JP2008221491A - ナノインプリント用モールドおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インプリント用樹脂との剥離性が高くて樹脂により汚れにくく、汚れの除去が容易で耐久性に優れ、高精度で微細なナノインプリント用モールドおよびその簡易な製造方法を提供する。
【解決手段】光透過性基板11の一主面上に凹凸パターン17を有するナノインプリント用モールド10であって、光透過性基板11の一主面を覆って第一の光触媒層12が設けられており、その上に第二の光触媒層15で凸部が形成されてており、前記凹凸パターン17を含むパターン形状部16全体が、光触媒性材料によって構成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ナノインプリントに用いられるモールドおよびその製造方法に関するものである。
微細パターン形成技術の進展はめざましく、光を用いて数10nm、電子線を用いて10nm以下のレジストパターン形成が達成されている。しかし、それら微細パターン形成装置は高価なため、より安価なパターン形成技術が求められている。そのため、ナノインプリント技術によりシリコン基板などに所望の回路パターンなどを形成する技術が開発されつつある。ナノインプリント技術は、従来のプレス技術と比較して、より微小な構造を実現するための微細パターン形成技術である。この技術自体には解像度限界がなく、解像度はモールドの作製精度によって決まる。すなわち、モールドさえ作製できれば、従来のフォトリソグラフィより容易に、はるかに安価な装置により、極微細パターンが形成できる可能性がある。
ナノインプリント技術につながる基本的な考えは、松井らにより提案されている(特許文献1参照)。ナノインプリントには、熱ナノインプリント、光硬化ナノインプリント、ソフトリソグラフィなどの種別がある。例えば、熱ナノインプリントに関しては、米国ミネソタ大学のチョウらによって熱可塑性樹脂を用いた技術が発表され(例えば、特許文献2参照)、光硬化ナノインプリント技術に関しては、米国テキサス大学のウィルソンらによって紫外光硬化樹脂を用いた技術が発表されている(例えば、特許文献3参照)。
ここで、光硬化ナノインプリント技術を例にして説明する。図5は光硬化ナノインプリントに用いられる従来のナノインプリントリソグラフィ用モールド(以下、NIL用モールドとも記す。)50の断面図である。図5に示されるように、従来のNIL用モールド50は、その表面に微細な三次元形状の凹凸パターン51が形成されている。光硬化ナノインプリントにおいては、NIL用モールド50によって被覆された部分が紫外光などの照射時に、紫外光などをよく透過するように、NIL用モールド50は透明材料によって形成されている。
図6は、従来のNIL用モールド50を用いて、シリコン基板に所望のパターンを形成する工程を示す図である。
図6(a)に示すように、シリコン基板61に光硬化樹脂62を塗布する。次に、図6(b)に示すように、NIL用モールド50を光硬化樹脂62の塗布されたシリコン基板61に押し付け、紫外光63を照射し、光硬化樹脂62を硬化させる。次に、図6(c)に示すように、NIL用モールド50をとり離すことによって光硬化樹脂62による所望のパターンを得る。このとき、図6(c)に示すように、シリコン基板61上には光硬化樹脂62の一部が残り、不要な残膜64として存在してしまう。そのため、次に、図6(d)に示すように、酸素ガスを用いて反応性イオンエッチング(以下、RIE:Reactive Ion Etchingと記す)65を行う。この結果、残膜64が取り除かれてシリコン基板61の表面が現れるとともに、光硬化樹脂パターン66が形成される。次いで、光硬化樹脂パターン66をマスクとして、シリコン基板61にエッチングを施し、図6(e)に示すように、所望のパターンが形成されたシリコン基板67が得られる。
ここで、図6(b)において、NIL用モールド50を押し付けた状態から、NIL用モールド50をとり離す際に、図7に示すように、光硬化樹脂62がしばしば部分的にシリコン基板61から剥離してNIL用モールド50の凸部や凹部に付着した光硬化樹脂68となり、所望の光硬化樹脂パターンを形成することが困難となるという問題があった。また、NIL用モールド50に付着した光硬化樹脂68は有機溶剤などで洗浄して除去する必要があり、生産性の低下につながるという問題があった。上記の問題は光硬化樹脂を用いた光硬化ナノインプリントについて説明したが、熱硬化樹脂を用いた熱ナノインプリントなどの場合も同じ問題を生じていた。
上記のように、NIL用モールドは、光硬化樹脂や熱硬化樹脂などのインプリント用樹脂に直接接触するので樹脂の付着により汚れやすく、その汚れは製造の歩留まりを下げるため問題となっていた。また、汚れを除去するためにモールドの洗浄をするには、モールドを装置から外して行うので、その間は装置を動かせなくなり、製造コストの上昇につながっていた。
このため、図8に示すように、NIL用モールド80の凹凸パターン81表面に光触媒作用をする薄膜82を形成したモールドが提案されている(例えば、特許文献4参照)。モールドを有機溶剤などで洗浄する代わりに、UV照射による光触媒作用を利用して汚れを分解するものである。この光触媒の膜厚は5〜20nm程度の範囲とされている。
特開平3−54569号公報 米国特許第5,772,905号明細書 特表2002−539604号公報 特開2005−327788号公報
しかしながら、特許文献4に示されるような凹凸表面を有するモールド80の凹凸パターン81の凹部、凸部、側面部に光触媒作用を有する薄膜82を均一に成膜することは困難であるという問題があった。また、ナノインプリントに要求されるラインとスペース構造の凸部は幅が100nm以下、最も微細な幅は32nm以下であり、このうち光触媒薄膜の膜厚分を差し引けば、石英モールドの幅は数nm〜数10nm程度となり、このような極めて微小な幅のモールドは作製することができず、さらに光触媒層薄膜の膜厚により正確なモールド寸法を得ることが困難であるという問題があった。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、インプリント用樹脂との剥離性が高くて樹脂により汚れにくく、汚れの除去が容易で耐久性に優れ、高精度で微細なナノインプリント用モールドおよびその簡易な製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係るナノインプリント用モールドは、 光透過性基板の一主面上に凹凸パターンを有するナノインプリント用モールドであって、 前記凹凸パターンを含むパターン形状部全体が光触媒性材料によって構成されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明に係るナノインプリント用モールドは、請求項1に記載のナノインプリント用モールドにおいて、前記光触媒性材料が、光触媒性酸化チタンを含むことを特徴とするものである。
請求項3の発明に係るナノインプリント用モールドは、請求項1または請求項2に記載のナノインプリント用モールドにおいて、前記光触媒性材料が、アナターゼ型光触媒性酸化チタンであることを特徴とするものである。
請求項4の発明に係るナノインプリント用モールドは、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のナノインプリント用モールドにおいて、前記光触媒性材料が、アナターゼ型光触媒性酸化チタンとバインダ樹脂とを含有することを特徴とするものである。
請求項5の発明に係るナノインプリント用モールドは、請求項4に記載のナノインプリント用モールドにおいて、前記バインダ樹脂が、オルガノポリシロキサンであることを特徴とするものである。
請求項6の発明に係るナノインプリント用モールドは、請求項1に記載のナノインプリント用モールドにおいて、前記光触媒性材料が、金属の陽極酸化膜であることを特徴とするものである。
請求項7の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、光透過性基板の一主面上に凹凸パターンを有するナノインプリント用モールドの製造方法であって、前記光透過性基板の一主面上に光触媒性材料により第一の光触媒層を形成する工程と、前記第一の光触媒層上に感放射線レジストを塗布し、パターン露光し現像して、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを覆って前記光透過性基板の一主面上に再び前記光触媒性材料により第二の光触媒層を形成する工程と、前記レジストパターンをリフトオフして除去し、前記第一の光触媒層と前記第二の光触媒層とにより凹凸パターンを含むパターン形状部を形成する工程と、を有することを特徴とするものである。
請求項8の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、請求項7に記載のナノインプリント用モールドの製造方法において、前記第一の光触媒層と前記第二の光触媒層が、前記光触媒性材料を含む溶液を塗布し、乾燥したものであることを特徴とするものである。
請求項9の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、請求項7または請求項8に記載のナノインプリント用モールドの製造方法において、前記光触媒性材料が、光触媒性酸化チタンを含むことを特徴とするものである。
請求項10の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載のナノインプリント用モールドの製造方法において、前記光触媒性材料が、アナターゼ型光触媒性酸化チタンであることを特徴とするものである。
請求項11の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、請求項8に記載のナノインプリント用モールドの製造方法において、前記光触媒性を有する材料が、アナターゼ型光触媒性酸化チタンとバインダ樹脂とを含有することを特徴とするものである。
請求項12の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、請求項11に記載のナノインプリント用モールドの製造方法において、前記バインダ樹脂が、オルガノポリシロキサンであることを特徴とするものである。
請求項13の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、請求項10に記載のナノインプリント用モールドの製造方法において、前記アナターゼ型光触媒性酸化チタンが、無定形酸化チタンを成膜し、焼成してアナターゼ型光触媒性酸化チタンとしたものであることを特徴とするものである。
請求項14の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、光透過性基板の一主面上に凹凸パターンを有するナノインプリント用モールドの製造方法であって、前記光透過性基板の一主面上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜上に感放射線レジストを塗布し、パターン露光し現像して、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記金属薄膜を所定の深さまでエッチングし、次いで前記レジストパターンを剥離して前記金属薄膜の凹凸パターンを形成する工程と、前記金属薄膜の凹凸パターンを陽極酸化して光触媒性のパターン形状部を形成する工程と、を有することを特徴とするものである。
請求項15の発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法は、請求項14に記載のナノインプリント用モールドの製造方法において、前記光透過性基板の一主面上に金属薄膜を形成する工程に続いて、前記金属薄膜上に、前記金属薄膜とエッチング特性の異なる金属薄膜を中間膜として設けてから前記感放射線レジストを塗布し、パターン露光し現像して、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記中間膜をエッチングして中間膜パターンを形成した後、前記レジストパターンを剥離する工程と、前記中間膜パターンをマスクとして前記金属薄膜を所定の深さまでエッチングし、次いで前記中間膜パターンをエッチング除去して前記金属薄膜の凹凸パターンを形成する工程と、前記金属薄膜の凹凸パターンを陽極酸化して光触媒性のパターン形状部を形成する工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明のナノインプリント用モールドによれば、インプリント用樹脂との剥離性が高く、樹脂により汚れにくく、たとえ汚れても汚れの除去が容易で、耐久性に優れた高精度で微細なナノインプリント用モールドを提供することができる。
本発明のナノインプリント用モールドの製造方法によれば、インプリント用樹脂との剥離性が高く、樹脂により汚れにくく、また汚れの除去が容易で、耐久性に優れた高精度で微細なナノインプリント用モールドを簡易な方法で製造することが可能となる。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るNIL用モールドおよびその製造方法について詳細に説明する。
(NIL用モールド)
図1は、本発明のNIL用モールドの断面模式図である。NIL用モールド10は、光透過性基板11の一主面上に凹凸パターン17を有し、その凹部、凸部を含むパターン形状部16全体が光触媒性材料によって構成されているものである。図1において、光透過性基板11の一主面を覆って第一の光触媒層12が設けられており、その上に第二の光触媒層15で凸部が形成されてており、第一の光触媒層12と第二の光触媒層15とでパターン形状部16を構成するものである。
本発明においては、図1に示す第一の光触媒層12と第二の光触媒層15とは異なる光触媒であってもよいが、同一の光触媒でパターン形状部16を構成した方が機械的強度に優れているのでより好ましい。また、図1では第一の光触媒層12と第二の光触媒層15とを区分して示しているが、本発明においては、パターン形状部16全体が一つの光触媒性材料で凹凸を形成したものであってもよい。
(光透過性基板)
光透過性基板11としては、光学研磨された合成石英ガラス、蛍石、フッ化カルシウムなどを用いることができるが、通常、多用されており品質が安定し、短波長の露光光の透過率の高い合成石英ガラスがより好ましい。本発明において、パターン形状部16全体を光透過性の基板上に設けるのは、インプリント用樹脂に光硬化樹脂を用いた場合に、基板側から光照射をするからである。
(パターン形状部)
まず、本発明のNIL用モールド10のパターン形状部16について説明する。パターン形状部16は、その凹部、凸部を含むパターン形状部全体が光触媒性材料で構成されている。上述のように、従来のNIL用モールドのパターン形状部が、そのパターン形状部表面のみに光触媒性材料を設けていたのに対し、本発明のNIL用モールド10は、パターン形状部16全体が光触媒性材料で構成されており、モールドとしての耐久性に優れ、高精度でより微細なパターンを形成することができる。
パターン形状部16を構成する光触媒性材料は、光触媒単体で構成されたものであってもよく、あるいは光触媒とバインダ樹脂とから構成されているものであってもよい。また、その表面の特性は親液性であっても撥液性であってもよい。
パターン形状部16が、光触媒のみからなる場合は、紫外光などの照射時に、光触媒単体の特性変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化などのコスト面で有利である。一方、パターン形状部16が、光触媒とバインダ樹脂とからなる場合は、パターン形状部の形成が容易であるという利点を有する。
(光触媒材料)
本発明でパターン形状部16を構成する光触媒性材料に用いられる光触媒としては、紫外線あるいは可視光を透過し、紫外線あるいは可視光の照射により活性酸素などの活性種を発生する光触媒が用いられ、光半導体として知られる例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(TaO2)、酸化鉄(Fe23)、およびチタン酸ストロンチウム、酸化チタンの酸素の少なくとも一部を窒素に置換したものなどを挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
本発明においては、光触媒として、上記の金属酸化物の金属単体を陽極酸化して光触媒性の金属酸化物半導体とした材料を用いることも可能である。例えば、チタン、タンタル、タングステン、亜鉛、スズ、インジウム、鉄等の陽極酸化物が挙げられる。
本発明においては、特に光触媒性酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。光触媒性酸化チタンにはアナターゼ型とルチル型があり、本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型光触媒性酸化チタンは励起波長が380nm以下の紫外線領域にあり、光硬化樹脂を用いた光ナノインプリント方式の場合、光触媒の機能が十分に発揮されて効果が著しいのでより好ましい。
このようなアナターゼ型光触媒性酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))などを挙げることができる。
光触媒は、特定のバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射すると、光励起により電子や正孔を生じる物質である。光励起により生じた電子の持つ還元力や、正孔の持つ強い酸化力が有機物の分解・浄化などの光触媒効果を起こす。
したがって、NIL用モールド10のパターン形状部16全体が光触媒材料で構成されていると、光硬化樹脂を用いた場合には、パターン転写の度に紫外光に暴露されるため、例え、モールドと光硬化樹脂が押し付けられても、光触媒効果によりモールド表面に有機物(光硬化樹脂)が結合しようとする力は弱められるため、光硬化樹脂のモールド表面への付着を防止することができることとなる。
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こり、さらにパターンのエッジ精度の向上も容易となるのでより好ましく、平均粒径が20nm以下であることが好ましく、さらには5nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
パターン形状部16を構成する光触媒材料が、光触媒とバインダ樹脂とからなる場合は、光触媒としては、上記の光触媒が用いられる。バインダとしては、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するバインダが好ましく、例えばオルガノポリシロキサンなどを挙げることができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことによりパターン形状部16を形成することができる。
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基などであるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシランなどが挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、光透過性基板11上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらのバインダは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
バインダを用いた場合の光触媒層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。
本発明において、光透過性基板11上に形成するパターン形状部16において、第一の光触媒層12の厚さは特に限定されるわけではないが、0.01〜2μm程度の範囲であることが好ましい。0.01μm未満であるとモールドとしての機械的強度が不安定となり、一方、2μmを超えると光透過性が低下してくるからである。第二の光触媒層15の厚さは、所望するパターンの線幅に依存するが、0.01〜1μm程度の範囲であることが好ましい。0.01μm未満であるとモールドとしての機械的強度が不安定となり、一方、1μmを超えると微細パターン形成が困難となってくるからである。
(NIL用モールドの製造方法)
本発明でパターン形状部16を構成する光触媒としての金属酸化物を、直接にエッチング加工して微細パターンを形成するのは通常困難であり、本発明では以下に述べる製造方法を用いる。
図2を参照しながら、本発明のNIL用モールド10の製造方法の第1の実施形態および第2の実施形態について説明する。図2は、図1に示したNIL用モールド10の製造工程を示す断面模式図である。図2において、図1と同じ箇所は同じ符号を用いている。
図2(a)に示すように、光透過性基板11を準備する。
次に、図2(b)に示すように、この光透過性基板11の一主面上に光触媒性材料により第一の光触媒層12を形成する。
次に、第一の光触媒層12上に感放射線レジストを塗布し、パターン露光し現像して、図2(c)に示すように、レジストパターン13を形成する。
次に、図2(d)に示すように、レジストパターン13を覆って光透過性基板の一主面上に再び光触媒性材料により第二の光触媒材料層14を形成する。
次いで、上記の感放射線レジストの剥離液によりレジストパターン13をリフトオフして除去し、第二の光触媒層15を形成し、第一の光触媒層12と第二の光触媒層15とにより凹凸パターンを含むパターン形状部16を形成し、本発明のNIL用モールド10を得る。
以上の過程を経て得られるNIL用モールド10では、光透過性基板11の一主面上に微細三次元形状の凹凸パターン17を含むパターン形状部16全体が光触媒性を有する材料によって構成されているものである。
(第1の実施形態)
本発明のNIL用モールド10の製造方法の第1の実施形態について説明する。本実施形態は、パターン形状部が光触媒のみからなる製造方法である。
図1に示した上記の製造工程において、パターン形状部16を構成する光触媒材料が、光触媒単独の場合の形成方法としては、例えば、光触媒粉体を水あるいは揮発性有機溶媒に分散させた溶液を作製し、この溶液を光透過性基板11上にスピンコート法などで塗布し、乾燥する方法を用いることができる。
光触媒のみからなるパターン形状部16の他の形成方法の例としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法などの真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。具体的には、ターゲットにチタン・ターゲットを用い、スパッタ・ガスとしてアルゴンなどの希ガスと酸素ガスを用い、投入電力密度を6W/cm2 以上とする。当該成膜条件におけるスパッタリングによって形成された膜は、主に非結晶型酸化チタン膜であるが、これを光触媒性能の高い光触媒性酸化チタン膜として結晶化させるために、その後、300℃〜500℃の範囲の温度で焼成することにより、アナターゼ型光触媒性酸化チタンとすることができる。
また、光触媒のみからなるパターン形状部16の形成方法の別な例としては、例えば光触媒性酸化チタンの場合は、光透過性基板11上に無定形チタニアを塗布形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法などが挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタンなどのチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタンなどの有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、300℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型光触媒性酸化チタンに変性させることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明のNIL用モールド10の製造方法の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、パターン形状部が光触媒とバインダ樹脂とを含有する製造方法である。
図1に示した上記の製造工程において、パターン形状部16を構成する光触媒材料が、光触媒とバインダ樹脂とからなる場合の形成方法としては、上記のように、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないよう、例えばオルガノポリシロキサンなどが用いられる。
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記パターン形状部16は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布溶液を調製し、この溶液を光透過性基板11上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコートなどの公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことによりパターン形状部16を形成することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明のNIL用モールドの製造方法の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、パターン形状部が金属薄膜を陽極酸化により光触媒性の金属薄膜とする製造方法である。図3は、本実施形態のNIL用モールドの製造工程を示す断面模式図であり、図3を参照しながら、本実施形態について説明する。
図3(a)に示すように、光透過性基板31を準備し、この光透過性基板31の一主面上に金属薄膜32をスパッタリング法などの真空成膜方法を用いて形成する(図3(b))。
本発明で用いる金属薄膜32としては、金属薄膜32を陽極酸化して光透過性のよい光触媒性の金属酸化物半導体とすることができる金属が用いられ、例えば、チタン、タンタル、タングステン、亜鉛、スズ、インジウム、鉄等の薄膜が挙げられる。本実施形態における金属薄膜32の厚さは特に限定されるわけではないが、陽極酸化後の光透過性を上げるために、厚さ0.02〜1μm程度の範囲とするのが好ましい。
次に、図3(c)に示すように、上記の金属薄膜32上に感放射線レジスト33を塗布し、パターン露光し現像して、レジストパターン33を形成する。
次に、レジストパターン33をマスクとして金属薄膜32を所定の深さまでパターン状にエッチングし、次いでレジストパターン33を剥離して、図3(d)に示すように、金属薄膜の凹凸パターン32aを形成する。本実施形態において、金属薄膜32のエッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれの方法も適用でき、金属薄膜32の特性に応じたエッチング条件で、ナノインプリントのモールドとしての所定の深さまでハーフエッチングする。
次いで、金属薄膜の凹凸パターン32aを陽極酸化処理層中で陽極酸化し、図3(e)に示すように、光触媒性のパターン形状部36とし、NIL用モールド30を得る。
陽極酸化は、例えば、陽極酸化処理槽を硫酸水溶液等の電解液で満たし、陽極に金属薄膜の凹凸パターン32aを有する光透過性基板31を浸漬し、陰極に白金電極を用い、両電極間に所定の時間、所要の電圧をかけて、金属薄膜を陽極酸化させて酸化膜を形成した後、純水洗浄し、光触媒性のパターン形状部36とする。
本実施形態において、陽極酸化によりパターン寸法が変動する場合には、予め寸法変化量を算出して、金属パターン寸法を補正しておくのが望ましい。
本実施形態において、レジストパターン33が金属薄膜32のエッチング時に十分な耐性が無い場合には、図示はしてないが、上記の金属薄膜32上に、前記金属薄膜32とエッチング特性の異なる別な金属薄膜を中間膜として設けてから前記感放射線レジストを塗布し、パターン露光し現像して、レジストパターンを形成し、次いで、レジストパターンをマスクとして上記の中間膜をエッチングして中間膜パターンを形成した後、レジストパターンを剥離し、次に、上記の中間膜パターンをマスクとして上記の金属薄膜32を所定の深さまでエッチングし、次いで、上記の中間膜パターンをエッチング除去し、金属薄膜の凹凸パターンを形成し、この金属薄膜の凹凸パターンを陽極酸化する方法も用いられる。
上記の中間膜は、金属薄膜32のエッチング条件ではエッチングされない、あるいは殆どエッチングされず、金属薄膜32のエッチング後は金属薄膜32のパターンに損傷を与えずに容易に除去できる金属が用いられる。中間膜は、スパッタリング等の真空成膜法で、膜厚数10nm〜数100nmに設けて用いられる。
本実施形態において、レジストパターンの剥離は、金属薄膜32のエッチングの後であってもよい。
(本発明のモールドの使用方法)
次に、上記の本発明のNIL用モールド10を用いてシリコン基板上にパターンを形成する手順について、図面を用いて説明する。図4は、本発明のNIL用モールド10を用いて、シリコン基板上にパターンを形成する工程を示す工程断面模式図である。図4において、図1と同じ箇所は同じ符号を用いている。
まず、図4(a)に示すように、シリコン基板41上に光硬化樹脂42を塗布し、一方、光触媒性を有する材料により凹凸パターンを有するパターン形状部16を形成した本発明のNIL用モールド10を準備する。
次に、図4(b)に示すように、光触媒性を有する材料による凹凸パターン16が形成されたNIL用モールド10を、光硬化樹脂42の塗布されたシリコン基板41に押し付ける。そして、紫外光43を照射し、光硬化樹脂42を硬化させる。
次に、図4(c)に示すように、NIL用モールド10をとり離すことによって光硬化樹脂による光硬化したパターン44を得る。このとき、シリコン基板41上には光硬化樹脂42の残膜45が存在する。
次に、図4(d)に示すように、残膜45を除去するために、酸素ガスを用いて反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)46を行う。この結果、残膜45が取り除かれてシリコン基板41の表面が現れるとともに、光硬化樹脂による所望の樹脂パターン47が形成される。
本発明の製造方法においては、図4(b)の紫外光照射時に、紫外光により光硬化樹脂42を硬化させるとともに、光触媒反応で光硬化樹脂を分解もしているので、紫外光照射条件を適切に選ぶことにより、残膜となる不要な光硬化樹脂を軽減したりあるいは取り除くことも可能である。この場合、図4(c)の残膜除去RIE工程を軽減したりあるいは省くことも可能となり、製造時間を短縮することにより製造コスト面で有利とすることもできる。
次に、所望の樹脂パターン47をマスクとして、シリコン基板41にエッチングを施した後、所望の樹脂パターン47を剥離し、図4(e)に示すように、所望のパターンが形成されたシリコン基板48が得られる。
この場合、NIL用モールド10では、図4(b)に示す工程において、紫外光43を照射すると、光触媒性を有する材料によって構成された凹凸パターンの光触媒層12および15の表面で光触媒反応が起きる。そのため、NIL用モールド10の表面に光硬化樹脂42が付着しようとしても、光触媒反応により、その付着力もしくは結合力を分解する作用が生じ、NIL用モールド10を押し付けた状態からNIL用モールド10をとり離す際に、NIL用モールド10の表面に光硬化樹脂42は付着することができない。その結果、NIL用モールド10と光硬化樹脂42との剥離性が向上する。
したがって、光硬化樹脂42がNIL用モールド10に付着したままシリコン基板41から剥がれてしまうのを防ぐことができる。
また、光触媒性を有する材料は、光触媒反応を起こすと、有機物質を分解するので、光触媒性を有する材料によって構成された凹凸パターンと光硬化樹脂42の間に存在する有機物質が分解され、シリコン基板41への有機物の付着による汚染を防止することも可能となる。特に光硬化ナノインプリントにおいては、インプリントを行なうたびに紫外光露光されるために効果が大きい。
さらに、本実施の形態に係るNIL用モールド10は、凹凸パターンを含むパターン形状部16全体が光触媒性を有する材料によって構成されているので、耐熱性、耐食性に優れ、耐久性、耐損傷性、耐摩耗性、膜均一性に優れている。特に光触媒性を有する材料として光触媒性酸化チタンは、強度、耐熱性、耐食性に優れ、化学的に安定な化合物であるからである。したがって、光触媒性酸化チタンでパターン形状部16を構成したNIL用モールド10を用いることによって、複数の押圧を繰り返しても、安定した正確な転写パターンを得ることが可能となり、製造コストの削減を図ることが可能となる。
なお、ここではシリコン基板41へのパターン転写を例に説明したが、パターン転写する基板の材料としては、特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途などに応じて適宜選択することが好ましい。用途としては、半導体製品、光学素子、磁気記録媒体、バイオチップなどがある。材料としては、具体的にはシリコン(Si)、ガリウム砒素、(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)、窒化ガリウム(GaN)などの半導体;ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ペット樹脂などの樹脂;チタン(Ti)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)などの金属;石英、ソーダライムガラスなどのガラス;および、上記物質を含有する合金などをあげることができる。
光触媒性酸化チタンに上記のような光を照射することによって分解される有機物質としては、有機ハロゲン化合物、有機リン化合物、界面活性剤や油類などの炭化水素類、アルデヒド類、メルカプタン類、アルコール類、アミン類、アミノ酸、蛋白質などがあげられる。したがって、光触媒性酸化チタンによって構成されたパターン形状部16は、有機物質である光硬化樹脂との剥離性は高いが、他方無機物質である石英やガラスなどの光透過性基板11との剥離性は低い。そのため、本発明のNILモールドは、従来のフッ素樹脂コーティング膜のように、モールドからフッ素樹脂が剥がれてしまうという問題は解消される。
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例1)
光透過性基板として、外形が縦6インチ、横6インチ、厚さ0.25インチの直方体の合成石英基板を用い、この基板の一主面上に、アナターゼ型の光触媒性酸化チタンを水とイソプロピルアルコールの混合溶媒(重量比1:1)に分散させた分散溶液をスピンコート法で塗布し、300℃で1時間乾燥し、厚さ2μmの第一の光触媒層を形成した。
次に、上記の第一の光触媒層上にノボラック樹脂系の電子線レジストZEP−520(日本ゼオン(株)製)を厚さ100nmで塗布し、電子線描画し、現像し、幅70nm、ピッチ140nmのライン状のレジストパターンを形成した。
次に、上記のレジストパターンを覆って基板の一主面上に上記の分散溶液を再び塗布し、200℃で乾燥して溶媒を除去した後、上記レジストの剥膜液でレジストパターンをリフトオフして剥膜した。続いて、300℃で1時間乾燥し、厚さ2μmの第一の光触媒層上に、幅70nm、ピッチ140nm、深さ100nmの第二の光触媒層を形成し、第一の光触媒層と第二の光触媒層とによる凹凸パターンを含むパターン形状部を形成したナノインプリント用モールドを得た。
上記のナノインプリント用モールドを用い、直径200mmのシリコン・ウェハに紫外光硬化樹脂PAK−01(東洋合成(株)製)を塗布し、上記モールドを押し付けた後、波長320nmの紫外光を照射し、紫外光硬化樹脂を硬化させた。次に、モールドをとり離し、酸素RIEにより余分な残膜を取り除き、次いでシリコン基板にエッチングを施し、幅70nm、ピッチ140nm、深さ70nmの三次元形状のパターンの形成されたシリコン基板を得た。
一方、とり離したモールドには紫外光硬化樹脂の付着は生じていなかった。
(実施例2)
まず、光触媒性材料としてアナターゼ型光触媒性酸化チタンとバインダ樹脂とを含有する以下の塗布液を作製した。フルオロアルキルシラン(TSL8233 GE東芝シリコーン製)1.5g、テトラメトキシシラン(TSL8114 GE東芝シリコーン製)5.0g、および0.1N塩酸3gを24時間常温にて攪拌して撥液性付与剤を作製した。次に、チタニアゾル(STS−01 石原産業製)を水とイソプロパノールとの混合液(重量比1:1)にて光触媒性酸化チタン濃度が0.5wt%となるように希釈した。この希釈液30gに乾燥抑制剤としてジエチレングリコールモノメチルエーテル(20℃の蒸気圧0.18mmHg)を15g添加し、10分間攪拌した。この液に上記の撥液性付与剤を0.3g添加して、10分間攪拌し光触媒形成用塗布液とした。
次に、光透過性基板として、外形が縦6インチ、横6インチ、厚さ0.25インチの直方体の合成石英基板を用い、この基板の一主面上に、上記の塗布液をスピンコート法で塗布し、200℃で1時間乾燥し、厚さ1μmの第一の光触媒層を形成した。
次に、上記の第一の光触媒層上にノボラック樹脂系の電子線レジストZEP−520(日本ゼオン(株)製)を厚さ100nmで塗布し、電子線描画し、現像し、幅70nm、ピッチ140nmのライン状のレジストパターンを形成した。
次に、上記のレジストパターンを覆って基板の一主面上に上記の分散溶液を再び塗布し、200℃で乾燥して溶媒を除去した後、上記レジストの剥膜液でレジストパターンをリフトオフして剥膜した。続いて、300℃で1時間乾燥し、厚さ1μmの第一の光触媒層上に、幅70nm、ピッチ140nm、深さ100nmの第二の光触媒層を形成し、第一の光触媒層と第二の光触媒層とによる凹凸パターンを含むパターン形状部を形成したナノインプリント用モールドを得た。
上記のナノインプリント用モールドを用い、直径200mmのシリコン・ウェハに紫外光硬化樹脂PAK−01(東洋合成(株)製)を塗布し、上記モールドを押し付けた後、波長320nmの紫外光を照射し、紫外光硬化樹脂を硬化させた。次に、モールドをとり離し、酸素RIEにより余分な残膜を取り除き、次いでシリコン基板にエッチングを施し、幅70nm、ピッチ140nm、深さ70nmの三次元形状のパターンの形成されたシリコン基板を得た。
一方、とり離したモールドには紫外光硬化樹脂の付着は生じていなかった。
(実施例3)
光透過性基板として、外形が縦6インチ、横6インチ、厚さ0.25インチの直方体の合成石英基板を用い、この基板の一主面上に、ターゲットにチタン・ターゲットを用い、スパッタ・ガスとしてアルゴンと酸素を用い、投入電力密度を7W/cm2 でスパッタリングを行い、その後400℃で焼成し、膜厚が100nmの光触媒性酸化チタンによる第一の光触媒層を形成した。
次に、上記の第一の光触媒層上にノボラック樹脂系の電子線レジストZEP−520(日本ゼオン(株)製)を厚さ100nmで塗布し、電子線描画し、現像し、幅70nm、ピッチ140nmのライン状のレジストパターンを形成した。
次に、上記のレジストパターンを覆って基板の一主面上に、上記と同様にスパッタリング法で再び酸化チタンを成膜した。次いで、上記レジストの剥膜液でレジストパターンをリフトオフして剥膜した。続いて、300℃で1時間乾燥し、厚さ100nmの第一の光触媒層上に、幅70nm、ピッチ140nm、深さ100nmの第二の光触媒層を形成し、第一の光触媒層と第二の光触媒層とによる凹凸パターンを含むパターン形状部を形成したナノインプリント用モールドを得た。
上記のナノインプリント用モールドを用い、直径200mmのシリコン・ウェハに紫外光硬化樹脂PAK−01(東洋合成(株)製)を塗布し、上記モールドを押し付けた後、波長320nmの紫外光を照射し、紫外光硬化樹脂を硬化させた。次に、モールドをとり離し、酸素RIEにより余分な残膜を取り除き、次いでシリコン基板にエッチングを施し、幅70nm、ピッチ140nm、深さ70nmの三次元形状のパターンの形成されたシリコン基板を得た。
一方、とり離したモールドには紫外光硬化樹脂の付着は生じていなかった。
(実施例4)
光触媒機能があり多孔質構造を有する酸化チタン(TiO2)を以下の方法で作製した。酸化チタン粉末を加圧成型してタブレットを作製し、このタブレットを焼成し、還元処理した後、硫酸水溶液中、定電位下で、超高圧水銀灯により光照射して光電気化学エッチングすることにより、孔径数10nmのハニカム構造を有する酸化チタンを得た。この酸化チタンの側壁はルチル構造であることが知られている。この多孔質の構造を有する酸化チタンを平均粒径7μmの大きさの粉体とした。
次に、上記の多孔質構造を有する酸化チタン粉体をイソプロピルアルコールに分散し、この分散溶液を上記のレジストパターンを覆ってスピンコート法で塗布し、150℃で30分乾燥し、厚さ1μmの第一の光触媒層を形成した。
次に、上記の第一の光触媒層上に、実施例1と同様に、電子線レジストを厚さ100nmで塗布し、電子線描画し、現像し、幅70nm、ピッチ140nmのライン状のレジストパターンを形成した。
次に、上記のレジストパターンを覆って基板の一主面上に上記の分散溶液を再び塗布し、200℃で乾燥して溶媒を除去した後、上記レジストの剥膜液でレジストパターンをリフトオフして剥膜した。続いて、300℃で1時間乾燥し、厚さ1μmの第一の光触媒層上に、幅60nm、ピッチ120nm、深さ100nmの第二の光触媒層を形成し、第一の光触媒層と第二の光触媒層とによる凹凸パターンを含むパターン形状部を形成したナノインプリント用モールドを得た。
上記のナノインプリント用モールドを用い、シリコン・ウェハに紫外光硬化樹脂を塗布し、上記モールドを押し付けた後、紫外光を照射し、紫外光硬化樹脂を硬化させた。次に、モールドをとり離し、酸素RIEにより余分な残膜を取り除き、次いでシリコン基板にエッチングを施し、シリコン基板上に、幅60nm、ピッチ120nm、深さ70nmの三次元形状のパターンの形成されたシリコン基板を得た。
一方、とり離したモールドには紫外光硬化樹脂の付着は生じていなかった。
(実施例5)
光透過性基板として、外形が縦6インチ、横6インチ、厚さ0.25インチの直方体の合成石英基板を用い、この基板の一主面上に、ターゲットにチタン・ターゲットを用い、スパッタリング法により、膜厚が200nmのチタン薄膜を形成し、続いてクロム薄膜を厚さ100nm形成した。
次に、上記のクロム薄膜上に電子線レジストを塗布し、電子線描画し、現像し、幅70nm、ピッチ140nmのライン状のレジストパターンを形成した。次に、硝酸第二セリウムアンモニウム系のクロムエッチング液でクロム薄膜をパターンエッチングし、レジストパターンを剥離後、次に、パターン化したクロム薄膜をマスクとしてチタン薄膜を5%フッ化水素酸水溶液で100nmの深さまでエッチングした。
次に、上記のクロムエッチング液でクロム薄膜パターンをエッチング除去し、チタン薄膜で凹凸パターンが形成された石英基板を得た。
次に、塩化ビニール製の陽極酸化処理槽中で、電解液として硫酸3%水溶液を用い、処理品ホルダーを兼ねる陽極に上記のチタン薄膜が形成された石英基板を接続して、両極間に電圧21Vを必要時間かけて陽極酸化処理を行い、チタン薄膜を陽極酸化して二酸化チタンの透明膜とし、石英基板上に、光触媒性の二酸化チタンよりなる凹凸のパターン形状部を形成したナノインプリント用モールドを得た。
上記のナノインプリント用モールドを用い、実施例1と同様にして、シリコン・ウェハ上の紫外光硬化樹脂にナノインプリントし、三次元形状のパターンを形成した。
一方、とり離したモールドには紫外光硬化樹脂の付着は生じていなかった。
本発明のNIL用モールドの実施形態の一例を示す断面模式図である。 図1に示すNIL用モールドの製造方法の第1の実施形態および第2の実施形態を示す工程断面図である。 本発明の第3の実施形態を示す工程断面図である。 図1のNIL用モールドを用いてシリコン基板にパターンを形成する方法を 示す図である。 従来のNIL用モールドの断面模式図である。 図5に示す従来のNIL用モールドを用いてシリコン基板にパターンを形成する方法を示す図である。 図5に示す従来のNIL用モールドを用いてパターンを形成する際の問題点を説明するための図である。 従来のNIL用モールドの他の例を示す断面模式図である。
符号の説明
10、30 本発明のNIL用モールド
11、31 光透過性基板
12 第一の光触媒層
13、33 レジストパターン
14 第二の光触媒材料層
15 第二の光触媒層
16、36 パターン形状部
17 凹凸パターン
32 金属薄膜
32a 金属薄膜の凹凸パターン
41 シリコン基板
42 光硬化樹脂
43 紫外光
44 光硬化したパターン
45 光硬化樹脂の残膜
46 反応性RIE
47 樹脂パターン
48 パターン形成されたシリコン基板
50、80 従来のNIL用モールド
51、81 凹凸パターン
61 シリコン基板
62 光硬化樹脂
63 紫外光
64 光硬化樹脂の残膜
65 酸素ガスを用いたRIE
66 光硬化樹脂パターン
67 パターン形成されたシリコン基板
68 剥離付着した光硬化樹脂
82 光触媒作用を有する薄膜

Claims (15)

  1. 光透過性基板の一主面上に凹凸パターンを有するナノインプリント用モールドであって、
    前記凹凸パターンを含むパターン形状部全体が光触媒性材料によって構成されていることを特徴とするナノインプリント用モールド。
  2. 前記光触媒性材料が、光触媒性酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールド。
  3. 前記光触媒性材料が、アナターゼ型光触媒性酸化チタンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のナノインプリント用モールド。
  4. 前記光触媒性材料が、アナターゼ型光触媒性酸化チタンとバインダ樹脂とを含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のナノインプリント用モールド。
  5. 前記バインダ樹脂が、オルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項4に記載のナノインプリント用モールド。
  6. 前記光触媒性材料が、金属の陽極酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールド。
  7. 光透過性基板の一主面上に凹凸パターンを有するナノインプリント用モールドの製造方法であって、
    前記光透過性基板の一主面上に光触媒性材料により第一の光触媒層を形成する工程と、
    前記第一の光触媒層上に感放射線レジストを塗布し、パターン露光し現像して、レジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターンを覆って前記光透過性基板の一主面上に再び前記光触媒性材料により第二の光触媒層を形成する工程と、
    前記レジストパターンをリフトオフして除去し、前記第一の光触媒層と前記第二の光触媒層とにより凹凸パターンを含むパターン形状部を形成する工程と、
    を有することを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
  8. 前記第一の光触媒層と前記第二の光触媒層が、前記光触媒性材料を含む溶液を塗布し、乾燥したものであることを特徴とする請求項7に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  9. 前記光触媒性材料が、光触媒性酸化チタンを含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  10. 前記光触媒性材料が、アナターゼ型光触媒性酸化チタンであることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  11. 前記光触媒性材料が、アナターゼ型光触媒性酸化チタンとバインダ樹脂とを含有することを特徴とする請求項8に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  12. 前記バインダ樹脂が、オルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項11に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  13. 前記アナターゼ型光触媒性酸化チタンが、無定形酸化チタンを成膜し、焼成してアナターゼ型光触媒性酸化チタンとしたものであることを特徴とする請求項10に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  14. 光透過性基板の一主面上に凹凸パターンを有するナノインプリント用モールドの製造方法であって、
    前記光透過性基板の一主面上に金属薄膜を形成する工程と、
    前記金属薄膜上に感放射線レジストを塗布し、パターン露光し現像して、レジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターンをマスクとして前記金属薄膜を所定の深さまでエッチングし、次いで前記レジストパターンを剥離して前記金属薄膜の凹凸パターンを形成する工程と、
    前記金属薄膜の凹凸パターンを陽極酸化して光触媒性のパターン形状部を形成する工程と、
    を有することを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
  15. 請求項14に記載のナノインプリント用モールドの製造方法において、
    前記光透過性基板の一主面上に金属薄膜を形成する工程に続いて、
    前記金属薄膜上に、前記金属薄膜とエッチング特性の異なる金属薄膜を中間膜として設けてから前記感放射線レジストを塗布し、パターン露光し現像して、レジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターンをマスクとして前記中間膜をエッチングして中間膜パターンを形成した後、前記レジストパターンを剥離する工程と、
    前記中間膜パターンをマスクとして前記金属薄膜を所定の深さまでエッチングし、次いで前記中間膜パターンをエッチング除去して前記金属薄膜の凹凸パターンを形成する工程と、
    前記金属薄膜の凹凸パターンを陽極酸化して光触媒性のパターン形状部を形成する工程と、
    を有することを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
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