JP2008219961A - 超音波アクチュエータ - Google Patents

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稔 石黒
Shinichi Yamamoto
慎一 山本
Manabu Aoyanagi
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Abstract

【課題】小型で電圧制御が容易であるとともに、ロータの回転速度を制御することができる超音波アクチュエータを提供する。
【解決手段】回転自在なロータに作用してロータを回転させる超音波アクチュエータにおいて、ロータに一端が接し途中に折れ曲がった角部を有しさらに延在して他端側が固定された板状の振動子と、振動子の、一端と角部との間の一部分に接触し、交流電圧の印加を受けて振動してその振動を振動子に伝える第1の圧電素子と、振動子の、他端と角部との間の一部分に接触し、直流電圧の印加を受けて伸縮してその一部分の湾曲を調整することにより、振動子の振動開始前における、一端をロータに押し当てる予圧力を調整する第2の圧電素子とを備えた。
【選択図】 図11

Description

本発明は、回転自在なロータに作用して、そのロータを回転させる超音波アクチュエータに関する。
近年、携帯電話に小型の撮影装置が備えられてきており、このような小型の撮影装置にも、通常サイズのデジタルカメラには標準的に搭載されているオートフォーカス機能やズーム機能を搭載することが求められている。
オートフォーカス機能やズーム機能は、モータの回転を利用し、レンズを光軸に沿う方向に移動させることによって実現されることが一般的である。通常、レンズを駆動するモータとしては、磁場によってロータを回転させる電磁モータが利用されることが多いが、電磁モータは消費電力が大きく、比較的大型であるため、小型化および省電力化が求められている携帯電話などには搭載することが困難である。
この点に関し、特許文献1および特許文献2には、電磁モータの替わりに圧電を用いたアクチュエータを使ってレンズを移動させる撮影装置について記載されており、特許文献3および特許文献4には、圧電を用いたアクチュエータの基本的な構成について記載されている。
図1は、圧電を用いた超音波アクチュエータ10の概略構成図であり、図2は、超音波アクチュエータ10の動作原理を説明するための図である。
図1に示すように、超音波アクチュエータ10には、電圧の印加を受けて振動する圧電素子11、圧電素子11の振動を受けて歪む振動子12、振動子12の振動変位によって回転するロータ13、圧電素子11および振動子12を支持する支持部材14、振動子12をロータ13に向けて付勢するばね15、およびばね15を振動子12に押し当てる押当板16が備えられている。
図2に示すように、振動子12は、2枚の圧電素子11a,11bに挟まれており、例えば、圧電素子11a,11bそれぞれに同じ位相の交流電圧が印加されると、それら圧電素子11a,11bが同じ方向に伸縮して振動子12が変形し、振動子12の先端がロータ13に押し付けられることによって、駆動体12の先端が楕円を描いて駆動され、ロータ13が矢印A方向に回転されることとなる。
このような圧電を用いた超音波アクチュエータを撮影装置に搭載することによって、電磁モータよりも少ない電力でレンズを駆動することができ、さらに、撮影装置の軽量化や、レンズ駆動の静音化を図ることができる。
しかし、上述した超音波アクチュエータ10では、振動子12を支持する支持部材14に加えて、振動子12をロータ13に押し付けるばね15や押当板16などといった予圧機構が必要となる。この予圧機構は、振動子12の歪みには直接的には関係しない部品であるにも関わらず、それ以外の部分と同等のスペースを占めてしまっており、超音波アクチュエータの小型化におけるネックとなってしまっている。
この点に関し、板状の振動子を折り曲げ、その振動子自体の弾性を利用することによって、予圧機構を省いた超音波アクチュエータが提案されている。
図3は、予圧機構を省いた超音波アクチュエータの概略構成図である。
図3に示す超音波アクチュエータ20には、交流電圧の印加を受けて振動する2枚の圧電素子21と、圧電素子21に交流電圧を印加するための電極24と、角部22cでL字形に折れ曲がり、上足22aがロータ23と接触し、下足22bが固定された振動板22と、回転駆動されるロータ23とが備えられている。この超音波アクチュエータ20によると、固定された下足22bと折り曲げられた角部22cとの間の弾性によって、上足22aがロータ23に押し付けられるため、図1に示すばね15や押当板16といった予圧機構を省くことができる。
また、振動子の歪みとしては、振動子が伸縮する縦振動と、振動子が波打つように屈曲する屈曲振動と、縦振動と屈曲振動とが結合された結合振動とが知られており、ロータを高速に回転させるためには、振動子を結合振動させることが好ましい。図1に示す超音波アクチュエータ10によると、振動子12を結合振動させるために、複数の圧電素子11それぞれに相互に異なる位相の交流電圧を印加する必要があり、電圧制御が複雑化してしまうという問題がある。一方、図3に示す超音波アクチュエータ20では、圧電素子21に交流電圧が印加されると、振動板22が交流電圧の位相に応じた方向に歪んで、その歪みの一部の方向が角部22cで変換され、それら複数方向の歪みが結合されてロータ23に伝達される。したがって、圧電素子21に単相の交流電圧を印加するだけで、上述した結合振動を実現することができ、電圧制御を簡略化することができるという利点もある。
特開2004−294759号公報 特開2004−294580号公報 特開2005−218179号公報 特開2003−199371号公報
ここで、例えば、オートフォーカス機能は、レンズを光軸方向に移動させながら所定のタイミング毎に被写体光のコントラストを検出することによって実現されることが一般的であり、合焦位置から遠い位置ではレンズを高速に移動させながら飛び飛びに被写体光のコントラストを検出し、レンズが合焦位置に近づいたらレンズをゆっくりと移動させて被写体光のコントラストを細かく検出することによって、処理速度の増加を抑えて被写体に精度良くピントを合わせることができる。このように、近年では、撮影装置内でレンズを移動させるだけではなく、その移動速度を制御したいという要望が挙がってきている。図1や図3に示す超音波アクチュエータでは、圧電素子に印加する交流電圧の振幅などを調整してレンズの移動速度を制御することが考えられるが、交流電圧の振幅を変えることによって圧電素子に生じる結合振動の振動量を調整する方法では、レンズの移動速度を高精度に制御することが困難であるという問題がある。
また、ロータの回転速度、ロータの回転トルク、およびロータにかかる予圧力には相関関係があり、予圧力が一定の超音波アクチュエータでは、ロータが高速に回転しているときには、ロータの回転トルクは小さく、ロータが低速に回転しているときには、ロータの回転トルクは大きいことが一般的である。しかし、ロータにかかる予圧力を調整することによって、ロータの回転速度や回転トルクの制御範囲が広がり、ロータが高速に回転しているときに予圧力を減少させることによって振動子やロータの磨耗量を低減したり、起動時の回転トルクを大きくすることによって、ロータの回転の立ち上がりを早くすることができるなどという利点がある。このように、ロータにかかる予圧力を調整することによって、ロータの回転速度や回転トルクを制御して、レンズの移動速度を制御することが好ましい。
また、このような問題は、撮影装置のみに限られた問題ではなく、電圧の印加を受けて駆動する超音波アクチュエータを用いる分野一般で生じる問題である。
本発明は、上記事情に鑑み、小型で電圧制御が容易であるとともに、ロータの回転速度を制御することができる超音波アクチュエータを提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の超音波アクチュエータは、
回転自在なロータに作用してロータを回転させる超音波アクチュエータにおいて、
ロータに一端が接し途中に折れ曲がった角部を有しさらに延在して他端側が固定された板状の振動子と、
上記振動子の、一端と角部との間の一部分に接触し、交流電圧の印加を受けて振動してその振動を振動子に伝える第1の圧電素子と、
上記振動子の、他端と角部との間の一部分に接触し、直流電圧の印加を受けて伸縮してその一部分の湾曲を調整することにより、振動子の振動開始前における、一端をロータに押し当てる予圧力を調整する第2の圧電素子とを備えたことを特徴とする。
本発明の超音波アクチュエータによると、振動子が角部で折れ曲がった形状を有しているため、図1に示す支持部材14や、ばね15や押当板16といった予圧機構が不要となり、超音波アクチュエータ全体を小型化することができるうえ、圧電素子に単相の交流電圧を印加するだけで、上述した結合振動を実現することができ、電圧制御を簡略化することができる。また、本発明の超音波アクチュエータにおいては、第2の圧電素子に直流電圧を印加すると、第2の圧電素子が伸縮し、振動子の、他端と角部との間の一部分が湾曲されて、振動子の一端がロータに押し当てられる予圧力が変化する。ロータの回転速度および回転トルクは、ロータにかかる予圧力によって変化するため、第2の圧電素子に印加する直流電圧を調整することによって、ロータの回転速度や回転トルクを容易に制御することができる。また、ロータが高速に回転しているときに予圧力を減少させることによって、ロータの回転速度や回転トルクの制御範囲を広げることができ、例えば、振動子やロータの磨耗量を低減したり、起動時の回転トルクを大きくすることによって、ロータの回転の立ち上がりを早くすることができる。
また、本発明の超音波アクチュエータにおいて、上記第1の圧電素子が、振動子の、一端と角部との間の一部分を挟んで複数設けられたものであることが好ましい。
第1の圧電素子が振動子を挟んで複数設けられることによって、装置の大型化を抑えて、振動子を大きく歪ませることができ、ロータを高速に回転させることができる。
また、本発明の超音波アクチュエータにおいて、上記第2の圧電素子が、相互に逆方向に分極し、上記振動子の、他端と角部との間の一部分を挟んで振動子の表裏面側それぞれに設けられた2つの圧電素子からなることが好適である。
本発明の好適な超音波アクチュエータによると、振動子の、他端と角部との間の一部分を大きく湾曲することができ、ロータの回転速度や回転トルクを効率よく制御することができる。
また、本発明の超音波アクチュエータにおいて、上記振動子が、金属板であって、第1の圧電素子、および第2の圧電素子それぞれの一方の電極を兼ねるものであることが好ましい。
振動子が第1の圧電素子および第2の圧電素子それぞれに電圧を印加する電極を兼ねることによって、装置を小型化することができる。
本発明によれば、小型で電圧制御が容易であるとともに、ロータの回転速度を制御することができる超音波アクチュエータを提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図4は、本発明の一実施形態である超音波アクチュエータの概略構成図である。
図4に示すように、超音波アクチュエータ100には、角部120aでL字形に折れ曲がり、上足121がロータ140と接触し、下足122が固定された振動板120と、上足121に取り付けられ、交流電圧の印加を受けて振動する2枚の圧電素子110と、圧電素子110に交流電圧を印加するための電極111と、下足122に取り付けられ、直流電圧の印加を受けて屈曲する2枚の圧電素子130と、圧電素子130に直流電圧を印加するための電極131と、回転駆動されるロータ140とが備えられている。振動板120は、本発明にいう振動子の一例にあたり、ロータ140は、本発明にいうロータの一例に相当する。また、交流電圧が印加される圧電素子110は、本発明にいう第1の圧電素子の一例にあたり、直流電圧が印加される圧電素子130は、本発明にいう第2の圧電素子の一例に相当する。
本実施形態においては、振動板120は、ステンレス(例えば、SUS304)で構成されており、圧電素子110,130は、圧電セラミクス(例えば、PZT)で構成されている。尚、これら振動板120や圧電素子110,130を構成する材料は、これらには限らない。
振動板120は、上足121の、ロータ140と接触する接触部分121aが狭幅に形成されている。また、交流電圧が印加される2枚の圧電素子110は、振動板120の上足121を挟んで配置されており、金属製の振動板120が、圧電素子110の振動を受けて歪む振動子と、2枚の圧電素子110に備えられた2つの電極111それぞれに対する対向電極とを兼ねている。直流電圧が印加される2枚の圧電素子130についても、それらは振動板120の下足122を挟んで配置されており、振動板120が2枚の圧電素子130に備えられた2つの電極131それぞれに対する対極電極の役割を担っている。このように、振動板120が、振動子と対向電極とを兼ねることによって、超音波アクチュエータ100を小型化することができる。
図4に示すように、交流電圧が印加される2枚の圧電素子110は、振動板120に対して相互に同じ向き(電極111と接触している側が「+」で、振動子120と接触している側が「−」)にそれぞれ分極されており、それら2枚の圧電素子110に、同じ位相、同じ大きさ、同じ周波数の交流電圧が印加される。また、直流電圧が印加される2枚の圧電素子130は、振動板120に対して相互に異なる向き(2枚の圧電素子130のうち左側の圧電素子130は、電極111と接触している側が「+」で、振動子120と接触している側が「−」、右側の圧電素子130は、電極111と接触している側が「−」で、振動子120と接触している側が「+」)にそれぞれ分極されており、それら2枚の圧電素子130に直流電圧が印加される。尚、圧電素子130に直流電圧が印加されていない状態においては、図4に示すように、それらの圧電素子130は伸びており、振動子120の上足121は、下足122の弾性によってロータ140に強く押し付けられている。
ここで、まずは、圧電素子130に直流電圧を印加しない場合(図4に示す状態)を例に挙げて、ロータ140の回転原理について説明する。
図5および図6は、振動板120に発生する変位の方向を示す図である。
上足121に取り付けられた2枚の圧電素子110に交流電圧が印加されると、圧電素子110が励振し、振動板120の上足121に歪みが発生する。振動板120の上足121は、図4に示すように下足122の弾性によってロータ140に押し付けられており、振動板120で発生した歪みは確実にロータ140に伝達される。このように、振動板120をL字に折り曲げることによって、圧電素子110を支持する支持部材や、振動板120をロータ140に押し付ける予圧機構が不要となり、部品数を減少させて製造コストを抑えることができるとともに、超音波アクチュエータ100を大幅に小型化することができる。
また、上足121で発生した歪みの一部は、角部120aによって方向が変換される。その結果、振動板120には、複数方向の歪みが発生し、それら複数方向の歪みが結合されてロータ140に伝達される。尚、図5および図6に示す振動板120の振動モードの次数は一例であり、振動板120の長さを変えることなどによって調整することができる。
図7は、振動板120の共振周波数を示すグラフである。
図7は、横軸が振動板120の上足121の長さXを示し、縦軸が振動板120の共振周波数を示している。
本実施形態の超音波アクチュエータ100は、振動板120がL字形状に折れ曲がっていることによって形状の対称性が失われており、縦振動が発生すると、その縦振動の一部が屈曲振動に変換され、逆に、屈曲振動が発生すると、その屈曲振動の一部が縦振動に変換される。このように、超音波アクチュエータ100では、常に2つの振動が混在している。
図7に示すように、本実施形態の超音波アクチュエータ100では、縦振動(L−mode)の共振周波数と、屈曲振動(B−mode)の共振周波数とが一致することはなく、それら2つの振動の共振周波数が近づく領域Rにおいて、縦振動のグラフ上で屈曲振動のグラフに最も近づくときの最近共振周波数fLowと、屈曲振動のグラフ上で縦振動のグラフに最も近づくときの最近共振周波数fHighとが存在する。
例えば、2枚の圧電素子110に、図7に示す縦振動(L−mode)のグラフ上の最近共振周波数fLowを有する交流電圧が印加されると、振動板120は、主に伸縮方向に歪んで縦振動(L−mode)を発生し、その縦振動が角部120aで曲げ方向の歪みに変換されて、屈曲振動(B−mode)が発生する。これら縦振動と屈曲振動が振動板120の先端部121で結合され、図5に示すように、振動板120の伸縮に振動板120自体の屈曲も加わった合力Tによってロータ140が回転される。
また、2枚の圧電素子110に、図7に示す屈曲振動(B−mode)のグラフ上の最近共振周波数fHighを有する交流電圧が印加されると、振動板120は、主に曲げ方向に歪んで屈曲振動(B−mode)を発生し、その屈曲振動が角部120aで伸縮方向の歪みに変換されて、縦振動(L−mode)が発生する。これら縦振動と屈曲振動が振動板120の先端部121で結合されることにより、図6に示すように、図5とは逆方向の合力T´によってロータ140が回転される。
図8は、ロータ140を正方向に回転させる動作原理を示す図である。
例えば、最近共振周波数fLowを有する交流電圧を印加して圧電素子110を振動させると、振動板120の変位の振幅は徐々に大きくなる。振動板120の曲げ変位が上方向に最大、伸縮変位が0に近づくと、振動板120の接触部分121aがロータ140と接触する(図8のステップS11)。このとき、伸縮速度が伸び方向に最大となる。
続いて、振動板120が伸び、接触部分121aがロータ140の外周を突っつくことにより、ロータ140に回転トルクを与える。その結果、ロータ140が矢印M方向に回転する(図8のステップS12)。このとき、伸縮変位が最大、曲げ変位が0付近、下向きの速度が最大となる。
振動板120が最大に伸びると、振動板120は縮む方向に変位するが、下向きの曲げ変位が生じており、接触部分121aはロータ140から離れる。(図8のステップS13)。このとき、伸縮変位が0、曲げ変位が下方向に最大、縮み方向の速度が最大となる。
振動板120が最も縮んだ状態では、振動板120はステップS11とは逆方向に伸縮しているが、接触部分121aはロータ140から離れているため、接触部分121aがロータ140の回転を妨げず、ロータ140は慣性で回転し続ける(図8のステップS14)。
以上のようにして、ロータ140が正方向(矢印M方向)に回転される。
図9は、ロータ140を副方向に回転させる動作原理を示す図である。
図8とは逆に、最近共振周波数fHighを有する交流電圧を印加して圧電素子110を振動させると、振動板120の伸縮変位が伸び方向に最大のときは、曲げ変位によって振動板120の接触部分121aがロータ140とは接触しない(図9のステップS21)。このとき、伸縮方向の変位が最大、曲げ変位が0付近、上向きの速度が最大となる。
続いて、振動板120が縮み、接触部分121aがロータ140の外周を手招きするようにこすることにより、ロータ140に回転トルクを与える。その結果、ロータ140が矢印M´方向に回転する(図9のステップS22)。このとき、伸縮変位が0、屈曲変位が0、縮み方向の速度が最大となる。
曲げ方向の変位が上方向に最大となるときには、伸縮変位が最小となり、接触部分121aはロータ140から離れる。(図9のステップS23)。このとき、伸縮変位は最小、屈曲変位は上方向に最大となる。
曲げ方向の変位が下方向に最大となるときには、伸縮変位が最大に近づくが、接触部分121aはロータ140から離れているため、接触部分121aがロータ140の回転を妨げず、ロータ140は慣性で回転し続ける(図9のステップS24)。
以上のようにして、ロータ140が副方向(矢印M´方向)に回転される。
図10は、2つの結合振動における振動板120の速度を示すグラフである。
図10は、横軸が圧電素子110へ印加する交流電圧の周波数を示し、縦軸が振動板120の振動速度を示している。
有限要素法解析結果によると、図7に示す本実施形態の超音波アクチュエータ100では、交流電圧の周波数がf(567.9kHz)のときに、伸縮方向の速度Mおよび曲げ方向の速度Mが、ロータ140を図8に示す正方向に回転させる方向に最大となり、交流電圧の周波数がf(518.5kHz)のときに、伸縮方向の速度Sおよび屈曲方向の速度Sが、ロータ140を図9に示す副方向に回転させる方向に最大となった。
このように、本実施形態の超音波アクチュエータ100によると、2枚の圧電素子110それぞれに同じ交流電圧(大きさ、位相、周波数)を単純に印加するだけで、振動板120に屈曲振動と縦振動との両方が発生するため、簡略な電圧制御でロータ140を高速に回転させることができる。また、圧電素子110に印加する交流電圧の周波数を2つの最近共振周波数fHigh、fLowに切り替えることによってロータ140の回転方向を変えることができ、ロータ140を効率よく回転させることができる。
ここで、近年では、ロータ140の回転速度や回転トルクを制御したいという要望が強くなってきており、それらの制御範囲を広げるためには、ロータ140にかかる予圧力を調整することが好ましい。本実施形態の超音波アクチュエータ100では、振動板120の上足121に取り付けられた圧電素子110に印加される交流電圧の周波数を切り替えることでロータ140の回転方向が切り替えられ、振動板120の下足122に取り付けられた圧電素子130に印加される直流電圧を調整することによって、ロータ140に印加される予圧力が制御されて、ロータ140の回転速度や回転トルクが制御される。以下では、ロータ140の回転速度および回転トルクの制御方法について説明する。
図11は、超音波アクチュエータ100の圧電素子130に直流電圧を印加したときの状態を示す図である。
上述したように、直流電圧が印加される2枚の圧電素子130は、振動板120に対して相互に異なる向きに分極されている。それら2枚の圧電素子130それぞれに設けられた2つの電極131に同極性の電圧を印加すると、一方の圧電素子(図11では、左側の圧電素子130)が圧電横効果によって縮み、他方の圧電素子(図11では、右側の圧電素子130)が伸びることによって、振動子120の下足122がロータ140から離れる方向(図11では左側)に曲げられ、それに伴って振動子120の上足121もロータ140から離れる方向(図11では上方)に移動される。その結果、振動子120の接触部分121aがロータ140に押し付けられる予圧力が低下する。
ここで、一旦、図11の説明を中断し、図12,13,14を使って、圧電素子130に印加される直流電圧と、振動子120にかかる力との関係について説明する。尚、図11には、圧電素子130に直流電圧が印加されることによって、振動子120の上足121がロータ140から離れる方向に移動される例が示されているが、説明の都合上、図12および図13には、圧電素子130に図11とは逆極性の直流電圧を印加することによって、振動子120がロータ140に近づく方向に移動される例が示されている。
図12は、圧電素子130に印加される直流電圧と、振動子120の移動量との関係を示すグラフである。
図12は、横軸が圧電素子130に印加される直流電圧の大きさを示し、縦軸が振動子120の移動量を示している。尚、本来ならばロータ140と接触する接触部分121aの移動量を示すことが好ましいが、接触部分121aは面積が微小で計測しにくいため、ここでは、角部120aの移動量が示されている。
図12に示すように、圧電素子130に印加される電圧が大きいほど、振動子120の移動量が大きくなり、振動子120の移動量は圧電素子130への印加電圧にほぼ比例している。
図13は、圧電素子130に印加される直流電圧と、接触部分121aにかかる力との関係を示すグラフである。
図13は、横軸が圧電素子130に印加される直流電圧の大きさを示し、縦軸は、振動子120の下足122と、上足121の先端とを固定して圧電素子130に直流電圧を印加したときに接触部分121aにかかる力を示している。
図13に示すように、圧電素子130に印加される電圧が大きいほど、接触部分121aにかかる力が大きくなり、接触部分121aにかかる力は圧電素子130への印加電圧にほぼ比例している。振動子120の上足121側の固定を解除して接触部分121aをロータ140に接触させた場合、図12の横軸に示す力はそのまま接触部分121aからロータ140に伝達されるため、接触部分121aからロータ140にかかる予圧力は、圧電素子130への印加電圧に比例する。有限要素法解析結果によると、印加電圧70Vのときに接触部分121aにかかる力は16.7mN(1.7gf)であり、圧電素子130に直流電圧を印加しない場合に接触部分121aからロータ140にかかる予圧力は10mN程度であるため、十分な予圧力の変化を得ることができる。
図14は、接触部分121aからロータ140に印加される予圧力と、ロータ140にかかる回転トルク、およびロータ140の回転スピードの関係を示すグラフである。
図14は、横軸がロータ140の回転トルクを示しており、縦軸がロータ140の回転速度を示しており、3つの直線g,g,gは、それぞれ、ロータ140に印加される予圧力がF,F,F(ただし、F<F<F)それぞれにおけるグラフを示している。
図14に示すように、ロータ140のトルクと回転速度とは比例しており、トルクが大きくなるほど回転速度が減少する。また、ロータ140の回転トルクが小さい場合は、ロータ140に印加される予圧力が小さいほど回転速度が速くなり、ロータの回転トルクが大きい場合は、ロータ140に印加される予圧力が大きいほど回転速度が速くなっている。このように、接触部分121aに印加される予圧力を調整することによって、ロータ140の回転トルクや回転速度を制御することができる。また、例えば、ロータ140が高速に回転しているときに予圧力を減少させることによって、ロータ140や振動子120の接触部分121aの磨耗量を低減したり、起動時の回転トルクを大きくすることによって、ロータ140の回転の立ち上がりを早くすることができる。
図11に戻って説明する。
図11に示す超音波アクチュエータ100では、振動子120の下足122がロータ140から離れる方向(図11では左側)に曲げられ、接触部分121aがロータ140から完全に離されているが、圧電素子130に印加する印加電圧の大きさを調整することによって、図12に示すように振動子120の移動距離を制御することができ、すなわち、図13に示すように接触部分121aからロータ140に印加される予圧力を調整することができる。図11に示す例では、圧電素子130に印加する印加電圧が上昇するほど、ロータ140に印加される予圧力が減少する。また、圧電素子130に印加される電圧の極性を図11に示す場合とは逆極性に変えると、圧電素子130が図11とは逆側に伸縮して振動子120の下足122がロータ140に近づく方向に曲げられる。このため、圧電素子130への印加電圧が上昇するほど、ロータ140に印加される予圧力も増加する。
このように、本実施形態の超音波アクチュエータ100によると、圧電素子130に印加される直流電圧の大きさや極性を調整することによって、ロータ140に印加される予圧力を制御することができ、ロータ140の回転トルクや回転速度を広い制御範囲で容易に制御することができる。また、本実施形態の超音波アクチュエータ100を撮影装置に搭載することによって、レンズの移動速度などを容易に制御することができる。
以上で、本発明の第1実施形態の説明を終了し、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、直流電圧が印加される圧電素子の配置位置が第1実施形態とは異なるが、それ以外は第1実施形態とほぼ同様の構成を有しているため、第1実施形態と同じ要素については同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
図15は、本発明の第2実施形態である超音波アクチュエータ100´の概略構成図である。
図15に示すように、本実施形態の超音波アクチュエータ100´は、図4に示す第1実施形態の超音波アクチュエータ100の2枚の圧電素子130に替えて、振動子120の下足122に、積層圧電素子130´が設けられている。積層圧電素子130´も、本発明にいう第2の圧電素子の一例に相当する。
積層圧電素子130´に直流電圧が印加されると、直流電圧の極性に応じて、積層圧電素子130´が振動子120の下足122をロータ140に押し付ける方向、あるいはロータ140から離れる方向に伸縮する。この第2実施形態の超音波アクチュエータ100によると、積層圧電素子130´に印加される直流電圧の大きさと極性を変えることによって、ロータ140へ印加される予圧力を容易に制御することができ、ロータ140の回転速度や回転トルクを精度良く調整することができる。
ここで、上記では、振動子の上足および下足それぞれに2枚の圧電素子を備えた超音波アクチュエータについて説明したが、本発明の超音波アクチュエータは、振動子の上足および下足それぞれに3枚以上の圧電素子を備えたものであってもよく、また、振動子の上足および下足それぞれに1枚だけ圧電素子を備えたものであってもよい。
また、上記では、L字に曲がった振動板を備えた超音波アクチュエータについて説明したが、本発明の超音波アクチュエータは、2つ以上の角を有する振動子を備えたものであってもよい。
また、上記では、圧電素子の電極を兼ねた金属製の振動板を備えた超音波アクチュエータについて説明したが、本発明の超音波アクチュエータは、例えば、プラスチック製の振動子を用いて、その振動子とは別に、圧電素子に電圧を印加するための電極を備えたものであってもよい。
超音波アクチュエータの概略構成図である。 超音波アクチュエータの動作原理を説明するための図である。 予圧機構を省いた超音波アクチュエータの概略構成図である。 本発明の一実施形態である超音波アクチュエータの概略構成図である。 振動板に発生する変位の方向を示す図である。 振動板に発生する変位の方向を示す図である。 振動板の共振周波数を示すグラフである。 ロータを正方向に回転させる動作原理を示す図である。 ロータを副方向に回転させる動作原理を示す図である 2つの結合振動における振動板の速度を示すグラフである。 超音波アクチュエータの圧電素子に直流電圧を印加したときの状態を示す図である。 圧電素子に印加される直流電圧と、振動子の移動量との関係を示すグラフである。 圧電素子に印加される直流電圧と、接触部分にかかる力との関係を示すグラフである。 接触部分からロータに印加される予圧力と、ロータにかかる回転トルク、およびロータの回転スピードの関係を示すグラフである。 本発明の第2実施形態における超音波アクチュエータの概略構成図である。
符号の説明
10,20,100,100´ 超音波アクチュエータ
11,21,110,130,130´ 圧電素子
12,22,120 振動板
13,23,140 ロータ
14 支持部材
15 ばね
16 押当板
111,131 電極
120a 角部
121 上足
122 下足

Claims (4)

  1. 回転自在なロータに作用して該ロータを回転させる超音波アクチュエータにおいて、
    前記ロータに一端が接し途中に折れ曲がった角部を有しさらに延在して他端側が固定された板状の振動子と、
    前記振動子の、前記一端と前記角部との間の一部分に接触し、交流電圧の印加を受けて振動して該振動を前記振動子に伝える第1の圧電素子と、
    前記振動子の、前記他端と前記角部との間の一部分に接触し、直流電圧の印加を受けて伸縮して該一部分の湾曲を調整することにより、該振動子の振動開始前における、前記一端を前記ロータに押し当てる予圧力を調整する第2の圧電素子とを備えたことを特徴とする超音波アクチュエータ。
  2. 前記第1の圧電素子が、前記振動子の、前記一端と前記角部との間の一部分を挟んで複数設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の超音波アクチュエータ。
  3. 前記第2の圧電素子が、相互に逆方向に分極し、前記振動子の、前記他端と前記角部との間の一部分を挟んで該振動子の表裏面側それぞれに設けられた2つの圧電素子からなることを特徴とする請求項1記載の超音波アクチュエータ。
  4. 前記振動子が、金属板であって、前記第1の圧電素子、および前記第2の圧電素子それぞれの一方の電極を兼ねるものであることを特徴とする請求項1記載の超音波アクチュエータ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101332006B1 (ko) 2012-10-22 2013-11-25 광운대학교 산학협력단 전방향 진동 기반 에너지 하베스터

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