JP2004152615A - 固体高分子電解質膜、その製造方法及び膜電極接合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】過酸化水素等の過酸化物又は過酸化物ラジカル等のラジカル種に対する優れた化学的安定性を有しており、初期の化学的特性及び内部構造を長期にわたって維持することのできる耐久性に優れる固体高分子電解質膜、その製造方法及びこの膜を備えた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の提供。
【解決手段】固体高分子電解質膜は、イオン交換樹脂を主成分とし、オゾン処理を施したカーボン材料が分散配合されていることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】固体高分子電解質膜は、イオン交換樹脂を主成分とし、オゾン処理を施したカーボン材料が分散配合されていることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子電解質膜、その製造方法及び膜電極接合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギを直接電気エネルギに変換する電池であり、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への影響がほとんどない。なかでも電解質として固体高分子電解質膜を使用する固体高分子型燃料電池は、高いイオン導電性を有する固体高分子電解質膜が開発され、常温でも作動でき高出力密度が得られるため、近年のエネルギ、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車用等の移動車両や、小型コージェネレーションシステムの電源として大きな期待が寄せられている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、通常、固体高分子電解質膜としてプロトン伝導性のイオン交換膜が使用され、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が基本特性に優れている。固体高分子型燃料電池では、イオン交換膜の両面にガス拡散性の電極層を配置し、燃料である水素を含むガス及び酸化剤となる酸素を含むガス(空気等)を、それぞれアノード及びカソードに供給することにより発電を行う。
【0004】
固体高分子型燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応は、過酸化水素(H2O2)を経由して反応が進行することから、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカルによって、電解質膜の劣化が起こると考えられている。また、固体高分子型燃料電池のアノードにおいても、水素分子とカソードの側から電解質膜内を透過してくる酸素分子とが反応してラジカルが生成し、この場合にも電解質膜の劣化が起こると考えられている。特に炭化水素系の電解質膜はラジカルに対する化学的安定性(耐久性)に乏しく、これを備える固体高分子型燃料電池は、長期間にわたって運転させる場合に充分な出力を得ることができないことが大きな問題となっていた。
【0005】
上記炭化水素系の電解質膜の中でラジカルに対する化学的安定性を有するものとしては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が知られているが、このイオン交換膜を用いても上記の問題を充分に解決するには至っていなかった。
【0006】
例えば、電解質膜のラジカルに対する化学的安定性を向上させることにより上述の問題を解決することを意図した技術としては、高分子電解質膜(イオン交換膜)中に過酸化水素や過酸化物ラジカル等のラジカルを接触分解できる遷移金属酸化物又はフェノール性水酸基を有する化合物を分散配合したもの(例えば、特許文献1)や、高分子電解質膜内に触媒金属粒子を担持し、過酸化水素やや過酸化物ラジカル等のラジカルを分解することを意図したもの(例えば、特許文献2)が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−118591号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開平6−103992号公報(請求項1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特許文献1及び2に記載の技術は、電池特性(出力電圧等)の低下に対する改善の効果が初期的にはみられる。しかしながら、長期にわたって運転させた場合における、出力電圧の低下を充分に防止できず、電解質膜の充分な耐久性を得ることができないという問題と、コストが高くなるという問題があり、未だ不充分であった。
【0009】
また、近年、固体高分子型燃料電池は、自動車用、住宅用市場等の電源として期待され、実用化への要望が高まりそのための開発が加速している。これらの用途では、特に高い効率での運転が要求されるため、より高い電圧での運転が望まれている。また、低コストであることも望まれている。更に、固体高分子型燃料電池では、発電中において電解質膜の導電性を充分に確保するために電解質膜を加湿する必要があるが、特に上記の用途に使用する場合には、燃料電池システム全体の効率の点からいわゆる低加湿或いはいわゆる無加湿での運転が要求されることも多い。
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に記載のものをはじめ従来の固体高分子型燃料電池では、通常の加湿条件での運転はもとより特に低加湿又は無加湿といった運転条件下において、原因は明確ではないが発電に伴い生成する過酸化物又はラジカル種による電解質膜の劣化が進行し易くなるという問題があった。特に、電池を長期にわたって運転させた場合には、電解質膜の劣化が進行し出力電圧の低下を防止することができないという問題があった。
【0011】
更に本発明者らは、上述した問題が固体高分子型燃料電池だけでなく水電解セル等の固体高分子電解質膜を備えた他のタイプの電気化学セルにおいても同様に発生していることを見出した。
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、過酸化水素等の過酸化物又は過酸化物ラジカル等のラジカル種に対する優れた化学的安定性を有しており、初期の化学的特性及び内部構造を長期にわたって維持することのできる耐久性に優れる固体高分子電解質膜、その製造方法及びこの膜を備えた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、オゾン処理を施したカーボン材料が、長期にわたって上述した過酸化物又はラジカル種を不活性化できる特性を有することを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、イオン交換樹脂を主成分とし、オゾン処理を施したカーボン材料が分散配合されていることを特徴とする固体高分子電解質膜を提供する。
【0015】
オゾン処理を施したカーボン材料の粉末を固体高分子電解質中に添加することで、過酸化物又はラジカル種に対して優れた化学的安定性を有しており、初期の化学的特性及び内部構造を長期にわたって維持することのできる耐久性に優れる固体高分子電解質膜を構成することができる。
【0016】
本発明の固体高分子電解質膜の用途は特に限定されないが、例えば、固体高分子型燃料電池、水電解セル等の電気化学セルに備えられる固体高分子電解質膜として好適に使用することができる。本発明の固体高分子電解質膜は、上述の電池の発電や水電解セルの電解の進行に伴って生成する過酸化物又はラジカル種に対して優れた化学的安定性を有する。
【0017】
また、本発明は、カーボン材料をオゾン処理し、得られるカーボン材料とイオン交換樹脂と分散媒とを混合し、得られる液を用いてキャスト成膜することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法を提供する。
【0018】
更に、本発明は、カーボン材料をオゾン処理し、得られるカーボン材料をイオン交換樹脂又はその前駆体と混合して混練し、溶融押し出し成形することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法を提供する。
【0019】
上述の2種類の製造方法のうちの何れかによれば、先に述べた性能を有する耐久性に優れた本発明の固体高分子電解質膜を容易かつ確実に製造することができる。
【0020】
また、本発明は、アノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置される固体高分子電解質膜とを有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体であって、アノード及びカソードは、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末と、イオン交換樹脂とを含む触媒層を少なくとも有しており、固体高分子電解質膜が先に述べた本発明の固体高分子電解質膜からなること、を特徴とする膜電極接合体を提供する。
【0021】
このように、本発明の固体高分子電解質膜を備えることにより、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を容易かつ確実に構成することができる。
【0022】
また、例えば、本発明の固体高分子電解質膜を用いれば、上記燃料電池用の膜電極接合体と同様に耐久性に優れた水電解セルを構成することもできる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の固体高分子電解質膜を備えた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の基本構成の好適な一例を示す模式断面図を示す。
【0024】
図1に示す膜電極接合体10は、主として、固体高分子電解質膜1(イオン交換膜)と、この電解質膜1の膜面に密着したアノード触媒層2及びカソード触媒層3と、アノード触媒層2の外側の面に密着したガス拡散層4aと、カソード触媒層3の外側の面に密着したガス拡散層4bと、ガスシール体6とにより構成されている。この膜電極接合体10の場合、アノードはアノード触媒層2とガス拡散層4aとから構成され、カソードは、カソード触媒層3とガス拡散層4bとから構成されている。これらのアノード及びカソードにおけるガス拡散層4a及び4bは、通常多孔性の導電性基材からなり、必ずしも備えられていなくてもよいが、各触媒層2及び3へのガスの拡散を促進し、集電体の機能も有するので、通常は備えられていることが好ましい。
【0025】
膜電極接合体10の外側にはガス流路となる溝5aが形成されたセパレータ5が配置されている。アノード側には、セパレータの溝5aを介して、例えばメタノールや天然ガス等の燃料を改質して得られる水素ガスが供給されるが、この改質には通常、250〜300℃程度の温度が必要である。その際の排熱を利用すれば高温で加湿して露点の高い水素ガスを供給できるため、アノード側の方がカソード側よりもシステム的により高温で加湿を行いやすい。
【0026】
アノード触媒層2及びカソード触媒層3は、ガス拡散層4a及び4bと固体高分子電解質膜1との間に配置される。アノード触媒層2は、例えば、白金とルテニウムの合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体とを少なくとも含む構成を有する。また、カソード触媒層3は、白金及び/又は白金合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体とを少なくとも含む構成を有する。
【0027】
固体高分子電解質膜1は、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体又は、スルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂を主成分とし、このイオン交換樹脂に先に述べたオゾン処理を施したカーボン材料が分散配合された構成を少なくも有している。この固体高分子電解質膜1は、アノード触媒層2中で生成するプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3へ選択的に透過させる役割を有している。また、この固体高分子電解質膜1は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素が混じり合わないようにするための隔膜としての機能も有している。
【0028】
上記イオン交換樹脂としては、耐久性の観点からスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体が好ましい。なかでも、CF2=CF−(OCF2CFX)m−OP−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とからなる共重合体であることが好ましい。
【0029】
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(i)〜(iii)で表される化合物が挙げられる。ただし、下記式(i)〜(iii)中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
【0030】
【化1】
【0031】
また、スルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂としては、ポリスチレンをスルホン化したスチレンスルホン酸ポリマーなどが挙げられる。
【0032】
次に、オゾン処理を施したカーボン材料について説明する。一般に、カーボンブラックや活性炭等のカーボン材料の構造は、多環芳香化合物といえる網平面が結晶子を構成し、それらの結晶子が集合して1次粒子を形成している。この網平面のエッジ部分には、カルボキシル基、カルボニル基、ラクトン環、フェノール性水酸基など種々の官能基が形成されていることが知られている。
【0033】
本発明では、上記のカーボン材料をオゾン処理することにより、カーボン材料表面にキノン性カルボニル基(=O)を選択的に形成させ、これを固体高分子電解質膜に含有させる。ここで、「オゾン処理」とは、カーボン材料にオゾンを接触させて行う処理を示す。この処理としては、気相で行う処理と液相で行う処理とがある。気相で行う処理としては、オゾン発生器を使って発生させたオゾンをガスとして供給し処理する方法や、高温空気による酸化処理後に低温オゾン処理する方法等が適用可能である。また、液相で行う処理としては、カーボン材料の粉末を水中に分散させ撹拌しながら、これにオゾン発生器を使用して生成させたオゾンガスを導入して処理する方法が挙げられる。
【0034】
更に、上記オゾン処理は、分子状酸素、原子状酸素、乾燥若しくは湿潤空気を用いた酸素処理及び/又は窒素酸化物処理と併用してもよい。更に、燃焼ガスによる酸化、酸素或いは空気による低温プラズマ処理等を併用してもよい。
【0035】
特に、簡便なオゾン処理方法としては、市販されている紫外線(UV)オゾン処理装置を用いる処理法が好適である。このUVオゾン処理法は、短波長UV光を利用した感化酸化プロセスである。この感化酸化プロセスとして、例えば184.9nmの短波長光の光と酸素との反応によるオゾン発生と、例えば253.7nmの短波長の光のもつ化学結合解離効果とを組み合わせた光化学的酸化分解プロセスによって、湿式処理では除去することができず残留してしまう有機汚染物質を除去することも可能であり、カーボン材料上に有機汚染物質が付着している場合にはその効果を発揮することが可能となる。また、オゾンによって腐食されない材質、例えばガラス、PTFEなどからなる容器にカーボン材料粉末を入れた後、耐腐食性の管を通してオゾンガスを流通することによっても本発明における効果を簡便に得ることができる。
【0036】
ここで、オゾン処理を施したカーボン材料を固体高分子電解質膜中に添加することにより、過酸化物(過酸化水素等)及び/又はラジカル種(過酸化物ラジカル等)が発生しても先に述べた本発明の効果が得られることについて詳細な理由は明らかとなっていないが、本発明者らは以下のように推察している。
【0037】
すなわち、本発明では、カーボン材料にオゾン処理を施すことによりカーボン材料の表面に特にキノン性カルボニル基を選択的に形成することができる。一般的にはキノン化合物は典型的なラジカルスカベンジャーとして機能することが知られていることから、本発明においても、オゾン処理でカーボン材料の表面に形成されたキノン性カルボニル基は、過酸化物及びラジカル種をトラップする機能若しくは分解する機能を有しており、電池の発電中に触媒層中で生成する過酸化物又はラジカル種を不活性化させることが充分に可能であると推察している。また、本発明者らは、カーボン材料は多環芳香化合物といえる網状平面が結晶子を構成し電子伝導性があるため、キノン性カルボニル基とラジカルが反応した際に、この反応に関与する電子が結晶子内を自由に移動し(すなわち、この反応が結晶子内で非局在化し)、該電子が他の箇所でのキノン性カルボニル基とラジカルとの反応にも関与してラジカルの不活性化を助長したり、キノン性カルボニル基の再生を促していると推察している。
【0038】
また、オゾン処理を施したカーボン材料を添加した固体高分子電解質膜は、オゾン処理カーボン粉末の表面に形成されるキノン性カルボニル基の働きにより、燃料電池の低加湿条件における運転においても効果的に過酸化物又はラジカル種を分解し、水分子を生成すると考えられるため、過酸化物及び/又はラジカル種による膜の劣化が充分に抑制され、膜のイオン伝導率の低下も充分に抑制される。
【0039】
そのため、本発明の固体高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池(例えば、図1に示した膜電極接合体10等)は、通常の加湿条件で作動させる場合はもとより低加湿条件で運転させる場合であっても、発電中に生成する過酸化物及び/又はラジカル種による固体高分子電解質膜の劣化が充分に抑制され、固体高分子電解質膜のイオン伝導率の低下も充分に抑制される。そして、この固体高分子電解質膜を使用すれば、固体高分子型燃料電池を車載用、住宅用市場等へ実用化する際に要求される、十分に高いエネルギ効率での発電、長期間にわたる耐久性の確保を実現することが可能となる。
【0040】
ここで、本明細書において、「通常の加湿条件」とは、電極(アノード及び/又はカソード)へ供給する反応ガスの加湿温度を固体高分子型燃料電池(例えば、膜電極接合体)の作動温度に近い温度に調節する条件を示す。また、「低加湿条件」とは、反応ガスの加湿温度を膜電極接合体の作動温度よりも低い温度に調節するか又は反応ガスに供給する水分を完全に遮断する条件(無加湿条件)を示す。
【0041】
また、オゾン処理を施すカーボン材料としては、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンからなる群より選択される少なくとも1種の材料であることが好ましい。
【0042】
また、本発明においては、固体高分子電解質膜(例えば、図1に示す固体高分子電解質膜1)中のオゾン処理を施したカーボン材料の含有率は5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0043】
この含有量が5質量%未満であると、電池の発電中に生成する過酸化物及び/又はラジカル種を不活性化するキノン性カルボニル基の絶対量が少ないために、十分な耐久性を付与することができなくなるおそれがある。また、この含有量が50質量%を超えると、電解質中(膜中)のプロトンの電気泳動を阻害し、例えば、固体高分子電解質膜を、固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜として使用する場合には電圧低下を引き起こすおそれがある。またこの場合には、電解質中(膜中)のカーボン材料同士が接触し、イオン交換膜に電子伝導性を付与してしまい、上記と同様に固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜として使用する場合には、電気的短絡を起すおそれがある。
【0044】
本発明における固体高分子電解質膜を製造する方法としては、例えば、(1)スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換樹脂又はスルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂を、溶媒に溶解した液又は分散媒に分散した液に、オゾン処理を施したカーボン材料粉末を添加混合してキャストして膜状にする方法、(2)前記イオン交換樹脂の粉末とオゾン処理を施したカーボン材料の粉末を混練した後、溶融押し出し等により膜状に形成する方法、(3)イオン交換樹脂の前駆体とオゾン処理を施したカーボン材料の粉末を混練した後、溶融押し出し等により膜状に形成し、その後加水分解やスルホン化によりイオン交換基を形成しイオン交換膜にする等種々の方法が採用できる。
【0045】
なお、本明細書において、「イオン交換樹脂の前駆体」とは、例えば、加水分解処理、酸型化処理等の処理によりスルホン酸基に変換可能な特性基(例えば、−SO2F基、−SO2Cl基等)を有する樹脂やスルホン化が可能な樹脂等を示す。
【0046】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の固体高分子電解質膜について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
以下に示す手順により、図1に示した膜電極接合体10と同様の構成を有する膜電極接合体を作製した。
【0048】
先ず、カーボンブラック(商品名:「ケッチェンEC」、三菱化学社製)をUVオゾンクリーナ(商品名:「NL−UV342」、日本レーザー電子株式会社製)のトレイ部分に均一に敷き、60分間のUVオゾン処理を空気中で実施した。次に、このUVオゾン処理を施したカーボンブラック10.0gと、CF2=CF2/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H共重合体(イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、以下、「共重合体A」という)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液(以下、「共重合体Aのエタノール分散液」という)200.0gとを混合した。
【0049】
次に、この混合液をホモジナイザー(商品名:「ポリトロン」、キネマチカ社製)を使用して混合し、キャスト成形後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて、UVオゾン処理を行なったカーボンブラックを添加したイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。このイオン交換膜中のUVオゾン処理を施したカーボンブラックの含有率は、35.7質量%であった。
【0050】
白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に担持された触媒粉末(白金の担持量:触媒全質量の50%)1.0gを蒸留水5.1gに混合、分散した。次に、この混合液に別途調製した共重合体Aのエタノール分散液を5.6g混合した。次に、この混合液を上述と同様のホモジナイザーを使用して混合、粉砕させ、触媒層形成用の塗工液(以下、「塗工液a」という)を調製した。
【0051】
次に、この塗工液aを、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層(以下、「触媒層a」という)を作製した。なお、触媒層a形成前の基材フィルムのみと触媒層a形成後の基材フィルムの質量を測定することにより、触媒層aに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
【0052】
次に、固体高分子電解質膜として、先に述べたUVオゾン処理を施したカーボンブラックを添加したイオン交換膜(膜厚:50μm)を使用し、この膜の両面に触媒層aを配置し、ホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、触媒層aからなるアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0053】
次に、UVオゾン処理の前後において、カーボンブラックの表面に結合しているCO基の量がどの程度変化しているかについて分析を行うため、UVオゾン処理60分間を施したカーボンブラック粉末と、比較のためのUVオゾン処理を施さなかったカーボンブラック粉末とについて、赤外線加熱法によるマススペクトルをそれぞれ測定した。なお、赤外線加熱炉は、アルバック理工社製、商品名:「Mila3000」を使用し、質量分析計は、日本電子社製、商品名:「JMS−AMII150」を使用した。
【0054】
そして、UVオゾン処理60分間を実施したカーボンブラック粉末について、CO基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S1を求めた。次に、UVオゾン処理なしのカーボンブラック粉末についても、CO基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S2を求めた。次に、相対比較値(100×S1/S2)を求めたところ、210であった。UVオゾン処理を実施したカーボンブラックでは、CO基が増加していることが確認された。
【0055】
(実施例2)
実施例1におけるUVオゾン処理を施したカーボンブラックの添加量を15gにした以外は、実施例1と同様の手順及び条件でイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。イオン交換膜中のUVオゾン処理を施したカーボンブラックの含有率は、45.5質量%であった。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、実施例1と同様のアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0056】
(比較例1)
UVオゾン処理を施さなかったカーボンブラックを添加したこと以外は実施例1と同様の手順及び条件でイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、実施例1と同様のアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0057】
(比較例2)
UVオゾン処理を施したカーボンブラックを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の手順及び条件でイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、実施例1と同様のアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0058】
(実施例3)
活性炭(フェノール樹脂原料水蒸気賦活活性炭、表面積:1900m2/g)
3.0gをガラス製容器内に入れ、この中に室温下でオゾンガスを濃度220〜260g/m3、流量:180cm3/分で流しながら1時間保持してオゾン処理を行った。得られた活性炭2gと、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体の溶液(固形分濃度:質量比で5%、アルドリッチ社製、商品名:「Nafion」の溶液)200.0gとを混合した。
【0059】
次に、この混合液を共重合体Aのエタノール分散液のかわりに使用した以外は実施例1と同様の手順及び条件で、UVオゾン処理を行なった活性炭を添加したイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。このイオン交換膜中のUVオゾン処理を施した活性炭の含有率は、16.7質量%であった。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、実施例1と同様のアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0060】
(比較例3)
実施例1におけるUVオゾン処理を施したカーボンブラックを添加したイオン交換膜のかわりに、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(Du Pont社製、商品名:「Nafion112膜」、膜厚:50μm)を用いたこと以外は実施例1と同様の手順及び条件で、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0061】
(比較例4)
特許文献1に記載の製造方法を参考にして膜電極接合体を作製した。先ず、スチレン−ジビニルベンゼンスルホン酸系のカチオン交換膜(膜厚:100μm)を、パラ−T−ブチルフェノールの1%のメタノール溶液に1時間浸漬した後、更にホルムアルデヒドの3%溶液に30分浸漬し、室温で30分間乾燥した。次に、この膜を80℃の乾燥器内で8時間放置した後、メタノールで洗浄し、電解質膜を作製した。得られた電解質膜の両面に実施例1で作製したものと同様の触媒層aを配置してホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0062】
[電池特性評価試験]
実施例1〜3及び比較例1〜4の各膜触媒層接合体を、厚さ350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体をそれぞれ作製した。次に、各膜電極接合体を発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度70℃において固体高分子型燃料電池の電流密度0.2A/cm2における出力電圧の初期特性評価、並びに、500時間経過後及び2000時間経過後の特性(耐久性)評価を実施した。なお、アノード側の露点は70℃とし、カソード側の露点は40℃とし、それぞれ水素及び空気を加湿してセル内に供給した。表1にその結果を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、過酸化水素等の過酸化物又は過酸化物ラジカル等のラジカル種に対する優れた化学的安定性を有しており、外部から供給される水分が不十分となる環境下であっても、初期の化学的特性及び内部構造を長期にわたって維持することのできる耐久性に優れる固体高分子電解質膜を提供することができる。また、本発明によれば、上記の固体高分子電解質膜を容易かつ確実に形成することのできる固体高分子電解質膜の製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記の固体高分子電解質膜を備えることにより、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体を容易かつ確実に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子電解質膜を備えた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の基本構成の好適な一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…固体高分子電解質膜、2…アノード触媒層、3…カソード触媒層、4a,4c…ガス拡散層、5…セパレータ、5a・・・セパレータ5のガス供給溝、6・・・ガスシール体。
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子電解質膜、その製造方法及び膜電極接合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギを直接電気エネルギに変換する電池であり、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への影響がほとんどない。なかでも電解質として固体高分子電解質膜を使用する固体高分子型燃料電池は、高いイオン導電性を有する固体高分子電解質膜が開発され、常温でも作動でき高出力密度が得られるため、近年のエネルギ、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車用等の移動車両や、小型コージェネレーションシステムの電源として大きな期待が寄せられている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、通常、固体高分子電解質膜としてプロトン伝導性のイオン交換膜が使用され、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が基本特性に優れている。固体高分子型燃料電池では、イオン交換膜の両面にガス拡散性の電極層を配置し、燃料である水素を含むガス及び酸化剤となる酸素を含むガス(空気等)を、それぞれアノード及びカソードに供給することにより発電を行う。
【0004】
固体高分子型燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応は、過酸化水素(H2O2)を経由して反応が進行することから、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカルによって、電解質膜の劣化が起こると考えられている。また、固体高分子型燃料電池のアノードにおいても、水素分子とカソードの側から電解質膜内を透過してくる酸素分子とが反応してラジカルが生成し、この場合にも電解質膜の劣化が起こると考えられている。特に炭化水素系の電解質膜はラジカルに対する化学的安定性(耐久性)に乏しく、これを備える固体高分子型燃料電池は、長期間にわたって運転させる場合に充分な出力を得ることができないことが大きな問題となっていた。
【0005】
上記炭化水素系の電解質膜の中でラジカルに対する化学的安定性を有するものとしては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が知られているが、このイオン交換膜を用いても上記の問題を充分に解決するには至っていなかった。
【0006】
例えば、電解質膜のラジカルに対する化学的安定性を向上させることにより上述の問題を解決することを意図した技術としては、高分子電解質膜(イオン交換膜)中に過酸化水素や過酸化物ラジカル等のラジカルを接触分解できる遷移金属酸化物又はフェノール性水酸基を有する化合物を分散配合したもの(例えば、特許文献1)や、高分子電解質膜内に触媒金属粒子を担持し、過酸化水素やや過酸化物ラジカル等のラジカルを分解することを意図したもの(例えば、特許文献2)が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−118591号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開平6−103992号公報(請求項1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特許文献1及び2に記載の技術は、電池特性(出力電圧等)の低下に対する改善の効果が初期的にはみられる。しかしながら、長期にわたって運転させた場合における、出力電圧の低下を充分に防止できず、電解質膜の充分な耐久性を得ることができないという問題と、コストが高くなるという問題があり、未だ不充分であった。
【0009】
また、近年、固体高分子型燃料電池は、自動車用、住宅用市場等の電源として期待され、実用化への要望が高まりそのための開発が加速している。これらの用途では、特に高い効率での運転が要求されるため、より高い電圧での運転が望まれている。また、低コストであることも望まれている。更に、固体高分子型燃料電池では、発電中において電解質膜の導電性を充分に確保するために電解質膜を加湿する必要があるが、特に上記の用途に使用する場合には、燃料電池システム全体の効率の点からいわゆる低加湿或いはいわゆる無加湿での運転が要求されることも多い。
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に記載のものをはじめ従来の固体高分子型燃料電池では、通常の加湿条件での運転はもとより特に低加湿又は無加湿といった運転条件下において、原因は明確ではないが発電に伴い生成する過酸化物又はラジカル種による電解質膜の劣化が進行し易くなるという問題があった。特に、電池を長期にわたって運転させた場合には、電解質膜の劣化が進行し出力電圧の低下を防止することができないという問題があった。
【0011】
更に本発明者らは、上述した問題が固体高分子型燃料電池だけでなく水電解セル等の固体高分子電解質膜を備えた他のタイプの電気化学セルにおいても同様に発生していることを見出した。
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、過酸化水素等の過酸化物又は過酸化物ラジカル等のラジカル種に対する優れた化学的安定性を有しており、初期の化学的特性及び内部構造を長期にわたって維持することのできる耐久性に優れる固体高分子電解質膜、その製造方法及びこの膜を備えた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、オゾン処理を施したカーボン材料が、長期にわたって上述した過酸化物又はラジカル種を不活性化できる特性を有することを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、イオン交換樹脂を主成分とし、オゾン処理を施したカーボン材料が分散配合されていることを特徴とする固体高分子電解質膜を提供する。
【0015】
オゾン処理を施したカーボン材料の粉末を固体高分子電解質中に添加することで、過酸化物又はラジカル種に対して優れた化学的安定性を有しており、初期の化学的特性及び内部構造を長期にわたって維持することのできる耐久性に優れる固体高分子電解質膜を構成することができる。
【0016】
本発明の固体高分子電解質膜の用途は特に限定されないが、例えば、固体高分子型燃料電池、水電解セル等の電気化学セルに備えられる固体高分子電解質膜として好適に使用することができる。本発明の固体高分子電解質膜は、上述の電池の発電や水電解セルの電解の進行に伴って生成する過酸化物又はラジカル種に対して優れた化学的安定性を有する。
【0017】
また、本発明は、カーボン材料をオゾン処理し、得られるカーボン材料とイオン交換樹脂と分散媒とを混合し、得られる液を用いてキャスト成膜することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法を提供する。
【0018】
更に、本発明は、カーボン材料をオゾン処理し、得られるカーボン材料をイオン交換樹脂又はその前駆体と混合して混練し、溶融押し出し成形することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法を提供する。
【0019】
上述の2種類の製造方法のうちの何れかによれば、先に述べた性能を有する耐久性に優れた本発明の固体高分子電解質膜を容易かつ確実に製造することができる。
【0020】
また、本発明は、アノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置される固体高分子電解質膜とを有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体であって、アノード及びカソードは、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末と、イオン交換樹脂とを含む触媒層を少なくとも有しており、固体高分子電解質膜が先に述べた本発明の固体高分子電解質膜からなること、を特徴とする膜電極接合体を提供する。
【0021】
このように、本発明の固体高分子電解質膜を備えることにより、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を容易かつ確実に構成することができる。
【0022】
また、例えば、本発明の固体高分子電解質膜を用いれば、上記燃料電池用の膜電極接合体と同様に耐久性に優れた水電解セルを構成することもできる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の固体高分子電解質膜を備えた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の基本構成の好適な一例を示す模式断面図を示す。
【0024】
図1に示す膜電極接合体10は、主として、固体高分子電解質膜1(イオン交換膜)と、この電解質膜1の膜面に密着したアノード触媒層2及びカソード触媒層3と、アノード触媒層2の外側の面に密着したガス拡散層4aと、カソード触媒層3の外側の面に密着したガス拡散層4bと、ガスシール体6とにより構成されている。この膜電極接合体10の場合、アノードはアノード触媒層2とガス拡散層4aとから構成され、カソードは、カソード触媒層3とガス拡散層4bとから構成されている。これらのアノード及びカソードにおけるガス拡散層4a及び4bは、通常多孔性の導電性基材からなり、必ずしも備えられていなくてもよいが、各触媒層2及び3へのガスの拡散を促進し、集電体の機能も有するので、通常は備えられていることが好ましい。
【0025】
膜電極接合体10の外側にはガス流路となる溝5aが形成されたセパレータ5が配置されている。アノード側には、セパレータの溝5aを介して、例えばメタノールや天然ガス等の燃料を改質して得られる水素ガスが供給されるが、この改質には通常、250〜300℃程度の温度が必要である。その際の排熱を利用すれば高温で加湿して露点の高い水素ガスを供給できるため、アノード側の方がカソード側よりもシステム的により高温で加湿を行いやすい。
【0026】
アノード触媒層2及びカソード触媒層3は、ガス拡散層4a及び4bと固体高分子電解質膜1との間に配置される。アノード触媒層2は、例えば、白金とルテニウムの合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体とを少なくとも含む構成を有する。また、カソード触媒層3は、白金及び/又は白金合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体とを少なくとも含む構成を有する。
【0027】
固体高分子電解質膜1は、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体又は、スルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂を主成分とし、このイオン交換樹脂に先に述べたオゾン処理を施したカーボン材料が分散配合された構成を少なくも有している。この固体高分子電解質膜1は、アノード触媒層2中で生成するプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3へ選択的に透過させる役割を有している。また、この固体高分子電解質膜1は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素が混じり合わないようにするための隔膜としての機能も有している。
【0028】
上記イオン交換樹脂としては、耐久性の観点からスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体が好ましい。なかでも、CF2=CF−(OCF2CFX)m−OP−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とからなる共重合体であることが好ましい。
【0029】
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(i)〜(iii)で表される化合物が挙げられる。ただし、下記式(i)〜(iii)中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
【0030】
【化1】
【0031】
また、スルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂としては、ポリスチレンをスルホン化したスチレンスルホン酸ポリマーなどが挙げられる。
【0032】
次に、オゾン処理を施したカーボン材料について説明する。一般に、カーボンブラックや活性炭等のカーボン材料の構造は、多環芳香化合物といえる網平面が結晶子を構成し、それらの結晶子が集合して1次粒子を形成している。この網平面のエッジ部分には、カルボキシル基、カルボニル基、ラクトン環、フェノール性水酸基など種々の官能基が形成されていることが知られている。
【0033】
本発明では、上記のカーボン材料をオゾン処理することにより、カーボン材料表面にキノン性カルボニル基(=O)を選択的に形成させ、これを固体高分子電解質膜に含有させる。ここで、「オゾン処理」とは、カーボン材料にオゾンを接触させて行う処理を示す。この処理としては、気相で行う処理と液相で行う処理とがある。気相で行う処理としては、オゾン発生器を使って発生させたオゾンをガスとして供給し処理する方法や、高温空気による酸化処理後に低温オゾン処理する方法等が適用可能である。また、液相で行う処理としては、カーボン材料の粉末を水中に分散させ撹拌しながら、これにオゾン発生器を使用して生成させたオゾンガスを導入して処理する方法が挙げられる。
【0034】
更に、上記オゾン処理は、分子状酸素、原子状酸素、乾燥若しくは湿潤空気を用いた酸素処理及び/又は窒素酸化物処理と併用してもよい。更に、燃焼ガスによる酸化、酸素或いは空気による低温プラズマ処理等を併用してもよい。
【0035】
特に、簡便なオゾン処理方法としては、市販されている紫外線(UV)オゾン処理装置を用いる処理法が好適である。このUVオゾン処理法は、短波長UV光を利用した感化酸化プロセスである。この感化酸化プロセスとして、例えば184.9nmの短波長光の光と酸素との反応によるオゾン発生と、例えば253.7nmの短波長の光のもつ化学結合解離効果とを組み合わせた光化学的酸化分解プロセスによって、湿式処理では除去することができず残留してしまう有機汚染物質を除去することも可能であり、カーボン材料上に有機汚染物質が付着している場合にはその効果を発揮することが可能となる。また、オゾンによって腐食されない材質、例えばガラス、PTFEなどからなる容器にカーボン材料粉末を入れた後、耐腐食性の管を通してオゾンガスを流通することによっても本発明における効果を簡便に得ることができる。
【0036】
ここで、オゾン処理を施したカーボン材料を固体高分子電解質膜中に添加することにより、過酸化物(過酸化水素等)及び/又はラジカル種(過酸化物ラジカル等)が発生しても先に述べた本発明の効果が得られることについて詳細な理由は明らかとなっていないが、本発明者らは以下のように推察している。
【0037】
すなわち、本発明では、カーボン材料にオゾン処理を施すことによりカーボン材料の表面に特にキノン性カルボニル基を選択的に形成することができる。一般的にはキノン化合物は典型的なラジカルスカベンジャーとして機能することが知られていることから、本発明においても、オゾン処理でカーボン材料の表面に形成されたキノン性カルボニル基は、過酸化物及びラジカル種をトラップする機能若しくは分解する機能を有しており、電池の発電中に触媒層中で生成する過酸化物又はラジカル種を不活性化させることが充分に可能であると推察している。また、本発明者らは、カーボン材料は多環芳香化合物といえる網状平面が結晶子を構成し電子伝導性があるため、キノン性カルボニル基とラジカルが反応した際に、この反応に関与する電子が結晶子内を自由に移動し(すなわち、この反応が結晶子内で非局在化し)、該電子が他の箇所でのキノン性カルボニル基とラジカルとの反応にも関与してラジカルの不活性化を助長したり、キノン性カルボニル基の再生を促していると推察している。
【0038】
また、オゾン処理を施したカーボン材料を添加した固体高分子電解質膜は、オゾン処理カーボン粉末の表面に形成されるキノン性カルボニル基の働きにより、燃料電池の低加湿条件における運転においても効果的に過酸化物又はラジカル種を分解し、水分子を生成すると考えられるため、過酸化物及び/又はラジカル種による膜の劣化が充分に抑制され、膜のイオン伝導率の低下も充分に抑制される。
【0039】
そのため、本発明の固体高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池(例えば、図1に示した膜電極接合体10等)は、通常の加湿条件で作動させる場合はもとより低加湿条件で運転させる場合であっても、発電中に生成する過酸化物及び/又はラジカル種による固体高分子電解質膜の劣化が充分に抑制され、固体高分子電解質膜のイオン伝導率の低下も充分に抑制される。そして、この固体高分子電解質膜を使用すれば、固体高分子型燃料電池を車載用、住宅用市場等へ実用化する際に要求される、十分に高いエネルギ効率での発電、長期間にわたる耐久性の確保を実現することが可能となる。
【0040】
ここで、本明細書において、「通常の加湿条件」とは、電極(アノード及び/又はカソード)へ供給する反応ガスの加湿温度を固体高分子型燃料電池(例えば、膜電極接合体)の作動温度に近い温度に調節する条件を示す。また、「低加湿条件」とは、反応ガスの加湿温度を膜電極接合体の作動温度よりも低い温度に調節するか又は反応ガスに供給する水分を完全に遮断する条件(無加湿条件)を示す。
【0041】
また、オゾン処理を施すカーボン材料としては、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンからなる群より選択される少なくとも1種の材料であることが好ましい。
【0042】
また、本発明においては、固体高分子電解質膜(例えば、図1に示す固体高分子電解質膜1)中のオゾン処理を施したカーボン材料の含有率は5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0043】
この含有量が5質量%未満であると、電池の発電中に生成する過酸化物及び/又はラジカル種を不活性化するキノン性カルボニル基の絶対量が少ないために、十分な耐久性を付与することができなくなるおそれがある。また、この含有量が50質量%を超えると、電解質中(膜中)のプロトンの電気泳動を阻害し、例えば、固体高分子電解質膜を、固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜として使用する場合には電圧低下を引き起こすおそれがある。またこの場合には、電解質中(膜中)のカーボン材料同士が接触し、イオン交換膜に電子伝導性を付与してしまい、上記と同様に固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜として使用する場合には、電気的短絡を起すおそれがある。
【0044】
本発明における固体高分子電解質膜を製造する方法としては、例えば、(1)スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換樹脂又はスルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂を、溶媒に溶解した液又は分散媒に分散した液に、オゾン処理を施したカーボン材料粉末を添加混合してキャストして膜状にする方法、(2)前記イオン交換樹脂の粉末とオゾン処理を施したカーボン材料の粉末を混練した後、溶融押し出し等により膜状に形成する方法、(3)イオン交換樹脂の前駆体とオゾン処理を施したカーボン材料の粉末を混練した後、溶融押し出し等により膜状に形成し、その後加水分解やスルホン化によりイオン交換基を形成しイオン交換膜にする等種々の方法が採用できる。
【0045】
なお、本明細書において、「イオン交換樹脂の前駆体」とは、例えば、加水分解処理、酸型化処理等の処理によりスルホン酸基に変換可能な特性基(例えば、−SO2F基、−SO2Cl基等)を有する樹脂やスルホン化が可能な樹脂等を示す。
【0046】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の固体高分子電解質膜について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
以下に示す手順により、図1に示した膜電極接合体10と同様の構成を有する膜電極接合体を作製した。
【0048】
先ず、カーボンブラック(商品名:「ケッチェンEC」、三菱化学社製)をUVオゾンクリーナ(商品名:「NL−UV342」、日本レーザー電子株式会社製)のトレイ部分に均一に敷き、60分間のUVオゾン処理を空気中で実施した。次に、このUVオゾン処理を施したカーボンブラック10.0gと、CF2=CF2/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H共重合体(イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、以下、「共重合体A」という)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液(以下、「共重合体Aのエタノール分散液」という)200.0gとを混合した。
【0049】
次に、この混合液をホモジナイザー(商品名:「ポリトロン」、キネマチカ社製)を使用して混合し、キャスト成形後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて、UVオゾン処理を行なったカーボンブラックを添加したイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。このイオン交換膜中のUVオゾン処理を施したカーボンブラックの含有率は、35.7質量%であった。
【0050】
白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に担持された触媒粉末(白金の担持量:触媒全質量の50%)1.0gを蒸留水5.1gに混合、分散した。次に、この混合液に別途調製した共重合体Aのエタノール分散液を5.6g混合した。次に、この混合液を上述と同様のホモジナイザーを使用して混合、粉砕させ、触媒層形成用の塗工液(以下、「塗工液a」という)を調製した。
【0051】
次に、この塗工液aを、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層(以下、「触媒層a」という)を作製した。なお、触媒層a形成前の基材フィルムのみと触媒層a形成後の基材フィルムの質量を測定することにより、触媒層aに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
【0052】
次に、固体高分子電解質膜として、先に述べたUVオゾン処理を施したカーボンブラックを添加したイオン交換膜(膜厚:50μm)を使用し、この膜の両面に触媒層aを配置し、ホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、触媒層aからなるアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0053】
次に、UVオゾン処理の前後において、カーボンブラックの表面に結合しているCO基の量がどの程度変化しているかについて分析を行うため、UVオゾン処理60分間を施したカーボンブラック粉末と、比較のためのUVオゾン処理を施さなかったカーボンブラック粉末とについて、赤外線加熱法によるマススペクトルをそれぞれ測定した。なお、赤外線加熱炉は、アルバック理工社製、商品名:「Mila3000」を使用し、質量分析計は、日本電子社製、商品名:「JMS−AMII150」を使用した。
【0054】
そして、UVオゾン処理60分間を実施したカーボンブラック粉末について、CO基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S1を求めた。次に、UVオゾン処理なしのカーボンブラック粉末についても、CO基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S2を求めた。次に、相対比較値(100×S1/S2)を求めたところ、210であった。UVオゾン処理を実施したカーボンブラックでは、CO基が増加していることが確認された。
【0055】
(実施例2)
実施例1におけるUVオゾン処理を施したカーボンブラックの添加量を15gにした以外は、実施例1と同様の手順及び条件でイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。イオン交換膜中のUVオゾン処理を施したカーボンブラックの含有率は、45.5質量%であった。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、実施例1と同様のアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0056】
(比較例1)
UVオゾン処理を施さなかったカーボンブラックを添加したこと以外は実施例1と同様の手順及び条件でイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、実施例1と同様のアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0057】
(比較例2)
UVオゾン処理を施したカーボンブラックを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の手順及び条件でイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、実施例1と同様のアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0058】
(実施例3)
活性炭(フェノール樹脂原料水蒸気賦活活性炭、表面積:1900m2/g)
3.0gをガラス製容器内に入れ、この中に室温下でオゾンガスを濃度220〜260g/m3、流量:180cm3/分で流しながら1時間保持してオゾン処理を行った。得られた活性炭2gと、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体の溶液(固形分濃度:質量比で5%、アルドリッチ社製、商品名:「Nafion」の溶液)200.0gとを混合した。
【0059】
次に、この混合液を共重合体Aのエタノール分散液のかわりに使用した以外は実施例1と同様の手順及び条件で、UVオゾン処理を行なった活性炭を添加したイオン交換膜(膜厚:50μm)を作製した。このイオン交換膜中のUVオゾン処理を施した活性炭の含有率は、16.7質量%であった。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、実施例1と同様のアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0060】
(比較例3)
実施例1におけるUVオゾン処理を施したカーボンブラックを添加したイオン交換膜のかわりに、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(Du Pont社製、商品名:「Nafion112膜」、膜厚:50μm)を用いたこと以外は実施例1と同様の手順及び条件で、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0061】
(比較例4)
特許文献1に記載の製造方法を参考にして膜電極接合体を作製した。先ず、スチレン−ジビニルベンゼンスルホン酸系のカチオン交換膜(膜厚:100μm)を、パラ−T−ブチルフェノールの1%のメタノール溶液に1時間浸漬した後、更にホルムアルデヒドの3%溶液に30分浸漬し、室温で30分間乾燥した。次に、この膜を80℃の乾燥器内で8時間放置した後、メタノールで洗浄し、電解質膜を作製した。得られた電解質膜の両面に実施例1で作製したものと同様の触媒層aを配置してホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0062】
[電池特性評価試験]
実施例1〜3及び比較例1〜4の各膜触媒層接合体を、厚さ350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体をそれぞれ作製した。次に、各膜電極接合体を発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度70℃において固体高分子型燃料電池の電流密度0.2A/cm2における出力電圧の初期特性評価、並びに、500時間経過後及び2000時間経過後の特性(耐久性)評価を実施した。なお、アノード側の露点は70℃とし、カソード側の露点は40℃とし、それぞれ水素及び空気を加湿してセル内に供給した。表1にその結果を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、過酸化水素等の過酸化物又は過酸化物ラジカル等のラジカル種に対する優れた化学的安定性を有しており、外部から供給される水分が不十分となる環境下であっても、初期の化学的特性及び内部構造を長期にわたって維持することのできる耐久性に優れる固体高分子電解質膜を提供することができる。また、本発明によれば、上記の固体高分子電解質膜を容易かつ確実に形成することのできる固体高分子電解質膜の製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記の固体高分子電解質膜を備えることにより、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体を容易かつ確実に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子電解質膜を備えた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の基本構成の好適な一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…固体高分子電解質膜、2…アノード触媒層、3…カソード触媒層、4a,4c…ガス拡散層、5…セパレータ、5a・・・セパレータ5のガス供給溝、6・・・ガスシール体。
Claims (7)
- イオン交換樹脂を主成分とし、オゾン処理を施したカーボン材料が分散配合されていることを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 前記カーボン材料が、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンからなる群より選択される少なくとも1種の材料である請求項1に記載の固体高分子電解質膜。
- 前記カーボン材料の含有率が5〜50質量%である請求項1又は2に記載の固体高分子電解質膜。
- 前記イオン交換樹脂は、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる請求項1〜3の何れかに記載の固体高分子電解質膜。
- カーボン材料をオゾン処理し、得られるカーボン材料とイオン交換樹脂と分散媒とを混合し、得られる液を用いてキャスト成膜することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
- カーボン材料をオゾン処理し、得られるカーボン材料をイオン交換樹脂又はその前駆体と混合して混練し、溶融押し出し成形することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
- アノード及びカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される固体高分子電解質膜とを有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体であって、
前記アノード及び前記カソードは、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末と、イオン交換樹脂とを含む触媒層を少なくとも有しており、
前記固体高分子電解質膜が請求項1〜4の何れかに記載の固体高分子電解質膜からなること、
を特徴とする膜電極接合体。
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