JP2004146255A - 膜電極接合体及び膜電極接合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体及びその製造方法の提供。
【解決手段】膜電極接合体10は、アノード及びカソードと、これらの電極間に配置されるイオン交換膜1とを有する。アノード及びカソードは、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末と、イオン交換樹脂とを含むアノード触媒層4a及びカソード触媒層4bを夫々有しており、層4a及び層4bのうちの少なくとも一方には、オゾン処理が施されたカーボン材料が更に含まれている。
【選択図】 図1
【解決手段】膜電極接合体10は、アノード及びカソードと、これらの電極間に配置されるイオン交換膜1とを有する。アノード及びカソードは、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末と、イオン交換樹脂とを含むアノード触媒層4a及びカソード触媒層4bを夫々有しており、層4a及び層4bのうちの少なくとも一方には、オゾン処理が施されたカーボン材料が更に含まれている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体及び膜電極接合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギを直接電気エネルギに変換する電池であり、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への影響がほとんどない。なかでも電解質として固体高分子膜を使用する固体高分子型燃料電池は、高いイオン導電性を有する高分子電解質膜が開発され、常温でも作動でき高出力密度が得られるため、近年のエネルギ、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車用等の移動車両や、小型コージェネレーションシステムの電源として大きな期待が寄せられている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、通常、固体高分子電解質としてプロトン伝導性のイオン交換膜が使用され、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が基本特性に優れている。固体高分子型燃料電池では、イオン交換膜の両面にガス拡散性の電極層を配置し、燃料である水素を含むガス及び酸化剤となる酸素を含むガス(空気等)を、それぞれアノード及びカソードに供給することにより発電を行う。
【0004】
固体高分子型燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応は、過酸化水素(H2O2)を経由して反応が進行することから、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカルによって、電解質膜の劣化が起こると考えられている。また、固体高分子型燃料電池のアノードにおいても、水素分子とカソードの側から電解質膜内を透過してくる酸素分子とが反応してラジカルが生成し、この場合にも電解質膜の劣化が起こると考えられている。特に炭化水素系の電解質膜はラジカルに対する化学的安定性(耐久性)に乏しく、これを備える固体高分子型燃料電池は、長期間にわたって運転させる場合に充分な出力を得ることができないことが大きな問題となっていた。
【0005】
上記炭化水素系の電解質膜の中でラジカルに対する化学的安定性を有するものとしては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボンの重合体からなるイオン交換膜が知られているが、このイオン交換膜を用いても上記の問題を充分に解決するには至っていなかった。
【0006】
例えば、電解質膜のラジカルに対する化学的安定性を向上させることにより上述の問題を解決することを意図した技術としては、高分子電解質膜(イオン交換膜)中に過酸化水素や過酸化物ラジカル等のラジカルを接触分解できる遷移金属酸化物又はフェノール性水酸基を有する化合物を分散配合したもの(例えば、特許文献1参照)や、高分子電解質膜内に触媒金属粒子を担持し、過酸化水素やや過酸化物ラジカル等のラジカルを分解することを意図したもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−118591号公報(請求項1,2頁5〜6行)
【特許文献2】
特開平6−103992号公報(請求項1,2頁2〜5行)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1や特許文献2に記載の技術は、電池特性(出力電圧等)の低下に対する改善の効果が初期的にはみられる。しかし、長期にわたって運転させた場合における、出力電圧の低下を充分に防止できず、電解質膜の充分な耐久性を得ることができないという問題と、コストが高くなるという問題があり、未だ不充分であった。
【0009】
また、近年、固体高分子型燃料電池は、自動車用、住宅用市場等の電源として期待され、実用化への要望が高まりそのための開発が加速している。これらの用途では、特に高い効率での運転が要求されるため、より高い電圧での運転が望まれている。また、低コストであることも望まれている。更に、固体高分子型燃料電池では、発電中において電解質膜の導電性を充分に確保するために電解質膜を加湿する必要があるが、特に上記の用途に使用する場合には、燃料電池システム全体の効率の点からいわゆる低加湿或いはいわゆる無加湿での運転が要求されることも多い。
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に記載のものをはじめ従来の固体高分子型燃料電池では、通常の加湿条件での運転はもとより特に低加湿或いは無加湿といった運転条件下において、運転初期の出力電圧の低下が発生する。更に、原因は明確ではないが、長期にわたって運転させた場合にも、耐久性が乏しく出力電圧の低下を防止することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、上述の特許文献1及び2に記載の技術は、何れも固体高分子電解質膜内に特定の材料を添加し膜の耐久性を向上させることで問題の解決を図っているため、発電に伴い電極の触媒層において発生する過酸化物(過酸化水素等)及び/又はラジカル種(過酸化物ラジカル等)を本質的に低減できていないことが上述の問題の大きな原因となっていることを見出した。そして本発明者らは、過酸化物又はラジカル種の発生源となる触媒層の構造を、過酸化物又はラジカル種を充分に低減可能な以下の構造とすることが上記目的の達成に対して極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、アノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置されるイオン交換膜とを有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体であって、アノード及びカソードは、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末と、イオン交換樹脂とを含む触媒層を少なくとも有しており、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方の触媒層中には、オゾン処理が施されたカーボン材料が更に含まれていること、を特徴とする膜電極接合体を提供する。
【0014】
上述のように、カーボン材料粉末をオゾン処理することにより、カーボンの表面にカルボニル基、水酸基等の特性基を選択的に形成させることができる。そのため、このオゾン処理を施したカーボン粉末を触媒層中に含有させることで、発電に伴って生成する過酸化物又はラジカル種に対して化学的に安定な触媒層を形成することができるとともに、これらの化学種による固体高分子電解質膜の劣化を充分に防止することができる。また、この触媒層は、オゾン処理カーボン粉末の表面に形成される上記の特性基が効果的に過酸化物又はラジカル種をトラップしたり分解して水分子にする機能を有すると考えられるため、低加湿条件で運転させる場合あっても電極反応を充分に進行させることができる。
【0015】
その結果、本発明では、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合であっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を提供することができる。すなわち、本発明では、固体高分子型燃料電池を車載用、住宅用市場等へ実用化する際に要求される、十分に高いエネルギ効率での発電、長期間にわたる耐久性の確保を実現することが可能となる。
【0016】
ここで、本発明において、「通常の加湿条件」とは、電極(アノード及び/又はカソード)へ供給する反応ガスの加湿温度を膜電極接合体の作動温度に近い温度に調節する条件を示す。また、「低加湿条件」とは、反応ガスの加湿温度を膜電極接合体の作動温度よりも低い温度に調節するか又は反応ガスに供給する水分を完全に遮断する条件(無加湿条件)を示す。
【0017】
また、本発明は、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末とイオン交換樹脂とを少なくとも含む触媒層とを有するアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置されるイオン交換膜と、を有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の製造方法であって、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方を製造する工程において、カーボン材料をオゾン処理した後、得られたカーボン材料と触媒粉末とイオン交換樹脂とを含む塗工液を調製し、得られた塗工液を基材上に塗工することによりアノードの触媒層及びカソードの触媒層のうちの少なくとも一方を作製すること、を特徴とする膜電極接合体の製造方法を提供する。
【0018】
上述の本発明の製造方法によれば、先に述べた性能を有する耐久性に優れた本発明の膜電極接合体を容易かつ確実に製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の膜電極接合体の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図を示す。
【0020】
図1に示す膜電極接合体10は、主として、固体高分子電解質膜1(イオン交換膜)と、この電解質膜1の膜面に密着したアノード触媒層2及びカソード触媒層3と、アノード触媒層2の外側の面に密着したガス拡散層4aと、カソード触媒層3の外側の面に密着したガス拡散層4bと、ガスシール体6とにより構成されている。この膜電極接合体10の場合、アノードはアノード触媒層2とガス拡散層4aとから構成され、カソードは、カソード触媒層3とガス拡散層4bとから構成されている。これらのアノード及びカソードにおけるガス拡散層4a及び4bは、通常多孔性の導電性基材からなり、必ずしも備えられていなくてもよいが、各触媒層2及び3へのガスの拡散を促進し、集電体の機能も有するので、通常は備えられていることが好ましい。
【0021】
膜電極接合体10の外側にはガス流路となる溝5aが形成されたセパレータ5が配置されている。アノード側には、セパレータの溝5aを介して、例えばメタノールや天然ガス等の燃料を改質して得られる水素ガスが供給されるが、この改質には通常、250〜300℃程度の温度が必要である。その際の排熱を利用すれば高温で加湿して露点の高い水素ガスを供給できるため、アノード側の方がカソード側よりもシステム的により高温で加湿を行いやすい。
【0022】
固体高分子電解質膜1は、イオン交換樹脂からなり、アノード触媒層2中で生成するプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3へ選択的に透過させる役割を有している。また、固体高分子電解質膜1は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素が混じり合わないようにするための隔膜としての機能も有している。
【0023】
上記イオン交換樹脂としては、耐久性の観点からスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体が好ましい。なかでも、CF2=CF−(OCF2CFX)m−OP−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0024】
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(i)〜(iii)で表される化合物が挙げられる。ただし、下記式(i)〜(iii)中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
【0025】
【化1】
【0026】
アノード触媒層2及びカソード触媒層3は、ガス拡散層4a及び4bと固体高分子電解質膜1との間に配置される。アノード触媒層2には、例えば、白金とルテニウムの合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体と、オゾン処理を施したカーボン材料とを少なくとも含む構成を有する。また、カソード触媒層3は、白金及び/又は白金合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体と、オゾン処理を施したカーボン材料とを少なくとも含む構成を有する。
【0027】
一般に、カーボンブラックや活性炭等のカーボン材料の構造は、多環芳香化合物といえる網平面が結晶子を構成し、それらの結晶子が集合して1次粒子を形成している。この網平面のエッジ部分には、カルボキシル基、カルボニル基、キノン基、ラクトン基、フェノール性水酸基など種々の官能基が形成されていることが知られている。
【0028】
本発明では、上記のカーボン材料をオゾン処理することにより、カーボン材料表面にフェノール性水酸基(−OH基)、カルボニル基(=O)などを選択的に形成させ、これをアノード触媒層2及び/又はカソード触媒層3に含有させる。
【0029】
ここで、「オゾン処理」とは、カーボン材料にオゾンを接触させて行う処理を示す。この処理としては、気相で行う処理と液相で行う処理とがある。気相で行う処理としては、オゾン発生器を使って発生させたオゾンをガスとして供給し処理する方法や、高温空気による酸化処理後に低温オゾン処理する方法等が適用可能である。また、液相で行う処理としては、カーボン材料の粉末を水中に分散させ撹拌しながら、これにオゾン発生器を使用して生成させたオゾンガスを導入して処理する方法が挙げられる。
【0030】
カーボン材料の粉末のオゾン処理の方法は特に限定されず、例えば、触媒層形成用塗工液を調製する前にカーボン材料の粉末自体に対してオゾン処理を施してもよい。また、例えば、触媒層を形成した後(更に膜電極接合体を形成した後でもよい)に該触媒をオゾン処理する方法でもよい。オゾン処理を気相でも液相でも行えるという点では上記塗工液調製前にカーボン材料の粉末自体をオゾン処理することが好ましい。
【0031】
特に、簡便なオゾン処理方法としては、市販されている紫外線(UV)オゾン処理装置を用いる処理法が好適である。このUVオゾン処理法は、短波長UV光を利用した感化酸化プロセスである。この感化酸化プロセスとして、例えば184.9nmの短波長光の光と酸素との反応によるオゾン発生と、例えば253.7nmの短波長の光のもつ化学結合解離効果とを組み合わせた光化学的酸化分解プロセスによって、湿式処理では除去することができず残留してしまう有機汚染物質を除去することも可能であり、カーボン材料上に有機汚染物質が付着している場合にはその効果を発揮することが可能となる。また、オゾンによって腐食されない材質、例えばガラス、PTFEなどからなる容器にカーボン材料粉末を入れた後、耐腐食性の管を通してオゾンガスを流通することによっても本発明における効果を簡便に得ることができる。
【0032】
ここで、本発明において、オゾン処理を施したカーボン材料をアノード触媒層2及び/又はカソード触媒層3中に添加することにより、先に述べた本発明の効果が得られることついて詳細な理由は明らかとなっていないが、本発明者らは以下のように推察している。すなわち、オゾン処理で形成されたカルボニル基やフェノール性水酸基は、過酸化物及びラジカル種をトラップ・分解し水分子にする機能を有しており、電池の発電中に触媒層中で生成する過酸化物又はラジカル種を消滅させることが充分に可能であると推察している。また、オゾン処理を施したカーボン材料を添加した触媒層は、分解で生成した水分子を有効に利用できるため、低加湿条件で運転させる場合あっても電極反応を充分に進行させることができる。
【0033】
このため、過酸化物及び/又はラジカル種が発生しても、これらの化学種による固体高分子電解質膜の劣化を充分に抑制することが可能となり、長期間に渡ってこれらの化学種に対する優れた耐久性を発揮する膜電極接合体を構成することが可能となる。なお、この膜電極接合体10のように、過酸化物及び/又はラジカル種による固体高分子電解質膜の劣化をより確実に抑制する観点から、本発明においては、アノード触媒層及びカソード触媒層の何れにもオゾン処理を施したカーボン材料を添加することが好ましい。
【0034】
また、オゾン処理を施すカーボン材料としては、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンからなる群より選択される少なくとも1種の材料であることが好ましい。これらのカーボン材料の粉末にUVオゾン処理等のオゾン処理を施した後、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボンスルホン酸型の重合体からなるイオン交換樹脂とともに混合することで、触媒層2及び触媒層3を形成し、膜電極接合体10を形成することができる。
【0035】
また、本発明において、オゾン処理を施したカーボン材料の触媒層2及び/又は触媒層3中の含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。この含有量が5質量%未満であると、電池の発電中に触媒層2及び/又は触媒層3中で生成する過酸化物及び/又はラジカル種をトラップする官能基の絶対量が少ないために、十分な耐久性を付与することができなくなるおそれがある。また、この含有量が50質量%を超えると、酸素の触媒層3中への拡散又は燃料ガスの触媒層2中への拡散を阻害し、出力電圧の低下を引き起こすおそれがある。
【0036】
膜電極接合体10を製造する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。(1)スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換樹脂を溶媒に溶解した液に、触媒粉末及びオゾン処理を施したカーボン材料粉末を添加混合して触媒層形成用塗工液を作製し、イオン交換膜の上に触媒層を塗工形成した後、塗工液中に含まれる溶剤を乾燥除去し、これをガス拡散層で挟み込む方法。(2)カーボンペーパー、カーボンクロス或いはカーボンフェルトなどのガス拡散層となる基材上に触媒層形成用塗工液を塗工形成し乾燥させた後、これをスルホン酸基を有する固体高分子電解質膜にホットプレスなどの方法により接合する方法。(3)触媒形成用塗工液中に含まれる溶剤に対して十分な安定性を示すフィルム上に触媒層形成用塗工液を塗工しこれを乾燥した後、固体高分子電解質膜にホットプレスし、次いで、基材フィルムを剥離し、ガス拡散層で挟み込む方法等。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の膜電極接合体について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
以下に示す手順により、図1に示した膜電極接合体10と同様の構成を有する膜電極接合体を作製した。
【0039】
先ず、カーボンブラック(商品名:「ケッチェンEC」、三菱化学社製)をUVオゾンクリーナ(商品名:「NL−UV342」、日本レーザー電子株式会社製)のトレイ部分に均一に敷き、20分間のUVオゾン処理を空気中で実施した。次に、このUVオゾン処理を施したカーボンブラック1.0gと、白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に担持された触媒粉末(白金の担持量:触媒全質量の50%)1.0gを蒸留水5.1gに混合、分散した。
【0040】
次に、この混合液にCF2=CF2/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H共重合体(イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、以下、「共重合体A」という)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液(以下、「共重合体Aのエタノール分散液」という)5.6gを混合した。次に、この混合液をホモジナイザー(商品名:「ポリトロン」、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕させ、触媒層形成用の塗工液(以下、「塗工液a」という)を調製した。
【0041】
次に、この塗工液aを、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層(以下、「触媒層a」という)を作製した。なお、触媒層a形成前の基材フィルムのみと触媒層a形成後の基材フィルムの質量を測定することにより、触媒層aに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。また、触媒層a中に含まれるUVオゾン処理を施したカーボンブラックの質量%は40%であった。
【0042】
次に、UVオゾン処理の前後において、カーボンブラックの表面に結合している官能基(OH基及びCO基)の量がどの程度変化しているかについて分析を行うため、UVオゾン処理20分間を施したカーボンブラック粉末と、比較のためのUVオゾン処理を施さなかったカーボンブラック粉末とについて、赤外線加熱法によるマススペクトルをそれぞれ測定した。
【0043】
そして、UVオゾン処理20分間を実施したカーボンブラック粉末について、OH基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S1、及び、CO基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S2を求めた。次に、UVオゾン処理なしのカーボンブラック粉末についても、OH基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S3、及び、CO基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S4を求めた。次に、相対比較値(100×S1/S3)及び(100×S2/S4)を求めた。その結果を後述の表1に示す。表1に示した結果より、UVオゾン処理を実施した触媒では、OH基及びCO基が共に増加していることが確認された。
【0044】
次に、固体高分子電解質膜として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜(商品名:「フレミオン」、旭硝子社製、イオン交換容量1.1、膜厚:30μm)を使用し、この膜の両面に触媒層aを配置し、ホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、触媒層aからなるアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0045】
(比較例1)
先ず、実施例1で用いたものと同様のカーボンブラックを使用し、これに実施例1におけるUVオゾン処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして触媒層形成用塗工液(以下、「塗工液b」という)を調製した。塗工液aのかわりに塗工液bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして触媒層(以下、「触媒層b」という)を作製した。なお、実施例1の場合と同様にして触媒層bに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
【0046】
次に、固体高分子電解質膜として実施例1に用いたものと同様のものを使用し、この膜の両面に触媒層bを配置してホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、触媒層bからなるアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0047】
(実施例2)
実施例1で用いたものと同様のカーボンブラックを実施例1と同様の手順及び条件でUVオゾン処理した。次に、このUVオゾン処理を施したカーボンブラック0.5gと、白金−ルテニウム合金がカーボン担体(比表面積250m2/g)に担持された触媒粉末(白金−ルテニウム合金の担持量:触媒全質量の40%)1.0gと、蒸留水4.9gとを混合した。次に、この混合液に共重合体Aのエタノール分散液5.3gを混合した。この混合液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕させ、触媒層形成用の塗工液c(以下、「塗工液c」という)を調製した。
【0048】
次に、塗工液aのかわりに塗工液cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして触媒層(以下、「触媒層c」という)を作製した。なお、実施例1の場合と同様にして触媒層cに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.35mg/cm2であった。また、触媒層c中に含まれるUVオゾン処理を施したカーボンブラック含有率は25質量%であった。
【0049】
次に、固体高分子電解質膜として実施例1に用いたものと同様のものを使用し、この膜の両面に、アノード側の触媒層として触媒層cを配置し、カソード側の触媒層として実施例1で作製したものと同様の触媒層aを配置し、ホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0050】
(実施例3)
先ず、活性炭(フェノール樹脂原料水蒸気賦活活性炭、比表面積1900m2/g)3.0gをガラス製容器内に入れ、この中に室温下でオゾンガスを濃度220〜260g/m3、流量180cm3/分で流しながら1時間保持してオゾン処理を行った。得られたオゾン処理後の活性炭1.0gを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件により触媒層形成用の塗工液(以下、「塗工液d」という)を調製した。
【0051】
次に、塗工液aのかわりに塗工液dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして触媒層(以下、「触媒層d」という)を作製した。なお、実施例1の場合と同様にして触媒層dに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。また、触媒層d中に含まれるオゾン処理を施した活性炭含有率は50質量%であった。
【0052】
次に固体高分子電解質膜として実施例1に用いたものと同様のものを使用し、この膜の両面にアノード側の触媒層として実施例2で作製したものと同様の触媒層cを配置し、カソード側の触媒層として触媒層dを配置し、ホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0053】
(比較例2)
特開2001−118591号公報に記載の製造方法を参考にして膜電極接合体を作製した。先ず、スチレン−ジビニルベンゼンスルホン酸系のカチオン交換膜(膜厚:100μm)を、パラ−t−ブチルフェノールの1%のメタノール溶液に1時間浸漬した後、更にホルムアルデヒドの3%溶液に30分浸漬し、室温で30分間乾燥した。次に、この膜を80℃の乾燥器内で8時間放置した後、メタノールで洗浄し、電解質膜を作製した。得られた電解質膜の両面に比較例1で作製したものと同様の触媒層bを配置してホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0054】
[電池特性評価試験]
実施例1〜3、比較例1及び2の各膜触媒層接合体を、厚さ350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体をそれぞれ作製した。次に、各膜電極接合体を発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度70℃において固体高分子型燃料電池の電流密度0.2A/cm2における出力電圧の初期特性評価、並びに、500時間経過後及び2000時間経過後の特性(耐久性)評価を実施した。なお、アノード側の露点は70℃とし、カソード側の露点は40℃とし、それぞれ水素及び空気を加湿してセル内に供給した。表2に、その結果を示す。また、上記の評価条件の内、カソード側の露点のみを70℃に変更して測定した評価結果を表3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の膜電極接合体によれば、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持できる、優れた耐久性を実現することが可能となる。また、本発明の膜電極接合体の製造方法によれば、上述の性能を有する耐久性に優れた膜電極接合体を容易かつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…固体高分子電解質膜、2…アノード触媒層、3…カソード触媒層、4a,4c…ガス拡散層、5…セパレータ、5a・・・セパレータ5のガス供給溝、6・・・ガスシール体。
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体及び膜電極接合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギを直接電気エネルギに変換する電池であり、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への影響がほとんどない。なかでも電解質として固体高分子膜を使用する固体高分子型燃料電池は、高いイオン導電性を有する高分子電解質膜が開発され、常温でも作動でき高出力密度が得られるため、近年のエネルギ、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車用等の移動車両や、小型コージェネレーションシステムの電源として大きな期待が寄せられている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、通常、固体高分子電解質としてプロトン伝導性のイオン交換膜が使用され、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が基本特性に優れている。固体高分子型燃料電池では、イオン交換膜の両面にガス拡散性の電極層を配置し、燃料である水素を含むガス及び酸化剤となる酸素を含むガス(空気等)を、それぞれアノード及びカソードに供給することにより発電を行う。
【0004】
固体高分子型燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応は、過酸化水素(H2O2)を経由して反応が進行することから、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカルによって、電解質膜の劣化が起こると考えられている。また、固体高分子型燃料電池のアノードにおいても、水素分子とカソードの側から電解質膜内を透過してくる酸素分子とが反応してラジカルが生成し、この場合にも電解質膜の劣化が起こると考えられている。特に炭化水素系の電解質膜はラジカルに対する化学的安定性(耐久性)に乏しく、これを備える固体高分子型燃料電池は、長期間にわたって運転させる場合に充分な出力を得ることができないことが大きな問題となっていた。
【0005】
上記炭化水素系の電解質膜の中でラジカルに対する化学的安定性を有するものとしては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボンの重合体からなるイオン交換膜が知られているが、このイオン交換膜を用いても上記の問題を充分に解決するには至っていなかった。
【0006】
例えば、電解質膜のラジカルに対する化学的安定性を向上させることにより上述の問題を解決することを意図した技術としては、高分子電解質膜(イオン交換膜)中に過酸化水素や過酸化物ラジカル等のラジカルを接触分解できる遷移金属酸化物又はフェノール性水酸基を有する化合物を分散配合したもの(例えば、特許文献1参照)や、高分子電解質膜内に触媒金属粒子を担持し、過酸化水素やや過酸化物ラジカル等のラジカルを分解することを意図したもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−118591号公報(請求項1,2頁5〜6行)
【特許文献2】
特開平6−103992号公報(請求項1,2頁2〜5行)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1や特許文献2に記載の技術は、電池特性(出力電圧等)の低下に対する改善の効果が初期的にはみられる。しかし、長期にわたって運転させた場合における、出力電圧の低下を充分に防止できず、電解質膜の充分な耐久性を得ることができないという問題と、コストが高くなるという問題があり、未だ不充分であった。
【0009】
また、近年、固体高分子型燃料電池は、自動車用、住宅用市場等の電源として期待され、実用化への要望が高まりそのための開発が加速している。これらの用途では、特に高い効率での運転が要求されるため、より高い電圧での運転が望まれている。また、低コストであることも望まれている。更に、固体高分子型燃料電池では、発電中において電解質膜の導電性を充分に確保するために電解質膜を加湿する必要があるが、特に上記の用途に使用する場合には、燃料電池システム全体の効率の点からいわゆる低加湿或いはいわゆる無加湿での運転が要求されることも多い。
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に記載のものをはじめ従来の固体高分子型燃料電池では、通常の加湿条件での運転はもとより特に低加湿或いは無加湿といった運転条件下において、運転初期の出力電圧の低下が発生する。更に、原因は明確ではないが、長期にわたって運転させた場合にも、耐久性が乏しく出力電圧の低下を防止することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、上述の特許文献1及び2に記載の技術は、何れも固体高分子電解質膜内に特定の材料を添加し膜の耐久性を向上させることで問題の解決を図っているため、発電に伴い電極の触媒層において発生する過酸化物(過酸化水素等)及び/又はラジカル種(過酸化物ラジカル等)を本質的に低減できていないことが上述の問題の大きな原因となっていることを見出した。そして本発明者らは、過酸化物又はラジカル種の発生源となる触媒層の構造を、過酸化物又はラジカル種を充分に低減可能な以下の構造とすることが上記目的の達成に対して極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、アノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置されるイオン交換膜とを有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体であって、アノード及びカソードは、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末と、イオン交換樹脂とを含む触媒層を少なくとも有しており、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方の触媒層中には、オゾン処理が施されたカーボン材料が更に含まれていること、を特徴とする膜電極接合体を提供する。
【0014】
上述のように、カーボン材料粉末をオゾン処理することにより、カーボンの表面にカルボニル基、水酸基等の特性基を選択的に形成させることができる。そのため、このオゾン処理を施したカーボン粉末を触媒層中に含有させることで、発電に伴って生成する過酸化物又はラジカル種に対して化学的に安定な触媒層を形成することができるとともに、これらの化学種による固体高分子電解質膜の劣化を充分に防止することができる。また、この触媒層は、オゾン処理カーボン粉末の表面に形成される上記の特性基が効果的に過酸化物又はラジカル種をトラップしたり分解して水分子にする機能を有すると考えられるため、低加湿条件で運転させる場合あっても電極反応を充分に進行させることができる。
【0015】
その結果、本発明では、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合であっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持することのできる耐久性に優れた固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を提供することができる。すなわち、本発明では、固体高分子型燃料電池を車載用、住宅用市場等へ実用化する際に要求される、十分に高いエネルギ効率での発電、長期間にわたる耐久性の確保を実現することが可能となる。
【0016】
ここで、本発明において、「通常の加湿条件」とは、電極(アノード及び/又はカソード)へ供給する反応ガスの加湿温度を膜電極接合体の作動温度に近い温度に調節する条件を示す。また、「低加湿条件」とは、反応ガスの加湿温度を膜電極接合体の作動温度よりも低い温度に調節するか又は反応ガスに供給する水分を完全に遮断する条件(無加湿条件)を示す。
【0017】
また、本発明は、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末とイオン交換樹脂とを少なくとも含む触媒層とを有するアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置されるイオン交換膜と、を有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の製造方法であって、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方を製造する工程において、カーボン材料をオゾン処理した後、得られたカーボン材料と触媒粉末とイオン交換樹脂とを含む塗工液を調製し、得られた塗工液を基材上に塗工することによりアノードの触媒層及びカソードの触媒層のうちの少なくとも一方を作製すること、を特徴とする膜電極接合体の製造方法を提供する。
【0018】
上述の本発明の製造方法によれば、先に述べた性能を有する耐久性に優れた本発明の膜電極接合体を容易かつ確実に製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の膜電極接合体の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図を示す。
【0020】
図1に示す膜電極接合体10は、主として、固体高分子電解質膜1(イオン交換膜)と、この電解質膜1の膜面に密着したアノード触媒層2及びカソード触媒層3と、アノード触媒層2の外側の面に密着したガス拡散層4aと、カソード触媒層3の外側の面に密着したガス拡散層4bと、ガスシール体6とにより構成されている。この膜電極接合体10の場合、アノードはアノード触媒層2とガス拡散層4aとから構成され、カソードは、カソード触媒層3とガス拡散層4bとから構成されている。これらのアノード及びカソードにおけるガス拡散層4a及び4bは、通常多孔性の導電性基材からなり、必ずしも備えられていなくてもよいが、各触媒層2及び3へのガスの拡散を促進し、集電体の機能も有するので、通常は備えられていることが好ましい。
【0021】
膜電極接合体10の外側にはガス流路となる溝5aが形成されたセパレータ5が配置されている。アノード側には、セパレータの溝5aを介して、例えばメタノールや天然ガス等の燃料を改質して得られる水素ガスが供給されるが、この改質には通常、250〜300℃程度の温度が必要である。その際の排熱を利用すれば高温で加湿して露点の高い水素ガスを供給できるため、アノード側の方がカソード側よりもシステム的により高温で加湿を行いやすい。
【0022】
固体高分子電解質膜1は、イオン交換樹脂からなり、アノード触媒層2中で生成するプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3へ選択的に透過させる役割を有している。また、固体高分子電解質膜1は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素が混じり合わないようにするための隔膜としての機能も有している。
【0023】
上記イオン交換樹脂としては、耐久性の観点からスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体が好ましい。なかでも、CF2=CF−(OCF2CFX)m−OP−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0024】
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(i)〜(iii)で表される化合物が挙げられる。ただし、下記式(i)〜(iii)中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
【0025】
【化1】
【0026】
アノード触媒層2及びカソード触媒層3は、ガス拡散層4a及び4bと固体高分子電解質膜1との間に配置される。アノード触媒層2には、例えば、白金とルテニウムの合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体と、オゾン処理を施したカーボン材料とを少なくとも含む構成を有する。また、カソード触媒層3は、白金及び/又は白金合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体と、オゾン処理を施したカーボン材料とを少なくとも含む構成を有する。
【0027】
一般に、カーボンブラックや活性炭等のカーボン材料の構造は、多環芳香化合物といえる網平面が結晶子を構成し、それらの結晶子が集合して1次粒子を形成している。この網平面のエッジ部分には、カルボキシル基、カルボニル基、キノン基、ラクトン基、フェノール性水酸基など種々の官能基が形成されていることが知られている。
【0028】
本発明では、上記のカーボン材料をオゾン処理することにより、カーボン材料表面にフェノール性水酸基(−OH基)、カルボニル基(=O)などを選択的に形成させ、これをアノード触媒層2及び/又はカソード触媒層3に含有させる。
【0029】
ここで、「オゾン処理」とは、カーボン材料にオゾンを接触させて行う処理を示す。この処理としては、気相で行う処理と液相で行う処理とがある。気相で行う処理としては、オゾン発生器を使って発生させたオゾンをガスとして供給し処理する方法や、高温空気による酸化処理後に低温オゾン処理する方法等が適用可能である。また、液相で行う処理としては、カーボン材料の粉末を水中に分散させ撹拌しながら、これにオゾン発生器を使用して生成させたオゾンガスを導入して処理する方法が挙げられる。
【0030】
カーボン材料の粉末のオゾン処理の方法は特に限定されず、例えば、触媒層形成用塗工液を調製する前にカーボン材料の粉末自体に対してオゾン処理を施してもよい。また、例えば、触媒層を形成した後(更に膜電極接合体を形成した後でもよい)に該触媒をオゾン処理する方法でもよい。オゾン処理を気相でも液相でも行えるという点では上記塗工液調製前にカーボン材料の粉末自体をオゾン処理することが好ましい。
【0031】
特に、簡便なオゾン処理方法としては、市販されている紫外線(UV)オゾン処理装置を用いる処理法が好適である。このUVオゾン処理法は、短波長UV光を利用した感化酸化プロセスである。この感化酸化プロセスとして、例えば184.9nmの短波長光の光と酸素との反応によるオゾン発生と、例えば253.7nmの短波長の光のもつ化学結合解離効果とを組み合わせた光化学的酸化分解プロセスによって、湿式処理では除去することができず残留してしまう有機汚染物質を除去することも可能であり、カーボン材料上に有機汚染物質が付着している場合にはその効果を発揮することが可能となる。また、オゾンによって腐食されない材質、例えばガラス、PTFEなどからなる容器にカーボン材料粉末を入れた後、耐腐食性の管を通してオゾンガスを流通することによっても本発明における効果を簡便に得ることができる。
【0032】
ここで、本発明において、オゾン処理を施したカーボン材料をアノード触媒層2及び/又はカソード触媒層3中に添加することにより、先に述べた本発明の効果が得られることついて詳細な理由は明らかとなっていないが、本発明者らは以下のように推察している。すなわち、オゾン処理で形成されたカルボニル基やフェノール性水酸基は、過酸化物及びラジカル種をトラップ・分解し水分子にする機能を有しており、電池の発電中に触媒層中で生成する過酸化物又はラジカル種を消滅させることが充分に可能であると推察している。また、オゾン処理を施したカーボン材料を添加した触媒層は、分解で生成した水分子を有効に利用できるため、低加湿条件で運転させる場合あっても電極反応を充分に進行させることができる。
【0033】
このため、過酸化物及び/又はラジカル種が発生しても、これらの化学種による固体高分子電解質膜の劣化を充分に抑制することが可能となり、長期間に渡ってこれらの化学種に対する優れた耐久性を発揮する膜電極接合体を構成することが可能となる。なお、この膜電極接合体10のように、過酸化物及び/又はラジカル種による固体高分子電解質膜の劣化をより確実に抑制する観点から、本発明においては、アノード触媒層及びカソード触媒層の何れにもオゾン処理を施したカーボン材料を添加することが好ましい。
【0034】
また、オゾン処理を施すカーボン材料としては、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンからなる群より選択される少なくとも1種の材料であることが好ましい。これらのカーボン材料の粉末にUVオゾン処理等のオゾン処理を施した後、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボンスルホン酸型の重合体からなるイオン交換樹脂とともに混合することで、触媒層2及び触媒層3を形成し、膜電極接合体10を形成することができる。
【0035】
また、本発明において、オゾン処理を施したカーボン材料の触媒層2及び/又は触媒層3中の含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。この含有量が5質量%未満であると、電池の発電中に触媒層2及び/又は触媒層3中で生成する過酸化物及び/又はラジカル種をトラップする官能基の絶対量が少ないために、十分な耐久性を付与することができなくなるおそれがある。また、この含有量が50質量%を超えると、酸素の触媒層3中への拡散又は燃料ガスの触媒層2中への拡散を阻害し、出力電圧の低下を引き起こすおそれがある。
【0036】
膜電極接合体10を製造する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。(1)スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換樹脂を溶媒に溶解した液に、触媒粉末及びオゾン処理を施したカーボン材料粉末を添加混合して触媒層形成用塗工液を作製し、イオン交換膜の上に触媒層を塗工形成した後、塗工液中に含まれる溶剤を乾燥除去し、これをガス拡散層で挟み込む方法。(2)カーボンペーパー、カーボンクロス或いはカーボンフェルトなどのガス拡散層となる基材上に触媒層形成用塗工液を塗工形成し乾燥させた後、これをスルホン酸基を有する固体高分子電解質膜にホットプレスなどの方法により接合する方法。(3)触媒形成用塗工液中に含まれる溶剤に対して十分な安定性を示すフィルム上に触媒層形成用塗工液を塗工しこれを乾燥した後、固体高分子電解質膜にホットプレスし、次いで、基材フィルムを剥離し、ガス拡散層で挟み込む方法等。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の膜電極接合体について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
以下に示す手順により、図1に示した膜電極接合体10と同様の構成を有する膜電極接合体を作製した。
【0039】
先ず、カーボンブラック(商品名:「ケッチェンEC」、三菱化学社製)をUVオゾンクリーナ(商品名:「NL−UV342」、日本レーザー電子株式会社製)のトレイ部分に均一に敷き、20分間のUVオゾン処理を空気中で実施した。次に、このUVオゾン処理を施したカーボンブラック1.0gと、白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に担持された触媒粉末(白金の担持量:触媒全質量の50%)1.0gを蒸留水5.1gに混合、分散した。
【0040】
次に、この混合液にCF2=CF2/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H共重合体(イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、以下、「共重合体A」という)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液(以下、「共重合体Aのエタノール分散液」という)5.6gを混合した。次に、この混合液をホモジナイザー(商品名:「ポリトロン」、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕させ、触媒層形成用の塗工液(以下、「塗工液a」という)を調製した。
【0041】
次に、この塗工液aを、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層(以下、「触媒層a」という)を作製した。なお、触媒層a形成前の基材フィルムのみと触媒層a形成後の基材フィルムの質量を測定することにより、触媒層aに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。また、触媒層a中に含まれるUVオゾン処理を施したカーボンブラックの質量%は40%であった。
【0042】
次に、UVオゾン処理の前後において、カーボンブラックの表面に結合している官能基(OH基及びCO基)の量がどの程度変化しているかについて分析を行うため、UVオゾン処理20分間を施したカーボンブラック粉末と、比較のためのUVオゾン処理を施さなかったカーボンブラック粉末とについて、赤外線加熱法によるマススペクトルをそれぞれ測定した。
【0043】
そして、UVオゾン処理20分間を実施したカーボンブラック粉末について、OH基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S1、及び、CO基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S2を求めた。次に、UVオゾン処理なしのカーボンブラック粉末についても、OH基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S3、及び、CO基に帰属されるマススペクトルのピークの面積S4を求めた。次に、相対比較値(100×S1/S3)及び(100×S2/S4)を求めた。その結果を後述の表1に示す。表1に示した結果より、UVオゾン処理を実施した触媒では、OH基及びCO基が共に増加していることが確認された。
【0044】
次に、固体高分子電解質膜として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜(商品名:「フレミオン」、旭硝子社製、イオン交換容量1.1、膜厚:30μm)を使用し、この膜の両面に触媒層aを配置し、ホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、触媒層aからなるアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0045】
(比較例1)
先ず、実施例1で用いたものと同様のカーボンブラックを使用し、これに実施例1におけるUVオゾン処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして触媒層形成用塗工液(以下、「塗工液b」という)を調製した。塗工液aのかわりに塗工液bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして触媒層(以下、「触媒層b」という)を作製した。なお、実施例1の場合と同様にして触媒層bに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
【0046】
次に、固体高分子電解質膜として実施例1に用いたものと同様のものを使用し、この膜の両面に触媒層bを配置してホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、触媒層bからなるアノード触媒層及びカソード触媒層を備えた膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0047】
(実施例2)
実施例1で用いたものと同様のカーボンブラックを実施例1と同様の手順及び条件でUVオゾン処理した。次に、このUVオゾン処理を施したカーボンブラック0.5gと、白金−ルテニウム合金がカーボン担体(比表面積250m2/g)に担持された触媒粉末(白金−ルテニウム合金の担持量:触媒全質量の40%)1.0gと、蒸留水4.9gとを混合した。次に、この混合液に共重合体Aのエタノール分散液5.3gを混合した。この混合液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕させ、触媒層形成用の塗工液c(以下、「塗工液c」という)を調製した。
【0048】
次に、塗工液aのかわりに塗工液cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして触媒層(以下、「触媒層c」という)を作製した。なお、実施例1の場合と同様にして触媒層cに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.35mg/cm2であった。また、触媒層c中に含まれるUVオゾン処理を施したカーボンブラック含有率は25質量%であった。
【0049】
次に、固体高分子電解質膜として実施例1に用いたものと同様のものを使用し、この膜の両面に、アノード側の触媒層として触媒層cを配置し、カソード側の触媒層として実施例1で作製したものと同様の触媒層aを配置し、ホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0050】
(実施例3)
先ず、活性炭(フェノール樹脂原料水蒸気賦活活性炭、比表面積1900m2/g)3.0gをガラス製容器内に入れ、この中に室温下でオゾンガスを濃度220〜260g/m3、流量180cm3/分で流しながら1時間保持してオゾン処理を行った。得られたオゾン処理後の活性炭1.0gを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件により触媒層形成用の塗工液(以下、「塗工液d」という)を調製した。
【0051】
次に、塗工液aのかわりに塗工液dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして触媒層(以下、「触媒層d」という)を作製した。なお、実施例1の場合と同様にして触媒層dに含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。また、触媒層d中に含まれるオゾン処理を施した活性炭含有率は50質量%であった。
【0052】
次に固体高分子電解質膜として実施例1に用いたものと同様のものを使用し、この膜の両面にアノード側の触媒層として実施例2で作製したものと同様の触媒層cを配置し、カソード側の触媒層として触媒層dを配置し、ホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0053】
(比較例2)
特開2001−118591号公報に記載の製造方法を参考にして膜電極接合体を作製した。先ず、スチレン−ジビニルベンゼンスルホン酸系のカチオン交換膜(膜厚:100μm)を、パラ−t−ブチルフェノールの1%のメタノール溶液に1時間浸漬した後、更にホルムアルデヒドの3%溶液に30分浸漬し、室温で30分間乾燥した。次に、この膜を80℃の乾燥器内で8時間放置した後、メタノールで洗浄し、電解質膜を作製した。得られた電解質膜の両面に比較例1で作製したものと同様の触媒層bを配置してホットプレス法により膜に各触媒層を転写して、膜触媒層接合体(電極面積:25cm2)を作製した。
【0054】
[電池特性評価試験]
実施例1〜3、比較例1及び2の各膜触媒層接合体を、厚さ350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜電極接合体をそれぞれ作製した。次に、各膜電極接合体を発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度70℃において固体高分子型燃料電池の電流密度0.2A/cm2における出力電圧の初期特性評価、並びに、500時間経過後及び2000時間経過後の特性(耐久性)評価を実施した。なお、アノード側の露点は70℃とし、カソード側の露点は40℃とし、それぞれ水素及び空気を加湿してセル内に供給した。表2に、その結果を示す。また、上記の評価条件の内、カソード側の露点のみを70℃に変更して測定した評価結果を表3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の膜電極接合体によれば、通常の加湿条件はもとより低加湿条件で運転させる場合あっても、初期の出力電圧が高く、その出力電圧を長期にわたって充分に維持できる、優れた耐久性を実現することが可能となる。また、本発明の膜電極接合体の製造方法によれば、上述の性能を有する耐久性に優れた膜電極接合体を容易かつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…固体高分子電解質膜、2…アノード触媒層、3…カソード触媒層、4a,4c…ガス拡散層、5…セパレータ、5a・・・セパレータ5のガス供給溝、6・・・ガスシール体。
Claims (5)
- アノード及びカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置されるイオン交換膜とを有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体であって、
前記アノード及び前記カソードは、触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末と、イオン交換樹脂とを含む触媒層を少なくとも有しており、
前記アノード及び前記カソードのうちの少なくとも一方の前記触媒層中には、オゾン処理が施されたカーボン材料が更に含まれていること、
を特徴とする膜電極接合体。 - 前記カーボン材料が、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンからなる群より選択される少なくとも1種の材料であること、
を特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。 - 前記カーボン材料が添加された前記触媒層において、
前記触媒金属粒子が白金粒子及び/又は白金合金粒子であり、
前記カーボン材料の含有率が前記触媒層の全質量に対して5〜50%であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の膜電極接合体。 - 前記イオン交換樹脂は、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の膜電極接合体。
- 触媒金属粒子がカーボン担体に担持された触媒粉末とイオン交換樹脂とを少なくとも含む触媒層とを有するアノード及びカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置されるイオン交換膜と、を有する固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体の製造方法であって、
前記アノード及び前記カソードのうちの少なくとも一方を製造する工程において、カーボン材料をオゾン処理した後、得られたカーボン材料と前記触媒粉末と前記イオン交換樹脂とを含む塗工液を調製し、得られた前記塗工液を基材上に塗工することにより前記アノードの触媒層及び前記カソードの触媒層のうちの少なくとも一方を作製すること、
を特徴とする膜電極接合体の製造方法。
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-
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