しかしながら、このような額縁状の変圧器鉄心を用いた変圧器は、変圧器鉄心の脚鉄心と継鉄部の接合部が額縁状に接合された構造を採用するため、脚鉄心の長手方向の両端部が傾斜した形状となっていることから、従来の変圧器の製造方法のように脚鉄心の長手方向が垂直になるように脚鉄心を起立させることができない。そのため製造工数が比較的少なく、変圧器鉄心の製造が容易な、従来の変圧器鉄心の製造方法を、そのまま額縁形の変圧器の製造に適用することはできない。
また、変圧器鉄心の脚鉄心の長手方向が垂直になるように脚鉄心を起立させることなくケイ素鋼板を積層して変圧器鉄心を製造する方法もあるが(特開平6−5429号)、この変圧器鉄心の製造方法を用いた場合、従来の変圧器鉄心の製造方法に比べて製造工数が著しく増加する問題がある。
なお、額縁形の変圧器鉄心の製造において、治具を用いて脚鉄心の長手方向が垂直になるように複数の脚鉄心を配置する技術がある(特開昭58−196006号)。しかしこのような治具を用いた製造方法では、鉄心の脚鉄心をその長手方向が垂直になるように起立させると脚鉄心の先端に脚鉄心の自重がかかり、脚鉄心の先端が変形するおそれがある。また鉄心の脚鉄心が位置決めされた状態で同じ治具上で積層されるため、多様な寸法の変圧器鉄心を製造することができない上に、脚鉄心の長手方向が垂直になるように脚鉄心を起立させる際に脚鉄心の位置がずれる問題がある。
本発明の目的は、簡単に額縁形の変圧器鉄心を形成できる変圧器の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、額縁形の変圧器鉄心を製造しても脚鉄心の先端が変形することのない変圧器の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、多様な寸法の変圧器鉄心を製造することが可能で、しかも脚鉄心の位置がずれることのない変圧器の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、自立できない脚鉄心を自立させることができる、変圧器の製造方法で用いる治具を提供することにある。
本発明が改良の対象とする変圧器の製造方法は、所定の間隔をあけて順番に配置された第1乃至第nの脚鉄心(nは3以上の整数)と、隣り合う二つの脚鉄心がそれぞれ有する長手方向の一端間に配置された第1のグループのn−1個のヨーク鉄心と、隣り合う二つの脚鉄心がそれぞれ有する長手方向の他端間に配置された第2のグループのn−1個のヨーク鉄心とを備えてなる額縁形の変圧器鉄心の第1乃至第nの脚鉄心にそれぞれコイルを装着して変圧器を製造する方法である。この明細書において、脚鉄心はコイルが装着されて内鉄形の変圧器を構成するための脚部を構成し、ヨーク鉄心は隣接する脚鉄心の端部間をつなぐ変圧器の継鉄部を構成する。この変圧器の製造方法では、第1乃至第nの脚鉄心の数はn個となり、第1のグループのヨーク鉄心の数及び第2のグループのヨーク鉄心の数は、それぞれ脚鉄心の数より1個少ないn−1個ずつとなっている。また第1のグループのヨーク鉄心と第2のグループのヨーク鉄心とは、第1乃至第nの脚鉄心を介して対向する位置にそれぞれ配置されている。
本発明の変圧器の製造方法では、まず、長手方向の両端に線接触部を形成する形状を有する鋼板を複数枚積層して第1及び第nの脚鉄心を作成し、長手方向の両端に線接触部を形成する所定の形状を有する鋼板を複数枚積層して第1及び第nの脚鉄心の間に位置するn−2個の脚鉄心を作成する。第1及び第nの脚鉄心は、変圧器の脚鉄心のうち外側の脚鉄心を構成し、n−2個の脚鉄心は変圧器の脚鉄心のうち内側の脚鉄心を構成する。これらの脚鉄心を構成する鋼板は、いずれも長手方向の両端に線接触部を形成する所定の形状を有するため、これらの鋼板を複数枚積層して作成した脚鉄心の両端も、線接触部を有する形状となる。
そこで、第1及び第nの脚鉄心並びにn−2個の脚鉄心(n個の脚鉄心)を、脚鉄心の長手方向が垂直になるように配置するため、これらのn個の脚鉄心に対応するn個の治具を用意する。これらn個の治具は、いずれも脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の端面と当接する当接面を備えた底部構造とを有するように構成されている。
次に、これらの治具を第1乃至第nの脚鉄心の一端にそれぞれ装着した第1乃至第nの治具付き脚鉄心を作成し、これらの治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1乃至第nの治具が下側に位置するように起立させる。ここで用いる鉄心起こし機としては、公知の鉄心起こし機(例えば、脚鉄心の長手方向が水平になるように鋼板を積層して脚鉄心を作成し、これを90度回転させて脚鉄心の長手方向が垂直になるように脚鉄心を配置することができるような、くの字状の鉄心起こし機等)を用いることができる。
起立した第1乃至第nの治具付き脚鉄心は、所定の間隔をあけて順番に並べてそれぞれの位置を固定する。そして、起立した第1乃至第nの治具付き脚鉄心の隣り合う2つの脚鉄心の他端の間に、隣り合う2つの脚鉄心の他端とそれぞれ当接する端部形状を有する鋼板を順次挿入して第2のグループのn−1個のヨーク鉄心を形成することにより櫛歯状の鉄心を構成する。したがって、櫛歯状の鉄心は、第1乃至第nの治具付き脚鉄心と第2のグループのn−1個のヨーク鉄心とからなる形状、すなわち変圧器鉄心のうち第1のグループのn−1個のヨーク鉄心が設けられていない形状となっている。
櫛歯状の鉄心を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、第1乃至第nの治具を第1乃至第nの脚鉄心の一端からそれぞれ外す。櫛歯状の鉄心を180度反転させる鉄心反転機としては、公知の鉄心反転機を用いることができる。
その後、櫛歯状の鉄心の第1乃至第nの脚鉄心の一端側からそれぞれコイルを挿入する。次に櫛歯状の鉄心に含まれる第1乃至第nの脚鉄心の隣り合う2つの脚鉄心の一端の間に、隣り合う2つの脚鉄心の一端とそれぞれ当接する端部形状を有する鋼板を順次挿入して第1のグループのn−1個のヨーク鉄心を形成する。第1のグループのn−1個のヨーク鉄心も、第2のグループのn−1個のヨーク鉄心を形成する場合と同様に形成する。
このように本発明の変圧器の製造方法では、脚鉄心の端部に治具を嵌めた状態で、この治具が下側に位置し、かつその脚鉄心の長手方向が垂直になるように治具付き脚鉄心を起立させるので、額縁状の変圧器鉄心の脚鉄心でその両端が傾斜した線接触部を有する形状で、単独では自立できない脚鉄心でも、起立させてヨーク鉄心の接続やコイルの挿入を行うことができる。そのため、いわゆるトップランナー基準を満たす額縁状の変圧器鉄心を有する変圧器でも、短時間で製造することができる。
本発明の変圧器の製造方法において、第1及び第nの脚鉄心を、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状で且つ形状が等しい鋼板を複数枚積層して作成し、台形状の鋼板の上底が互いに向かい合うように、第1及び第nの脚鉄心を配置する。このようにすると、第1及び第nの脚鉄心を構成する複数枚の鋼板として同じ形状および同じ寸法の鋼板を用いることができる。また、このような脚鉄心を用いると、額縁形の変圧器鉄心を有する変圧器を製造することができる。
この場合、第1乃至第nの脚鉄心のうち、変圧器の外側の脚鉄心を構成する第1及び第nの脚鉄心は共通の形状となるため、n個の治具のうち第1及び第nの治具の底部構造は、第1及び第nの脚鉄心に対応する共通の底部構造となっている。また、変圧器の内側の脚鉄心を構成するn−2個の脚鉄心同士も共通の形状となるため、n個の治具のうち第1及び第nの治具以外の治具の底部構造は、n−2個の脚鉄心に対応する共通の底部構造となっている。したがって、この発明の変圧器の製造方法では、これらn個の治具として、第1及び第nの脚鉄心並びにn−2個の脚鉄心にそれぞれ対応する2種類の治具を用意すればよい。
本発明の変圧器の製造方法では、複数枚の台形状の鋼板を、積層方向の端に位置する鋼板から数えて奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した状態で積層するのが好ましい。複数枚の台形状の鋼板をこのように積層すると、偶数番目に位置する鋼板を介して隣り合う2つの奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面と偶数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面とにより脚鉄心の一端の端部に複数の凹部が形成されるため、これらの凹部にそれぞれヨーク鋼板の突出部を挿入してかみ合わせることができる。
本発明では、変圧器の内側の脚鉄心を構成するn−2個の脚鉄心を、長手方向の両端に三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた同じ形状の鋼板を複数枚重ねることにより形成して、脚鉄心の長手方向の両端に2つの傾斜面を備えるように構成するのが好ましい。このようにn−2個の脚鉄心を構成すると、変圧器鉄心の内側の脚鉄心を同じ形状及び同じ寸法の鋼板だけで作成することができる。すなわち、形状及び寸法が共通する2種類の鋼板だけで変圧器の脚鉄心を構成することができる。
なおn−2個の脚鉄心は、長手方向の両端に不等辺の三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた鋼板と、この鋼板の表裏を反転した鋼板を交互に複数枚重ねることにより形成し、脚鉄心の長手方向の両端にそれぞれ隣接して2つの山部を備えているように構成してもよい。n−2個の脚鉄心をこのような構成にすれば、n−2個の脚鉄心を一種類の鋼板で構成することができる。
またn−2個の脚鉄心は、長手方向の両端に傾斜面を有する平行四辺形状または台形状の鋼板と、鋼板の表裏を反転して得た平行四辺形状または台形状の鋼板とを交互に複数枚重ねることにより形成し、複数枚の鋼板の積層方向に交互に傾斜方向が異なる個別傾斜面が現れるように構成してもよい。n−2個の脚鉄心をこのような構成にすれば、平行四辺形状または台形状の鋼板によりn−2個の脚鉄心(変圧器の内側の鉄心)を作成することができる。
本発明の変圧器の製造方法は、変圧器の脚鉄心が3個の場合、すなわち一般に普及しているいわゆる三相形変圧器の場合は、次のような構成になる。この場合、本発明が改良の対象とする変圧器の製造方法は、所定の間隔をあけて順番に配置された第1乃至第3の脚鉄心と、第1の脚鉄心の一端と第2の脚鉄心の一端の一方の半部との間に配置された第1のヨーク鉄心と、第2の脚鉄心の一端の他方の半部と第3の脚鉄心の一端との間に配置された第2のヨーク鉄心と、第1の脚鉄心の他端と第2の脚鉄心の他端の一方の半部との間に配置された第3のヨーク鉄心と、第2の脚鉄心の他端の他方の半部と第3の脚鉄心の他端との間に配置された第4のヨーク鉄心とが組み合わされて構成された額縁形の変圧器鉄心の第1乃至第3の脚鉄心にそれぞれコイルを装着して変圧器を製造する方法である。
この本発明の変圧器の製造方法では、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状の鋼板を複数枚積層して第1及び第3の脚鉄心を作成し、長手方向の両端に三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた同じ形状の鋼板を複数枚重ねて、脚鉄心の長手方向の両端に2つの傾斜面を備える第2の脚鉄心を作成する。このような第1乃至第3の脚鉄心を構成すると、変圧器の外側の鉄心及び内側の鉄心を、外側と内側毎に同じ形状及び同じ寸法の鋼板だけで作成することができる。すなわち、形状及び寸法が共通する2種類の鋼板だけで変圧器の脚鉄心を構成することができる。
第1及び第3の脚鉄心を構成する鋼板は、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状の形状を有する(線接触部を有する)ため、第1及び第3の脚鉄心の両端も傾斜面を有する台形状の形状(線接触部を有する形状)となる。また、第2の脚鉄心を構成する鋼板は長手方向の両端に三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた同じ形状を有するため、第2の脚鉄心の両端も同様に2つの傾斜面を有する形状(線接触部を有する形状)となる。その結果、三相形変圧器を製造する場合でも、n個の脚鉄心を用いる場合と同様に、第1乃至第3の脚鉄心はそのままでは脚鉄心の長手方向が垂直になるように配置することはできない。
そこで、第1乃至第3の脚鉄心を、脚鉄心の長手方向が垂直になるように配置するため、これら第1乃至第3の脚鉄心に対応する第1乃至第3の治具を用意する。これら第1乃至第3の治具も、上記n個の治具と同様に、脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の端面と当接する当接面を備えた底部構造とを有する構成となっている。なお、第1乃至第3の脚鉄心のうち、変圧器の外側の脚鉄心を構成する第1及び第3の脚鉄心は共通の形状となるため、3個の治具のうち第1及び第3の治具の底部構造は、第1及び第3の脚鉄心に対応する共通の底部構造となっている。したがって、本発明の変圧器の製造方法では、これら3個の治具として、第1及び第3の脚鉄心並びに第2の脚鉄心にそれぞれ対応する2種類の治具を用意すればよい。
次に第1乃至第3の脚鉄心の一端にそれぞれ第1の治具乃至第3の治具を装着して第1乃至第3の治具付き脚鉄心を作成し、これらの治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1乃至第3の治具が下側に位置するように起立させる。ここで用いる鉄心起こし機も、上述した公知の鉄心起こし機を用いることができる。
起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心は、第1の治具付き脚鉄心、第2の治具付き脚鉄心、第3の治具付き脚鉄心の順番で所定の間隔をあけて並べて、第1の治具付き脚鉄心の他端に現れる傾斜端面と第2の治具付き脚鉄心の他端に現れる2つの傾斜面の一方とが対向し且つ第2の治具付き脚鉄心の他端に現れる2つの傾斜面の他方と第3の治具付き脚鉄心の他端に現れる傾斜面とが対向するようにそれぞれの位置を固定する。そして、起立した第1の治具付き脚鉄心の他端と起立した第2の治具付き脚鉄心の他端の一方の半部との間、及び起立した第2の治具付き脚鉄心の他端の他方の半部と起立した第3の治具付き脚鉄心の他端との間に、それぞれ長手方向の両端に傾斜面を有する所定形状の鋼板を順次挿入して第3のヨーク鉄心及び第4のヨーク鉄心を形成することによりE型鉄心を構成する。したがって、E形鉄心は、第1乃至第3の治具付き脚鉄心と第3及び第4のヨーク鉄心とからなる形状、すなわち変圧器鉄心のうち第1及び第2のヨーク鉄心だけが設けられていない形状となっている。
E型鉄心を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、第1乃至第3の治具を第1乃至第3の脚鉄心の一端からそれぞれ外す。E形鉄心を180度反転させる鉄心反転機としては、上述した公知の鉄心反転機を用いることができる。
その後E型鉄心の第1乃至第3の脚鉄心の一端側からそれぞれコイルを挿入する。次にE型鉄心の第1の脚鉄心の一端と第2の脚鉄心の一端の一方の半部との間、及び第2の脚鉄心の一端の他方の半部と第3の脚鉄心の一端との間に、それぞれ長手方向の両端に傾斜面を有する所定形状の鋼板を順次挿入して第1のヨーク鉄心及び第2のヨーク鉄心を形成する。
このように額縁状の変圧器鉄心を有する三相形変圧器を製造する場合でも、脚鉄心の端部に治具を嵌めた状態で、この治具が下側に位置し、かつ、その脚鉄心の長手方向が垂直になるように、治具付き脚鉄心を公知の鉄心起こし機を用いて起立させるので、いわゆるトップランナー基準を満たす額縁状の変圧器鉄心を有する三相形変圧器でも短時間で製造することができる。
本発明の変圧器の製造方法は、所定の間隔をあけて順番に配置された第1乃至第3の脚鉄心と、第1の脚鉄心の一端と第2の脚鉄心の一端との間に配置された第1のヨーク鉄心と、第2の脚鉄心の一端と第3の脚鉄心の一端との間に配置された第2のヨーク鉄心と、第1の脚鉄心の他端と第2の脚鉄心の他端との間に配置された第3のヨーク鉄心と、第2の脚鉄心の他端と第3の脚鉄心の他端との間に配置された第4のヨーク鉄心とが組み合わされて構成された額縁形の変圧器鉄心の第1乃至第3の脚鉄心にそれぞれコイルを装着して変圧器を製造する方法である。
この変圧器の製造方法では、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状で且つ形状が等しい複数枚の鋼板を、積層方向の端に位置する鋼板から数えて奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板の長手の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した状態で積層することにより第1及び第3の脚鉄心を構成する。第1及び第3の脚鉄心は、台形状で且つ形状が等しい複数枚の鋼板を積層して第1及び第3の脚鉄心を構成するので、形状及び寸法が共通する一種類の鋼板だけで変圧器の外側の脚鉄心を作成することができる。また、複数枚の台形状の鋼板を、積層方向の端に位置する鋼板から数えて奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板の長手の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した状態で積層すると、偶数番目に位置する鋼板を介して隣り合う2つの奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面と偶数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面とにより脚鉄心の一端の端部に複数の凹部を形成することができる。その結果、脚鉄心とヨーク鉄心との接合部を額縁状の接合部にすることができる上、これらの凹部にヨーク鋼板の突出部を挿入することができる。
また、長手方向の両端に不等辺の三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた鋼板と、この鋼板の表裏を反転して得た鋼板とを交互に複数枚重ねることにより、第2の脚鉄心を構成する。第2の脚鉄心をこのような構成にすれば、同じ形状の鋼板を用いて反転しながら重ねて第2の脚鉄心を構成することができる。特に、不等辺の三角形を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた鋼板を反転しながら重ねて第2の脚鉄心を構成すると、これら鋼板はその長手方向に交互にずらさなくてもよい。
この場合も、第1乃至第3の脚鉄心を、脚鉄心の長手方向が垂直になるように配置するため、これら第1乃至第3の脚鉄心に対応する第1乃至第3の治具を用意する。これら第1乃至第3の治具も、上記n個の治具と同様に、脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の端面と当接する当接面を備えた底部構造とを有する構成となっている。なお、この場合も第1乃至第3の脚鉄心のうち、変圧器の外側の脚鉄心を構成する第1及び第3の脚鉄心は共通の形状となるため、3個の治具のうち第1及び第3の治具の底部構造は、第1及び第3の脚鉄心に対応する共通の底部構造となっている。したがって、本発明の変圧器の製造方法では、これら3個の治具として、第1及び第3の脚鉄心並びに第2の脚鉄心にそれぞれ対応する2種類の治具を用意すればよい。
次に第1乃至第3の脚鉄心の一端にそれぞれ第1の治具乃至第3の治具を装着して第1乃至第3の治具付き脚鉄心を作成し、これらの治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1乃至第3の治具が下側に位置するように起立させる。ここで用いる鉄心起こし機も、上述した公知の鉄心起こし機を用いることができる。
起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心は、第1の治具付き脚鉄心、第2の治具付き脚鉄心、第3の治具付き脚鉄心の順番で所定の間隔をあけて並べて、それぞれの位置を固定する。そして、起立した第1の治具付き脚鉄心の他端と起立した第2の治具付き脚鉄心の他端との間及び起立した第2の治具付き脚鉄心の他端と起立した第3の治具付き脚鉄心の他端との間に、それぞれ長手方向の両端に対応する他端と接触する接触面を備えた鋼板を順次挿入して第3のヨーク鉄心及び第4のヨーク鉄心を形成してE型鉄心を構成する。したがって、E形鉄心は、第1乃至第3の治具付き脚鉄心と第3及び第4のヨーク鉄心とからなる形状、すなわち変圧器鉄心のうち第1及び第2のヨーク鉄心だけが設けられていない形状となっている。
E型鉄心を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、第1乃至第3の治具を第1乃至第3の脚鉄心の一端からそれぞれ外す。この場合も、E形鉄心を180度反転させる鉄心反転機として、上述した公知の鉄心反転機を用いることができる。
その後、E型鉄心の第1乃至第3の脚鉄心の一端側からそれぞれコイルを挿入する。次いでE型鉄心の第1の脚鉄心の一端と第2の脚鉄心の一端との間、及び第2の脚鉄心の一端と第3の脚鉄心の一端との間に、それぞれ長手方向の両端に対応する他端と接触する接触面を備えた鋼板を順次挿入して第1のヨーク鉄心及び第2のヨーク鉄心を形成する。
このような変圧器の製造方法を用いると、公知の鉄心起こし機を用いて脚鉄心を起こすことができるため、いわゆるトップランナー基準を満たす額縁状の変圧器鉄心を有する三相形変圧器でも短時間で製造することができる。
本発明の変圧器の製造方法は、所定の間隔をあけて順番に配置された第1乃至第3の脚鉄心と、第1の脚鉄心の一端と第2の脚鉄心の一端との間に配置された第1のヨーク鉄心と、第2の脚鉄心の一端と第3の脚鉄心の一端との間に配置された第2のヨーク鉄心と、第1の脚鉄心の他端と第2の脚鉄心の他端との間に配置された第3のヨーク鉄心と、第2の脚鉄心の他端と第3の脚鉄心の他端との間に配置された第4のヨーク鉄心とが組み合わされて構成された額縁形の変圧器鉄心の第1乃至第3の脚鉄心にそれぞれコイルを装着して変圧器を製造する方法である。
この変圧器の製造方法では、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状で且つ形状が等しい複数枚の鋼板を、積層方向の端に位置する鋼板から数えて奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板の長手の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した状態で積層することにより第1及び第3の脚鉄心を構成する。第1及び第3の脚鉄心は、台形状で且つ形状が等しい複数枚の鋼板を積層して第1及び第3の脚鉄心を構成するので、形状及び寸法が共通する一種類の鋼板だけで変圧器の外側の脚鉄心を作成することができる。また、複数枚の台形状の鋼板を、積層方向の端に位置する鋼板から数えて奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板の長手の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した状態で積層すると、偶数番目に位置する鋼板を介して隣り合う2つの奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面と偶数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面とにより脚鉄心の一端の端部に複数の凹部を形成することができる。その結果、脚鉄心とヨーク鉄心との接合部を額縁状の接合部にすることができる上、これらの凹部にヨーク鋼板の突出部を挿入することができる。
また、長手方向の両端に傾斜面を有する平行四辺形状または台形状の鋼板と、鋼板の表裏を反転して得た平行四辺形状または台形状の鋼板とを交互に複数枚重ねることにより、第2の脚鉄心を構成する。特に、第2の脚鉄心を台形状の鋼板で構成にすれば、第1及び第3の脚鉄心(変圧器の外側の脚鉄心)を作成するための鋼板をそのまま、第2の脚鉄心(変圧器の内側の鉄心)を作成する鋼板として用いることができる。したがって、形状及び寸法が共通する1種類の鋼板だけで変圧器を構成する全ての脚鉄心を作成することができる。なお、第1乃至第3の脚鉄心を構成する鋼板は、いずれも長手方向の両端に傾斜面を有する台形状または平行四辺形状であるため、これらの鋼板を複数枚積層して作成した脚鉄心の両端が線接触部を有する形状となる。その結果、この三相形変圧器を製造する場合でも、n個の脚鉄心を用いる場合及び上述の三相形変圧器を製造する場合と同様に、第1乃至第3の脚鉄心はそのままでは脚鉄心の長手方向が垂直になるように配置することはできない。
そこで、この場合も、第1乃至第3の脚鉄心を、脚鉄心の長手方向が垂直になるように配置するため、これら第1乃至第3の脚鉄心に対応する第1乃至第3の治具を用意する。これら第1乃至第3の治具も、上記n個の治具と同様に、脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の端面と当接する当接面を備えた底部構造とを有する構成となっている。なお、この場合も第1乃至第3の脚鉄心のうち、変圧器の外側の脚鉄心を構成する第1及び第3の脚鉄心は共通の形状となるため、3個の治具のうち第1及び第3の治具の底部構造は、第1及び第3の脚鉄心に対応する共通の底部構造となっている。したがって、本発明の変圧器の製造方法では、これら3個の治具として、第1及び第3の脚鉄心並びに第2の脚鉄心にそれぞれ対応する2種類の治具を用意すればよい。
次に第1乃至第3の脚鉄心の一端にそれぞれ第1の治具乃至第3の治具を装着して第1乃至第3の治具付き脚鉄心を作成し、これらの治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1乃至第3の治具が下側に位置するように起立させる。ここで用いる鉄心起こし機も、上述した公知の鉄心起こし機を用いることができる。
起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心は、第1の治具付き脚鉄心、第2の治具付き脚鉄心、第3の治具付き脚鉄心の順番で所定の間隔をあけて並べて、それぞれの位置を固定する。そして、起立した第1の治具付き脚鉄心の他端と起立した第2の治具付き脚鉄心の他端との間及び起立した第2の治具付き脚鉄心の他端と起立した第3の治具付き脚鉄心の他端との間に、それぞれ長手方向の両端に対応する他端と接触する接触面を備えた台形状の鋼板を順次挿入して第3のヨーク鉄心及び第4のヨーク鉄心を形成してE型鉄心を構成する。したがって、E形鉄心は、第1乃至第3の治具付き脚鉄心と第3及び第4のヨーク鉄心とからなる形状となっている。
E型鉄心を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、第1乃至第3の治具を第1乃至第3の脚鉄心の一端からそれぞれ外す。この場合も、E形鉄心を180度反転させる鉄心反転機として、上述した公知の鉄心反転機を用いることができる。
その後、E型鉄心の第1乃至第3の脚鉄心の一端側からそれぞれコイルを挿入する。次いでE型鉄心の第1の脚鉄心の一端と第2の脚鉄心の一端との間、及び第2の脚鉄心の一端と第3の脚鉄心の一端との間に、それぞれ長手方向の両端に対応する他端と接触する接触面を備えた台形状の鋼板を順次挿入して第1のヨーク鉄心及び第2のヨーク鉄心を形成する。
このような変圧器の製造方法を用いると、額縁状の三相形変圧器のうち共通する1種類の鋼板を用いて脚鉄心を作成した場合でも、公知の鉄心起こし機を用いて脚鉄心を起こすことができるため、いわゆるトップランナー基準を満たす額縁状でしかも1種類の鋼板から作成した脚鉄心をもつ変圧器鉄心を有する三相形変圧器を短時間で製造することができる。
第1乃至第3の治具の配置位置が定められた治具配置盤を用意し、第1乃至第3の治具付き脚鉄心を治具配置盤上に配置するのが好ましい。このようにすると、第1乃至第3の治具付き脚鉄心を配置する際の位置決めが容易になるため、第1乃至第3の治具付き脚鉄心を配置する位置の固定が容易になる。
第1乃至第3の脚鉄心のそれぞれの一端に第1乃至第3の治具を嵌め合わせる作業は、それぞれ第1の搬送用コンベア上で行い、第1の搬送用コンベアを利用して第1乃至第3の治具付き脚鉄心を順次鉄心起こし機まで搬送し、治具配置盤を第2の搬送用コンベア上においてE型鉄心の製造を行い、第2の搬送用コンベアを利用してE型鉄心を鉄心反転機まで搬送するのが好ましい。このようにすると、脚鉄心と治具の嵌め合わせ作業からE形鉄心を反転するまでの作業を短時間で行うことができる。このような第1及び第2の搬送用コンベアとしては、トップランナー基準を満たさない単純な三相形変圧器の製造に用いられていた公知の搬送用コンベアを用いることができる。したがって、三相形変圧器を製造する際の搬送作業を公知の搬送用コンベアを用いて行うことができる。
第1乃至第3の治具には、それぞれ角筒部に挿入された脚鉄心に対し鋼板の積層方向に力を加えるように構成されて脚鉄心の一端と治具とを固定状態にする鉄心固定機構を設けるのが好ましい。このような鉄心固定機構を設けることにより、第1乃至第3の治具の角筒部及びその開口部の寸法を脚鉄心の一端の寸法よりも大きくすることが可能になるため、第1乃至第3の治具を第1乃至第3の脚鉄心の一端に装着する作業が容易になる。また、鋼板の積層方向に力が加えられるように脚鉄心の一端に治具が固定されるため、脚鉄心を搬送する際または脚鉄心にヨーク鉄心を配置する際に脚鉄心が変形するのを防ぐことができる。
さらに、第1乃至第3の治具において角筒部を4つの壁部によって構成し、鉄心固定機構を、対向する一対の壁部の間を移動可能に角筒部内に配置されたスライダと、一端にこのスライダが装着され且つ一対の壁部の一方に形成された螺子孔に螺合される螺子部を有する駆動用螺子部材と、駆動用螺子部材の他端に設けられた駆動用螺子部材に回転力を付与する際に使用される操作部とから第1乃至第3の治具を構成するのが好ましい。第1乃至第3の治具の角筒部を4つの壁部によって構成すると、治具を装着した脚鉄心の一端の側面にこれら4つの壁部が当接するため、脚鉄心の一端に治具を安定的に固定することができる。また鉄心固定機構を、上記のようなスライダ、駆動用螺子部材および操作部とから構成すると、脚鉄心の一端の寸法に合わせて治具を固定することができる。
また、第1及び第3の治具の底部構造は、角筒部の内部に配置され第1または第3の脚鉄心の一端と接触する1つの傾斜壁部を備え、第2の治具の底部構造は、角筒部の内部に配置されて第2の脚鉄心の端部に現れる2種類の傾斜面と接触する2つの傾斜壁部を備える構造にするのが好ましい。このようにすると、第1乃至第3の治具が下側に位置するように第1乃至第3の脚鉄心を起立させた場合に、第1乃至第3の脚鉄心の自重による荷重を、第1乃至第3の治具の底部に設けられた傾斜壁部で受けることができる。すなわち、第1乃至第3の脚鉄心の自重による荷重が各脚鉄心の下端の先端に集中するのを回避することができるため、第1乃至第3の脚鉄心の下端が変形するのを防ぐことができる。
なお、第2の脚鉄心を、長手方向の両端に三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた鋼板を複数枚重ねて形成する場合は、第2の治具の角筒部を、互いの間隔を調整できるように調節可能連結機構によって連結される第1及び第2の角筒半部を有し、2つの傾斜壁部がこれら第1及び第2の角筒半部の内部にそれぞれ別個に取り付けられるように構成すればよい。このようにすると、第2の治具が下側に位置するように第2の脚鉄心を起立させた場合に、第2の脚鉄心の自重による荷重を、第2の治具の底部に設けられた2つの傾斜壁部で受けることができる。すなわち、第2の脚鉄心の自重による加重が第2の脚鉄心の下端の先端に集中するのを回避することができるため、第2の脚鉄心の下端が変形するのを防ぐことができる。
本発明の変圧器の製造方法は、変圧器の脚鉄心が2個の場合は、次のような構成にする。この場合、本発明が改良の対象とする変圧器の製造方法は、第1及び第2の脚鉄心と、第1の脚鉄心の一端と第2の脚鉄心の一端との間に配置された第1のヨーク鉄心と、第1の脚鉄心の他端と第2の脚鉄心の他端との間に配置された第2のヨーク鉄心とが組み合わされて構成された額縁形の変圧器鉄心の第1及び第2の脚鉄心にそれぞれコイルを装着して変圧器を製造する方法である。
本発明では、まず、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状の鋼板を複数枚積層して第1及び第2の脚鉄心を個別に作成する。脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の端面と当接する当接面を備えた底部構造とを有する第1及び第2の治具を用意する。
第1及び第2の脚鉄心の一端にそれぞれ第1及び第2の治具を装着した第1及び第2の治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1及び第2の治具が下側に位置するように起立させる。起立した第1及び第2の治具付き脚鉄心を所定の間隔をあけて並べてそれぞれの位置を固定する。起立した第1の治具付き脚鉄心の他端と起立した第2の治具付き脚鉄心の他端との間に、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状の鋼板を順次挿入して第2のヨーク鉄心を形成することによりC型鉄心を構成する。
C型鉄心を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、第1及び第2の治具を第1及び第2の脚鉄心の他端からそれぞれ外す。その後C型鉄心の第1及び第2の脚鉄心の他端側からそれぞれコイルを挿入する。その後C型鉄心の第1の脚鉄心の一端と第2の脚鉄心の一端との間に、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状の鋼板を順次挿入して第1のヨーク鉄心を形成する。
このような変圧器の製造方法を用いると、2脚鉄心の額縁状の変圧器鉄心のうち共通する1種類の鋼板を用いて脚鉄心を作成した場合でも、公知の鉄心起こし機を用いて脚鉄心を起こすことができるため、いわゆるトップランナー基準を満たす額縁状でしかも1種類の鋼板から作成した脚鉄心を有する変圧器でも短時間で製造することができる。
本発明は、所定の間隔をあけて順番に配置された第1乃至第nの脚鉄心(nは3以上の整数)と、各脚鉄心がそれぞれ有する長手方向の各一端を磁気的に連結する第1のヨーク鉄心と、各脚鉄心がそれぞれ有する長手方向の各他端を磁気的に連結する第2のヨーク鉄心とを備えてなる額縁形の変圧器鉄心の第1乃至第nの脚鉄心にそれぞれコイルを装着して変圧器を製造する方法に適用できる。
この変圧器を製造する方法では、長手方向の両端に線接触部を形成する傾斜面を有する鋼板を複数枚積層して第1及び第nの脚鉄心を作成し、長手方向の両端に線接触部を形成する傾斜面を有する鋼板を複数枚積層して第1及び第nの脚鉄心の間に位置するn−2個の脚鉄心を作成する。また、脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の傾斜面と当接する当接面を備えた底部構造とを有するn個の治具を用意する。
第1乃至第nの脚鉄心の一端にそれぞれ治具を装着した第1乃至第nの治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1乃至第nの治具が下側に位置するように起立させる。このように第1乃至第nの脚鉄心の一端にそれぞれ治具を装着して起立させると、端部が傾斜面となっている各脚鉄心をその端部を損傷させずに起立させることができる。
起立した第1乃至第nの治具付き脚鉄心を所定の間隔をあけて順番に並べてそれぞれの位置を固定する。起立した第1乃至第nの治具付き脚鉄心のn個の他端とそれぞれ当接する形状を有する鋼板を順次挿入して第2の共通のヨーク鉄心を形成することにより櫛歯状の鉄心を構成する。
櫛歯状の鉄心を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、第1乃至第nの治具を第1乃至第nの脚鉄心の一端からそれぞれ外し、その後櫛歯状の鉄心の第1乃至第nの脚鉄心の一端側からそれぞれコイルを挿入し、その後櫛歯状の鉄心に含まれる第1乃至第nの脚鉄心のn個の一端とそれぞれ当接する形状を有する鋼板を順次挿入して第1の共通のヨーク鉄心を形成する。
このような変圧器の製造方法では、脚鉄心の長手方向が垂直になるように配置できない脚鉄心を用いる額縁形の変圧器鉄心を製造する場合でも、公知の鉄心起こし機を用いて脚鉄心を起こしてヨーク鉄心の接続やコイルの挿入を行うことができる。そのため、いわゆるトップランナー基準を満たす額縁状の変圧器鉄心を有する変圧器でも、短時間で製造することができる。特にこの変圧器の製造方法では、第1乃至第nの脚鉄心の長手方向の両側でこれらの端部に磁気的に接続するヨーク鉄心としてこれらに共通に接続する共通のヨーク鉄心をそれぞれ用いているので、第1乃至第nの脚鉄心(nは3以上の整数)を用いるタイプでもヨーク鉄心を形成するための鋼板の種類が少なくなり、組立工数が低減され、能率よく低コストで額縁状の変圧器鉄心を構成することができる。
次に、本発明の変圧器の製造方法で用いる治具は、脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の傾斜面と当接する傾斜した当接面を備えた底部構造とを有する構造になっているので、脚鉄心の長手方向の一端を角筒部内に挿入し、その一端の傾斜面を底部構造の傾斜した当接面に当接させることにより、脚鉄心の荷重が分散されて当接面で受けられることになり、脚鉄心の下端を変形させずに脚鉄心を起立させることができる。
この治具で、角筒部に挿入された脚鉄心に対して鋼板の積層方向に力を加えるように構成されて脚鉄心の一端と治具とを固定状態にする鉄心固定機構が設けられていると、鋼板が積層された脚鉄心を積層方向に締め付けた状態で起立させることができる。
この治具で、角筒部が4つの壁部によって構成されていると、鋼板が積層されて断面四角形状をなす脚鉄心を、各面に対向させて挿入することができる。
この治具で、鉄心固定機構が、対向する一対の壁部の間を移動可能に角筒部内に配置されたスライダと、一端にスライダが装着され且つ一対の壁部の一方に形成された螺子孔に螺合される螺子部を有する駆動用螺子部材と、駆動用螺子部材の他端に設けられた駆動用螺子部材に回転力を付与する際に使用される操作部とから構成されていると、操作部によって駆動用螺子部材を回すことによりスライダを移動させることにより脚鉄心を締め付けたり、締め付けを解除したりすることが容易になる。
この治具で、1列に配置された際にその配列方向の両端に位置するものの底部構造が、角筒部の内部に配置されて脚鉄心の一端と接触する1つの傾斜壁部を備えていると、この1つの傾斜壁部で脚鉄心の一端の傾斜面を支えることができる。
この治具で、1列に配置された際にその配列方向の両端を除く中間に位置するものの底部構造が、角筒部の内部に配置されて脚鉄心の端部に現れる2種類の傾斜面と接触する2つの傾斜壁部を備えていると、この2つの傾斜壁部で脚鉄心の端部に現れる2種類の傾斜面を支えることができる。
この治具で、1列に配置された際にその配列方向の両端を除く中間に位置するものの角筒部は、互いの間隔を調整できるように調節可能連結機構によって連結される第1及び第2の角筒半部を有していると、角筒部自体の間隔を調整して脚鉄心を固定することができ、脚鉄心の寸法が変わっても該脚鉄心を嵌めて固定することができる。また、2つの傾斜壁部が第1及び第2の角筒半部の内部にそれぞれ別個に取り付けられていると、第1及び第2の角筒半部の移動に合わせて2つの傾斜壁部を移動させることができる。
本発明の変圧器の製造方法では、脚鉄心の端部に治具を嵌めた状態で、この治具が下側に位置し、かつその脚鉄心の長手方向が垂直になるように治具付き脚鉄心を起立させるので、額縁状の変圧器鉄心の脚鉄心でその両端が傾斜した線接触部を有する形状で、単独では自立できない脚鉄心でも、起立させてヨーク鉄心の接続やコイルの挿入を行うことができる。そのため、額縁状の変圧器鉄心を有する変圧器でも、いわゆるトップランナー基準を満たすものを、短時間で製造することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図7は本発明の変圧器の製造方法の第1実施例を示したもので、図1(A)〜(D)は第1実施例で用いる各鋼板の平面図、図2(A)〜(D)は第1実施例で形成される積層構造の三相形変圧器鉄心における各層の平面図、図3(A)〜(G)は第1実施例の三相形変圧器の製造方法の各工程を示す概略工程図、図4(A)及び(B)は第1実施例で脚鉄心を形成する脚鉄心積層装置の一例を示す斜視図及びこの装置で脚鉄心を形成する要部構成の断面図、図5(A)及び(B)は第1実施例の三相形変圧器の製造方法で用いる3つの治具の平面図及び正面図、図6は第1実施例の三相形変圧器の製造方法で用いる鉄心起こし機の一例を示す斜視図、図7は第1実施例の三相形変圧器の製造方法で用いる第1の搬送用コンベアの斜視図である。
本例の変圧器の製造方法は、三相形変圧器に適用したものである。本例三相形変圧器は、図1(A)〜(D)に示すように4種類の鋼板で構成されるようになっている。これら4種類の鋼板とは、図1(A)及び(B)に示すように、それぞれ脚鉄心として使用される台形状の鋼板1及び長手方向の両端に三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた鋼板3と、図1(C)及び(D)に示すように、鋼板1及び3よりも長手方向の長さが短い台形状をしていてヨーク鉄心として使用される鋼板5及び一端が傾斜面で他端が三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備え、鋼板1及び3よりも長さが短く形成されていてヨーク鉄心として使用される鋼板7とである。鋼板1は、図1(A)に示すように、長手方向の両端に線接触部を形成するようにそれぞれ1つの長さが等しい傾斜面1a及び1bが台形の斜面をなすように形成されている。鋼板3は、図1(B)に示すように、長手方向の両端に線接触部を形成するように不等辺の三角形の2辺を構成する、対向する2つの傾斜面3a及び3bと3c及び3dとがそれぞれ形成されている。相互に長さが等しい傾斜面3a及び3cは、相互に長さが等しい傾斜面3b及び3dより長く形成されている。傾斜面3aと3cとは相互に平行になっており、傾斜面3bと3dとは相互に平行になっている。鋼板5は、図1(C)に示すように、長手方向の両端に線接触部を形成するようにそれぞれ1つの長さが等しい傾斜面5a及び5bが台形の斜面をなすように形成されている。鋼板7は、図1(D)に示すように、長手方向の両端に線接触部を形成するように長手方向の一端には1つの傾斜面7aが、長手方向の他端には三角形の2辺を構成する、対向する2つの長さが等しい傾斜面7b及び7cが形成されている。
このような鋼板1,3,5及び7により、図2(A),(B),(C)及び(D)に示すような層構造の変圧器鉄心9が構成されている。この変圧器鉄心9を構成する一部の層(例えば、奇数番目の層とする。)の層構造は、図2(A)に破線表示で示すように、鋼板3の両側に所定の間隔で平行に一方の鋼板1とこれを反転した他方の鋼板1がその傾斜面1a及び1aと1b及び1bとを相互に向かい合わせるように配置され、また鋼板1及び鋼板1の間に鋼板3がその一端の一方の半部の傾斜面3bが一方の鋼板1の一端の傾斜面1aと対向し、他方の鋼板1の一端の傾斜面1aが鋼板3の一端の他方の半部の傾斜面3aと対向し、鋼板3の他端の一方の半部の傾斜面3cが一方の鋼板1の他端の傾斜面1bと対向し、他方の鋼板1の他端の傾斜面1bが鋼板3の他端の他方の半部の傾斜面3dと対向するように配置されている。この状態で、一方の鋼板1の一端の傾斜面1aと鋼板3の一端の一方の半部の傾斜面3bとに鋼板5の両側の傾斜面5b及び5aが線接触部をなすように接触され、鋼板3の一端の他方の半部の傾斜面3aと他方の鋼板1の一端の傾斜面1aとに鋼板7の他端の一方の半部の傾斜面7bと一端の傾斜面7aとが線接触部をなすように接触され、一方の鋼板1の他端の傾斜面1bと鋼板3の他端の一方の半部の傾斜面3cとに鋼板7の一端の傾斜面7aと他端の傾斜面7bとが線接触部をなすように接触され、鋼板3の他端の他方の半部の傾斜面3dと他方の鋼板1の他端の傾斜面1bとに鋼板5の両側の傾斜面5a及び5bが線接触部をなすように接触されて構成されている。この場合、鋼板1の一端側と他端側とで、鋼板7の他方の半部の傾斜面7cは鋼板5の傾斜面5aに線接触部をなすように接触されている。
これら一部の層の隣の層(例えば、偶数番目の層とする。)の層構造は、図2(B)に実線表示で示すように、鋼板3の両側に所定の間隔で平行に一方の鋼板1と他方の鋼板1とがその傾斜面1a及び1aと1b及び1bとを相互に向かい合わせるように配置され、鋼板1及び1の間の中央には、鋼板3が図2(A)とは反転して配置されている。この状態では、一方の鋼板1の一端の傾斜面1aが鋼板3の一端の一方の半部の傾斜面3aと対向し、他方の鋼板1の一端の傾斜面1aが鋼板3の一端の他方の半部の傾斜面3bと対向し、一方の鋼板1の他端の傾斜面1bが鋼板3の他端の一方の半部の傾斜面3dと対向し、他方の鋼板1の他端の傾斜面1bが鋼板3の他端の他方の半部の傾斜面3cと対向するように配置されている。この状態で、一方の鋼板1の一端の傾斜面1aと鋼板3の一端の一方の半部の傾斜面3aとに鋼板7の一端の傾斜面7aと他端の傾斜面7bとが線接触部をなすように接触され、鋼板3の一端の他方の半部の傾斜面3bと他方の鋼板1の一端の傾斜面1aとに鋼板5の両側の傾斜面5b及び5aが線接触部をなすように接触されている。また、一方の鋼板1の他端の傾斜面1bと鋼板3の他端の一方の半部の傾斜面3dとに鋼板5の両側の傾斜面5a及び5bが線接触部をなすように接触され、鋼板3の他端の他方の半部の傾斜面3cと他方の鋼板1の他端の傾斜面1bとに鋼板7の他端の一方の半部の傾斜面7bと一端の傾斜面7aとが線接触部をなすように接触されている。この場合も、鋼板1の一端側と他端側とで、鋼板7の他方の半部の傾斜面7cは鋼板5の傾斜面5bに線接触部をなすように接触されている。
これら一部の層(破線線で示す層)に対して隣の層(実線で示す層)は、図2(C)及び(D)に示すように、両端の鋼板1及び1が図に示すようにその長手方向に対して所定の寸法だけ交互にずらした状態で重ねて配置されている。即ち、破線で示す層の上に実線で示す層がずらして重ねられている。ただし、中間の鋼板3は交互に反転した状態で、その長手方向にずらさずに重ねられている。図2(C)で、ヨーク鉄心として使用される鋼板の符号は、上側に存在する実線で示す層を主体として示し、下側に存在する破線で示す層はカッコ内に入れて表示した。
この第1実施例の図面の図2(A)〜(C)では、額縁部を構成するように鋼板1と鋼板5及び7の突き合わされたコーナ部で、脚鉄心を構成する鋼板1をその長手方向にずらす関係で、鋼板1と鋼板5及び7とのエッジ部が図示のように突き出ている。脚鉄心を構成する鋼板をその長手方向にずらしているものは、以下の実施例でも同様である。
次に、本例の三相形変圧器の製造方法について、図3(A)〜(G)に示す三相形変圧器の製造方法の各工程を示す概略工程図を参照して説明する。
図3(A)に示すように、長手方向の両端に傾斜面1a及び1bを有する台形状の鋼板1を複数枚積層し一体化し、脚鉄心の長手方向の両端にそれぞれ一方向の1つの傾斜面11a及び11bと15a及び15bを有する第1及び第3の脚鉄心11及び15を作成し、また長手方向の両端に不等辺の三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面3a及び3bと3c及び3dを備えた同じ形状の鋼板3を複数枚、交互に反転させて重ねて一体化し、脚鉄心の長手方向の両端の中央側ではそれぞれ2つの傾斜面13a及び13aと13c及び13cとが交互に交差する向きで重なり、その外側では外向きに傾斜面13b及び13bと13d及び13dが存在する構造の第2の脚鉄心13を作成する。両端の脚鉄心11及び15は、積層時に、積層方向の端に位置する鋼板1から数えて奇数番目に位置する鋼板1の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板1の長手方向の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出または後退した構造にしている。このため傾斜面11a及び11bと15a及び15bは、鋼板1の長手方向の突出または後退により実際には凹凸面となっている。第2の脚鉄心13の長手方向の両端は、山が2つの傾斜面となっている。中間の脚鉄心13は、鋼板3を長手方向にずらさずに、反転して重ねられている。これら脚鉄心11,13及び15は、隣接する各鋼板の層間にワニスを一部に真空含浸させて一体化する。
本例では、この発明を実施するために、図3(B)に示すように、第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の長手方向の一端が挿入される開口部17,19及び21を有する角筒状の角筒部23,25及び27と、これら開口部17,19及び21と対向する位置にあって第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の一端の端面と当接する後述の当接面を備えた底部構造29,31及び33とを有する第1乃至第3の治具35,37及び39を用意する。角筒部23,25及び27は、角部が直角形をなす4つの壁部によって直方体をなすように構成されている。
これら第1乃至第3の治具35,37及び39を、図3(B)に示すように、第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の一端にそれぞれ装着して第1乃至第3の治具付き脚鉄心41,43及び45を形成する。
次に、図3(C)に示すように、それぞれ鉄心起こし機47を用いて、第1乃至第3の治具付き脚鉄心41,43及び45を水平に載せた状態で、起こして左に示すように第1の治具乃至第3の治具35,37及び39が下側に位置するように非常に重い第1乃至第3の治具付き脚鉄心41,43及び45を垂直に起立させる。鉄心起こし機47は、公知の構造のものであって、後でその一例について説明する。
次に、図3(D)に示すように、起立した第1の治具付き脚鉄心41、第2の治具付き脚鉄心43及び第3の治具付き脚鉄心45の順番で所定の間隔をあけて並べ、第1の治具付き脚鉄心41の他端に現れる傾斜面11bと第2の治具付き脚鉄心43の他端に現れる2つの傾斜面13d及び13dの一方の傾斜面13dとが対向し且つ第2の治具付き脚鉄心43の他端に現れる2つの傾斜面13d及び13dの他方の傾斜面13dと第3の治具付き脚鉄心45の他端に現れる傾斜面15bとが対向するようにそれぞれの位置を固定する。起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心41,43及び45の位置決めは、図3(D)に示すように、治具配置盤49を用いて行う。治具配置盤49は、第1の治具乃至第3の治具付き脚鉄心41,43及び45の下部の第1乃至第3の治具35,37及び39を、これらの順序で位置決めする例えば凹部や四角形の囲い等の第1乃至第3の位置決め部51,53及び55をその表面に備えている。起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心41,43及び45の下部の第1乃至第3の治具35,37及び39を、この治具配置盤49上の第1乃至第3の位置決め部51,53及び55に嵌めて載せることにより、起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心41,43及び45の位置決めを行う。
かかる状態で、図3(D)に示すように、起立した第1の治具付き脚鉄心41の他端の傾斜面11bと起立した第2の治具付き脚鉄心43の他端の2つの傾斜面13d及び13dの一方の半部の傾斜面13dとの間、及び起立した第2の治具付き脚鉄心43の他端の2つの傾斜面13d及び13dの他方の半部の傾斜面13dと起立した第3の治具付き脚鉄心45の他端の傾斜面15bとの間に、それぞれ長手方向の両端に傾斜面5a及び5bと、7a,7b及び7cを有する所定形状の鋼板5及び7を前述した図2(A)乃至(C)に示すように順次嵌め込んで第3のヨーク鉄心57及び第4のヨーク鉄心59を形成することによりE型をなすE型鉄心61を構成する。
次に、このE型鉄心61を、図3(E)に示すように、公知の鉄心反転機(図示せず)を用いて180度反転する。しかる後に、治具配置盤49と第1乃至第3の治具35乃至39を第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の一端からそれぞれ外す。
その後、図3(F)に示すように、E型鉄心61の第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の一端側から第1乃至第3のコイル63,65及び67をそれぞれ挿入して、これら第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の外周に取り付ける。この場合、第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の中間部の外周には、絶縁部材を介して第1乃至第3のコイル63,65及び67を装着する。
その後、図3(G)に示すように、E型鉄心61の第1の脚鉄心11の一端の傾斜面11aと第2の脚鉄心13の一端の2つの傾斜面13b及び13bの一方の半部の傾斜面13bとの間、及び第2の脚鉄心13の一端の2つの傾斜面13b及び13bの他方の半部の傾斜面13bと第3の脚鉄心15の一端の傾斜面15aとの間に、それぞれ長手方向の両端に傾斜面5a及び5bと、7a,7b及び7cを有する所定形状の鋼板5及び7を順次挿入して第1のヨーク鉄心69及び第2のヨーク鉄心71を形成する。
第1乃至第3の脚鉄心11乃至15と第1及び第2のヨーク鉄心69及び71と第3及び第4のヨーク鉄心57及び59からなる変圧器鉄心9における各脚鉄心とヨーク鉄心とが突き合わされた変圧器鉄心9の各コーナ部に対してワニスを含浸させて固定する。
このようにして第1実施例の三相形変圧器を製造することができる。
図4(A)及び(B)は、前述した第1及び第3の脚鉄心11及び15を製造する脚鉄心積層装置73の一例を示す斜視図及びこの装置で脚鉄心を形成する要部構成の断面図を示したものである。この脚鉄心積層装置73は、長四角形の枠体75の作業空間77内の長手方向の両側の底部側には、1対の突き当て部材79A,79Bが相互に平行する向きで固定されている。これら突き当て部材79A,79Bの相互に対向する面には、突き当て面79a及び79bが所定の傾斜角度で設けられている。突き当て面79a及び79bの傾斜角度は、例えば台形状の鋼板1を積層する場合にはその傾斜面1a及び1bに平行状態で当接する傾斜角度となっている。これら突き当て面79a及び79bの相互間隔は、例えば鋼板1を積層する場合にはその長さより若干長い間隔となっている。すなわち、これら突き当て面79a及び79bの相互間隔は、例えば鋼板1を積層する場合には鋼板1をその長手方向にずらす寸法dだけ長く設定されている。長四角形の枠体75の作業空間77内の長手方向の中央側の底部側には、1対の支え部材81A及び81Bが相互間に所定の間隔をあけて相互に平行し且つ1対の突き当て部材79A及び79Bに平行する向きで固定されている。これら支え部材81A及び81Bは、積層する鋼板の下面、例えば台形状の鋼板1を積層する場合には台形状の上底を支えるようになっている。長四角形の枠体75の作業空間77内の幅方向の片側には、積層する鋼板の片側の面を支持する板状の支持部材83が枠体75の対向辺と平行に枠体75に固定されている。長四角形の枠体75の作業空間77内には、支持部材83と平行する向きで支持部材83に接近・離間する方向に移動可能に押さえ部材85が配置されている。押さえ部材85は、積層する鋼板の反対側の面を押さえて隙間無く積層させるためのものである。押さえ部材85の下面には、支え部材81A及び81Bに嵌まって摺動するガイド凹部85a及び85bが設けられている。押さえ部材85は、枠体75の対向辺を螺子結合で貫通するスクリュー軸87の先端に回転自在に抜け止め支持されていて、このスクリュー軸87の正転・逆転により支持部材83に接近・離間する方向に移動されるようになっている。スクリュー軸87の回転は、図示しないハンドルを用いた手動により、或いはモータ等の回転駆動源を用いた自動により行うことができる。
このような脚鉄心積層装置73で、例えば台形状の鋼板1を積層する場合には、図4(B)に示すように1層目の鋼板1はその左側の傾斜面1aを図で左側の突き当て部材79Aの突き当て面79aに当接させ、2層目の鋼板1はその右側の傾斜面1bを図で右側の突き当て部材79Bの突き当て面79bに当接させ、このように各鋼板1を交互に左側と右側の突き当て部材79A及び79Bの突き当て面79a及び79bに当接させて積層する。このようにして鋼板1の積層を支持部材83に突き当てながら順次積層して行うと、図4(B)の場合では、積層方向の端に位置する鋼板1から数えて奇数番目に位置する鋼板1の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板1の長手の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した状態で積層されることになる。
なお、鋼板の積層は、鋼板を1枚ずつ位置決めしながら脚鉄心積層装置73に供給して1枚ずつ交互にずらして積層してもよく、また鋼板を複数枚(例えば4枚)単位で位置決めしながら脚鉄心積層装置73に供給して複数枚ずつ交互にずらして積層してもよい。本実施の形態では、鋼板1を4枚単位で一括して位置決めしながら脚鉄心積層装置73に供給して鋼板を4枚単位で交互にずらして積層した。
各鋼板1の積層枚数が所定の枚数に達したら、積層されて形成された脚鉄心1を仮結束部材で仮結束して脚鉄心積層装置73から外し、積層状態で隣接する各鋼板1の層間にワニスを一部に真空含浸させて一体化する。一体化後に仮結束部材を取り外す。このようにして第1及び第3の脚鉄心11及び15を形成する。
かくして形成された第1及び第3の脚鉄心11及び15は、積層方向の端に位置する鋼板1から数えて奇数番目に位置する鋼板1の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板1の長手方向の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した構造になっている。
また、長手方向の両端に不等辺の三角形の2辺を構成する2つの傾斜面3a及び3bと3c及び3dを備えた同じ形状の鋼板3を、交互に反転させながら、長手方向にずらさずに複数枚重ねる構造の第2の脚鉄心13の形成も、前述した脚鉄心積層装置73とほぼ同様な構造のものを用いて同様にして行うことができる。ただし、この場合の脚鉄心積層装置73は、例えば左側の突き当て部材79Aの突き当て面79aが傾斜面ではなく、垂直な面となっている。このような突き当て部材79Aは、例えば図4(A)に、この突き当て面79aが垂直の突き当て部材79Aを嵌めて形成することができる。この場合、各鋼板3の長さは、等しいので、例えば1層目では図1(B)に示す鋼板3の左端を図で左側の突き当て部材79Aの垂直な突き当て面79aに当接させ、2層目の鋼板3は反転した後にその左端を図で左側の突き当て部材79Aの垂直な突き当て面79aに当接させ、このように各鋼板3を交互に反転させながら左側の突き当て部材79Aの垂直な突き当て面79aに当接させて積層することにより第2の脚鉄心13を製造することができる。この場合、右側の突き当て部材79Bは、使用しないので枠体75から外しておくことが好ましい。
なお、第2の脚鉄心13を製造するに際しては、第2の脚鉄心13の製造を専用に行う脚鉄心積層装置を用いて行うこともできる。この脚鉄心積層装置は、ほぼ図4(A)に示す脚鉄心積層装置73と同じ構造をしていて、左側と右側の突き当て部材79A及び79Bの突き当て面79a及び79bをそれぞれ垂直な構造にする。このような垂直な突き当て面79a及び79bを有する脚鉄心積層装置73によれば、各鋼板3を反転させながらその左端を突き当て部材79Aの突き当て面79aに接触させて、積層を行うことができる。
また、第2の脚鉄心13の製造を専用に行う脚鉄心積層装置の場合は、ほぼ図4(A)に示す脚鉄心積層装置73と同じ構造をしていて、左側と右側の突き当て部材79A及び79BとしてL字状のものを用いることもできる。この場合、L字状の突き当て部材79A及び79Bの立ち上がり片が突き当て面79a及び79bとなっている。
第1及び第3の脚鉄心11及び15は所定の厚みを有する台形状をなしていて、長手方向の両端にそれぞれ傾斜面11a及び11bと15a及び15bとが設けられている。第2の脚鉄心13は、長手方向の両端に不等辺の三角形の隣接する2辺を構成する2つの傾斜面13a及び13bと13c及び13dとがなす2つの山が設けられている。
図5(A)及び(B)は、第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の長手方向の一端に嵌めて装着される前述した第1乃至第3の治具35,37及び39の具体的構成の一例を示す平面図及び正面図である。これら第1乃至第3の治具35,37及び39は、第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の長手方向の一端が挿入される長四角形の各開口部17,19及び21を有する角筒状の角筒部23,25及び27と、各開口部17,19及び21と対向する位置にあって各脚鉄心11乃至15の一端の端面と当接する当接面89aと91a及び91bと93aとを備えた底部構造29,31及び33とを有する構造になっている。第1の治具35及び第3の治具39の当接面89a及び93aは、第1及び第3の脚鉄心11及び15の一端の傾斜面11a及び15aを平行に受ける傾斜面として設けられている。第2の治具37の当接面91a及び91bは、第2の脚鉄心13の一端の外向きの2つの傾斜面13b及び13bをそれぞれ平行に受ける2つの傾斜面として設けられている。
第1乃至第3の治具35,37及び39には、それぞれ角筒部23,25及び27に挿入された第1乃至第3の脚鉄心11乃至15に対して、これらを構成する鋼板の積層方向に力を加えるように構成されて第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の各一端と第1乃至第3の治具35,37及び39とを固定状態にする第1乃至第3の鉄心固定機構95,97及び99が設けられている。第1乃至第3の鉄心固定機構95,97及び99は、角筒部23,25及び27の対向する一対の壁部の間を移動可能に角筒部23,25及び27内に配置されたスライダ101,103及び105と、一端にスライダ101,103及び105が装着され且つ一対の壁部の一方に形成された螺子孔107,109及び111に螺合される螺子部113a,115a及び117aを有する駆動用螺子部材113,115及び117と、駆動用螺子部材113,115及び117の他端に設けられて駆動用螺子部材113,115及び117に回転力を付与する際に使用されるハンドルからなる操作部119,121及び123とから構成されている。
第1及び第3の治具35及び39の底部構造29及び33は、角筒部23及び27の内部に配置されて第1及び第3の脚鉄心11及び15の一端と接触する当接面89a及び93aを備えたそれぞれ1つの傾斜壁部89及び93で構成されている。第2の治具37の底部構造31は、角筒部25の内部に配置されて第2の脚鉄心13の端部に現れる2つの傾斜面13b及び13bと接触する2つの当接面91a及び91bを備えた傾斜壁部91A及び91Bで構成されている。
第1乃至第3の治具35乃至39は、角筒部23,25及び27の底部側の当接面89aと91a及び91bと93aとを備えた傾斜壁部89と91A及び91Bと93とによって第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の各一端の傾斜面11aと13b及び13bと15aとの接触によって、第1乃至第3の脚鉄心11乃至15の各一端の傾斜面11aと13b及び13bと15aを変形させたり等せずに安全に支えて第1乃至第3の脚鉄心11乃至15を垂直に立てることができる。
図6は非常に重い第1乃至第3の治具付き脚鉄心41,43及び45を垂直に起立させる前述した鉄心起こし機47の構成の一例を示した斜視図である。この鉄心起こし機47は、直交した構造の1対の平板状の回転定盤125及び127を有し、一方の回転定盤125の幅方向の両側にはそれぞれ支軸129が整列して回転定盤125に固定されている。なお、図示の手前側の支軸129に対し反対側の支軸129は図示していない。各支軸129は脚131及び133で回転自在に支持されている。各脚131及び133の高さは、回転定盤125及び127の回転に支障のない高さとなっている。脚131側の支軸129には、1対のリンクアーム135及び137のうちのリンクアーム135の一端が連結されている。リンクアーム135及び137は、その中間部が軸139で回転自在に連結されている。リンクアーム135は軸139とは反対側の端部が支軸129にこの支軸129と一体に回転するように固定されている。脚131の高さ方向の中間には、支持盤141が水平向きで支持されている。支持盤141上には、駆動モータ143とその回転出力を減速するウォーム減速機145が設置されている。ウォーム減速機145の出力軸145aには、リンクアーム137の軸139とは反対側の端部が出力軸145aと一体に回転するように固定されている。
このような鉄心起こし機47は、駆動モータ143を駆動するとウォーム減速機145を介してその出力軸145aが図で時計方向に回転すると、リンクアーム137が出力軸145aと一緒に図で時計方向に回転し、これによりリンクアーム135が支軸129を中心として該支軸129と共に反時計方向に回転し、支軸129の反時計方向の回転で回転定盤125が回転定盤127と共に反時計方向に回転し、水平状態であった回転定盤125が垂直向きになり、また垂直状態であった回転定盤127が水平向きになる。このため水平状態の回転定盤125上に水平に置いた第1の治具付き脚鉄心41は、前述したような回転定盤125及び127の回転で、水平向きの回転定盤127上に垂直に載った状態になり、第1の治具付き脚鉄心41を水平状態から垂直状態に立てることができる。第2及び第3の治具付き脚鉄心43及び45も同様にして一緒に或いは個別に鉄心起こし機47によって水平状態から垂直状態に立てることができる。
図7は第1実施例の三相形変圧器の製造方法で用いる第1の搬送用コンベア147の斜視図である。この第1の搬送用コンベア147は、コンベアフレーム149に多数のコンベアロール151,151・・・を所要の回転速度で回転駆動するように支持した構造になっている。この第1の搬送用コンベア147は、図3の(A)の工程から(C)の工程に設置されている。すなわち、この第1の搬送用コンベア147のコンベアロール151,151・・・上に木製等の支持台153を介して第1の脚鉄心11を載せて搬送する。第2及び第3の脚鉄心13及び15も同様にして順次搬送する。このような搬送の過程で第1乃至第3の脚鉄心11乃至15のそれぞれの一端に第1乃至第3の治具35乃至39を嵌め合わせる作業を行う。得られた第1乃至第3の治具付き脚鉄心41乃至45は、それぞれ支持台153を介してこの第1の搬送用コンベア147で順次鉄心起こし機47まで搬送する。
同様にして図3の(D)の工程から(E)の工程に、図7に示した第1の搬送用コンベア147と同様の構造をした第2の搬送用コンベアが設置されている。鉄心起こし機47で第1乃至第3の治具付き脚鉄心41乃至45を起立させ、起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心41乃至45を第2の搬送用コンベアの上で治具配置盤49の上に所定の間隔で設置し、第2の搬送用コンベア上でE型鉄心61の製造を行う。
このように第1の搬送用コンベア147及び第2の搬送用コンベアを用いると、脚鉄心11乃至15と治具35乃至39の嵌め合わせ作業からE形鉄心61を反転するまでの作業を短時間で行うことができる。このような第1及び第2の搬送用コンベアとしては、公知の搬送用コンベアを用いることができる。したがって、三相形変圧器を製造する際の搬送作業を公知の搬送用コンベアを用いて行うことができる。
この第1実施例では、中央の第2の脚鉄心13を、図1(B)に示すように鋼板が長手方向の両端に不等辺の三角形の2辺を構成するもので、交互に反転させながら長手方向にずらさないで積層したものを用いたが、これに限定されるものではなく、第2の脚鉄心13´を、例えば図8に示すように鋼板3´として長手方向の両端に二等辺三角形の2辺3a´及び3b´と3c´及び3d´を構成したものを用いて、図9に示すように長手方向に所定寸法だけ交互にずらしつつ積層したものを用いることもできる。図9も、前述した図2(A)〜(C)と同様に、下側の層を破線で示し、上側の層を実線で示している。また図9で、ヨーク鉄心として使用される鋼板の符号は、上側に存在する実線で示す層を主体として示し、下側に存在する破線で示す層はカッコ内に入れて表示した。ここで、図9では、脚鉄心11、13´及び15を構成する鋼板1、3´及び1の全てをその長手方向に交互にずらしているので、ヨーク鉄心57、59、69及び71を構成する各鋼板5及び7は、上側のヨーク鉄心69及び71では上面、下側のヨーク鉄心では下面で、通常は凹凸が発生するが、本例ではヨーク鉄心57、59、69及び71でこの凹凸が発生しないように且つ同じ層で隣のものと重ならないように鋼板5及び7の形状を若干変えたものを用いて嵌めている。
図10(A)(B)(C)乃至図12(A)(B)は本発明の変圧器の製造方法の第2実施例を示したもので、図10(A)は第2実施例の三相形変圧器の製造方法で用いる第2の脚鉄心の平面図、図10(B)(C)はこの第2実施例で用いるヨーク鉄心を構成する鋼板の平面図、図11は第2実施例の三相形変圧器の製造方法で作られた変圧器鉄心の平面図、図12(A)(B)は第2実施例の三相形変圧器の製造方法で用いる3つの治具の平面図及び正面図である。なお、この第2実施例の図面では、前述した第1実施例と対応する構成要素に、第1実施例で用いた符号に1000を加えた符号を用いて示している。
第2実施例の三相形変圧器の製造方法では、図10(A)に示すように、変圧器鉄心1009の第2の脚鉄心1013を構成する鋼板1003´は平行四辺形の鋼板により構成されている。また、ヨーク鉄心を構成する鋼板は、図10(B)に示す前述したと同様の等脚の台形状をした鋼板1005の他に、図10(C)に示すように不等脚で下底の一端の角度が直角になっている台形状をした鋼板1005´が用いられている。第2の脚鉄心1013は、平行四辺形の鋼板1003´とこの鋼板1003´を裏返しに反転した鋼板1003´を交互に所定枚数重ねて構成されている。このような第2の脚鉄心1013は、平行四辺形の鋼板1003´とこれを反転した鋼板1003´が、その長手方向にずらさずに重ねられている。第2の脚鉄心1013の長手方向の両端は、鋼板1003´とこれを反転した鋼板1003´の各傾斜面1003a´及び1003a´と1003b´及び1003b´とがそれぞれ交差する向きに重なっていて、鋭角三角形の2つのコーナ部がそれぞれ突出されている。第1及び第3の脚鉄心1011及び1015は、積層方向の端に位置する鋼板から数えて奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した状態で積層されている。
このような構成の第1乃至第3の脚鉄心1011乃至1015の長手方向の各一端に嵌めて装着される第1乃至第3の治具1035,1037及び1039の構造を、図12(A)及び(B)にて説明する。これら治具1035,1037及び1039のうち、第1及び第3の治具1035及び1039は、第1実施例と同様に構成されている。第2の治具1037は、図12(A)及び(B)に示すように、その角筒部1025が左右の間隔を調整できるように前後両側でそれぞれ上下2つの調節可能連結機構1155によって連結される縦割りの第1及び第2の角筒半部1025a及び1025bで構成されている。各調節可能連結機構1155は、図12(A)及び(B)に示すように、角筒部1025の正面側と裏面側とにそれぞれ設けられていて、図で右側の第1の角筒半部1025bに軸1157で回転自在に支持された連結アーム1159を有し、この連結アーム1159にはその長手方向に沿って長孔1161が設けられ、連結アーム1159を水平向きにした状態で、長孔1161に通された螺子1163を図で左側の第2の角筒半部1025aに螺子結合で固定することにより第1及び第2の角筒半部1025a及び1025bを相互に連結する構造になっている。このような構造の第2の治具1037は、第2の脚鉄心1013の幅の変更に対応して角筒部1025の幅を変えられるようになっている。これら第1及び第2の角筒半部1025a及び1025bの内部には、2つの当接面1091a及び1091bが第2の脚鉄心1013の2つの傾斜面1003a´及び1003a´を平行に受けられるようにそれぞれ別個に取り付けられている。第2の治具1037の底部構造1031は、角筒部1025の内部に配置されて第2の脚鉄心1013の端部に現れる2つの傾斜面1003a´及び1003a´と接触する2つの当接面1091a及び1091bを表面に備えた2つの傾斜壁部1091A及び1091Bを備え、これら傾斜壁部1091A及び1091Bは第1及び第2の角筒半部1025a及び1025bの内部にそれぞれ取り付けられて構成されている。
前述したようにして第1乃至第3の脚鉄心1011乃至1015を作成し、隣接する各鋼板の層間にワニスを一部に真空含浸させて一体化し、これら第1乃至第3の脚鉄心1011乃至1015の一端に第1乃至第3の治具1035乃至1039を嵌めて第1乃至第3の治具付き脚鉄心を形成する。これら第1乃至第3の治具付き脚鉄心を前述したように鉄心起こし機で起こして起立させる。起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心をこの順番で所定の間隔をあけて治具配置盤上に並べ固定する。起立した第1の治具付き脚鉄心の他端と起立した第2の治具付き脚鉄心の他端の一方の半部との間、及び起立した第2の治具付き脚鉄心の他端の他方の半部と起立した第3の治具付き脚鉄心の他端との間に、それぞれ等脚の台形状の鋼板1005または不等脚の台形状の鋼板1005´を順次挿入して第3のヨーク鉄心1057及び第4のヨーク鉄心1059を形成することによりE型をなすE型鉄心1061を構成する。このE型鉄心1061を、鉄心反転機を用いて180度反転し、治具配置盤と第1乃至第3の治具1035乃至1039を第1乃至第3の脚鉄心の一端からそれぞれ外す。しかる後、E型鉄心1061の第1乃至第3の脚鉄心1011乃至1015の一端側から図示しない第1乃至第3のコイルを絶縁材を介してそれぞれ挿入する。その後、E型鉄心1061の第1の脚鉄心1011の一端と第2の脚鉄心1013の一端の一方の半部との間、及び第2の脚鉄心1013の一端の他方の半部と第3の脚鉄心1015の一端との間に、それぞれ等脚の台形状の鋼板1005または不等脚の台形状の鋼板1005´を順次挿入して第1のヨーク鉄心1069及び第2のヨーク鉄心1071を形成する。
第1乃至第3の脚鉄心1011乃至1015と第1及び第2のヨーク鉄心1069及び1071と第3及び第4のヨーク鉄心1057及び1059からなる変圧器鉄心1009における各脚鉄心とヨーク鉄心とが突き合わされた各コーナ部に対してワニスを含浸させて固定する。
このようにして第2実施例の三相形変圧器を製造することができる。
この第2実施例では、第2の脚鉄心1013を、平行四辺形の鋼板1003´とこの鋼板1003´を裏返しに反転した鋼板1003´とを交互に複数枚重ねて構成したが、これに限定されるものではなく、台形状の鋼板とそれを反転した鋼板を複数枚重ねて構成したものを用いることもできる。この場合も、第1及び第2のヨーク鉄心1069及び1071と第3及び第4のヨーク鉄心1057及び1059は、等脚の台形状の鋼板1005または不等脚の台形状の鋼板1005´で構成することができる。特に、第2の脚鉄心1013を台形状の鋼板で構成すれば、第1及び第3の脚鉄心(変圧器の外側の脚鉄心)1011乃至1015を作成するための鋼板をそのまま、第2の脚鉄心(変圧器の内側の鉄心)1013を作成する鋼板として用いることができる。したがって、形状及び寸法が共通する1種類の鋼板だけで変圧器を構成する全ての脚鉄心を作成することができる。
図13は本発明の変圧器の製造方法の第3実施例を示したもので、この図13は第3実施例の変圧器の製造方法で作られた変圧器鉄心の平面図である。なお、この第3実施例の図面では、前述した第1実施例と対応する構成要素に、第1実施例で用いた符号に2000を加えた符号を用いて示している。
第3実施例の変圧器の製造方法は、第1の脚鉄心2011及び前述した第1、第2実施例の第3の脚鉄心に相当する第2の脚鉄心2013と、第1の脚鉄心2011の一端と第2の脚鉄心2013の一端との間に配置された第1のヨーク鉄心2069と、第1の脚鉄心2011の他端と第2の脚鉄心2013の他端との間に配置された第1、第2実施例の第3のヨーク鉄心に相当する第2のヨーク鉄心2057とが組み合わされて構成された変圧器鉄心2009の第1及び第2の脚鉄心2011及び2013にそれぞれ図示しないコイルを装着した構造になっている。このような変圧器を製造するに際しては、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状の鋼板2001を複数枚、その長手方向に交互にずらして積層することにより第1及び第2の脚鉄心2011及び2013を個別に作成する。図示しないが前述したと同様の第1及び第2の治具を用意し、第1及び第2の脚鉄心2011及び2013の一端にそれぞれ第1及び第2の治具を装着して第1及び第2の治具付き脚鉄心をそれぞれ形成する。これら第1及び第2の治具付き脚鉄心をそれぞれ鉄心起こし機を用いて、第1及び第2の治具が下側に位置するように起立させ、起立した第1及び第2の治具付き脚鉄心を所定の間隔をあけて治具配置盤上に並べてそれぞれの位置を固定する。起立した第1の治具付き脚鉄心の他端と起立した第2の治具付き脚鉄心の他端との間に、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状の鋼板2005を順次嵌めながら挿入して第2のヨーク鉄心2057を形成することによりC型鉄心2061を構成する。C型鉄心2061を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、治具配置盤と第1及び第2の治具を第1及び第2の脚鉄心2011及び2013の他端からそれぞれ外す。その後、C型鉄心2061の第1及び第2の脚鉄心2011及び2013の他端側からそれぞれコイルを絶縁材を介して挿入する。その後、C型鉄心2061の第1の脚鉄心2011の一端と第2の脚鉄心2013の一端との間に、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状の鋼板2005を順次嵌めながら挿入して第1のヨーク鉄心2069を形成する。
本発明は、前述した第1乃至第3実施例に限定されるものではなく、第1乃至第nの脚鉄心を有するn相形の変圧器を製造する方法にも同様にして適用することができる。
このn相形の変圧器は、所定の間隔をあけて順番に配置された第1乃至第nの脚鉄心(nは3以上の整数)と、隣り合う二つの脚鉄心がそれぞれ有する長手方向の一端間に配置された第1のグループのn−1個のヨーク鉄心と、隣り合う二つの脚鉄心がそれぞれ有する長手方向の他端間に配置された第2のグループのn−1個のヨーク鉄心とを備えてなる変圧器鉄心の第1乃至第nの脚鉄心にそれぞれコイルを装着した構造のものである。
このようなn相形の変圧器の製造は、前述したと同様に、次のようにして行う。まず長手方向の両端に線接触部を形成する形状を有する鋼板を複数枚積層して第1及び第nの脚鉄心を作成する。長手方向の両端に線接触部を形成する所定の形状を有する鋼板を複数枚積層して第1及び第nの脚鉄心の間に位置するn−2個の脚鉄心を作成する。
脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の端面と当接する当接面を備えた底部構造とを有するn個の治具を用意する。第1乃至第nの脚鉄心の一端にそれぞれ治具を装着した第1乃至第nの治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1乃至第nの治具が下側に位置するように起立させる。
起立した第1乃至第nの治具付き脚鉄心を所定の間隔をあけて治具配置盤上に順番に並べてそれぞれの位置を固定する。起立した第1乃至第nの治具付き脚鉄心の隣り合う2つの脚鉄心の他端の間に、隣り合う2つの脚鉄心の他端とそれぞれ当接する端部形状を有する鋼板を順次挿入して第2のグループのn−1個のヨーク鉄心を形成することにより櫛歯状の鉄心を構成する。櫛歯状の鉄心を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、治具配置盤と第1乃至第nの治具を第1乃至第nの脚鉄心の一端からそれぞれ外す。
その後、櫛歯状の鉄心の第1乃至第nの脚鉄心の一端側からそれぞれコイルを挿入する。その後、櫛歯状の鉄心に含まれる第1乃至第nの脚鉄心の隣り合う2つの脚鉄心の一端の間に、隣り合う2つの脚鉄心の一端とそれぞれ当接する端部形状を有する鋼板を順次挿入して第1のグループのn−1個のヨーク鉄心を形成する。
このような変圧器の製造方法によれば、第1乃至第nの脚鉄心の両端部の線接触部が傾斜面であっても、これらの一端の傾斜面に治具を嵌めることにより自立させることができて支障なく変圧器を製造することができる。
この場合、第1及び第nの脚鉄心は、長手方向の両端に傾斜面を有する台形状で且つ形状が等しい鋼板を複数枚積層して作成され、台形状の鋼板の上底が互いに向かい合うように、第1及び第nの脚鉄心が配置されていることが好ましい。また複数枚の台形状の鋼板は、積層方向の端に位置する鋼板から数えて奇数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板の長手方向の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した状態で積層されていることが好ましい。
n−2個の脚鉄心は、長手方向の両端に不等辺の三角形の隣接する2辺を構成する2つの傾斜面を備えた同じ形状の鋼板を交互に反転させて複数枚重ねることにより形成されて、脚鉄心の長手方向の両端に外向きの2つの傾斜面を備えたもの、或いは長手方向の両端に二等辺三角形の2辺を構成するように対向する2つの傾斜面を備えた同じ形状の鋼板を複数枚重ねることにより形成されて、脚鉄心の長手方向の両端に2つの傾斜面を備えていることが好ましい。または、n−2個の脚鉄心は、長手方向の両端に傾斜面を有する平行四辺形状の鋼板と、この鋼板の表裏を反転して得た平行四辺形状の鋼板とを交互に複数枚重ねることにより形成されて、複数枚の鋼板の積層方向に交互に傾斜方向が異なる個別傾斜面が現れるように構成されているもの、或いは台形状の鋼板とそれを反転した鋼板を交互に複数枚重ねることにより形成されて、複数枚の鋼板の積層方向に交互に傾斜方向が異なる個別傾斜面が現れるように構成されているものが好ましい。
上記各実施例では、上下各側で、隣接する脚鉄心毎に別個のヨーク鉄心で接続したが、3本以上の脚鉄心を用いる場合には、上下各側で、それぞれ1本の共通のヨーク鉄心で接続することもできる。
以下、その具体例を図2(A)〜(D)に示す3本の脚鉄心を用いた額縁形の変圧器鉄心に適用した例にて、図14を参照して説明する。なお、本例では、図2(A)〜(D)に示した例と対応する部分には、図2(A)〜(D)に用いた符号に3000を加えた符号を付けて示している。また図14では、下側の層を示す()内の符号は、鋼板の符号ではなく、鉄心の符号を示している。
本例の変圧器の製造方法では、長手方向の両端に線接触部を形成する傾斜面3001a及び3001bを有する鋼板3001を複数枚積層して第1及び第3の脚鉄心3011及び3015を作成する。このような第1及び第3の脚鉄心3011及び3015に際しては、例えば前述した図4(A)及び(B)に示す脚鉄心積層装置73を用いて積層方向の端に位置する鋼板3001から数えて奇数番目に位置する鋼板3001の長手方向の一端の端面が、偶数番目に位置する鋼板3001の長手方向の一端の端面よりも長手方向に同じ長さ突出した構造にする。
また、長手方向の両端に線接触部を形成する対向する2つの傾斜面3003a及び3003bと3003c及び3003dを有する鋼板3003とこれを反転した鋼板3003とを交互に複数枚積層して第1及び第3の脚鉄心3011及び3015の間に位置する第2の脚鉄心3013を作成する。この場合、鋼板3003とこれを反転した鋼板3003とはその長手方向にずらさないで重ねる。
また、各脚鉄心3011,3013及び3015の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、前記開口部と対向する位置にあって脚鉄心3011,3013及び3015の一端の傾斜面3011aと3013b及び3013bと3015aと当接する当接面を備えた底部構造とを有する図5(A)及び(B)に示す如き3個の治具を用意する。
第1乃至第3の脚鉄心3011,3013及び3015の一端にそれぞれ前記3個の治具を装着して第1乃至第3の治具付き脚鉄心を形成する。これら第1乃至第3の治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1乃至第3の治具が下側に位置するように起立させる。
起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心を、図示しないが所定の間隔をあけて順番に前述した治具配置盤上に並べてそれぞれの位置を固定する。
起立した第1乃至第3の治具付き脚鉄心の3個の他端とそれぞれ当接する形状を有するほぼ台形状の鋼板3005を順次挿入して、第1、第2実施例の第3のヨーク鉄心に相当する第2の共通のヨーク鉄心3057を形成することによりE型鉄心3061を構成する。鋼板3005は、その長手方向の両端が台形状に傾斜した傾斜面3005a及び3005bとなっており、台形状の上底の長手方向のほぼ中央には不等辺の三角形の隣接する2辺を構成するようなV字状に2つの傾斜面3005c及び3005dが形成されている。このような鋼板3005を、第1乃至第3の治具付き脚鉄心の3個の他端に挿入し、傾斜面3005a及び3005bを第1及び第3の治具付き脚鉄心の他端の対応する鋼板3001の傾斜面3001b及び3001bに面接触させ、V字状の2つの傾斜面3005c及び3005dを第2の治具付き脚鉄心3013を構成する鋼板3003の他端の山形をなす2つの傾斜面3013d及び3013dに面接触させ、次にこの鋼板3005を反転した鋼板3005を次の層に同様にして嵌め、このような鋼板3005とこれを反転した鋼板3005との積層により第2の共通のヨーク鉄心3057を形成する。
なお上記例では、鋼板3005の台形状の上底の長手方向のほぼ中央には不等辺の三角形の隣接する2辺を構成するようなV字状に2つの傾斜面3005c及び3005dを形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、台形状の上底の長手方向のほぼ中央には等辺の三角形の隣接する2辺を構成するようなV字状に2つの傾斜面を形成してもよい。等辺の三角形によれば、反転せずともずらしながら嵌め合わせていくことができる。
E型鉄心3061を前述した鉄心反転機を用いて180度反転した後に、治具配置盤と第1乃至第3の治具とを第1乃至第3の脚鉄心3011,3013及び3015の一端からそれぞれ外す。
その後、E型鉄心3061の第1乃至第3の脚鉄心3011,3013及び3015の一端側からそれぞれ前述したようにコイルを挿入する。
次に、E型鉄心3061に含まれる第1乃至第3の脚鉄心3011,3013及び3015の3個の一端とそれぞれ当接する形状を有する前述した構造の鋼板3005とこれを反転した鋼板3005とを順次挿入して第1の共通のヨーク鉄心3069を形成する。
かかる共通のヨーク鉄心を用いた変圧器の製造方法は、n本の脚鉄心を用いた額縁形の変圧器鉄心による変圧器の製造方法に適用することができる。以下、その工程について説明する。
長手方向の両端に線接触部を形成する傾斜面を有する鋼板を複数枚積層して第1及び第nの脚鉄心を作成する。
長手方向の両端に線接触部を形成する傾斜面を有する鋼板を複数枚積層して第1及び第nの脚鉄心の間に位置するn−2個の脚鉄心を作成する。
脚鉄心の長手方向の一端が挿入される開口部を有する角筒状の角筒部と、該開口部と対向する位置にあって脚鉄心の一端の傾斜面と当接する当接面を備えた底部構造とを有するn個の治具を用意する。
第1乃至第nの脚鉄心の一端にそれぞれ治具を装着した第1乃至第nの治具付き脚鉄心を、それぞれ鉄心起こし機を用いて、第1乃至第nの治具が下側に位置するように起立させる。
起立した第1乃至第nの治具付き脚鉄心を所定の間隔をあけて順番に並べてそれぞれの位置を固定する。
起立した第1乃至第nの治具付き脚鉄心のn個の他端とそれぞれ当接する形状を有する鋼板を順次挿入して第2の共通のヨーク鉄心を形成することにより櫛歯状の鉄心を構成する。
櫛歯状の鉄心を鉄心反転機を用いて180度反転した後に、第1乃至第nの治具を第1乃至第nの脚鉄心の一端からそれぞれ外す。
その後、櫛歯状の鉄心の第1乃至第nの脚鉄心の一端側からそれぞれコイルを挿入する。
次いで、櫛歯状の鉄心に含まれる第1乃至第nの脚鉄心のn個の一端とそれぞれ当接する形状を有する鋼板を順次挿入して第1の共通のヨーク鉄心を形成する。
なお、本発明においては、奇数番目の鋼板に対して偶数番目の鋼板を長手方向にずらして形成した脚鉄心は、そのずれが崩れないように仮固定手段で仮固定した状態にして変圧器鉄心の組立を行い、しかる後にワニスの真空含浸により変圧器鉄心の積層鋼板を一体に固定することもできる。