JP4645600B2 - ポリエチレンテレフタレートの製造方法 - Google Patents
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1)第1段固相重縮合工程が、ポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつその熱処理の温度(T1)が190℃以上225℃以下の工程である。
2)昇温工程が、第1段固相重縮合工程を経たポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、第1段固相重縮合工程の熱処理の温度(T1)又はそれ以下の温度から昇温を開始して温度(T2)まで昇温する工程であり、温度T1(℃)から(T1+15)℃までを30分以内で昇温し、かつ温度T1(℃)及びT2(℃)が下記(式1)及び(式2)を満足する工程である。
T1+15≦T2 (式1)
205℃≦T2≦240℃ (式2)
3)第2段固相重縮合工程が、第1段固相重縮合工程及び昇温工程を経たポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつ、その熱処理の温度(T3)が190℃以上240℃以下の工程である。
即ち、本発明のPETの製造方法は、溶融重縮合によって得られたPETプレポリマー粒子を不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理、即ち固体状態で重縮合(固相重縮合)を進めることにより、各種の用途に適した所望の高分子量のPETを効率よく製造する方法であり、その際、PETプレポリマーとして低分子量のものを使用し、所定条件下で固相重縮合を行うことを要件とするものである。この所定条件に制御された固相重縮合を行うことにより、従来法におけるような条件、即ち、固相重縮合を一段で190℃ないし240℃で行う場合よりも、高分子量領域において大きな重縮合反応速度が得られるため、固相重縮合時間の短縮、重縮合に要する熱量の低減等の生産性向上や省エネルギー化が可能となる。
なお、本発明では、PETの分子量の指標として固有粘度を用いる。
本発明に用いるPETプレポリマーを得る方法は特に限定されず、例えばPETの慣用の製造方法により製造することができる。具体的には、通常、テレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、要すればエステル化又はエステル交換触媒の存在下エステル化反応及び/又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合触媒を使用して溶融重縮合させることにより製造される。詳しくは、例えば、原料のジカルボン酸成分とジオール成分とを、スラリー調製槽に投入して攪拌・混合して原料スラリーとし、エステル化反応槽で常圧〜加圧下、加熱下で、反応によって生ずる水などを留去しつつエステル化反応させた後、得られたエステル化反応物としてのPET低分子量体(オリゴマー)を重縮合槽に移送し、減圧下、加熱下で、重縮合触媒を使用して溶融重縮合させてPETプレポリマーを得る方法が挙げられる。
ロール等の脂環式ジオール、及びキシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、並びに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
触媒の使用量は、得られるPETプレポリマーに対して用いる触媒の金属原子換算で通常1〜400質量ppmである。なお、チタン化合物はエステル化及び/又はエステル交換触媒としても作用するので、これらの反応に使用する場合はその使用量を考慮してこの範囲となるように用いるのが好ましい。
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールを主成分とするジオールとを、通常、ジカルボン酸成分:グリコール成分を1:1〜1:2(モル比)で用い、エステル化反応槽で要すればエステル化触媒の存在下、通常240〜280℃程度の温度、通常常圧乃至大気圧に対する相対圧力で0.4MPa程度の加圧下で、1〜10時間程度エステル化反応させるか、或いはエステル交換触媒の存在下エステル交換反応を行い、得られた生成物(PET低分子量体)を、重縮合反応槽に移送し、次いで溶融重縮合する。溶融重縮合は、重縮合触媒を使用して通常、250〜290℃程度の温度、常圧から漸次減圧として最終的に通常絶対圧力で10〜0.1kPa程度の減圧下で、撹拌下、固有粘度が後述の如く、0.18dL/g〜0.40dL/gとなるまで溶融重縮合させる。
上記のようにして得られたPETプレポリマーの粒子は、本発明の方法により、固体状態で熱処理され所定の固有粘度まで固相重縮合される。本発明の熱処理は、主として段階的固相重縮合工程及び昇温工程を包含する。これらの工程は回分法でも行うことができるが連続法で行うことが生産効率の点で好ましい。本発明の方法で得られるPETの固有粘度は0.70dL/g以上である。0.70dL/g未満のPETを製造する場合には、従来法に比較し固相重縮合反応速度を大きくできるという本発明の効果が十分発揮されず、好ましくない。
1)第1段固相重縮合工程;
PETプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつその熱処理の温度(T1)が190℃以上225℃以下の工程。
2)昇温工程;
第1段固相重縮合工程を経たPETプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、第1段固相重縮合工程の熱処理の温度(T1)又はそれ以下の温度から昇温を開始して温度(T2)まで昇温する工程であり、温度T1(℃)から(T1+15)℃までを30分以内で昇温し、かつ温度T1(℃)及びT2(℃)が下記(式1)及び(式2)を満足する工程。
T1+15≦T2 (式1)
205℃≦T2≦240℃ (式2)
3)第2段固相重縮合工程;
第1段固相重縮合工程及び昇温工程を経たPETプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつ、その熱処理の温度(T3)が190℃以上240℃以下の工程。
205℃≦T2≦240℃ (式2)
こうすることにより昇温工程後の固相重縮合の速度が大きいという本発明の効果が得られる。
即ち、ポリエステルプレポリマーを結晶化させた場合、結晶構造が形成されることでポリエステル分子鎖の運動性が低下し、一部の末端基が不活性化するが、特に低分子量で結晶化させた場合、不活性化する末端基数の絶対値が大きくなるため、固相重縮合後半に重縮合反応速度が小さくなる。これに対し、途中で温度差15℃以上という加熱処理を短時間で与えることにより、固体状態は保つものの、結晶の溶融と再結晶化が起こり、再度、多数の末端基が存在する非晶領域が形成されるため、不活性化していた末端基の一部が活性を取り戻し、重縮合反応速度が増大すると推定している。
昇温幅が15℃未満の場合や、昇温に要する時間が30分超過の場合は、本発明の固相重縮合反応速度の向上効果、特に第2段固相重縮合工程での効果が得られない場合がある。
更に、この結晶化工程の前に、PETプレポリマーをTxまで昇温する工程を設けることもでき、結晶化工程で昇温及び結晶化を行ってもよい。また結晶化工程でプレポリマーの乾燥を行ってもよい。また、プレポリマーの乾燥は第1段固相重縮合工程の初期に行ってもよい。
なお、実施例及び比較例における物性の測定は、以下の方法により行った。
試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比 1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00×10−2kg/Lとなるように、非晶状態のPETは110℃、30分で、固相重縮合後のPETは140℃、30分でそれぞれ溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(センテック社製「2CH型DJ504」)にて、濃度が1.00×10−2kg/Lの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、下式により算出した。
IV=[(1+4KH・ηsp)0.5−1]/(200KH・C)
ここで、 ηsp=η/η0−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(kg/L)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
精密天秤を用いて、PETプレポリマー粒子30粒の合計質量を0.1mgの桁まで測定し、測定値を30で除することにより、粒子1粒当たりの平均質量を算出した。
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mLを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料を使用せずに同様の操作を実施し、これらの結果を用いて以下の式により末端カルボキシル基濃度を算出した。
AV(当量/トン)=(A−B)×0.1×f/W
〔ここで、Aは、試料を用いた場合の滴定に要した0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Bは、ブランクでの滴定に要した0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Wは、ポリエステル樹脂試料の量(g)、fは、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。〕
なお、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、試験管にメタノール5mLを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mLで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1規定の塩酸を標準液として0.2mL採取して加え、再度、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定し(以上の操作は、乾燥窒素ガスを吹き込みながら行った。)、以下の式により算出した。
力価(f)=0.1規定の塩酸の力価×0.1規定の塩酸の採取量(μL)
/0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)
結晶化度(Xc)の測定は、完全非晶の密度da=1335kg/m3、完全結晶の密度dc=1455kg/m3として、試料の密度d(kg/m3)から、下式により算出した。
Xc=(d−da)dc/(dc−da)d ×100(質量%)
また、試料の密度dは、測定セルに試料6〜8gを精秤し、測定温度23℃にて乾式自動密度測定装置(島津製作所製Accupyc1330)を用いて測定した。
試料となるPET粒子5.00gに、4規定−水酸化カリウム/メタノール溶液50mlを加えて還流冷却器をセットし、マグネチックスターラ付きホットプレート(表面温度200℃)上で攪拌しながら、2時間加熱還流し加水分解する。放冷後、高純度テレフタル酸約20gを加えて、十分振とうして中和し、pHを9以下としたスラリーを、グラスフィルター(11G−4)を用いて濾過した後、メタノール2mlで2回洗浄して濾液と洗液を合わせ、ガスクロマトグラフィーへの供試液とする。供試液1μlをマイクロシリンジにて、島津製作所社製ガスクロマトグラフィー(形式GC−14APF)に注入し、エチレングリコール(EG)及びジエチレングリコール成分のピークの面積から、全グリコール成分に対するジエチレングリコール成分のモル%を、下式に従い計算した。
DEGの共重合モル%=(ADEG×CfDEG)/(Σ(A×Cf))×100
ADEG : ジエチレングリコール成分の面積(μV・秒)
CfDEG : そのグリコール成分の補正係数
A : 各グリコール成分の面積(μV・秒)
Cf : 各グリコール成分の補正係数
<PETプレポリマー粒子(A)の製造工程>
撹拌機、エチレングリコール仕込み配管及びテレフタル酸仕込み配管を具備するスラリー調製槽;スラリーやエステル化反応物を各エステル化反応槽へ移送する各配管;撹拌機、分離塔、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第一及び第二エステル化反応槽;エステル化反応物(オリゴマー)を溶融重縮合反応槽へ移送する配管;撹拌機、分離塔、オリゴマー受入れ口、触媒仕込み配管を具備する完全混合型第一溶融重縮合反応槽;撹拌機、分離塔、ポリマー受入れ口、ポリマー抜き出し口を具備するプラグフロー型第二及び第三溶融重縮合反応槽;プレポリマーを抜き出し口よりギヤポンプを介してダイプレートからストランド状に取り出し水冷下ストランドカットする粒子化装置(ストランドカッターはリーター・オートマチック社製ペレタイザー(P−USG100))を備えたPETプレポリマー連続製造装置を用いた。
前記のPETプレポリマー連続製造装置を用いて、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応し、更に溶融重縮合反応することにより得られた溶融状態のPETプレポリマーをダイプレートからストランド状に取り出し切断することで、PETプレポリマー粒子を製造した。具体的には以下の通りである。
第二エステル化反応槽では温度260℃、圧力5kPaG下、滞留時間1.5時間でエステル化反応を行い、移送配管を通じ完全混合型第一溶融重縮合反応槽へ連続的に移送した。
第一溶融重縮合反応槽では温度270℃、圧力4.0kPaA(Aは絶対圧力であることを示す)下、滞留時間1.0時間にて反応を行い、移送配管を通じ第二溶融重縮合反応槽へ連続的に移送した。第二溶融重縮合反応槽では温度270℃、圧力4.0kPaA下、滞留時間1.0時間にて溶融重縮合反応を行い、移送配管を通じ第三溶融重縮合反応槽へ移送した。第三溶融重縮合反応槽では温度270℃、圧力4.0kPaA下、滞留時間1.2時間にて溶融重縮合反応を行った。
ここで、溶融PETプレポリマーの吐出量は60kg/時、温度は270℃とし、3mmφの円形ダイホールが4穴あるダイプレートから、水平方向から下向きに45°の角度を吐出方向として、ストランド状に吐出させた。
このストランド状PETプレポリマーを、100mm以上の空冷距離を経てストランドカッターの水冷却ゾーンに着水させ、50℃の水で水冷しながら搬送し、引取ロールにて引き取り、カッターに供給した。ストランドの引取速度は3.00m/秒であり、カッターは、引取ロールと回転歯の回転数の比を調整し、粒子の引取方向の長さが1.0mmとなるようにして粒子化した。
その結果、長さ1.0mm、幅1.3mm、厚さ0.9mmのほぼ直方体の両端に半円柱を付けた形状に近い楕円柱状のPETプレポリマー粒子を得た。この粒子の固有粘度は0.290dL/g、末端カルボキシル基濃度は22当量/トン、ジエチレングリコールの共重合量は2.0モル%、平均質量は1.5mg/粒であった。以降、このPETプレポリマー粒子を、「プレポリマー粒子(A)」と称する。
<結晶化工程>
上記のプレポリマー粒子(A)30gを底面が130mm×170mmの角形で、深さが30mmのステンレス製バットに広げて置き、内部のガス温度が180℃のイナートオーブン(タバイエスペック社製IPHH−201M型)に入れ、イナートオーブンの内部に流通させる窒素の流量を50NL/分、温度を180℃の窒素流通下として、Tx=180℃で1時間の結晶化処理を行った。ここで、NLとは0℃1気圧における体積(L)のことである。結晶化処理後の試料の固有粘度は0.290dL/g、結晶化度は53質量%であった。
上記の、プレポリマー粒子(A)を結晶化処理した試料を、図1に示すガラス製熱処理装置を用いて熱処理を行った。
以下、該熱処理装置について説明する。
図1に示す熱処理装置において、試料は、試料充填部の内径が45mmのガラス製熱処理管(1)に充填されている。熱処理管(1)には、ガス流量計(2)、窒素導入管(3)、窒素予熱管(4)を経由して、オイルバス(5)に充填されたオイルにより加熱された窒素が導入される。導入された窒素は、熱処理管(1)下部にある分散板(6)により分散され、熱処理管(1)内部で略均一な線速度を有する上昇流となって、試料層(7)を通過する。試料層(7)を通過した窒素は、熱処理管(1)上部にあるフィルター(8)を経由して、ガスパージ口(9)から熱処理管(1)の外部に排出される。熱処理管(1)は枝管(10)を有しており、その上部にある開口部(通常はガラス栓にて閉止してある)から試料の投入や試料の採取が可能である。また、熱処理管(1)内部の試料の温度は、熱電対(11)を備えた温度計(12)で測定できる。本実施例の範囲の温度、空塔線速度においては、熱処理管(1)の内部温度は、オイルバス中のオイル温度よりも2℃低い温度となるため、目標とする固相重縮合温度に対して、オイルの温度は2℃高い温度に調節した。
熱処理管(1)に枝管(10)の開口部より、上記結晶化処理後のプレポリマー粒子(A)30gを仕込み、窒素を流通して内部を窒素置換した。その後熱処理管(1)内の窒素の空塔線速度(ここで「空塔線速度」とは、試料層の空塔線速度を意味する(以下同様))が210℃で0.30m/秒となるように窒素の流量をガス流量計(2)で設定し、オイルの温度が212℃に調節された第一のオイルバス(5)に熱処理装置を浸漬した。この時点を第1段固相重縮合工程(T1=210℃)の開始とする。2時間後に枝管(10)の開口部より、固有粘度測定用試料約0.3gを採取した。
試料採取後、窒素の空塔線速度が235℃で1.0m/秒となるように窒素の流量を変更し、オイルの温度が237℃に調節された第二のオイルバス(5)に熱処理装置を移した。この時点を昇温工程(T2=235℃)の開始とする。試料の温度が235℃に到達するまでに、10分を要したので、T1から(T1+15℃)までの昇温は10分以内であった。昇温工程の開始から10分後に枝管(10)の開口部より、固有粘度測定用試料を採取した。
試料採取後、窒素の空塔線速度が230℃で0.30m/秒となるように窒素の流量を変更し、第三のオイルバス(5)に熱処理装置を移した。この時点を第2段固相重縮合工程(T3=230℃)の開始とした。第三のオイルバス(5)のオイルの温度は、あらかじめ212℃に調節しておき、熱処理装置を移した後、直ちに、60分掛けて232℃まで昇温し、232℃到達後はその温度で保持した。第2段固相重縮合開始点から8時間、16時間、32時間の時点で固有粘度測定用試料を採取した。
第1段固相重縮合後、昇温工程後、及び第2段固相重縮合時に採取した測定用試料につき固有粘度をそれぞれ測定した。熱処理条件と測定結果を表[I−A]に示す。表中、固有粘度IV=0.80dL/gへ到達までの時間は、IV=0.80前後の直近のデータを直交座標にて直線で結び、IV=0.80となる熱処理時間を内挿にて求め第2段固相重縮合工程時間とし、これに第1段固相重縮合時間と昇温工程時間を加算することで求めており、結晶化工程の時間は含めない。
実施例1において昇温工程を全て実施しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表[I−A]に示す。
この例の場合、235℃の昇温工程を実施しなかったため、IV=0.80dL/gへ到達するまでの時間が、実施例1に比較して長くなった。
実施例1の<PETプレポリマー粒子(A)の製造工程>において溶融PETプレポリマーの吐出量を100kg/時に変更した以外は実施例1の<PETプレポリマー粒子(A)の製造工程>と同様に行った。
その結果、長さ1.0mm、幅1.6mm、厚さ1.2mmのほぼ直方体の両端に半円柱を付けた形状に近い楕円柱状のPETプレポリマー粒子(A’)を得た。この粒子(A’)の固有粘度は0.290dL/g、末端カルボキシル基濃度は22当量/トン、ジエチレングリコールの共重合量は2.0モル%、平均質量は2.3mg/粒であった。
このPETプレポリマー粒子(A’)を用いたこと以外は、実施例1の<熱処理>と同様の処理を行った。結果を表[I−A]に示す。
実施例2において昇温工程を実施しなかったこと以外は実施例2と同様に行った。結果を表[I−A]に示す。
この例の場合、235℃の昇温工程を実施しなかったため、IV=0.80dL/gへ到達するまでの時間が、実施例2に比較して長くなった。なお、IV=0.80dL/gへ到達するまでの時間は、第2段固相重縮合開始点から16時間、32時間の時点の固有粘度測定結果を結ぶ直線を引き、IV=0.80に外挿することで推算した。
実施例1において昇温工程の温度を220℃に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表[I−A]に示す。
この例の場合、第1段固相重縮合工程と昇温工程との温度差が10℃と小さく、(式1)を満足しないため、IV=0.80dL/gへ到達するまでの時間が、実施例1に比較して長くなった。
実施例1において、昇温工程を、オイルの温度が212℃のオイルバス(5)に熱処理装置を移した後、直ちに、オイルの温度を0.42℃/分で昇温し、60分掛けて237℃とする工程に、また、固有粘度測定用試料を採取する時間を開始点から60分の時点に、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表[I−A]に示す。
この例の場合、225℃(T1+15℃)到達までの時間が36分であり、この時間が30分を超えて長いため、IV=0.80dL/gへ到達するまでの時間が、実施例1に比較して長くなった。
<PETプレポリマー粒子(B)の製造工程>
実施例1の<PETプレポリマー粒子(A)の製造工程>において、スラリー調製槽にて調製するスラリーを、得られるPETに対してチタン原子として8質量ppmとなる量のテトラ−n−ブチルチタネートを含有するテレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール(モル比0.97:0.03:1.5)スラリーに変更し、第一溶融重縮合反応槽の圧力を3.8kPaAに変更し、第二及び第三溶融重縮合反応槽の温度を275℃、圧力を3.8kPaAに変更し、ダイプレートをダイホール数が10穴のものに変更し、溶融ポリエステルの吐出量を78kg/時に変更したこと以外は実施例1と同様にして、PETプレポリマー粒子を得た。
その結果、長さ1.0mm、幅1.0mm、厚さ0.7mmのほぼ直方体の両端に半円柱を付けた形状に近い楕円柱状のPETプレポリマー粒子(B)を得た。この粒子の固有粘度は0.323dL/g、末端カルボキシル基濃度は26当量/トン、イソフタル酸、ジエチレングリコールの共重合量はそれぞれ2.9モル%、2.2モル%、平均質量は1.4mg/粒であった。以降、このPETプレポリマー粒子を、「プレポリマー粒子(B)」と称する。
実施例1において、試料を上記のプレポリマー粒子(B)に変更し、第1段固相重縮合工程、昇温工程の条件をそれぞれ表[I−B]の通り変更し、第2段固相重縮合工程の条件を、窒素の流量は空塔線速度を220℃で0.30m/秒となるように、オイルの温度はあらかじめ202℃に調節しておき、第三のオイルバス(5)に熱処理装置を移した後、直ちに、60分掛けて222℃まで昇温し、222℃到達後はその温度で保持することに、また、固有粘度測定用試料を採取する時間を開始点から16時間、32時間の時点に、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、<熱処理>を行った。
結晶化処理後の試料の固有粘度は0.331dL/gであった。熱処理条件と測定結果を表[I−B]に示す。
実施例3において昇温工程を実施しなかったこと以外は実施例2と同様に行った。結果を表[I−B]に示す。
この例の場合、225℃の昇温工程を実施しなかったため、IV=0.80dL/gへ到達するまでの時間が、実施例3に比較して長くなった。
実施例3において第1段固相重縮合工程、昇温工程の条件をそれぞれ表[I−C]の通り変更し、第2段固相重縮合工程の条件を、窒素の流量は空塔線速度を215℃で0.30m/秒となるように、オイルの温度は217℃で一定に、また、固有粘度測定用試料を採取する時間を開始点から24時間の時点に、それぞれ変更したこと以外は実施例3と同様にして、<熱処理>を行った。結果を表[I−C]に示す。
表中、固有粘度IV=0.70dL/gへ到達までの時間は、24時間目のデータとその直前のデータとを直交座標にて直線で結び、IV=0.70となる熱処理時間を内挿にて求め第2段固相重縮合工程時間とし、これに第1段固相重縮合時間と昇温工程時間を加算することで求めており、結晶化工程の時間は含めない。
実施例4において昇温工程を実施しなかったこと以外は実施例4と同様に行った。結果を表[I−C]に示す。
この例の場合、235℃の昇温工程を実施しなかったため、IV=0.70dL/gへ到達するまでの時間が、実施例4に比較して長くなった。
実施例4において第1段固相重縮合工程の条件を表[I−C]の通り変更したこと以外は実施例4と同様に行った。結果を表[I−C]に示す。
実施例5において昇温工程を実施しなかったこと以外は実施例5と同様に行った。結果を表[I−C]に示す。
この例の場合、235℃の昇温工程を実施しなかったため、IV=0.70dL/gへ到達するまでの時間が、実施例5に比較して長くなった。
<融着試験>
熱処理時のPET粒子の融着性を調べるため、実施例1の昇温工程まで実施したPET粒子(以下、「昇温工程後粒子(A)」と称する)を用いて、図2に示す融着試験装置で荷重負荷をかけた状態での融着試験を行った。
以下、該融着試験装置について説明する。
図2に示す融着試験装置において、試料は、試料充填部の内径が14mmのガラス製熱処理管(21)に充填されている。熱処理管(21)には、ガス流量計(22)、窒素導入管(23)、窒素予熱管(24)を経由して、オイルバス(25)に充填されたオイルにより加熱された窒素が導入される。導入された窒素は、熱処理管(21)下部にある分散板(26)により分散され、熱処理管(21)内部で略均一な線速度を有する上昇流となって、試料層(27)を通過する。試料層(27)を通過した窒素は、熱処理管(21)上部にあるフィルター(28)を経由して、ガスパージ口(29)から熱処理管(21)の外部に排出される。ここで、熱処理管(21)内部の試料の温度は、あらかじめ、別の試料を充填して熱電対を備えた温度計で測定することで、オイルバス中のオイル温度と等しい温度になることを確認した。また、試料層(27)の上部には、ステンレス製金網(30)を介してステンレス製中空支柱(31)を載せることができる。また、支柱(31)には、ピン(32)を用いて錘を載せるための台座(33)を固定することができる(支柱(31)の質量は80g、ピン(32)及び台座(33)の合計質量は42gである)。
熱処理管(21)に、試料として8gの昇温工程後粒子(A)を仕込み、その上に金網(30)と支柱(31)を載せた後、窒素を流通して内部を窒素置換した。その後熱処理管(21)内の窒素の空塔線速度(ここで「空塔線速度」とは、試料層部分の空塔線速度を意味する(以下同様))が230℃で0.40m/秒となるように窒素の流量をガス流量計(22)で設定し、235℃に調節されたオイルバス(25)に融着試験装置を浸漬した。そのまま10分間保持することで、試料層の温度を235℃とした。その後、10分間掛けて、オイルバス(25)に充填されたオイルの温度を230℃まで降温した。この時点を230℃での融着試験の開始とする。開始から1時間目までは、試料層(27)に掛かる荷重は支柱(30)の質量相当のみ(80g重)とした。1時間目に、支柱(30)にピン(32)と台座(33)を取り付け、資料に掛かる荷重を122g重とした。1.5時間目に、台座(33)の上に錘を載せ、荷重を160g重とした。以降、0.5時間毎に、196g重、231g重、265g重、298g重、330g重と荷重を増していき、4.5時間目から5時間目までの荷重は1039g重とした。5時間目に、融着試験装置をオイルバスから引き上げ、10分間放冷後、窒素の流通を停止し、錘(支柱、ピン、台座を含む)を取り除いた。試料は、目開き2.0mmの篩の上に抜き出し、静かに分級することで、融着比率(篩上の試料の質量比)を測定した。
融着比率は0.4質量%であり、230℃、荷重下における耐融着性に優れることを示す結果となった。
<融着試験>
実施例6において試料を実施例4の昇温工程まで実施したPET粒子に変更し、空塔線速度が215℃で0.40m/秒となるように窒素の流量を流量計(22)で設定し、235℃に調節されたオイルバス(25)を10分間掛けて降温する温度を215℃に変更し、この時点を215℃での耐融着試験の開始と変更したこと以外は実施例6と同様に行った。
融着比率は11質量%であった。
実施例4において第1段固相重縮合工程の時間を4時間に変更したこと以外は同様にして昇温工程まで行った。得られたPET粒子の固有粘度は0.476dL/gであった。
<融着試験>
実施例7において試料を上記の固有粘度が0.476dL/gのPET粒子に変更したこと以外は実施例7と同様に行った。
融着比率は0.3質量%であり、実施例7で用いた試料よりも耐融着性に優れることを示す結果となった。
実施例3記載のプレポリマー粒子(B)を用いて、固体状態における熱処理が連続的に行われる熱処理試験を実施した。即ち、プレポリマー粒子(B)を、完全混合型の流動床へ連続的に供給し、空塔線速度3.2m/秒、120℃の空気雰囲気下、平均滞留時間60分にて第1段結晶化処理を行い(結晶化工程)、連続的に排出させた。得られた試料を、移送配管を経由させて、プラグフロー性を有する流動床へ連続的に供給し、空塔線速度1.3m/秒、180℃の窒素雰囲気下、平均滞留時間15分にて第2段結晶化処理を行い(結晶化工程)、連続的に排出させた。得られた試料を、移送配管を経由させて、移動床へ連続的に供給し、210℃の窒素雰囲気下、平均滞留時間120分にて、第1段固相重縮合処理を行い(第1段固相重縮合工程)、連続的に排出させた。得られた試料は、窒素雰囲気下で一旦放冷した。放冷後の試料の固有粘度は0.347dL/gであった。
一旦放冷した試料を、完全混合型の流動床へ連続的に供給し、空塔線速度3.2m/秒、180℃の空気雰囲気下、平均滞留時間10分にて再昇温し、連続的に排出させた。得られた試料を、移送配管を経由させて、プラグフロー性を有する流動床へ連続的に供給し、空塔線速度1.6m/秒、240℃の窒素雰囲気下、平均滞留時間15分にて昇温処理を行い(昇温工程)、連続的に排出させた。昇温工程出口直前の試料の温度は232℃だった。得られた試料を、移送配管を経由させて、移動床へ連続的に供給し、215℃の窒素雰囲気下、平均滞留時間14時間にて、第2段固相重縮合処理を行い、連続的に排出させた。
得られた試料は、窒素雰囲気下で放冷した。放冷後の試料の固有粘度は0.737dL/gであった。
実施例9において、昇温工程出口で試料を採取した。この試料の固有粘度は0.386dL/gであった。この試料30gを、図1に示す熱処理装置の熱処理管(1)に枝管(10)の開口部より仕込み、窒素を流通して内部を窒素置換した。その後、熱処理管(1)内の窒素の空塔線速度が210℃で0.30m/秒となるように窒素の流量をガス流量計(2)で設定し、212℃に調節されたオイルバス(5)に熱処理装置を浸漬した。この時点を210℃での第2段固相重縮合の開始とする。第2段固相重縮合の開始から32時間及び64時間の時点で枝管(10)の開口部より、固有粘度測定用試料を採取した。
これらの試料の固有粘度はそれぞれ0.741dL/g及び0.853dL/gであった。また固有粘度が0.70dL/g及び0.80dL/gに到達するまでの時間は、それぞれ30.6時間、51.1時間であった。
なお、この例は、第1段固相重縮合工程、昇温工程を、それぞれ、210℃の連続移動床、232℃の連続流動床で行い、第2段固相重縮合工程を、210℃のバッチ固定床で実施したものである。
実施例9において、第1段固相重縮合処理の後、窒素雰囲気下で放冷して試料を採取した。この試料の固有粘度は0.347dL/gであった。この試料を用いること以外は実施例10と同様に熱処理を行い、固有粘度測定用試料を採取した。
これらの試料の固有粘度はそれぞれ0.681dL/g及び0.777dL/gであった。また固有粘度が0.70dL/g及び0.80dL/gに到達するまでの時間は、それぞれ40.3時間、73.7時間であった。
本比較例では、昇温工程を実施しなかったため、実施例10に較べて固相重縮合反応速度が小さい結果だった。
なお、この例は、第1段固相重縮合工程を、210℃の連続移動床で行い、昇温工程を行わず、第2段固相重縮合工程を、210℃のバッチ固定床で実施したものである。
2:ガス流量計
3:窒素導入管
4:窒素予熱管
5:オイルバス
6:分散板
7:試料層
8:フィルター
9:ガスパージ口
10:枝管
11:熱電対
12:温度計
21:熱処理管
22:ガス流量計
23:窒素導入管
24:窒素予熱管
25:オイルバス
26:分散板
27:試料層
28:フィルター
29:ガスパージ口
30:金網
31:支柱
32:ピン
33:台座
Claims (11)
- 固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエチレンテレフタレートプレポリマーを、固体状態で熱処理して固有粘度を0.70dL/g以上とするポリエチレンテレフタレートの製造方法であって、固体状態での熱処理が、第1段固相重縮合工程、昇温工程、及び第2段固相重縮合工程をこの順で含み、かつ、各々の工程が下記1)〜3)を満足することを特徴とするポリエチレンテレフタレートの製造方法。
1)第1段固相重縮合工程が、ポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつその熱処理の温度(T1)が190℃以上225℃以下の工程である。
2)昇温工程が、第1段固相重縮合工程を経たポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、第1段固相重縮合工程の熱処理の温度(T1)又はそれ以下の温度から昇温を開始して温度(T2)まで昇温する工程であり、温度T1(℃)から(T1+15)℃までを30分以内で昇温し、かつ温度T1(℃)及びT2(℃)が下記(式1)及び(式2)を満足する工程である。
T1+15≦T2 (式1)
205℃≦T2≦240℃ (式2)
3)第2段固相重縮合工程が、第1段固相重縮合工程及び昇温工程を経たポリエチレンテレフタレートプレポリマーを不活性ガス雰囲気下又は減圧下で熱処理する工程であり、かつ、その熱処理の温度(T3)が190℃以上240℃以下の工程である。 - 第1段固相重縮合工程に供するポリエチレンテレフタレートプレポリマーの結晶化度が15質量%以上である請求項1に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 第1段固相重縮合工程に先立つ結晶化工程を有しており、該結晶化工程がポリエチレンテレフタレートプレポリマーを温度(Tx)110℃以上200℃以下で熱処理する工程である請求項1又は2に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 第2段固相重縮合工程に供するポリエチレンテレフタレートプレポリマーの固有粘度が0.35dL/g以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 固体状態での熱処理が連続的に行われる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 第1段固相重縮合工程及び/又は第2段固相重縮合工程が連続式移動床で実施される請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 結晶化工程が流動床で実施される請求項3乃至6のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 昇温工程が流動床で実施される請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- ポリエチレンテレフタレートプレポリマーが粒子であり、その平均質量が0.1mg/粒以上30mg/粒以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- ポリエチレンテレフタレートプレポリマーの末端カルボキシル基濃度が100当量/トン以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- ポリエチレンテレフタレートがチタン化合物を含有する請求項1乃至10のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
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