以下、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
先ず、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第1の実施の形態について図1〜図6に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用する車両用内燃機関の冷却水循環系を示す図である。図1において、内燃機関1は、ガソリン又は軽油を燃料とする水冷式の内燃機関であり、シリンダヘッド1aとシリンダブロック1bとを備えている。
前記内燃機関1には、駆動電力が印加されたときに該内燃機関1の図示しないクランクシャフトを回転させるスタータモータ100が取り付けられている。
前記したシリンダヘッド1aとシリンダブロック1bには、熱媒体としての冷却水を循環させるためのヘッド側冷却水路2aとブロック側冷却水路2bとがそれぞれ形成され、それらヘッド側冷却水路2aとブロック側冷却水路2bとが相互に連通している。前記ヘッド側冷却水路2aは、本発明に係る熱媒体流通路に相当するものである。
前記ヘッド側冷却水路2aには、第1冷却水路4が接続され、その第1冷却水路4は、ラジエター5の冷却水流入口に接続されている。ラジエター5の冷却水流出口は、第2冷却水路6を介してサーモスタットバルブ7に接続されている。
前記ラジエター5は、冷却水と外気との間で熱交換を行う熱交換器である。このラジエター5には、該ラジエター5に外気を圧送する送風機としてのラジエターファン50が併設されている。ラジエターファン50は、ファンモータ50aによって駆動されるようになっている。上記したラジエター5及びラジエターファン50は、本発明に係る熱媒体冷却機構に相当するものである。
前記サーモスタットバルブ7には、前記した第2冷却水路6に加えて、第3冷却水路8と第4冷却水路9とが接続されている。前記第3冷却水路8は、図示しないクランクシャフトの回転トルクによって駆動される機械式ウォーターポンプ10の吸込口に接続され、その機械式ウォーターポンプ10の吐出口は前記ブロック側冷却水路2bに接続されている。一方、前記第4冷却水路9は、前記ヘッド側冷却水路2aに連通している。
前記サーモスタットバルブ7は、流通する冷却水の温度に応じて、第2冷却水路6と第4冷却水路9との何れか一方を閉塞する流路切換弁である。具体的には、サーモスタットバルブ7は、該サーモスタットバルブ7を流れる冷却水の温度が所定の開弁温度:T1以
下であるときは、第2冷却水路6を遮断すると同時に第4冷却水路9を開放して、第3冷却水路8と第4冷却水路9とを導通させる。また、サーモスタットバルブ7を流れる冷却水の温度が前記開弁温度:T1より高いときは、サーモスタットバルブ7は、第2冷却水
路6を開放すると同時に第4冷却水路9を遮断して第3冷却水路8と第2冷却水路6とを導通させる。
次に、ヘッド側冷却水路2aには、ヒータホース11の基端が接続され、そのヒータホース11の終端は、前記したサーモスタットバルブ7と機械式ウォーターポンプ10とを接続する第3冷却水路8の途中に接続されている。
前記ヒータホース11の途中には、冷却水と車室内暖房用空気との間で熱交換を行うヒータコア12が配置されている。このヒータコア12には、該ヒータコア12において冷却水との間で熱交換が行われた暖房用空気を車室内へ圧送するヒータブロア120が併設されている。このヒータブロア120は、車室内に設けられたヒータスイッチ21がオン状態にあるときに作動するようになっている。
前記ヒータホース11における該ヒータホース11の基端とヒータコア12との間に位置する部位には、蓄熱容器13が配置されている。この蓄熱容器13は、冷却水を蓄熱状態で貯蔵する容器であり、ヒータホース11から該蓄熱容器15内へ冷却水を流入させるための冷却水入口13cと、該蓄熱容器15内からヒータホース11へ冷却水を流出させるための冷却水出口13dとを備えている。
前記冷却水入口13cと前記冷却水出口13dとには、それぞれ冷却水の逆流を防止する一方向弁(ワンウェイバルブ)13a、13bが設けられている。
このように構成された蓄熱容器13は、冷却水入口13cから新規の冷却水が流入すると、その代わりに該蓄熱容器13内に貯蔵されていた高温の冷却水(以下、蓄熱温水と称する)を冷却水出口13dから排出する。
尚、蓄熱容器13は、該蓄熱容器13の冷却水入口13cがヒータホース11の終端側に位置し、且つ、冷却水出口13dがヒータホース11の基端側に位置するようにヒータホース11と接続されるものとする。
次に、前記ヒータホース11における蓄熱容器13とヒータコア12との間に位置する部位には、電動ウォーターポンプ14が配置されている。この電動ウォーターポンプ14は、電気モータによって駆動されるポンプであり、該電動ウォーターポンプ14の吸込口から吸い込んだ冷却水を吐出口から所定の圧力で吐出するよう構成されている。
尚、電動ウォーターポンプ14は、該電動ウォーターポンプ14の吸込口がヒータホース11の終端側に位置し、且つ、吐出口がヒータホース11の基端側に位置するようヒータホース11と接続されるものとする。
また、ヒータホース11における該ヒータホース11の基端と蓄熱容器13との間に位置する部位には、第1バイパス通路15の基端が接続されている。この第1バイパス通路15の終端は、ヒータホース11における電動ウォーターポンプ14とヒータコア12との間に位置する部位に接続されている。
更に、ヒータホース11における該ヒータホース11の基端と前記第1バイパス通路15の基端との間に位置する部位には、第2バイパス通路16の基端が接続されている。この第2バイパス通路16の終端は、ヒータホース11における電動ウォーターポンプ14と前記第1バイパス通路15の終端との間に位置する部位に接続されている。
以下では、ヒータホース11において、該ヒータホース11の基端と第2バイパス通路16の基端との間に位置する部位を第1ヒータホース11aと称し、第2バイパス通路16の基端と第1バイパス通路15の基端との間に位置する部位を第2ヒータホース11bと称し、第1バイパス通路15の基端と蓄熱容器13との間に位置する部位を第3ヒータホース11cと称し、蓄熱容器13と電動ウォーターポンプ14との間に位置する部位を第4ヒータホース11dと称し、電動ウォーターポンプ14と第2バイパス通路16の終端との間に位置する部位を第5ヒータホース11eと称し、第2バイパス通路16の終端と第1バイパス通路15の終端との間に位置する部位を第6ヒータホース11fと称し、第1バイパス通路15の終端とヒータコア12との間に位置する部位を第7ヒータホース11gと称し、更にヒータコア12と該ヒータホース11の終端との間に位置する部位を第8ヒータホース11hと称するものとする。
前記した第6ヒータホース11fと第7ヒータホース11gと第1バイパス通路15との接続部には、第1の流路切換弁17が設けられている。この第1の流路切換弁17は、前記した3つの通路の導通と、前記3つの通路の何れか1つの遮断とを選択に切り換えるバルブである。第1の流路切換弁17は、例えば、図示しないステップモータ等からなるアクチュエータによって駆動されるようになっている。
前記した第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bと第2バイパス通路16との接続部には、第2の流路切換弁18が設けられている。この第2の流路切換弁18は、前記した3つの通路の導通と、前記3つの通路の何れか1つの遮断とを選択に切り換えるバルブである。第1の流路切換弁17は、例えば、図示しないステップモータ等からなるアクチュエータによって駆動されるようになっている。
前記した第1冷却水路4における内燃機関1の近傍には、該第1冷却水路4内を流れる冷却水の温度に対応した電気信号を出力する水温センサ19が取り付けられている。
このように構成された内燃機関1の冷却系には、該冷却系を制御するための電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)20が併設されている。このECU20
は、冷却水循環系を専用に制御する電子制御ユニットであってもよく、あるいは冷却水循環系の制御と内燃機関1の制御とを兼任する電子制御ユニットであってもよい。
前記ECU20には、前述した水温センサ19に加え、車室内に取り付けられたヒータスイッチ21、イグニッションスイッチ22、及びスタータスイッチ23が電気的に接続されるとともに、電動ウォーターポンプ14、第1の流路切換弁17、第2の流路切換弁18、ファンモータ50a、スタータモータ100、及びヒータブロア120が電気的に接続されている。
ECU20は、内燃機関1の運転状態や各種センサの出力信号値等をパラメータとして
、電動ウォーターポンプ14、第1の流路切換弁17、第2の流路切換弁18、ファンモータ50a、スタータモータ100、及びヒータブロア120を制御する。
以下、この実施の形態における蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について説明する。先ず、内燃機関1の始動に先駆けて該内燃機関1を予熱する場合について説明する。ここでは、蓄熱容器13内に予め高温の冷却水が貯蔵されているものとする。
ECU20は、内燃機関1のクランキングが開始される前、例えば、イグニッションスイッチ22がオフからオンへ切り換えられたときに、第1バイパス通路15を遮断し且つ第6ヒータホース11fと第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、第2バイパス通路16を遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2ヒータホース11bを導通させるべく第2の流路切換弁18を制御し、更に電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14へ駆動電力を供給する。
この場合、機械式ウォーターポンプ10が作動せずに電動ウォーターポンプ14のみが作動するため、図2に示すように、電動ウォーターポンプ14→第4ヒータホース11d→蓄熱容器13→第3ヒータホース11c→第2ヒータホース11b→第2の流路切換弁18→第1ヒータホース11a→ヘッド側冷却水路2a→ブロック側冷却水路2b→機械式ウォーターポンプ10→第3冷却水路8→第8ヒータホース11h→ヒータコア12→第7ヒータホース11g→第1の流路切換弁17→第6ヒータホース11f→第5ヒータホース11e→電動ウォーターポンプ14の順に冷却水が流れる循環回路が成立する。
上記したような循環回路が成立すると、電動ウォーターポンプ14から吐出された冷却水が第4ヒータホース11dを介して蓄熱容器13に流入し、それと入れ代わりに蓄熱容器13内に貯蔵されていた蓄熱温水が該蓄熱容器13から排出される。蓄熱容器13から排出された蓄熱温水は、第3ヒータホース11c、第2ヒータホース11b、第2の流路切換弁18、及び第1ヒータホース11aを経由してヘッド側冷却水路2aに流入し、次いでブロック側冷却水路2bに流入することになる。この蓄熱容器13から第3ヒータホース11c、第2ヒータホース11b、第2の流路切換弁18、及び第1ヒータホース11aを介してヘッド側冷却水路2aに至る経路は、本発明に係る第1の熱媒体通路に相当する。
蓄熱容器13からの蓄熱温水が内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに流入すると、それと入れ代わりにヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bに元々滞留していた低温の冷却水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bから第1冷却水路4へ流出する。
この結果、内燃機関1では、蓄熱温水の熱がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bの壁面に伝達される。特に上記した循環回路では蓄熱温水がヘッド側冷却水路2aに流入した後にブロック側冷却水路2bに流入するため、シリンダヘッド1aが優先的に予熱されることになる。これによりシリンダヘッド1aの図示しない吸気ポートの壁面温度及び吸気温度が上昇するため、内燃機関1の始動時及び始動後において、燃料の気化が促進されるとともに混合気の温度が上昇し、以て壁面付着燃料量の減少、燃焼の安定化、始動性の向上、及び排気エミッションの向上を図ることが可能となる。
更に、上記した循環回路では、蓄熱容器13と内燃機関1のヘッド側冷却水路2aとがヒータコア12等を介さずに直接的に連通するため、蓄熱容器13からヘッド側冷却水路2aに至る経路における蓄熱温水の不要な放熱が抑制される。この結果、蓄熱容器13に蓄えられていた熱が効率的に内燃機関1へ伝達されることになる。
従って、上記した循環回路によれば、少ない熱量であっても内燃機関1を十分に予熱することが可能となり、以て始動性の向上、燃焼の安定化、及び暖機運転時間の短縮等を図ることが可能となる。
次に、スタータスイッチ23がオフからオンへ切り換えられると、ECU20は、電動ウォーターポンプ14に対する駆動電力の供給を停止した後に、スタータモータ100や図示しない燃料噴射弁等に駆動電力を印加して内燃機関1のクランキングを開始し、以て内燃機関1を始動させる。
内燃機関1のクランキングが開始されると、クランクシャフトの回転トルクによって機械式ウォーターポンプ10が駆動される。これに対応してECU20は、第7ヒータホース11gを遮断すべく第1の流路切換弁17を制御し、およびまたは第1ヒータホース11aを遮断すべく第2の流路切換弁18を制御するとともに、電動ウォーターポンプ14を停止状態とする。
その際、冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:T1以下であると、サー
モスタットバルブ7が第2冷却水路6を遮断すると同時に第4冷却水路9を開放するため、図3に示すように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第4冷却水路9→サーモスタットバルブ7→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順で冷却水が流れる循環回路が成立する。
この場合、内燃機関1から流出した比較的低温の冷却水がラジエター5を迂回して流れることになるため、冷却水がラジエター5によって必要以上に冷却されることがない。
この結果、内燃機関1が冷却水によって不要に冷却されることがなく、内燃機関1の暖機が妨げられることがない。
その後、冷却水の温度がサーモスタットバルブ7の開弁温度:T1より高くなると、サ
ーモスタットバルブ7が第2冷却水路6を開放すると同時に第4冷却水路9を遮断するため、図4に示すように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水路4→ラジエター5→第2冷却水路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順で冷却水が流れる循環回路が成立する。
この場合、内燃機関1から流出した比較的高温の冷却水がラジエター5を流通することになるため、冷却水の熱がラジエター5によって放熱される。この結果、内燃機関1には、ラジエター5で放熱した後の比較的低温の冷却水が流入するため、その冷却水によって内燃機関1が冷却され、以て内燃機関1の過熱が防止される。
次に、内燃機関1が運転状態にあるときに、ヒータスイッチ21がオフからオンへ切り換えられると、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第1バイパス通路15を遮断し且つ第6ヒータホース11fと第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御し、更にヒータブロア120を作動させるべく該ヒータブロア120に駆動電力を供給する。
この場合、電動ウォーターポンプ14を作動せずに機械式ウォーターポンプ10のみが作動するため、図5に示すように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水路4→ラジエター5→第2冷却水路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順で冷却水が流れる第
1の循環回路が成立すると同時に、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1ヒータホース11a→第2の流路切換弁18→第2バイパス通路16→第6ヒータホース11f→第1の流路切換弁17→第7ヒータホース11g→ヒータコア12→第8ヒータホース11h→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順で冷却水が流れる第2の循環回路が成立する。
上記したように第2の循環回路が成立すると、内燃機関1から流出した高温の冷却水は、第1ヒータホース11a、第2の流路切換弁18、第2バイパス通路16、第6ヒータホース11f、第1の流路切換弁17、及び第7ヒータホース11gを経由してヒータコア12に流入することになるため、ヒータコア12において冷却水と暖房用空気との間で熱交換が行われる。つまり、ヒータコア12において冷却水の熱が暖房用空気へ伝達され、暖房用空気が暖められる。ヒータコア12において暖められた暖房用空気は、ヒータブロア120によって車室内へ圧送される。
その際、内燃機関1から流出した高温の冷却水が蓄熱容器13等を介さずに直接的にヒータコア12へ到達することができるため、内燃機関1からヒータコア12に至る経路における冷却水の不要な放熱が抑制されることになる。この結果、内燃機関1から冷却水へ伝達された熱が効率的に暖房用空気へ伝達されることになる。
次に、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する方法について述べる。蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する方法としては、内燃機関1が運転状態にあるときに貯蔵する方法と、内燃機関1の運転停止直後に貯蔵する方法とが考えられる。
先ず、内燃機関1が運転状態にある時に高温の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵する場合には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御する。
この場合、電動ウォーターポンプ14が作動せずに機械式ウォーターポンプ10のみが作動するため、図6に示すように、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1冷却水路4→ラジエター5→第2冷却水路6→サーモスタットバルブ7→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順で冷却水が流れる第1の循環回路が成立すると同時に、機械式ウォーターポンプ10→ブロック側冷却水路2b→ヘッド側冷却水路2a→第1ヒータホース11a→第2の流路切換弁18→第2バイパス通路16→第5ヒータホース11e→電動ウォーターポンプ14→第4ヒータホース11d→蓄熱容器13→第3ヒータホース11c→第1バイパス通路15→第1の流路切換弁17→第7ヒータホース11g→ヒータコア12→第8ヒータホース11h→第3冷却水路8→機械式ウォーターポンプ10の順で冷却水が流れる第3の循環回路が成立する。
上記したような第3の循環回路が成立すると、冷却水がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bを通過する際に、シリンダヘッド1a及びシリンダブロック1bの熱がヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bの壁面を介して冷却水に伝達されるため、ヘッド側冷却水路2aから流出する冷却水は多量の熱を持つ高温な冷却水となる。
ヘッド側冷却水路2aから流出した高温な冷却水は、第1ヒータホース11a、第2の流路切換弁18、第2バイパス通路16、第5ヒータホース11e、電動ウォーターポンプ14、及び第4ヒータホース11dを介して蓄熱容器13に流入することになる。このヘッド側冷却水路2aから第1ヒータホース11a、第2の流路切換弁18、第2バイパ
ス通路16、第5ヒータホース11e、電動ウォーターポンプ14、及び第4ヒータホース11dを介して蓄熱容器13に至る経路は、本発明に係る第2の熱媒体通路に相当する。
ヘッド側冷却水路2aから流出した高温な冷却水が蓄熱容器13に流入すると、それと入れ代わりに蓄熱容器13内に元々貯蔵されていた冷却水が該蓄熱容器13から排出される。内燃機関1からの高温な冷却水が蓄熱容器13に流入し続けると、蓄熱容器13内に元々貯蔵されていた冷却水の全てが該蓄熱容器13から排出され、その結果、蓄熱容器13には、高温な冷却水のみが貯蔵されることになる。
ここで、上記した第3の循環回路では、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水は、ヒータコア12等を介さずに直接的に蓄熱容器13に到達することができるため、ヘッド側冷却水路2aから蓄熱容器13に至る経路において冷却水の不要な放熱が抑制され、内燃機関1から冷却水に伝達された熱が効率的に蓄熱容器13に蓄えられるようになる。
従って、上記した第3の循環回路によれば、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水に含まれる熱を不要に損失することなく蓄熱容器13に蓄えることができるため、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水に含まれる熱量が少ない場合であっても十分な熱量を蓄熱容器13に蓄えることが可能となる。
尚、上記したような貯蔵処理を終了するタイミングとしては、蓄熱容器13内の冷却水が全て入れ替わった時期が好ましく、そのような時期を判定する方法としては、蓄熱容器13内の冷却水が全て入れ替わるまでに要する時間(以下、冷却水入替時間と称する)を予め実験的に求めておき、貯蔵処理が開始された時点からの経過時間が上記の冷却水入替時間に達した時点で、蓄熱容器13内の冷却水が全て入れ替わったと判定する方法を例示することができる。
その際、冷却水入替時間は、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水が蓄熱容器13に到達するまでに要する時間と、機械式ウォーターポンプ10の単位時間当たりの吐出量とを考慮して決定されることが好ましい。但し、機械式ウォーターポンプ10の単位時間当たりの吐出量は、機関回転数に応じて変化するため、機関回転数と冷却水入替時間との関係を予めマップ化しておくようにしてもよい。
一方、冷却水入替時間は、内燃機関1を循環する冷却水の温度、蓄熱容器13内の冷却水の温度、外気温度などをパラメータとして決定されるようにしてもよい。例えば、内燃機関1を循環する冷却水の温度が高く、蓄熱容器13内の冷却水の温度が高く、更に外気温度が高くなるほど冷却水入替時間を短くするようにしてもよく、あるいは内燃機関1を循環する冷却水の温度と蓄熱容器13内の冷却水の温度との差が小さくなるほど(且つ蓄熱容器13内の冷却水の温度が高くなるほど)冷却水入替時間を短くするようにしてもよい。
次に、内燃機関1の運転停止直後に高温の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵する場合には、機械式ウォーターポンプ10が停止状態となるため、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を作動させるべく該電動ウォーターポンプ14に駆動電力を供給するとともに、前述した図6の説明で述べた第3の循環回路と同様の循環回路を成立させればよい。
尚、内燃機関1の運転停止直後に高温の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵する方法としては、前述した図2の説明で述べた循環回路と同様の循環回路を成立させる方法も考えられるが、そのような循環回路では、内燃機関1のブロック側冷却水路2bが流出した冷却水がヒータコア12を経由した後に蓄熱容器13に流入することになるため、ヒータコア12
において冷却水の熱が不要に放熱されてしまい効率的な蓄熱を行うことが困難である。従って、冷却水が持つ熱を効率的に蓄熱容器13に蓄えるためには、前述した図6の説明で述べた方法が最適である。
以上述べたように本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関では、内燃機関1を予熱する場合及び蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、内燃機関1のヘッド側冷却水路2aと蓄熱容器13とを直接的に連通させることができるため、冷却水の不要な熱損失を抑制しつつ効率的な予熱と蓄熱とを実現することが可能となる。
従って、本実施の形態にかかる蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関1から流出した冷却水に含まれる熱量が少ない場合であっても十分な量の熱を蓄熱容器13に蓄えることが可能になるとともに、蓄熱容器13内に蓄えられている熱量が少ない場合であっても内燃機関1を効果的に予熱することが可能となる。
<第2の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第2の実施の形態について図7〜図1に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
本実施の形態と前述した第1の実施の形態との相違点は、蓄熱容器13に冷却水の熱を蓄える場合に、内燃機関1を循環する冷却水が蓄熱に適した温度(以下、蓄熱適応温度と称する)より高くなるまでラジエターファン50の作動を禁止する点にある。
内燃機関1の始動時及び始動後における排気エミッションの量を効果的に低下させるには、予熱により吸気ポートの壁面を十分に昇温させる必要がある。例えば、図7に示すように、吸気ポートの壁面温度(吸気ポート壁温)が低くなるほど排気エミッションの量が増加することになるが、吸気ポート壁温が所定温度:Tより高くなると排気エミッションの量が所望の目標エミッションレベル以下まで低下する。
従って、内燃機関1の始動時及び始動後における排気エミッションの量を目標エミッションレベル以下に低下させる場合には、吸気ポート壁温が所定温度:Tより高くなるような予熱を行う必要がある。
ここで、蓄熱容器13に冷却水が貯蔵された時点からの経過時間(放置時間)と蓄熱容器13内の冷却水温度との関係を図8に示す。図8中に示すエミッション保証温度は、吸気ポート壁温を所定温度:Tより高くするために必要となる蓄熱温水の最低温度であり、言い換えれば、前述した図7の説明で述べた目標エミッションレベルを達成するために必要となる蓄熱温水の最低温度である。
図8に示すように、蓄熱容器13に貯蔵された冷却水の温度は、放置時間が長くなるにつれて徐々に低下していくことになるが、その際の温度低下速度が略一定となるため、蓄熱容器13に冷却水が貯蔵された時点から該冷却水の温度がエミッション保証温度以下に低下するまでの時間(以下、エミッション保証時間と称する)は、貯蔵時における冷却水の温度が高くなるほど長くなる。
従って、貯蔵時における冷却水の温度が高くなるほど、内燃機関1が長期間運転停止された後に始動される場合であっても排気エミッションを目標エミッションレベル以下に抑え易くなる。
上記したような実情を考慮すると、内燃機関1の始動時及び始動後における排気エミッ
ションの量を目標エミッションレベル以下とするためには、蓄熱容器13に貯蔵すべき冷却水の温度が高いほど好ましいと言える。
ところで、一般の水冷式内燃機関では、冷却水の温度が予め設定されたファン作動温度に達した時点でラジエターファン50を作動させることにより、ラジエター5における冷却水の放熱性を高め、以て内燃機関を適温に保つ制御が行われている。
その際、通常のファン作動温度は前述した蓄熱適応温度より低く設定されるため、内燃機関1が連続して高負荷運転された場合や外気温度が非常に高い場合等の特殊な場合を除き、冷却水の温度が蓄熱適応温度まで上昇する機会は少ないと言える。
冷却水の温度が蓄熱適応温度まで上昇する機会が少なくなると、蓄熱容器13に蓄熱適応温度以上の冷却水を貯蔵可能な機会も少なくなる。特に、内燃機関1の運転が短時間で停止される場合には、内燃機関1の運転期間中に冷却水が蓄熱適応温度まで昇温せず、蓄熱容器13に十分な熱を蓄えることができなくなる可能性が高い。
その結果、内燃機関1の次回の始動時には、吸気ポート壁温が所定温度:Tに達するような予熱を実現することができなくなり、排気エミッションが目標エミッションレベルを上回ってしまう虞がある。
そこで、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関では、蓄熱容器13に冷却水の熱を蓄える場合は、内燃機関1を循環する冷却水の温度が蓄熱適応温度より高くなるまでラジエターファン50の作動を禁止することにより、冷却水の温度を短期間で強制的に蓄熱適応温度まで昇温させるようにした。
具体的には、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がない場合には、水温センサ19の出力信号値が予め設定された通常ファン作動温度に達した時点でラジエターファン50を動作させるのに対し、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がある場合には、水温センサ19の出力信号値が蓄熱適応温度以上となり、且つ蓄熱適応温度以上となった冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されるまではラジエターファン50の作動を禁止する。
但し、ラジエターファン50の作動禁止により内燃機関1を循環する冷却水の温度が過剰に上昇すると内燃機関1の過熱を招く虞があるため、ラジエターファン50の作動を禁止する場合の冷却水温度の上限値(以下、ファン作動禁止上限温度と称する)を設定しておき、水温センサ19の出力信号値がファン作動禁止上限温度に達した場合には、ラジエターファン50の作動禁止を解除することが望ましい。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図9に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS901において、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている故障判定フラグ記憶領域へアクセスし、その故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
故障判定フラグ記憶領域は、別途の故障判定制御により、蓄熱容器13、電動ウォーターポンプ14、第1の流路切換弁17、及び第2の流路切換弁18等からなる蓄熱システ
ムが故障していると判定された場合に“1”が記憶され、前記の蓄熱システムが正常であると判定された場合に“0”が記憶される領域である。
前記S901において前記故障判定フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がないとみなし、S910へ進む。
S910では、ECU20は、通常のラジエターファン制御を実行する。すなわち、水温センサ19の出力信号(冷却水温度):THWが通常ファン作動温度以上となったときに、ラジエターファン50を一定時間作動させるべくファンモータ50aに駆動電力を印加する。
一方、前記S901において前記故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、S902へ進み、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されているか否かを判別する。
前記した蓄熱完了フラグ記憶領域は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が終了した時点で“1”がセットされ、内燃機関1の始動時に“0”がリセットされる記憶領域である。
前記S902において蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が既に完了しているとみなし、S910へ進む。S910では、ECU20は、通常のラジエターファン制御を実行する。
一方、前記S902において蓄熱完了フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が未だに完了していないとみなし、S903へ進む。
S903では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(冷却水温度):THWを読み込む。
S904では、ECU20は、前記S903で読み込まれた冷却水温度:THWがファン作動禁止上限温度以上であるか否かを判別する。
前記S904において前記冷却水温度:THWがファン作動禁止上限温度以上であると判定された場合は、ECU20は、S905へ進み、内燃機関1の過熱を防止すべくラジエターファン50を作動させる。
続いて、ECU20は、S906ヘ進み、蓄熱処理を実行する。具体的には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した高温の冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
この場合、ファン作動禁止上限温度近傍の極めて高温な冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになる。
ECU20は、上記したような蓄熱処理を実行し終えると、S907へ進み、前述した蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
また、前述したS904において前記冷却水温度:THWがファン作動禁止上限温度未満であると判定された場合は、ECU20は、S908へ進み、ラジエターファン50の作動を禁止する。
続いて、ECU20は、S909へ進み、前記S903で読み込まれた冷却水温度:THWが蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S909において前記冷却水温度:THWが蓄熱適応温度以上であると判定された場合は、ECU20は、S906へ進み、前述したような蓄熱処理を実行する。この場合、蓄熱適応温度以上の極めて高温の冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになる。
前記S906の処理を実行し終えたECU20は、S907へ進み、蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
このようにECU20が蓄熱制御ルーチンを実行することにより、本発明に係る冷却水禁止手段が実現され、内燃機関1が連続して高負荷運転される場合や外気温度が非常に高い場合等の特殊な場合以外においても通常ファン作動温度より高い温度の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関1が長期間運転停止された後に始動された場合であっても、予熱により吸気ポート壁温を所定温度:Tまで高めることが可能となり、以て始動時及び始動後の排気エミッションを目標エミッションレベル以下に抑えることが可能となる。
尚、本実施の形態における蓄熱制御ルーチンは、内燃機関1の始動完了をトリガにして実行されるようにすることが好ましい。これは、内燃機関1の始動時から冷却水温度が蓄熱適応温度以上となるまでラジエターファン50の作動が禁止されると、内燃機関1を循環する冷却水の温度は、図10に示すように、通常のファン作動温度でラジエターファン50が作動される場合に比して、始動後の短期間に蓄熱適応温度まで上昇することになるからである。
<第3の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第3の実施の形態について図11〜図12に基づいて説明する。ここでは、前述した第2の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
図11は、本発明を適用する車両用内燃機関の冷却水循環系を示す図である。本実施の形態と前述した第2の実施の形態との相違点は、前述した第2の実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合にラジエターファン50の作動を禁止することにより冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高めるのに対し、本実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合にラジエター5を流通する冷却水の流量を減少させることにより冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高める点にある。
図11に示すように、本実施の形態における冷却水循環系では、ヘッド側冷却水路2aとラジエター5とを接続する第1冷却水路4の途中に、該第1冷却水路4を流れる冷却水
の流量を絞る流量調整弁24が設けられている。
前記流量調整弁24は、ステップモータ等からなるアクチュエータによって駆動され、そのアクチュエータはECU20によって制御されるようになっている。
このように構成された冷却水循環系では、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がない場合には、ECU20が前記流量調整弁24の開度を全開位置に制御することにより、内燃機関1のヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水をラジエター5に流通させ、以てヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bを循環する冷却水の温度を適温に保つ。
これに対し、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がある場合には、ECU20が前記流量調整弁24の開度を絞ることにより、単位時間あたりにラジエター5を流通する冷却水の流量を減少させる。
この場合、ラジエター5において冷却水から単位時間あたりに放熱される熱量が減少するため、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bを循環する冷却水の単位時間あたりの温度低下速度が低下する。
従って、上記したように流量調整弁24の開度が絞られると、内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bを循環する冷却水の温度が低下し難くなると同時に、内燃機関1が発生する熱によって冷却水の温度が上昇し易くなる。この結果、内燃機関1のヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bを循環する冷却水が速やかに蓄熱適応温度まで上昇するようになる。
尚、ラジエター5を流通する冷却水の流量を減少させることにより内燃機関1を循環する冷却水の温度が過剰に上昇すると内燃機関1の過熱を招く虞があるため、ラジエター5を流通する冷却水の流量を絞る場合の冷却水温度の上限値(以下、絞り制御上限温度と称する)を設定しておき、水温センサ19の出力信号値が前記の絞り制御上限温度に達した場合には、流量調整弁24の開度を全開位置に戻すことが望ましい。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図12に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS1201において、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている故障判定フラグ記憶領域へアクセスし、その故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S1201において前記故障判定フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がないとみなし、S1210へ進む。
S1210では、ECU20は、流量調整弁24の開度を全開位置に制御し、ラジエター5を流通する冷却水の流量を通常の流量とする。
一方、前記S1201において前記故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、S1202へ進み、ECU20のRAMやバックア
ップRAM等に予め設定されている蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されているか否かを判別する。
前記S1202において蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が既に完了しているとみなし、S1210へ進む。S1210では、ECU20は、流量調整弁24の開度を全開位置に制御する。
一方、前記S1202において蓄熱完了フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が未だに完了していないとみなし、S1203へ進む。
S1203では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(冷却水温度):THWを読み込む。
S1204では、ECU20は、前記S1203で読み込まれた冷却水温度:THWが絞り制御上限温度以上であるか否かを判別する。
前記S1204において前記冷却水温度:THWが絞り制御上限温度以上であると判定された場合は、ECU20は、S1205へ進み、内燃機関1の過熱を防止すべく流量調整弁24の開度を全開位置に制御する。
続いて、ECU20は、S1206ヘ進み、蓄熱処理を実行する。具体的には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した高温の冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
この場合、絞り制御上限温度近傍近傍の極めて高温な冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになる。
ECU20は、上記したような蓄熱処理を実行し終えると、S1207へ進み、前述した蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
また、前述したS1204において前記冷却水温度:THWが絞り制御上限温度未満であると判定された場合は、ECU20は、S1208へ進み、流量調整弁24の開度を所定開度閉弁させ、単位時間あたりにラジエター5を流通する冷却水の流量を絞る。
続いて、ECU20は、S1209へ進み、前記S1203で読み込まれた冷却水温度:THWが蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S1209において前記冷却水温度:THWが蓄熱適応温度以上であると判定された場合は、ECU20は、S1206へ進み、前述したような蓄熱処理を実行する。この場合、蓄熱適応温度以上の極めて高温の冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになる。
前記S1206の処理を実行し終えたECU20は、S1207へ進み、蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
このようにECU20が蓄熱制御ルーチンを実行することにより、本発明に係る流量絞り手段が実現され、内燃機関1が連続して高負荷運転される場合や外気温度が非常に高い場合等の特殊な場合以外においても蓄熱適応温度以上の極めて高温な冷却水を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関1が長期間運転停止された後に始動された場合であっても、予熱により吸気ポート壁温を所定温度:Tまで高めることが可能となり、以て始動時及び始動後の排気エミッションを目標エミッションレベル以下に抑えることが可能となる。
尚、本実施の形態における蓄熱制御ルーチンは、内燃機関1の始動完了をトリガにして実行されるようにすることが好ましい。これは、内燃機関1の始動時から冷却水温度が蓄熱適応温度以上となるまでは流量調整弁24の開度が絞られると、内燃機関1を循環する冷却水の温度が始動後の早い時期に蓄熱適応温度まで上昇することになるからである。また、本実施の形態では、蓄熱容器13に熱を蓄えるときは、ラジエター5を流通する冷却水の流量を減少させることにより冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高める例について述べたが、サーモスタットバルブ7の代わりに、開弁温度を任意に変更可能な電子制御サーモスタットバルブを利用し、蓄熱容器13に熱を蓄えるときは、電子制御サーモスタットバルブの開弁温度を高めるようにしてもよい。
<第4の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第4の実施の形態について図13〜図21に基づいて説明する。ここでは前述した第1の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
本実施の形態と前述した第1の実施の形態との相違点は、内燃機関1の一回の運転期間中に複数回の蓄熱処理を実行するとともに、機関始動後に初めて行われる蓄熱処理については通常よりも早い時期に実行する点にある。
ここで、蓄熱処理の実行時期を決定するパラメータとしては、内燃機関1を循環する冷却水の温度、機関始動時からの経過時間、機関始動時からの車両走行距離、機関始動時からの機関負荷(例えば、アクセル開度や燃料噴射量)の累積値などを例示することができる。本実施の形態では、蓄熱処理の実行時期を決定するパラメータとして内燃機関1を循環する冷却水の温度を用いる場合を例に挙げて説明する。
この場合、機関始動後の一回目の蓄熱処理実行時期は、冷却水の温度が蓄熱実行温度の初期値(以下、蓄熱実行温度初期値と称する)に達した時点で実行されることになり、その際の蓄熱実行温度初期値は、内燃機関1が暖機後の通常運転状態にある時の冷却水温度の平均値(以下、暖機後水温と称する)より低い温度に設定される。
前記した蓄熱実行初期温度は、予め設定された固定値であっても構わないが、好ましくは、始動時の外気温度と始動時の水温センサ19の出力信号値(始動時水温)とをパラメータとして決定される可変値とする。
蓄熱実行温度初期値が始動時外気温度と始動時水温とをパラメータとして決定される場合には、図13に示すように、始動時外気温度が高く且つ始動時水温が高くなるほど蓄熱実行温度初期値が高い値になるようにする。これは、始動時外気温度及び始動時水温が高くなるほど短い時間で冷却水が昇温することになるため、蓄熱処理実行時期を不要に遅延させることなく、より高い温度の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となるから
である。
更に、2回目以降の蓄熱実行温度は、前回の蓄熱実行温度に所定温度を加算して決定されるものとする。その際の加算量は、予め設定された固定値であっても構わないが、現時点における外気温度と水温上昇速度(単位時間当たりの水温上昇量)とをパラメータとして決定される可変値とすることが好ましい。
前記した加算量が外気温度と水温上昇速度とをパラメータとして決定される場合には、図14に示すように、外気温度が高く且つ水温上昇速度が高くなるほど加算量が多くなるようにする。これは、外気温度及び水温上昇速度が高くなるほど短い時間で冷却水が昇温することになるため、蓄熱処理実行時期を不要に遅延させることなく、且つ、蓄熱処理の実行頻度を過剰に増加させることなく、より高い温度の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となるからである。
尚、上記した図13に示すような蓄熱実行温度初期値と始動時外気温度と始動時水温との関係、及び、図14に示すような加算量と外気温度と水温上昇速度との関係は、予めマップ化してECU20のROMに記憶しておくようにしてもよい。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図15に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS1501において内燃機関1が始動状態にあるか否かを判別する。
前記S1501において内燃機関1が始動状態にあると判定された場合は、ECU20は、S1502へ進み、該ECU20のRAMに予め設定されている初期フラグ記憶領域にアクセスし、その初期フラグ記憶領域に“0”をリセットする。
前記した初期フラグ記憶領域は、機関始動後の一回目の蓄熱処理が完了した時点で“1”がセットされ、内燃機関1の始動時に“0”がリセットされる領域である。
S1503では、ECU20は、図示しない外気温度センサの出力信号(始動時外気温度)と水温センサ19の出力信号(始動時水温)とを読み込む。
S1504では、ECU20は、前記S1503で読み込まれた始動時外気温度と始動時水温とをパラメータとして前述した図13に示すようなマップへアクセスし、前記S1503で読み込まれた始動時外気温度及び始動時水温に対応した蓄熱実行温度初期値を算出する。算出された蓄熱実行温度初期値は、RAMの所定領域に記憶される。
ECU20は、前記したS1501において内燃機関1が始動状態にないと判定された場合、又は、前記S1504の処理を実行し終えた場合に、S1505へ進む。
S1505では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(冷却水温度):THWを読み込む。
S1506では、ECU20は、RAMの初期フラグ記憶領域へアクセスし、その初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S1506おいて初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、機関始動後の一回目の蓄熱処理が完了していないとみなし、S1507へ進む。
S1507では、前記S1504で算出された蓄熱実行温度初期値と前記S1505で読み込まれた冷却水温度:THWとを比較し、前記冷却水温度:THWが前記蓄熱実行温度初期値以上である否かを判別する。
前記S1507において前記冷却水温度:THWが前記蓄熱実行温度初期値未満であると判定された場合は、ECU20は、蓄熱処理を実行すべき時期ではないとみなし、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S1507において前記冷却水温度:THWが前記蓄熱実行温度初期値以上であると判定された場合は、ECU20は、蓄熱処理を実行すべき時期であるとみなし、S1508に進む。
S1508では、ECU20は、蓄熱処理を所定時間実行する。具体的には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
尚、蓄熱処理の実行時間は、内燃機関1を循環する冷却水の温度、蓄熱容器13内の冷却水の温度、又は外気温度などをパラメータとして変更される可変値としてもよい。その際、内燃機関1を循環する冷却水の温度と蓄熱容器13内の冷却水の温度との差が小さく、且つ、蓄熱容器13内の冷却水の温度及び外気温度が高くなるほど、蓄熱処理の実行時間を短くすることが好ましい。
ECU20は、上記したような蓄熱処理を実行し終えると、S1509へ進み、前述した初期フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
続いて、ECU20は、S1510において、現時点における外気温度センサの出力信号(外気温度)と水温上昇速度(水温センサ19の出力信号が単位時間当たりに変化した量)とをパラメータとして前述した図14に示すようなマップへアクセスし、前記外気温度と前記水温上昇速度とに対応した加算量を算出する。次いで、ECU20は、前記加算量を前記蓄熱実行温度初期値に加算して新たな蓄熱実行温度を算出し、新たに算出された蓄熱実行温度を2回目の蓄熱実行温度としてRAMに記憶させる。このS1508の処理を実行し終えたECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S1506において初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されていないと判定された場合、すなわち、初期フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、機関始動後の一回目の蓄熱処理が既に完了しているとみなし、S1511へ進む。
S1511では、ECU20は、前記S1505で読み込まれた冷却水温度:THWとRAMに記憶されている蓄熱実行温度とを比較し、前記冷却水温度:THWが前記蓄熱実行温度以上であるか否かを判別する。
前記S1511において前記冷却水温度:THWが前記蓄熱実行温度より低いと判定された場合は、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
また、前記S1511において前記冷却水温度:THWが前記蓄熱実行温度以上であると判定された場合は、ECU20は、S1512へ進み、前述したS1508と同様の蓄熱処理を実行する。
続いて、S1513では、ECU20は、現時点における外気温度と水温上昇速度とをパラメータとして前述した図14に示すようなマップへアクセスし、前記外気温度及び前記水温上昇速度に対応した加算量を算出する。次いで、ECU20は、前記加算量を前記蓄熱実行温度に加算して新たな蓄熱実行温度を算出し、新たに算出された蓄熱実行温度を次回の蓄熱実行温度としてRAMに記憶させる。
このようにECU20が蓄熱制御ルーチンを繰り返し実行することにより、本発明に係る貯蔵処理手段と貯蔵時期設定手段と貯蔵温度補正手段とが実現されることになり、内燃機関1の運転が継続されている限りは蓄熱処理が繰り返し実行されると同時に蓄熱実行温度が徐々に高められ、それに応じて蓄熱容器13に蓄えられる熱量も徐々に増加することになる。
また、蓄熱実行温度の初期値は、内燃機関1が暖機完了後の通常の運転状態にあるときの冷却水温度の平均値より低い温度に設定されるため、機関始動後の比較的早い時期に一回目の蓄熱処理が行われることになり、内燃機関1の運転が比較的短時間で停止される場合であっても、蓄熱容器13に熱を全く蓄えることができないような事態を避けることが可能となる。
その際、蓄熱実行温度の初期値は、始動時外気温度及び始動時水温が高くなるほど高く設定されるため、冷却水温度が上昇し易い状況下では一回目の蓄熱処理実行時期を不要に遅延させることなく、より高い温度の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となる。
更に、2回目以降の蓄熱実行温度を決定するための更新量(前回の蓄熱実行温度に加算される加算量)は、外気温度及び水温上昇速度が高くなるほど多く設定されるため、冷却水温度が上昇しにくい状況下では蓄熱処理の実行時期を不要に遅延させることなく、且つ、冷却水温度が上昇しやすい状況下では蓄熱処理の実行回数を過剰に増加させることなく、より高い温度の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関の運転条件に見合った範囲内で最大量の熱を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となる。
尚、蓄熱処理の実行時期を決定するパラメータとして、冷却水温度の代わりに機関始動時からの経過時間を用いる場合には、その初期値は、図16に示すように始動時外気温度が高く且つ始動時水温が高くなるほど長い時間に設定され、2回目以降の蓄熱処理実行時期を決定するための更新量(前回の蓄熱処理実行時期に加算すべき時間)は、図17に示すように、外気温度が高く且つ水温上昇速度が高くなるほど多く設定されるようにすればよい。
また、蓄熱処理の実行時期を決定するパラメータとして、冷却水温度の代わりに機関始動時からの車両走行距離を用いる場合には、その初期値は、図18に示すように始動時外気温度が高く且つ始動時水温が高くなるほど長い距離に設定され、2回目以降の蓄熱処理
実行時期を決定するための更新量(前回の蓄熱処理実行時期に加算すべき距離)は、図19に示すように、外気温度が高く且つ水温上昇速度が高くなるほど長く設定されるようにすればよい。
また、蓄熱処理の実行時期を決定するパラメータとして、冷却水の代わりに機関始動時からの機関負荷(例えば、アクセル開度や燃料噴射量など)の累積値を用いる場合には、その初期値は、図20に示されるように始動時外気温度が高く且つ始動時水温が高くなるほど大きく設定され、2回目以降の蓄熱処理実行時期を決定するための更新量(前回の機関負荷累積値に加算すべき値)は、図21に示すように、外気温度が高く且つ水温上昇速度が高くなるほど大きな値に設定されるようにすればよい。
更に、本実施の形態では、蓄熱処理の実行時期を決定するパラメータとして、単一のパラメータを用いる例について述べたが、冷却水温度、機関始動時からの経過時間、機関始動時からの車両走行距離、機関始動時からの機関負荷の累積値等を適宜組み合わせ、それら複数のパラメータのうち少なくとも一つのパラメータが蓄熱処理実行時期に達した時点で蓄熱処理が実行されるようにしてもよい。
<第5の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第5の実施の形態について図22〜図24に基づいて説明する。ここでは前述した第1の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
図22は、本実施の形態において本発明を適用する車両用内燃機関の冷却水循環系を示す図である。本実施の形態と前述した第1の実施の形態との相違点は、内燃機関1の一回の運転期間中に複数回の蓄熱処理を行うことを前提とし、その際の蓄熱処理実行時期は、内燃機関1を循環する冷却水の温度が蓄熱容器13内の冷却水の温度より高くなった時期に設定される点にある。
これに対応して、蓄熱容器13には、図22に示すように、該蓄熱容器13内に貯蔵された冷却水の温度に対応した電気信号を出力する容器側水温センサ25が取り付けられ、その容器側水温センサ25の出力信号はECU20に入力されるようになっている。尚、以下では、第1冷却水路4に取り付けられている水温センサ19を機関側水温センサ19と称するものとする。
このように構成された冷却水循環系において、ECU20が蓄熱処理を実行する場合には、機関側水温センサ19の出力信号(機関側水温)と容器側水温センサ25の出力信号(容器側水温)とを所定時間毎に比較し、機関側水温が容器側水温より高くなった時点で蓄熱処理を実行する。
但し、単に機関側水温が容器側水温より高くなったことをトリガにして蓄熱処理が行われると、冷却水温度が上昇しやすい状況下では蓄熱処理の実行頻度が過剰に増加してしまう可能性があるため、機関始動後に初めて行われる蓄熱処理については機関側水温が容器側水温より高くなったことを条件に実行され、且つ、2回目以降の蓄熱処理については機関側水温が容器側水温に対して所定温度(以下、蓄熱実行温度差:αと称する)以上高くなったことを条件に実行されるようにすることが好ましい。
前記した蓄熱実行温度差:αは、予め設定された固定値であっても構わないが、外気温度と水温上昇速度とをパラメータとして決定される可変値とすることが好ましい。
前記した蓄熱実行温度差:αが外気温度と水温上昇速度とをパラメータとして決定され
る場合には、図23に示すように、外気温度が低く且つ水温上昇速度が低くなるほど蓄熱実行温度差:αが小さくなるようにする。尚、図23に示すような蓄熱実行温度差:αと外気温度と水温上昇速度との関係は、予めマップ化してECU20のROMに記憶されるようにしてもよい。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図24に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS2401において内燃機関1が始動状態にあるか否かを判別する。
前記S2401において内燃機関1が始動状態にあると判定された場合は、ECU20は、S2402へ進み、該ECU20のRAMに予め設定されている初期フラグ記憶領域にアクセスし、その初期フラグ記憶領域に“0”をリセットする。
前記した初期フラグ記憶領域は、機関始動後の一回目の蓄熱処理が完了した時点で“1”がセットされ、内燃機関1の始動時に“0”がリセットされる領域である。
ECU20は、前記したS2402の処理を実行し終えた場合、又は、前記S2401において内燃機関1が始動状態にないと判定した場合は、S2403へ進む。
S2403では、ECU20は、機関側水温センサ19の出力信号(機関側水温)と容器側水温センサ25の出力信号(容器側水温)とを入力する。
S2404では、ECU20は、RAMの初期フラグ記憶領域へアクセスし、その初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S2404において前記した初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、機関始動後において一回目の蓄熱処理が未だ実行されていないとみなし、S2405へ進む。
S2405では、ECU20は、前記S2403で入力された機関側水温と容器側水温とを比較し、前記機関側水温が前記容器側水温より高い否かを判別する。
前記S2405において前記機関側水温が前記容器側水温以下であると判定された場合は、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S2405において前記機関側水温が前記容器側水温より高いと判定された場合は、ECU20は、一回目の蓄熱処理を実行すべき時期であるとみなし、S2406へ進む。
S2406では、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる
。
S2407では、ECU20は、RAMの初期フラグ記憶領域へアクセスし、その初期フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
S2408では、ECU20は、前述した図23に示すようなマップへアクセスし、現時点における外気温度と水温上昇速度とに対応した蓄熱実行温度差:αを算出する。ECU20は、前記蓄熱実行温度差:αをRAMに記憶させ、本ルーチンの実行を一旦終了する。
また、前記S2404において前記した初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されていないと判定された場合、すなわち前記した初期フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、機関始動後において一回目の蓄熱処理が既に実行済みであるとみなし、S2409へ進む。
S2409では、ECU20は、RAMから蓄熱実行温度差:αを読み出し、前記S2403で入力された機関側水温から容器側水温を減算して得られた値が前記蓄熱実行温度差:α以上(機関側水温−容器側水温以≧α)か否かを判別する。
前記S2409において機関側水温から容器側水温を減算して得られた値が蓄熱実行温度差:α未満であると判定された場合は、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S2409において機関側水温から容器側水温を減算して得られた値が蓄熱実行温度差:α以上であると判定された場合は、ECU20は、S2410へ進み、前述したS2406と同様の蓄熱処理を実行する。
S2411では、ECU20は、前述した図23に示すようなマップへアクセスし、現時点における外気温度と水温上昇速度とに対応した蓄熱実行温度差:αを算出する。ECU20は、前記蓄熱実行温度差:αをRAMに記憶させ、本ルーチンの実行を一旦終了する。
このようにECU20が蓄熱制御ルーチンを実行することにより、本発明に係る温度比較手段と貯蔵処理手段とが実現されることになる。
以上述べたように本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関では、機関始動後の一回目の蓄熱処理は、機関側水温が容器側水温より高いと判定された時点で実行されるため、機関側水温が所望の温度域まで昇温しないような場合であっても蓄熱容器13の蓄熱量を増加させることが可能となる。
更に、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関では、機関始動後の2回目以降の蓄熱処理は、機関側水温が容器側水温に比して所定の蓄熱実行温度差以上高くなる度に実行されるため、内燃機関1の運転が継続され且つ機関側水温が上昇する限りは、蓄熱容器13の蓄熱量が徐々に増加されることになる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関の運転条件に見合った範囲内で最大量の熱を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となる。
尚、本実施の形態では、内燃機関1が運転状態にあるときに蓄熱制御ルーチンが実行される例について述べたが、内燃機関1が運転状態にあるときに加え、内燃機関1の運転停
止直後に一回のみ蓄熱制御ルーチンが実行されるようにしてもよい。その際、内燃機関1の運転停止直後において機関側水温が容器側水温より高いことを条件に蓄熱処理が実行されるようにすれば、蓄熱容器13の蓄熱量を一層増加させることが可能となる。
<第6の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第6の実施の形態について図25〜図26に基づいて説明する。ここでは前述した第1の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
本実施の形態と前述した第1の実施の形態との相違点は、内燃機関1の一回の運転期間中に複数回の蓄熱処理を行うことを前提とし、その際の蓄熱処理実行時期は、内燃機関1を循環する冷却水の温度が前回の蓄熱処理実行時における冷却水の温度より高くなった時期に設定される点にある。
具体的には、ECU20は、蓄熱処理実行時における水温センサ19の出力信号値を前回の冷却水温度(以下、冷却水温度前回値と称する)として、バックアップRAM等のように内燃機関1の運転停止後もデータを記憶可能なメモリに記憶させ、その後に水温センサ19の出力信号値が前記した冷却水温度前回値より高くなると再度蓄熱処理を実行する。
但し、単に水温センサ19の出力信号値が冷却水温度前回値を上回ったことをトリガにして蓄熱処理が行われると、冷却水温度が上昇し易い状況下では蓄熱処理の実行頻度が過剰に増加してしまう可能性があるため、機関始動後に初めて行われる蓄熱処理については水温センサ19の出力信号値が冷却水温度前回値を上回ったことを条件に実行され、且つ、2回目以降の蓄熱処理については水温センサ19の出力信号値が冷却水温度前回値より所定温度(以下、蓄熱実行温度差:βと称する)以上高くなったことを条件に実行されるようにすることが好ましい。
前記した蓄熱実行温度差:βは、予め設定された固定値であっても構わないが、外気温度と冷却水温度前回値とをパラメータとして決定される可変値とすることが好ましい。
前記した蓄熱実行温度差:βが外気温度と冷却水温度前回値とをパラメータとして決定される場合には、図25に示すように、外気温度が高く且つ冷却水温度前回値が低くなるほど蓄熱実行温度差:βが大きくなるとともに、外気温度が低く且つ冷却水温度前回値が高くなるほど蓄熱実行温度差:βが小さくなるようにする。
これは、外気温度が高いときは冷却水温度が上昇し易いため、そのような状況下で冷却水温度前回値が低ければ冷却水温度が比較的短時間で冷却水温度前回値以上まで昇温する一方、外気温度が低くいときは冷却水温度が上昇し難いため、そのような状況下で冷却水前回値が高ければ冷却水温度が冷却水温度前回値以上に昇温するまでに時間がかかるからである。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図26に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS2601において内燃機関1が始動状態にあるか否かを判別する。
前記S2601において内燃機関1が始動状態にあると判定された場合は、ECU20は、S2602へ進み、該ECU20のRAMに予め設定されている初期フラグ記憶領域にアクセスし、その初期フラグ記憶領域に“0”をリセットする。
前記した初期フラグ記憶領域は、機関始動後の一回目の蓄熱処理が完了した時点で“1”がセットされ、内燃機関1の始動時に“0”がリセットされる領域である。
ECU20は、前記したS2602の処理を実行し終えた場合、又は、前記S2601において内燃機関1が始動状態にないと判定した場合は、S2603へ進む。
S2603では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(冷却水温度):THWを入力する。
S2604では、ECU20は、RAMの初期フラグ記憶領域へアクセスし、その初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S2604において前記した初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、機関始動後において一回目の蓄熱処理が未だ実行されていないとみなし、S2605へ進む。
S2605では、ECU20は、バックアップRAMから冷却水温度前回値:THWoldを読み出し、その冷却水温度前回値:THWoldと前記S2603で入力された冷却水温度:THWとを比較する。
前記S2605において冷却水温度:THWが冷却水温度前回値:THWold以下であ
ると判定された場合は、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S2605において冷却水温度:THWが冷却水温度前回値:THWoldよ
り高いと判定された場合は、ECU20は、一回目の蓄熱処理を実行すべき時期であるとみなし、S2606へ進む。
S2606では、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
S2607では、ECU20は、RAMの初期フラグ記憶領域へアクセスし、その初期フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
S2608では、ECU20は、前記S2603で入力された冷却水温度:THWによりバックアップRAMの冷却水温度前回値:THWoldを更新し、本ルーチンの実行を一
旦終了する。
また、前記S2604において前記した初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されていないと判定された場合、すなわち前記した初期フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、機関始動後において一回目の蓄熱処理が既に実行済み
であるとみなし、S2609へ進む。
S2609では、ECU20は、バックアップRAMから冷却水温度前回値:THWoldを読み出す。次いでECU20は、前述した図252示すようなマップへアクセスし、
前記冷却水温度前回値:THWoldと現時点における外気温度とに対応した蓄熱実行温度
差:βを算出する。
S2610では、ECU20は、前記S2603で入力された冷却水温度:THWから冷却水温度前回値:THWoldを減算して得られた値が前記蓄熱実行温度差:β以上(T
HW−THWold以≧β)か否かを判別する。
前記S2610において冷却水温度:THWから冷却水温度前回値:THWoldを減算
して得られた値が蓄熱実行温度差:β未満であると判定された場合は、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S2610において冷却水温度:THWから冷却水温度前回値:THWold
を減算して得られた値が蓄熱実行温度差:β以上であると判定された場合は、ECU20は、S2611へ進み、前述したS2606と同様の蓄熱処理を実行する。
S2612では、ECU20は、前記S2603で入力された冷却水温度:THWによりバックアップRAMの冷却水温度前回値:THWoldを更新し、本ルーチンの実行を終
了する。
このようにECU20が蓄熱制御ルーチンを実行することにより、本発明に係る貯蔵処理手段と制御手段とが実現されることになる。
以上述べたように本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関では、機関始動後の一回目の蓄熱処理は、冷却水温度:THWが冷却水温度前回値:THWoldより高いと判定
された時点で実行されるため、機関側水温が所望の温度域まで昇温しないような場合であっても蓄熱容器13の蓄熱量を増加させることが可能となる。
更に、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関では、機関始動後の2回目以降の蓄熱処理は、冷却水温度:THWが冷却水温度前回値:THWoldに比して所定の蓄熱実
行温度差以上高くなる度に実行されるため、内燃機関1の運転が継続され且つ機関側水温が上昇する限りは、蓄熱容器13の蓄熱量が徐々に増加されることになる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関の運転条件に見合った範囲内で最大量の熱を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となる。
<第7の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第7の実施の形態について図27に基づいて説明する。ここでは前述した第2〜第6の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第2〜第6の実施の形態では、内燃機関1の運転期間中に1回乃至複数回の蓄熱処理を行っているが、本実施の形態では、内燃機関1の始動から運転停止までの期間において1回も蓄熱処理が行われなかった場合、言い換えれば、内燃機関1の始動から運転停止までの期間において蓄熱処理の実行条件が成立しなかった場合に、内燃機関1の運転停止時に蓄熱処理を実行するようにした。
具体的には、ECU20は、内燃機関1の運転が停止される時、つまりイグニッションスイッチ22がオンからオフへ切り換えられたときに、前述した第2〜第6の実施の形態で述べた蓄熱完了フラグ記憶領域又は初期フラグ記憶領域へアクセスし、その記憶領域に“1”が記憶されているか否かを判別する。
ECU20は、前記蓄熱完了フラグ記憶領域又は前記初期フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、内燃機関1の始動から運転停止までの期間において少なくとも1回の蓄熱処理が実行されているとみなし、前記蓄熱完了フラグ記憶領域又は前記初期フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、内燃機関1の始動から運転停止までの期間において蓄熱処理が1回も実行されていないとみなす。
内燃機関1の始動から運転停止までの期間(以下、運転期間と称する)において蓄熱処理が1回も実行されていないとみなされた場合には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を作動させ、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
このような蓄熱制御が行われると、内燃機関1の運転期間が極めて短く、その運転期間中に蓄熱処理の実行条件が成立しなかった場合であっても、最大限の熱を蓄熱容器13に蓄えることが可能となる。
但し、内燃機関1の運転期間が極短時間である場合には、内燃機関1の運転停止時における冷却水温度(水温センサ19の出力信号)が蓄熱容器13内の冷却水温度(容器側水温センサ25の出力信号)より低い場合も想定されるため、水温センサ19の出力信号が容器側水温センサ25の出力信号より高い場合に限り蓄熱処理を実行するようにしてもよく、好ましくは燃焼式ヒータなどの補助熱源を利用して冷却水を加熱した上で蓄熱処理を実行するとよい。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図27に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS2701において内燃機関1の運転が停止されたか否か、言い換えれば、イグニッションスイッチ22がオンからオフへ切り換えられたか否かを判別する。
前記S2701において内燃機関1の運転が停止されていないと判定された場合は、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S2701において内燃機関1の運転が停止されたと判定された場合は、ECU20は、S2702へ進み、RAMの蓄熱完了フラグ記憶領域(又は初期フラグ記憶領域)へアクセスし、その記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S2702において蓄熱完了フラグ記憶領域(又は初期フラグ記憶領域)に“0”が記憶されていないと判定された場合には、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了
する。
前記S2702において蓄熱完了フラグ記憶領域(又は初期フラグ記憶領域)に“0”が記憶されていると判定された場合には、ECU20は、S2703へ進む。
S2703では、ECU20は、燃焼式ヒータなどの補助熱源を作動させて、冷却水の加熱処理を実行する。
S2704では、ECU20は、水温センサ19の出力信号値(冷却水温度):THWを入力する。
S2705では、ECU20は、前記S2704で入力された冷却水温度:THWが蓄熱適応温度以上まで昇温したか否かを判別する。
前記S2705において冷却水温度:THWが蓄熱適応温度未満であると判定された場合は、ECU20は、前述したS2703〜S2705の処理を再度実行する。
前記S2705において冷却水温度:THWが蓄熱適応温度以上であると判定された場合には、ECU20は、S2706へ進み、電動ウォーターポンプ14を作動させ、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、ヘッド側冷却水路2aから流出した冷却水を直接的に蓄熱容器13へ貯蔵させる。
S2707では、ECU20は、補助熱源の作動を停止させて冷却水の加熱処理の実行を終了し、本ルーチンの実行を終了する。
このようにECU20が蓄熱制御ルーチンを実行することにより、内燃機関1の運転期間が短く、その運転期間中に1回も蓄熱処理が行われなかった場合であっても、熱媒体の熱を蓄熱装置13に蓄える機会が確保されることとなり、以て蓄熱容器13内に所望量の熱量を蓄えることが可能となる。
<第8の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第8の実施の形態について図28〜図29に基づいて説明する。ここでは、前述した第2の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
本実施の形態と前述した第2の実施の形態との相違点は、前述した第2の実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合にラジエターファン50の作動を禁止することにより冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高めるのに対し、本実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に内燃機関1の負荷を強制的に増加させることにより冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高める点にある。
図28に示すように、本実施の形態における内燃機関1のシリンダヘッド1aには、吸気管101と第1の排気管104とが接続されている。
前記吸気管101は、エアクリーナボックス102を介して吸気ダクト103と接続され、吸気ダクト103から吸い込まれた空気がエアクリーナボックス102にて除塵された後に吸気管101を介してシリンダヘッド1aの図示しない吸気ポートへ導かれるよう
になっている。
一方、前記第1の排気管104は、排気中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などを浄化するための排気浄化触媒105に接続され、排気浄化触
媒105は第2の排気管106に接続されている。第2の排気管106は下流にて図示しないマフラーを介して大気中に開放されている。
前記第2の排気管106の途中には、該第2の排気管106内を流れる排気の流量を絞る(減少させる)ための排気絞り弁107が設けられ、その排気絞り弁107には該排気絞り弁107を開閉駆動するための排気絞り用アクチュエータ108が取り付けられている。
前記排気絞り用アクチュエータ108は、例えば、ステッパモータ等で構成され、ECU20からの制御信号に従って排気絞り弁107を開閉駆動することが可能となっている。
このように構成された内燃機関1では、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がない場合には、ECU20が排気絞り弁107の開度を通常の目標開度とすべく排気絞り用アクチュエータ108を制御するが、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要が生じた場合には、ECU20が排気絞り弁107の開度を通常の目標開度より小さくすべく排気絞り用アクチュエータ108を制御する。
排気絞り弁107の開度が通常の目標開度より小さくされると、該排気絞り弁107より上流の排気通路(第1の排気管104、排気浄化触媒105、第2の排気管106)における排気の圧力が上昇し、内燃機関1に作用する背圧が上昇することになる。
内燃機関1に作用する背圧が上昇すると、排気行程中の気筒においてピストンの上昇動作に抗する圧力が高くなり、内燃機関1の負荷が増加する。これに対し、ECU20は、内燃機関1の発生トルクを増加させるべく燃料噴射量(及び吸入空気量)を増加させることになるため、内燃機関1において燃料に供される燃料量(及び空気量)が増加する。
この場合、内燃機関1において燃料が燃焼する際に発生する熱量が増加し、それに応じて内燃機関1の発熱量が増加する。この結果、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bを循環する冷却水が内燃機関1から受ける熱量が増加し、以て冷却水の温度が蓄熱適応温度まで速やかに上昇するようになる。
従って、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際に内燃機関1を強制的に高負荷運転させることにより、蓄熱適応温度以上の冷却水を蓄熱容器13に貯蔵することが可能となる。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図29に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS2901において、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている故障判定フラグ記憶領域へアクセスし、その故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S2901において前記故障判定フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定
された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がないとみなし、S2911へ進む。
S2911では、ECU20は、排気絞り弁107の開度を通常の開度とすべく排気絞り用アクチュエータ108を制御し、内燃機関1の負荷を通常の負荷とする。ECU20は、S2911の処理を実行し終えると、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S2901において前記故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、S2902へ進み、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されているか否かを判別する。
前記S2902において蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が既に完了しているとみなし、S2911へ進む。S2911では、ECU20は、排気絞り弁107の開度を通常の開度とすべく排気絞り用アクチュエータ108を制御し、本ルーチンの実行を終了する。
一方、前記S2902において蓄熱完了フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が未だに完了していないとみなし、S2903へ進む。
S2903では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(第1の冷却水温度):THW1を読み込む。
S2904では、ECU20は、前記S2903で読み込まれた第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S2904において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S2905へ進み、排気絞り弁107の開度を通常の開度とすべく排気絞り用アクチュエータ108を制御し、内燃機関1の負荷を通常の負荷に戻す。
続いて、ECU20は、S2906ヘ進み、蓄熱処理を実行する。具体的には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した高温の冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
この場合、蓄熱適応温度以上の極めて高温な冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになり、蓄熱容器13内に多量の熱が蓄えられることとなる。
ECU20は、上記したような蓄熱処理を実行し終えると、S2907へ進み、前述した蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
また、前述したS2904において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度未
満であると判定された場合には、ECU20は、S2908へ進む。S2908では、E
CU20は、排気絞り弁107の開度を通常の開度より所定量:△d小さくすべく排気絞り用アクチュエータ108を制御する。
この場合、内燃機関1の負荷が増加し、それに応じて内燃機関1の発熱量が増加することになるため、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bにおいて内燃機関1から冷却水へ伝達される熱量が増加し、その結果、冷却水の温度が速やかに上昇する。
ECU20は、S2909において、水温センサ19の出力信号値(第2の冷却水温度):THW2を再度読み込む。
S2910では、ECU20は、前記S2909において読み込まれた第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S2910において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S2906において蓄熱処理を実行し、次いでS2907において蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
一方、前記S2910において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度未満で
あると判定された場合には、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
このようにECU20が図29に示すような蓄熱制御ルーチンを実行することにより、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際には内燃機関1を強制的に高負荷運転させることが可能となり、本発明に係る機関負荷増加手段が実現されることとなる。
この結果、内燃機関1が如何なる運転条件下にあっても、冷却水の温度を蓄熱適応温度以上まで高めることが可能となり、蓄熱容器13内に蓄熱適応温度以上の冷却水を貯蔵することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関1が長期間運転停止された後に始動された場合であっても、予熱により吸気ポート壁温を所定温度:Tまで高めることが可能となり、以て始動時及び始動後の排気エミッションを目標エミッションレベル以下に抑えることが可能となる。
<第9の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第9の実施の形態について図30〜図34に基づいて説明する。ここでは、前述した第8の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
本実施の形態と前述した第8の実施の形態との相違点は、前述した第8の実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、排気絞り弁107の開度を絞ることにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させて冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高めるのに対し、本実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、排気弁の開弁時期を進角させることにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させて冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高める点にある。
図30に示すように、本実施の形態における内燃機関1の各気筒109には、二つの吸気弁110と二つの排気弁111が設けられている。更に、内燃機関1には、前記排気弁111の開閉時期を変更する可変動弁機構112が設けられている。
前記可変動弁機構112は、ECU20からの制御信号に応じて排気弁111の開閉時
期を変更可能な構成であればよく、このような可変動弁機構111としては、例えば、エキゾーストカムシャフトの回転位相を変更する構成、エキゾーストカムシャフトに形成された複数のカムの中から任意の一を選択する構成、あるいはエキゾーストカムシャフトに三次元カムを形成するとともにエキゾーストカムシャフトを軸方向へスライドさせることにより任意のカムプロフィールを選択する構成などを例示することができる。
このように構成された内燃機関1では、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がない時(以下、通常時と称する)には、ECU20が排気弁111を通常の目標開閉時期に従って駆動させるべく可変動弁機構112を制御する。
一方、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がある時(以下、蓄熱時と称する)には、ECU20は、排気弁111の開弁時期を通常時の開弁時期より進角させるべく可変動弁機構112を制御する。
具体的には、ECU20は、図31に示すように、通常時には排気弁111の開弁時期:CA1を排気行程下死点(BDC:Bottom of Dead Center)の直前に設定するのに対し、蓄熱時には排気弁111の開弁時期:CA2を通常時の開弁時期:CA1から所定角
度:△CA進角させた時期、すなわち膨張行程の半ばに設定する。
排気弁111の開弁時期が膨張行程半ばまで進角された場合には、膨張行程の半ばにおいて気筒109内の燃焼ガスが排気管104へ流出することになるため、気筒109内の圧力が膨張行程の途中で急激に低下することになる。
このように気筒109内の圧力が膨張行程の途中で急激に低下すると、混合気の燃焼によって発生した圧力(燃焼圧)がピストンの運動エネルギに反映され難くなるため、内燃機関1の発生トルクが低下してしまうことになる。この結果、内燃機関1の発生トルクを増加させる必要が生じ、以て内燃機関1の負荷が増加する。
従って、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際に排気弁111の開弁時期を通常時の開弁時期より進角させることにより、内燃機関1の負荷を強制的に増加させることが可能となる。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図32に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS3201において、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている故障判定フラグ記憶領域へアクセスし、その故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S3201において前記故障判定フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がないとみなし、S3211へ進む。
S3211では、ECU20は、排気弁111の開弁時期を通常の開弁時期とすべく可変動弁機構112を制御し、内燃機関1の負荷を通常の負荷とする。ECU20は、S3211の処理を実行し終えると、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、前記S3201において前記故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、S3202へ進み、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されているか否かを判別する。
前記S3202において蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が既に完了しているとみなし、S3211へ進む。S3211では、ECU20は、排気弁111の開弁時期を通常の開弁時期:CA1とすべく可変動弁機構112を制御し、本ルーチンの実行を終了
する。
一方、前記S3202において蓄熱完了フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が未だに完了していないとみなし、S3203へ進む。
S3203では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(第1の冷却水温度):THW1を読み込む。
S3204では、ECU20は、前記S3203で読み込まれた第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S3204において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S3205へ進み、排気弁111の開弁時期を通常の開弁時期:CA1とすべく可変動弁機構112を制御し、内燃機関1の負荷を通常の負
荷に戻す。
続いて、ECU20は、S3206ヘ進み、蓄熱処理を実行する。具体的には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した高温の冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
この場合、蓄熱適応温度以上の極めて高温な冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになり、蓄熱容器13内に多量の熱が蓄えられることとなる。
ECU20は、上記したような蓄熱処理を実行し終えると、S3207へ進み、前述した蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。ECU20は、前記S3207の処理を実行し終えると、本ルーチンの実行を一旦終了する。
また、前述したS3204において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度未
満であると判定された場合には、ECU20は、S3208へ進む。S3208では、ECU20は、通常時の開弁時期:CA1から所定角度:△CAを減算して蓄熱時の開弁時
期:CA2(=CA1−△CA)を算出し、算出された開弁時期:CA2に従って可変動
弁機構112を制御する。
この場合、排気弁111が膨張行程の半ばで開弁するため、内燃機関1の負荷が増加することになる。これに対し、ECU20は、内燃機関1の発生トルクを増加させるべく燃
料噴射量(及び吸入空気量)を増加させるため、内燃機関1において燃焼に供される燃料量が増加し、それに応じて内燃機関1の発熱量が増加する。
この結果、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bにおいて内燃機関1から冷却水へ伝達される熱量が増加することになり、冷却水の温度が速やかに上昇する。
ここで図32に戻り、ECU20は、上記したS3208の処理を実行し終えると、S3209において水温センサ19の出力信号値(第2の冷却水温度):THW2を再度読
み込む。
S3210では、ECU20は、前記S3209において読み込まれた第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S3210において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S3206において蓄熱処理を実行し、次いでS3207において蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
一方、前記S3210において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度未満で
あると判定された場合には、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
このようにECU20が図32に示すような蓄熱制御ルーチンを実行することにより、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際には内燃機関1を強制的に高負荷運転させることが可能となり、本発明に係る機関負荷増加手段が実現されることとなる。
この結果、内燃機関1が如何なる運転条件下にあっても、冷却水の温度を蓄熱適応温度以上まで高めることが可能となり、蓄熱容器13内に蓄熱適応温度以上の冷却水を貯蔵することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関1が長期間運転停止された後に始動された場合であっても、予熱により吸気ポート壁温を所定温度:Tまで高めることが可能となり、以て始動時及び始動後の排気エミッションを目標エミッションレベル以下に抑えることが可能となる。
尚、本実施の形態では、蓄熱時の排気弁111の開弁時期を通常時の開弁時期より進角させることで内燃機関1の負荷を増加させる例について述べたが、蓄熱時の排気弁111の開弁時期を通常時の開弁時期より遅角させることで内燃機関1の負荷を増加させるようにしてもよい。
例えば、図33に示すように、通常時の排気弁111の開弁時期:CAは排気行程下死点(BDC:Bottom of Dead Center)の直前に設定されるのに対し、蓄熱時の排気弁111の開弁時期:CA4は通常時の開弁時期:CA3から所定角度:△CA遅角させた時
期、すなわち、排気行程の半ばに設定されるようにしてもよい。
排気弁111の開弁時期が排気行程半ばまで遅角された場合には、排気行程下死点(BDC:Bottom of Dead Center)から排気行程の半ばまでの期間において気筒109内においてピストンが圧縮仕事をすることになるため、その圧縮仕事の分だけ内燃機関1のトルクが低下することになる。この結果、内燃機関1の発生トルクを増加させる必要が生じ、以て内燃機関1の負荷が増加することになる。
また、吸気弁110の開閉時期を変更可能な可変動弁機構が内燃機関1に設けられてい
る場合には、図34に示すように、蓄熱時の吸気弁110の開弁時期:CA6を通常時の開弁時期:CA5より遅角させることにより、内燃機関1のポンプ損失を増大させ、以て内燃機関1の負荷を増加させるようにしてもよい。
<第10の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第10の実施の形態について図35〜図36に基づいて説明する。ここでは、前述した第8の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
本実施の形態と前述した第8の実施の形態との相違点は、前述した第8の実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、排気絞り弁107の開度を絞ることにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させて冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高めるのに対し、本実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、発電機の発電量を増加させることにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させて冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高める点にある。
図35に示すように、本実施の形態に係る内燃機関1には、機関出力軸(クランクシャフト)130の運動エネルギ(回転トルク)を電気エネルギへ変換することにより発電を行う発電機140が併設されている。
具体的には、内燃機関1に発電機140が固定されるとともに、内燃機関1のクランクシャフト130に取り付けられたクランクプーリ131と発電機140のロータシャフト141に取り付けられた発電機用プーリ142とがベルト150を介して連結されている。
前記発電機140には、図示しないバッテリから該発電機140へ印加される励磁電流量を調整するレギュレータ143が取り付けられており、このレギュレータ143はECU20からの制御信号に従って励磁電流量を調整するよう構成されている。
上記した発電機140では、内燃機関1が運転状態にあるときは、クランクシャフト130の回転トルクの一部がクランクプーリ131→ベルト150→発電機用プーリ142を介してロータシャフト141へ伝達され、その結果、ロータシャフト141が回転されることになる。
その際、レギュレータ143が前記バッテリから前記発電機140へ励磁電流を印加させると、発電機140内に交流起電力が誘起され、その交流電力が直流電力へ整流されて出力されることになる。尚、発電機140から出力された電力はバッテリや車両の電気負荷へ供給される。
このように構成された内燃機関1では、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がない時(以下、通常時と称する)は、バッテリから発電機140へ印加される励磁電流量が通常の電流量となるようにレギュレータ143を制御する。
一方、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がある時(以下、蓄熱時と称する)には、ECU20は、バッテリから発電機140へ印加される励磁電流量を通常の電流量より増加させるべくレギュレータ143を制御する。
発電機140に印加される励磁電流量が通常時の電流量より増加された場合には、発電機140において電気エネルギへ変換される運動エネルギ量が増加するため、すなわち、発電機140のロータシャフト141を回転させる上で必要となるトルクが増加するため、内燃機関1の発生トルクを増加させる必要が生じ、以て内燃機関1の負荷が増加するこ
とになる。
従って、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際に、発電機140に印加される励磁電流量を通常時より増加させることにより、内燃機関1の負荷を強制的に増加させることが可能となる。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図36に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS3601において、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている故障判定フラグ記憶領域へアクセスし、その故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S3601において前記故障判定フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がないとみなし、S3611へ進む。
S3611では、ECU20は、バッテリから発電機140へ印加される励磁電流量が通常の電流量となるようにレギュレータ143を制御して、本ルーチンの実行を一旦終了する。この場合、発電機140において電気エネルギへ変換される運動エネルギ量が通常量となるため、内燃機関1の負荷も通常の負荷となる。
一方、前記S3601において前記故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、S3602へ進み、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されているか否かを判別する。
前記S3602において蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が既に完了しているとみなし、S3611へ進む。S3611では、ECU20は、バッテリから発電機140へ印加される励磁電流量を通常の電流量とすべくレギュレータ143を制御し、本ルーチンの実行を終了する。
前記S3602において蓄熱完了フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が未だに完了していないとみなし、S3603へ進む。
S3603では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(第1の冷却水温度):THW1を読み込む。
S3604では、ECU20は、前記S3603で読み込まれた第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S3604において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S3605へ進み、バッテリから発電機140へ印加される励磁電流量を通常の電流量となるようにレギュレータ143を制御し、内燃機関1の負荷を通常の負荷に戻す。
続いて、ECU20は、S3606ヘ進み、蓄熱処理を実行する。具体的には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した高温の冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
この場合、蓄熱適応温度以上の極めて高温な冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになり、蓄熱容器13内に多量の熱が蓄えられることとなる。
ECU20は、上記したような蓄熱処理を実行し終えると、S3607へ進み、前述した蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。ECU20は、前記S3607の処理を実行し終えると、本ルーチンの実行を一旦終了する。
また、前述したS3604において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度未
満であると判定された場合には、ECU20は、S3608へ進む。S3608では、ECU20は、通常時の励磁電流量に所定量:Aを加算して新たな励磁電流量(=通常電流量+A)を算出する。ECU20は、前記した新たな励磁電流量(=通常電流量+A)に従ってレギュレータ143を制御する。
この場合、発電機140において電気エネルギへ変換される運動エネルギの量が増加するため、それに応じて内燃機関1の負荷も増加することになる。これに対し、ECU20は、内燃機関1の発生トルクを増加させるべく燃料噴射量(及び吸入空気量)を増加させるため、内燃機関1において燃焼に供される燃料量が増加し、それに応じて内燃機関1の発熱量が増加する。
この結果、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bにおいて内燃機関1から冷却水へ伝達される熱量が増加することになり、冷却水の温度が速やかに上昇する。
ここで図36に戻り、ECU20は、上記したS3608の処理を実行し終えると、S3609において水温センサ19の出力信号値(第2の冷却水温度):THW2を再度読
み込む。
S3610では、ECU20は、前記S3609において読み込まれた第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S3610において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S3606において蓄熱処理を実行し、次いでS3607において蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
一方、前記S3610において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度未満で
あると判定された場合には、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
このようにECU20が図36に示すような蓄熱制御ルーチンを実行することにより、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際には内燃機関1を強制的に高負荷運転させることが可能となり、本発明に係る機関負荷増加手段が実現されることとなる。
この結果、内燃機関1が如何なる運転条件下にあっても、冷却水の温度を蓄熱適応温度以上まで高めることが可能となり、蓄熱容器13内に蓄熱適応温度以上の冷却水を貯蔵することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関1が長期間運転停止された後に始動された場合であっても、予熱により吸気ポート壁温を所定温度:Tまで高めることが可能となり、以て始動時及び始動後の排気エミッションを目標エミッションレベル以下に抑えることが可能となる。
<第11の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第11の実施の形態について図37〜図38に基づいて説明する。ここでは、前述した第8の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
本実施の形態と前述した第8の実施の形態との相違点は、前述した第8の実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、排気絞り弁107の開度を絞ることにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させて冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高めるのに対し、本実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、変速機の変速比が増速側へ変更されることを禁止することにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させて冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高める点にある。
図37に示すように、本実施の形態に係る内燃機関1には、機関出力軸の回転速度を変速してプロペラシャフト161へ伝達する変速機160が連結されている。プロペラシャフト161は、終減速機等を介して駆動車軸に接続されている。
この変速機160は、複数の変速比から内燃機関1の運転状態に適応した変速比を自動的に選択する自動変速機、あるいは、無段階の変速比から内燃機関1の運転状態に適応した変速比を自動的に選択する無段変速機であり、ECU20によって制御されるようになっている。
このように構成された内燃機関1では、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がない時(以下、通常時と称する)は、変速比の変更を許可すべく変速機160を制御する。この場合、変速機160は、内燃機関1の運転状態に応じて変速比を変更可能となる。
一方、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がある時(以下、蓄熱時と称する)には、ECU20は、変速比の増速側への変速を禁止すべく変速機160を制御する。この場合、変速機160は、内燃機関1の運転状態に関わらず変速比の増速側への変更を禁止される。
変速機160が変速比の増速側への変更を禁止されると、車速の増加に伴って内燃機関1の機関回転数が上昇することになるため、内燃機関1の負荷が増加することとなる。
従って、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際に、変速機160における変速比の増速側への変更が禁止されることにより、内燃機関1の機関回転数が上昇し、以て内燃機関1の負荷を強制的に増加させることが可能となる。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図38に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶
されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS3801において、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている故障判定フラグ記憶領域へアクセスし、その故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S3801において前記故障判定フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がないとみなし、S3811へ進む。
S3811では、ECU20は、変速比の変更を許可すべく変速機160を制御し、本ルーチンの実行を一旦終了する。この場合、変速機160は、内燃機関1の運転状態に応じて変速比を変更可能となるため、内燃機関1の負荷も通常の負荷となる。
一方、前記S3801において前記故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、S3802へ進み、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されているか否かを判別する。
前記S3802において蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が既に完了しているとみなし、S3811へ進む。S3811では、ECU20は、変速比の変更を許可すべく変速機160を制御し、本ルーチンの実行を終了する。
前記S3802において蓄熱完了フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が未だに完了していないとみなし、S3803へ進む。
S3803では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(第1の冷却水温度):THW1を読み込む。
S3804では、ECU20は、前記S3803で読み込まれた第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S3804において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S3805へ進み、変速比の変更を許可すべく変速機160を制御し、内燃機関1の負荷を通常の負荷に戻す。
続いて、ECU20は、S3806ヘ進み、蓄熱処理を実行する。具体的には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した高温の冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
この場合、蓄熱適応温度以上の極めて高温な冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになり、蓄熱容器13内に多量の熱が蓄えられることとなる。
ECU20は、上記したような蓄熱処理を実行し終えると、S3807へ進み、前述した蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。ECU20は、前記S3807の処理を実行し終えると、本ルーチンの実行を一旦終了する。
また、前述したS3804において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度未
満であると判定された場合には、ECU20は、S3808へ進む。S3808では、ECU20は、変速比の増速側の変更を禁止すべく変速機160を制御する。
この場合、変速機160が変速比の増速側への変更を行わないため、内燃機関1の機関回転数が上昇しやすくなり、以て内燃機関1の負荷も増加し易くなる。これに対し、ECU20は、内燃機関1の発生トルクを増加させるべく燃料噴射量(及び吸入空気量)を増加させるため、内燃機関1において燃焼に供される燃料量が増加し、それに応じて内燃機関1の発熱量が増加する。
この結果、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bにおいて内燃機関1から冷却水へ伝達される熱量が増加することになり、冷却水の温度が速やかに上昇する。
ここで図38に戻り、ECU20は、上記したS3808の処理を実行し終えると、S3809において水温センサ19の出力信号値(第2の冷却水温度):THW2を再度読
み込む。
S3810では、ECU20は、前記S3809において読み込まれた第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S3810において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S3806において蓄熱処理を実行し、次いでS3807において蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
一方、前記S3810において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度未満で
あると判定された場合には、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
このようにECU20が図38に示すような蓄熱制御ルーチンを実行することにより、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際には内燃機関1を強制的に高負荷運転させることが可能となり、本発明に係る機関負荷増加手段が実現されることとなる。
この結果、内燃機関1が如何なる運転条件下にあっても、冷却水の温度を蓄熱適応温度以上まで高めることが可能となり、蓄熱容器13内に蓄熱適応温度以上の冷却水を貯蔵することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関1が長期間運転停止された後に始動された場合であっても、予熱により吸気ポート壁温を所定温度:Tまで高めることが可能となり、以て始動時及び始動後の排気エミッションを目標エミッションレベル以下に抑えることが可能となる。
尚、本実施の形態では、変速機の変速比が増速側へ変更されることを禁止することにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させる例について述べたが、変速機の変速比を強制的に減速側へ変更することにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させるようにしてもよい。
<第12の実施の形態>
次に、本発明に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の第12の実施の形態について図39〜図40に基づいて説明する。ここでは、前述した第8の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
本実施の形態と前述した第8の実施の形態との相違点は、前述した第8の実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、排気絞り弁107の開度を絞ることにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させて冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高めるのに対し、本実施の形態では蓄熱容器13に熱を蓄える場合に、車両の制動装置を作動させることにより内燃機関1を強制的に高負荷運転させて冷却水の温度を蓄熱適応温度まで高める点にある。
図35に示すように、本実施の形態に係る内燃機関1を搭載した車両170には4つの車輪171が設けられており、各車輪171には制動装置172が取り付けられている。前記制動装置172は、アクチュエータ173と油圧通路によって接続されており、前記アクチュエータ173からの油圧が印加されたときに車輪171の回転を制動するよう構成されている。
前記アクチュエータ173は、ECU20からの制御信号に従って、前記制動装置172に対する油圧の印加と解放とを切り換えるとともに、前記制動装置172へ印加すべき油圧の高さを調整するよう構成されている。
このように構成された車両170では、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がない時(以下、通常時と称する)は、制動装置172を通常通りに作動させるべくアクチュエータ173を制御する。
この場合、アクチュエータ173は、車両170の運転者が行う制動操作に従って、前記アクチュエータ173に対する油圧の印加と解放とを切り換えるとともに、前記アクチュエータ173に対して印加すべき油圧の高さを調整する。
一方、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がある時(以下、蓄熱時と称する)には、ECU20は、前記制動装置172を強制的に作動させるべく前記アクチュエータ173を制御する。
この場合、制動装置172が強制的に車輪171の回転を制動するため、内燃機関1が車輪171を回転駆動する上で必要となるトルクが増加し、以て内燃機関1の負荷が増加することになる。
従って、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際に、制動装置172を強制的に作動させることにより、内燃機関1の負荷を増加させることが可能となる。
以下、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関の作用について述べる。ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵するにあたり、図40に示すような蓄熱制御ルーチンを実行する。この蓄熱制御ルーチンは、ECU20に内蔵されたROMに予め記憶されているルーチンであり、所定時間毎(例えば、クランクシャフトが所定角度回転する度)に繰り返し実行されるルーチンである。
蓄熱制御ルーチンにおいて、ECU20は、先ずS4001において、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている故障判定フラグ記憶領域へアクセスし、その故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されているか否かを判別する。
前記S4001において前記故障判定フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に高温の冷却水を貯蔵する必要がないとみなし、S4011へ進む。
S4011では、ECU20は、制動装置172を通常通りに作動させるべくアクチュエータ173を制御する。この場合、制動装置172は、車両170の運転者の制動操作に応じて作動することになるため、内燃機関1に係る負荷も通常の負荷となる。
一方、前記S4001において前記故障判定フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、S4002へ進み、ECU20のRAMやバックアップRAM等に予め設定されている蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されているか否かを判別する。
前記S4002において蓄熱完了フラグ記憶領域に“1”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が既に完了しているとみなし、S4011へ進む。S4011では、ECU20は、制動装置172を通常通りに作動させるべくアクチュエータ173を制御し、本ルーチンの実行を終了する。
前記S4002において蓄熱完了フラグ記憶領域に“0”が記憶されていると判定された場合は、ECU20は、蓄熱容器13に対する冷却水の貯蔵処理が未だに完了していないとみなし、S4003へ進む。
S4003では、ECU20は、水温センサ19の出力信号(第1の冷却水温度):THW1を読み込む。
S4004では、ECU20は、前記S4003で読み込まれた第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S4004において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S4005へ進み、制動装置172を通常通りに作動させるべくアクチュエータ173を制御して、内燃機関1の負荷を通常の負荷に戻す。
続いて、ECU20は、S4006ヘ進み、蓄熱処理を実行する。具体的には、ECU20は、電動ウォーターポンプ14を停止状態に維持し、第6ヒータホース11fを遮断し且つ第1バイパス通路15と第7ヒータホース11gを導通させるべく第1の流路切換弁17を制御し、更に第2ヒータホース11bを遮断し且つ第1ヒータホース11aと第2バイパス通路16を導通させるべく第2の流路切換弁18を制御することにより、前述した第1の実施の形態における図6の説明で述べたような循環回路を成立させ、ヘッド側冷却水路2aから流出した高温の冷却水を蓄熱容器13へ貯蔵させる。
この場合、蓄熱適応温度以上の極めて高温な冷却水が蓄熱容器13に貯蔵されることになり、蓄熱容器13内に多量の熱が蓄えられることとなる。
ECU20は、上記したような蓄熱処理を実行し終えると、S4007へ進み、前述した蓄熱完了フラグ記憶領域へアクセスし、その蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。ECU20は、前記S4007の処理を実行し終えると、本ルーチンの実行を一旦終了する。
また、前述したS4004において前記第1の冷却水温度:THW1が蓄熱適応温度未
満であると判定された場合には、ECU20は、S4008へ進む。S4008では、E
CU20は、制動装置172を強制的作動させるべくアクチュエータ173を制御する。
この場合、制動装置172が車輪171の回転を制動することになるため、内燃機関1が車輪171を回転駆動する上で必要となるトルクが増加し、以て内燃機関1の負荷が増加することになる。これに対し、ECU20は、内燃機関1の発生トルクを増加させるべく燃料噴射量(及び吸入空気量)を増加させるため、内燃機関1において燃焼に供される燃料量が増加し、それに応じて内燃機関1の発熱量が増加する。
この結果、ヘッド側冷却水路2a及びブロック側冷却水路2bにおいて内燃機関1から冷却水へ伝達される熱量が増加することになり、冷却水の温度が速やかに上昇する。
ここで図40に戻り、ECU20は、上記したS4008の処理を実行し終えると、S4009において水温センサ19の出力信号値(第2の冷却水温度):THW2を再度読
み込む。
S4010では、ECU20は、前記S4009において読み込まれた第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であるか否かを判別する。
前記S4010において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度以上であると
判定された場合には、ECU20は、S4006において蓄熱処理を実行し、次いでS4007において蓄熱完了フラグ記憶領域の値を“0”から“1”へ書き換える。
一方、前記S4010において前記第2の冷却水温度:THW2が蓄熱適応温度未満で
あると判定された場合には、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
このようにECU20が図38に示すような蓄熱制御ルーチンを実行することにより、蓄熱容器13に冷却水を貯蔵する際には内燃機関1を強制的に高負荷運転させることが可能となり、本発明に係る機関負荷増加手段が実現されることとなる。
この結果、内燃機関1が如何なる運転条件下にあっても、冷却水の温度を蓄熱適応温度以上まで高めることが可能となり、蓄熱容器13内に蓄熱適応温度以上の冷却水を貯蔵することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る蓄熱装置を備えた内燃機関によれば、内燃機関1が長期間運転停止された後に始動された場合であっても、予熱により吸気ポート壁温を所定温度:Tまで高めることが可能となり、以て始動時及び始動後の排気エミッションを目標エミッションレベル以下に抑えることが可能となる。
尚、以上述べた第1〜第12の実施の形態における冷却水循環系は、電動ウォーターポンプ14による冷却水の流れ方向と機械式ウォーターポンプ10による冷却水の流れ方向とが同一であるため、機械式ウォーターポンプ10の作動状態に関わらず蓄熱処理を行うことが可能となるが、電動ウォーターポンプ14による冷却水の流れ方向と機械式ウォーターポンプ10による冷却水の流れ方向とが逆になる場合には、機関回転数が高くなる状況下において電動ウォーターポンプ14の吐出圧力に比して機械式ウォーターポンプ10の吐出圧力が高くなるため、蓄熱処理を行うことができない。
従って、電動ウォーターポンプ14による冷却水の流れ方向と機械式ウォーターポンプ10による冷却水の流れ方向とが逆になる冷却水循環系では、機関回転数が所定回転数以下のときに蓄熱処理を実行することが好ましい。