JP2008189722A - ポリエチレンテレフタレートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低分子量のPETプレポリマー粒子を熱処理して、粒子の融着を生ずることなく大きな重縮合反応速度で固相重縮合し、高分子量のPETを短時間で効率良く製造する。
【解決手段】 固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のPETプレポリマーを、固体状態で熱処理して固有粘度を0.70dL/g以上とするPETの製造方法,固体状態での熱処理が、下記1),2)の昇温工程と固相重縮合工程をこの順で含む。
1)昇温工程;PETプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、温度(T1−15)(℃)以下の温度から昇温を開始して温度T1(℃)(220℃≦T1≦245℃)まで20分以内で昇温し、温度T1(℃)で保持する時間が60分未満。
2)固相重縮合工程;昇温工程を経たPETプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で温度T2(℃)(195℃≦T2<T1)で熱処理する。
【選択図】図1

Description

本発明は、低分子量のポリエチレンテレフタレートを固体状態で熱処理することにより高分子量のポリエチレンテレフタレートを製造する方法に関する。詳しくは、低分子量のポリエチレンテレフタレートプレポリマーを特定条件で昇温した後、固相重縮合反応を行うことにより、常法よりも短時間で高分子量のポリエチレンテレフタレートを製造できる方法に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略すことがある)は、機械的強度、化学的安定性等その優れた特性により数多くの材料及び製品、例えば繊維、生地、成形用樹脂及び飲料用ボトルなどで幅広く用いられている。そして、PETは、その用途に応じて必要とされる分子量(固有粘度)が異なり、例えば、ボトル用では通常0.70〜0.95dL/gであり、タイヤコード用では通常0.95〜1.20dL/gであるとされている。
そのため上記用途に必要な成形加工性、機械的特性を引き出すためには、分子量(固有粘度)を所定のレベルにまで上げる必要があり、その方法としてポリエチレンテレフタレートの原料を溶融重縮合して得られるPETプレポリマーを引き続き固相重縮合し、高分子量化する方法が工業的に広く用いられている。固相重縮合は、通常溶融重縮合によって得られたPETプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理することにより行われるが、所望の分子量に達するのに比較的長時間を要するために、より生産性に優れた製造方法が望まれている。かかる方法として、溶融重縮合で比較的低重合度のPETプレポリマーを得、このプレポリマーを高温で固相重縮合する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、固相重縮合工程において、120℃程度から徐々に温度を上げていく方法が開示されているが、徐々に昇温して固相重縮合を行う特許文献1の方法では、特に比較的低重合度のPETプレポリマーを固相重縮合する場合、十分な固相重縮合反応速度を得ることができず、高分子量のPETを短時間で製造することはできなかった。
また、特許文献2には、プレポリマー粒子を熱伝達媒体と接触させて、205〜240℃の範囲の温度まで10分未満で加熱すると共に、その到達温度を少なくとも1時間維持して固相重縮合を行う方法が開示されている。しかし、この方法では、このように、昇温後の到達温度を1時間以上維持するためには、通常、移動床反応機を用いるが、その場合、高温保持時間が長いために、反応機の下部において、粉体荷重によるペレット同士の融着が発生しやすい問題がある。
特許第3540867号公報 特表2004−537622号公報
本発明の課題は、上記技術背景に鑑み、低分子量のポリエチレンテレフタレートプレポリマー粒子を熱処理して、粒子の融着を生ずることなく大きな重縮合反応速度で固相重縮合し、より高分子量のポリエチレンテレフタレートを短時間で効率良く製造しうる工業的に有用な製造方法を提供することである。
本発明者は上記課題に鑑み、固相重縮合における熱処理条件を詳細に検討し、「昇温工程」及び「固相重縮合工程」をこの順で含み、昇温工程の昇温条件を特定の範囲にすることにより、その後の固相重縮合工程の反応速度が大きくなり、常法よりも短時間で高分子量のポリエチレンテレフタレートを製造できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエチレンテレフタレートプレポリマーを、固体状態で熱処理して固有粘度を0.70dL/g以上とするポリエチレンテレフタレートの製造方法であって、固体状態での熱処理が、昇温工程、及び、固相重縮合工程をこの順で含み、かつ、各々の工程が下記1)、2)を満足することを特徴とするポリエチレンテレフタレートの製造方法。
1)昇温工程が、ポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、温度(T1−15)(℃)以下の温度から昇温を開始して温度T1(℃)まで昇温する過程を含み、温度T1(℃)が下記(式1)を満足し、温度(T1−15)(℃)からT1(℃)までを20分以内で昇温し、温度T1(℃)で保持する過程の時間が60分未満である工程である。
220℃≦T1≦245℃ (式1)
2)固相重縮合工程が、昇温工程を経たポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつ、その熱処理の温度T2(℃)が下記(式2)を満足する工程である。
195℃≦T2<T1 (式2)
本発明によれば、溶融重縮合によって得られた低分子量のPETプレポリマー粒子を融着させることなく、大きな重縮合反応速度で固相重縮合を行って高分子量のPETを効率的に製造することができる。
即ち、本発明のPETの製造方法は、溶融重縮合によって得られたPETプレポリマー粒子を不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理、即ち固体状態で重縮合(固相重縮合)を進めることにより、各種の用途に適した所望の高分子量のPETを効率よく製造する方法であり、その際、PETプレポリマーとして低分子量のものを使用し、所定条件下の昇温工程を経た後、固相重縮合を行うことを要件とするものである。この所定条件に制御された昇温工程後に固相重縮合を行うことにより、高分子量領域において大きな重縮合反応速度が得られるため、固相重縮合時間の短縮、重縮合に要する熱量の低減等の生産性向上や省エネルギー化が可能となる。
本発明の方法により得られるPETは、分子量が高く、飲料用ボトルや工業用繊維など幅広い用途に用いることができる。また、低分子量のPETプレポリマーを固相重縮合の原料として利用できるので、この低分子量PETプレポリマーを製造するための溶融重縮合工程における設備負荷も低減することができ、経済的にも有利である。
以下に本発明のPETの製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
本発明における熱処理は、主として昇温工程と固相重縮合工程とよりなるが、昇温工程に先立つ結晶化工程を有していても良く、また、乾燥工程等の、通常、常温を超える温度条件下で固体状のPETプレポリマーを処理する工程などが含まれていてもよい。
なお、本発明では、PETの分子量の指標として固有粘度を用いる。
<PETプレポリマー>
本発明に用いるPETプレポリマーを得る方法は特に限定されず、例えばPETの慣用の製造方法により製造することができる。具体的には、通常、テレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、要すればエステル化又はエステル交換触媒の存在下エステル化反応及び/又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合触媒を使用して溶融重縮合させることにより製造される。詳しくは、例えば、原料のジカルボン酸成分とジオール成分とを、スラリー調製槽に投入して攪拌・混合して原料スラリーとし、エステル化反応槽で常圧〜加圧下、加熱下で、反応によって生ずる水などを留去しつつエステル化反応させた後、得られたエステル化反応物としてのPET低分子量体(オリゴマー)を重縮合槽に移送し、減圧下、加熱下で、重縮合触媒を使用して溶融重縮合させてPETプレポリマーを得る方法が挙げられる。
本発明においてテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするとは、PETを製造するのに使用する全ジカルボン酸成分に対して90モル%以上、好ましくは95モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であることをいい、またエチレングリコールを主成分とするとはPETを製造するのに使用する全ジオール成分に対してエチレングリコールが90モル%以上、好ましくは95モル%以上であることをいう。
ここで、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分の例としては、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸等とこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、エチレングリコール以外のジオール成分の例としてはジエチレングリコールの他、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチ
ロール等の脂環式ジオール、及びキシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、並びに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
本発明において使用することができるエステル化又はエステル交換触媒、及び重縮合反応触媒としては特に制限されず、公知の触媒から適宜選択して添加使用することができる。触媒の例としては、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン等のアンチモン化合物、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム等のチタン化合物等が挙げられ、これらは単独で或いは2種以上を併せて用いることができる。なかでもチタン化合物は重縮合反応活性が高いため好ましく用いられる。
触媒の使用量は、得られるPETプレポリマーに対して用いる触媒の金属原子換算で通常1〜400質量ppmである。なお、チタン化合物はエステル化及び/又はエステル交換触媒としても作用するので、これらの反応に使用する場合はその使用量を考慮してこの範囲となるように用いるのが好ましい。
また上記反応の際、正リン酸、正リン酸アルキルエステル、エチルアシッドホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート、亜リン酸、亜リン酸アルキルエステル等のリン化合物を安定剤として用いることができる。その使用量は、得られるPETプレポリマーに対してリン原子換算で1〜1000質量ppmとなる量とするのが好ましく、2〜200質量ppmとなる量とするのが特に好ましい。
更に、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、炭酸マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の化合物を前記触媒と共に使用することもできる。
本発明に用いるPETプレポリマーのより具体的な製造方法の代表例としては、以下の方法が挙げられる。
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールを主成分とするジオールとを、通常、ジカルボン酸成分:グリコール成分を1:1〜1:2(モル比)で用い、エステル化反応槽で要すればエステル化触媒の存在下、通常240〜280℃程度の温度、通常常圧乃至大気圧に対する相対圧力で0.4MPa程度の加圧下で、1〜10時間程度エステル化反応させるか、或いはエステル交換触媒の存在下エステル交換反応を行い、得られた生成物(PET低分子量体)を、重縮合反応槽に移送し、次いで溶融重縮合する。溶融重縮合は、重縮合触媒を使用して通常、250〜290℃程度の温度、常圧から漸次減圧として最終的に通常絶対圧力で10〜0.1kPa程度の減圧下で、撹拌下、固有粘度が後述の如く、0.18dL/g〜0.40dL/gとなるまで溶融重縮合させる。
なお、ジカルボン酸成分がジカルボン酸のエステル形成性誘導体、例えばテレフタル酸ジメチルなど適度な融点のものである場合、ジオールとのスラリーとせずに溶融してからジオールとのエステル交換反応に供することもできる。また、上記の反応は連続式、回分式、半回分式の何れか1以上の方法で行うことができ、また、エステル化反応槽(又はエステル交換反応槽)、溶融重縮合反応槽は、それぞれ一段としても多段としてもよい。
溶融重縮合反応で得られたPETプレポリマーは、溶融重縮合反応槽に配管及び/又はギヤポンプ及び/又はフィルターを介して接続されたダイヘッドに供給され、ダイの先端に設けられた複数のダイホールから、ストランド状又は滴状に吐出される。ストランド状に吐出されたPETプレポリマーは、例えばストランドカッターなどで切断されペレット状に粒子化される。
本発明に用いる溶融重縮合反応で得られたPETプレポリマー粒子は、好ましくは、平均質量が0.1〜30mg/粒であり、下限値は0.5mg/粒が更に好ましく、特に好ましくは0.8mg/粒であり、一方、上限値は10mg/粒が更に好ましく、より好ましくは5mg/粒、特に好ましくは3mg/粒である。本発明に用いるPETプレポリマー粒子の平均質量が上記下限値以上である場合、その後の工程や気力輸送の際にトラブルが起こりにくく、また、上記上限値以下である場合、所望の分子量に達するのに必要な固相重縮合反応時間を短くできるので、それぞれ一層好ましい。なお、本明細書でいうPETプレポリマーの平均質量とは、精密天秤を用いて、PETプレポリマー粒子30粒の合計質量を0.1mgの桁まで測定し、測定値を30で除することによって算出される値のことをいう。
本発明に用いられるPETプレポリマーの固有粘度は0.18〜0.40dL/gである。固有粘度の下限値は好ましくは0.20dL/gであり、上限値は好ましくは0.38dL/g、特に好ましくは0.35dL/gである。該プレポリマーの固有粘度が上記下限値未満の場合、粒子化する時に微粉が発生しやすく、また、所望の高分子量に到達するのに必要な固相重縮合反応時間が非常に長くなるので好ましくない。他方、上記上限値を超えると、本発明の特徴である、高分子量のPETを得るのに必要な反応時間を短縮する効果が得られず、加えて溶融重縮合工程において高粘度液体を撹拌する設備や、高真空反応を行う設備等の高価な設備が必要となり、製造プロセス全体としては本発明の効果が減殺される。
本発明に用いるPETプレポリマーの末端カルボキシル基濃度は100当量/トン以下であることが好ましい。末端カルボキシル基濃度は、より好ましくは70当量/トン以下、更に好ましくは40当量/トン以下、特に好ましくは30当量/トン以下である。PETプレポリマーの末端カルボキシル基濃度が100当量/トンを超えると、その後工程である固相重縮合工程において重縮合反応速度が小さくなる傾向がある。
<熱処理>
上記のようにして得られたPETプレポリマーの粒子は、本発明の方法により、固体状態で熱処理され、所定の固有粘度まで固相重縮合される。本発明の熱処理は、主として昇温工程及び固相重縮合工程を包含する。これらの工程は回分法でも行うことができるが連続方法で行うことが生産効率の点で好ましい。本発明の方法で得られるPETの固有粘度は0.70dL/g以上である。0.70dL/g未満のPETを製造する場合には、本発明の方法を適用しなくても、溶融重縮合方法のみで目的とする固有粘度のポリエチレンテレフタレートを得る事ができる。
本発明の熱処理は、下記の少なくとも昇温工程、及び固相重縮合工程をこの順に含む。
1)昇温工程;PETプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、温度(T1−15)(℃)以下の温度から昇温を開始して温度T1(℃)まで昇温する過程(以下、「昇温過程」と称す。)を含み、温度T1(℃)が下記(式1)を満足し、温度T1−15(℃)からT1(℃)までを20分以内で昇温し、温度T1(℃)で保持する過程(以下、「保持過程」と称す。)の時間が60分未満である工程。
220℃≦T1≦245℃ (式1)
2)固相重縮合工程;昇温工程を経たPETプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつ、その熱処理の温度T2(℃)が下記(式2)を満足する工程。
195℃≦T2<T1 (式2)
これら昇温工程及び固相重縮合工程は不活性ガス雰囲気下又は減圧下で行われるが、ここで「不活性ガス」とは、酸素濃度が0.1体積%以下、好ましくは0.05体積%以下であり、かつ、実質的にポリエステル(PET)と反応しない気体のことである。実質的にポリエステルと反応しない気体として、具体的には、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、二酸化炭素等が例示でき、主に経済性の点から窒素が好ましく用いられる。また、「減圧下」とは、絶対圧力2kPa以下の圧力の状態にあることをいう。
また、本発明において、昇温工程に供されるPETプレポリマーは、結晶化度が15質量%以上、好ましくは30質量%以上であることが好ましく、また、70質量%以下、好ましくは60質量%以下であることが好ましい。昇温工程に供されるPETプレポリマーの結晶化度が15質量%未満の場合、昇温工程においてペレット同時が融着しやすくなる傾向にある。また、結晶化度が70質量%を超えると、固相重縮合工程における固相重縮合速度が小さくなることがある。PETプレポリマーの結晶化度を上げるための手段については、後述する。
本発明の昇温工程のうち、昇温過程では、温度(T1−15)(℃)以下の温度から昇温を開始して温度T1(℃)まで昇温することが必要であり、温度(T1−15)(℃)から温度T1(℃)まで20分以内に昇温して220℃以上245℃以下の最高到達温度T1(℃)にする必要がある。
また、昇温過程後、温度T1(℃)に保持する保持過程の時間は、60分以下、好ましくは55分以下、特に53分以下である。
この保持過程は、必ずしも行う必要はなく、(T1−15)(℃)からT1(℃)に昇温した後、直ちに固相重縮合工程に移行することもできる。ただし、60分以下の時間で所定の時間、例えば10〜40分程度の保持過程を設けることにより、比較的小型の装置を用いて、その後の固相重縮合工程における固相重縮合反応速度をより一層高めることができる。
なお、本発明において、昇温過程後、最高到達温度T1(℃)に到達した後の保持過程は、必ずしも、この最高到達温度T1(℃)で一定で行う必要はなく、(T1±5)(℃)、好ましくは(T1±2)(℃)の範囲で、若干温度が上下しても良い。ただし、温度が上下した場合であっても、保持温度は、220℃以上245℃以下の範囲内である必要がある。
本発明において、昇温工程の滞留時間に相当する、(T1−15)(℃)以下の温度から昇温を開始してT1(℃)まで昇温する昇温過程と、その後の保持過程との合計の時間は、好ましくは70分未満、より好ましくは65分以下、更に好ましくは60分以下であることが好ましい。昇温過程と保持過程の合計時間、即ち、昇温工程の滞留時間がこの範囲である場合、上記固相重縮合速度が大きいという昇温工程の効果のほかに、昇温工程に用いる設備を小型化でき、また、昇温工程における粒子同士の融着をより一層確実に防止することができるため、一層好ましい。
昇温工程に用いる設備はPET粒子を加熱昇温できる設備であれば特に制限されず、不活性ガスを用いた流動床が、粒子同士の融着や粒子の破砕などが少ないため、通常、好ましく用いられる。
このような昇温工程を続けることにより、その後の固相重縮合の反応速度が大きいという本発明の効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推定される。
即ち、ポリエステルプレポリマーを結晶化させた場合、結晶構造が形成されることでポリエステル分子鎖の運動性が低下し、一部の末端基が不活性化するが、特に低分子量で結晶化させた場合、不活性化する末端基数の絶対値が大きくなるため、固相重縮合後半に重縮合反応速度が小さくなる。これに対し、温度差15℃以上という加熱処理を短時間で与えることにより、固体状態は保つものの、結晶の溶融と再結晶化が起こり、多数の末端基が存在する非晶領域が形成されるため、不活性化していた末端基の一部が活性を取り戻し、重縮合反応速度が増大すると推定している。
昇温幅が15℃未満の場合や、昇温に要する時間が20分超過の場合は、本発明の固相重縮合反応速度の向上効果が得られない場合がある。
昇温工程を経た後に固相重縮合工程に供されるプレポリマーは、固有粘度が0・30dL/g以上であるのが好ましく、より好ましくは0.35dL/g以上、更に好ましくは0.38dL/g以上、特に好ましくは0.40dL/g以上である。昇温工程を経たプレポリマーの固有粘度がこの範囲である場合、昇温工程後の固相重縮合工程における固相重縮合反応速度が大きくなるため、一層好ましい。昇温工程を経た後に固相重縮合工程に供されるプレポリマーの固有粘度と、その後の固相重縮合工程を経て得られるポリエステルの固有粘度との差は、通常0.10dL/g以上、好ましくは0.20dL/g以上である。
この昇温工程に続く固相重縮合工程の温度(T2)は195℃以上昇温工程の最高到達温度T1(℃)未満であり、T2の下限値は好ましくは210℃、更に好ましくは215℃である。T2の上限値は好ましくは(T1−1)℃、更に好ましくは(T1−2)℃である。T2が195℃未満であると、目標の重合度に到達するまでに長時間を要することとなる。また、T2が昇温工程の最高到達温度(T1)以上であるとPET粒子同士の融着が起き易いため好ましくない。
固相重縮合工程の平均滞留時間は、その温度にもよるが、通常2時間以上50時間以下であり、下限は好ましくは4時間以上である。平均滞留時間がこの範囲である場合、固相重縮合工程での固有粘度上昇値が大きくなり、所望の重合度のPETを効率的に得ることができるため、一層好ましい。
本発明の固相重縮合工程は、連続法が好ましく、生産効率や反応制御、操作性等の点から連続式移動床が特に好ましく用いられる。
本発明の昇温工程に先立って、実質的に非晶状態の固体状PETプレポリマーの一部を結晶化させる結晶化工程を設けることが好ましい。PETプレポリマーの一部が結晶化されることでその後の固相重縮合工程などでPET粒子同士が融着するのを軽減することができる。非晶状態の固体状PETプレポリマーの結晶化は、通常PETプレポリマーを熱処理することにより行われるが、その結晶化工程の温度(Tc)は通常、110℃以上200℃以下であり、好ましくは下限が140℃以上、更に好ましくは下限が160℃以上である。結晶化工程の温度(Tc)がこの範囲である場合、該プレポリマー粒子同士が融着しにくく、かつ、比較的短時間で十分な結晶化度に到達するため、一層好ましい。また、次工程以降で融着しにくい傾向にあるため、一層好ましい。
結晶化工程においては、PETプレポリマーの結晶化を進行させて、前述の如く、結晶化度15〜70質量%、好ましくは30〜60質量%程度のPETプレポリマーを得ることが好ましい。結晶化工程はPET粒子を加熱できる設備であれば特に制限されないが、不活性ガスを用いた流動床で行うと粒子同士の融着などが少なく、好ましい。
更に、この結晶化工程の前に、PETプレポリマーをTcまで昇温する工程を設けることもでき、結晶化工程で昇温及び結晶化を行ってもよい。また結晶化工程でプレポリマーの乾燥を行ってもよい。また、プレポリマーの乾燥は昇温工程の初期に行ってもよい。
昇温工程に供されるPETプレポリマーの結晶化度を高める他の手段として、上記結晶化度工程の他、以下に例示される方法も採用することができる。
即ち、溶融状態のPETプレポリマーを液滴として、気相中、及び/又は、金属ベルトのような固体状熱伝達媒体の表面において徐々に冷却、固化させて一部が結晶化したPETプレポリマー粒子とする方法や、溶融状態のPETプレポリマーを液体中で液滴とした後、徐々に冷却、固化させて一部が結晶化したPETプレポリマー粒子とする方法等の、実質的に非晶状態のPETプレポリマー粒子を経由させず、溶融状態から直接、一部が結晶化した状態のPETプレポリマー粒子を得る方法が例示される。
また、本発明においては、昇温工程後の固相重縮合工程の後に、更に第2段昇温工程と第2段固相重縮合工程を設けてもよい。この場合、第2段昇温工程に先立つ固相重縮合工程の温度(T2)は195℃以上225℃以下とし、第2段昇温工程の温度(T3)はT2(℃)よりも15℃以上高く240℃以下、第2段固相重縮合工程の温度(T4)は205℃以上240℃以下であるのが、それぞれ好ましい。ここで、第2段昇温工程は、T2(℃)以下の温度から昇温を開始して温度(T3)まで昇温する工程であり、第1段固相重縮合工程の熱処理温度(T2)(℃)から(T2+15)℃までを20分以内で昇温することが好ましい。更に同様にして、昇温工程と固相重縮合工程とを、3回以上交互に繰り返してもよい。
このように、比較的高温まで短時間で昇温する昇温工程と、比較的低温の固相重縮合工程とを交互に繰り返す方法は、特に、共重合量が多いため融着しやすいPETプレポリマーを固相重縮合する際に、固相重縮合工程を移動床で実施する場合の融着を抑制できる傾向にあり、また、長時間固相重縮合を実施することに伴い発生する一部の末端基の不活性化を抑制できる傾向にあるため、全体の熱処理時間を短縮できる傾向にあることから、一層好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における物性の測定は、以下の方法により行った。
<固有粘度(IV)>
試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比 1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00×10−2kg/Lとなるように、非晶状態のPETは110℃、30分で、固相重縮合後のPETは140℃、30分でそれぞれ溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(センテック社製「2CH型DJ504」)にて、濃度が1.00×10−2kg/Lの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、下式により算出した。
IV=[(1+4KH・ηsp0.5−1]/(200KH・C)
ここで、 ηsp=η/η0−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(kg/L)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
<PETプレポリマー粒子の平均質量>
精密天秤を用いて、PETプレポリマー粒子30粒の合計質量を0.1mgの桁まで測定し、測定値を30で除することにより、粒子1粒当たりの平均質量を算出した。
<末端カルボキシル基濃度 (AV)>
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mLを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料を使用せずに同様の操作を実施し、これらの結果を用いて以下の式により末端カルボキシル基濃度を算出した。
AV(当量/トン)=(A−B)×0.1×f/W
〔ここで、Aは、試料を用いた場合の滴定に要した0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Bは、ブランクでの滴定に要した0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Wは、ポリエステル樹脂試料の量(g)、fは、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。〕
なお、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、試験管にメタノール5mLを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mLで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1規定の塩酸を標準液として0.2mL採取して加え、再度、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定し(以上の操作は、乾燥窒素ガスを吹き込みながら行った。)、以下の式により算出した。
力価(f)=0.1規定の塩酸の力価×0.1規定の塩酸の採取量(μL)
/0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)
<結晶化度(X)>
結晶化度(X)の測定は、完全非晶の密度d=1335kg/m、完全結晶の密度d=1455kg/mとして、試料の密度d(kg/m)から、下式により算出した。
=(d−d)d/(d−d)d ×100(質量%)
また、試料の密度dは、測定セルに試料6〜8gを精秤し、測定温度23℃にて乾式自動密度測定装置(島津製作所製Accupyc1330)を用いて測定した。
<ジエチレングリコール(DEG)共重合モル%>
試料となるPETプレポリマー粒子5.00gに、4規定−水酸化カリウム/メタノール溶液50mLを加えて還流冷却器をセットし、マグネチックスターラ付きホットプレート(表面温度200℃)上で攪拌しながら、2時間加熱還流し加水分解する。放冷後、高純度テレフタル酸約20gを加えて、十分振とうして中和し、pHを9以下としたスラリーを、グラスフィルター(11G−4)を用いて濾過した後、メタノール2mLで2回洗浄して濾液と洗液を合わせ、ガスクロマトグラフィーへの供試液とする。供試液1μlをマイクロシリンジにて、島津製作所社製ガスクロマトグラフィー(形式GC−14APF)に注入し、エチレングリコール(EG)及びジエチレングリコール成分のピークの面積から、全グリコール成分に対するジエチレングリコール成分のモル%を、下式に従い計算した。
DEGの共重合モル%=(ADEG×CfDEG)/(Σ(A×C))×100
DEG : ジエチレングリコール成分の面積(μV・秒)
fDEG : そのグリコール成分の補正係数
A : 各グリコール成分の面積(μV・秒)
: 各グリコール成分の補正係数
<イソフタル酸共重合モル%>
核磁気共鳴装置(日本電子社「JNM−EX270型」)を用いて、試料となるPETプレポリマー粒子をトリフルオロ酢酸に溶解させた溶液のH−NMRを測定して各ピークを帰属し、ピークの積分値から、全カルボン酸成分に対するイソフタル酸成分のモル%を共重合量とした。
(実施例1)
<チタン−マグネシウム−リン系重縮合触媒の調製>
300mL摺り栓付きの三角フラスコ中に、エタノール(特級、純度99.6%以上)を50g入れ、次に酢酸マグネシウム・4水和物8.58gを添加し、スターラーで20分間攪拌して、ほぼ均一に溶解させた。次に、ジブチルホスフェート(商品名:DBP、城北化学工業社製)を15分掛けて8.41g入れ、更に、テトラ−n−ブトキシチタネート13.64gを5分掛けて添加し、10分間攪拌することで均一溶液を得た。次に、エバポレーターを用いて、オイルバスを60℃に設定して、内容物が55.61gとなるまでエタノールを留去した。次に、エチレングリコール31.56gを添加した。このエチレングリコール溶液中の低沸物を圧力1.3kPa(Aは絶対圧力であることを示す)にて40分掛けて留去し、48.62gの流動性あるチタン−マグネシウム−リン系重縮合触媒を得た。この重縮合触媒液中のチタン濃度は、チタン原子として3.8重量%であった。
<PETプレポリマー粒子(A)の製造>
撹拌機、エチレングリコール仕込み配管及びテレフタル酸仕込み配管を具備するスラリー調製槽;スラリーやエステル化反応物を各エステル化反応槽へ移送する各配管;撹拌機、分離塔、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第一及び第二エステル化反応槽;エステル化反応物(オリゴマー)を溶融重縮合反応槽へ移送する配管;撹拌機、分離塔、オリゴマー受入れ口、触媒仕込み配管を具備する完全混合型第一溶融重縮合反応槽;撹拌機、分離塔、ポリマー受入れ口、ポリマー抜き出し口を具備するプラグフロー型第二及び第三溶融重縮合反応槽;プレポリマーを抜き出し口よりギヤポンプを介してダイプレートからストランド状に取り出し水冷下ストランドカットする粒子化装置(ストランドカッターはリーター・オートマチック社製ペレタイザー(P−USG100))を備えたPETプレポリマー連続製造装置を用いた。
前記のPETプレポリマー連続製造装置を用いて、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応し、更に溶融重縮合反応することにより得られた溶融状態のPETプレポリマーをダイプレートからストランド状に取り出し切断することで、PETプレポリマー粒子を製造した。具体的には以下の通りである。
スラリー調製槽にて、得られるPETに対してチタン原子として4質量ppmとなる量のテトラ−n−ブチルチタネートを含有するテレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール(モル比0.985:0.015:1.5)スラリーを調製した。また、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート400質量部をエステル化第一槽に仕込み窒素雰囲気下で溶融し、温度262℃、圧力96kPaG(Gは大気圧に対する相対圧力であることを示す)に保たれた中へ、前記のスラリー調製槽で調製されたスラリーを135質量部/時間で、ポリエステルとしての平均滞留時間が4.5時間になるように連続的に仕込み、分離塔から生成する水を留去しながらエステル化反応を行いつつ、反応液を連続的にエステル化第二反応槽へ移送した。
第二エステル化反応槽では、温度260℃、圧力5kPaG下、滞留時間1.5時間でエステル化反応を行い、移送配管を通じ完全混合型第一溶融重縮合反応槽へ連続的に移送すると同時に、この移送配管に、上記にて調製したチタン−マグネシウム−リン系重縮合触媒のエチレングリコール希釈液(濃度:
チタン原子として0.02質量%))を、得られるポリエステルプレポリマーに対して、チタン、マグネシウム、リンとしてそれぞれ4質量ppm、2 質量ppm、2.6質量ppmとなる量を連続的に添加した。
第一溶融重縮合反応槽では、温度270℃、圧力4.4kPaA(Aは絶対圧力であることを示す)下、滞留時間1.0時間にて反応を行い、移送配管を通じ第二溶融重縮合反応槽へ連続的に移送した。第二溶融重縮合反応槽では温度270℃、圧力4.4kPaA下、滞留時間1.0時間にて溶融重縮合反応を行い、移送配管を通じ第三溶融重縮合反応槽へ移送した。第三溶融重縮合反応槽では温度270℃、圧力4.4kPaA下、滞留時間0.8時間にて溶融重縮合反応を行った。
このようにして得られた溶融PETプレポリマーをそのまま、ギヤポンプ及び抜き出し配管を通じてダイヘッドへ導き、ダイホールからストランド状に取り出し、水冷後、リーター・オートマチック社製ペレタイザー(P−USG100)により造粒した。造粒方法はストランドカット法であり、具体的には、ストランド状PETプレポリマーを水と接触させて冷却させながら、水と共にカッター方向に搬送し、カッター前に設置された一対の引取ロールにて挟むことで引き取り、カッターに供給し、固定歯と回転歯とを有するカッターにて切断することにより、PETプレポリマー粒子を得た。
ここで、溶融PETプレポリマーの吐出量は100kg/時、温度は270℃とし、3mmφの円形ダイホールが6穴あるダイプレートから、水平方向から下向きに45°の角度を吐出方向として、ストランド状に吐出させた。
このストランド状PETプレポリマーを、100mm以上の空冷距離を経てストランドカッターの水冷却ゾーンに着水させ、50℃の水で水冷しながら搬送し、引取ロールにて引き取り、カッターに供給した。ストランドの引取速度は3.2m/秒であり、カッターは、引取ロールと回転歯の回転数の比を調整し、粒子の引取方向の長さが1.25mmとなるようにして粒子化した。
その結果、長さ1.25mm、幅1.2mm、厚さ0.9mmのほぼ直方体の両端に半円柱を付けた形状に近い楕円柱状のPETプレポリマー粒子を得た。この粒子の固有粘度は0.287dL/g、末端カルボキシル基濃度は26当量/トン、イソフタル酸の共重合量は1.5モル%、ジエチレングリコールの共重合量は2.0モル%、平均質量は1.8mg/粒であった。以降、このPETプレポリマー粒子を、「プレポリマー粒子(A)」と称する。
<熱処理>
<結晶化工程>
上記のプレポリマー粒子(A)30gを底面が130mm×170mmの角形で、深さが30mmのステンレス製バットに広げて置き、内部のガス温度が180℃のイナートオーブン(タバイエスペック社製IPHH−201M型)に入れ、イナートオーブンの内部に流通させる窒素の流量を50NL/分、温度を180℃の窒素流通下として、Tc=180℃で1時間の結晶化処理を行った。ここで、NLとは0℃1気圧における体積(L)のことである。結晶化処理後の試料の固有粘度は0.289dL/g、結晶化度は48質量%であった。
<熱処理装置>
上記の、プレポリマー粒子(A)を結晶化処理した試料を、図1に示すガラス製熱処理装置を用いて熱処理を行った。
以下、該熱処理装置について説明する。
図1に示す熱処理装置において、試料は、試料充填部の内径が45mmのガラス製熱処理管(1)に充填されている。熱処理管(1)には、ガス流量計(2)、窒素導入管(3)、窒素予熱管(4)を経由して、オイルバス(5)に充填されたオイルにより加熱された窒素が導入される。導入された窒素は、熱処理管(1)下部にある分散板(6)により分散され、熱処理管(1)内部で略均一な線速度を有する上昇流となって、試料層(7)を通過する。試料層(7)を通過した窒素は、熱処理管(1)上部にあるフィルター(8)を経由して、ガスパージ口(9)から熱処理管(1)の外部に排出される。熱処理管(1)は枝管(10)を有しており、その上部にある開口部(通常はガラス栓にて閉止してある)から試料の投入や試料の採取が可能である。また、熱処理管(1)内部の試料の温度は、熱電対(11)を備えた温度計(12)で測定できる。本実施例の範囲の温度、空塔線速度(ここで「空塔線速度」とは、試料層の空塔線速度を意味する(以下同様))においては、熱処理管(1)の内部温度は、オイルバス中のオイル温度よりも2℃低い温度となるため、目標とする固相重縮合温度に対して、オイルの温度は2℃高い温度に調節した。
<昇温工程>
熱処理管(1)に枝管(10)の開口部より、上記結晶化処理の後、室温まで冷却したプレポリマー粒子(A)30gを仕込み、窒素を流通して内部を窒素置換した。その後熱処理管(1)内の窒素の空塔線速度が235℃で1.0m/秒となるように窒素の流量をガス流量計(2)で設定し、オイルの温度が237℃に調節された第一のオイルバス(5)に熱処理装置を浸漬した。この時点を昇温工程(T1=235℃)の開始とする。試料の温度は10分間で235℃に到達したため、(T1−15℃)からT1までの昇温に要した時間は10分未満であった。昇温工程の開始から10分後に、枝管(10)の開口部より固有粘度測定用試料を採取した。
<固相重縮合工程>
試料採取後直ちに、窒素の空塔線速度が220℃で0.30m/秒となるように窒素の流量を変更し、オイルの温度が222℃に調節された第二のオイルバス(5)に熱処理装置を移した。この時点を固相重縮合工程(T2=220℃)の開始とした。固相重縮合開始点から2時間、6時間、10時間、18時間の時点で固有粘度測定用試料を採取した。
昇温工程後、及び、固相重縮合時に採取した測定用試料につき固有粘度をそれぞれ測定した。熱処理条件と測定結果を表1に示す。表1中、固有粘度IV=0.70dL/gへ到達までの時間は、IV=0.70前後の直近のデータを直交座標にて直線で結び、IV=0.70となる熱処理時間を内挿にて求め固相重縮合工程時間とし、これに昇温工程時間を加算することで求めており、結晶化工程の時間は含めない。
(実施例2)
実施例1において、昇温工程を以下の通りに変更し、固相重縮合工程で固有粘度測定用試料を採取する時間を固相重縮合開始点から4時間、8時間、16時間の時点に変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
<昇温工程>
熱処理管(1)に枝管(10)の開口部より、上記結晶化処理の後、室温まで冷却したプレポリマー粒子(A)30gを仕込み、窒素を流通して内部を窒素置換した。その後、熱処理管(1)内の窒素の空塔線速度が235℃で1.0m/秒となるように窒素の流量をガス流量計(2)で設定し、オイルの温度が237℃に調節された第一のオイルバス(5)に熱処理装置を浸漬した。この時点を昇温工程(T1=235℃)の開始とする。試料の温度は10分間で235℃に到達したため、(T1−15℃)からT1までの昇温に要した時間は10分未満であった。昇温工程の開始から60分後に、枝管(10)の開口部より固有粘度測定用試料を採取した。即ち、T1=235℃での保持時間(保持過程の時間)は50分である。
(比較例1)
実施例2において、昇温工程を以下の通りに変更した以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。この例の場合、昇温工程の最高到達温度T1が210℃であり、(式1)を満足しないため、IV=0.70dL/gへ到達するまでの時間が、実施例1及び2に比較して長くなった。なお、IV=0.70dL/gへ到達するまでの時間は、固相重縮合開始点から8時間、16時間の時点の固有粘度測定結果を結ぶ直線を引き、IV=0.70に外挿することで推算した。
<昇温工程>
熱処理管(1)に枝管(10)の開口部より、上記結晶化処理の後、室温まで冷却したプレポリマー粒子(A)30gを仕込み、窒素を流通して内部を窒素置換した。その後、熱処理管(1)内の窒素の空塔線速度が210℃で1.0m/秒となるように窒素の流量をガス流量計(2)で設定し、オイルの温度が212℃に調節された第一のオイルバス(5)に熱処理装置を浸漬した。この時点を昇温工程(T1=210℃)の開始とする。試料の温度は10分間で210℃に達したため、昇温に要した時間は10分未満である。昇温工程の開始から120分後に、枝管(10)の開口部より固有粘度測定用試料を採取した。即ち、T1=210℃での保持時間(保持過程の時間)は110分である。
Figure 2008189722
実施例及び比較例で用いた熱処理装置を示す模式図である。
符号の説明
1:熱処理管
2:ガス流量計
3:窒素導入管
4:窒素予熱管
5:オイルバス
6:分散板
7:試料層
8:フィルター
9:ガスパージ口
10:枝管
11:熱電対
12:温度計

Claims (10)

  1. 固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエチレンテレフタレートプレポリマーを、固体状態で熱処理して固有粘度を0.70dL/g以上とするポリエチレンテレフタレートの製造方法であって、固体状態での熱処理が、昇温工程、及び、固相重縮合工程をこの順で含み、かつ、各々の工程が下記1)、2)を満足することを特徴とするポリエチレンテレフタレートの製造方法。
    1)昇温工程が、ポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、温度(T1−15)(℃)以下の温度から昇温を開始して温度T1(℃)まで昇温する過程を含み、温度T1(℃)が下記(式1)を満足し、温度(T1−15)(℃)からT1(℃)までを20分以内で昇温し、温度T1(℃)で保持する過程の時間が60分未満である工程である。
    220℃≦T1≦245℃ (式1)
    2)固相重縮合工程が、昇温工程を経たポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつ、その熱処理の温度T2(℃)が下記(式2)を満足する工程である。
    195℃≦T2<T1 (式2)
  2. 昇温工程に供するポリエチレンテレフタレートプレポリマーの結晶化度が15質量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
  3. 昇温工程に先立つ結晶化工程を有しており、該結晶化工程がポリエチレンテレフタレートプレポリマーを110℃以上200℃以下の温度(Tc)で熱処理する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
  4. 固体状態での熱処理が連続的に行われることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
  5. 結晶化工程が流動床で実施されることを特徴とする、請求項3又は4に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
  6. 昇温工程が流動床で実施されることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
  7. 固相重縮合工程が連続式移動床で実施されることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
  8. ポリエチレンテレフタレートプレポリマーが粒子であり、その平均質量が0.1mg/粒以上30mg/粒以下であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
  9. ポリエチレンテレフタレートプレポリマーの末端カルボキシル基濃度が100当量/トン以下であることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
  10. ポリエチレンテレフタレートがチタン化合物を含有することを特徴とする、請求項1乃至9の何れか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
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