JP5286651B2 - 液状組成物、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 - Google Patents

液状組成物、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、初期の出力電圧が高く、長期に渡って高い出力電圧が得られる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法と、そのための好適な液状組成物に関する。
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電池であり、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への影響がほとんどない。なかでも電解質として固体高分子膜を使用する固体高分子形燃料電池は、高いイオン導電性を有する高分子電解質膜が開発され、常温でも作動でき高出力密度が得られるため、近年のエネルギー、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車用等の移動車両や、小型コージェネレーションシステムの電源として大きな期待が寄せられている。
固体高分子形燃料電池では、通常、固体高分子電解質としてプロトン伝導性のイオン交換膜が使用され、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が基本特性に優れている。固体高分子形燃料電池では、イオン交換膜の両面にガス拡散性の電極層を配置し、燃料である水素を含むガス及び酸化剤となる酸素を含むガス(空気等)を、それぞれアノード及びカソードに供給することにより発電を行う。
固体高分子形燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応は過酸化水素(H)を経由して反応が進行することから、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカルによって、電解質膜の劣化を引き起こす可能性が懸念されている。また、アノードには、カソードから酸素分子が膜内を透過してくるため、同様に過酸化水素又は過酸化物ラジカルを生成することも懸念される。特に炭化水素系膜を固体高分子電解質膜とする場合は、ラジカルに対する安定性に乏しく、長期間にわたる運転においては大きな問題となっていた。
例えば、固体高分子形燃料電池が初めて実用化されたのは、米国のジェミニ宇宙船の電源として採用された時であり、この時にはスチレン−ジビニルベンゼン重合体をスルホン化した膜が電解質膜として使用されたが、長期間にわたる耐久性には問題があった。この様な問題を改善する技術としては、高分子電解質膜中に過酸化水素を接触分解できる遷移金属酸化物又はフェノール性水酸基を有する化合物を添加する方法(特許文献1参照)や、高分子電解質膜内に触媒金属粒子を担持し、過酸化水素を分解する方法(特許文献2参照)が知られている。しかし、これらの技術は、生成する過酸化水素を分解する技術であり、イオン交換膜自体の分解の抑制を試みるものではないため、初期的には改善の効果があるものの、長期間にわたる耐久性には大きな問題が生じる可能性があった。またコスト的にも高くなるという問題があった。
一方、炭化水素系の重合体に対し、ラジカルに対する安定性が格段に優れる重合体として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が知られている。近年、これらのパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜を用いた固体高分子形燃料電池は、自動車用、住宅用市場等の電源として期待され、実用化への要望が高まり開発が加速している。これらの用途では、特に高い効率での運転が要求されるため、より高い電圧での運転が望まれると同時に低コスト化が望まれている。また、燃料電池システム全体の効率の点から低加湿又は無加湿での運転が要求されることも多い。
しかし、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜を用いた燃料電池においても、高加湿下での運転では安定性が非常に高いものの、低加湿又は無加湿での運転条件においては、電圧劣化が大きいことが報告されている(非特許文献1参照)。すなわち、低加湿又は無加湿での運転条件においては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜においても過酸化水素又は過酸化物ラジカルにより電解質膜の劣化が進行するものと考えられる。
また、上述のような燃料電池用の電解質膜の製造方法としては、押出し成形により製膜する方法、当該電解質膜を構成する樹脂の溶液を用いてキャスト製膜する方法等がある。大型の薄膜を工業的に生産する場合はキャスト製膜は有効である。また、スルホン酸基を有するフルオロカーボン重合体のような膜を構成する樹脂を含む液状組成物は、膜材料の製造に使用されるほか、既に製造された膜の修復、回収、さらにはコーティング剤として、きわめて有用であるという報告もされている(例えば特許文献3、特許文献4参照)。
特開2001−118591号公報(請求項1、2頁2〜9行) 特開平6−103992号公報(問題を解決するための手段、2頁33〜37行) 特開2003−183467号公報(2頁15〜32行) 特開2004−75978号公報(5頁24〜41行) 新エネルギー・産業技術総合開発機構主催 平成12年度固体高分子形燃料電池研究開発成果報告会要旨集、56頁16〜24行
本発明は、車載用、住宅用市場等への固体高分子形燃料電池の実用化において、十分に高いエネルギー効率での発電が可能であり、供給ガスの加湿温度(露点)がセル温度よりも低い低加湿又は無加湿での運転、セル温度に近い温度で加湿する高加湿での運転のどちらにおいても、高い発電性能を有し、かつ長期間にわたって安定した発電が可能な固体高分子形燃料電池用膜を提供することを目的とし、当該膜の製造方法及びそのために有用な液状組成物を提供することを目的とする。
本発明は、3価又は4価のセリウムと、スルホン酸基を有する高分子化合物とを含み、3価又は4価のセリウムの含有量が、前記高分子化合物中の−SO のモル数の0.3〜30モル%である液状組成物の製造方法であって、前記高分子化合物を液体中に溶解又は分散させた後、セリウムの炭酸塩をこれに混合することを特徴とする液状組成物の製造方法、及び2価又は3価のマンガンと、スルホン酸基を有する高分子化合物とを含み、2価又は3価のマンガンの含有量が、前記高分子化合物中の−SO のモル数の0.5〜45モル%である液状組成物の製造方法であって、前記高分子化合物を液体中に溶解又は分散させた後、マンガンの炭酸塩をこれに混合することを特徴とする液状組成物の製造方法を提供する。ここでいう液体は、溶媒又は分散媒を示す。
また、本発明は、上述の方法で得られる液状組成物をキャスト製膜することにより得る膜の製造方法、並びに触媒及び高分子電解質を含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜からなる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、前記固体高分子電解質膜を上述の膜の製造方法により作製することを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法を提供する。
さらに本発明は、触媒及び高分子電解質を含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜からなる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、上述の方法で得られる液状組成物に前記触媒を分散させ、塗工することにより前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方を作製することを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法を提供する。
本発明により得られる電解質膜は、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対して優れた耐性を有する。この理由は明確ではないが、セリウムイオン(3価又は4価)又はマンガンイオン(2価又は3価)と陽イオン交換基のプロトンが解離した残基(例えば、−SO )との相互作用が、過酸化水素又は過酸化物ラジカル耐性を効果的に向上させていると推定される。そして、セリウム化合物又はマンガン化合物の状態で膜中に含有される場合でも、わずかな解離により生じるセリウムイオン又はマンガンイオンと−SO 等との相互作用があり得ると考えられる。
また、本発明の製造方法により得られる電解質膜は、セリウムやマンガンを含んでいない電解質膜に対してこれらのイオンや化合物を含む液に浸漬して処理する等の方法に比べ、これらのイオンや化合物を膜中に簡便に、精度よくかつ均一に配合できると考えられる。
本発明の製造方法により得られる電解質膜は過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対して優れた耐性を有するため、当該電解質膜を有する膜電極接合体を備える固体高分子形燃料電池は、耐久性に優れ、長期にわたって安定な発電が可能である。
本発明においてセリウム又はマンガンを含有させる前の陽イオン交換基を有する高分子化合物としては、陽イオン交換基が解離してプロトンを生成する機能を有していればよく、特に限定されない。陽イオン交換基の具体例としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基、カルボン酸基、ケトイミド基等があり、特に酸性度が強く、化学的安定性の高いスルホン酸基が好ましい。以下、スルホン酸基を有する高分子化合物を例にとり本発明について説明する。
本発明によれば、スルホン酸基を有する高分子化合物を均一に溶解又は分散させた液に対しセリウム又はマンガンの化合物を溶解又は分散させることにより液状組成物を得ることができる。ここでセリウム又はマンガンの化合物としては、液状組成物中の溶媒に可溶のものでも不溶のものでも使用できるが、スルホン酸基を有する高分子化合物をイオン交換し、より均一にこれらの成分を存在させるためには水溶性の塩を水と組み合わせて使用することが好ましい。
水溶性の塩を使用し、液状組成物中に水を含有させた場合、セリウム又はマンガンは液状組成物中でイオンの状態で存在し、高分子化合物のスルホン酸基(−SOH)がセリウムイオン又はマンガンイオンによりイオン交換されると考えられる。また、水には不溶でも他の溶媒に可溶のセリウム化合物又はマンガン化合物を当該他の溶媒とともに液状組成物中に含有させると、その液状組成物を塗工して得られる膜においてセリウム化合物又はマンガン化合物が均一に存在させられるので好ましい。
また、液状組成物中の溶媒に不溶性のセリウム化合物又はマンガン化合物を使用する場合、液状組成物中でこれらの化合物の粒子を均一に良好に分散させることが必要である。そのため、この場合は当該化合物の分散液を作製し、スルホン酸基を有する高分子化合物の溶液又は分散液と混合して液状組成物を調製することが好ましい。また、あらかじめセリウム又はマンガンの可溶性の塩を、スルホン酸基を有する高分子化合物の溶液又は分散液に溶解し、これに別途用意した化合物を加え、上記可溶性の塩と反応させて、反応生成物を液状組成物に含有させることも可能である。
液状組成物に含有させる原料のセリウム化合物としては、水溶性のセリウム塩、非水溶性のセリウム塩、酸化物や水酸化物などの不溶性化合物など、各種の化合物が使用できる。セリウムの価数は+3価又は+4価である。+3価のセリウムイオンを含む塩を具体的に挙げると、例えば、酢酸セリウム(Ce(CHCOO)・HO)、塩化セリウム(CeCl・6HO)、硝酸セリウム(Ce(NO・6HO)、硫酸セリウム(Ce(SO・8HO)、炭酸セリウム(Ce(CO・8HO)等が挙げられる。+4価のセリウムイオンを含む塩としては、例えば、硫酸セリウム(Ce(SO・4HO)、硝酸二アンモニウムセリウム(Ce(NH(NO)、硫酸四アンモニウムセリウム(Ce(NH(SO・4HO)等が挙げられる。またセリウムの有機金属錯塩としてはセリウムアセチルアセトナート(Ce(CHCOCHCOCH・3HO)等が挙げられる。
例えば水溶性の3価のセリウム塩を使用した場合、スルホン酸基がセリウムイオンにより完全にイオン交換されると、Ce3+が3個の−SO と結合するが、本発明の液状組成物においては、完全にイオン交換されていなくてもよい。本発明の液状組成物ではセリウムがイオンの状態で又は化合物の状態で含まれていればよい。セリウムのかわりにマンガンが含まれる場合も同様である。
本発明の液状組成物中の、3価又は4価のセリウムの含有量は、スルホン酸基を有する高分子化合物中の−SO のモル数の0.3〜30モル%であることが好ましい(以下、この割合を「セリウムの含有率」という)。セリウム化合物の場合は、セリウム原子換算のモル比がセリウムの含有率である。より好ましくは0.7〜20モル%、さらに好ましくは1〜15モル%である。
セリウムの含有率がこの範囲よりも小さいと、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する十分な安定性が確保できないおそれがある。また含有率がこの範囲よりも大きいと、水素イオンの十分な伝導性を確保することができず、膜抵抗が増大して発電特性が低下するおそれがある。
また、液状組成物に含有させる原料のマンガン化合物としては、水溶性のマンガン塩、非水溶性のマンガン塩、酸化物や水酸化物などの不溶性化合物など、各種の化合物が使用できる。マンガンの価数は+2価又は+3価である。+2価のマンガンイオンを含む塩を具体的に挙げると、例えば、酢酸マンガン(Mn(CHCOO)・4HO)、塩化マンガン(MnCl・4HO)、硝酸マンガン(Mn(NO・6HO)、硫酸マンガン(MnSO・5HO)、炭酸マンガン(MnCO・nHO)等が挙げられる。+3価のマンガンイオンを含む塩としては、例えば、酢酸マンガン(Mn(CHCOO)・2HO)等が挙げられる。またマンガンの有機金属錯塩としてはマンガンアセチルアセトナート(Mn(CHCOCHCOCH)等が挙げられる。
本発明による液状組成物中の、マンガンイオン又はマンガン化合物の含有量は、スルホン酸基を有する高分子化合物中の−SO のモル数の0.5〜45モル%であることが好ましい(以下、この割合を「マンガンの含有率」という)。マンガン化合物の場合は、マンガン原子換算のモル比がマンガンの含有率である。より好ましくは1〜30モル%、さらに好ましくは1.5〜20モル%である。
マンガンの含有率がこの範囲よりも小さいと、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する十分な安定性が確保できないおそれがある。また含有率がこの範囲よりも大きいと、水素イオンの十分な伝導性を確保することができず、膜抵抗が増大して発電特性が低下するおそれがある。
状組成物を製造する際、使用されるセリウム化合物又はマンガン化合物としては、特に炭酸塩が好ましく、本発明では炭酸塩を用いる。炭酸塩は、一般的に水に難溶解性であるものが多いが、炭酸セリウム、炭酸マンガンの場合は、スルホン酸基を有する高分子化合物の溶液又は分散液に水を含有させておくと、容易に、炭酸ガスを発生しながら溶解する。また、液状組成物を、セリウム又はマンガンの炭酸塩を用いて作製し、通常のキャスト法などで塗工し、溶媒を乾燥除去して電解質膜を得ると、当該電解質膜中には−SO 基以外のアニオン種は残存しないため、水洗を必要としない。このような膜の製造の観点からも炭酸塩は好ましい。
本発明の液状組成物を得る方法及び得られた液状組成物を用いて電解質膜を得る方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。まず、スルホン酸基を有する高分子化合物を溶媒に溶解又は分散させる。これに水とセリウムの炭酸塩又はマンガンの炭酸塩を添加してよく混合し、液状組成物を得る。そして、得られた液状組成物をキャスト製膜して乾燥させることで電解質膜を得る方法である。
液状組成物中に含有させる水の量は、スルホン酸基を有する高分子化合物のイオン交換容量や濃度、添加するセリウム又はマンガンの量により適宜設定される。水を使用しないと、炭酸塩の溶解に時間がかかる場合があるので、特に炭酸塩を使用する場合は液状組成物に水を含有させることが好ましいため、水を使用する
本発明の液状組成物は、固形分濃度は特に限定されない。通常のキャスト塗工が可能なように、濃度、粘度を調製することができるが、この観点から固形分濃度は液状組成物全質量に対する質量比で5〜50%、特に10〜35%であることが好ましい。
本発明による電解質膜は積層膜とすることもでき、例えば、本発明の液状組成物をキャスト製膜して得られる膜に、セリウムやマンガンのイオン又は化合物を含まないイオン交換膜を積層して作製することも可能である。
本発明においてセリウム又はマンガンを含有させる前のスルホン酸基を有する高分子化合物としては特に限定されないが、イオン交換容量は0.5〜3.0ミリ当量/g乾燥樹脂であることが好ましく、0.7〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂であることがより好ましく、1.0〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂であることが特に好ましい。イオン交換容量が低すぎるとスルホン酸基がセリウムイオン又はマンガンイオンでイオン交換されたとき水素イオンの十分な伝導性を確保することができず、膜抵抗が増大して発電特性が低下するおそれがある。またイオン交換容量が高すぎると膜の耐水性や強度が低下するおそれがある。また、耐久性の観点から当該高分子化合物は含フッ素重合体であることが好ましく、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)が好ましい。パーフルオロカーボン重合体としては特に限定されないが、CF=CF−(OCFCFX)−O−(CF−SOHで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることが好ましい。
上記パーフルオロビニル化合物の好ましい例をより具体的に示すと、下記式(i)〜(iii)で表される化合物が挙げられる。ただし、下記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
Figure 0005286651
スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体を用いる場合、重合後にフッ素化することにより重合体の末端がフッ素化処理されたものを用いてもよい。重合体の末端がフッ素化されていると、より過酸化水素や過酸化物ラジカルに対する安定性が優れるため耐久性が向上する。
また、セリウム又はマンガンを含有させる前のスルホン酸基を有する高分子化合物として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体以外のものも使用でき、例えば高分子の主鎖に、又は主鎖と側鎖に芳香環を有しており、該芳香環にスルホン酸基が導入された構造を有する高分子化合物であって、イオン交換容量が0.5〜3.0ミリ当量/g乾燥樹脂である高分子化合物が好ましく使用できる。具体的には、例えば下記の高分子化合物が使用できる。
スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリベンゾオキサゾール、スルホン化ポリベンゾチアゾール、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリフェニレンスルホキシド、スルホン化ポリフェニレンサルファイド、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトンケトン、スルホン化ポリイミド等。
本発明の製造方法で得られる電解質膜を有する固体高分子形燃料電池は、例えば以下のような構成である。すなわち、本発明の電解質膜の両面に、触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するアノード及びカソードが配置された膜電極接合体を備える。膜電極接合体のアノード及びカソードは、好ましくは触媒層の外側(膜と反対側)にカーボンクロスやカーボンペーパー等からなるガス拡散層が配置される。膜電極接合体の両面には、燃料ガス又は酸化剤ガスの通路となる溝が形成されセパレータが配置され、セパレータを介して膜電極接合体が複数積層されたスタックを構成し、アノード側には水素ガスが供給され、カソード側には酸素又は空気が供給される構成である。アノードにおいてはH→2H+2eの反応が起こり、カソードにおいては1/2O+2H+2e→HOの反応が起こり、化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。
また、本発明の製造方法で得られる電解質膜は、アノード側に燃料ガスではなくメタノールを供給する直接メタノール燃料電池にも使用できる。
上述の触媒層は通常の手法に従い、例えば以下のようにして得られる。まず、白金触媒又は白金合金触媒微粒子を担持させた導電性のカーボンブラック粉末とスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体の溶液を混合し均一な分散液を得て、例えば以下のいずれかの方法でガス拡散電極を形成して膜電極接合体を得る。
第1の方法は、電解質膜の両面に上記分散液を塗布し乾燥後、両面を2枚のカーボンクロス又はカーボンペーパーで密着する方法である。第2の方法は、上記分散液を2枚のカーボンクロス又はカーボンペーパー上に塗布乾燥後、分散液が塗布された面が上記イオン交換膜と密着するように、上記イオン交換膜の両面から挟みこむ方法である。なお、ここでカーボンクロス又はカーボンペーパーは触媒を含む層により均一にガスを拡散させるためのガス拡散層としての機能と集電体としての機能を有するものである。また、別途用意した基材に上記分散液を塗工して触媒層を作製し、転写等の方法により電解質膜と接合させた後に基材をはく離し、上記ガス拡散層で挟み込む方法も使用できる。
触媒層中に含まれるイオン交換樹脂は特に限定されないが、スルホン酸基を有する高分子化合物であることが好ましく、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体であることがより好ましい。触媒層中のイオン交換樹脂は、本発明の電解質膜と同様にセリウム又はマンガンをイオンの状態で又は化合物の状態で含んでいてもよい。このような樹脂は、アノードにもカソードにも用いることができ、樹脂の分解は効果的に抑制されるので、固体高分子形燃料電池はさらに耐久性が付与される。また、電解質膜としてはセリウム又はマンガンを含まないイオン交換樹脂を使用し、触媒層中のイオン交換樹脂のみセリウム又はマンガンを含有させることもできる。
触媒層中にセリウム又はマンガンのイオン又は化合物を含有させる場合、本発明による液状組成物に触媒を分散させたものを塗工液として上記同様の方法で触媒層を形成すればよい。この場合、カソード及びアノードのいずれか一方のみを本発明の液状組成物を使用して作製することもできるし、カソード、アノードともに液状組成物を使用して作製することもできる。このとき、カソードとアノードとでは、セリウム又はマンガンの含有量が異なる液状組成物を使用して、カソードとアノードのセリウム又はマンガンの含有量が異なるように調節をすることもできる。特にアノードにはスルホン酸基を有する高分子化合物に含まれる−SO 基の10〜30モル%のセリウムが含まれ、カソードには3〜10モル%のセリウムが含まれると触媒層中のイオン交換樹脂の分解も効果的に抑制することが出来るので、耐久性向上の点から更に好ましい。
同様の理由から、マンガンのイオン又は化合物を含有させる場合にはアノードにはスルホン酸基を有する高分子化合物に含まれる−SO 基の15〜45モル%のマンガンが含まれ、カソードには5〜15モル%のマンガンが含まれることが好ましい。なお、ここでセリウム又はマンガンの含有量とは、セリウム化合物又はマンガン化合物の場合は、セリウム又はマンガンのモル数に換算したモル数での割合を示している。
本発明により得られる電解質膜は、セリウム又はマンガンをイオン又は化合物の状態で含む、スルホン酸基を有する高分子化合物のみからなる膜であってもよいが、他の成分を含んでいてもよい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)やパーフルオロアルキルエーテル等の他の樹脂等の繊維、織布、不織布、多孔体等により補強されている膜を、本発明の液状組成物を用いて製膜する方法にも適用できる。なお、電解質膜を補強する場合、膜全体を補強してもよいが、膜の周辺近くを額縁状にフィルム、シート等で補強してもよい。額縁状に膜を補強すると、周辺部の強度が増すため取扱い性が向上する。膜全体を空隙率の高い補強材で補強し周辺部のみ空隙率が低いか又は空隙のない補強材で補強してもよい。
本発明により得られる膜電極接合体を備える固体高分子型燃料電池は、高温でも耐久性に優れるため、100℃以上で運転し、発電することができる。燃料ガスとしてメタノール、天然ガス、ガソリン等を改質して得られる水素を使用する場合、一酸化炭素が微量でも含まれると電極触媒が被毒して燃料電池の出力が低下しやすくなる。運転温度を100℃以上にすると被毒を抑制することが可能となる。運転温度を120℃以上にするとより好ましく、被毒を抑制する効果がより高くなる。
また、本発明による液状組成物は、燃料電池用の電解質膜、触媒層の作製に有用なだけでなく、水電解用の膜や湿度センサー等の各種センサー、信号伝達媒体等にも好ましく使用できる。
以下、本発明を具体的に実施例(例1〜5、8〜11)及び比較例(例6〜7)を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体の溶液の調製]
CF=CF/CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOH共重合体(イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)300gとエタノール420gと水280gとを2Lオートクレーブに仕込み、密閉し、ダブルヘリカル翼にて105℃で6時間混合撹拌して均一な液(以下、溶液Aという)を得た。溶液Aの固形分濃度は30質量%であった。
[スルホン酸基を有する芳香族重合体の溶液の調製]
粒状の市販のポリエーテルエーテルケトン(英国Victrex社製、PEEK−450P)60gを98質量%の硫酸1200gに室温で少量ずつ添加し、室温で60時間撹拌することにより、ポリエーテルエーテルケトンにスルホン酸基が導入された高分子化合物の均一な溶液を得た。次にこの溶液を、5Lの蒸留水に冷却しながら徐徐に滴下することで、スルホン酸基を有するポリエーテルエーテルケトンを析出させ、濾過して分離した。次いでこれを蒸留水で洗浄液が中性になるまで洗浄し、その後80℃真空下で24時間乾燥して、48gのスルホン酸基を有するポリエーテルエーテルケトンを得た。イオン交換容量は1.6ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
次にこのスルホン酸基を有するポリエーテルエーテルケトン40gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)360gに溶解して10質量%の溶液(以下、溶液Bという)を得る。
[例1]
300mLガラス製丸底フラスコに、溶液Aを100gと、炭酸セリウム水和物(Ce(CO・8HO)1.00gとを仕込み、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製半月板翼にて、室温で8時間撹拌した。撹拌開始よりCO発生による気泡が発生したが、最終的には均一な透明の液状組成物を得た(以下、液状組成物Cという)。得られた液状組成物Cの固形分濃度は30.2質量%であった。この組成物を100μmのエチレンーテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)シート(商品名:アフレックス100N、旭硝子社製)上に、ダイコータにてキャスト塗工し、80℃で10分予備乾燥した後、120℃で10分乾燥し、さらに150℃、30分のアニールを施し、膜厚50μmの固体高分子電解質膜を得た。
この高分子電解質膜から、5cm×5cmの大きさの膜を切り出し、乾燥窒素中で16時間放置した後、質量を精秤し0.1規定のHCl水溶液中に含浸して、セリウムイオンを完全に抽出した液を得た。この液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析にて測定することで、高分子電解質膜中のセリウムを定量したところ、セリウム量は膜の質量に対して1.5%であり、セリウムの含有率は10モル%であった。
次に、白金がカーボン担体(比表面積800m/g)に触媒全質量の50%含まれるように担持された触媒粉末(エヌ・イーケムキャット社製)1.0gに、蒸留水5.1gを混合した。この混合液にCF=CF/CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOH共重合体(イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液5.6gを混合した。この混合物をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕させ、触媒層形成用塗工液を作製した。
この塗工液を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。なお、触媒層形成前の基材フィルムのみの質量と触媒層形成後の基材フィルムの質量を測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cmであった。
次に、上述のセリウムを含む高分子電解質膜を用い、この膜の両面に上述の基材フィルム上に形成された触媒層をそれぞれ配置し、ホットプレス法により触媒層を膜に転写してアノード触媒層及びカソード触媒層を高分子電解質膜の両面にそれぞれ接合した、膜触媒層接合体を得た。なお、電極面積は16cmであった。
この膜触媒層接合体を厚さ350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体を作製し、これを発電用セルに組み込み、加速試験として開回路試験(OCV試験)を行った。試験は、常圧で、電流密度0.2A/cmに相当する水素(利用率70%)及び空気(利用率40%)をそれぞれアノード及びカソードに供給し、セル温度は90℃、アノードガスの露点は60℃、カソードガスの露点は60℃として、発電は行わずに開回路状態で100時間運転し、その間の電圧変化を測定した。また、試験前後にアノードに水素、カソードに窒素を供給し、膜を通してアノードからカソードにリークする水素ガス量を分析し、膜の劣化の程度を調べた。結果を表1に示す。
次に、また上記同様に膜電極接合体を作製して発電用セルに組み込み、低加湿での運転条件における耐久性試験を行った。試験条件は、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度80℃において電流密度0.2A/cmにおける固体高分子形燃料電池の初期特性評価及び耐久性評価を実施した。アノード側は露点80℃、カソード側は露点50℃となるようにそれぞれ水素及び空気を加湿してセル内に供給し、運転初期のセル電圧及び運転開始後の経過時間とセル電圧との関係を測定した。結果を表2に示す。また、上記のセルの評価条件において、カソード側の露点を80℃に変更した以外は同様にして、運転初期のセル電圧及び運転開始後の経過時間とセル電圧との関係を測定した。評価結果を表3に示す。
[例2]
例1において炭酸セリウム水和物(Ce(CO・8HO)の量を498mgにした以外は例1と同様にして、セリウムの含有率が5モル%の膜を得た。次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得た。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行うと、表1〜3に示す結果のとおりとなった。
[例3]
例1において炭酸セリウム水和物(Ce(CO・8HO)の量を166mgとした以外は例1と同様にして、セリウムの含有率が1.7モル%の膜を得た。次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得た。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行うと、表1〜3に示す結果のとおりとなった。
[例4]
例1で用いた炭酸セリウム水和物のかわりに炭酸マンガン水和物(MnCO・nHO、マンガンの含有量が全質量の41〜46%)422mgを使用した以外は例1と同様にして、マンガンの含有率が10モル%の膜を得た。次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得る。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行うと、表1〜3に示す結果のとおりとなる。
[例5]
300mLガラス製丸底フラスコに、溶液Bを100gと、水を20gと、炭酸セリウム(Ce(CO・8HO)とを484mg仕込み、PTFE製半月板翼にて、70℃で8時間撹拌する。撹拌の途中、CO発生による気泡が発生するが、最終的には均一な透明液が得られる。この液状組成物の固形分濃度は8.3%である。この組成物を用いて室温でPTFE製基材にキャスト製膜し、窒素雰囲気で100℃で10時間乾燥してNMPと水を蒸発させることにより、厚さ50μmの膜が得られる。この膜は、例1と同様のICP測定によりセリウムの含有率が10モル%となる。
次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得る。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行うと、表1〜3に示す結果のとおりとなる。
[例6]
溶液Aに何も加えずにキャスト製膜して固体高分子電解質膜を得た。電解質膜としてこの膜を用いた以外は例1と同様にして膜触媒層接合体を得て、さらに膜電極接合体を得た。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行ったところ、表1〜3に示す結果のとおりとなった。
[例7]
例5において、炭酸セリウムと水を加えず溶液Bをそのまま使用する以外は例5と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得る。この膜電極接合体について例1と同様に評価を行うと、表1〜3に示す結果のとおりとなる。
[例8]
例1において溶液Aを100gと、炭酸セリウム水和物(Ce(CO・8HO)249mgと、さらに炭酸マンガン水和物(MnCO・nHO、マンガンの含有量が全質量の41〜46%)170mgとを仕込んだ以外は例1と同様にして液状組成物を得て、膜中のパーフルオロカーボン重合体に含まれる−SO 基の2.5モル%のセリウムと、3.75モル%のマンガンを含有する膜を得た。次に、この膜を用いて例1と同様にして膜触媒層接合体を得てさらに膜電極接合体を得た。この膜電極接合体について例1と同様の評価を行ったところ、表1〜3に示す結果のとおりとなった。
[例9]
溶液Aを100μmのETFEシート(商品名:アフレックス100N、旭硝子社製)上に、ダイコータにてキャスト塗工し、80℃で10分予備乾燥した後、120℃で10分乾燥し、さらに150℃、30分のアニールを施し、膜厚50μm、5cm×5cmの大きさの電解質膜を得た。
次に、例1において作製したセリウムの含有率が10モル%である液状組成物Cを用いて以下のとおりアノード触媒層を作製した。白金がカーボン担体(比表面積800m/g)に触媒全質量の50%含まれるように担持された触媒粉末(エヌ・イーケムキャット社製)1.0gに、蒸留水5.1gを混合した。この混合液に上記液状組成物Cをエタノールで希釈して、固形分濃度を9質量%とした液5.6gを混合した。この混合物をホモジナイザーを使用して混合、粉砕させ、アノード触媒層形成用塗工液を作製した。
この塗工液をポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて、触媒層中のパーフルオロカーボン重合体に含まれる−SO 基の10モル%のセリウムを含有するアノード触媒層を作製した。なお、触媒層形成前の基材フィルムのみの質量と触媒層形成後の基材フィルムの質量を測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cmであった。
一方、上記液状組成物Cにかわりに上記溶液Aを用いた以外はアノード触媒層と同様にして、セリウムを含有しないカソード触媒層を作製した。
次に、溶液Aを用いて作製した電解質膜の両面に、上述の基材フィルム上に形成されたアノード触媒層と、カソード触媒層をそれぞれ配置し、ホットプレス法により触媒層を膜に転写して、触媒層中のパーフルオロカーボン重合体に含まれる−SO 基の10モル%のセリウムを含有するアノード触媒層と、セリウムを含有しないカソード触媒層を高分子電解質膜の両面にそれぞれ接合した、膜触媒層接合体を得た。なお、電極面積は16cmであった。
この膜触媒層接合体から例1と同様にしてさらに膜電極接合体を得た。この膜電極接合体について例1と同様の開回路試験を行った。結果を表1に示す。また、上記同様の膜電極接合体を作製して発電用セルに組み込み、例1と同様の低加湿及び高加湿での運転条件における耐久性試験を行うと表2、3に示す結果のとおりとなる。
[例10]
例1における液状組成物Cの作製において炭酸セリウム水和物(Ce(CO・8HO)2.00gを仕込んだ以外は、例1と同様にして、セリウムの含有率が20モル%である液状組成物を作製した。この液状組成物をアノード触媒層の形成に使用した以外は、例9と同様にして触媒層中のパーフルオロカーボン重合体に含まれる−SO 基の20モル%のセリウムを含有するアノード触媒層と、セリウムを含有しないカソード触媒層を高分子電解質膜の両面にそれぞれ接合した膜触媒層接合体を得た。
この膜触媒層接合体から例1と同様にしてさらに膜電極接合体を得た。この膜電極接合体について例1と同様の開回路試験を行った。結果を表3に示す。また、上記同様の膜電極接合体を作製して発電用セルに組み込み、例1と同様の低加湿及び高加湿での運転条件における耐久性試験を行うと表2、3に示す結果のとおりとなる。
[例11]
例1における液状組成物Cの作製において炭酸セリウム水和物のかわりに炭酸マンガン水和物(MnCO・nHO、マンガンの含有量が全質量の41〜46%)844mgを仕込んだ以外は、例1と同様にして、マンガンの含有率が20モル%である液状組成物
を作製した。この液状組成物をアノード触媒層の形成に使用した以外は、例8と同様にして触媒層中のパーフルオロカーボン重合体に含まれる−SO 基の20モル%のマンガンを含有するアノード触媒層と、マンガンを含有しないカソード触媒層を高分子電解質膜の両面にそれぞれ接合した膜触媒層接合体を得る。
この膜触媒層接合体から例1と同様にしてさらに膜電極接合体を得る。この膜電極接合体について例1と同様に評価を行うと、表1〜3に示す結果のとおりとなる。
Figure 0005286651
Figure 0005286651
Figure 0005286651
上記実施例及び比較例の結果より、加速試験である高温・低加湿の開回路試験(OCV試験)においては、従来の電解質膜は劣化して水素リークが増大していたが、本発明の電解質膜は格段に優れた耐久性を示すことが認められる。
本発明の電解質液状組成物より得られた電解質膜は、燃料電池の発電により生成される過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性が極めて優れている。したがって、本発明の電解質膜を有する膜電極接合体を備える固体高分子形燃料電池は、低加湿発電、高加湿発電のいずれにおいても長期の耐久性を有する。
なお、2004年6月22日に出願された日本特許出願2004−183712号、2004年7月12日に出願された日本特許出願2004−204704号、び2004年9月13日に出願された日本特許出願2004−265176号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (8)

  1. 3価又は4価のセリウムと、スルホン酸基を有する高分子化合物とを含み、3価又は4価のセリウムの含有量が、前記高分子化合物中の−SO のモル数の0.3〜30モル%である液状組成物の製造方法であって、前記高分子化合物を水を含む液体中に溶解又は分散させた後、セリウムの炭酸塩をこれに混合することを特徴とする液状組成物の製造方法。
  2. 2価又は3価のマンガンと、スルホン酸基を有する高分子化合物とを含み、2価又は3価のマンガンの含有量が、前記高分子化合物中の−SO のモル数の0.5〜45モル%である液状組成物の製造方法であって、前記高分子化合物を水を含む液体中に溶解又は分散させた後、マンガンの炭酸塩をこれに混合することを特徴とする液状組成物の製造方法。
  3. 前記高分子化合物は、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい)からなる請求項1又は2に記載の液状組成物の製造方法。
  4. 前記高分子化合物は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とCF=CF−(OCFCFX)−O−(CF−SOHで表されるパーフルオロビニル化合物(Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示す。)に基づく繰り返し単位とを含む共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の液状組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の方法で液状組成物を得た後、該液状組成物をキャスト製膜することを特徴とする膜の製造方法。
  6. 触媒及び高分子電解質を含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜からなる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、前記固体高分子電解質膜を請求項の方法により作製することを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
  7. 触媒及び高分子電解質を含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜からなる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、請求項1〜のいずれかに記載の方法で液状組成物を得て該液状組成物に前記触媒を分散させ、塗工することにより前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方の触媒層を作製することを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
  8. 触媒及び高分子電解質を含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜からなる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、請求項1〜のいずれかに記載の方法で液状組成物を得た後、該液状組成物に前記触媒を分散させ、塗工することにより前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方の触媒層を作製する工程、及び前記液状組成物をキャスト製膜することにより前記固体高分子電解質膜を得る工程を含むことを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
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