本発明を適用した各実施例を、添付図面を参照して以下、具体的に説明する。尚、図面において同一部分は同一符号で示してある。以下説明する実施例は例示として説明するものであり、本発明を限定するものではないことは言うまでもない。
まず、本発明の各実施例を説明する前に、図8を用いて従来の振動波モータの構成と往復速度差の発生について説明する。
図8(a)は、従来の振動波モータ300の構成で、振動板1の製造誤差で二つの突起部1a及び1bの高さが異なり、振動子の姿勢に傾きが生じていることを示す概略図である。図8(a)においては、説明のため振動子101の傾きを誇張して示している。
振動波モータ300の駆動源である振動子101は、振動波モータ300の駆動時に高周波駆動電圧が印加される圧電素子2と、圧電素子2に与える高周波駆動電圧により振動が発生する振動板1とが接着剤で貼りつけられて構成されている。振動板1には突起部1a及び1bがX方向に並んで2つ形成されている。
振動波モータ300全体を支えるユニットベース4の底部には振動子101に摩擦接触する金属材料から形成されている摺動部材3が、上部には天板7がそれぞれ固定されている。更に、天板7の下方にはガイド部材9が設けられ、天板7とガイド部材9との間には4つの転動部材8が組み込まれている。転動部材8が天板7とガイド部材9に挟み込まれた状態で転動することにより、ガイド部材9はX方向に移動できる。
ガイド部材9には4つのガイド溝(不図示)が設けられ、天板7にも同様に4つのガイド溝(不図示)が設けられている。それぞれのガイド溝に転動部材8が組み込まれている。また、ガイド部材9には、振動子保持部材6が取り付けられている。また、振動子保持部材6には、振動子101が接着剤で取り付けられ、保持されている。
ガイド部材9の内部には、振動子101を加圧する加圧機構部が設けられ、加圧力20で振動子101を摺動部材3の方向へ加圧している。
以下、加圧機構部を詳細に説明する。振動子101には加圧機構部から加圧力を受ける加圧ベース5が取り付けられている。加圧機構部は、加圧部材である加圧軸16、加圧ばね17、ワッシャ18、加圧蓋19から構成されている。加圧軸16の先端部16aの加圧ベース5(後述)に接触する端部はR形状として形成されている。加圧軸16の先端部16aはガイド部材9にある加圧軸ガイド穴9aに嵌合されている。
また、加圧軸16の加圧軸部16bが、加圧蓋19の中央に設けた加圧軸ガイド穴19aに嵌合するように加圧蓋19がガイド部材9に取り付けられている。加圧軸部16bを巻回する加圧ばね17がワッシャ18を固定端として、加圧軸16の先端部16aを加圧し、R形状の先端部16aが振動子101に取り付けられた加圧ベース5に加圧力20を印加する。振動子101への加圧により、振動子101を保持する剛性が弱いばね材からなる振動子保持部材6を変形させ、これに取り付けられた振動子101を摺動部材4の方向へ加圧する。
従来の振動波モータ300は以上のように構成され、加圧機構部が振動子101を摺動部材3に対して加圧することで、突起部1a及び1bが摺動部材3に摩擦接触する。
振動子101を構成する圧電素子2に高周波駆動電圧が印加され、振動子101に振動を励振させることにより突起部1a及び1bと摺動部材3の両者間の摩擦力により駆動力が生じ、摺動部材3に対し振動子101がX方向に移動する。振動子101がX方向に移動するのに伴い、振動子101が取り付けられているガイド部材9が、転動部材8の転動を介してX方向に移動する。
次に、振動子101の振動板1の突起部1a及び1bの高さの差により往復運動に速度差が発生する例について説明する。
図8(a)に示すように、振動板1のわずかな製造誤差で突起部1aのZ方向の寸法Aに対して、突起部1bのZ方向の寸法Bが小さく、振動子101が矢印73で示す方向に傾いている。振動子101は振動子保持部材6に取り付け、保持されているが、振動子保持部材6は剛性が弱いばね材で形成されているため振動子101自身も傾いてしまう。また、振動子101に取り付けられた加圧ベース5も同様に傾く。
この状態で、振動子101は中心線71から中心線72に傾くが、加圧機構部による加圧力20は中心線71の位置を加圧しているので、加圧力20は突起部1aに対して、突起部1bへの加圧力が大きくなるように作用する。ここで、振動子101の摺動部材3への加圧部である突起部1a及び1bの加圧力が不均等となり駆動方向のX方向の摩擦力にバラツキが発生する。これにより、振動子の往復駆動の駆動特性に異方性が生じ、往復速度差が発生する。
この往復速度差について、図8(b)を参照して以下、詳細に説明する。
図8(b)は、この往復速度差の発生を説明する模式図である。ここでは、加圧力20をF0としている。加圧軸16の振動子101への加圧位置76は、振動子101に対する突起部1a及び1bの取付け位置の中間に位置している(図中‖印)。しかしながら、突起部1a及び1bのZ方向の寸法が異なるため、突起部1a及び1bの摺動部材3への加圧位置は、中心線71に対して、L1>L2の関係となる。
加圧力20がF0であるとき突起部1a及び1bの摺動部材3からの抗力を、それぞれF1、F2とすると、式1が成り立つ。また、F0に対して振動子101が受けるモーメントである式2が成り立つ。式2においてF1×L1は突起部1aのモーメント、F2×L2は突起部1bのモーメントである。この式2においてL1>L2の関係があると、F1<F2となる。つまり、突起部1aに対して、突起部1bの加圧力が大きくなり、摩擦力も大きくなる。
F0=F1+F2 式1
F1×L1=F2×L2 式2
振動子101の駆動速度は、進行方向に対して後側の駆動力が支配的となるので、X方向の駆動速度V2が−X方向の駆動速度V1より大きくなる。結果としてV1<V2の往復速度差が発生する。
一方、振動子101の2相間の振動のバラツキは、圧電素子2の分極時のバラツキ、振動板1と圧電素子2の貼りズレで発生する。これによって、それぞれの突起部1a及び1bの振動の軌跡の大きさなどが異なり、結果として、往復速度差が発生する。
すなわち、振動子101の往復速度差は、ここではそれぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわないことや、突起部1a及び1bの振動の軌跡が揃わないことを原因として発生している。
(実施例1)
次に、図1及び図2を用いて、本発明の実施例1にかかる振動波モータ100を説明する。
図1は、本発明の実施例1の振動波モータ100の構成を示す断面図であり、振動板1の製造誤差で2つの突起部1a及び1bの高さが異なり、振動子101の姿勢に傾きがあることを示している。図1では、説明のため振動子101の傾きを誇張して示している。
図2は、本発明の実施例1の振動波モータ100を構成する構成部材を示す図である。図1に示す振動波モータ100の構成を説明する。従来の振動波モータ300と基本構成は同様であり、加圧機構部が異なるのみなので、ここでは加圧機構部の詳細を説明する。
振動子101には加圧機構部から加圧力を受ける加圧ベース5が取り付けられている。加圧ベース5の中央部には加圧軸21の先端部21aの先端のR形状と同様の曲率を備えたR形状部5aが設けられている。
加圧機構部は、加圧部材である加圧軸21、加圧ばね22、加圧部変更手段である傾き調整部材24、ワッシャ23、加圧蓋25から構成される。加圧軸21の先端部21aはR形状として形成され、加圧ベース5のR形状部5aがこれを受ける。加圧軸21の加圧軸部21bが、ガイド部材10に設けられX方向に延在しZ方向に貫通した長穴10cに嵌合している。
また、図2(a)に示すように、加圧軸21の加圧軸部21bの外形は、傾き調整部材24に設けたY方向に延在しZ方向に貫通した長穴24bにも嵌合している。傾き調整部材24は更に、ガイド部材10にある穴10bに嵌合している。図2(b)に示すように、抜け止めとして、加圧蓋25がガイド部材10にある穴10dに嵌合し、加圧蓋25はガイド部材10にある、ねじ穴10eにねじ(不図示)でねじ止めされている。
傾き調整部材24は、ガイド部材10にある穴10bに位置決めされているが、傾き調整部材24にある2つの穴24aを使って矢印24hの方向での回転が可能となっている。
この傾き調整部材24にある長穴24bは、傾き調整部材24の中心からY方向にずれているため、傾き調整部材24を回転させると長穴24bは傾き調整部材24を中心に矢印24iで示すようにZ方向に回転する円弧運動をする。
傾き調整部材24が回転すると、長穴24bに嵌合している加圧軸21の加圧軸部21bも同様に矢印24iの方向に円弧運動する力が作用する。しかし、加圧軸部21bはガイド部材10に設けられた長穴10cにも同時に嵌合しているので、これに規制され、加圧軸部21bはX方向の直線移動のみ可能となる。これは、傾き調整部材24に設けた長穴24bがY方向に長い長穴のため、加圧軸部21bに対する矢印24iの方向の円弧運動の力の作用に対して、X方向の直線移動が可能となるためである。
図1に示すように、加圧ばね22がワッシャ23を固定部として、加圧軸21の先端部21aを加圧するように取り付けられ、R形状部として形成された先端部21aが振動子101に取り付けられた加圧ベース5のR形状部5aに矢印で示す加圧力20を加える。
振動子101への加圧により、これを保持する剛性が弱いばね材からなる振動子保持部材6を変形させ、これに取り付けられた振動子101を摺動部材3へ加圧する。
この状態で、傾き調整部材24を回転させると加圧軸21の先端部21aが、加圧ベース5のR形状部5aに嵌合した状態を維持し、加圧軸21の加圧軸部21bはX方向に傾くこととなる。これにより、振動子101の加圧する方向が変更される。
加圧軸21の加圧軸部21bが嵌合する、傾き調整部材24の長穴24bの内面は、図2(a)に示すように、加圧軸部21bを受ける受け部24cが加圧軸部21bに向かって突出するR形状として形成されているため加圧軸部21bに対して点接触する。
ガイド部材10の詳細は、前述のように図2(b)に関して説明した。図2(c)は、天板7の詳細を説明する上面図である。天板7はガイド溝7bを備えている。ガイド溝7bとガイド部材10のガイド溝10aとの間で転動部材8が転動する。天板7の四隅に設けた穴7aは、ユニットベース4へ取り付ける際のねじ取付け穴であり、矩形の穴7cは傾き調整部材24を回転させるためのニゲ穴である。
以上のような構成で本発明の振動波モータ100は構成され、加圧機構が振動子101を摺動部材3に対して加圧することで、突起部1a及び1bが摺動部材3に摩擦接触する。
振動子101を構成する圧電素子2に高周波駆動電圧が印加され、振動子101に振動を励振させる。これにより突起部1a及び1bと摺動部材3の両者間にある摩擦により駆動力が生じ、摺動部材3に対し振動子101がX方向に移動する。
振動子101のX方向の移動に伴い、振動子101が取り付けられているガイド部材10は転動部材8が転動することでX方向に移動する。
なお、本発明の振動波モータ100では振動子101が移動し、摺動部材3が固定される構成としたが、振動子101を固定し、摺動部材3が移動する構成としてもよい。
次に図3を参照して、レンズ鏡筒のフォーカシングの駆動源に、本発明の振動波モータ100を用いた例を説明する。図3は、本発明の実施例1にかかる振動波モータ100を用いたレンズ鏡筒の構成を示す軸方向断面図である。レンズ鏡筒41は、被写体側から、撮像光学系としての1、2群レンズ鏡筒42、次に、フォーカスレンズ43とフォーカスレンズ43を保持するレンズ移動枠44を備えている。更に、レンズ鏡筒41は、4、5群レンズ鏡筒45を備え、1、2群レンズ鏡筒42及び4、5群レンズ鏡筒45には、それぞれ固定レンズが組み込まれている。
レンズ移動枠44を光軸49方向に前後移動させる2つのメインガイドバー46がレンズ鏡筒41の鏡筒内壁へ光軸49に平行に取り付けられている。また、レンズ鏡筒41の鏡筒内部には、ガイド部材10が光軸49方向に移動可能となるようにユニットベース4が取り付けられている。ガイド部材10とレンズ移動枠44は連結部材47で連結し、振動波モータ100を構成する振動子101の駆動力をレンズ移動枠44へ伝達しフォーカスレンズ43を光軸49方向に移動させることが可能となる。レンズ鏡筒41には、後述の実施例2にかかる振動波モータ200も適用できることは言うまでもない。
次に図1及び図4を用いて、振動波モータ100の往復駆動における往復速度差の調整について説明する。本発明の実施例1によれば、振動波モータ100の組ばらしをする必要がなく、振動波モータ100の完成形のままで調整可能で、かつ往復速度調整が容易な振動波モータ100が提供できる。
振動波モータ100の往復速度差は、振動子101のそれぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわないことや、突起部1a及び1bの振動の軌跡が揃わないことが原因として発生している。
このうち、ここでは振動子101の二つの突起部1a及び1bの高さが異なり、それぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわないことで往復速度差が発生することについてと、その往復速度調整について説明をする。
尚、その他の原因による往復速度差の発生も、下記に説明する方法で同様に往復速度差調整が可能である。
図4(a)は、図1で説明した本発明の実施例1にかかる振動波モータ100と同様に、振動板1の製造誤差によって二つの突起部1a及び1bの高さが異なり、振動子姿勢に傾きがある状態を示している。図4においては、説明のため振動子101の傾きを誇張して示している。
図4(b)は、振動波モータ100の往復速度差の調整前の往復速度差の発生を説明する模式図である。また、図4(c)は、振動波モータ100の往復速度差の調整後の往復速度差が無くなった状態を示す模式図である。
まず、図1で振動波モータ100の往復駆動における往復速度差の発生する例について説明する。
図1においては、振動板1のわずかな製造誤差で突起部1aのZ方向による寸法Aに対して突起部1bのZ方向における寸法Bが小さく、振動子101が矢印73で示す方向に傾いている。振動子101は振動子保持部材6に取り付けられ、保持されているが、振動子保持部材6は剛性が弱いばね材で形成されているため振動子101は傾いてしまう。また、振動子101に取り付けられた加圧ベース5も同様に傾く。
この状態で、振動子101は中心線71から中心線72に傾くが、加圧機構による加圧力20が中心線71の位置を加圧すると、加圧力20は突起部1aに対して、突起部1bの方が加圧力が大きくなるように作用する。ここで、振動子101の摺動部材3への加圧部である突起部1a及び1bの加圧力が不均等となり駆動方向のX方向における摩擦力にバラツキが発生する。これにより、振動波モータ100の往復駆動の駆動特性に異方性が生じ、往復速度差が発生する。
往復速度差について、以下、詳細に説明する。図4(b)は、この往復速度差の発生を示す模式図である。ここでは、加圧力20をF0としている。加圧軸21の振動子101への加圧位置76は、振動子101に対する突起部1a及び1bの取付け位置の中間である。(図中‖印参照)しかし、突起部1a及び1bのZ方向の寸法が異なるため、突起部1a及び1bの摺動部材3に対する加圧位置は、中心線71に対して、L1>L2の関係となる。
加圧力20がF0であるとき突起部1a及び1bの摺動部材3からの抗力を、それぞれF1、F2とすると、式1が成り立つ。また、F0に対して振動子101が受けるモーメントである式2が成り立つ。式2においてF1×L1は突起部1aのモーメント、F2×L2は突起部1bのモーメントである。この式2において、L1>L2の関係があると、F1<F2となる。つまり、突起部1aに対して、突起部1bへの加圧力が大きくなり、摩擦力も大きくなる。
F0=F1+F2 式1
F1×L1=F2×L2 式2
振動子101の駆動速度は、進行方向に対して後側の駆動力が支配的となるので、X方向の駆動速度V2が−X方向の駆動速度V1より大きくなる。結果としてV1<V2の往復速度差が発生する。
次に、図4(a)で振動波モータ100の往復速度差を調整で少なくする説明をする。往復速度差を少なくする調整方法は、突起部1a及び1bへの加圧力20の加圧バランスを調整することで、振動波モータ100の−X方向の駆動特性を上げてX方向の駆動性能を下げるようにして行う。
具体的な調整方法は、加圧力20の加圧力作用について突起部1aを大きくし、突起部1bを小さくする方向に調整する。加圧軸21をY軸周りに右回転させて中心線71から中心線72になるように傾け、振動子101の移動方向の線上で、振動子101を加圧する方向を変更するのである。
これには、傾き調整部材24に設けられた2つの穴24aを使って、傾き調整部材24のZ軸周の矢印24hの方向で左回転させると、加圧軸21の加圧軸部21bに−X方向の力が作用する。この時、加圧軸21の先端部21aが加圧力20で加圧されているので、加圧軸21の先端部21aのR形状部が、加圧ベース5のR形状部5aに合わさった状態を維持し、加圧軸21は−X方向に傾くこととなり、振動子101を加圧する加圧方向が変更される。これにより、加圧力20の加圧力作用が突起部1aにおいて大きくなり、突起部1bにおいて小さくなる調整が可能となる。
図4(c)は、振動波モータ100の往復速度差の調整後、往復速度差が無くなったことを説明する模式図である。
ここでは、加圧力20をF0としている。加圧軸21を突起部1a及び1bの摺動部材3への加圧位置が、中心線72に対して、L1=L2の関係となるように、中心線71から中心線72に−X方向に傾ける。F0はFXとFZの分力となる。この時、FZに対する突起部1a及び1bの摺動部材3からの抗力を、それぞれF1、F2とすると、式3が成り立つ。また、F0に対して振動子101が受けるモーメント式である式4が成り立つ。Ma=Fz×L1は突起部1aのモーメント、Mb=Fz×L2は突起部1bのモーメントである。
この式4においてL1=L2の関係があると、F1=F2となる。
Fz=F1+F2 式3
Fz×L1=Fz×L2 式4
つまり、突起部1a、1bの加圧力が等しくなり、摩擦力も等しくなる。これにより、X方向の駆動速度V2と−X方向の駆動速度V1が等しくなり往復速度差を無くすことができる。
以上が、振動子101の二つの突起部1a及び1bの高さが異なり、それぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわないことで往復速度差が発生することについて、及び、その往復速度調整についての説明である。
但し、実際には振動波モータ100の往復速度差は、振動子101のそれぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわない場合がある。また、突起部1a及び1bの振動の軌跡が揃わない場合もある。これらが総合的な原因となって発生するため、全ての原因に対する往復速度差の調整が必要となる。
その調整のやり方としては、上記に述べてきたように傾き調整部材24の回転による加圧軸21の傾き量で、速度差をバランスさせて往復速度が等しくなるようにする方法である。
傾き調整部材24の回転による加圧軸21の傾き量は、振動波モータ100の駆動特性を実験計測した往復速度差から決めた傾き量とし、傾き量は、あらかじめ用意された往復速度差と加圧軸21の傾き量結果データベースで決められる。
往復速度差と加圧軸21の傾き量結果データベースは、振動子101のそれぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわないことや、突起部1a及び1bの振動の軌跡が揃わないことなどの総合的な原因を含むものである。
以上、説明したように、本実施例1によれば、振動子101を加圧する加圧方向を変更する。これにより、振動子101と摺動部材3が相対移動する往復速度差の調整をするのに、振動波モータ100の分解をする必要がなく、振動波モータ100の完成形のままで調整可能で、往復速度調整が容易な振動波モータ100を提供できる。
(実施例2)
次に、図5及び図6を用いて、本発明の実施例2にかかる振動波モータ200を説明する。実施例1では振動子101を加圧する加圧方向が変更されたが、以下説明する実施例2では、振動子101を加圧する加圧中心位置が変更される。
図5は、本発明の実施例2にかかる振動波モータ200の構成で、振動板1の製造誤差で2つの突起部1a及び1bの高さが異なり、振動子姿勢に傾きがある図である。図は振動子101の傾きを誇張して示している。図6は本発明の実施例2にかかる振動波モータ200の構成部材を示す概略図である(図5の振動波モータ200の構成説明で用いている)。実施例1の振動波モータ100と基本構成は同様であり、加圧機構部が異なるのみなので、ここでは実施例2の加圧機構部の詳細を主に説明する。
振動子101には加圧機構部から加圧力を受ける加圧ベース5が取り付けられている。加圧機構部は、加圧部材である加圧軸26、加圧ばね27、加圧部変更手段である位置調整部材29と、ワッシャ28、加圧蓋30、加圧軸ガイド部材31から構成される。加圧軸26の先端部26aはR形状として形成され、加圧ベース5の上面がこれを受ける。加圧軸26の加圧軸部26bが、ガイド部材11にあるX方向の長穴11cに嵌合している。また、加圧軸26の加圧軸部26bは、位置調整部材29にあるY方向長穴29bにも嵌合している。
更に、加圧軸26の加圧軸部26cが加圧軸ガイド部材31のX方向に長い長穴31aに嵌合している。位置調整部材29が、ガイド部材11にある穴11bに嵌合している。その抜け止めとして、加圧蓋30がガイド部材11にある穴11dに嵌合し、加圧蓋30はガイド部材11にある、ねじ穴11eにねじ(不図示)でねじ止めされている。
位置調整部材29は、ガイド部材11に設けた穴11bに位置決めされ、位置調整部材29に設けたかに目穴29a(図6(a))を使って矢印29h方向に回転が可能となっている。
位置調整部材29に設けられた長穴29bは、位置調整部材29の中心からY方向にずれているため、位置調整部材29を回転させると、長穴29bはZ軸を中心として矢印29iの方向で円弧運動をする。これにより加圧軸26が振動子101に対して移動し、加圧位置が変更される。
位置調整部材29が回転することで、長穴29bに嵌合している加圧軸26の加圧軸部26bも同様に矢印29iの方向で円弧運動する力が作用する。しかしながら、加圧軸部26bはガイド部材11に設けられ、X方向に長い長穴11cにも同時に嵌合している。また、加圧軸部26cは加圧軸ガイド部材31に設けられたX方向の長穴31aにも嵌合しているので、これに規制され加圧軸部26bはX方向の直線移動のみが可能となる。一方で、位置調整部材29に設けられた長穴29bがY方向に延在する長穴のため、加圧軸部26bに対する矢印29iの方向の円弧運動の作用に対して、X方向の直線移動が可能となる。
加圧ばね27がワッシャ28を固定部として、加圧軸26の先端部26aを加圧するように取り付けられ、先端部26aのR形状部が振動子101に取り付けられた加圧ベース5の上面に加圧力20を加える。
振動子101への加圧により、これを保持する剛性が弱いばね材からなる振動子保持部材6を変形させ、これに取り付く振動子101を摺動部材3へ加圧する。
この状態で、位置調整部材29を回転させると加圧軸26の先端部26aのR形状が、加圧ベース5の上面に接触状態で、加圧軸21はX方向に平行移動することとなる。
加圧軸26の加圧軸部26bが嵌合する、位置調整部材29の長穴29bは、R形状部として形成された受け部29cを備えており、加圧軸部26bと点接触している。
図6(b)に示すように、ガイド部材11に設けられたガイド溝11aと天板7に設けられたガイド溝7bとの間で転動部材8が転動する。天板7に設けられた穴7aは、ユニットベース4へのねじ取付け穴で、各矩形の穴7cは位置調整部材29を回転させるためのニゲ穴である。
以上のように本発明の実施例2にかかる振動波モータ200は構成され、加圧機構部が振動子101を摺動部材3に対して加圧することで、突起部1a及び1bが摺動部材3に摩擦接触する。
振動子101を構成する圧電素子2に高周波駆動電圧が印加され、振動子101に振動を励振させることにより突起部1a及び1bと摺動部材3の両者間にある摩擦により駆動力が生じ、摺動部材3に対し振動子101がX方向に移動する。
振動子101がX方向に移動するのに伴い、振動子101が取り付けられているガイド部材11が転動部材8が転動することでX方向に移動する。
なお、実施例1と同様に本発明の実施例2にかかる振動波モータ200では振動子101が移動し、摺動部材3が固定される構成としたが、振動子101を固定し、摺動部材3が移動する構成でもよい。
次に、図5及び図7を用いて、振動波モータ200の往復駆動における往復速度差の調整を、振動波モータ200の組ばらしをする必要がなく、振動波モータ200の完成形で調整可能で、往復速度調整が容易な振動波モータ200を説明する。
振動波モータ200の往復速度差は、振動子101のそれぞれの突起部に発生する摩擦力がそろわないことや、突起部1a及び1bの振動の軌跡が揃わないことなどが原因として発生している。
このうち、振動子101の二つの突起部1a及び1bの高さが異なり、それぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわないことで往復速度差が発生することについてと、その往復速度調整についての説明をする。尚、その他の原因による往復速度差の発生も、下記に述べる方法で同様に往復速度差調整が可能である。
図7(a)は、図5で説明した本発明の実施例2にかかる振動波モータ200と同様に、ある振動板1の製造誤差で二つの突起部1a及び1bの高さが異なり、振動子101の姿勢に傾きがある状態を示している。説明のため図7では振動子101の傾きを誇張して示している。図7(b)は、実施例2にかかる振動波モータ200の往復速度差の調整前の往復速度差の発生を説明する模式図である。また、図7(c)は、実施例2にかかる振動波モータ200の往復速度差の調整後の往復速度差が無くなったことを示す模式図である。
まず、図5を参照して実施例2にかかる振動波モータ200の往復駆動における往復速度差の発生する例について説明する。
振動板1のわずかな製造誤差によって突起部1aのZ方向における寸法Aに対して突起部1bのZ方向における寸法Bが小さく、振動子101が矢印73で示す方向に傾いている。振動子101は振動子保持部材6に取り付けられ、保持されているが、振動子保持部材6は剛性が弱いばね材で形成されていて振動子101は傾いてしまう。また、振動子101に取り付けられた加圧ベース5も同様に傾いている。
この状態で、振動子101は中心線71から中心線72側に傾くが、加圧機構部による矢印で示す加圧力20が中心線71の位置を加圧すると、加圧力20は突起部1aに対して、突起部1b側の加圧力が大きくなるように作用する。ここで、振動子101の摺動部材3への加圧部である突起部1a及び1bの加圧力が不均等となり駆動方向であるX方向における摩擦力にバラツキが発生する。これにより、振動波モータ200の往復駆動の駆動特性に異方性が生じ、往復速度差が発生する。
この往復速度差について、以下、詳細に説明する。図7(b)は、この往復速度差の発生を説明する模式図である。ここでは、矢印で示す加圧力20をF0としている。加圧軸26の振動子101に対する加圧位置76は、振動子101に対する突起部1a及び1bの取付け位置の中間である。(図中‖印)しかし、突起部1a及び1bのZ方向の寸法が異なるため、突起部1a及び1bの摺動部材3に対する加圧位置は、中心線71に対して突起部1b側に偏り、結果としてL1>L2の往復速度差が発生する。
F0に対する突起部1a及び1bの摺動部材3からの抗力を、それぞれF1、F2とすると、式1が成り立つ。また、F0に対して振動子101が受けるモーメント式である式2が成り立つ。Ma=F1×L1は突起部1aのモーメント、Mb=F2×L2は突起部1bのモーメントである。この式2においてL1>L2の関係があると、F1<F2となる。つまり、突起部1aに対して、突起部1bの加圧力が大きくなり、摩擦力も大きくなる。
F0=F1+F2 式1
F1×L1=F2×L2 式2
振動子101の駆動速度は、進行方向に対して後側の駆動力が支配的となるので、X方向における駆動速度V2が−X方向における駆動速度V1より大きくなる。結果としてV1<V2の往復速度差が発生する。
次に、図7(a)を参照して振動波モータ200の往復速度差を調整により減少するための方法を説明する。
往復速度差を少なくする調整方法は、突起部1aと突起部1bの加圧力の加圧バランスを調整することであり、振動波モータ200の−X方向の駆動特性を上げてX方向の駆動性能を下げるようにして行う。
加圧バランスを調整する具体的な方法は、以下の通りである。加圧力20の加圧力作用を突起部1aを大きくし、突起部1bを小さくする方向に調整する。加圧軸26をX方向に平行移動させて中心線71から中心線74になるように移動し、振動子101の移動方向の線上で、振動子101を加圧する加圧位置が変更される。
これには、位置調整部材29に設けられたかに目穴29aを使って、位置調整部材29のZ軸を中心として矢印29h(図6を参照)において位置調整部材29を右回転させると、加圧軸26の加圧軸部26bにX方向の力が作用する。
この時、加圧軸26の先端部26aが加圧力20で加圧されているので、加圧軸26の先端部26aが、加圧ベース5に接触した状態を維持し、加圧軸26は移動することとなる。これにより、加圧力20の加圧力作用を突起部1a側を大きくし、突起部1b側を小さくする調整が可能となる。
次に図7(c)を参照して、振動波モータ200の往復速度差の調整後、往復速度差が無くなったことを示す模式図によって詳細を説明する。
ここでは、矢印で示す加圧力20をF0としている。加圧軸26をX方向に平行移動させ、F0に対する突起部1a及び1bの摺動部材3に対する加圧位置をL1=L2の関係となるようにする。この時、突起部1a及び1bの摺動部材3からの抗力を、それぞれF1、F2とすると、式1が成り立つ。また、F0に対して振動子101が受けるモーメント式である式2が成り立つ。Ma=F1×L1は突起部1aのモーメント、Mb=F2×L2は突起部1bのモーメントである。この式2においてL1=L2の関係があると、F1=F2となる。
F0=F1+F2 式1
F1×L1=F2×L2 式2
つまり、突起部1a及び1bの加圧力が等しくなり、摩擦力も等しくなる。これにより、X方向の駆動速度V2と−X方向の駆動速度V1が等しくなり往復速度差を無くすことができる。
以上が、振動子101の2つの突起部1a及び1bの高さが異なり、それぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわないことで往復速度差が発生することについて、及びその往復速度調整についての説明である。
但し、実際には振動波モータ200の往復速度差は、振動子101のそれぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわない場合がある。また、突起部1a及び1bの振動の軌跡が揃わない場合もある。これらが原因となって発生するため、全ての原因に対する往復速度差の調整が必要となる。
その調整のやり方としては、上記に述べてきたように位置調整部材29の回転による加圧軸26の移動量で、速度差をバランスさせて往復速度が等しくなるようにする方法である。
更に、位置調整部材29の回転による加圧軸26の移動量は、振動波モータ200の駆動特性を実験計測した往復速度差から決めた移動量とする。また、移動量は、あらかじめ用意された往復速度差と加圧軸26の移動量結果データベースで決められる。
往復速度差と加圧軸26の移動量結果データベースは、振動子101のそれぞれの突起部1a及び1bに発生する摩擦力がそろわないことや、突起部1a及び1bの振動の軌跡が揃わないことの原因を含むものである。
以上、説明したように、実施例2によれば、振動子101を加圧する加圧位置が変更される。これにより、振動子101と摺動部材3が相対移動する往復速度差の調整を、振動波モータ200の組ばらしをする必要がなく、振動波モータ200の完成形のままで調整可能で、往復速度調整が容易な振動波モータ200を提供できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、振動波モータは、例えば振動板が超音波振動する超音波モータとすることができる。