005mm以下のものを合格(○)とし、±0.005mmを越えるものが一つ以上あった場合を不合格(×)とした。
6.ケース耐押し込み性評価:
上記プレス成形テストで成形された55mm高さのケース内に、図2のように直径8mmの穴の開いた鋼製のスペーサーを挿入し、その穴に当たるケースの正面中央部から先端がR0.48mmの鋼製ジグ(図3)を押し込んだ。このときの所定押し込み深さを、ケース表面より1mm及び1.5mmとし、その際に破断が生じるか否かを評価した。同一の例において、10個の全ての試料で破断が生じなかったものを合格(○)とし、一つ以上の試料で破断が生じたものを不合格(×)とした。また、穴が生じるまで押し込んだ時の最大荷重も測定した。同一の例において、10個全ての試料の最大荷重を測定し、それら最大荷重のうちの最低値をもって評価した。最大荷重が65N以上を合格(○)とし、それ未満を不合格(×)とした。
上記プレス成形テストで成形された55mm高さのケース内に、図2のように直径8mmの穴の開いた鋼製のスペーサーを挿入し、その穴に当たるケースの正面中央部から先端がR0.48mmの鋼製ジグ(図3)を押し込んだ。このときの所定押し込み深さを、ケース表面より1mm及び1.5mmとし、その際に破断が生じるか否かを評価した。同一の例において、10個の全ての試料で破断が生じなかったものを合格(○)とし、一つ以上の試料で破断が生じたものを不合格(×)とした。また、穴が生じるまで押し込んだ時の最大荷重も測定した。同一の例において、10個全ての試料の最大荷重を測定し、それら最大荷重のうちの最低値をもって評価した。最大荷重が65N以上を合格(○)とし、それ未満を不合格(×)とした。
7.ケース耐曲げ性評価:
図4に示すように、プレス成形試験で成形された55mm高さのケース(溝加工のないもの)を、R3mmの90°曲げジグに沿わせて曲げ、ケースに破断が生じるか否かで評価した。同一の例において、10個全ての試料に破断が生じなかったものを合格(○)とし、一つ以上の試料に破断が生じたものを不合格(×)とした。
図4に示すように、プレス成形試験で成形された55mm高さのケース(溝加工のないもの)を、R3mmの90°曲げジグに沿わせて曲げ、ケースに破断が生じるか否かで評価した。同一の例において、10個全ての試料に破断が生じなかったものを合格(○)とし、一つ以上の試料に破断が生じたものを不合格(×)とした。
8.耐フクレ性評価:
55mm高さの電池ケースの上部3mmの外周を拘束し、0.5kgf/cm2の内圧をかけつつ95℃の恒温槽中で24時間放置した。圧力を取り去って室温まで冷却後に、同一の例において、10個全ての試料でケース中央部厚さの増加量が0.6mm以下のものを合格(○)とし、一つ以上の試料においてそれを超えるものを不合格(×)として評価した。
55mm高さの電池ケースの上部3mmの外周を拘束し、0.5kgf/cm2の内圧をかけつつ95℃の恒温槽中で24時間放置した。圧力を取り去って室温まで冷却後に、同一の例において、10個全ての試料でケース中央部厚さの増加量が0.6mm以下のものを合格(○)とし、一つ以上の試料においてそれを超えるものを不合格(×)として評価した。
9.レーザー溶接性評価:
各例で用いた0.4mm厚の素材板を、連続発振ファイバーレーザーで重ね溶接した。出力1.6kW、φ0.3mmのスポット径で、16m/分の溶接速度で100mmの接合長とした。この接合部全域で溶接割れの発生の有無を評価した。試料において溶接割れが発生しなかったものを合格(○)とし、溶接割れが発生したものを不合格(×)とした。
各例で用いた0.4mm厚の素材板を、連続発振ファイバーレーザーで重ね溶接した。出力1.6kW、φ0.3mmのスポット径で、16m/分の溶接速度で100mmの接合長とした。この接合部全域で溶接割れの発生の有無を評価した。試料において溶接割れが発生しなかったものを合格(○)とし、溶接割れが発生したものを不合格(×)とした。
表3に示すように、本発明例1〜24では、Al−Cu−Mg系析出物の分散密度及び50%板厚減少させる塑性加工後の強度と延性を満たし、幅広・薄型の電池ケースの素材として求められるプレス成形性、プレス成形後の表面品質、溝加工性、ケース耐押し込み性、ケース耐曲げ性、耐フクレ性及びレーザー溶接性の特性要求が全て合格であった。
これに対して、比較例25〜41、43〜49では、本発明で規定する要件を全て満たしていないため、幅広・薄型の電池ケースの素材として求められる上記要求特性の少なくとも何れかが不合格であった。
具体的には、比較例25では、Mn含有量が少なかったため、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さが小さくなり、h65mmのプレス成形性、プレス成形後の表面品質、ケース耐押し込み性での最大荷重及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例26では、Mn含有量が多かったためプレス成形性が不合格であった。
比較例27では、Cu含有量が少なかったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さが小さく、ケース耐押し込み性での最大荷重及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例28、29では、Cu含有量が多かったためプレス成形性が不合格であった。
比較例30では、Mg含有量が少なかったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さが小さく、ケース耐押し込み性での最大荷重及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例31では、Mg含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込み及び最大荷重、耐曲げ性及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例32では、Fe含有量、Si含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1mm、1.5mmの押込み及び最大荷重及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例33では、Fe含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1mm、1.5mmの押込み及び耐曲げ性が不合格であった。
比較例34では、Si含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込み、及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例35では、選択的添加元素(Cr+Ni+Ti)の合計含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1mm、1.5mmの押込み及び最大荷重及び耐曲げ性が不合格であった。
比較例36では、選択的添加元素(Cr+Ni+Ti)の合計含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込み及び最大荷重及び耐曲げ性が不合格であった。
比較例37では、選択的添加元素(Cr+Ni+Ti)の合計含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1mm、1.5mmの押込み及び最大荷重及び耐曲げ性が不合格であった。
比較例38では、Ti含有量およびB含有量が多かったため、耐曲げ性及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例39、40では、Ti含有量が多かったため、耐曲げ性及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例41では、Ti含有量およびB含有量が多かったため、耐曲げ性及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例26では、Mn含有量が多かったためプレス成形性が不合格であった。
比較例27では、Cu含有量が少なかったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さが小さく、ケース耐押し込み性での最大荷重及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例28、29では、Cu含有量が多かったためプレス成形性が不合格であった。
比較例30では、Mg含有量が少なかったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さが小さく、ケース耐押し込み性での最大荷重及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例31では、Mg含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込み及び最大荷重、耐曲げ性及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例32では、Fe含有量、Si含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1mm、1.5mmの押込み及び最大荷重及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例33では、Fe含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1mm、1.5mmの押込み及び耐曲げ性が不合格であった。
比較例34では、Si含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込み、及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例35では、選択的添加元素(Cr+Ni+Ti)の合計含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1mm、1.5mmの押込み及び最大荷重及び耐曲げ性が不合格であった。
比較例36では、選択的添加元素(Cr+Ni+Ti)の合計含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込み及び最大荷重及び耐曲げ性が不合格であった。
比較例37では、選択的添加元素(Cr+Ni+Ti)の合計含有量が多かったため、50%板厚減少させる塑性加工後の伸びと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1mm、1.5mmの押込み及び最大荷重及び耐曲げ性が不合格であった。
比較例38では、Ti含有量およびB含有量が多かったため、耐曲げ性及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例39、40では、Ti含有量が多かったため、耐曲げ性及びレーザー溶接性が不合格であった。
比較例41では、Ti含有量およびB含有量が多かったため、耐曲げ性及びレーザー溶接性が不合格であった。
なお、比較例26、28、29では、プレス成形が不可能であったため、プレス成形後の表面品質、溝加工性、ケース耐押し込み性、耐曲げ性、耐フクレ性及びレーザー溶接性が評価できなかった。また、比較例42では、焼鈍工程の加熱温度が高かったため、焼鈍中に結晶粒界などで局部的な溶解が発生してアルミニウム板が変形したため、各評価を行なうことができなかった。
比較例43では、焼鈍工程の加熱温度が低かったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例44では、焼鈍工程の昇温速度および冷却速度が小さかったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、ケース耐押し込み性での最大荷重及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例45では、析出安定化工程での加熱温度が低かったため、当該析出物が存在せず、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さと伸び、ならびに、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、プレス成形後の表面品質、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例46では、析出安定化工程での加熱温度が高かったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の伸び、ならびに、引張強さ×伸びが小さく、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例47では、析出安定化工程での処理時間が短かったため、当該析出物が存在せず、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例48では、析出安定化工程での処理時間が長かったため、当該析出物が存在せず、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例49では、再冷間圧延工程と析出安定化工程を実施しなかったため、当該析出物が存在せず、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さと伸び、ならびに、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例44では、焼鈍工程の昇温速度および冷却速度が小さかったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、ケース耐押し込み性での最大荷重及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例45では、析出安定化工程での加熱温度が低かったため、当該析出物が存在せず、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さと伸び、ならびに、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、プレス成形後の表面品質、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例46では、析出安定化工程での加熱温度が高かったため、当該析出物の分散密度が小さく、50%板厚減少させる塑性加工後の伸び、ならびに、引張強さ×伸びが小さく、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例47では、析出安定化工程での処理時間が短かったため、当該析出物が存在せず、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さと、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例48では、析出安定化工程での処理時間が長かったため、当該析出物が存在せず、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さ×伸びが小さく、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
比較例49では、再冷間圧延工程と析出安定化工程を実施しなかったため、当該析出物が存在せず、50%板厚減少させる塑性加工後の引張強さと伸び、ならびに、引張強さ×伸びが小さく、h65mmのプレス成形性、溝加工性、ケース耐押し込み性での1.5mmの押込みと最大荷重、耐曲げ性及び耐フクレ性が不合格であった。
本発明に係る電池ケース用アルミニウム合金板は、レーザー溶接性と耐フクレ性に優れ、幅広ケース(幅/厚さ比が10以上で高さ>幅)の安定した成形性と耐押し込み性を良好なバランスで両立する。
Claims (9)
- Mn:0.7〜1.6mass%(以下、「%」と記す)、Cu:0.5〜0.7%、Mg:0.2〜0.5%を含有し、Cu含有量がMg含有量よりも多く、さらに、Cr、Ni及びVから選択される1種又は2種以上を合計含有量で0〜0.2%含有し、不可避的不純物としてFe:0.2%以下に、かつ、Si:0.15%以下に規制されており、残部Al、ならびに、Fe及びSi以外の不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、その金属組織中に円相当直径0.01〜0.1μmのAl−Cu−Mg系析出物が10個/μm3以上分散しており、厚さ50%減少の塑性加工後における引張強さが250N/mm2以上で、かつ、伸びが1.3%以上であり、引張強さ(N/mm2)×伸び(%)が420以上であることを特徴とする電池ケース用アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金が、0.004〜0.2%のTiを更に含有するか、0.004〜0.2%のTiと0.0001〜0.02%のBとを更に含有する、請求項1に記載の電池ケース用アルミニウム合金板。
- 請求項1または2に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法において、
前記アルミニウム合金の鋳造工程と;均質化処理工程と;熱間圧延工程と;冷間圧延工程と;焼鈍処理工程と;再冷間圧延工程と;析出安定化処理工程と;を備え
前記焼鈍工程が、冷間圧延材を5℃/秒以上の昇温速度で480〜580℃の温度まで加熱し、その後直ちに又はその温度において30秒以内保持した後に、5℃/秒以上の冷却速度で冷却する工程であり、
前記析出安定化処理工程が、再冷間圧延材を150〜240℃で0.1〜8時間保持する工程であることを特徴とする電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法。 - 前記均質化処理工程において、鋳塊を520〜610℃の温度で0.5〜10時間保持する、請求項3に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記熱間圧延工程における圧延材の圧延開始温度が350〜520℃である、請求項3又は4に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記冷間圧延工程における圧延材の圧下率が40〜80%である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記再冷間圧延工程における圧延材の圧下率が20〜60%である、請求項3〜6のいずれか一項に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記熱間圧延工程が予備加熱段階を含み、当該予備加熱段階が前記均質化処理工程を兼ねる、請求項3〜7のいずれか一項に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記予備加熱段階における加熱温度が、前記熱間圧延工程における圧延開始温度とそれより40℃高い温度の範囲内にある、請求項8に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法。
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