JP2008186715A - 固体高分子形燃料電池およびその運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アノードおよびカソードに相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持して発電を行う場合に、高い発電性能(出力電圧)を長期間にわたって安定して維持できる固体高分子形燃料電池およびその運転方法を提供する。
【解決手段】アノード13およびカソード14と、これらとの間に配置される、スルホン酸基を有する高分子化合物を含む陽イオン交換膜15とからなる膜電極接合体10を備え、アノード13およびカソード14に相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体10の温度を100〜120℃に維持して発電を行う固体高分子形燃料電池100において、陽イオン交換膜15が条件(i)を満足する。(i)120℃の雰囲気下、陽イオン交換膜上に円錐形プローブの頂点をあて、該円錐形プローブに2g/分の速度で10gから50gまでの荷重を加えた際、膜厚変位が35〜75%である。
【選択図】図1
【解決手段】アノード13およびカソード14と、これらとの間に配置される、スルホン酸基を有する高分子化合物を含む陽イオン交換膜15とからなる膜電極接合体10を備え、アノード13およびカソード14に相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体10の温度を100〜120℃に維持して発電を行う固体高分子形燃料電池100において、陽イオン交換膜15が条件(i)を満足する。(i)120℃の雰囲気下、陽イオン交換膜上に円錐形プローブの頂点をあて、該円錐形プローブに2g/分の速度で10gから50gまでの荷重を加えた際、膜厚変位が35〜75%である。
【選択図】図1
Description
本発明は、固体高分子形燃料電池およびその運転方法に関する。
燃料電池は、燃料となるガスの反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電池である。水素/酸素型燃料電池は、反応生成物が原理的に水のみであり、地球環境への影響がほとんどない。水素/酸素型燃料電池のうち、電解質として固体高分子電解質膜を備えた固体高分子形燃料電池は、高いプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜が開発されたため、常温でも作動でき、かつ高出力密度を得ることができる。そのため、固体高分子形燃料電池には、近年のエネルギー、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、移動車両(電気自動車用等。)用電源、住宅用電源(小型コージェネレーションシステム等。)として、大きな期待が寄せられている。
固体高分子形燃料電池の固体高分子電解質膜としては、通常、プロトン伝導性を有する陽イオン交換膜が用いられ、該陽イオン交換膜としては、スルホン酸基を有する高分子化合物からなる陽イオン交換膜が用いられる。固体高分子形燃料電池においては、陽イオン交換膜の両面に、ガス拡散層および触媒層を有する電極(アノードおよびカソード)を配置し、水素を含むガスをアノードに供給し、酸化剤となる酸素を含むガス(空気等。)をカソードに供給することにより発電を行う。
固体高分子形燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応は、過酸化水素(H2O2)を経由して反応が進行する。そのため、触媒層内で生成する過酸化水素または過酸化物ラジカルによって、陽イオン交換膜の劣化が起こりやすい。また、アノードにも、陽イオン交換を透過した酸素が侵入するため、同様に、過酸化水素または過酸化物ラジカルが発生することがある。陽イオン交換膜の高分子化合物として、炭化水素系重合体を用いた場合、炭化水素系重合体の過酸化水素および過酸化物ラジカルに対する安定性が乏しいため、長期間にわたる運転において、陽イオン交換膜の耐久性が大きな問題となる。たとえば、固体高分子形燃料電池が初めて実用化されたのは、米国のジェミニ宇宙船の電源として採用されたときであり、該燃料電池においては、スチレン−ジビニルベンゼン重合体をスルホン化した膜が陽イオン交換膜として用いられた。しかし、長期間にわたる耐久性には問題があった。
該問題を改善する方法としては、下記方法が知られている。
(1)陽イオン交換膜に、過酸化水素を接触分解できる遷移金属酸化物またはフェノール性水酸基を有する化合物を添加する方法(特許文献1)。
(2)陽イオン交換内に触媒金属粒子を担持し、該触媒金属粒子によって過酸化水素を分解する方法(特許文献2)。
(3)スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる陽イオン交換膜を用いる方法。
(1)陽イオン交換膜に、過酸化水素を接触分解できる遷移金属酸化物またはフェノール性水酸基を有する化合物を添加する方法(特許文献1)。
(2)陽イオン交換内に触媒金属粒子を担持し、該触媒金属粒子によって過酸化水素を分解する方法(特許文献2)。
(3)スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる陽イオン交換膜を用いる方法。
(1)、(2)の方法は、生成する過酸化水素を分解する技術であり、陽イオン交換膜自体の分解を抑制する技術ではない。そのため、初期的には改善の効果があるものの、長期間にわたる耐久性には大きな問題がある。また、陽イオン交換膜のコストが高くなる問題もある。
(3)の方法にて用いられるスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体は、ラジカルに対する安定性に優れているため、近年、該重合体からなる陽イオン交換膜を備えた固体高分子形燃料電池は、移動車両用、住宅用電源として期待されており、該燃料電池の実用化への要望が高まり、該燃料電池の開発が加速している。該用途においては、特に、高い効率での運転が要求されるため、より高い出力電圧での運転が望まれるとともに、低コスト化が望まれている。また、燃料電池システム全体のエネルギー効率の点から、加湿器を省略することが望まれているため、低加湿または無加湿のガスを用いる運転が要求されることも多い。
しかし、該燃料電池は、低加湿または無加湿のガスを用いる運転条件においては、出力電圧の劣化が大きいことが報告されている(非特許文献1)。すなわち、低加湿または無加湿のガスを用いる運転条件においては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる陽イオン交換膜であっても、過酸化水素または過酸化物ラジカルによる陽イオン交換膜の劣化が進行するものと考えられる。
また、自動車用途では、廃熱効率を上げることによって、ラジエータのサイズを小さくすることが望まれているため、膜電極接合体の温度を高温(100〜120℃)に維持する運転が要求されている。
しかし、通常のスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体のガラス転移温度は100℃以下であるため、膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持する運転は困難である。
特開2001−118591号公報(請求項1)
特開平6−103992号公報(段落[0005])
平成12年度固体高分子形燃料電池研究開発成果報告会要旨集、新エネルギー・産業技術総合開発機構、平成12年、p.56
しかし、通常のスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体のガラス転移温度は100℃以下であるため、膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持する運転は困難である。
本発明は、アノードおよびカソードに相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持して発電を行う場合でも、高い発電性能(出力電圧)を長期間にわたって安定して維持できる固体高分子形燃料電池およびその運転方法を提供する。
本発明の固体高分子形燃料電池は、アノードおよびカソードと、該アノードと該カソードとの間に配置される、スルホン酸基を有する高分子化合物を含む陽イオン交換膜とからなる膜電極接合体を備え、前記アノードおよび前記カソードに相対湿度0〜50%のガスを供給し、前記膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持して発電を行う固体高分子形燃料電池において、前記陽イオン交換膜が、下記条件(i)を満足することを特徴とする。
(i)120℃の雰囲気下、陽イオン交換膜上に円錐形プローブの頂点をあて、該円錐形プローブに2g/分の速度で10gから50gまでの荷重を加えた際、下記式(I)で求められる膜厚変位が、35〜75%である。
膜厚変位=(10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚−50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚)/10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚×100 ・・・(I)。
膜厚変位=(10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚−50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚)/10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚×100 ・・・(I)。
前記高分子化合物は、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(エーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)であることが好ましい。
前記パーフルオロカーボン重合体は、下記式(1)で表される化合物に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることが好ましい。
CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO3H ・・・(1)。
ただし、mは、0〜3の整数であり、nは、1〜12の整数であり、pは、0または1であり、Xは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
前記パーフルオロカーボン重合体は、下記式(1)で表される化合物に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることが好ましい。
CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO3H ・・・(1)。
ただし、mは、0〜3の整数であり、nは、1〜12の整数であり、pは、0または1であり、Xは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
前記陽イオン交換膜は、セリウム原子を含み、該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対する前記セリウム原子の割合は、1.67〜10%であることが好ましい。
本発明の固体高分子形燃料電池の運転方法は、前記アノードおよび前記カソードに相対湿度0〜50%のガスを供給し、前記膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持して発電を行うことを特徴とする。
本発明の固体高分子形燃料電池の運転方法は、前記アノードおよび前記カソードに相対湿度0〜50%のガスを供給し、前記膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持して発電を行うことを特徴とする。
本発明は、アノードおよびカソードに相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持して発電を行う場合でも、高い発電性能(出力電圧)を長期間にわたって安定して維持できる固体高分子形燃料電池およびその運転方法を提供する。
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
<固体高分子形燃料電池>
図1は、本発明の固体高分子形燃料電池の一例を示す断面図である。固体高分子形燃料電池100は、膜電極接合体10を2つのセパレータ20の間に挟んでセル30を形成し、複数のセル30を、膜電極接合体10とセパレータ20とが交互になるように、スタックしたものである。
膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置される陽イオン交換膜15とを具備する。
固体高分子形燃料電池100は、アノード13およびカソード14に相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体10の温度を100〜120℃に維持して発電を行う燃料電池である。
図1は、本発明の固体高分子形燃料電池の一例を示す断面図である。固体高分子形燃料電池100は、膜電極接合体10を2つのセパレータ20の間に挟んでセル30を形成し、複数のセル30を、膜電極接合体10とセパレータ20とが交互になるように、スタックしたものである。
膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置される陽イオン交換膜15とを具備する。
固体高分子形燃料電池100は、アノード13およびカソード14に相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体10の温度を100〜120℃に維持して発電を行う燃料電池である。
(セパレータ)
セパレータ20は、ガスの流路となる複数の溝21が両面に形成されたものである。
セパレータ20としては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂とを混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
セパレータ20は、ガスの流路となる複数の溝21が両面に形成されたものである。
セパレータ20としては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂とを混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
(陽イオン交換膜)
陽イオン交換膜15は、下記条件(i)を満足する。
(i)120℃の雰囲気下、陽イオン交換膜上に円錐形プローブの頂点をあて、該円錐形プローブに2g/分の速度で10gから50gまでの荷重を加えた際、下記式(I)で求められる膜厚変位が、35〜75%である。
膜厚変位=(10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚−50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚)/10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚×100 ・・・(I)。
陽イオン交換膜15は、下記条件(i)を満足する。
(i)120℃の雰囲気下、陽イオン交換膜上に円錐形プローブの頂点をあて、該円錐形プローブに2g/分の速度で10gから50gまでの荷重を加えた際、下記式(I)で求められる膜厚変位が、35〜75%である。
膜厚変位=(10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚−50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚)/10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚×100 ・・・(I)。
陽イオン交換膜15の膜厚変位が35%以上であれば、陽イオン交換膜15が充分なプロトン伝導性を有する。陽イオン交換膜15の膜厚変位が75%以下であれば、過酸化水素または過酸化物ラジカルによって陽イオン交換膜15が劣化したとしても、陽イオン交換膜15が充分な機械的強度を維持できる。すなわち、膜厚変位は、突き刺し強度の目安となる。
陽イオン交換膜15の膜厚変位は、50〜75%がより好ましい。
陽イオン交換膜15の膜厚変位は、50〜75%がより好ましい。
陽イオン交換膜15は、スルホン酸基を有する高分子化合物を含む膜である。
スルホン酸基を有する高分子化合物としては、スルホン酸基を有するフッ素系重合体、スルホン酸基を有する炭化水素系重合体が挙げられ、化学的な耐久性(過酸化水素または過酸化物ラジカルに対する耐性)の点から、スルホン酸基を有するフッ素系重合体が好ましい。
スルホン酸基を有する高分子化合物としては、スルホン酸基を有するフッ素系重合体、スルホン酸基を有する炭化水素系重合体が挙げられ、化学的な耐久性(過酸化水素または過酸化物ラジカルに対する耐性)の点から、スルホン酸基を有するフッ素系重合体が好ましい。
スルホン酸基を有するフッ素系重合体としては、化学的な耐久性の点から、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体が好ましい。該パーフルオロカーボン重合体は、エーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。
スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体としては、化学的な耐久性および機械的強度の点から、化合物(1)と、テトラフルオロエチレンとを共重合した後加水分解、酸型化した、スルホン酸基を有する共重合体が好ましい。
CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO2F ・・・(1)。
ただし、mは、0〜3の整数であり、nは、1〜12の整数であり、pは、0または1であり、Xは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO2F ・・・(1)。
ただし、mは、0〜3の整数であり、nは、1〜12の整数であり、pは、0または1であり、Xは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
化合物(1)としては、化合物(11)〜(14)が好ましい。
CF2=CFO(CF2)qSO2F ・・・(11)、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)rSO2F ・・・(12)、
CF2=CF(CF2)sSO2F ・・・(13)、
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF2)2SO2F ・・・(14)。
ただし、qは、1〜8の整数であり、rは、1〜8の整数であり、sは、1〜8の整数であり、tは、1〜5の整数である。
CF2=CFO(CF2)qSO2F ・・・(11)、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)rSO2F ・・・(12)、
CF2=CF(CF2)sSO2F ・・・(13)、
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF2)2SO2F ・・・(14)。
ただし、qは、1〜8の整数であり、rは、1〜8の整数であり、sは、1〜8の整数であり、tは、1〜5の整数である。
スルホン酸基を有する炭化水素系重合体としては、スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリベンゾオキサゾール、スルホン化ポリベンゾチアゾール、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリフェニレンスルホキシド、スルホン化ポリフェニレンサルファイド、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトンケトン、スルホン化ポリイミド等が挙げられる。
スルホン酸基を有する高分子化合物のイオン交換容量は、0.7〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.9〜1.7ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。該高分子化合物のイオン交換容量が0.7ミリ当量/g乾燥樹脂以上であれば、陽イオン交換膜15が充分なプロトン伝導性を有する。該高分子化合物のイオン交換容量が2.5ミリ当量/g乾燥樹脂以下であれば、陽イオン交換膜15が充分な機械的強度を有する。
陽イオン交換膜15は、前記膜厚変位を調整するために、セリウム原子を含んでいてもよい。セリウム原子は、セリウムイオンとして含まれることが好ましい。
セリウム原子は、−SO3 −基との相互作用により、陽イオン交換膜15の、過酸化水素および過酸化物ラジカルに対する耐性を向上させる。また、陽イオン交換膜15の機械的強度を向上させる。
セリウム原子は、−SO3 −基との相互作用により、陽イオン交換膜15の、過酸化水素および過酸化物ラジカルに対する耐性を向上させる。また、陽イオン交換膜15の機械的強度を向上させる。
セリウム原子を含む化合物(以下、セリウム化合物と記す。)としては、酢酸セリウム、塩化セリウム、硝酸セリウム、炭酸セリウム、硫酸セリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、硫酸四アンモニウムセリウム、セリウムアセチルアセトナート等が挙げられる。セリウム化合物は、無水物であってもよく、結晶水または水和水を有していてもよい。セリウム化合物のセリウムの価数は、+3価でもあってもよく、+4価であってもよい。
陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基(スルホン酸基およびその塩の合計)の数に対するセリウム原子の割合は、1.67〜10%が好ましく、1.67〜6%がより好ましい。−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合が1.67%以上であれば、過酸化水素または過酸化物ラジカルによって陽イオン交換膜が劣化したとしても、陽イオン交換膜が充分な機械的強度を維持できる。−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合が10%以下であれば、陽イオン交換膜が充分なプロトン伝導性を有する。
陽イオン交換膜15は、補強材で補強されていてもよい。補強材としては、多孔体、繊維、織布、不織布等が挙げられる。補強材の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
(触媒層)
触媒層11は、触媒とイオン交換樹脂とを含む層である。
触媒としては、カーボン担体に白金または白金合金を担持した担持触媒が挙げられる。
カーボン担体としては、カーボンブラック粉末が挙げられる。
イオン交換樹脂としては、陽イオン交換膜と同様のスルホン酸基を有する高分子化合物等が挙げられる。
触媒層11は、触媒とイオン交換樹脂とを含む層である。
触媒としては、カーボン担体に白金または白金合金を担持した担持触媒が挙げられる。
カーボン担体としては、カーボンブラック粉末が挙げられる。
イオン交換樹脂としては、陽イオン交換膜と同様のスルホン酸基を有する高分子化合物等が挙げられる。
(ガス拡散層)
ガス拡散層12としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。
ガス拡散層12は、ポリテトラフルオロエチレン等によって撥水化処理されていることが好ましい。
ガス拡散層12としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。
ガス拡散層12は、ポリテトラフルオロエチレン等によって撥水化処理されていることが好ましい。
(カーボン層)
膜電極接合体10は、図2に示すように、触媒層11とガス拡散層12との間にカーボン層16を有していてもよい。カーボン層16を配置することにより、触媒層11の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
膜電極接合体10は、図2に示すように、触媒層11とガス拡散層12との間にカーボン層16を有していてもよい。カーボン層16を配置することにより、触媒層11の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
カーボン層16は、カーボンとフッ素系重合体とを含む層である。
カーボンとしては、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。
フッ素系重合体としては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
カーボンとしては、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。
フッ素系重合体としては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体10は、たとえば、下記方法にて製造される。
(a−1)陽イオン交換膜15上に触媒層11を形成して膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
(a−2)ガス拡散層12上に触媒層11を形成して電極(アノード13、カソード14)とし、陽イオン交換膜15を該電極で挟み込む方法。
膜電極接合体10は、たとえば、下記方法にて製造される。
(a−1)陽イオン交換膜15上に触媒層11を形成して膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
(a−2)ガス拡散層12上に触媒層11を形成して電極(アノード13、カソード14)とし、陽イオン交換膜15を該電極で挟み込む方法。
膜電極接合体10がカーボン層16を有する場合、膜電極接合体10は、たとえば、下記方法にて製造される。
(b−1)基材フィルム上に、カーボンおよびフッ素系重合体を含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層16を形成し、カーボン層16上に触媒層11を形成し、触媒層11と陽イオン交換膜15とを貼り合わせ、基材フィルムを剥離して、カーボン層16を有する膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
(b−2)ガス拡散層12上に、カーボンおよびフッ素系重合体を含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層16を形成し、(a−1)の方法における膜触媒層接合体を、カーボン層16を有するガス拡散層12で挟み込む方法。
(b−1)基材フィルム上に、カーボンおよびフッ素系重合体を含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層16を形成し、カーボン層16上に触媒層11を形成し、触媒層11と陽イオン交換膜15とを貼り合わせ、基材フィルムを剥離して、カーボン層16を有する膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
(b−2)ガス拡散層12上に、カーボンおよびフッ素系重合体を含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層16を形成し、(a−1)の方法における膜触媒層接合体を、カーボン層16を有するガス拡散層12で挟み込む方法。
陽イオン交換膜15は、たとえば、下記方法によって製造される。
(x−1)−SO2F基を有する高分子化合物を膜状に成形した後、該高分子化合物を酸型化処理して、−SO2F基をスルホン酸基に変換する方法。
(x−2)スルホン酸基を有する高分子化合物を膜状に成形する方法。
(x−1)−SO2F基を有する高分子化合物を膜状に成形した後、該高分子化合物を酸型化処理して、−SO2F基をスルホン酸基に変換する方法。
(x−2)スルホン酸基を有する高分子化合物を膜状に成形する方法。
(x−1)方法:
−SO2F基を有する高分子化合物を膜状に成形する方法としては、押出成形法、加圧プレス成形法、延伸法等が挙げられる。
−SO2F基を有する高分子化合物を膜状に成形する方法としては、押出成形法、加圧プレス成形法、延伸法等が挙げられる。
(x−2)方法:
スルホン酸基を有する高分子化合物を膜状に成形する方法としては、スルホン酸基を有する高分子化合物を含む液状組成物を基材フィルムに塗布、乾燥する方法(キャスト法)が挙げられる。
液状組成物は、水酸基を有する有機溶媒および水を含む分散媒に、スルホン酸基を有する高分子化合物を分散させた分散液である。
陽イオン交換膜15がセリウム原子を含む場合、液状組成物に、前記セリウム化合物を添加する。
スルホン酸基を有する高分子化合物を膜状に成形する方法としては、スルホン酸基を有する高分子化合物を含む液状組成物を基材フィルムに塗布、乾燥する方法(キャスト法)が挙げられる。
液状組成物は、水酸基を有する有機溶媒および水を含む分散媒に、スルホン酸基を有する高分子化合物を分散させた分散液である。
陽イオン交換膜15がセリウム原子を含む場合、液状組成物に、前記セリウム化合物を添加する。
水酸基を有する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール等が挙げられる。水酸基を有する有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水の割合は、分散媒(100質量%)のうち、10〜99質量%が好ましく、40〜99質量%がより好ましい。水の割合を増やすことにより、分散媒に対するスルホン酸基を有する高分子化合物の分散性を向上できる。
水酸基を有する有機溶媒の割合は、分散媒(100質量%)のうち、1〜90質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましい。
水酸基を有する有機溶媒の割合は、分散媒(100質量%)のうち、1〜90質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましい。
陽イオン交換膜15を安定化させるために、熱処理(アニール処理)を行うことが好ましい。熱処理の温度は、スルホン酸基を有する高分子化合物の種類にもよるが、110〜200℃が好ましい。
触媒層11の形成方法としては、下記方法が挙げられる。
(y−1)触媒層形成用液を、陽イオン交換膜15、ガス拡散層12、またはカーボン層16上に塗布し、乾燥させる方法。
(y−2)触媒層形成用液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させて触媒層11を形成し、該触媒層11を陽イオン交換膜15上に転写する方法。
(y−1)触媒層形成用液を、陽イオン交換膜15、ガス拡散層12、またはカーボン層16上に塗布し、乾燥させる方法。
(y−2)触媒層形成用液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させて触媒層11を形成し、該触媒層11を陽イオン交換膜15上に転写する方法。
触媒層形成用液は、イオン交換樹脂および触媒を分散媒に分散させた液である。触媒層形成用液は、たとえば、前記液状組成物と、触媒の分散液とを混合することにより調製できる。
触媒層形成用液は、触媒層11の形成方法によって粘度が異なるため、数十cP程度の分散液であってもよく、20000cP程度のペーストであってもよい。
触媒層形成用液は、触媒層11の形成方法によって粘度が異なるため、数十cP程度の分散液であってもよく、20000cP程度のペーストであってもよい。
以上説明した本発明の固体高分子形燃料電池は、陽イオン交換膜15が前記条件(i)を満足するため、アノード13およびカソード14に相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体10の温度を100〜120℃に維持して発電を行う場合でも、高い発電性能(出力電圧)を長期間にわたって安定して維持できる。該理由は以下の通りである。
従来の固体高分子形燃料電池を、低加湿または無加湿のガスを用いる運転条件にて運転した場合、発電によって生成する過酸化水素または過酸化物ラジカルにより、陽イオン交換膜の劣化が進行する。また、高温、かつ低加湿または無加湿の条件下では、陽イオン交換膜の膨潤・収縮等によって劣化がさらに加速される。陽イオン交換膜は、一定の圧力でパッケージングされているため、陽イオン交換膜の劣化により膜厚が薄くなった部分が、該圧力によって押し切られてしまい、ピンホールが発生しやすくなる。そのため、アノードとカソードとが短絡してしまい、運転の続行が困難となる。
一方、本発明の固体高分子形燃料電池は、陽イオン交換膜15が前記条件(i)を満足する、すなわち高い突き刺し強度を有しているため、過酸化水素または過酸化物ラジカルにより陽イオン交換膜15の劣化が進行し、部分的に膜厚が薄くなったとしても、陽イオン交換膜15が充分な機械的強度(突き刺し強度)を維持している。その結果、ピンホールが発生しにくくなり、アノード13とカソード14との短絡により運転の続行が困難となるまでの時間を大幅に遅らせることができる。
<固体高分子形燃料電池の運転方法>
本発明の固体高分子形燃料電池の運転方法は、アノード13およびカソード14に相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体10の温度を100〜120℃に維持して発電を行う運転方法である。
本発明の固体高分子形燃料電池の運転方法は、アノード13およびカソード14に相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体10の温度を100〜120℃に維持して発電を行う運転方法である。
アノード13およびカソード14に供給される空気の相対湿度が0〜50%であれば、加湿器が不要になる。
膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持すれば、セルの温調が容易になり、自動車用途の場合、ラジエータを小さくできる。
膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持すれば、セルの温調が容易になり、自動車用途の場合、ラジエータを小さくできる。
以上説明した本発明の固体高分子形燃料電池の運転方法にあっては、固体高分子形燃料電池が、前記条件(i)を満足する陽イオン交換膜15を有する膜電極接合体10を備えているため、アノード13およびカソード14に相対湿度0〜50%のガスを供給し、膜電極接合体10の温度を100〜120℃に維持して発電を行う場合でも、高い発電性能(出力電圧)を長期間にわたって安定して維持できる。
また、自動車に加湿器を搭載する必要がなくなり、かつラジエータを小さくできるため、自動車を軽量化できる。その結果、燃費が向上する。
また、自動車に加湿器を搭載する必要がなくなるため、燃料電池システム全体からみて、充分に高いエネルギー効率で発電できる。
また、自動車に加湿器を搭載する必要がなくなり、かつラジエータを小さくできるため、自動車を軽量化できる。その結果、燃費が向上する。
また、自動車に加湿器を搭載する必要がなくなるため、燃料電池システム全体からみて、充分に高いエネルギー効率で発電できる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
例3〜5、7は実施例であり、例1、2、6、8は比較例である。
例3〜5、7は実施例であり、例1、2、6、8は比較例である。
(イオン交換容量)
スルホン酸基を有する高分子化合物のイオン交換容量(AR)は、下記方法により求めた。
滴定によりあらかじめARがわかっている2種の高分子化合物(ARが1.0のものと1.1のもの)からなる200μmの膜それぞれについて、蛍光X線(リガク社製、RIX3000)を用いてイオウ原子に基づくピーク強度を測定し、該ピーク強度とARとの関係を示す検量線を作成した。スルホン酸基を有する高分子化合物をプレスして200μmの膜を作製し、蛍光X線でイオウ原子に基づくピーク強度を測定し、前記検量線にてARを求めた。
スルホン酸基を有する高分子化合物のイオン交換容量(AR)は、下記方法により求めた。
滴定によりあらかじめARがわかっている2種の高分子化合物(ARが1.0のものと1.1のもの)からなる200μmの膜それぞれについて、蛍光X線(リガク社製、RIX3000)を用いてイオウ原子に基づくピーク強度を測定し、該ピーク強度とARとの関係を示す検量線を作成した。スルホン酸基を有する高分子化合物をプレスして200μmの膜を作製し、蛍光X線でイオウ原子に基づくピーク強度を測定し、前記検量線にてARを求めた。
(膜厚変位)
図3に示すように、3枚の約1cm角の陽イオン交換膜15を、熱分析装置(ブルカー・エイエックスエス社製、TMA)の測定ステージ31上に重ね合わせた。3枚重なった陽イオン交換膜15の総膜厚を測定した。
測定ステージ31ごと陽イオン交換膜15をマントルヒータ32内に入れ、120℃、無加湿の雰囲気下、陽イオン交換膜15上に石英製の円錐形プローブ33の頂点をあて、円錐形プローブ33に10gの荷重を加え、該状態を1時間保持して円錐形プローブ33を安定させた。
図3に示すように、3枚の約1cm角の陽イオン交換膜15を、熱分析装置(ブルカー・エイエックスエス社製、TMA)の測定ステージ31上に重ね合わせた。3枚重なった陽イオン交換膜15の総膜厚を測定した。
測定ステージ31ごと陽イオン交換膜15をマントルヒータ32内に入れ、120℃、無加湿の雰囲気下、陽イオン交換膜15上に石英製の円錐形プローブ33の頂点をあて、円錐形プローブ33に10gの荷重を加え、該状態を1時間保持して円錐形プローブ33を安定させた。
円錐形プローブ33に10gの荷重を加えた状態で陽イオン交換膜15に突き刺さった円錐形プローブ33の深さを測定し、該深さを前記総膜厚から引くことにより、10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚を求めた。
ついで、該円錐形プローブ33に2g/分の速度で50gまで荷重を加えた。円錐形プローブ33に50gの荷重を加えた状態で陽イオン交換膜15に突き刺さった円錐形プローブ33の深さを測定し、該深さを前記総膜厚から引くことにより、50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚を求めた。
ついで、該円錐形プローブ33に2g/分の速度で50gまで荷重を加えた。円錐形プローブ33に50gの荷重を加えた状態で陽イオン交換膜15に突き刺さった円錐形プローブ33の深さを測定し、該深さを前記総膜厚から引くことにより、50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚を求めた。
下記式(I)から膜厚変位を求めた。
膜厚変位=(10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚−50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚)/10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚×100 ・・・(I)。
膜厚変位=(10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚−50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚)/10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚×100 ・・・(I)。
〔例1〕
300mLのガラス製丸底フラスコに、化合物(12−1)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とからなる共重合体(イオン交換容量=1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)を、水/エタノール混合分散媒に分散させて、固形分濃度30質量%の液状組成物を得た。
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H ・・・(12−1)。
300mLのガラス製丸底フラスコに、化合物(12−1)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とからなる共重合体(イオン交換容量=1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)を、水/エタノール混合分散媒に分散させて、固形分濃度30質量%の液状組成物を得た。
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H ・・・(12−1)。
該組成物を、100μmのエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと記す。)シート(旭硝子社製、商品名:アフレックス100N)上に、ダイコータを用いたキャスト法にて塗布し、80℃で10分間予備乾燥した後、さらに150℃で30分間のアニール処理を施し、膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、0%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
〔例2〕
例1の液状組成物100gに炭酸セリウム(Ce2CO3・8H2O)の0.083gを加え、室温で一昼夜撹拌した。
該組成物を用いた以外は、例1と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、0.83%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
例1の液状組成物100gに炭酸セリウム(Ce2CO3・8H2O)の0.083gを加え、室温で一昼夜撹拌した。
該組成物を用いた以外は、例1と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、0.83%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
〔例3〕
炭酸セリウムの量を0.17gに変更した以外は、例2と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、1.67%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
炭酸セリウムの量を0.17gに変更した以外は、例2と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、1.67%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
〔例4〕
炭酸セリウムの量を0.5gに変更した以外は、例2と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、5%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
炭酸セリウムの量を0.5gに変更した以外は、例2と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、5%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
〔例5〕
炭酸セリウムの量を1.0gに変更した以外は、例2と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、10%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
炭酸セリウムの量を1.0gに変更した以外は、例2と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、10%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
〔例6〕
炭酸セリウムの量を1.4gに変更した以外は、例2と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、14%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
炭酸セリウムの量を1.4gに変更した以外は、例2と同様にして膜厚25μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、14%である。
該陽イオン交換膜の膜厚変位を求めた。結果を図4に示す。
〔例7〕
白金担持カーボンおよびイオン交換樹脂(旭硝子社製、フレミオン(登録商標))を、水/エタノール混合分散媒に分散させ、触媒層形成用液を得た。
該触媒層形成用液をポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗布した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を形成した。触媒層形成前の基材フィルムのみの質量と触媒層形成後の基材フィルムの質量とを測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.2mg/cm2であった。
白金担持カーボンおよびイオン交換樹脂(旭硝子社製、フレミオン(登録商標))を、水/エタノール混合分散媒に分散させ、触媒層形成用液を得た。
該触媒層形成用液をポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗布した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を形成した。触媒層形成前の基材フィルムのみの質量と触媒層形成後の基材フィルムの質量とを測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.2mg/cm2であった。
例4の陽イオン交換膜の両面に、基材フィルム上に形成された触媒層を配置し、ホットプレス法によって触媒層を転写して、アノードの触媒層およびカソードの触媒層を陽イオン交換膜の両面にそれぞれ接合した膜触媒層接合体を得た。電極面積は、25cm2である。
該膜触媒層接合体を、厚さ約200μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体を得た。
該膜電極接合体を発電用単セルに組み込み、下記耐久性試験を行った。結果を図5および表1に示す。
該膜触媒層接合体を、厚さ約200μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体を得た。
該膜電極接合体を発電用単セルに組み込み、下記耐久性試験を行った。結果を図5および表1に示す。
(耐久性試験)
電流密度0.2A/cm2に相当する水素(利用率50%)および空気(利用率50%)をそれぞれアノードおよびカソードに50kPaで供給した。水素の露点は82℃(相対湿度25%)とし、空気の露点は82℃(相対湿度25%)とした。セル温度を120℃に維持した状態で、電流密度0.2A/cm2で3200時間の発電を行い、出力電圧を測定した。
F−生成速度は、ドレインタンクに溜まったドレイン水を定期的に採取し、イオンクロマトグラフ測定により該ドレイン水中のF−量を測定し、生成速度を求めた。
電流密度0.2A/cm2に相当する水素(利用率50%)および空気(利用率50%)をそれぞれアノードおよびカソードに50kPaで供給した。水素の露点は82℃(相対湿度25%)とし、空気の露点は82℃(相対湿度25%)とした。セル温度を120℃に維持した状態で、電流密度0.2A/cm2で3200時間の発電を行い、出力電圧を測定した。
F−生成速度は、ドレインタンクに溜まったドレイン水を定期的に採取し、イオンクロマトグラフ測定により該ドレイン水中のF−量を測定し、生成速度を求めた。
〔例8〕
白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に触媒全質量の50%含まれるように担持された触媒粉末(エヌ・イーケムキャット社製)1.0gに、蒸留水5.1gを混合し、触媒の分散液を得た。
これとは別に、化合物(12−1)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とからなる共重合体(イオン交換容量=1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)を、エタノールに分散させて、固形分濃度9質量%の液状組成物を得た。
白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に触媒全質量の50%含まれるように担持された触媒粉末(エヌ・イーケムキャット社製)1.0gに、蒸留水5.1gを混合し、触媒の分散液を得た。
これとは別に、化合物(12−1)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とからなる共重合体(イオン交換容量=1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)を、エタノールに分散させて、固形分濃度9質量%の液状組成物を得た。
触媒の分散液に、液状組成物の5.6gを加え、ホモジナイザー(キネマチカ社製、商品名:ポリトロン)を用いて混合し、触媒層形成用液を得た。
該触媒層形成用液をポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗布した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を形成した。触媒層形成前の基材フィルムのみの質量と触媒層形成後の基材フィルムの質量とを測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
該触媒層形成用液をポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗布した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を形成した。触媒層形成前の基材フィルムのみの質量と触媒層形成後の基材フィルムの質量とを測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
例1と同様にして、膜厚50μmの陽イオン交換膜を得た。該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対するセリウム原子の割合は、0%である。
該陽イオン交換膜の両面に、基材フィルム上に形成された触媒層を配置し、ホットプレス法によって触媒層を転写して、アノードの触媒層およびカソードの触媒層を陽イオン交換膜の両面にそれぞれ接合した膜触媒層接合体を得た。電極面積は、16cm2である。
該膜触媒層接合体を、厚さ約350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体を得た。
該膜電極接合体を発電用単セルに組み込み、下記耐久性試験を行った。結果を表1に示す。
該陽イオン交換膜の両面に、基材フィルム上に形成された触媒層を配置し、ホットプレス法によって触媒層を転写して、アノードの触媒層およびカソードの触媒層を陽イオン交換膜の両面にそれぞれ接合した膜触媒層接合体を得た。電極面積は、16cm2である。
該膜触媒層接合体を、厚さ約350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体を得た。
該膜電極接合体を発電用単セルに組み込み、下記耐久性試験を行った。結果を表1に示す。
(耐久性試験)
水素(利用率70%)および空気(利用率40%)をそれぞれアノードおよびカソードに常圧で供給した。水素の露点は80℃(相対湿度100%)とし、空気の露点は50℃(相対湿度25%)とした。セル温度を80℃に維持した状態で、電流密度0.2A/cm2で2000時間の発電を行い、出力電圧を測定した。
水素(利用率70%)および空気(利用率40%)をそれぞれアノードおよびカソードに常圧で供給した。水素の露点は80℃(相対湿度100%)とし、空気の露点は50℃(相対湿度25%)とした。セル温度を80℃に維持した状態で、電流密度0.2A/cm2で2000時間の発電を行い、出力電圧を測定した。
例7は、膜厚変位が55%、すなわち高い突き刺し強度を有する陽イオン交換膜を用いているため、高温(120℃)低加湿(相対湿度25%)の条件において、3000時間以上安定的に発電できた。
例8は、膜厚変位が80%、すなわち突き刺し強度が不充分な陽イオン交換膜を用いているため、例7に比べマイルドな条件にも関わらず、2000時間での劣化率は、例7に比べ高くなった。
例7において、2200時間発電時に水素リークを測定したところ、700ppmであり、初期と比較しても遜色のない結果となった。一方、例8は、劣化率が高いため、初期に比べて水素リークは多くなっていると予想される。
例8は、膜厚変位が80%、すなわち突き刺し強度が不充分な陽イオン交換膜を用いているため、例7に比べマイルドな条件にも関わらず、2000時間での劣化率は、例7に比べ高くなった。
例7において、2200時間発電時に水素リークを測定したところ、700ppmであり、初期と比較しても遜色のない結果となった。一方、例8は、劣化率が高いため、初期に比べて水素リークは多くなっていると予想される。
本発明の固体高分子形燃料電池は、高温低加湿発電においても長期の耐久性を有するため、今後の燃料電池市場の主要となる自動車用燃料電池として有用である。
10 膜電極接合体
11 触媒層
13 アノード
14 カソード
15 陽イオン交換膜
100 固体高分子形燃料電池
11 触媒層
13 アノード
14 カソード
15 陽イオン交換膜
100 固体高分子形燃料電池
Claims (5)
- アノードおよびカソードと、該アノードと該カソードとの間に配置される、スルホン酸基を有する高分子化合物を含む陽イオン交換膜とからなる膜電極接合体を備え、前記アノードおよび前記カソードに相対湿度0〜50%のガスを供給し、前記膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持して発電を行う固体高分子形燃料電池において、
前記陽イオン交換膜が、下記条件(i)を満足することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
(i)120℃の雰囲気下、陽イオン交換膜上に円錐形プローブの頂点をあて、該円錐形プローブに2g/分の速度で10gから50gまでの荷重を加えた際、下記式(I)で求められる膜厚変位が、35〜75%である。
膜厚変位=(10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚−50gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚)/10gの荷重を加えたときの陽イオン交換膜の膜厚×100 ・・・(I)。 - 前記高分子化合物が、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(エーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)である、請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
- 前記パーフルオロカーボン重合体が、下記式(1)で表される化合物に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体である、請求項2に記載の固体高分子形燃料電池。
CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO3H ・・・(1)。
ただし、mは、0〜3の整数であり、nは、1〜12の整数であり、pは、0または1であり、Xは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。 - 前記陽イオン交換膜が、セリウム原子を含み、
該陽イオン交換膜に含まれる−SO3 −基の数に対する前記セリウム原子の割合が、1.67〜10%である、請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池の運転方法であって、
前記アノードおよび前記カソードに相対湿度0〜50%のガスを供給し、前記膜電極接合体の温度を100〜120℃に維持して発電を行う、固体高分子形燃料電池の運転方法。
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