JP5887189B2 - 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース - Google Patents
電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース Download PDFInfo
- Publication number
- JP5887189B2 JP5887189B2 JP2012093358A JP2012093358A JP5887189B2 JP 5887189 B2 JP5887189 B2 JP 5887189B2 JP 2012093358 A JP2012093358 A JP 2012093358A JP 2012093358 A JP2012093358 A JP 2012093358A JP 5887189 B2 JP5887189 B2 JP 5887189B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- aluminum alloy
- less
- mass
- battery case
- alloy plate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/10—Energy storage using batteries
Landscapes
- Sealing Battery Cases Or Jackets (AREA)
Description
電池ケース用アルミニウム合金板においては、加工性(成形性)の向上が図られてはいるが、成分組成や製造条件によっては、成形加工においてアルミニウム合金が裂ける等、加工割れが生じる場合がある。
また、二次電池のいっそうの安全性向上のため、電池ケース材料は、強度および耐圧性のさらなる向上が要求される。
このような構成によれば、Zr、Crのうち1種以上を所定量含有することによって、組織を微細化、均質化することができる。
このような電池ケースは、前記したアルミニウム合金板を用いるため、強度、耐圧性(耐膨れ性)が向上したものとなる。
本発明に係るアルミニウム合金板は、Mn,Cu,Mg,Si,Feを所定量含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板において、前記不可避的不純物のうち、Zn,Ti,Bを所定量以下に規制したものである。さらに、アルミニウム合金板の断面の板厚方向中心部における所定の金属間化合物の面積率および個数密度を所定に規定したものである。以下、各成分の限定理由および金属間化合物の分布の規定理由について説明する。
Mnは、母相内に固溶して、アルミニウム合金板の強度を高める効果があり、Mn含有量増加に伴いその効果が向上し、電池ケースとしたときの耐圧強度を高めることができる。また、Mnは、Al,Fe,Siと金属間化合物(Al−Fe−Mn系金属間化合物、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物)を形成して、微細な前記金属間化合物の数を増やせることにより、電池ケースに成形加工する際の潤滑効果に寄与するため、アルミニウム合金板の成形性を向上させる。Mn含有量が0.4質量%未満では、固溶強化が発揮されず、また、1μm以上11μm未満の微細な前記金属間化合物の数が不足しやすくなるため、これらの効果が不十分である。一方、Mn含有量が1.5質量%を超えると、11μm以上の粗大な前記金属間化合物の数が増え、成形時の割れの起点となりやすいため、アルミニウム合金板の成形性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.4〜1.5質量%とする。
Cuは、母相内に固溶して、アルミニウム合金板の強度を高める効果があり、Cu含有量増加に伴いその効果が向上し、電池ケースとしたときの耐圧強度を高めることができる。また、Cuは、パルスレーザー溶接時の溶接部の強度を向上させる効果がある。また、Cuは、Al,Mgと結び付いて微細なS'(Al2CuMg)相を形成、析出する。この微細なS'(Al2CuMg)相が、転位の移動を抑制することによって、応力緩和現象を抑えて、アルミニウム合金板の耐応力緩和性を向上させる。Cu含有量が1.2質量%未満では、これらの効果が不十分である。一方、Cu含有量が4.0質量%を超えると、微細なS'(Al2CuMg)相の析出物により転位の移動が過剰に抑制されるため、成形性を低下させる。また、融点が低下するので、パルスレーザー溶接において、溶接割れが生じる。したがって、Cu含有量は、1.2〜4.0質量%とする。
Mgは、母相内に固溶して、アルミニウム合金板の強度を高める効果があり、Mg含有量増加に伴いその効果が向上し、電池ケースとしたときの耐圧強度を高めることができる。また、Mgは、Siと結び付いてMg2Siを析出したり、Al,Cuと結び付いて微細なS'(Al2CuMg)相を析出したりする。このMg2SiおよびS'(Al2CuMg)相が転位の移動を抑制することによって、応力緩和現象を抑えて、アルミニウム合金板の耐応力緩和性を向上させる。Mg含有量が0.2質量%未満では、これらの効果が不十分である。また、Mg含有量が0.2質量%未満では、強度(耐力)が低下する。一方、Mg含有量が1.5質量%を超えると、アルミニウム合金板の加工硬化性が高くなって成形性が低下する。また、融点が低下するので、パルスレーザー溶接において、溶接割れが生じる。
Siは、母相内に固溶して、アルミニウム合金板の強度を高める効果があり、Si含有量増加に伴いその効果が向上し、電池ケースとしたときの耐圧強度を高めることができる。また、Siは、Al,Mn,FeとAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成して、微細な前記金属間化合物の数を増やせることにより、電池ケースに成形加工する際の潤滑効果に寄与するため、アルミニウム合金板の成形性を向上させる。さらに、Siは、Mgと結び付いてMg2Siを析出するので、アルミニウム合金板の耐応力緩和性を向上させる。Si含有量が0.05質量%未満では、これらの効果が不十分である。一方、Si含有量が1.0質量%を超えると、前記金属間化合物が粗大なものとなりやすく、成形時の割れの起点となりやすいため、アルミニウム合金板の成形性が低下しやすい。また、Mg2Siが粗大化して耐力が低下する場合がある。さらに、Al−Cu−Fe−Si系金属間化合物を形成して、Cuの固溶量を減少させる場合がある。また、融点が低下するので、パルスレーザー溶接において、溶接割れが生じる。したがって、Si含有量は、0.05〜1.0質量%とする。
Feは、Mn,Siと同様にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成して、微細な前記金属間化合物の数を増やせることにより電池ケースに成形加工する際の潤滑効果に寄与するため、アルミニウム合金板の成形性を向上させる効果がある。Fe含有量が0.05質量%未満では、1μm以上11μm未満の微細な前記金属間化合物の数が不足するため、前記効果が小さい。一方、Fe含有量が1.0質量%を超えると、11μm以上の粗大な前記金属間化合物の数が増え、成形時の割れの起点となりやすいため、アルミニウム合金板の成形性が低下する。また、Al−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物の形成量が多くなって、そのためMg2Siの析出が減少して、耐応力緩和性が低下する場合がある。さらに、Al−Cu−Fe−Si系金属間化合物を形成して、Cuの固溶量を減少させる場合がある。したがって、Fe含有量は、0.05〜1.0質量%とする。
アルミニウム合金板の成分は前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物として、例えば、地金や中間合金に含まれている、通常知られている範囲内のGa、V、Ni等は、本発明の効果を妨げるものではないため、このような不可避的不純物の含有は許容される。また、本発明においては、不可避的不純物のうち、Zn,Ti,Bを所定量以下に規制する。
Znは、蒸気圧が低いため、パルスレーザー溶接時に飛散して周囲を汚染しやすく、さらにはビード割れも発生させやすく、アルミニウム合金板のパルスレーザー溶接性を悪くする。したがって、Zn含有量は、0.3質量%以下に規制する。さらに、前記の汚染性を良好にするための好ましいZn含有量は、0.10質量%以下である。
Tiは、アルミニウム合金鋳造組織を微細化、均質化(安定化)する効果があり、圧延用スラブの造塊時の鋳造割れ防止を目的に、通常は0.02質量%以上添加されるが、過剰に添加すると粗大な金属間化合物が晶出し、成形時の割れの起点となりやすいため、0.15質量%以下の範囲内とされる元素である。しかしながら、前記のように常用されている0.02質量%以上を添加すると、パルスレーザー溶接照射による素材の溶融時(660〜750℃)に凝固ビード内に気泡が残留し易くなるので、次のパルスレーザー溶接照射によって、一つ前の凝固ビードが再溶解する際に、溶融池内から気泡が抜けにくくなる。これにより、ビードにポロシティ欠陥が残留し、溶け込みが深く形成されて、異常部が発生する。したがって、Ti含有量は、0.02質量%未満に規制する。
Bは、前記のようにアルミニウム合金のスラブ造塊時の鋳造割れ防止を目的に、Ti−B母合金としてTiと共に、積極添加にて常用されている元素である。しかしながら、B含有量が20質量ppmを超えると、前記のTi添加と同様に、パルスレーザー照射部の凝固ビード内に気泡が残留し易くなり、次のパルスレーザー照射にて前の凝固ビード部が再溶解する際に、溶融池内から気泡が抜けにくくなる。これにより、ビードにポロシティ欠陥が残留し、溶け込みが深く形成されて、異常部が発生する。したがって、B含有量は、20質量ppm以下に規制する。
Zr,Crは、アルミニウム合金組織を微細化、均質化(安定化)する効果がある。また、溶接時に再凝固した時の再結晶粒を微細化でき、溶接割れを回避することができる。しかしながら、それぞれの規定含有量を超えると、粗大な金属間化合物が晶出し、成形時の割れの起点となりやすいため、アルミニウム合金板の成形性が低下する。したがって、Zr、Crを添加する場合は、Zr含有量は、0.15質量%以下、Cr含有量は、0.40質量%以下とする。なお、下限値は特に規定されるものではないが、前記効果を得るため、Zr,Crは、それぞれ0.05質量%以上含有することが好ましい。なお、Zr,Crは、前記の規定含有量以下を不可避的不純物として含有してもよい。
アルミニウム合金板の断面の板厚方向中心部における最大長が1μm以上の金属間化合物の面積率を、0.3%を超え2.1%未満とする。なお、断面の板厚方向中心部とは、具体的には、板厚方向中心を中心とした板厚の30〜50%における領域を指す。
なお、前記範囲内において、1μm未満の化合物が含まれていても、これらの面積率については成形性に影響を与えるものではなく、前記範囲内にこれらの金属間化合物が含まれていてもよい。また、最大長の上限については、定めはなく、面積率には、最大長が11μm以上の金属間化合物も含まれている。
アルミニウム合金板の断面の板厚方向中心部における最大長が11μm以上の金属間化合物の個数密度を、140個/mm2以下とする。
個数密度が140個/mm2を超えると、粗大な前記金属間化合物の数が多く、成形時の割れの起点となりやすいため、アルミニウム合金板の成形性が低下する。
なお、前記範囲内において、11μm未満の化合物が含まれていても、これらの個数密度については、成形性に影響を与えるものではなく、前記範囲内にこれらの金属間化合物が含まれていてもよい。また、最大長の上限については、定めはない。
そして、これら金属間化合物の分布は、前記Mn,Mg,Si,Feの各含有量、および後記の製造条件(均質化熱処理条件、中間焼鈍条件)により制御する。
次に、本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法について説明する。本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法は、前記記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法であり、鋳造工程と、均質化熱処理工程と、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、中間焼鈍工程と、最終冷間圧延工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
鋳造工程は、前記組成を有するアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊を作製する工程である。
合金を溶解、鋳造する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、真空誘導炉を用いて溶解し、連続鋳造法や、半連続鋳造法を用いて鋳造することができる。
均質化熱処理工程は、前記鋳塊を420℃以上かつ前記アルミニウム合金の融点未満の温度で均質化熱処理を施す工程である。なお、均質化熱処理工程においては、前記鋳塊に面削を施した後に均質化熱処理を施す。
鋳塊を圧延する前に、所定温度で均質化熱処理(均熱処理)することが必要である。均熱処理を施すことによって、鋳造時に晶出した金属間化合物を拡散固溶させて組織を均質化する。均熱処理温度が420℃未満では、本発明に係るアルミニウム合金からなる鋳塊の均質化が不十分である。すなわち、電池ケースに成形加工する際に割れの起点となる粗大なAl−Fe−Mn−Si系等の金属間化合物の数を減らす効果が得られない。一方、均熱処理温度がアルミニウム合金の融点に至ると、鋳塊が溶融する。したがって、均熱処理温度は420℃以上、アルミニウム合金の融点未満とする。なお、本発明に係るアルミニウム合金の融点は、その組成によって500〜610℃程度の範囲で変化し、特にCu含有量が多いと低くなる。また、均熱処理時間が1時間未満では、鋳塊の均質化が完了していないことがあるので、1時間以上行うことが好ましい。
熱間圧延工程は、前記均質化熱処理された鋳塊を、熱間圧延する工程である。
冷間圧延工程は、前記熱間圧延工程後に冷間圧延して圧延板を作製する工程である。
熱間圧延および冷間圧延する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。
中間焼鈍工程は、前記圧延板に中間焼鈍を施す工程である。
前記中間焼鈍は、前記圧延板を、100℃/分以上の加熱速度で420℃以上かつ前記アルミニウム合金の融点未満の温度域に加熱し、この温度域に0〜180秒保持した後、300℃/分以上の冷却速度で冷却する。
最後の冷間圧延(最終冷間圧延)前の圧延板に中間焼鈍を施すことによって、最終冷間圧延において、アルミニウム合金板の板厚を所望の板厚に調整しやすくなり、かつ、加工硬化が生じてアルミニウム合金板の強度が向上する。また、中間焼鈍を行うことによって、圧延板にMg2Siや微細なS'(Al2CuMg)相が固溶する。この固溶強化によって、アルミニウム合金板の強度が向上する。また、組立てられた電池が、高温環境に曝される場合や、さらには、その高温環境と常温環境とに繰り返し曝される場合に、加工された電池ケース用アルミニウム合金材においては、Mg2SiまたはS'(Al2CuMg)相が転位の移動を抑制し(ピン止め効果)、応力緩和現象を抑え、アルミニウム合金板の耐圧性を向上させる。さらに、中間焼鈍を行うことによって、Cu等の溶質元素を母相内に固溶させるため、それぞれの元素の固溶強化によりアルミニウム合金板の強度が向上する。
最終冷間圧延工程は、前記中間焼鈍された圧延板に圧下率20〜50%で最終冷間圧延を施す工程である。
最終冷間圧延における圧下率を20〜50%に調整することによって、応力緩和現象が抑制されて、アルミニウム合金板の耐圧性が向上する。圧下率が20%未満では、強度が十分得られず、電池ケースとしての剛性が不足する場合がある。一方、圧下率が50%を超えると、歪みの蓄積が多くなって回復が進行しやすくなり、耐応力緩和性が低下すると共に耐圧性が低下する。また、成形加工時に割れや肌荒れがおきるため、成形性が低下する。したがって、最終冷間圧延の圧下率は20〜50%とする。
次に、本発明に係る電池ケースについて説明する。本発明に係る電池ケースは、前記アルミニウム合金板を用いて作製したものである。
以下、本発明に係るアルミニウム合金板から電池ケースおよび二次電池を作製する方法の一例を説明する。
ケース本体部とする本発明に係るアルミニウム合金板は、最終冷間圧延にて0.3〜0.8mm程度の板厚とする。このアルミニウム合金板を、所定の形状に切断し、絞り加工またはしごき加工により有底筒形状に成形する。さらにこの加工を複数回繰り返して徐々に側壁面を高くして、トリミング等の加工を必要に応じて施すことで、所定の底面形状および側壁高さに成形してケース本体部とする。電池ケースの形状は特に限定されるものではなく、円筒形、偏平形の直方体等、二次電池の仕様に従い、ケース本体部は上面が開放された有底筒形状とする。
(実施例No.1、2、4〜17、参考例3、比較例No.18〜35)
表1に示す組成のアルミニウム合金を、溶解、鋳造して鋳塊とし、この鋳塊に面削を施した後に、500℃にて4時間の均質化熱処理を施した。この均質化した鋳塊に、熱間圧延、さらに冷間圧延を施して、板厚0.7mm程度の圧延板とした。そして、この圧延板を500℃/分の加熱速度で500℃に加熱して、この温度に30秒保持した後、500℃/分で冷却して中間焼鈍を行った。最後に、圧下率30%で最終冷間圧延を行って板厚0.5mmのアルミニウム合金板とした。
表2に示す組成のアルミニウム合金(実施例No.5と同じ組成)を、溶解、鋳造して鋳塊とし、この鋳塊に面削を施した後に、この鋳塊に表2に示す温度にて4時間の均熱処理を施した。この均質化した鋳塊に、熱間圧延、さらに冷間圧延を施して、所定の板厚の圧延板とした。そして、この圧延板に、表2に示す加熱速度、焼鈍温度(30秒保持)、および冷却速度で中間焼鈍を行った。最後に、表2に示す圧下率で最終冷間圧延を行って板厚0.5mmのアルミニウム合金板とした。
成分組成を表1、2に示す。なお、表中、本発明の範囲を満たさないものは、数値に下線を引いて示し、成分を含有しないものは、「−」で示す。また、No.34は、JISA3003合金、No.35は、特許文献1の記載に基づく合金である。
次に、金属間化合物の分布を以下の方法により測定した。
まず、アルミニウム合金板を切り出して樹脂埋めし、圧延方向と板厚方向を含む面を観察面となるように研磨して鏡面とし、この鏡面化された面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて、加速電圧20KV,倍率500倍の組成(COMPO)像で20視野(合計1mm2)観察した。観察視野は、板厚方向中心を中心として板厚方向に、厚み方向の両側(上方向および下方向)を合わせて、0.19mmの範囲内とした。母相より白く写る部分をAl−Mn−Fe系金属間化合物またはAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物と見なし、母相より黒く写る部分をMg−Si系金属間化合物と見なして、画像処理により最大長が1μm以上の金属間化合物の面積の合計を求め、面積率を算出した。また、最大長が11μm以上の金属間化合物の個数をカウントし、単位面積当たりの個数(個数密度)を算出した。アルミニウム合金板の断面の板厚中心部における金属間化合物の面積率および個数密度を表3、4に示す。
得られたアルミニウム合金板にて以下の評価を行い、結果を表4、5に示す。
(強度)
アルミニウム合金板から、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS5号による引張試験片を切り出した。この試験片で、JISZ2241による引張試験を実施し、引張強さ、耐力(0.2%耐力)、および伸びを測定した。強度の合格基準は、耐力が220MPa以上とした。
アルミニウム合金板から、プレス加工機を使用して、側壁のしごき加工率を50%として、底面が縦5mm×横30mm、側壁の高さ50mmの箱体の角型電池ケース本体を成形した。この際、成形可能であり、成形後に肌荒れのないものを成形性が優れているとして「◎」、成形可能であり、わずかに肌荒れが発生したものを成形性が良好であるとして「○」、成形時に割れが発生したもの、または著しい肌荒れが発生したものを成形性が不良であるとして「×」と評価した。
図1に示すように、板厚0.5mmのアルミニウム合金板10,10を、端面同士を突き合わせて配置し、この突合せ部をパルスレーザーにより溶接した。パルスレーザー溶接においては、1個のパルスレーザーにより溶融池が形成されて固化した円状の溶接部20がレーザーの移動により、連続的に溶接線に沿って重なり合いながら形成される。溶接機は、パルス発振のYAGレーザーを使用し、溶接速度は25mm/秒と35mm/秒の2水準とし、シールドガスは窒素を20リットル/分の速度で供給した。また、No.5に示すアルミニウム合金板を溶接した場合にビードの溶け込み深さが約200μmとなる条件として、周波数とパルスレーザー出力を表3に示すように選定した。
前記成形性の評価で作製した角型ケースを用いて、蓋材を重ねてパルスレーザー溶接にて封止した角型電池ケースを、294kPa(3kg/cm2)の内圧を作用させた状態で、100℃に加熱して2時間保持した。室温に戻した後、電池ケースの側面(横30mm×高さ50mmの面)の膨れの変位量を測定した。変位量が0.8mm以下であったものは耐圧性が優れているとして「◎」、0.8mmを超え、1.0mm以下であったものは耐圧性が良好であるとして「○」、1.0mmを超えたものは不良であるとして「×」と評価した。
なお、表中、耐力が合格基準を満たさないものは、数値に下線を引いて示し、鋳塊や圧延板が溶融し、評価できなかったものは、「−」で示す。また、耐圧性評価において、成形性が不良のために、評価を行なわなかったもの、パルスレーザー溶接で、ビードに割れや異常部が生じたため、評価を行なわなかったものは、「−」で示す。
表4に示すように、実施例あるいは参考例であるNo.1〜17は、本発明の範囲を満たすため、あるいは参考例のため、強度、成形性、パルスレーザー溶接性、耐圧性のすべてにおいて、優れていた。
No.18は、Mn含有量が下限値未満のため、耐圧性に劣った。一方、成形性については、Cu含有量によって耐力低下が抑制された結果、成形性は辛うじて確保された。なお、微細な金属間化合物の数は減少したものの、最大長が1μm以上の金属間化合物の面積率は0.3%を超えた。
表5に示すように、実施例あるいは参考例であるNo.36〜44は、本発明の範囲を満たすため、あるいは参考例のため、強度、成形性、パルスレーザー溶接性、耐圧性のすべてにおいて、優れていた。
No.45は、均熱処理温度が下限値未満のため、金属間化合物が多発して、成形性に劣った。No.46は、均熱処理温度が上限値を超えるため、鋳塊が溶融した。
20 溶接部(溶接ビード)
21 異常部(非定常溶け込み)
22 ポロシティ
Claims (4)
- Mn:0.4〜1.5質量%、Cu:1.2〜4.0質量%、Mg:0.2〜1.5質量%、Si:0.05〜1.0質量%、Fe:0.05〜1.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる電池ケース用アルミニウム合金板において、
前記不可避的不純物のうち、Zn:0.3質量%以下、Ti:0.02質量%未満、B:20質量ppm以下に規制し、
耐力:220MPa以上、伸び:3.3%以上であり、
前記電池ケース用アルミニウム合金板の圧延方向と板厚方向とに平行な切断面を観察面として、前記観察面の板厚方向中心を中心とした領域であって板厚方向長が板厚の38%である領域において、最大長が1μm以上の金属間化合物の面積率が0.3%を超え2.1%未満であり、かつ最大長が11μm以上の金属間化合物の個数密度が140個/mm2以下であることを特徴とする電池ケース用アルミニウム合金板。 - さらに、Zr:0.15質量%以下、Cr:0.40質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の電池ケース用アルミニウム合金板。
- 請求項1または請求項2に記載の電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法であって、
前記組成を有するアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊を作製する鋳造工程と、
前記鋳塊を420℃以上かつ前記アルミニウム合金の融点未満の温度で均質化熱処理を施す均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理された鋳塊を、熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後に冷間圧延して圧延板を作製する冷間圧延工程と、
前記圧延板に中間焼鈍を施す中間焼鈍工程と、
前記中間焼鈍された圧延板に圧下率20〜50%で最終冷間圧延を施す最終冷間圧延工程と、を含み、
前記中間焼鈍は、前記圧延板を、100℃/分以上500℃/分以下の加熱速度で420℃以上かつ前記アルミニウム合金の融点未満の温度域に加熱し、この温度域に0〜180秒保持した後、300℃/分以上500℃/分以下の冷却速度で冷却することを特徴とする電池ケース用アルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の電池ケース用アルミニウム合金板を用いたことを特徴とする電池ケース。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012093358A JP5887189B2 (ja) | 2012-04-16 | 2012-04-16 | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012093358A JP5887189B2 (ja) | 2012-04-16 | 2012-04-16 | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009219777A Division JP5599588B2 (ja) | 2009-03-31 | 2009-09-24 | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015205657A Division JP2016035110A (ja) | 2015-10-19 | 2015-10-19 | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012153982A JP2012153982A (ja) | 2012-08-16 |
JP5887189B2 true JP5887189B2 (ja) | 2016-03-16 |
Family
ID=46836013
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012093358A Expired - Fee Related JP5887189B2 (ja) | 2012-04-16 | 2012-04-16 | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5887189B2 (ja) |
Family Cites Families (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS53113212A (en) * | 1977-03-15 | 1978-10-03 | Mitsubishi Keikinzoku Kogyo | Aluminum cathode foil for electrolytic capacitor |
JP4347137B2 (ja) * | 2004-05-26 | 2009-10-21 | 三菱アルミニウム株式会社 | 二次電池ケース用高強度アルミニウム合金板の製造方法 |
JP4290165B2 (ja) * | 2005-06-22 | 2009-07-01 | 住友軽金属工業株式会社 | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
JP2009526913A (ja) * | 2006-02-17 | 2009-07-23 | ノルスク・ヒドロ・アーエスアー | クラッシュ特性が改善されたアルミニウム合金 |
JP2007319867A (ja) * | 2006-05-30 | 2007-12-13 | Toyota Motor Corp | アルミニウム合金押出材の製造方法 |
JP2008127656A (ja) * | 2006-11-22 | 2008-06-05 | Kobe Steel Ltd | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
JP5083802B2 (ja) * | 2007-03-13 | 2012-11-28 | 三菱アルミニウム株式会社 | 二次電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
-
2012
- 2012-04-16 JP JP2012093358A patent/JP5887189B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2012153982A (ja) | 2012-08-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101217428B1 (ko) | 전지 케이스용 알루미늄 합금판 및 전지 케이스 | |
JP5204517B2 (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP6780684B2 (ja) | 一体型円形防爆弁成形用の電池蓋用アルミニウム合金板及びその製造方法 | |
JP5725344B2 (ja) | 成形性、溶接性に優れた電池ケース用アルミニウム合金板 | |
JP2008127656A (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP3867989B2 (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
WO2014057707A1 (ja) | 成形性、放熱性及び溶接性に優れた電池ケース用アルミニウム合金板 | |
JP6614305B1 (ja) | 一体型防爆弁成形用の電池蓋用アルミニウム合金板及びその製造方法 | |
JP5725345B2 (ja) | 成形性、溶接性に優れた電池ケース用アルミニウム合金板 | |
JP6780680B2 (ja) | 一体型防爆弁成形用の電池蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP5950497B2 (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板及び電池ケース | |
JP6614293B1 (ja) | 一体型防爆弁成形用の電池蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP5599588B2 (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース | |
JP5798710B2 (ja) | イレギュラー・ビード防止性に優れる電池ケース用アルミニウム合金板および電池ケース | |
JP2011208229A (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板および電池ケース | |
JP5726430B2 (ja) | 電池ケース本体用アルミニウム合金板および電池ケース | |
WO2020070944A1 (ja) | 一体型防爆弁成形用の電池蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP5879646B2 (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース | |
JP5887189B2 (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース | |
JP5943288B2 (ja) | イレギュラー・ビード防止性に優れる電池ケース用アルミニウム合金板および電池ケース | |
JP5726554B2 (ja) | 電池ケース本体用アルミニウム合金板および電池ケース | |
JP5872632B2 (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板 | |
JP2016035110A (ja) | 電池ケース用アルミニウム合金板およびその製造方法ならびに電池ケース | |
WO2020059160A1 (ja) | 一体型防爆弁成形用の電池蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20130820 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20131011 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20140617 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140916 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140919 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20141014 |
|
A912 | Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912 Effective date: 20141128 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20151019 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20160215 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5887189 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |