JP4347137B2 - 二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Description
二次電池ケースの成形は、通常多段プレスによって成形されるために、ケース材料には良好な成形性が求められる。このため、二次電池ケース用の材料には、従来は純アルミニウム系(JIS−1000系)またはAl−Mn系のJIS−3003合金など(例えば特許文献1参照)のような比較的軟質のものが用いられることが多い。さらに最近、強度を高めるために、Al−Mn系合金に少量のMgを添加する合金も用いられるようになっている(例えば特許文献1参照)。
Mnは、強度を高め、また、結晶粒を微細化してプレス成形性の向上に寄与するので必須の成分として含有する。ただし、Mn量が0.6%未満では、その効果が不十分となり、一方、Mn含有量が1.5%を越えると、鋳造時に粗大な晶出物が生成しやすくなり、マトリックス中に分散してプレス成形性が低下する。このため、Mnの含有量を0.6〜1.5%に限定する。なお、Mn含有量の更に好ましい範囲は、上記と同様の理由により、下限で0.9%、上限で1.3%である。
Cuは強度とクリープ性を高め、耐膨れ性の向上に寄与する効果があるので必須成分として含有する。ただし、Cu含有量が0.51%未満では、その効果は不十分となり、一方、Cu含有量が1.0%を超えると、強度とクリープ性は更に向上するが、プレス成形性が顕著に低下するので、Cu含有量は0.51〜1.0%に限定する。なお、Cu含有量の更に好ましい範囲は、上記と同様に理由により、下限で0.6%、上限で0.9%である。
Mgは、強度とクリープ性を高め、耐膨れ性の向上に寄与する効果があるので必須の成分として含有する。ただし、Mg含有量が0.21%未満では、その効果は不十分となり、Mg含有量が0.7%を超えると、強度とクリープ性は更に向上するが、レーザ溶接性とプレス成形性が低下するので、Mg含有量を0.21〜0.7%に限定する。なお、Mg含有量の更に好ましい範囲は、上記と同様の理由により、下限で0.21%、上限で0.5%である。
Siは、不可避不純物として存在し、強度を若干高める効果がある。一方、レーザ溶接性を劣化させる。レーザ溶接性を重視しない場合、Si含有量を制限する必要はないが、高いレーザ溶接性が要求される場合、Si含有量を0.2%未満に規制する。さらに同様の理由で望ましくは0.15%以下に規制し、一層望ましくは0.1%未満に制限する。
Feは、Siと同様に不可避不純物として存在し、強度を若干高める効果がある。但し、Fe含有量が高くなると、鋳造時に生じる粗大な晶出物が多くなり、プレス成形性を低下する。本発明は、Fe含有量を特に制限しないが、高いプレス成形性が要求される場合、Fe含有量を0.5%以下に制限することが好ましい。
Cr:0.05〜0.2
Zr、Crは、結晶粒微細化の効果を高め、プレス成形性を向上させるために、所望によりZr、Crの単独添加または複合添加をする。ただし、それぞれ0.05%未満では、結晶粒微細化の効果が不十分となり、一方、それぞれ含有量が0.2%を超えると、鋳造時に粗大な晶出物が生成しやすくなり、プレス成形性を低下するので、各々0.05〜0.2%に限定する。また、同様に理由により、それぞれ下限を0.06%、上限を0.15%とするのが望ましい。
上記本発明のアルミニウム合金板は、圧延方向断面において、下記の方法で求めた平均結晶粒径が25μm以下であることが好ましい。更に好ましい範囲は20μm以下である。
平均結晶粒径は、従来では光学顕微鏡で観察した組織をもとにして切断法によって求める。この場合、結晶粒と亜結晶粒(通常、粒界方位差の15°未満の粒界に囲まれた領域という)を区別できないことがある。本発明の平均結晶粒径は、SEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)につけた結晶方位観察装置(通称EBSP(Electron Back-Scatter diffraction Pattern、反射電子菊池線回折パターン))によって結晶粒の方位差を直接測定したデータをもとに、解析ソフトにより求めた。EBSPは、軽金属学会誌50巻2000年2月号86頁に「SEM−EBSPの使い方」としても紹介されている。結晶方位の測定は、全観察領域を縦横に数万〜数十万のポイントに分割して、1ポイントずつ行う。一般には、方位差15°以上の粒界に囲まれた領域中に、一定の数以上(例えば10個以上)ポイントが含まれるものを結晶粒とする。結晶粒径は、結晶粒中のポイント数および1ポイントあたりの面積から結晶粒の面積を求めてそれを円の面積と考えて算出される。このように各々の結晶粒の粒径を求めてその平均値を算出して平均結晶粒径とする。
また、溶接性とは、二次電池ケース胴体に蓋を接合する際の溶接ができるかどうかといい、レーザ溶接性とは、溶接をレーザによって行う場合の溶接ができるかどうかをいう。本発明のアルミニウム合金板は、溶接性に優れているため、二次電池ケースを良好に作製することができる。
昇温速度が10℃/秒より遅いと、冷間圧延時に導入された蓄積エネルギーが解放されるために、再結晶核生成率が低下して、焼鈍後の平均結晶粒径が大きくなり、上記のように、平均結晶粒径が25μm以下とはならない。昇温速度が250℃/秒を超えると、高価な設備投入が必要となり、生産コストが増加する。
以上のように、中間焼鈍工程の昇温速度、焼鈍温度、保持時間および冷却速度を上記範囲とすることで、平均結晶粒径が25μmより大きくならずに、強度が高くプレス成形性に優れたアルミニウム合金板を製造することができる。
本発明のアルミニウム合金板の製造方法は以下の方法により行う。
上記本発明の組成が得られるように成分調整したアルミニウム合金を、溶解、鋳造し、さらに均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延の各工程を経て板材とする。
上記冷間圧延に至るまでの工程は常法により実行することができ、本発明としては特定の条件に限定されない。なお、冷間圧延においては、上記したように、昇温速度が10〜250℃/秒、焼鈍温度が515〜550℃、保持時間が5〜60秒、冷却速度が20〜200℃/秒とする中間焼鈍を少なくとも一回行う。この中間焼鈍は、連続焼鈍炉を用いて行うことができる。
以上のように、中間焼鈍工程の昇温速度、焼鈍温度、保持時間および冷却速度を上記範囲とすることで、平均結晶粒径が25μmより大きくならずに、強度が高くプレス成形性に優れたアルミニウム合金板を製造することができる。更に、最終冷間圧延時の圧下率は上記のように10〜60%に制御する。
(実施例)
表1は、製造された本発明のアルミニウム合金板の成分組成である。なお、表1中の成分含有量の単位は質量%である。
表1に示す組成成分からなるアルミニウム合金板を得るべく配合されたアルミニウム合金の鋳塊を半連続鋳造により鋳造し、得られた鋳塊を面削して表面の不均一層を除去した。その後、595℃の温度に6時間保持する均質化処理を行い、400℃まで冷却して、速やかに熱間圧延を施し、厚さ7mmの板材とした。続いて冷間圧延により、厚さ0.72mmまで圧延し、表2に示す条件で中間焼鈍を行った。その後、厚さ0.55mmまで最終冷間圧延して本発明法を実施した。最終冷間圧延の際の圧下率は23.6%であった。
合金板が表1に示す成分組成となるようにした他は、上記実施例と同様の方法により、比較例1〜6のアルミニウム合金板を製造した。
引張強度は、得られた板材からJIS5号試験片を採取し、JIS Z 2241に定めた方法による引張試験を行って測定した。
クリープ試験は、平行部長さ32mm、幅7mmの試験片を用い、100℃雰囲気中で180MPa初期荷重を負荷して行った。
平均結晶粒径は、アルミニウム合金板の圧延方向断面において、PHILIPS社のSEM(XL30Fe)につけたTSL社のEBSPシステムにより、0.1μmのポイント間隔で測定した結晶方位データから、TSL社のOIM3.0解析ソフトによって求めた。方位差15°以上の粒界に囲まれた領域中に、10個以上のポイントが含まれるものを結晶粒とした。
成形性については、径33mm、肩R4.5mmポンチと、径57.75〜69.3mmのプランクを用いて深絞り試験を行い、限界絞り比によって評価した。限界絞り比が1.9以上のものを○、1.9未満のものを×とした。
レーザ溶接性については、YAG、パルスレーザ溶接機(KYL−500A/BSP、(株)片岡製作所)を用い、突合せ法によって供試材のアルミニウム合金板を溶接して、割れ、ポロシティ、溶け込み不良などの溶接欠陥がないものを○、あるものを×とした。
表3に、発明法による実施例1〜6および比較法による比較例1〜6の引張強度(機械的性質)、100℃で180MPa初期荷重を負荷したときの定常クリープ速度、平均結晶粒径、プレス成形性およびレーザ溶接性の評価結果を示した。
Claims (4)
- 質量%で、Mnを0.6〜1.5%、Cuを0.51〜1.0%、Mgを0.21〜0.7%含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金板を冷間圧延する途中で、昇温速度10〜250℃/秒、515〜550℃で5〜60秒保持、冷却速度20〜200℃/秒の中間焼鈍を少なくとも1回行い、最終冷延率10〜60%で冷間圧延を行うことを特徴とする二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記組成における前記不可避的不純物中のSiを、質量%で0.2%未満に規制することを特徴とする請求項1記載の二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記組成に、さらに、質量%で、Zr0.05〜0.2%、Cr0.05〜0.2%の一種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記冷間圧延後のアルミニウム合金板は、圧延方向断面において平均結晶粒径が25μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法。
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